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特許7290128シュープレスベルトおよびシュープレスベルトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】シュープレスベルトおよびシュープレスベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/02 20060101AFI20230606BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
C08G18/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033893
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021134466
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000180597
【氏名又は名称】イチカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168572
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 仁志
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】高森 裕也
(72)【発明者】
【氏名】森永 麻奈実
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0352904(US,A1)
【文献】登録実用新案第3201639(JP,U)
【文献】国際公開第2016/104485(WO,A1)
【文献】特開2015-143316(JP,A)
【文献】特開2006-173266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 3/02
C08G 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機に使用されるシュープレスベルトであって、
少なくとも1層の樹脂層を有し、
前記樹脂層は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させたポリウレタン樹脂を含み、
前記硬化剤が、ポリオール化合物からなり、
当該ポリオール化合物は、下記式(1):
【化1】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化2】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールを含む、シュープレスベルト。
【請求項2】
式(1)中のAに含まれる炭素数と、Bに含まれる炭素数との差の絶対値が、1以上8以下である、請求項1に記載のシュープレスベルト。
【請求項3】
AにおいてRの炭素数が2~11であり、かつBにおいてRの炭素数が3~19である、請求項1または2に記載のシュープレスベルト。
【請求項4】
AにおいてRがn-プロピレン基であり、かつBにおいてRがn-ブチレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ブチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基またはn-デシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ペンチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-へキシレン基であり、かつBにおいてRがn-ウンデシレン基またはn-ドデシレン基である、あるいは、
AにおいてRがn-ウンデシレン基であり、かつBにおいてRがn-ドデシレン基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
【請求項5】
前記樹脂層として、前記シュープレスベルトの外周面を構成し、前記ポリウレタン樹脂を含む層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
【請求項6】
前記樹脂層として、前記シュープレスベルトの内周面を構成し、前記ポリウレタン樹脂を含む層を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
【請求項7】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させて樹脂層を形成する工程を有し、
前記硬化剤が、ポリオール化合物からなり、
当該ポリオール化合物は、下記式(1):
【化3】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化4】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールを含む、抄紙機に使用されるシュープレスベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュープレスベルトおよびシュープレスベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、一般的にワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートを備える。これらワイヤーパート、プレスパート、及びドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。
【0003】
湿紙は、ワイヤーパート、プレスパート、及びドライヤーパートそれぞれに備えられた抄紙用具に次々と受け渡されながら搬送されると共に水分が除去され、最終的にはドライヤーパートで乾燥される。これら各々のパートでは、湿紙を脱水し(ワイヤーパート)、搾水し(プレスパート)、そして乾燥する(ドライヤーパート)といった各機能に対応した抄紙用具が使用されている。
【0004】
プレスパートでは、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された1つ以上のプレス装置を具備することが一般的である。各プレス装置には、無端状のフェルトが配置され、あるいは有端状のフェルトを抄紙機上で連結し無端状に形成したフェルトが配置される。そして各プレス装置は、対向する一対のロールからなるロールプレス機構、あるいはロールに対向する凹型形状のシューとの間に無端状のシュープレスベルトを介在させたシュープレス機構を有している。湿紙を載置したフェルトは、湿紙の搬送方向に沿って移動しつつ、ロールプレス機構あるいはシュープレス機構を通過し、加圧されることにより、フェルトにその水分を連続的に吸収させるか、あるいはフェルト内において水分を通過させて外部へ排出させることで、湿紙から水分を搾水している。
【0005】
シュープレスベルトは、一般に、樹脂に補強基材が埋設され、この樹脂がフェルトと接触する外周層及びシューと接触する内周層を構成している。そして、シュープレスベルトは、加圧されたロールとシューとの間を繰返し走行するため、シュープレスベルトの樹脂には、優れた耐久性が要求される。
【0006】
