(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】配線部材付被着体の製造方法及び配線部材付被着体
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20230606BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G1/06
(21)【出願番号】P 2019178906
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235788(WO,A1)
【文献】特開平01-149874(JP,A)
【文献】特開2002-371253(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043552(WO,A1)
【文献】特開2010-106193(JP,A)
【文献】特開2000-264137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1本の線状伝送部材を含む配線部材と、被着体の固定面との間に、誘導加熱によって発熱する発熱体が設けられた状態とするステップと、
(b)磁場発生源を前記配線部材に対して前記被着体側に設けるステップと、
(c)前記磁場発生源によって変動する磁場を発生させるステップと、
(d)前記変動する磁場による誘導加熱によって前記発熱体が発熱するステップと、
(e)前記発熱体における発熱によって、前記配線部材を前記被着体の固定面に固定するステップと、
を備
え、
前記ステップ(a)において、前記発熱体は、前記配線部材の周囲を囲んでおり、前記発熱体に対して前記配線部材側に前記配線部材に粘着する粘着層が設けられ、前記発熱体に対して前記粘着層とは反対側に、加熱によって接合性を呈するようになる接合層が設けられている、配線部材付被着体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材付被着体の製造方法であって、
前記ステップ(a)において、前記配線部材の延在方向において、前記発熱体が部分的に間隔をあけて複数設けられる、配線部材付被着体の製造方法。
【請求項3】
少なくとも1本の線状伝送部材を含む配線部材と、被着体の固定面との間に、誘導加熱によって発熱する発熱体が設けられ、
前記発熱体は、前記配線部材の周囲を囲んでおり、
前記発熱体に対して前記配線部材側に前記配線部材に粘着する粘着層が設けられ、前記発熱体に対して前記粘着層とは反対側に、加熱によって接合性を呈するようになる接合層が設けられ、
前記発熱体における発熱によって、前記配線部材が前記被着体の固定面に固定されている、配線部材付被着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材付被着体の製造方法及び配線部材付被着体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成形天井の裏面に両面粘着テープが貼着され、ワイヤーハーネスが該両面粘着テープ上に貼着されたワイヤーハーネス固着構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、成形天井に両面粘着テープを貼着する作業が必要となる。このため、ワイヤーハーネスを成形天井に固着する作業が面倒となる。
【0005】
そこで、電線と被着体との間に、電磁波によって発熱する発熱層及び当該発熱層の熱によって溶ける溶融層を設けることが提案されている。この場合、溶融層のうち電線と被着体との固定に必要な部分を、効果的に溶融させることが望まれている。
【0006】
そこで、誘導加熱によって配線部材と被着体とを固定する場合において、固定のための加熱を効果的に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の配線部材付被着体の製造方法は、(a)少なくとも1本の線状伝送部材を含む配線部材と、被着体の固定面との間に、誘導加熱によって発熱する発熱体が設けられた状態とするステップと、(b)磁場発生源を前記配線部材に対して前記被着体側に設けるステップと、(c)前記磁場発生源によって変動する磁場を発生させるステップと、(d)前記変動する磁場による誘導加熱によって前記発熱体が発熱するステップと、(e)前記発熱体における発熱によって、前記配線部材を前記被着体の固定面に固定するステップと、を備える配線部材付被着体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、誘導加熱によって配線部材と被着体とを固定する場合において、固定のための加熱を効果的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態に係る配線部材付被着体を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2はステップ(a)の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3はステップ(b)の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4はステップ(c)(d)の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5はステップ(e)の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は配線部材に対する発熱体の取付例を示す説明図である。
