(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20230606BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20230606BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230606BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20230606BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/30 102
B32B29/00
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2022565850
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2022025007
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021170792
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】中村 真
(72)【発明者】
【氏名】神山 達哉
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163675(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016346(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/095780(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079495(WO,A1)
【文献】特開2001-303483(JP,A)
【文献】特開2013-079469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 1/00-90/00
D21H 19/00-19/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、アンダーコート層と、ガスバリアコート層と、ヒートシール層とを含み、
前記アンダーコート層は前記紙基材に隣接して配置され、前記ガスバリアコート層は前記アンダーコート層に隣接して配置され、
前記アンダーコート層はアクリルエマルションを含む水性コート剤の乾燥塗膜であり、前記アンダーコート層の前記ガスバリアコート層側の面の算術平均粗さRa1が5.0μm以下であり、コッブ吸水度が10.0g/m
2以下であり
前記紙基材の算術平均粗さRa2が6.0μm以下であり、
前記ガスバリアコート層が、反応性官能基を有するビニルアルコール系重合体と、
アセタール類、イソシアネート類、エポキシ類、メチロール尿素類、カルボキシル基含有ポリマー類、カルボジイミド類、ヒドラジド化合物、ホウ酸、からなる群から選ばれる少なくとも1つの架橋剤との反応生成物を含む
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記アンダーコート層の前記ガスバリアコート層側の面の輪郭曲線要素の平均長さRSmが150μm以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記Ra1が1.0μm以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記ガスバリアコート層が、ビニルアルコール系重合体を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記ガスバリアコート層が、層状無機化合物を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の積層体を製袋してなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は袋として使用するのに適した包装用積層体、当該積層体からなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因になっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋、容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が最も多く使用されている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
【0003】
即効性のある手段として、プラスチックを紙に代替することが提案されているが(特許文献1)、プラスチックフィルム、特にPETフィルムやナイロン(Ny)フィルムと比べるとガスバリア性が格段に劣るため、ガスバリア性が必要な用途では単にプラスチックフィルムを紙に置き換えることはできない。
【0004】
また、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール剤として、ポリエチレンやポリプロピレンが多量にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は、商品コンセプトによって様々だが、概ね20~50g/m2であり、300g/m2と多量になる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替した包装容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急に、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ガスバリア性に優れ、プラスチックの使用量を低減することができる包装用積層体、包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は紙基材と、アンダーコート層と、ガスバリアコート層と、ヒートシール層とを含み、アンダーコート層は紙基材に隣接して配置され、ガスバリアコート層はアンダーコート層に隣接して配置され、アンダーコート層はアクリルエマルションを含む水性コート剤の乾燥塗膜であり、アンダーコート層のガスバリアコート層側の面の算術平均粗さRaが5.0μm以下であり、コッブ吸水度が10.0g/m2以下である積層体、当該積層体からなる包装材に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスバリア性に優れ、プラスチックの使用量を低減することができる包装用積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<積層体>
本発明の積層体は、アンダーコート層と、ガスバリアコート層と、ヒートシール層とを含み、アンダーコート層は紙基材に隣接して配置され、ガスバリアコート層はアンダーコート層に隣接して配置され、アンダーコート層はアクリルエマルションを含む水性コート剤の乾燥塗膜であり、アンダーコート層のガスバリアコート層側の面の算術平均粗さRaが5.0μm以下であり、コッブ吸水度が10.0g/m2以下である。以下本発明の積層体について詳述する。
【0010】
(紙基材)