特許文献1には、排水溝を有するシュープレスベルトにおいて排水溝を構成するランドの潰れや欠損さらには亀裂の発生・抑制を防止することを目的として、ポリウレタンに補強基材が埋設され、前記ポリウレタンと前記補強基材とが一体化されて構成されたシュープレス用ベルトであって、前記シュープレス用ベルトの少なくとも外周面を構成するポリウレタンは、ウレタンプレポリマーを硬化剤で硬化させることにより得られた熱硬化性ポリウレタンであり、前記ウレタンプレポリマーは、所定の直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールを含有するポリオール成分と芳香族ジイソシアネートとの反応により得られた第1ウレタンプレポリマーを含むシュープレス用ベルトが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-199813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーの構成成分として有するポリウレタン層を備えたシュープレスベルトは、強度に優れている。一方で、本発明者らは、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーの構成成分として使用した際に、得られるシュープレスベルトの部位間で強度にばらつきが生じていることを見出した。シュープレスベルトの部位間で強度にばらつきが存在すると、強度の低い部位を起点としてシュープレスベルトが破損・劣化する場合があり、結果としてシュープレスベルトの耐久性を高めることが困難となる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、部位間での強度のばらつきが抑制され、かつ強度に優れたシュープレスベルトおよび当該シュープレスベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、シュープレスベルトにおいて、特定のポリカーボネートジオールを硬化剤に配合することにより、シュープレスベルトを構成するポリウレタン層の強度を高めつつ、強度のばらつきを抑制できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 抄紙機に使用されるシュープレスベルトであって、
少なくとも1層の樹脂層を有し、
前記樹脂層は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させたポリウレタン樹脂を含み、
前記硬化剤が、下記式(1):
【化1】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化2】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールを含む、シュープレスベルト。
[2] 式(1)中のAに含まれる炭素数と、Bに含まれる炭素数との差の絶対値が、1以上8以下である、[1]に記載のシュープレスベルト。
[3] AにおいてRの炭素数が2~11であり、かつBにおいてRの炭素数が3~19である、[1]または[2]に記載のシュープレスベルト。
[4] AにおいてRがn-プロピレン基であり、かつBにおいてRがn-ブチレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ブチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基またはn-デシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ペンチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-へキシレン基であり、かつBにおいてRがn-ウンデシレン基またはn-ドデシレン基である、あるいは、
AにおいてRがn-ウンデシレン基であり、かつBにおいてRがn-ドデシレン基である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
[5] 前記樹脂層として、前記シュープレスベルトの外周面を構成し、前記ポリウレタン樹脂を含む層を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
[6] 前記樹脂層として、前記シュープレスベルトの内周面を構成し、前記ポリウレタン樹脂を含む層を有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のシュープレスベルト。
[7] イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させて樹脂層を形成する工程を有し、
前記硬化剤が、下記式(1):
【化3】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化4】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールを含む、抄紙機に使用されるシュープレスベルトの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成により、部位間での強度のばらつきが抑制され、かつ強度に優れたシュープレスベルトおよび当該シュープレスベルトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るシュープレスベルトを示す機械横断方向断面図である。
図2図2は、本発明の他の実施形態に係るシュープレスベルトを示す機械横断方向断面図である。
図3図3は、本発明に係るシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態を説明するための概略図である。
図4図4は、本発明に係るシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態を説明するための概略図である。
図5図5は、本発明に係るシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシュープレスベルトおよびシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<1.シュープレスベルト>
まず、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトについて説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの一例を示す機械横断方向断面図である。なお、図中、各部材は、説明の容易化のため適宜大きさが強調されており、実際の各部材の比率及び大きさが示されているものではない。ここで、上記機械横断方向(Cross Machine Direction)については、「CMD」ともいい、また、機械方向(Machine Direction)については、「MD」ともいう。
【0016】
図1に示すシュープレスベルト1は、抄紙機のプレスパートにおいて、より具体的にはシュープレス機構において、フェルトと協働して湿紙を搬送し、湿紙から水分を搾水するために用いられる。シュープレスベルト1は、無端状の帯状体をなしている。即ち、シュープレスベルト1は環状のベルトである。そして、シュープレスベルト1は、通常、その周方向が抄紙機の機械方向(MD)に沿うようにして配置される。
【0017】
図1に示すシュープレスベルト1は、補強繊維基材層10と、補強繊維基材層10の外表面側にある一方の主面に設けられた第1の樹脂層20と、補強繊維基材層10の内表面側にある他方の主面に設けられた第2の樹脂層30を有し、これらの層が積層されて形成されている。
【0018】
