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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】吊具及び太陽電池モジュールの施工方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/62 20060101AFI20230606BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20230606BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230606BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20230606BHJP
   H02S 20/22 20140101ALI20230606BHJP
【FI】
B66C1/62 G
E04F21/00 C ETD
E04F13/08 Z
E04G21/14
H02S20/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019135347
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017359
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】藤家 充朗
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-502181(JP,A)
【文献】実開昭62-144286(JP,U)
【文献】特開2018-192574(JP,A)
【文献】特開2017-106320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-3/20
E04F 13/00-13/30;
21/00
E04G 21/14-21/22
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールを、光入射面が上下方向に沿った状態で吊り上げるための吊具であって、
太陽電池モジュールと係合する係合姿勢、及び当該係合を解除する解除姿勢に姿勢変化する係合部材と、
上記係合姿勢を保持するように上記係合部材を付勢する付勢部材と、
第1位置及び当該第1位置より下方の第2位置に移動可能であって、上記第1位置において上記係合部材の姿勢変化を許容し、上記第2位置において上記付勢部材に抗して上記係合部材を上記解除姿勢に保持するスライダと、
上記スライダを上記係合部材に対して上下方向へ移動可能に案内するガイドと、を備える吊具。
【請求項2】
太陽電池モジュールが有する電気的な接続コードを留める留め部を更に備える請求項1に記載の吊具。
【請求項3】
上記留め部は、上記スライダに設けられており上記接続コードが挿入可能なスリットであって、上下方向の成分を有する第1方向へ延びる第1空間と、当該第1空間と連続しており、且つ上記第1方向と交差する第2方向へ延びる第2空間とを有しており、
上記スライダは、上記第1位置において上記係合部材の上端より上方へ突出しており、
上記第2空間は、上記スライダが上記第1位置にあるとき、上記係合部材の上端より上方に位置しており、上記スライダが上記第2位置にあるとき、上記係合部材の上端より下方に位置する請求項2に記載の吊具。
【請求項4】
上記留め部は、上記スライダに設けられており上記接続コードが挿入可能なスリットと、保持部材と、を有しており、
上記保持部材は、上記スリットに挿入された上記接続コードが上記スリットにおける下部分から上部分へ移動することを制止し、
上記スライダは、上記第1位置において上記係合部材の上端より上方へ突出しており、
上記下部分は、上記スライダが上記第1位置にあるとき、上記係合部材の上端より上方に位置しており、上記スライダが上記第2位置にあるとき、上記係合部材の上端より下方に位置する請求項2に記載の吊具。
【請求項5】
上記係合部材は、第1部材と、第2部材と、を有しており、
上記第1部材と上記第2部材とは、相互に接離することによって上記係合姿勢又は上記解除姿勢に姿勢変化し、
上記スライダは、上記第1部材と上記第2部材との間を移動可能であり、
上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方は、上記第2位置の上記スライダと当接する凸部を有しており、
上記第2位置の上記スライダと上記凸部とが当接することにより、上記第1部材と上記第2部材とが相互に離れて上記解除姿勢に保持される請求項1から4のいずれかに記載の吊具。
【請求項6】
上記スライダは、吊下げ用の貫通孔を有する請求項1から5のいずれかに記載の吊具。
【請求項7】
太陽電池モジュールを吊り上げるための吊具を用いた太陽電池モジュールの施工方法であって、
上記吊具は、
太陽電池モジュールと係合する係合姿勢、及び当該係合を解除する解除姿勢に姿勢変化する係合部材と、
上記係合姿勢を保持するように上記係合部材を付勢する付勢部材と、
第1位置及び当該第1位置より下方の第2位置に移動可能であって、上記第1位置において上記係合部材の姿勢変化を許容し、上記第2位置において上記付勢部材に抗して上記係合部材を上記解除姿勢に保持するスライダと、
上記スライダを上記係合部材に対して上下方向へ移動可能に案内するガイドと、を備えており、
上記係合部材が上記係合姿勢にされて太陽電池モジュールの枠材に取り付けられる取付工程と、
上記スライダを上記第1位置として、上記吊具を介して太陽電池モジュールが光入射面が上下方向に沿った状態でクレーンにより吊り上げられる吊上げ工程と、
吊り上げられた太陽電池モジュールの接続コード、建物の外壁に設けられた支持台に設置された他の太陽電池モジュールの接続コードとが電気的に接続される接続工程と、
上記スライダを上記第2位置として、接続コードが接続された太陽電池モジュールから上記吊具を取り外す取り外し工程と、