本実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の紙基材を用いることができる。晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙、再生紙等が挙げられる。また、FSC認証紙を用いることが好ましい。紙基材の坪量は目的に応じて適宜調整されるが、一例として10~400g/m2である。坪量が10g/m2未満では、包装材としての強度が劣る。
【0011】
紙基材の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)、LUKP(広葉樹未さらしクラフトパルプ)、NUKP(針葉樹未さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットン、マニラ麻などの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。
【0012】
広葉樹パルプは比較的に短繊維であり、引張破断伸びに対しては不利に働く傾向がある。一方で針葉樹パルプ、非木材パルプは広葉樹パルプに比べ長繊維であり、強度が強く、引張破断伸びを大きくする傾向にある。例えば、パルプとして、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未さらしクラフトパルプ)などの針葉樹パルプをパルプ中5質量部以上使用することが好ましい。袋として使用する場合の強度が実用上十分であり、また耐水性と耐油性に優れる。好ましくは、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)を5~20質量%およびLBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)を95~80質量%を含むパルプを使用するとよい。さらに、引張破断伸びをさらに強化する場合は、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)を80~95質量%およびLBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)を5~20質量%を含むパルプを使用することが好ましい。
【0013】
紙基材としては填料を含有するものも使用できる。填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。紙基材中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。例えば、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを1~15質量部、好ましくは2~10質量部含むとよい。
【0014】
また、紙基材には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤、水溶性高分子、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などが挙げられる。
【0015】
サイズ剤としては、中性ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、酸性ロジンサイズ剤、弱酸性ロジンサイズ剤、AKD(アルキルケテンダイマー)又はASA(アルケニル無水コハク酸)などが挙げられる。パルプ100質量部に対して0.05~1.0質量部、さらには0.1~0.5質量部の中性ロジンサイズ剤を含有する紙基材を用いることが好ましい。サイズ剤を含有させることでヒートシール剤等を塗工する際に、紙基材への塗工液の浸透が適度に抑えられ、耐水性や耐油性に優れた積層体となる。
【0016】
水溶性高分子としては、コーン澱粉、じゃがいも澱粉、タピオカ澱粉や、これらを加工した架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどを使用することができる。とくに澱粉類と、ポリアクリルアミドの使用が好ましい。水溶性高分子の添加量としてはパルプ100質量部に対して、0.05質量部以上である。さらに好ましくは0.1質量部以上である。例えば、パルプ100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは、0.1~7.0質量部の水溶性高分子含有させることが好ましい。さらには、パルプ100質量部に対して、0.1~7.0質量部、好ましくは0.1~5.0質量部のポリアクリルアミド、および/または、0.1~3.0質量部、好ましくは0.1~2.0質量部の澱粉、好ましくはカチオン化澱粉を含有させることが好ましい。含有させる方法としては、内添、塗布(サイズプレス、エアーナイフコーターなど)などの既知の方法を使用することができる。
【0017】
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きでも、複数層の貼合品であってもよい。
【0018】
紙基材には、顔料塗工層が設けられていてもよい。顔料塗工層は、顔料と、バインダーとを含む塗液を塗布して形成される。顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、又はアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント)が挙げられる。例えば、顔料としては、20~40質量部のカオリンと60~80質量部の重質炭酸カルシウムの組み合わせを使用することができる。
【0019】
バインダーも一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の接着剤を用いることができ、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の合成樹脂類等を例示できる。
【0020】
塗工剤中の顔料とバインダーの配合割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対しバインダー5~50質量部とすることが好ましい。例えば、顔料100質量部に対して、バインダーとして1~5質量部のリン酸エステル化澱粉と5~15質量部のスチレンブタジエンラテックスの組み合わせを使用することができる。塗工剤には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。また、このような塗工剤の塗工量としては、例えば、紙基紙の片面あたり、固形分換算で、2~40g/m2である。
【0021】
紙基材の表面のうち、アンダーコート層が設けられる面は、算術平均粗さRa2が6.0μm以下であることが好ましい。算術平均粗さRa2が6.0μmを超える場合、アンダーコート層のガスバリアコート層側の面の算術平均粗さRa1を5.0μm以下にするために水性コート剤を多量に塗布する必要がある。算術平均粗さRa2の測定方法については後述する。
【0022】
(アンダーコート層)
アンダーコート層は紙基材にアクリルエマルションを含む水性コート剤を塗布、乾燥させて形成された層である。アンダーコート層の表面(アンダーコート層の紙基材とは反対側の面であり、かつ後述するガスバリアコート層が設けられる面でもある)の算術平均粗さR1は5.0μm以下であり、またコッブ吸水度は10.0g/m2以下である。これにより、ガスバリア性に優れた積層体とすることができる。なお、本明細書におけるコッブ吸水度は、JIS-P-8140に定めるコッブ法に準じて60秒間水に接触した場合に、単位面積当たりの紙に吸収される水の量である。
【0023】