補強繊維基材層10は、補強繊維基材11と、樹脂13とによって構成されている。樹脂13は、補強繊維基材11中の繊維の間隔を埋めるように補強繊維基材層10中に存在している。即ち、樹脂13の一部は、補強繊維基材11に含浸しており、一方で、補強繊維基材11は、樹脂13中に埋設されている。
【0019】
補強繊維基材11としては、特に限定されないが、例えば、経糸と緯糸とを織機等により製織した織物が一般的に使用される。また、製織せずに、経糸列と緯糸列の重ね合わせによる格子状素材を使用することもできる。あるいは、織物および格子状素材等を2種以上組み合わせて用いてもよい。
補強繊維基材11を構成する繊維の繊度は、特に限定されないが、例えば300~10000dtex、好ましくは、500~6000dtexとすることができる。
また、補強繊維基材11を構成する繊維の繊度は、その繊維を用いる部位によって異なっていてもよい。例えば、補強繊維基材11の経糸と緯糸とでそれらの繊度が異なっていてもよい。
【0020】
補強繊維基材11の素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、羊毛、綿、金属等を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、樹脂13については後述する。
【0021】
第1の樹脂層20は、補強繊維基材層10の外表面側にある一方の主面に設けられた樹脂層であり、樹脂23により構成されている。第1の樹脂層20は、外周面21を構成し、シュープレスベルト1の使用時においては、外周面21においてフェルトを介して湿紙が担持・搬送される。
【0022】
第2の樹脂層30は、補強繊維基材層10の内表面側にある他方の主面に設けられた樹脂層であり、樹脂33により構成されている。第2の樹脂層30は、内周面31を構成し、シュープレスベルト1の使用時においては、内周面31がシュープレス機構(図示せず)のシューと接するように配置される。
【0023】
ここで、シュープレスベルト1の補強繊維基材層10中の樹脂13、第1の樹脂層20の樹脂23および第2の樹脂層30を構成する樹脂33について説明する。
また、本実施形態において、シュープレスベルト1の補強繊維基材層10、第1の樹脂層20および第2の樹脂層30のうち少なくとも1層の樹脂層は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させたポリウレタンを含み、
前記硬化剤が、下記式(1):
【化5】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化6】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールYを含む。
【0024】
なお、樹脂13、樹脂23および樹脂33の構成は、同様とすることができるため、以下第1の樹脂層20の樹脂23について代表的に詳細に説明する。また、以下の説明においては、樹脂23が上記ポリカーボネートジオールYを硬化剤の構成成分として含むポリウレタン樹脂を含む場合を中心に説明する。
【0025】
樹脂23を構成するポリウレタン樹脂は、上記ポリカーボネートジオールYを硬化剤の構成成分として含む。これにより、樹脂23により構成される第1の樹脂層20において強度のばらつきが抑制されるとともに、第1の樹脂層20の強度が向上し、結果としてシュープレスベルト1の部位間の強度のばらつきが抑制されるとともに、シュープレスベルトの強度が向上する。
【0026】
詳しく説明すると、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーの構成成分として有するポリウレタン層は、その強度に優れている。一方で、本発明者らは、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーの構成成分として使用した際に、得られるシュープレスベルトの部位間で強度にばらつきが生じていることを見出した。シュープレスベルトの部位間で強度にばらつきが存在すると、強度の低い部位を起点としてシュープレスベルトが破損・劣化する場合があり、結果としてシュープレスベルトの耐久性を高めることが困難となる。
【0027】
そして、本発明者らは、その原因を解明すべく、鋭意検討した結果、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールを用いてウレタンプレポリマーを調製するとウレタンプレポリマーおよび、硬化剤と当該ウレタンプレポリマーを混合したウレタン組成物の粘度が大きく上昇し、シュープレスベルト製造時においてウレタン組成物を均一に吐出・塗工することができなくなることを見出した。この場合、均一なポリウレタン層を形成することが困難となる。
【0028】
一方で、本発明者らは、上記ポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いた場合、得られるウレタン組成物の粘度の上昇が抑制され、均一なポリウレタンの樹脂層を形成可能なことを見出した。そして、このようにしてポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて樹脂層を形成した場合、シュープレスベルトの部位間の強度のばらつきが抑制されるのみならず、シュープレスベルト全体として強度が向上することも見出された。
【0029】
詳しく説明すると、上記ポリカーボネートジオールYは、2種以上の異なる直鎖アルキレン基を単量体として含む共重合体である。異なる直鎖アルキレン基が高分子の主鎖中に存在すると、単一の直鎖アルキレン基で構成されたポリカーボネートジオールと比較して、ポリカーボネートジオール自体の結晶性が低下している。すなわち、ポリカーボネートジオールの分子同士の親和性が比較的低くなる。このため、硬化剤とウレタンプレポリマーとを混合してウレタン組成物を調製した際にも、ウレタン組成物の粘度の上昇が抑制される。
【0030】
さらに、本発明においては、硬化剤に上記ポリカーボネートジオールYが含まれている。ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーの構成成分として用いた場合、ウレタンプレポリマーの合成時において反応液の粘度が上昇する。この場合、ウレタンプレポリマー自体が不均一となるとともに、ウレタンプレポリマーの粘度が上昇してしまう。この結果、ウレタンプレポリマーと硬化剤を混合しても均一に混合できず、得られるウレタン組成物の不均一性が大きくなる。一方で、本発明においては、硬化剤に上記ポリカーボネートジオールYを含ませることにより、ウレタンプレポリマーにポリカーボネートジオールを含ませる必要がなくなり、ウレタンプレポリマーの組成が均一となるとともにウレタンプレポリマーの粘度の上昇が抑制される。さらに、粘度の上昇が抑制されたウレタンプレポリマーと硬化剤とを混合することにより、ウレタンプレポリマーと硬化剤とが比較的均一に混合され、粘度の上昇が抑制された、比較的均一なウレタン組成物が得られる。これにより、本実施形態においては、ウレタン組成物を用いて形成されたウレタン樹脂層としての第1の樹脂層20の部位間の強度のばらつきが抑制される。
【0031】
さらに、硬化剤に上記ポリカーボネートジオールYが含まれることにより、形成されたウレタン樹脂層としての第1の樹脂層20の強度が向上する。
【0032】
また、特に、第1の樹脂層20は、シュープレスベルト1の外周面21を構成している。シュープレスベルト1において、外周面21は、シュープレスベルト1の使用時におけるフェルト等との接触・摩擦、これに伴うシュープレスベルト1の摩耗や、シュープレスベルト1の屈曲疲労によってクラック等の損傷が生じやすい部位である。したがって、シュープレスベルト1の外周面21を構成する第1の樹脂層20がポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含むことにより、シュープレスベルト1の耐久性が向上する。