上記吊具から取り外された太陽電池モジュールを、上記支持台に固定する固定工程と、を備える太陽電池モジュールの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールをクレーンで吊り上げるための吊具、及び当該吊具を用いた太陽電池モジュールの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、太陽電池パネルを吊り上げる治具を開示する。治具は、太陽電池パネルのレール状部材の両端の小口を係止する係止部材を備える。治具を介して、太陽電池パネルは、光入射面を水平方向としてクレーンによって吊り上げられて、住宅等の建築物の屋根に移動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-81680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池モジュールは、複数枚が接続コードを通じて電気的に接続された状態で建築物の屋根などに固定される。屋根には、太陽電池モジュールを設置するための支持台が予め設けられている。接続コードは、太陽電池モジュールの光入射面と反対側の面である裏面から延出する。例えば特許文献1記載の治具を介してクレーンによって吊り上げられた太陽電池モジュールは、支持台へ移動される。そして、支持台に載置された太陽電池モジュールと屋根との間に作業者が入って、接続コード同士を電気的に接続する。
【0005】
太陽電池モジュールが建物の外壁に取り付けられる場合、外壁には、太陽電池モジュールを固定するための支持台が予め設置されている。作業者は、建物の外壁に設置された足場において作業を行う。例えば特許文献1記載の治具を用いて、光入射面が水平方向に沿った姿勢で太陽電池モジュールがクレーンにより吊り下げられると、作業者は、高所において、吊り下げられた状態の太陽電池モジュールを、光入射面が鉛直方向となるように姿勢変化させる必要がある。高所において、姿勢変化させた太陽電池モジュールを支持しつつ、支持台に固定する作業は、不安定でないことが望ましい。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、建物の外壁に取り付けられる太陽電池モジュールを吊り上げるのに適した吊具を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、太陽電池モジュールを建物の外壁に安定して設置する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、太陽電池モジュールを、光入射面が上下方向に沿った状態で吊り上げるための吊具に関する。吊具は、太陽電池モジュールと係合する係合姿勢、及び当該係合を解除する解除姿勢に姿勢変化する係合部材と、上記係合姿勢を保持するように上記係合部材を付勢する付勢部材と、第1位置及び当該第1位置より下方の第2位置に移動可能であって、上記第1位置において上記係合部材の姿勢変化を許容し、上記第2位置において上記付勢部材に抗して上記係合部材を上記解除姿勢に保持するスライダと、上記スライダを上記係合部材に対して上下方向へ移動可能に案内するガイドと、を備える。
【0009】
太陽電池モジュールに吊り穴を形成することなく、吊具によって、光入射面が上下方向に沿った状態で太陽電池モジュールをクレーンで吊り上げることができる。第2位置のスライダによって係合部材が解除姿勢に保持されるので、吊具から太陽電池モジュールを取り外す作業が容易である。
【0010】
(2) 好ましくは、太陽電池モジュールが有する電気的な接続コードを留める留め部を更に備える。
【0011】
係合部材に係合された太陽電池モジュールの接続コードが、留め部に留められるので、クレーンにより吊り上げられた太陽電池モジュールの接続コードと、既に設置された太陽電池モジュールの接続コードと、を接続する作業が容易である。
【0012】
(3) 好ましくは、上記留め部は、上記スライダに設けられており上記接続コードが挿入可能なスリットであって、上下方向の成分を有する第1方向へ延びる第1空間と、当該第1空間と連続しており、且つ上記第1方向と交差する第2方向へ延びる第2空間とを有しており、上記スライダは、上記第1位置において上記係合部材の上端より上方へ突出しており、上記第2空間は、上記スライダが上記第1位置にあるとき、上記係合部材の上端より上方に位置しており、上記スライダが上記第2位置にあるとき、上記係合部材の上端より下方に位置する。
【0013】
スリットの第2空間に位置する接続コードと係合部材の上端とが当接することによって、スライダが第2位置に移動することがない。第2空間が延びる第2方向と第1空間が延びる第1方向とが交差しているので、第2空間に位置する接続コードが第1空間へ不用意に移動することが抑制される。
【0014】
(4) 好ましくは、上記留め部は、上記スライダに設けられており上記接続コードが挿入可能なスリットと、保持部材と、を有しており、上記保持部材は、上記スリットに挿入された上記接続コードが上記スリットにおける下部分から上部分へ移動することを制止し、上記スライダは、上記第1位置において上記係合部材の上端より上方へ突出しており、上記下部分は、上記スライダが上記第1位置にあるとき、上記係合部材の上端より上方に位置しており、上記スライダが上記第2位置にあるとき、上記係合部材の上端より下方に位置する。
【0015】
スリットの下部分に位置する接続コードと係合部材の上端とが当接することによって、スライダが第2位置に移動することがない。保持部材は、スリットの下部分に位置する接続コードが上部分へ移動することを制止する。
【0016】
(5) 好ましくは、上記係合部材は、第1部材と、第2部材と、を有しており、上記第1部材と上記第2部材とは、相互に接離することによって上記係合姿勢又は上記解除姿勢に姿勢変化し、上記スライダは、上記第1部材と上記第2部材との間を移動可能であり、上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方は、上記第2位置の上記スライダと当接する凸部を有しており、上記第2位置の上記スライダと上記凸部とが当接することにより、上記第1部材と上記第2部材とが相互に離れて上記解除姿勢に保持される。
【0017】
(6) 好ましくは、上記スライダは、吊下げ用の貫通孔を有する。
【0018】
