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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/08 20060101AFI20230606BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20230606BHJP
   B66B 23/22 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
B66B29/08 Z
B66B31/00 E
B66B23/22 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021211396
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】北村 美和子
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167954(JP,A)
【文献】特開平11-335059(JP,A)
【文献】特開平01-303289(JP,A)
【文献】特開2007-223720(JP,A)
【文献】特開2004-115171(JP,A)
【文献】特開2007-284168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口のフロアプレートと、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段からなる無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端から出現する又はフロアプレート下に入り込もうとする踏段間の境界位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備えるとともに、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレート下に位置する踏段間の境界位置、フロアプレート下に位置する踏段の先端位置又はフロアプレート下に位置する踏段の後端位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備え、
これら2つの表示部は、フロアプレートの先端位置を跨ぐ横長の表示部をフロアプレートの先端位置を境として前側と後側とに区分けしたものである
乗客コンベア。
【請求項2】
乗降口のフロアプレートと、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段からなる無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、水平方向に沿ってライン状に設けられる表示部であって、フロアプレートの先端から出現する又はフロアプレート下に入り込もうとする踏段間の境界位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備えるとともに、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端の垂直方向に沿ってライン状に設けられる表示部であって、フロアプレートの先端位置を表示する表示部を備え、
これら2つの表示部は、交差して設けられる
乗客コンベア。
【請求項3】
乗降口のフロアプレートと、循環移動する無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端の垂直方向に沿ってライン状に設けられることによりフロアプレートの先端位置を表示する表示部を備える
乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環移動する無端搬送体により乗客を搬送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、乗降口と搬送部とを備える。乗降口は、フロアプレートを備え、通路の両端部に設けられる(乗り口及び降り口)。搬送部は、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段からなる無端搬送体を備え、無端搬送体が通路に沿って移動することにより乗客を搬送する。乗客は、乗り口のフロアプレートから搬送部の始端部に進入し、フロアプレートの先端から出現する無端搬送体に移動すると、無端搬送体により搬送され、しかる後、搬送部の終端部に到達すると、降り口のフロアプレートまで移動し、そのまま移動して乗客コンベアを後にする。
【0003】
しかし、フロアプレートは静止し、無端搬送体はもちろん移動しており、両者間に速度差が生じる。このため、フロアプレート及び無端搬送体間の移動タイミングをうまく図ることができない乗客がいる。そこで、この移動タイミングを表示する乗客コンベアが提案されている(特許文献1)。これは、フロアプレートに対する踏段の位置に応じて、「危険」、「注意」、「進め」の3つの状態を判別し、各状態に応じて踏段上に異なる色のスポットライトを照射するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-143412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、たとえば、子供を抱きかかえたり、大きなキャリーケースを携える乗客の場合、子供や荷物によって乗客の下方の視界が遮られ、乗客がスポットライトを見ることは困難である。このような乗客にとって、特許文献1の表示手段は意味をなさない。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、下方を見ることが困難な状況であっても、円滑かつ安全に乗り降りすることができることができる乗客コンベアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアは、