【0033】
上記式(1)中、A、Bは、それぞれ異なって、式(2)で表される基である。式(2)中、Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基およびn-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ウンデシレン基、n-ドデシレン基、n-トリデシレン基、n-テトラデシレン基、n-ペンタデシレン基、n-ヘキサデシレン基、n-ヘプタデシレン基、n-オクタデシレン基、n-ノナデシレン基およびn-イコシレン基等が挙げられる。
【0034】
上述した中でも、AにおいてRは、好ましくは炭素数2以上18以下の直鎖アルキレン基、より好ましくは炭素数3以上11以下の直鎖アルキレン基である。同様に、BにおいてRは、好ましくは炭素数3以上19以下の直鎖アルキレン基、より好ましくは炭素数4以上12以下の直鎖アルキレン基である。一般にはRが直鎖アルキレン基である場合、ウレタン組成物の粘度が上昇しやすいが、本実施形態においては、A、BにおいてRが異なること、また硬化剤としてポリカーボネートジオールYを用いることから、ウレタン組成物の粘度の上昇も抑制されている。一方で、Rは直鎖アルキレン基であるため、得られる第1の樹脂層20の強度がより一層向上する。
【0035】
また、A、Bが異なることから、当然、A、BにおいてRは、異なる。ここで、Aに含まれる炭素数と、Bに含まれる炭素数との差の絶対値は、例えば、1以上8以下、好ましくは1以上6以下である。
【0036】
また、好ましくはAにおいてRの炭素数が2~18であり、かつBにおいてRの炭素数が3~19であり、より好ましくはAにおいてRの炭素数が2~11であり、かつBにおいてRの炭素数が3~19、さらに好ましくはAにおいてRの炭素数が2~11であり、かつBにおいてRの炭素数が4~12、特に好ましくはAにおいてRの炭素数が3~11であり、かつBにおいてRの炭素数が4~12である。
【0037】
特に、好ましいA、Bの組み合わせを以下に挙げる。
AにおいてRがn-プロピレン基であり、かつBにおいてRがn-ブチレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ブチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基またはn-デシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-ペンチレン基であり、かつBにおいてRがn-へキシレン基である、あるいは
AにおいてRがn-へキシレン基であり、かつBにおいてRがn-ウンデシレン基またはn-ドデシレン基である、あるいは、
AにおいてRがn-ウンデシレン基であり、かつBにおいてRがn-ドデシレン基である。
【0038】
m、nは、互いに独立して、1以上46以下の整数である。m、nは、好ましくは、互いに独立して1以上40以下の整数、より好ましくは1以上30以下の整数である。
また、mとnの比率は、A、Bの基の比率を表す。m/nは、特に限定されないが、例えば、0.01以上30以下、好ましくは0.02以上19以下、より好ましくは0.1以上10以下である。
【0039】
また、式(1)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基である。なお、通常、Rは、製造方法に起因して、直鎖アルキレン基、より具体的にはAまたはBに対応するRである。直鎖アルキレン基としては、上述したA、Bと同様のアルキレン基が挙げられる。
分岐アルキレン基としては、特に限定されないが、例えば1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、1,2,3-トリメチルプロピレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、1,2,2-トリメチルプロピレン基、1,1,3-トリメチルプロピレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、1,1-ジメチルブチレン基、1,2-ジメチルブチレン基、1,3-ジメチルブチレン基、1,4-ジメチルブチレン基、2,2-ジメチルブチレン基、2,3-ジメチルブチレン基、1,2,3-トリメチルブチレン基、1,2,4-トリメチルブチレン基、1,1,2-トリメチルブチレン基、1,2,2-トリメチルブチレン基、1,3,3-トリメチルブチレン基、1-メチルペンチレン基、2-メチルペンチレン基、3-メチルペンチレン基、2-ブチル-2-エチルペンチレン基、1-メチルへキシレン基、2-メチルへキシレン基、3-メチルへキシレン基、1-メチルへプチレン基、2-メチルへプチレン基、3-メチルへプチレン基、4-メチルへプチレン基、1-メチルオクチレン基、2-メチルオクチレン基、3-メチルオクチレン基、4-メチルオクチレン基、1-メチルノニレン基、2-メチルノニレン基、3-メチルノニレン基、4-メチルノニレン基、5-メチルノニレン基、1-メチルデシレン基、2-メチルデシレン基、3-メチルデシレン基、4-メチルデシレン基、5-メチルデシレン基等が挙げられる。
【0040】
環状のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環またはシクロオクタン環等の脂環式基を有する基であることができる。この場合、Rは、脂環式基から直接または脂環式基に置換された炭素数1~3のアルキレン基を介して隣接する酸素原子と結合している。このような環状アルキレン基としては、例えば1,4-シクロヘキサンジイルビスメチレン基が挙げられる。
【0041】
また、式(1)で表されるポリカーボネートジオールYにおいて、A、B以外の単位が含まれていてもよい。このような単位としては、例えば分岐または環状アルキレングリコールと炭酸とのエステルに基づく単位が挙げられる。このような単位に含まれるアルキレン基としては、上述したRにおいて挙げた炭素数1以上20以下の分岐または環状のアルキレン基が挙げられる。
【0042】
また、式(1)で表されるポリカーボネートジオールYにおいて、A、Bを含む単位の配列は特に限定されるものではない。すなわち、ポリカーボネートジオールYは、ランダム共重合体であってもよいし、交互共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0043】
上記ポリカーボネートジオールYの数平均分子量は、特に限定されないが、例えば250以上4000以下、好ましくは500以上3000以下であることができる。なお、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、例えば水酸基価を測定することにより算出することができる。
【0044】
具体的には、まず、ポリカーボネートジオールYの水酸基価を測定する。ポリカーボネートジオールYの水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に準拠して測定することができる。一方で、ポリカーボネートジオールYの水酸基価(mgKOH/g)は、以下の式Iのように表すこともできる。
(ポリカーボネートジオールYの水酸基価(mgKOH/g))=56110/(ポリカーボネートジオールYの数平均分子量)×(ポリカーボネートジオールYの1分子当たりの平均水酸基数) (I)