【
図9】
図9は配線部材に対して部分的に発熱体を設けた例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の配線部材付被着体の製造方法は、次の通りである。
【0012】
(1)(a)少なくとも1本の線状伝送部材を含む配線部材と、被着体の固定面との間に、誘導加熱によって発熱する発熱体が設けられた状態とするステップと、(b)磁場発生源を前記配線部材に対して前記被着体側に設けるステップと、(c)前記磁場発生源によって変動する磁場を発生させるステップと、(d)前記変動する磁場による誘導加熱によって前記発熱体が発熱するステップと、(e)前記発熱体における発熱によって、前記配線部材を前記被着体の固定面に固定するステップと、を備える配線部材付被着体の製造方法である。
【0013】
本製造方法によると、配線部材と被着体の固定面との間において、発熱体が効果的に発熱する。これにより、誘導加熱によって配線部材と被着体とを固定する場合において、固定のための加熱が効果的に行われ得る。
【0014】
(2)前記ステップ(a)において、前記発熱体は、前記配線部材の周囲を囲んでいてもよい。この場合、被着体側に予め発熱体が設けられなくてもよい。また、配線部材の外周のうちどの部分が固定面側に向いても、配線部材と被着体との間に発熱体が介在することになるので、配線部材の配置作業が容易となる。
【0015】
(3)前記ステップ(a)において、前記発熱体は、前記固定面を覆ってもよい。この場合、配線部材に予め発熱体が取付けられていなくてもよい。また、配線部材の外周のうちどの部分が固定面側に向いても、配線部材と被着体との間に発熱体が介在することになるので、配線部材の配置作業が容易となる。
【0016】
(4)前記ステップ(a)において、前記発熱体と前記配線部材との間と、前記発熱体と前記被着体との間の少なくとも一方に、加熱によって接合性を呈するようになる接合層が介在してもよい。この場合、加熱によって接合層が接合性を呈して、配線部材が被着体に固定されるようになる。
【0017】
(5)前記ステップ(a)において、前記配線部材の延在方向において、前記発熱体が部分的に間隔をあけて複数設けられてもよい。この場合、変動する磁場を利用した固定作業が、前記配線部材の延在方向において全体的ではなく間隔をあけた複数箇所でなされればよい。このため、配線部材が被着体に対して容易に固定される。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材付被着体の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線部材付被着体の製造方法について説明する。
図1は実施形態に係る配線部材付被着体の製造方法によって製造された配線部材付被着体10を示す概略斜視図である。
【0020】
配線部材付被着体10は、配線部材20と被着体40とを備える。配線部材20は被着体40に固定されている。
【0021】
配線部材20は、少なくとも1本の線状伝送部材22(
図1において一部の線状伝送部材が図示される)を備える。線状伝送部材22は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。例えば、線状伝送部材22は、芯線22aと芯線の周囲の被覆22bとを有する一般電線であってもよいし、裸導線、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。
【0022】
電気を伝送する線状伝送部材としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0023】
また、線状伝送部材は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0024】
ここでは、配線部材20は、複数の線状伝送部材22の束である例が説明される。また、ここでは、線状伝送部材22が電線である例が説明される。配線部材は、線状伝送部材22を1本のみ含んでいてもよい。配線部材は、複数の電線がフラットな形態でまとめられていてもよい。配線部材は、少なくとも1本の線状伝送部材として導体を含むFPC(Flexible printed circuits)、FFC(Flexible frat cable)であってもよい。
【0025】
被着体40は、固定面41を有する。固定面41は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。ここでは、被着体40は、平たい板状部分を有し、当該板状部分の一方主面が固定面41である場合が説明される。被着体40は、ルーフトリム、ドアトリムなどの車両における内装部材、特に、樹脂製のパネル状の部材であることが想定される。被着体40の材料は、磁束が通過可能な材料であれば特に限定されないが、鉄等を避けて、なるべく磁束を吸収しない材料によって形成されていることが好ましい。
【0026】