乗降口のフロアプレートと、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段からなる無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端から出現する又はフロアプレート下に入り込もうとする踏段間の境界位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備えるとともに、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレート下に位置する踏段間の境界位置、フロアプレート下に位置する踏段の先端位置又はフロアプレート下に位置する踏段の後端位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備え、
これら2つの表示部は、フロアプレートの先端位置を跨ぐ横長の表示部をフロアプレートの先端位置を境として前側と後側とに区分けしたものである
乗客コンベアである。
【0008】
また、本発明に係る乗客コンベアは、
乗降口のフロアプレートと、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段からなる無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、水平方向に沿ってライン状に設けられる表示部であって、フロアプレートの先端から出現する又はフロアプレート下に入り込もうとする踏段間の境界位置を踏段の移動と同期して移動表示する表示部を備えるとともに、
乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端の垂直方向に沿ってライン状に設けられる表示部であって、フロアプレートの先端位置を表示する表示部を備え、
これら2つの表示部は、交差して設けられる
乗客コンベアである。
【0012】
また、別の本発明に係る乗客コンベアは、
乗降口のフロアプレートと、循環移動する無端搬送体により乗客を搬送する搬送部と、無端搬送体と連動して循環移動するハンドレール及びハンドレールを支持する欄干で構成されるハンドレール部とを備える乗客コンベアであって、
ハンドレール部は、乗降口付近におけるハンドレール部の上部に、フロアプレートの先端の垂直方向に沿ってライン状に設けられることによりフロアプレートの先端位置を表示する表示部を備える
乗客コンベアである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示部は、乗降口のフロアプレート及び搬送部の無端搬送体間の移動タイミングを表示する表示手段として機能するとともに、ハンドレール部の乗降口付近の上部に設けられる。このため、本発明によれば、下方を見ることが困難な状況であっても、ハンドレール部の乗降口付近の上部を目視するだけで、乗降口のフロアプレート及び搬送部の無端搬送体間の移動タイミングを図ることができ、円滑かつ安全に乗り降りすることができる。
【0014】
また、別の本発明によれば、表示部は、乗降口のフロアプレート及び搬送部の無端搬送体間の速度差が生じている乗降境界位置を表示する表示手段として機能するとともに、ハンドレール部の乗降口付近の上部に設けられる。このため、本発明によれば、下方を見ることが困難な状況であっても、ハンドレール部の乗降口付近の上部を目視するだけで、乗降口のフロアプレート及び搬送部の無端搬送体間の速度差が生じている乗降境界位置を把握することができ、円滑かつ安全に乗り降りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、エスカレータの一部断面側面図である。
図2図2は、実施形態1に係る表示部を備えるエスカレータの乗り口付近の一部断面側面図である。
図3図3は、図2のA線における断面図である。
図4図4(a)ないし(d)は、実施形態1に係る表示部の動作説明図である。
図5図5(a)ないし(d)は、実施形態1の変形例1に係る表示部の動作説明図である。
図6図6は、実施形態2に係る表示部を備えるエスカレータの乗り口付近の一部断面側面図である。
図7図7は、実施形態2の変形例1に係る表示部を備えるエスカレータの乗り口付近の一部断面側面図である。
図8図8は、実施形態3に係る表示部を備えるエスカレータの乗り口付近の一部断面側面図である。
図9図9(a)ないし(c)は、実施形態3に係る表示部の動作説明図である。
図10図10(a)ないし(c)は、実施形態3の変形例1に係る表示部の動作説明図である。
図11図11は、実施形態4に係る表示部を備えるエスカレータの乗り口付近の一部断面側面図である。