(7) 本発明は、太陽電池モジュールを吊り上げるための吊具を用いた太陽電池モジュールの施工方法に関する。上記吊具は、太陽電池モジュールと係合する係合姿勢、及び当該係合を解除する解除姿勢に姿勢変化する係合部材と、上記係合姿勢を保持するように上記係合部材を付勢する付勢部材と、第1位置及び当該第1位置より下方の第2位置に移動可能であって、上記第1位置において上記係合部材の姿勢変化を許容し、上記第2位置において上記付勢部材に抗して上記係合部材を上記解除姿勢に保持するスライダと、上記スライダを上記係合部材に対して上下方向へ移動可能に案内するガイドと、を備える。上記施工方法は、上記係合部材が上記係合姿勢にされて太陽電池モジュールの枠材に取り付けられる取付工程と、上記スライダを上記第1位置として、上記吊具を介して太陽電池モジュールが光入射面が上下方向に沿った状態でクレーンにより吊り上げられる吊上げ工程と、吊り上げられた太陽電池モジュールの接続コードを、建物の外壁に設けられた支持台に設置された他の太陽電池モジュールの接続コードとが電気的に接続される接続工程と、上記スライダを上記第2位置として、接続コードが接続された太陽電池モジュールから上記吊具を取り外す取り外し工程と、上記吊具から取り外された太陽電池モジュールを、上記支持台に固定する固定工程と、を備える。
【0019】
吊具を介して太陽電池モジュールをクレーンで吊り上げて、建物の外壁に設けられた支持台に固定する作業を、安定して行うことができる。また、太陽電池モジュールが吊具を介して吊り上げられた状態で、既に設置された太陽電池モジュールとの配線処理を行う作業が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建物の外壁に取り付けられる太陽電池モジュールを吊り上げて、建物の外壁に安定して設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係る使用状態を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る吊具10の正面図である。
図3図3は、実施形態に係る吊具10の左側面図であって、図3(A)は、係合部材30が係合姿勢であるときを示す図であり、図3(B)は、係合部材30が解除姿勢であるときを示す図である。
図4図4は、実施形態に係る第1部材31を示す図であって、図4(A)は、左側面図であり、図4(B)は、正面図である。
図5図5は、実施形態に係る第2部材32を示す図であって、図5(A)は、左側面図であり、図5(B)は、正面図である。
図6図6は、実施形態に係るスライダ50を示す図であって、図6(A)は、左側面図であり、図6(B)は、背面図である。
図7図7は、実施形態に係る施工方法70の説明図である。
図8図8は、支持台82が設けられた外壁81を示す斜視図である。
図9図9は、支持台82に太陽電池モジュール20が仮置きされた状態を示す側面図である。
図10図10は、変形例1に係る吊具100の左側面図であって、図10(A)は、係合部材30が係合姿勢であるときを示す図であり、図10(B)は、係合部材30が解除姿勢であるときを示す図である。
図11図11は、変形例1に係るスライダ150を示す図であって、図11(A)は、スライダ150の左側面図であり、図11(B)は、スライダ150の正面図である。
図12図12(A)は、その他の変形例に係る吊具200の斜視図であり、図12(B)は、その他の変形例に係るスライダ50の正面図である。
図13図13(A)は、その他の変形例に係る吊具300の左側面図であって、図13(B)は、その他の変形例に係る吊具400の左側面図である。
図14図14(A)は、その他の変形例に係るスリット250Dを示す部分拡大図であって、図14(B)は、その他の変形例に係るスリット350Dを示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、吊具10が太陽電池モジュール20と係合され、吊り上げられた使用状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、光入射面22Aが前方であって、上下方向7と直交する方向として前後方向8が定義され、上下方向7及び前後方向8のいずれとも直交する方向として左右方向9が定義される。
【0023】
[吊具10]
本実施形態に係る吊具10が図1及び図2に示される。吊具10は、太陽電池モジュール20を、光入射面22Aが上下方向7に沿った状態でクレーン(不図示)により吊り上げるために用いられる。吊具10は、例えば金属製である。
【0024】
太陽電池モジュール20は、図8及び図9に示されるように、住宅やビル等の建物の外壁81に支持台82を介して複数が配列されて取り付けられる。太陽電池モジュール20は、一般的な構造であれば特に限定されないが、例えば図1に示されるように、枠材21と、太陽電池パネル22と、端子箱23と、端子箱23から延出された2本のコード24と、を備える。コード24は、接続コードの一例である。
【0025】
枠材21は、図1に示されるように、例えばステンレス材からなる外形が四角形の枠であり、四角形の平板形状の太陽電池パネル22の外周に取り付けられている。太陽電池パネル22は、複数の太陽電池素子が配列されており、一方の面が光入射面22Aである。各太陽電池素子は、光入射面22Aに入射した光に応じて光起電力を生じさせる。太陽電池パネル22の光入射面22Aと反対の面である裏面22Bのほぼ中央に端子箱23が固定されている。端子箱23には、各太陽電池素子と電気的に接続された配線が集約されている。2本のコード24は、端子箱23内に集約された配線と電気的に接続されている。2本のコード24の延出端には、他のコード24と接続するためのコネクタ25がそれぞれ設けられている。
【0026】
吊具10は、図1及び図3に示されるように、係合部材30と、コイルバネ40と、スライダ50と、接続部材60と、を備える。
【0027】
図1及び図3に示されるように、係合部材30は、太陽電池モジュール20の枠材21と係合するものである。係合部材30は、第1部材31と、第2部材32と、を有する。第1部材31と第2部材32とは、相互に接離することによって係合姿勢(図3(A))又は解除姿勢(図3(B))に姿勢変化する。
【0028】
図3に示されるように、第1部材31は、太陽電池モジュール20の後側から枠材21に係合する。図4に示されるように、第1部材31は、左側面視(図4(A))において略L字形状であり、正面視(図4(B))において上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い長方形の平板である。第1部材31の左右方向9に沿った寸法は、太陽電池モジュール20の枠材21の左右方向9に沿った寸法より短い。