配線部材20が被着体40に固定されることで、配線部材付被着体10が製造される。本例では、配線部材20と被着体40との間に発熱体31が介在している。発熱体31は、誘導加熱によって発熱する部分である。例えば、発熱体31は、導体であり、例えば、金属(アルミニウム、銅、鉄、又はこれらの合金)など、誘導加熱によって加熱されやすい材料であるとよい。発熱体31は、誘導加熱によって後述する接合層が接合性を呈する温度に加熱可能な程度に広がった形状であることが好ましい。発熱体31は、金属箔であってもよい。特に、線状伝送部材22が電線である場合を想定すると、発熱体31が芯線を構成する素線の直径よりも大きく広がる部材であると、芯線における発熱が抑制されつつ、発熱体31が効果的に発熱し得る。
【0027】
発熱体31と配線部材20との間に配線部材側層32が介在している。発熱体31と被着体40との間に被着体側層33が介在している。配線部材側層32及び被着体側層33の少なくとも一方は、加熱によって接合性を呈するようになる接合層であってもよい。加熱によって接合性を呈するようになる接合層の例としては、熱可塑性樹脂であることが想定される。この場合、加熱によって接合層が軟化或は溶けて接合層と接する部分に接合されることが想定される。加熱によって接合性を呈するようになる接合層は、熱硬化性樹脂であってもよい。この場合、発熱体31に接した状態に保たれる程度の粘度を有する接合層が、他の部分に接触した状態で加熱によって硬化して接合層と接する部分に接合されることが想定される。
【0028】
ここでは、発熱体31の外周側の被着体側層33が接合層である例が示される。配線部材側層32及び被着体側層33の両方が接合層であってもよい。
【0029】
配線部材側層32及び被着体側層33の一方は、粘着層であってもよい。粘着層は、対象部材に押付けられることによって粘着する部分である。ここでは、発熱体31の内周側の配線部材側層32が粘着層である例が示される。
【0030】
図1に示す例では、発熱体31、配線部材側層32及び被着体側層33は、配線部材20の周囲を囲むように設けられている。発熱体31は、粘着層である配線部材側層32によって配線部材20の外側部分に粘着されている。発熱体31と被着体との間において、発熱体31は、接合層である被着体側層33を介して被着体40に接合されている。これにより、配線部材20は、被着体40に固定された状態となっている。以下、配線部材付被着体10の製造方法が説明される。
【0031】
配線部材付被着体10の製造方法は、(a)少なくとも1本の線状伝送部材22を含む配線部材20と、被着体40の固定面41との間に、誘導加熱によって発熱する発熱体31が設けられた状態とするステップと、(b)磁場発生源52を配線部材20に対して被着体40側に設けるステップと、(c)前記磁場発生源52によって変動する磁場(交番磁界)を発生させるステップと、(d)前記変動する磁場による誘導加熱によって前記発熱体31が発熱するステップと、(d)前記発熱体31における発熱によって、前記配線部材20を前記被着体40の固定面41に固定するステップと、を備える。
【0032】
図2はステップ(a)の一例を示す説明図である。ここでは、ステップ(a)において、配線部材20の周囲に上記発熱体31、配線部材側層32及び被着体側層33が設けられたものが準備される。この配線部材20が被着体40の固定面41上に配置される。
【0033】
配線部材20の周囲を囲むように発熱体31が設けられていることから、被着体40には発熱体を設けておく必要は無い。また、配線部材20の周囲を囲むように発熱体31が設けられていることから、配線部材20の外周部のどの位置が被着体40に接触していてもよい。
【0034】
このステップ(a)において、発熱体31と配線部材20との間には、粘着層である配線部材側層32が存在している。この粘着層である配線部材側層32によって、発熱体31による加熱前において、発熱体31が配線部材20に固定された状態に保たれる。発熱体31及び粘着層である配線部材側層32は、配線部材20に巻かれた状態であるため、発熱体31は、より確実に配線部材20に対して固定された状態に保たれる。発熱体31と配線部材20との間の配線部材側層32は接合層であってもよい。
【0035】
ステップ(a)において、発熱体31と被着体40との間には、接合層である被着体側層33が存在している。接合層である被着体側層33は、配線部材20の周囲を囲むように設けられている。換言すれば、配線部材20の周囲を囲むように設けられた発熱体31の外側面の全体に、接合層である被着体側層33が設けられる。配線部材20の外周り全体に被着体側層33が存在していることから、配線部材20の外周部のどの位置が被着体40に接触していてもよい。被着体側層33は粘着層であってもよい。
【0036】
なお、配線部材側層32、発熱体31、被着体側層33は、配線部材20の外周部の一部にのみ存在していてもよい。
【0037】
配線部材20の周囲に発熱体31が巻かれていることから、配線部材20が被着体40の固定面41に置かれると、配線部材20と固定面41との間に発熱体31が設けられた状態となる。
【0038】
また、発熱体31の外周に接合層である被着体側層33が設けられていることから、配線部材20が被着体40の固定面41に置かれると、発熱体31と被着体40との間に接合層である被着体側層33が介在することになる。
【0039】
図3はステップ(b)の一例を示す説明図である。ステップ(b)において、磁場発生源52が配線部材20に対して被着体40側に設けられる。