図12図12は、図11のC線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る乗客コンベアの一つであるエスカレータの各種の実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、エスカレータ1は、トラス2と、乗降口3と、搬送部4と、ハンドレール部5と、制御部6とを備える。トラス2は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体である。乗降口3は、トラス2の両端部の上部に設けられる。搬送部4は、トラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部5も、トラス2に支持され、通路の両側に通路に沿って設けられる。本実施形態においては、エスカレータ1は、乗客を左から右(階下から階上)に搬送する設定となっている。このため、エスカレータ1は、左から右に、乗り口3A、搬送部4、降り口3Bを備える。設定を逆に切り替えると、乗り口3Aは降り口に、降り口3Bは乗り口に切り替わり、乗客を右から左(階上から階下)に搬送する設定となる。制御部6は、エスカレータ1の各部に対する制御を行い、エスカレータ1の円滑な運行を制御する。
【0018】
乗降口3は、トラス2の水平端部2aの上部に設けられる。乗降口3は、フロアプレート30を備える。フロアプレート30は、乗降口3の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。フロアプレート30の先端は、乗降口3と搬送部4との境界を画する。
【0019】
フロアプレート30は、第1プレート31と、第2プレート32とを備える。第1プレート31は、フロアプレート30の大半を占める大きさを有する。第2プレート32は、コムプレートとも呼ばれ、後端が第1プレート31の先端に突き合わせられるように配置される。第2プレート32の上面は、後端から先端にかけての途中から緩やかな下り傾斜面となる。第2プレート32の先端部には、櫛歯状のコム33が取り付けられる。コム33は、左右方向において複数に分割され、それぞれが矩形状(長方形状)を有する。複数のコム33,…は、左右方向に並んで配置されることにより、第2プレート32の先端部に沿った左右方向に長い帯状となる。
【0020】
搬送部4は、無端搬送体40を備える。無端搬送体40は、複数の踏段(ステップ)41,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。搬送部4の駆動機構42は、駆動モータ43と、減速機44と、一対のスプロケット45,45と、踏段チェーン46とを備える。駆動モータ43及び減速機44は、トラス2の上端部側の水平端部2aに設けられる。一方のスプロケット45も、上端部側の水平端部2aに設けられ、減速機44及びチェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ43の駆動が伝達される。他方のスプロケット45は、トラス2の下端部側の水平端部2aに設けられる。踏段チェーン46は、複数の踏段41,…を無端状に連結する手段であって、一対のスプロケット45,45に巻き掛けられる。無端搬送体40は、駆動モータ43の駆動に伴って踏段チェーン46が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。なお、踏段チェーン46の2つの折返し端部のうち、従動側の折返し端部(図1においては、左側)の折返し手段は、スプロケット45ではなく、半円弧状のガイドレールであってもよい。
【0021】
ハンドレール部5は、ハンドレール50と、欄干51とを備える。ハンドレール50は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、無端搬送体40と連動して循環駆動される。欄干51は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール50を循環移動可能に支持する。ハンドレール部5は、駆動ローラ59を備える。駆動ローラ59は、トラス2の傾斜部2bの上部又は上端部側の水平端部2aに設けられ、チェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ43の駆動が伝達される。これにより、ハンドレール50は、無端搬送体40と連動して循環移動する。ハンドレール50及び欄干51は、通路の両側に通路に沿って一対設けられる。
【0022】
図2及び図3に示すように、欄干51は、欄干パネル52と、外装材53と、スカートガード54と、外デッキカバー55と、内デッキカバー56と、ハンドレールフレーム57とを備える。欄干パネル52は、ハンドレール50の上辺部(往路部分)50A及び下辺部(復路部分)50B間に縦に配置され、通路に面する。外装材53は、欄干パネル52よりも外側に欄干パネル52と所定の間隔を有して縦に配置される。スカートガード54は、欄干パネル52よりも内側に欄干パネル52の下部の高さ位置から下方に縦に配置され、通路に面する。外デッキカバー55は、欄干パネル52及び外装材53間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられる。内デッキカバー56は、欄干パネル52及びスカートガード54間の上部開放部を閉鎖するように脱着自在に取り付けられ、通路に面する。ハンドレールフレーム57は、ハンドレール50を案内支持する。このように、欄干51は、欄干パネル52、外装材53、スカートガード54、外デッキカバー55及び内デッキカバー56に囲まれる内部空間58を有する。ハンドレール50の下辺部(復路部分)50Bは、内部空間58に収容され、外部から遮蔽される。