【0029】
図4に示されるように、第1部材31は、本体部31Aと、係合部31Bと、凸部31Cと、貫通孔31Dと、を有する。
【0030】
本体部31Aは、主に、係合部31Bにかかる荷重を、貫通孔31Dを貫通する頭付きピン61を介してスライダ50に伝達する。本体部31Aは、その表裏面が上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる部分である。本体部31Aは、上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い長方形の平板である。
【0031】
係合部31Bは、使用状態において、太陽電池モジュール20の枠材21を下方から支持する。係合部31Bは、その表裏面が前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる部分である。係合部31Bは、前後方向8に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い長方形の平板である。係合部31Bは、後端が本体部31Aの前端と連続しており、本体部31Aの前端から前方へ延びている。係合部31Bが本体部31Aから前後方向8に沿って突出する寸法は、枠材21の前後方向8に沿った寸法よりも短い。
【0032】
凸部31Cは、スライダ50が第2位置P2(図3(B)に示される位置)にあるとき、スライダ50の後面と当接するものである。凸部31Cは、側面視(図4(A))及び上面視において半球形状に本体部31Aの前面から前方へ突出する。凸部31Cは、本体部31Aの前面に2つが設けられており、本体部31Aの左右方向9の中央を通って上下方向7に沿って延びる仮想線33に対して線対称に位置する。
【0033】
貫通孔31Dには、後述の頭付きピン61が貫通する。貫通孔31Dは、本体部31Aを前後方向8に沿って貫通する。前面視(図4(B))において、貫通孔31Dは円形であり、その直径は頭付きピン61の直径より若干大きい。貫通孔31Dは、本体部31Aに2つ形成されており、仮想線33に対して線対称に位置する。
【0034】
第2部材32は、図3(A)及び図3(B)に示されるように、第1部材31より前方に位置し、使用状態において、太陽電池モジュール20の枠材21の上面及び前面に当接して、第1部材31に係合された状態に枠材21を保持する。図5に示されるように、第2部材32は、左側面視における外形がクランク形状であり、正面視における外形が上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い長方形である。第2部材32は、本体部32Aと、第1片32Bと、第2片32Cと、凸部32Dと、貫通孔32Eと、を有する。
【0035】
図5に示されるように、本体部32Aは、その表裏面が上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる部分である。本体部32Aは、上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い、外形が長方形の板である。
【0036】
第1片32Bは、係合部材30が係合姿勢(図3(A))であるとき、太陽電池モジュール20の枠材21の上面と当接する。図5に示されるように、第1片32Bは、その表裏面が前後方向8及び左右方向9に沿って拡がる部分である。第1片32Bは、前後方向8に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い長方形の板である。第1片32Bは、後端が本体部32Aの下端と繋がっており、本体部32Aの下端から前方へ延びている。第1片32Bは、前後方向8に沿った寸法が枠材21の前後方向8に沿った寸法よりも短い。
【0037】
第2片32Cは、係合部材30が係合姿勢(図3(A))であるとき、太陽電池モジュール20の枠材21の前面と当接する。図5に示されるように、第2片32Cは、その表裏面が上下方向7及び左右方向9に沿って拡がる部分である。第2片32Cは、上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長い外形が長方形の板である。第2片32Cは、上端が第1片32Bの前端と繋がっており、第1片32Bの前端から下方へ延びている。第2片32Cは、上下方向7に沿った寸法が枠材21の上下方向7に沿った寸法よりも短い。
【0038】
図3(B)に示されるように、凸部32Dは、スライダ50が第2位置P2にあるとき、スライダ50の前面と当接する。凸部32Dは、本体部32Aの後面から後方へ突出する半球形状である。図5に示されるように、凸部32Dは、本体部32Aの左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線34に対して線対称に位置する。凸部32Dの前後方向8に沿った寸法は、凸部31Cの前後方向8に沿った寸法より短い。凸部32Dと凸部31Cとは、上下方向7における相互の位置が一部重複する。係合部材30が係合姿勢(図3(A))であるとき、凸部32Dと凸部31Cとが当接する。
【0039】
図3に示されるように、貫通孔32Eには、頭付きピン61が挿通される。図5に示されるように、貫通孔32Eは、円形であり、直径が頭付きピン61の本体部61Aの外径と同程度である。貫通孔32Eは、本体部32Aに2つ設けられており、仮想線34に対して線対称に位置する。係合部材30において2つの貫通孔32Eと2つの各貫通孔31Dとが前後方向8に並ぶ。前後方向8に並んだ貫通孔32E及び貫通孔31Dに、1つの頭付きピン61が挿通される。
【0040】
図3に示されるように、コイルバネ40は、第1部材31の本体部31Aを前方へ付勢して、係合部材30が係合姿勢(図3(A))を維持するための付勢力を第1部材31へ付与する。コイルバネ40は、頭付きピン61に挿通されて、第1部材31の本体部31Aと頭付きピン61の頭部61Bとの間に位置する。コイルバネ40は、付勢部材の一例である。
【0041】