本発明に用いられる水性コート剤は例えば、カルボキシル基を有するアニオン性重合性モノマーを含むモノマー組成物(i)を水性媒体中で乳化重合して得られる重合体をアルカリ化合物で中和して中和物を得た後、当該中和物の存在下で疎水性モノマーを含むモノマー組成物(ii)を乳化重合して得られる。
【0024】
カルボキシル基を有するアニオン性重合性モノマーとしては例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸類、並びにマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、及びイタコン酸モノブチル等のα,β-不飽和ジカルボン酸半エステル類等が挙げられ、一種または二種以上を併用して用いることができる。アクリル酸、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0025】
モノマー組成物(i)は、アニオン性重合性モノマー以外の重合性モノマーを含んでいてもよい。このようなモノマーとしては、ノニオン性モノマー、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーのいずれであってもよい。
【0026】
ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、及びN-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N-ラウリル(メタ)アクリルアミド、N-ターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類、
【0027】
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類、
【0028】
ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン類、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、
マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類、並びに酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0029】
カチオン性モノマーとしては、モノ-又はジ-アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノ-又はジ-アルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、(モノ-又はジ-アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0030】
アニオン性モノマーとしては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びスルホン化スチレン等のスルホン酸基含有モノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基含有モノマー、及びこれらのアルカリ化合物による塩等が挙げられる。
【0031】
モノマー組成物(i)の重合方法としては従来公知の方法を用いることができ、全てのモノマーを反応容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合法、モノマーの一部又は全部を反応容器に分割して添加して重合する分割添加重合法、及びモノマーの一部又は全部を反応容器に連続的に滴下しながら重合する連続滴下重合法等を用いることができる。
【0032】
重合反応を行う際には必要に応じて界面活性剤を用いることができる。このような界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、両性界面活性剤、並びに重合性基を有する界面活性剤が使用できる。ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物のリン酸エステル塩、スルホン酸塩、コハク酸エステル塩、並びにスルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン塩、強化ロジン塩、並びにヘキシルジフェニルエーテルジスルホン酸、デシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、及びヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、並びにこれら化合物の塩が例示される。塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩等を例示できる。
【0034】
両性界面活性剤としては、アニオン性基とカチオン性基とを有する界面活性剤、及び前記界面活性剤においてアニオン性基がナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアミン塩になっているもの等を挙げることができる。
【0035】
重合性基を有する界面活性剤は一般に反応性乳化剤と称され、分子中に疎水基、親水基及び重合性基を有する化合物を挙げることができる。重合性基は、例えば、(メタ)アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素-炭素二重結合を有する官能基を含む。具体例として分子中に前記重合性基を一つ以上有する、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンフェニルエーテル等の重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル系化合物、並びにポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル系化合物、
【0036】
前記重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル系化合物及び前記ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル系化合物から誘導されるスルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩、前記重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル化合物から誘導される脂肪族カルボン酸塩及び芳香族カルボン酸塩、酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系化合物、並びにロジン-グリシジル(メタ)アクリレート系化合物等が挙げられる。
【0037】
重合に用い得る重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムなどの無機過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、これらの無機過硫酸塩又は有機過酸化物と還元剤の組合せによるレドックス系重合触媒、並びに2,2’-アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒等が挙げられるがこれに限定されない。これらの重合開始剤は、2種以上併用してもよい。
【0038】
重合開始剤の使用量は適宜調整され得るが、一例としてモノマー組成物(i)の総量の0.01~5モル%である。重合開始剤は、モノマー組成物(i)とともに反応容器に一括して仕込んでもよいし、連続滴下してもよい。