【0023】
<実施形態1>
エスカレータ1は、踏段位置表示部7及びフロアプレート先端位置表示部8の2種類の表示部を備える。以下、実施形態1に係る表示部について、図2ないし図4を参酌して説明する。
【0024】
図2及び図3に示すように、踏段位置表示部7は、踏段41の位置(踏段41,41間の境界位置)を踏段41の移動と同期して移動表示する。踏段位置表示部7は、ハンドレール部5の乗降口3付近の上部、より詳しくは、ハンドレール部5の乗降口3付近における、欄干パネル52の上部、外デッキカバー55又はハンドレールフレーム57の少なくともいずれか1つであって、通路に面した箇所に設けられる。踏段位置表示部7は、ハンドレール50(の上辺部50A)の長手方向(水平方向)に沿って設けられる。
【0025】
踏段位置表示部7は、フロアプレート外踏段位置表示部7Aと、フロアプレート下踏段位置表示部7Bとを備える。フロアプレート外踏段位置表示部7Aは、乗り口3A側において、フロアプレート30の先端(コム33の先端、以下、同様)から出現する踏段41,41間の境界位置を踏段41の移動と同期して移動表示し、降り口3B側において、フロアプレート30下に入り込もうとする踏段41,41間の境界位置を踏段41の移動と同期して移動表示する。フロアプレート下踏段位置表示部7Bは、フロアプレート30下に位置する踏段41,41間の境界位置、フロアプレート30下に位置する踏段41の先端位置又はフロアプレート30下に位置する踏段41の後端位置を踏段41の移動と同期して移動表示する。
【0026】
2つの表示部7A,7Bは、フロアプレート30の先端位置を跨ぐ横長の表示部をフロアプレート30の先端位置を境として前側と後側とに区分けしたものであり、表示を一体的かつ相関的に行う。
【0027】
2つの表示部7A,7Bは、所定間隔を有して一方向に配列される複数の発光体71,…で構成される。複数の発光体71,…は、LEDであり、欄干パネル52、外デッキカバー55及びハンドレールフレーム57の通路とは反対側の面に配置される基板70に実装される。基板70は、図示しない電源線ないし信号線を介して制御部6に電気的に接続される。これにより、複数の発光体71,…は、制御部6により、点灯、点滅、消灯が制御される。
【0028】
なお、欄干パネル52がたとえばステンレス等の金属材である場合や、たとえばステンレス等の金属材で構成される外デッキカバー55及びハンドレールフレーム57は、もちろん透光性を有さない。この場合、通路に面した箇所に、透光孔52a、透光孔55a及び透光孔57aが形成される。欄干パネル52がガラス製の透光性を有する材質である場合は、透光孔52aは不要である。
【0029】
複数の発光体71,…は、たとえば、踏段41(の踏面)を奥行方向(踏段41の移動方向)において4等分する間隔で設けられる。踏段41の奥行寸法が40cmであるとすれば、複数の発光体71,…は、10cm間隔で配置される。これにより、フロアプレート外踏段位置表示部7Aにおいて、フロアプレート30の先端位置に位置する発光体71を第1の発光体71とし、その隣を順次、第2、第3、…の発光体71とすると、第2の発光体71は、点灯することで、フロアプレート30の先端と踏段41の先端(降り口4B側の場合は、踏段41の後端)との距離が踏段41の奥行寸法の25%である状態を表示し、第3の発光体71は、点灯することで、当該距離が踏段41の奥行寸法の50%である状態を表示し、第4の発光体71は、点灯することで、当該距離が踏段41の奥行寸法の75%である状態を表示し、第5の発光体71は、点灯することで、当該距離が踏段41の奥行寸法の100%である状態を表示する。すなわち、乗り口3A側のフロアプレート外踏段位置表示部7Aにおいて、第2の発光体71は、点灯することで、フロアプレート30の先端からの踏段41の出現率が25%である状態を表示し、第3の発光体71は、点灯することで、当該出現率が50%である状態を表示し、第4の発光体71は、点灯することで、当該出現率が75%である状態を表示し、第5の発光体71は、点灯することで、当該出現率が100%である状態を表示する。また、降り口3B側のフロアプレート外踏段位置表示部7Aにおいて、第2の発光体71は、点灯することで、フロアプレート30下への踏段41の入り込み率が75%である状態を表示し、第3の発光体71は、点灯することで、当該入り込み率が50%である状態を表示し、第4の発光体71は、点灯することで、当該入り込み率が25%である状態を表示し、第5の発光体71は、点灯することで、当該入り込み率が0%である状態を表示する。なお、等分数は適宜設計で定められる事項であり、これにより、出現率及び入り込み率は異なる。
【0030】