【0040】
すなわち、誘導加熱装置50は、磁場発生源52と、磁場発生源52を収容する本体部54と、磁場発生源52に交流電流を流すための交流電流源56とを備える。磁場発生源52はコイルである。本体部54には、相手側部材に近づけられる近接面55が設けられている。誘導加熱装置50において、磁場発生源52に交流電流が流れると、磁場発生源52の周りに磁力線が生じる。近接面55はこの磁力線が多く通過する面である。交流電流源56は、特に限定されるものではなく、電源に応じて構成されていればよい。例えば、誘導加熱装置50が商用電源を利用する場合、交流電流源56は、商用電源の電圧を下げる変圧器、交流から直流に整流する整流器、直流から高周波を発生させる高周波発生器などで構成されることが考えられる。交流の周波数、電圧等は、発熱体31の材質、形状、大きさ等によって適宜設定される。
【0041】
誘導加熱装置50の近接面55が、配線部材20の反対側から被着体40に近づけられる。つまり、近接面55は、被着体40のうち固定面41とは反対側の面に対向するように配置される。近接面55は被着体40に押付けられてもよいし、被着体40から離れていてもよい。これにより、磁場発生源52が配線部材20に対して被着体40側に配置される。
【0042】
図4はステップ(c)(d)の一例を示す説明図である。ステップ(c)では磁場発生源52によって変動する磁場が発生される。すなわち、コイルである磁場発生源52に交流電流が流れると、磁場発生源52の周りに交流電流の向き、大きさによって変動する磁力線(磁場)が生じる。ステップ(d)では、変動する磁力線(磁場)による誘導加熱によって発熱体31が発熱する。すなわち、上記磁力線は、被着体40を経由して発熱体31を貫通する。磁力線が発熱体31を通過すると、発熱体31に渦電流が流れる。これにより、発熱体31に、渦電流損に応じたジュール熱が生じる。これによって発熱体31が発熱する。この際、磁場発生源52は、配線部材20に対して被着体40側に設けられている。このため、発熱体31を通過する磁力線の本数は、被着体40に近い程多くなる。このため、発熱体31は、被着体40に近い程高い温度に発熱する。これにより、被着体側層33のうち被着体40に近い部分(矢符A参照)が、被着体40から離れた部分と比較して高い温度に加熱される。
【0043】
図5はステップ(e)の一例を示す説明図である。ステップ(e)では、発熱体31における発熱によって、配線部材20が前記被着体40の固定面41に固定される。すなわち、発熱体31の発熱によって被着体側層33、特に、被着体40に近い部分が加熱される。これによって、被着体側層33が接合性を呈するようになり、被着体40に接合される。例えば、被着体側層33が熱可塑性樹脂である場合、被着体側層33のうち被着体40に接する部分が中心に軟化或は溶けて被着体40に接合される。
【0044】
この後、誘導加熱装置50による加熱を終了すると、軟化或は溶けた被着体側層33が冷却されて、上記接合状態が保たれる。
【0045】
以上のように構成された配線部材付被着体10の製造方法によると、磁場発生源52が配線部材20に対して被着体40側に設けられた状態で、磁場発生源52によって変動する磁場が発生される。このため、配線部材20と被着体40の固定面41との間において、発熱体31が効果的に発熱する。これにより、誘導加熱によって配線部材20と被着体40とを固定する場合において、固定のための加熱が効果的に行われ得る。
【0046】
すなわち、誘導加熱によって配線部材20を被着体40に対して固定するために、磁場発生源を配置する位置としては、配線部材20に対して被着体40側の位置と、配線部材20に対して被着体40とは反対側の位置であることが想定される。仮に、磁場発生源52が配線部材20に対して被着体40とは反対側に設けられた状態で、磁場発生源52によって変動する磁場が発生されるとする。この場合、発熱体31のうち被着体40とは反対側の部分が最も加熱されると想定される。そうすると、被着体側層33のうち被着体40に近い部分を溶融或は軟化させるのに長時間を要することが想定される。また、配線部材20,配線部材側層32、被着体側層33のうち被着体40とは反対側の部分が、必要以上に加熱され、場合によっては、溶融等によって変形してしまうことが想定される。
【0047】
これに対して本実施形態では、被着体側層33のうち被着体40に近い部分がなるべく短時間で溶融或は軟化され、迅速に固定がなされる。また、配線部材20,配線部材側層32、被着体側層33のうち被着体40とは反対側の部分が、必要以上に加熱され過ぎてしまうことが抑制される。つまり、配線部材20,配線部材側層32、被着体側層33を観察すると、主として配線部材20と被着体40との間の部分において、最も溶融或は軟化した痕跡が残り、この部分と比較すると、被着体40とは反対側の部分では、溶融或は軟化した痕跡は少ない。
【0048】
また、発熱体31は、配線部材20の周囲を囲んでいるので、被着体40として発熱体を設けた特殊な構成のものを準備しておかなくてもよい。また、配線部材20を被着体40の固定面41上に載置する際に、配線部材20のどの部分が固定面41側に向いても、配線部材20と被着体40との間に発熱体31が介在することになるので、配線部材20の配置作業が容易となる。
【0049】