【0045】
ここで、ポリカーボネートジオールYの1分子当たりの平均水酸基数は、2.0と推定される。したがって、ポリカーボネートジオールYの数平均分子量は、以下式(II)のように表すことができる。
(ポリカーボネートジオールYの数平均分子量)=112,220/(ポリカーボネートジオールYの水酸基価(mgKOH/g)) (II)
【0046】
上記の式(II)において、水酸基価の測定において得られたポリカーボネートジオールYの水酸基価を代入することによりポリカーボネートジオールYの数平均分子量が求められる。なお、ポリカーボネートジオールY以外のポリカーボネートジオールについても同様に求めることができる。
【0047】
上記ポリカーボネートジオールYの配合量は、特に限定されないが、ポリカーボネートジオールYが使用される部位の全樹脂重量に対し、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下である。これにより、シュープレスベルト1の強度をより一層向上させることができるとともに、シュープレスベルト1の部位間における強度のばらつきがより一層抑制される。なお、上記配合量は、樹脂23における後述する無機充填剤を除く樹脂の量に対する割合である。
【0048】
以下、上述しポリカーボネートジオールYを硬化剤として形成された樹脂23の構成成分について説明する。上述したように、樹脂23は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させたポリウレタンを含み、硬化剤は、ポリカーボネートジオールYを含む。
【0049】
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、通常、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させることにより得られる。
【0050】
この場合において、ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、例えば、芳香族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートから選択される1種以上のポリイソシアネート化合物を用いることができ、好ましくは、2,4-トリレン-ジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレン-ジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、p-フェニレン-ジイソシアネート(PPDI)、ジメチルビフェネレンジイソシアネート(TODI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、4,4-ジベンジルジイソシアネート(DBDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、1,4-ビス-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)及びテトラメチルキシリレン-ジイソシアネート(TMXDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)及びこれらの混合物から選択される化合物を含有するポリイソシアネート化合物とすることができる。
【0051】
得られる樹脂23の部位間のばらつきをより一層抑制するために、特に好ましくは、ポリイソシアネート化合物は、p-フェニレン-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、1,4-ビス-(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、2,4-トリレン-ジイソシアネートおよび2,6-トリレン-ジイソシアネートから選ばれた1種以上を含む。
【0052】
また、ポリオール化合物としては、特に限定されず、例えば、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレンアジペート等のポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等のポリエーテルポリオール、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオール、ポリエーテルカーボーネートジオール、トリメチロールプロパン、ポリブタジエンポリオール、パーフルオロポリエーテルポリオール、シリコンジオール等のシリコンポリオール等の長鎖ポリオール化合物が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ポリメチレンカーボネートジオール、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリプロピレンカーボネートジオール、ポリブチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリヘプタメチレンカーボネートジオール、ポリオクタメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0054】
樹脂23の耐加水分解性を高め、シュープレスベルト1の耐久性をより一層向上させるために、ポリオール化合物は、好ましくはポリエーテルポリオールおよび/または直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールを、より好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコールおよび/またはポリヘキサメチレンカーボネートジオールを含む。
【0055】
活性水素基を有する硬化剤は、上述したように、式(1)で表されるポリカーボネートジオールを含む。しかしながら、硬化剤は、式(1)で表されるポリカーボネートジオール以外の硬化剤を含んでいてもよい。このような硬化剤としては、特に限定されず、ポリオール化合物およびポリアミンからなる群から選択された1種または2種以上の化合物を使用することができる。
【0056】
硬化剤に含まれ得るポリオール化合物としては、上述した長鎖ポリオール化合物に加え、各種脂肪族ポリオール化合物および各種脂環式もしくは芳香族ポリオール化合物を用いることができる。
【0057】
脂肪族ポリオール化合物としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-イコサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等のアルキレングリコール化合物や、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン(TMP)、ペンタエリスリトール、ジヒドロキシメチルプロピオン酸(DHPA)等が挙げられる。
【0058】
脂環式ポリオール化合物としては、特に限定されず、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
芳香族ポリオール化合物としては、特に限定されず、例えば、ハイドロキノンビス-β-ヒドロキシエチルエーテル(HQEE)、ヒドロキシフェニルエーテルレゾルシノール(HER)、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシベンゼン)、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシベンゼン)、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0059】