図3に示されるように、スライダ50は、第1部材31と第2部材32との間を上下方向7に沿って移動することにより、第1位置P1(図3(A)に示される位置)及び第1位置P1より下方の第2位置P2(図3(B)に示される位置)に移動する。スライダ50は、第1位置P1において係合部材30の姿勢変化を許容し、第2位置P2において係合部材30を解除姿勢に保持する。
【0042】
図2及び図6に示されるように、スライダ50の外形は、側面視において略I字形状であり、正面視において上下方向7に沿った寸法より左右方向9に沿った寸法が長く、且つ上端付近における左右方向9の両端の一部が切り欠かれた略凸字形状である。スライダ50は、貫通孔50Aと、凸部50Bと、吊り穴50Cと、スリット50Dと、を有する。
【0043】
貫通孔50Aは、スライダ50を係合部材30に対して上下方向7に沿って、第1位置P1と第2位置P2とに移動可能に案内する。貫通孔50Aには、頭付きピン61が挿通される。貫通孔50Aは、左右方向9に沿った寸法が頭付きピン61の本体部61Aの外径と同程度である。貫通孔50Aは、上下方向7に沿った寸法が左右方向9に沿った寸法より長い長孔である。貫通孔50Aは、スライダ50に2つ設けられており、スライダ50の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線51に対して線対称に位置する。各貫通孔50Aには、貫通孔32E及び各貫通孔31Dと共に頭付きピン61が挿通される。貫通孔50Aに頭付きピン61が挿通された状態において、スライダ50は、貫通孔50Aの上下方向7に沿った寸法分だけ、係合部材30に対して上下方向7に移動可能である。貫通孔50Aは、ガイドの一例である。
【0044】
凸部50Bは、スライダ50が第2位置P2に位置するとき、第1部材31の本体部31Aの前面と当接する。凸部50Bは、スライダ50の後面から後方に突出する半球形状である。凸部50Bの前後方向8に沿った寸法は、凸部31Cの前後方向8に沿った寸法より短い。スライダ50において、凸部50Bの下端からスライダ50の下端までの寸法は、第1部材31において、凸部31Cの上端から第1部材31の上端までの寸法より長い。これにより、スライダ50が第2位置P2に位置するとき、凸部50Bが第1部材31に当接し、且つスライダ50が凸部31C及び凸部32Dと当接する。これにより、コイルバネ40の付勢力に抗して第1部材31と第2部材32とが相互に離れて、係合部材30が解除姿勢に保持される。
【0045】
吊り穴50Cには、クレーンのフック11が挿通される。吊り穴50Cは、開口が略四角形であり、開口の大きさは、フック11を通すのに十分な大きさとして設定されている。吊り穴50Cは、スライダ50に2つ設けられ、スライダ50の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線51に対して線対称に位置する。吊り穴50Cは、貫通孔50Aよりも上方に位置する。
【0046】
スリット50Dには、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能である。スリット50Dは、正面視又は背面視において略L字形状である。スリット50Dは、スライダ50に2つ設けられ、スライダ50の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線51に対して線対称に位置する。スリット50Dは、スライダ50の上端に開口している。スリット50Dは、スライダ50の上端から下方12へ延びる第1部分52と、第1部分52の下端と連続しており左方13又は右方14へ延びる第2部分53と、突起54と、を有する。スリット50Dは、留め部の一例である。下方12は、第1方向の一例である。左方13及び右方14は、第2方向の一例である。第1部分52は第1空間の一例である。第2部分53は第2空間の一例である。
【0047】
第1部分52は、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能であって、コード24を第2部分53へ導く。第1部分52は、左右方向9に沿った寸法がコード24の直径より長く、例えば、左右方向9に沿った寸法が9mmであり、コード24の直径が7mmである。第1部分52は、上下方向7に沿った寸法が左右方向9に沿った寸法より長い。
【0048】
第2部分53は、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能であって、コード24を留め置く箇所である。第2部分53は、上下方向7及び左右方向9に沿った寸法がコード24の直径より長い。第2部分53は、上下方向7に沿った寸法が第1部分52の上下方向7に沿った寸法より短い。スライダ50の左右方向9の中央より左方のスリット50Dにおける第2部分53は、第1部分52の下端から左方13へ延びている。スライダ50の左右方向9の中央より右方のスリット50Dにおける第2部分53は、第1部分52の下端から右方へ延びている。
【0049】
スライダ50は、第1位置P1及び第2位置P2のいずれにおいても、係合部材30の上端より上方へ突出している。第2部分53は、スライダ50が第1位置P1にあるとき、係合部材30の上端より上方に位置しており、かつスライダ50が第2位置P2にあるとき、係合部材30の上端より下方に位置する。
【0050】
突起54は、太陽電池モジュール20のコード24を第2部分53へ留め置く。突起54は、第1部分52と第2部分53との境目に位置し、第2部分53の上端から下方へ延びる。突起54は、上下方向7に沿った寸法が第2部分53の上下方向7に沿った寸法より短く、例えば、突起54の上下方向7に沿った寸法は3mmであり、第2部分53の上下方向7に沿った寸法は9mmである。第2部分53に位置するコード24が、突起54の下方を通過して第1部分52へ進入するには、コード24の上下方向7に沿った寸法が短くなるようにコード24が弾性変形される必要がある。
【0051】
図3に示されるように、接続部材60は、係合部材30の第1部材31と第2部材32と姿勢変化可能に接続する。また、接続部材60は、係合部材30とスライダ50とを、スライダ50が係合部材30に対して上下方向7に移動可能に接続する。接続部材60は、吊具10において2つ設けられており、吊具10の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線15に対して線対称に位置する。接続部材60は、頭付きピン61と、割りピン62と、を有する。