フロアプレート先端位置表示部8は、フロアプレート30の先端位置を表示する。フロアプレート先端位置表示部8は、ハンドレール部5の乗降口3付近の下部ないし中間部から上部にかけて、より詳しくは、ハンドレール部5の乗降口3付近における、欄干パネル52の下部ないし中間部から上部にかけて、そして選択的に、外デッキカバー55又はハンドレールフレーム57の少なくともいずれか1つであって、通路に面した箇所に設けられる。フロアプレート先端位置表示部8は、ハンドレール50(の上辺部50A)の長手方向と直交する方向(垂直方向)に沿って設けられる。
【0031】
本実施形態においては、フロアプレート先端位置表示部8は、踏段位置表示部7と同様、所定間隔を有して一方向に配列される複数の発光体81,…で構成される。詳細は、踏段位置表示部7と同様であるため、説明を割愛する。なお、踏段位置表示部7及びフロアプレート先端位置表示部8の交差部における発光体は、踏段位置表示部7の発光体71及びフロアプレート先端位置表示部8の発光体81を兼用する。
【0032】
本実施形態に係る表示部7,8は、以上の構成からなり、次に、この2つの表示部7,8の表示方法について、図4を参酌して説明する。
【0033】
フロアプレート先端位置表示部8の発光体81,…は、常時点灯又は一定周期で点滅しており、ここがフロアプレート30の先端位置(フロアプレート30の先端の垂直方向の上方位置)であることを乗客に向けて表示する。
【0034】
踏段位置表示部7の発光体71,…は、踏段41の移動と同期して踏段41,41間の境界位置に相当するものだけが点灯し(これ以外は消灯)、ここが踏段41,41間の境界位置(踏段41,41間の境界の垂直方向の上方位置)であることを乗客に向けて表示する。乗り口3Aである場合、図4(a)に示す点灯パターンは、フロアプレート30の先端からの踏段41の出現率が0%又は100%である状態を表し、図4(b)に示す点灯パターンは、当該出現率が25%である状態を表し、図4(c)に示す点灯パターンは、当該出現率が50%である状態を表し、図4(d)に示す点灯パターンは、当該出現率が75%である状態を表す。乗客は、点灯する発光体71,71間に乗り込むことにより、踏段41(の踏面)を踏み外すことなく、円滑に乗り込みタイミングを図ることができる。
【0035】
以上のとおり、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、踏段位置表示部7は、乗降口3のフロアプレート30及び搬送部4の踏段41間の移動タイミングを表示する表示手段として機能するとともに、ハンドレール部5の乗降口3付近の上部に設けられる。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、下方を見ることが困難な状況であっても、ハンドレール部5の乗降口3付近の上部を目視するだけで、乗降口3のフロアプレート30及び搬送部4の踏段41間の移動タイミングを図ることができ、円滑かつ安全に乗り降りすることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、フロアプレート先端位置表示部8は、乗降口3のフロアプレート30及び搬送部4の踏段41間の速度差が生じている乗降境界位置を表示する表示手段として機能するとともに、ハンドレール部5の乗降口3付近の上部に設けられる。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、下方を見ることが困難な状況であっても、ハンドレール部5の乗降口3付近の上部を目視するだけで、乗降口3のフロアプレート30及び搬送部4の踏段41間の速度差が生じている乗降境界位置を把握することができ、円滑かつ安全に乗り降りすることができる。
【0037】
また、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、踏段位置表示部7において、フロアプレート外踏段位置表示部7Aにフロアプレート下踏段位置表示部7Bが付加される。これにより、フロアプレート外踏段位置表示部7Aだけの場合に比べて、踏段41の移動変化をより詳細に把握することができる。このため、本実施形態に係るエスカレータ1によれば、乗降口3のフロアプレート30及び搬送部4の踏段41間の移動タイミングをより確実に図ることができ、より円滑かつ安全に乗り降りすることができる。
【0038】
なお、フロアプレート下踏段位置表示部7Bを付加することの効果をより高めるために、次の各種の表示方法又はその組み合わせを採用することができる。
i)フロアプレート外踏段位置表示部7Aの発光体71と、フロアプレート下踏段位置表示部7Bの発光体71とで、発光色を異ならせる。たとえば、前者は緑色、後者は赤色。
ii)フロアプレート外踏段位置表示部7Aの発光体71と、フロアプレート下踏段位置表示部7Bの発光体71とで、発光強度を異ならせる。たとえば、前者は強、後者は弱。
iii)フロアプレート30の先端からの踏段41の出現量が25cm以上、より好ましくは28cm以上である状態を表示する発光体71、及び、フロアプレート30下への踏段41の入り込み量が(踏段41の奥行寸法-25cm)以下、より好ましくは(踏段41の奥行寸法-28cm)以下である状態を表示する発光体71と、それ以外の発光体71とで、発光色や発光強度を異ならせる。たとえば、前者は、乗客が安全ということを経験的に認識するたとえば緑色、後者は、乗客が注意を要するということを経験的に認識するたとえば黄色。なお、25cmというのは、日本人男性(14歳以上)の足の平均的な大きさを考慮したものであり、28cmというのは、日本人男性(14歳以上)の99%が足の大きさが28cm以下ということを考慮したものである。