ポリアミンとしては、特に限定されず、ヒドラジン、エチレンジアミン、4,4’-メチレン-ビス-(2-クロロアニリン)(MOCA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、ジエチルチオトルエンジアミン(DETDA)、トリメチレングリコールジ(p-アミノベンゾエート)(TMAB)、4,4’-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ナフタレン-1,5-ジアミン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、トルエン-2,4-ジアミン、t-ブチルトルエンジアミン、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオエタン)等が挙げられる。
【0060】
また、硬化剤が、式(1)で表される1種以上のポリカーボネートジオールY以外の硬化剤を含む場合、硬化剤中における式(1)で表される1種以上のポリカーボネートジオールYの比率は、例えば10質量%以上100質量%未満、好ましくは50質量%以上95質量%以下である。
【0061】
また、樹脂23に、酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、マイカなどの、無機充填剤を1種又は2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0062】
なお、第2の樹脂層30の樹脂33および補強繊維基材層10の樹脂13のいずれかにおいて、ポリカーボネートジオールYを用いて形成されたポリウレタン樹脂が含まれる場合、第1の樹脂層20は、上述したポリウレタン樹脂を含まなくてもよい。この場合、第1の樹脂層20の樹脂23の材料としては、ポリウレタン樹脂(但し、ポリカーボネートジオールYを構成成分として含まない)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等熱硬化性樹脂、又はポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
第2の樹脂層30を構成する樹脂33としては、上述したような第1の樹脂層20に用いることのできる樹脂材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。第2の樹脂層30を構成する樹脂33は、第1の樹脂層20を構成する樹脂23と、種類及び組成について、同一であっても異なるものであってもよい。特に、第2の樹脂層30を構成する樹脂33としては、第2の樹脂層30の耐久性を向上させる観点、及び樹脂製作効率向上の観点から、第1の樹脂層20の樹脂23と同一とすることが好ましい。
【0064】
また、第2の樹脂層30は、好ましくはポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含む。第2の樹脂層30は、シュープレスベルト1の内周面31を構成している。シュープレスベルト1において、内周面31は、シュープレスベルト1の使用時におけるシューとの摩擦や、シュープレスベルト1の屈曲疲労によってクラック等の損傷が生じやすい部位である。したがって、シュープレスベルト1の内周面21を構成する第2の樹脂層30がポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含むことにより、シュープレスベルト1の耐久性が向上する。
【0065】
補強繊維基材層10を構成する樹脂13としては、上述したような第1の樹脂層20に用いることのできる樹脂材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。補強繊維基材層10を構成する樹脂13は、第1の樹脂層10を構成する樹脂13と、種類及び組成について、同一であっても異なるものであってもよい。特に、補強繊維基材層10を構成する樹脂13としては、樹脂製作効率向上の観点から、第1の樹脂層20の樹脂23と同一とすることもできる。
【0066】
また、補強繊維基材層10は、好ましくはポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含む。これにより、補強繊維基材層10の強度が向上し、シュープレスベルト1の耐久性が向上する。
【0067】
上述したようなシュープレスベルト1の寸法は、特に限定されず、その用途に合わせて適宜設定することができる。
例えば、シュープレスベルト1の巾は、特に限定されないが、700mm~13500mm、好ましくは2500mm~12500mmとすることができる。
また例えば、シュープレスベルト1の長さ(周長)は、特に限定されないが150cm~1500cm、好ましくは、200cm~1100cmとすることができる。
【0068】
また、シュープレスベルト1の厚さは、特に限定されないが、例えば、1.5mm~7.0mm、好ましくは2.0mm~6.0mmとすることができる。
また、シュープレスベルト1は、部位ごとにそれぞれ厚さが異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0069】
以上、本実施形態に係るシュープレスベルト1においては、補強繊維基材層10の樹脂13、第1の樹脂層20の樹脂23、第2の樹脂層30の樹脂33のうち少なくともいずれかが、ポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含む。したがって、シュープレスベルト1は、部位間での強度のばらつきが抑制され、かつ強度に優れている。
【0070】
次に、本実施形態の他の実施形態に係るシュープレスベルトについて説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係るシュープレスベルトを示す機械横断方向断面図である。以下、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については説明を省略する。
【0071】
図2に示すように、シュープレスベルト1Aは、第1の樹脂層20Aの外周面21に複数の排水溝25が形成されている。シュープレスベルト1Aが排水溝25を有することにより、シュープレスベルト1の使用時において、担持した湿紙からより多くの水分を脱水することができる。
【0072】
排水溝25の形態としては特に限定されないが、通常一般的に、シュープレスベルト1の機械方向に平行で連続的な複数の溝が形成される。例えば溝巾が、0.5mm~2.0mm、溝深さが0.4mm~2.0mm、溝本数が5本~20本/inchと設定することができる。また排水溝25の断面形状は、矩形型、台形型、U字型、或いはランド部及び溝底部と溝壁の接する部位に丸みを持たせる等、適宜設定することができる。
【0073】
また、これらの排水溝25の形態は、溝の巾、深さ、本数、断面形状について、同一のものとしてもよいし、異なるものを組み合わせて形成してもよい。さらにまた、これらの排水溝25については、不連続として形成してもよいし、機械横断方向に平行な複数の溝として形成されてもよい。
【0074】
以上、本実施形態に係るシュープレスベルト1Aにおいても、補強繊維基材層10の樹脂13、第1の樹脂層20Aの樹脂23、第2の樹脂層30の樹脂33のうち少なくともいずれかが、ポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いて形成されたポリウレタン樹脂を含む。したがって、シュープレスベルト1Aは、部位間での強度のばらつきが抑制され、かつ強度に優れている。