【0052】
頭付きピン61は、後方から順に、コイルバネ40、第1部材31の貫通孔31D、スライダ50の貫通孔50A及び第2部材32の貫通孔32Eに挿通されている。頭付きピン61は、各部材に挿通される棒状の本体部61Aと、本体部61Aの後端において径方向へ突出する頭部61Bと、本体部61Aに形成されており割りピン62が通されるピン孔61Cと、を有する。ピン孔61Cに割りピン62が挿通されることによって、各部材に挿通された頭付きピン61から抜け出ないように維持される。
【0053】
[係合部材30の姿勢変化]
図3(A)に示されるように、係合姿勢の係合部材30は、太陽電池モジュール20の枠材21と係合する。係合部材30が係合姿勢の状態で、吊具10がクレーンによって吊り上げられる。係合姿勢において、スライダ50は第1位置P1に位置する。係合姿勢において、スライダ50の凸部50Bは、第1部材31の前面と当接しておらず、また、凸部31C及び凸部32Dはスライダ50の前面及び後面に当接していない。これにより、第1部材31と第2部材32とは、コイルバネ40に付勢されて、前後方向8において相互に最も近づく位置関係、すなわち係合姿勢となる。クレーンのフック11がスライダ50の吊り穴50Cに挿通されて吊具10が吊り上げられると、太陽電池モジュール20の重量によって、係合部材30に対してスライダ50が下方へ移動しないので、スライダ50が第1位置P1から第2位置P2へ移動しない。
【0054】
図3(B)に示されるように、解除姿勢は、太陽電池モジュール20が吊具10から取り外し可能な状態である。解除姿勢では、スライダ50が第2位置P2に位置する。第2位置P2において、スライダ50の凸部50Bが第1部材31の前面と当接し、また、凸部31C及び凸部32Dがスライダ50と当接する。すなわち、凸部31Cと凸部32Dとの間にスライダ50が挟まれた状態となる。これにより、解除姿勢では、係合姿勢と比較して、第1部材31と第2部材32とが前後方向8において離れる。
【0055】
凸部50Bがスライダ50の後面から後方へ突出する寸法より、凸部31Cが第1部材31の後面から前方へ突出する寸法、及び凸部32Dが第2部材32の後面から後方へ突出する寸法の和が大きいので、解除姿勢において、第1部材31と第2部材32とが前後方向8に沿って離れる距離は、上端側より下端側が大きい。解除姿勢において、第2部材32の第2片32Cが太陽電池モジュール20の枠材21から前方へ離れる距離が、第1部材31の係合部31Bが本体部31Aから前方へ突出する寸法より大きいので、枠材21は、係合部31Bよりも前方へ移動して、係合部31Bと係合しない状態となり得る。
【0056】
[吊具10を用いた太陽電池モジュール20の施工方法]
以下、図7から図9を参照しつつ、吊具10を用いた太陽電池モジュール20の施工方法70が説明される。施工方法70は、第1工程71から第8工程78までを含む。
【0057】
第1工程71は、クレーン(不図示)のフック11が吊具10を構成するスライダ50の吊り穴50Cに挿通される工程である。作業者は、フック11を2つの吊り穴50Cにそれぞれ挿通して、フック11と吊具10を連結する。
【0058】
第2工程72は、係合部材30が係合姿勢(図3(A))にされて太陽電池モジュール20の枠材21に取り付けられる工程である。作業者は、吊具10の係合部材30を解除姿勢(図3(B))とし、第1部材31を枠材21に係合する。その後、係合部材30が係合姿勢にされ、第2部材32が枠材21に当接し、枠材21に取り付けられる。第2工程72は、取付工程の一例である。
【0059】
第3工程73は、太陽電池モジュール20の2本のコード24が、それぞれスライダ50のスリット50Dに留められる工程である。作業者は、コード24がスライダ50の上端から下方12へ延びる第1部分52を通過し、第1部分52の下端と連続しており左方13又は右方14へ延びる第2部分53に到達するまで、端子箱23から延出された2本のコード24をそれぞれスリット50Dに挿入する。
【0060】
第4工程74は、スライダ50を第1位置P1として、吊具10を介して太陽電池モジュール20の光入射面22Aが上下方向7に沿った状態でクレーンにより吊り上げられる工程である。吊具10がクレーンに吊り上げられることにより、係合部材30に太陽電池モジュール20の重量が加わるので、スライダ50が第1位置P1から第2位置P2へ移動することが抑制される。また、コード24がスリット50Dの第2部分53に位置するので、コード24と係合部材30の上端とが当接することによっても、スライダ50が第1位置P1から第2位置P2へ移動することが制止される。吊具10により吊り上げられた太陽電池モジュール20は、建物の外壁81に設置される位置まで運搬される。設置される位置は、既に設置された太陽電池モジュール20がある場合、最後に設置された太陽電池モジュール20の上下方向7又は左右方向9に沿った隣である。第4工程74は、吊上げ工程の一例である。なお、図8に示されるように、太陽電池モジュール20が取り付けられる外壁81の傍には、予め足場83が設けられている。
【0061】
第5工程75は、太陽電池モジュール20が側壁に設けられた支持台82に仮置きされる工程である。太陽電池モジュール20は、枠材21の下部が支持台82の上に載せられる。太陽電池モジュール20は、仮置きされる際、枠材21の上部が下部と比べて外壁81から離される。
【0062】
第6工程76は、吊り上げられた太陽電池モジュール20のコード24と、建物の外壁81に設けられた支持台82に設置された他の太陽電池モジュール20のコード24とが電気的に接続される工程である。このとき、吊り上げられた太陽電池モジュール20のコード24は、第6工程76で接続される1本がスライダ50のスリット50Dから外される。第6工程76は、接続工程の一例である。
【0063】
第7工程77は、スライダ50を第2位置P2として、コード24が接続された太陽電池モジュール20から吊具10を取り外す工程である。作業者は、第6工程76で外されなかったコード24をスリット50Dから外す。太陽電池モジュール20が支持台82に仮置きされていることによって、係合部材30に太陽電池モジュール20の重量が大きく加わらないので、スライダ50が第1位置P1から第2位置P2へ移動しやすい。したがって、作業者は、スライダ50を第2位置P2として係合部材30を解除姿勢とし、太陽電池モジュール20から吊具10を取り外す。第7工程77は、取り外し工程の一例である。