【0039】
<実施形態1の変形例1>
踏段位置表示部7の発光体71,…の点灯パターンとして、図5に示す点灯パターンであってもよい。すなわち、踏段位置表示部7の発光体71,…は、連続する複数の踏段41,…のうち、1つおきの踏段41の位置に相当するものだけが踏段41の移動と同期して点灯し、他方、その間の踏段41の位置に相当するものは消灯する。より具体的には、1つおきの踏段41の踏面の位置に相当する連続した数個の発光体71,…(本例では、5個の発光体71,…)が1つのグループを構成して踏段41の移動と同期して流れるように点灯する。もちろん、このグループの両端部の発光体71,71のそれぞれは、踏段41,41間の境界位置を表示するものである。なお、踏段41,41間の境界位置を視覚的に識別可能となるのであれば、残りの発光体71,…は、消灯させるのではなく、発光色や発光強度を異ならせて点灯させるようにしてもよい。
【0040】
<実施形態2>
つぎに、実施形態2に係る表示部について、図6を参酌して説明する。なお、実施形態2に係る表示部が実施形態1に係る表示部と異なる点は、表示部自体の構成に関する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0041】
図6に示すように、踏段位置表示部7は、ハンドレール50の表面にハンドレール50の長手方向に所定間隔を有しかつハンドレール50の全長に亘って設けられる複数の標識72,…で構成される。標識72,72間の間隔は、踏段41(の踏面)の奥行寸法に相当する間隔である。そして、踏段41及びハンドレール50の循環移動に伴って標識72と踏段41の位置対応関係にずれが生じないよう、ハンドレール50の全長は、標識72,72間の間隔の整数倍の長さを有する。
【0042】
標識72は、ハンドレール50の長手方向と直交する方向に沿って引かれた線のほか、図形や記号等であってもよい。標識72は、印刷、塗工、刻設、貼着等、種々の方法で設けられる。
【0043】
フロアプレート先端位置表示部8は、フロアプレート30の先端の垂直方向に沿って設けられる標識82で構成される。標識82は、垂直方向に沿って引かれた線のほか、一方向に配列される複数の図形や記号等であってもよい。標識82は、印刷、塗工、刻設、貼着等、種々の方法で設けられる。
【0044】
このように、実施形態2に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0045】
<実施形態2の変形例1>
標識72は、踏段41,41間の境界位置に対して設けられるのではなく、図7に示すように、踏段41の全体の位置に対して設けられる、すなわち、踏段41の奥行寸法を表すものであってもよい。この場合、標識72は、連続する複数の踏段41,…のうち、1つおきの踏段41の位置に対応してハンドレール50の表面に設けられ、踏段41(の踏面)の奥行寸法に相当する間隔を有して断続的にハンドレール50の表面に設けられる。あるいは、隣り合う標識72,72の色を異ならせる等、踏段41,41間の境界位置を視覚的に識別可能な形態であれば、連続する踏段41のそれぞれに対応して複数の標識72,…がハンドレール50の表面に連続して設けられるようにしてもよい。
【0046】
<実施形態3>
つぎに、実施形態3に係る表示部について、図8及び図9を参酌して説明する。なお、実施形態3に係る表示部が実施形態2に係る表示部と異なる点は、踏段位置表示部自体の構成に関する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1及び実施形態2についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0047】
図8及び図9に示すように、踏段位置表示部7は、液晶画面等の表示画面を有する液晶表示器等の表示器73で構成される。表示画面には、フロアプレート30の先端を境として通路の前側部分及び後側部分の実画像又はイメージ画像が表示される。すなわち、表示画面には、フロアプレート30の第2プレート32の先端部及びコム33の静止画像並びに実際の踏段41の移動と同期した踏段41の動画像が表示される。表示画面のうち、フロアプレート30の先端を含む前側部分は、フロアプレート外踏段位置表示部7Aとして機能する。
【0048】
このように、実施形態3に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0049】
<実施形態3の変形例1>
表示器73は、ドットマトリクス表示器等のより簡易な表示器であってもよい。この場合、図10に示すように、表示画面には、実施形態1の踏段位置表示部7と同様の表示形態で、画像が表示される。すなわち、表示画面には、踏段41,41間の境界位置が標識74をもって移動表示され、フロアプレート30の先端位置が標識83をもって表示される。標識74,83は、線のほか、図形や記号等であってもよい。表示画面のうち、フロアプレート30の先端を含む前側部分は、フロアプレート外踏段位置表示部7Aとして機能し、後側部分は、フロアプレート下踏段位置表示部7Bとして機能する。
【0050】
<実施形態3の変形例2>