また、発熱体31と配線部材20との間と、発熱体31と被着体40との間の少なくとも一方に、加熱によって接合性を呈するようになる接合層が介在する。ここでは、発熱体31と被着体40との間に、接合層である被着体側層33が介在する。このため、発熱体31の加熱によって、接合層である被着体側層33が接合性を呈して、配線部材20が被着体40に固定されるようになる。
【0050】
本実施形態では、発熱体31は、粘着層である配線部材側層32によって配線部材20に固定されている。そして、加熱によって、接合層である被着体側層33によって、配線部材20が被着体40に固定されるようになる。
【0051】
配線部材20に対する発熱体31の取付構造は特に限定されない。例えば、
図6に示すように、帯状の発熱体31の一方面に粘着層32aが形成されると共に、他方面に接合層33bが形成された積層テープ30Tが準備される。この積層テープ30Tが配線部材20に巻付けられると、粘着層32aを介して発熱体31が配線部材20に固定される。この場合、粘着層32aは、発熱体31の内周側で配線部材側層32となる。また、接合層33bは、発熱体31の外周側で被着体側層33となる。
【0052】
配線部材20が複数の線状伝送部材22を含む場合、積層テープ30Tは、複数の線状伝送部材22を束ねた状態に保つ結束部材としても機能し得る。
【0053】
配線部材20に対する積層テープ30Tの巻付構成は特に限定されない。積層テープ30Tは、配線部材20に対して螺旋状に巻回されていてもよい。積層テープ30Tが配線部材20に巻付けられた状態で、一端部が他端部の外周に被さっていてもよい。積層テープ30Tが配線部材20に巻付けられた状態で、一端部と他端部の粘着層32a同士が粘着されていてもよい。
【0054】
接合層としての被着体側層33が配線部材20側に設けられていることは必須ではない。例えば、
図7に示すように、上記実施形態において、被着体側層33が省略されてもよい。この場合、被着体40の固定面41上に、当該固定面41を覆うように接合層133が設けられてもよい。被着体40の固定面41自体が加熱によって軟化或は溶融して接合性を呈するものである場合、別途接合層133を設けることは省略されてもよい。
【0055】
粘着層32aとしての配線部材側層32が配線部材20に設けられていることは必須ではない。発熱体31が配線部材20の被覆に直接溶着、埋込み等された構成となっていてもよい。また、発熱体31が別途の粘着テープ等によって配線部材20の外周に固定された状態に保たれていてもよい。
【0056】
発熱体31が配線部材20の周囲を覆っていることは必須ではない。例えば、
図8に示すように、ステップ(a)において、発熱体231は、固定面41を覆っていてもよい。例えば、金属箔又は金属板である発熱体231が被着体40の固定面41に接合されていてもよい。
【0057】
この場合、発熱体31と配線部材20との間に接合層233が設けられるとよい。ここでは、配線部材20の周囲を囲うように接合層233が形成される。接合層233は、配線部材20の周囲に巻付けられる。接合層233の巻付状態は粘着層等によって保持されてもよい。
【0058】
本例でも、配線部材20に対して被着体40側に磁場発生源52を設けた状態で、変動する磁場を発生させると、配線部材20と被着体40との間で発熱体231が効果的に加熱される。これにより、接合層233が効果的に軟化或は溶融して、配線部材20と発熱体231とが接合された状態になる。これにより、配線部材20が被着体40に固定される。
【0059】
本例では、配線部材20に予め発熱体が取付けられていなくてもよい。また、配線部材20の外周のうちどの部分が固定面41側に向いても、配線部材20と被着体40との間に発熱体231が介在することになるので、配線部材20の配置作業が容易となる。
【0060】
配線部材20の表面自体が加熱によって接合性を呈する材料である場合、例えば、熱可塑性樹脂である場合には、別途接合層233を設けなくてもよい。
【0061】
配線部材20を被着体40に固定する箇所は、配線部材20の延在方向において、全体であってもよいし、部分的であってもよい。
【0062】
例えば、
図9に示すように、ステップ(a)において、配線部材20の延在方向において、発熱体331が部分的に設けられると共に、間隔をあけて複数設けられてもよい。上記実施形態と同様に、発熱体331の外周側又は被着体40の表面上に接合層が設けられていてもよい。この場合、発熱体331は配線部材20に対して部分的に設けられればよいので、配線部材20に対する発熱体331の取付作業が容易になる。また、変動する磁場を利用した固定作業は、配線部材20の延在方向において全体的ではなく間隔をあけた複数箇所でなされればよい。このため、配線部材20が被着体40に対して容易に固定される。
【0063】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 配線部材付被着体
20 配線部材
22 線状伝送部材
22a 芯線
22b 被覆
30T 積層テープ
31 発熱体
32 配線部材側層
32a 粘着層
33 被着体側層
33b 接合層
40 被着体
41 固定面
50 誘導加熱装置
52 磁場発生源
54 本体部
55 近接面
56 交流電流源
133 接合層
231 発熱体
233 接合層
331 発熱体