【0064】
第8工程78は、吊具10から取り外された太陽電池モジュール20を、支持台82に固定する工程である。第8工程78は、固定工程の一例である。なお、太陽電池モジュール20は、クレーンによって吊り上げられた状態のままで支持台82に固定されてもよい。
【0065】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、太陽電池モジュール20に吊り穴を形成することなく、吊具10によって、光入射面22Aが上下方向7に沿った状態で太陽電池モジュール20をクレーンで吊り上げることができる。第2位置P2のスライダ50によって係合部材30が解除姿勢に保持されるので、吊具10から太陽電池モジュール20を取り外す作業が容易である。
【0066】
また、第1部材31には凸部31Cが、第2部材32には凸部32Dが、スライダ50と接する面にそれぞれ設けられている。スライダ50は、第1位置P1から第2位置P2に移動する際、凸部31C、32Dと当接し、スライダ50の前面及び後面が第2部材32の後面及び第1部材31の前面と離れる。これにより、スライダ50は、第1位置P1から第2位置P2に移動する際、各面同士の摩擦がなくなり、凸部が第1部材31又は第2部材32のいずれかのみに設けられるよりも第1位置P1から第2位置P2に移動しやすく、また、摩擦による各部材の損傷も抑えられる。
【0067】
また、凸部31Cの前端と凸部32Dの後端とが、係合姿勢において上下方向7における位置が一部重複することによって、上下方向7における位置が全く同じであるときと比較して、凸部31C及び凸部32Dの前後方向8の寸法を長くすることができ、解除姿勢における第1部材31の下端側と第2部材32の下端側との距離を大きくすることができる。
【0068】
また、スライダ50が第1位置P1から第2位置P2に移動するとき、第1部材31の凸部31Cがスライダ50の後面と当接した後、スライダ50の凸部50Bが第1部材31の前面と当接する。これにより、第1位置P1から第2位置P2に移動するスライダ50の勢いを削ぐことができ、貫通孔50Aが損傷することを抑制することができる。
【0069】
また、スリット50Dの左右方向9又は上下方向7の幅がコネクタ25より狭いことで、スリット50Dに挿入されたコード24が前後方向8に抜けて落ちることが防がれる。
【0070】
また、係合部材30に係合された太陽電池モジュール20のコード24が、スリット50Dに留められるので、クレーンにより吊り上げられた太陽電池モジュール20のコード24と、既に設置された太陽電池モジュール20のコード24と、を接続する作業が容易である。
【0071】
また、スリット50Dの第2部分53に位置するコード24と係合部材30の上端とが当接することによって、スライダ50が第2位置P2に移動することがない。第2部分53が延びる左方13又は右方14と第1部分52が延びる下方12とが交差しているので、第2部分53に位置するコード24が第1部分52へ不用意に移動することが抑制される。
【0072】
また、突起54は、突起54の下端と第2部分53の下端との間の上下方向7に沿った寸法をコード24の直径より短くすることで、コード24が弾性変形しない限り、第2部分53に位置するコード24が第1部分52へ不用意に移動することが抑制される。
【0073】
また、吊具10を介して太陽電池モジュール20をクレーンで吊り上げて、建物の外壁81に設けられた支持台82に固定する作業を、安定して行うことができる。また、太陽電池モジュール20が吊具10を介して吊り上げられた状態で、既に設置された太陽電池モジュール20との配線処理を行う作業が容易である。
【0074】
[変形例1]
上記実施形態では、スリット50Dの第1部分52が上下方向7に沿って延び、第2部分53が第1部分52の下端から左右方向9に沿って延びる例が説明された。しかしながら、第2部分53は、第1部分52と同じ方向に連なって延び、第1部分52と、第2部分53とを画する保持部材が用いられてもよい。変形例1では、図10及び図11を参照しつつ、スリット150Dと、保持部材55と、突起56と、を有するスライダ150の例が説明される。
【0075】
スリット150Dには、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能である。スリット150Dは、図11(B)に示されるように、上下方向7に沿って延びる。スリット150Dは、スライダ150に2つ設けられ、スライダ150の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線151に対して線対称に位置する。スリット150Dは、スライダ150の上端に開口する。スリット150Dは、スライダ150の上端の開口を含む第1部分152と、第1部分152と連続しており、且つ保持部材55によって第1部分152と画される第2部分153と、を有する。
【0076】
第1部分152は、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能であって、コード24を第2部分153へ導く。第1部分152は、スライダ150の上端の開口を含む。第1部分152は、左右方向9に沿った寸法がコード24の直径より長く、例えば、左右方向9に沿った寸法が9mmであり、コード24の直径が7mmである。第1部分152は、上下方向7に沿った寸法が左右方向9に沿った寸法より長い。第1部分152は、上部分の一例である。
【0077】
第2部分153は、太陽電池モジュール20のコード24が挿入可能であって、コード24を留め置く箇所である。第2部分153は、左右方向9に沿った寸法がコード24の直径より長い。第2部分153は、第1部分152の下端から下方に延びる。第2部分153は、下部分の一例である。
【0078】
吊具100のスライダ150は、第1位置P1及び第2位置P2のいずれにおいても、係合部材30の上端より上方へ突出している。第2部分153は、スライダ150が第1位置P1にあるとき、係合部材30の上端より上方に位置しており、かつスライダ150が第2位置P2にあるとき、係合部材30の上端より下方に位置する。
【0079】