【0075】
<2.シュープレスベルトの製造方法>
次に、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態について説明する。図3図5は、シュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態を説明する概略図である。
【0076】
本発明に係るシュープレスベルトの製造方法は、抄紙機に使用されるシュープレスベルトの製造方法であって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを活性水素基を有する硬化剤により硬化させて樹脂層を形成する工程を有し、
前記硬化剤が、下記式(1):
【0077】
【化7】
式(1)中、
AおよびBは、互いに異なって、下記式(2):
【化8】
で表されるユニットであり、
は、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキレン基であり、
mおよびnは、互いに独立して、1以上46以下の整数であり、
式(2)中、Rは、炭素数1以上20以下の直鎖アルキレン基である、
で表される1種以上のポリカーボネートジオールYを含む。
【0078】
さらに、本発明の一実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法は、第1の樹脂層20、補強繊維基材層10、第2の樹脂層30を形成する樹脂層形成工程を有する。
【0079】
樹脂層形成工程においては、樹脂層を形成する。本工程においては、具体的には、環状かつ帯状の補強繊維基材11が樹脂13中に埋設された補強繊維基材層10と、その両面に樹脂層としての第1の樹脂層20と第2の樹脂層30とが積層した積層体を形成する。
【0080】
このような積層体の形成はいかなる方法であってよいが、本実施形態においては、まず、第2の樹脂層30を形成する。次いで、第2の樹脂層30の一方の表面に補強繊維基材11を配置し、補強繊維基材11に樹脂材料を塗布、含浸、貫通させ、補強繊維基材層10と第2の樹脂層30とが一体化した積層体を形成する。次いで、補強繊維基材層10と第2の樹脂層30の接着面に対向する補強繊維基材層10の表面に、第1の樹脂層20を形成する。
【0081】
具体的には、例えば、まず、図3に示すように、離型剤を表面に塗布したマンドレル110を回転させながら、樹脂材料をマンドレル110表面に0.8~3.5mmの厚みになるように塗布して第2の樹脂層30となる樹脂前駆体層を形成する。次いで、樹脂前駆体層を40~140℃に昇温し、0.5~1時間かけて前硬化させて、第2の樹脂層30を形成する。
【0082】
次いで、前硬化させた第2の樹脂層30上に補強繊維基材11を配置し(図示せず)、図4に示すようにマンドレル110を回転させながら、補強繊維基材層10を形成する樹脂材料を0.5~2.0mm塗布し、補強繊維基材に含浸、貫通させると共に第2の樹脂層30と接着させ、補強繊維基材層10と第2の樹脂層30とが一体化された積層体を形成する。
【0083】
その後、図5に示すようにマンドレル110を回転させながら第1の樹脂層20を形成する樹脂材料を、前記補強繊維基材層10の表面に1.5~4mmの厚みに形成されるように塗布、含浸させ第2の樹脂層30となる樹脂前駆体層を形成する。次いで、樹脂前駆体層を70~140℃にて2~20時間かけて加熱硬化させて、第1の樹脂層20と、補強繊維基材層10と、第2の樹脂層30とが積層された積層体を形成する。
【0084】
なお、樹脂材料の塗布はいかなる方法で行うものであってもよいが、本実施形態においては、マンドレル100を回転しつつ注入成形用ノズル130から樹脂材料を吐出し、同時に付与された樹脂材料についてコーターバー120を用いて均一に塗布することにより行う。
【0085】
ここで、補強繊維基材層10の樹脂13、第1の樹脂層20Aの樹脂23、第2の樹脂層30の樹脂33のうち少なくともいずれかにおいて、上記式(1)で表されるポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いてポリウレタン樹脂を形成する。上述したように、ポリカーボネートジオールYを含む硬化剤を用いた場合、ウレタン組成物(樹脂材料)の粘度の上昇を抑制することができる。したがって、均一なポリウレタン樹脂層を形成することが可能である。
【0086】
また、加熱方法は特に限定されないが、例えば、遠赤外線ヒーター等による方法を用いることができる。
【0087】
得られた積層体は、必要に応じて外周面21および内周面31について研磨加工やバフ加工を施し、幅方向端部を適宜切り取って整えて、シュープレスベルト1とする。以上により、シュープレスベルト1が製造される。
【0088】
また、シュープレスベルト1Aを製造する場合には、上述した樹脂層形成工程において形成した積層体について、以下のようにして、外周面21に排水溝25を形成してもよい。
【0089】
このような排水溝25の形成はいかなる方法であってよいが、例えば、上記で得られた積層体の外表面をシュープレスベルト1の所望の厚みとなるように、研磨やバフ加工を施し(図示せず)、その後、マンドレル110を回転させながら、複数枚の円盤状の回転刃が取り付けられた溝加工装置を外周面21に当接させ、排水溝25を形成してもよい。
【0090】
なお、上記実施形態におけるシュープレスベルトの製造方法は、マンドレル(1本ロール)製法として説明した。しかしながら、別の実施形態として、以下のような2本ロール製法を採用することも可能である。まず、2本の平行に配置されたロールに環状の補強繊維基材11を掛け入れ、この補強繊維基材11に樹脂を塗布、含浸、積層をし、補強繊維基材層10とともに第2の樹脂層30を形成する。次いで、これを反転し、反転後の補強繊維基材層10表面に、第1の樹脂層20を形成する。これにより、シュープレスベルト1が得られる。なお、各樹脂層の形成順序は任意とすることもできる。
【0091】
以上、本発明について好適な実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例
【0092】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0093】
1.シュープレスベルトおよびポリウレタンシート試験片の製造
シュープレスベルトの製造に先立ち、まず、表1に示すポリカーボネートジオール、表2に示すポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらを用いて得られる、表3に示す実施例1~5および比較例1~4の組成の樹脂材料(ウレタン組成物)を用意した。なお、すべての樹脂材料について、ウレタンプレポリマーと硬化剤とは、配合割合が[H]/[NCO]比で、0.95となるように配合を行った。
次に、実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料を用いてシュープレスベルトを以下の方法により製造した。
【0094】
適宜駆動手段により回転可能な直径1500mmのマンドレルの表面に、マンドレルを回転させながら、実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料を、マンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成形用ノズルによって1.4mm厚に塗布し、未硬化のシュー側樹脂層(第2の樹脂層)を形成した。その後マンドレルを回転させたまま室温で10分間放置し、マンドレルに付属している加熱装置によって140℃に加熱し、140℃で1時間かけてシュー側樹脂層を前硬化させた。