表示器を用いる代わりに、実施形態3やその変形例1と同様の画像がハンドレール部5の上部(ハンドレール50の表面や欄干パネル52の上部)に投影されるようにしてもよい。この場合、投影機(プロジェクタ)は、天井部等の上方箇所に設置されるか、反対側の欄干51内に仕込まれる。
【0051】
<実施形態4>
つぎに、実施形態4に係る表示部について、図11及び図12を参酌して説明する。なお、実施形態4に係る表示部が実施形態1に係る表示部と異なる点は、欄干51の構造及び表示部自体の構成に関する点である。この点以外については、両者は、同じである。そこで、以下においては、異なる点について記載し、同じ点については、実施形態1についての記載と同様であるとして、記載を省略する。
【0052】
欄干51は、実施形態1ないし3の欄干51と異なり、内部空間58を有さない構造である。すなわち、欄干51は、通路と反対側の欄干パネル52の外面側には内部空間がなく、欄干パネル52だけがハンドレール50の上辺部(往路部分)50Aを支持する構造である。実施形態1と同様の表示部7,8を備える場合、欄干パネル52は、ガラス製の透光性を有する材質であり、発光体71,81及びその電源線ないし信号線は、ガラスに埋め込まれる。あるいは、発光体71,81及びその電源線ないし信号線は、欄干パネル52の外面側に配置されるものであってもよい。
【0053】
このように、実施形態4に係るエスカレータ1によっても、実施形態1に係るエスカレータ1が奏する作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
上記実施形態1、3及び4においては、フロアプレート外踏段位置表示部7Aと、フロアプレート下踏段位置表示部7Bとが設けられる。しかし、本発明において、フロアプレート下踏段位置表示部は必須ではない。
【0056】
また、上記実施形態1においては、踏段位置表示部7として、欄干パネル52の上部に設けられるもの、外デッキカバー55に設けられるもの及びハンドレールフレーム57に設けられるものの3つの踏段位置表示部7が設けられる。しかし、上述したとおり、少なくともいずれか1つの踏段位置表示部であればよい。
【0057】
また、上記実施形態1ないし4においては、踏段位置表示部7及びフロアプレート先端位置表示部8の2つの表示部が設けられる。しかし、本発明においては、いずれか一方の表示部だけが設けられるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態1ないし4においては、主として、乗り口3Aにおける表示部7,8について説明した。しかし、上述のとおり、降り口にも適用可能な発明であることは言うまでもない。
【0059】
また、上記実施形態1ないし4においては、表示部7,8は、両側のハンドレール部5,5のそれぞれに設けられる。しかし、表示部は、片側のハンドレール部だけに設けられるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。なお、動く歩道には、踏段式の無端搬送体を備えるものと、ベルト式の無端搬送体を備えるものとがある。
【0061】
また、物理的に干渉するものでない限り、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に適用すること、以上に記載した技術要素を他の実施形態ないし例に係る技術要素と置換すること、以上に記載した技術要素同士を組み合わせること等は、当然に可能であり、これは、本発明が当然に意図するところである。
【符号の説明】
【0062】
1…エスカレータ、2…トラス、2a…水平端部、2b…傾斜部、3…乗降口、3A…乗り口、3B…降り口、30…フロアプレート、31…第1プレート、32…第2プレート、33…コム、4…搬送部、40…無端搬送体、41…踏段、42…駆動機構、43…駆動モータ、44…減速機、45…スプロケット、46…踏段チェーン、5…ハンドレール部、50…ハンドレール、50A…上辺部、50B…下辺部、51…欄干、52…欄干パネル、52a…透光孔、53…外装材、54…スカートガード、55…外デッキカバー、55a…透光孔、56…内デッキカバー、57…ハンドレールフレーム、57a…透光孔、58…内部空間、59…駆動ローラ、6…制御盤(制御部)、7…踏段位置表示部、7A…フロアプレート外踏段位置表示部、7B…フロアプレート下踏段位置表示部、70…基板、71…LED(発光体)、72…標識、73…表示器、74…標識、8…フロアプレート先端位置表示部、80…基板、81…LED(発光体)、82…標識、83…標識
【要約】
【課題】下方を見ることが困難な状況であっても、円滑かつ安全に乗り降りすることができることができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】乗降口3のフロアプレート30と、無端状に連結されて循環移動する複数の踏段41,…からなる無端搬送体40により乗客を搬送する搬送部4と、無端搬送体40と連動して循環移動するハンドレール50及びハンドレール50を支持する欄干51で構成されるハンドレール部5とを備える乗客コンベアにおいて、ハンドレール部5は、乗降口3付近の上部に、フロアプレート30の先端から出現する又はフロアプレート30下に入り込もうとする踏段41,41間の境界位置を踏段41の移動と同期して移動表示する表示部7を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12