保持部材55は、スリット150Dに挿入されたコード24がスリット150Dにおける第2部分153から第1部分152へ移動することを制止する。保持部材55は、各スリット150Dに対して設けられる。保持部材55は、棒状部55Aと、軸部55Bと、を有する。なお、スリット150D及び保持部材55の組み合わせは、留め部の一例である。
【0080】
棒状部55Aは、スリット150Dを左右方向9に沿って跨ぐ第1位置P3まで回動することにより、スリット150Dを第1部分152と、第2部分153と、に画する。棒状部55Aは、長さの寸法がスリット150Dの左右方向9に沿った寸法より長い。棒状部55Aは、一端が軸部55Bと溶接により繋げられており、軸部55Bを中心として回動し、第1位置P3と第2位置P4とに移動する。
【0081】
棒状部55Aは、第1位置P3に位置するとき、左右方向9に沿った姿勢となり、スリット150Dを第1部分152と、第2部分153と、に画する。棒状部55Aは、このとき、下方から後述の突起56に当接する。棒状部55Aは、このとき、第2部分153に挿入されたコード24が第1部分152に移動することを制止することによって、コード24を第2部分153に留める。なお、棒状部55Aは、スライダ150が第1位置P1から第2位置P2に移動するとき、第2位置P4にあっても第1位置P3にあってもよい。
【0082】
棒状部55Aは、第2位置P4に位置するとき、上下方向7に沿った姿勢となり、スリット150Dを第1部分152と、第2部分153と、に画さない。棒状部55Aは、このとき、前後方向8においてスリット150Dとは重ならない。棒状部55Aは、このとき、コード24が第1部分152から第2部分153に移動することを許容する。
【0083】
軸部55Bは、棒状部55Aの回動軸となるものである。軸部55Bは、棒状の本体部58と、本体部58の一端に本体部58の直径より長い径を有する頭部59と、を有する。軸部55Bは、本体部58がスライダ150に設けられた貫通孔に後方から通され、本体部58の頭部59のない端部が棒状部55Aと溶接される。頭部59は、スライダ150の窪みに埋め込まれる。頭部59と棒状部55Aとがスライダ150を挟むため、スライダ150の前面と棒状部55Aとは、棒状部55Aが回動するとき摩擦を生じ、重力によって棒状部55Aが回動しない。軸部55Bは、スライダ50の左右方向9の中央を通って鉛直方向に沿って延びる仮想線51に対して線対称に位置する。軸部55Bは、スリット150Dよりスライダ50の中央よりに位置する。
【0084】
突起56は、棒状部55Aが第1位置P3より上方へ移動することを制止する。突起56は、上下方向7の位置が軸部55Bと同じであり、スリット150Dよりスライダ150の中央から外側に位置する。
【0085】
[変形例1の作用効果]
スリット150Dの第2部分153に位置するコード24と係合部材30の上端とが当接することによって、スライダが第2位置P2に移動することがない。保持部材55は、スリット150Dの第2部分153に位置するコード24が第1部分152へ移動することを制止する。
【0086】
[その他の変形例]
吊具10は、各部材が一体的に構成されていたが、図12(A)に示されるように、各部材が左右方向9に分離した一組からなる吊具200であってもよい。
【0087】
第1部材31の本体部31Aは、前面の下端において係合部31Bと繋がっていなくともよく、前面において係合部31Bと繋がっていればよい。
【0088】
第1部材31は、本体部31Aが、側面視において上下方向7に真っすぐ延びていたが、図13(A)に示されるように、上側より下側が後方となる段差部35を有する第1部材331であってもよい。段差部35は、下面が枠材21の上面と接してもよい。このとき、第2部材32は、図13(B)に示されるように、第1片32B及び第2片32Cが設けられず、本体部32Aの後面の下端が枠材21の前面と当接してもよい。
【0089】
各凸部31C、32D、50Bは、半球状のものが2つ設けられていたが、左右方向9に沿って所定の寸法分だけ延びてもよく、1つであっても3つ以上であってもよい。
【0090】
スリット50Dは、吊り穴50Cより左右方向9の外側に設けられていたが、スリット50Dに代えて、図12(B)に示されるように、吊り穴50Cより左右方向9の内側に設けられるスリット250Dであってもよい。
【0091】
第2部分53は、第1部分52の下端からスライダ50の中央より外側に延びていたが、内側に延びてもよい。
【0092】
第2部分53は、図14(A)に示されるように、第1部分52の下端と繋がっておらず、下端よりも上方において繋がっていてもよい。
【0093】
第2部分53は、図14(B)に示されるように、第1部分52の下端から左右の両側に延びていてもよい。
【0094】
頭付きピン61は、後方から各貫通孔に通されず、前方から各貫通孔に通されてもよい。
【0095】
頭付きピン61でなくともよく、ボルトであってもよい。このとき、割りピン62に代えてナットが用いられてもよい。
【0096】
スリット50Dの突起54は、設けられなくともよい。
【0097】
保持部材55と突起56とは、スリット50Dに対する位置が左右入れ替わってもよい。
【符号の説明】
【0098】
7・・・上下方向
10・・・吊具
12・・・下方(第1方向の一例)
13・・・左方(第2方向の一例)
14・・・右方(第2方向の一例)
20・・・太陽電池モジュール
21・・・枠材
22A・・・光入射面
24・・・コード(接続コードの一例)
30・・・係合部材
31・・・第1部材
31C・・・凸部
32・・・第2部材
32D・・・凸部
40・・・コイルバネ(付勢部材の一例)
50・・・スライダ
50A・・・貫通孔(ガイドの一例)
50D・・・スリット(留め部の一例)
52・・・第1部分(上部分の一例)
53・・・第2部分(下部分の一例)
55・・・保持部材
70・・・施工方法
81・・・外壁
150D・・・スリット
152・・・第1部分
153・・・第2部分
200・・・吊具
250D・・・スリット
300・・・吊具
331・・・第1部材
400・・・吊具
431・・・第1部材
432・・・第2部材
P1・・・第1位置
P2・・・第2位置
P3・・・第1位置
P4・・・第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14