【0095】
次に、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がウレタン系樹脂接着により接合されてなる格子状素材を、緯糸がマンドレルの軸方向に沿うように、シュー側樹脂層の外周表面に隙間なく一層配置した。ここで、格子状素材の緯糸は、ポリエチレンテレフタレート繊維の5000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸であり、経糸は、ポリエチレンテレフタレート繊維の550dtexのマルチフィラメント糸であった。また、経糸密度は1本/cm、緯糸密度は4本/cmとした。
【0096】
次に、この格子状素材の外周に、ポリエチレンテレフタレート繊維の6700dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmピッチで巻きつけて糸巻層を形成し、これら格子状素材と糸巻層とで補強繊維基材を形成した。その後、補強繊維基材の隙間を塞ぐようにシュー側樹脂層の樹脂材料と同一の樹脂材料(実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料)を塗布し、補強繊維基材層とシュー側樹脂層とが一体化された積層体を形成した。
【0097】
次に、補強繊維基材層の上から、マンドレルを回転させながら、補強繊維基材層及びシュー側樹脂層の樹脂材料と同一の樹脂材料(実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料)をマンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成形用ノズルによって約2.5mm厚に塗布し、未硬化のフェルト側樹脂層(第1の樹脂層)を形成した。
次いで、マンドレルを回転させたまま室温で40分間放置し、更にマンドレルに付属している加熱装置によって140℃に加熱し、140℃で4時間かけて、各樹脂層を加熱硬化させた。これにより、フェルト側樹脂層と補強繊維基材層とシュー側樹脂層とが一体化された積層体を形成した。
その後、全厚が5.2mmとなるように、フェルト側樹脂層のフェルト接触表面を研磨し、積層体を得た。
【0098】
以上の工程を経て、実施例1~5、比較例1~4に係るシュープレスベルトを得た。得られたシュープレスベルトについて、硬度の評価を実施した。また、引張試験における破断強度およびばらつきの評価を行うために、フェルト側樹脂層より、1.0mm厚のポリウレタンシートの試験片を切り出した。
【0099】
2.評価
2.1 プレポリマー粘度
実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料に用いたプレポリマーについて、粘度測定を行った。プレポリマーの粘度は、B型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:TVB-10H)を用いて、温度が50℃と80℃の際のプレポリマーの粘度を測定した。なお、ローターとして、H3ローターを用い、回転数は200~2,000mPa・sの場合50rpm、2,000~20,000mPa・sの場合5rpmとして測定を行った。
【0100】
2.2 硬度評価
実施例1~5および比較例1~4に係るシュープレスベルトの外周面について、硬度測定を行った。具体的には、JIS K 6301:1995に準拠し、スプリング式硬さ試験機A型を用いて、フェルト側樹脂層の表面の硬度測定を行った。
【0101】
2.3 引張試験の破断強度評価
破断強度は、試験機に万能引張試験機、サンプル形状にJIS K 6251に規定されるダンベル3号形試験片を用いて、引張速度500mm/分の速度で測定を行い、試験片破断時の応力(MPa)で評価した。各実施例、比較例につき、20回測定を行い平均値で表した。
【0102】
2.4 破断強度のばらつき評価
破断強度のばらつきは、引張試験の破断強度の20回の測定値について、標準偏差を求めて評価を行った
【0103】
以上の評価結果を、実施例1~5および比較例1~4の樹脂材料の組成等とともに表3に示す。なお表3中、「MDI」は4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)を、「PPDI」はp-フェニレン-ジイソシアネートを、「H6XDI」は1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンを、「TDI」は2,4-トリレン-ジイソシアネートおよび2,6-トリレン-ジイソシアネートの混合物を、「BD」は1,4-ブタンジオールを、「DMTDA」はジメチルチオトルエンジアミンをそれぞれ示す。
【0104】
また、表1中のポリカーボネートジオールの数平均分子量に関しては、各ポリカーボネートジオールについて水酸基価を測定するとともに、得られた水酸基価に基づき上記式(II)より数平均分子量を求めた。表2中のポリテトラメチレンエーテルグルコールについても同様である。さらに、表1中のポリカーボネートジオールPCD1~PCD3、PCD6は、得られた数平均分子量とジオール成分の量比に基づいて計算すると、一分子当たりの各ジオール成分の数が、いずれも30以内であった。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
表3に示すように、実施例1~5に係るシュープレスベルトは、比較例1、2、4に係るシュープレスベルトと比較して、部位間の強度のばらつきが抑制されており、さらに強度に優れている。ポリカーボネートを用いなかった比較例3に係るシュープレスベルトは、部位間の強度のばらつきは抑制されていたが、実施例1~5に係るシュープレスベルトと比較して強度が著しく低かった。
【0109】
実施例4においては、単一のジオール成分を用いた直鎖脂肪族ポリカーボネートをウレタンプレポリマーに使用している。この場合、直鎖脂肪族ポリカーボネートジオール自体の結晶性が高くなり、ウレタンプレポリマーの粘度が高くなりやすい傾向にある。しかしながら、このような場合でも、NCO%を高く設定することにより、ウレタンプレポリマーの粘度を低減させることが可能である。ここで、1,4-ブタンジオールのみを硬化剤として使用すると、NCO%を高く設定した場合であっても、硬化剤とウレタンプレポリマーとを構成するの分子同士の親和性が高くなりすぎてウレタン組成物の粘度が上昇する。しかしながら、実施例4においては、硬化剤として式(1)で表されるポリカーボネートジオールを用いることにより、硬化剤とウレタンプレポリマーとを構成する分子同士の親和性を低減させることができた。この結果、部位間の強度のばらつきを抑制しつつ強度を向上させることが可能であった。
【0110】
また、複数種の直鎖脂肪族ポリカーボネートジオールをウレタンプレポリマーに用いた比較例4に係るシュープレスベルトは、強度に優れていたものの部位間の強度のばらつきが大きかった。このため、比較例4のシュープレスベルトは、強度の弱い部分を起点として破損する可能性があり、シュープレスベルトの耐久性を高めることができなかった。
【符号の説明】
【0111】
1、1A シュープレスベルト
10 補強繊維基材層
11 補強繊維基材
13 樹脂
20、20A 第1の樹脂層
21 外周面
23 樹脂
25 排水溝
30 第2の樹脂層
31 内周面
33 樹脂
図1
図2
図3
図4
図5