【0039】
モノマー組成物(i)の重合には公知の連鎖移動開始剤を用いてもよい。連鎖移動開始剤としては、ノルマルオクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、ノルマルオクタデシルメルカプタン、及びノルマルヘキサデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン系化合物、並びにチオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体、メルカプトエタノール、チオエタノール、チオリンゴ酸、及びチオサリチル酸等のメルカプタン誘導体等が挙げられる。連鎖移動剤は2種以上併用してもよい。
【0040】
連鎖移動剤の使用量は適宜調整され得るが、一例としてモノマー組成物(i)の総量の0.01~2質量%である。連鎖移動剤は、モノマー組成物(i)とともに反応容器に一括して仕込んでもよいし、連続滴下してもよい。
【0041】
重合時のモノマー濃度は一例として15~50質量%である。重合時の反応温度は一例として40~95℃、反応時間は、1~20時間である。
【0042】
中和反応に用いるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。アルカリ化合物の使用量は、アニオン性重合性モノマーのアニオン性基の当量即ちアニオン当量に対して、0.6~1当量が好ましい。アルカリ化合物の使用量が0.6当量未満あるいは1当量を超える場合には十分な分散性が得られず、後述する疎水性モノマーを乳化重合する際の乳化重合性が劣る場合がある。
【0043】
モノマー組成物(ii)に用いられる疎水性モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類、並びに酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。2種以上を用いてもよい。スチレン類及び炭素数が4~8であるアルキル基を有する(メタ)アクリレート類を用いることが好ましい。
【0044】
モノマー組成物(ii)は疎水性モノマー以外のモノマーを含んでいてもよい。(メタ)アクリルアミド、N-置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N-置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、及びビニルピロリドン等のノニオン性モノマー、(モノ-又はジ-アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノ-又はジ-アルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、(モノ-又はジ-アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、及びジアリルアミン等のカチオン性モノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、及びイタコン酸モノブチル等のカルボキシル基を有するモノマー、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基を有するモノマー等のアニオン性モノマーが挙げられる。これらモノマーの使用量は、モノマー組成物全量の5質量%以下、より好ましくは2質量%以下に留めることが好ましい。
【0045】
モノマー組成物(ii)の乳化重合には従来公知の方法を用いることができ、一例としてモノマー組成物(i)の重合体のアルカリ中和物の存在下で、モノマー組成物(ii)を、水中においてラジカル重合触媒によって乳化重合する方法が挙げられる。
【0046】
ラジカル重合触媒としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムなどの無機過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、これらの無機過硫酸塩又は有機過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系重合触媒、2, 2'-アゾビスイソブチロニトリル及び2,2'-アゾビス-2-メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒等を挙げられるがこれに限定されない。重合開始剤は、2種以上使用してもよい。また、必要に応じて公知の連鎖移動剤を適宜併用してもよい。
【0047】
モノマー組成物(ii)を重合するにあたって、モノマー組成物(ii)100質量部に対し、モノマー組成物(i)の重合体のアルカリ中和物が60~150質量部で用いられることが好ましい。
【0048】
モノマー組成物(ii)を重合する際には、モノマー組成物(i)の重合に用いたのと同様の界面活性剤を用いてもよい。
【0049】
水性コート剤としては、モノマー組成物(ii)を重合したものとそのまま用いてもよいし、水または水性の溶剤で希釈して用いてもよい。
【0050】
また水性コート剤としては市販のものを用いることもでき、DIC社製のHYDRECT(登録商標)シリーズ、第一塗料社製のハービル(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0051】
水性コート剤の塗布量は、アンダーコート層の表面の算術平均粗さR1が5.0μm以下となるよう適宜調整される。一例として1.0g/m2~15g/m2(固形分)である。
【0052】
算術平均粗さR1の下限は特に制限されないが、1.0μmを下回るには多量の水性コート剤を塗布する必要がある一方、ガスバリア性は飽和する。従って生産性とのバランスの観点から1.0μm以上であることが好ましい。
【0053】
さらに、アンダーコート層の表面(ガスバリアコート層側の面)の輪郭曲線要素の平均長さRSmが150μm以上であることが好ましい。これにより、よりガスバリア性に優れた積層体を得ることができる。RSmの上限は特に制限されないが、生産性の観点から一例として700μmである。RSmは、一例として水性コート剤の塗布量により調整される。
【0054】
算術平均粗さRa(Ra1、Ra2)及び輪郭曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。Raは粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分について、平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にZ軸を取り、粗さ曲線を式:Z=f(x)で表し、基準長さをlrで表したときに、次の式によって求められる値である。
【0055】
【0056】
RSmは、基準長さ(lr)中に輪郭曲線要素がm個あり、各輪郭曲線要素の長さXsの平均であり、次の式によって求められる値である。
【0057】
【0058】
水性コート剤の塗工方法としては特に限定されず、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法、ダイコート(ダイコーティング)法、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、フレキソ法、ナイフコート法、、ドットコーコート法等を用いることができる。
【0059】
(ガスバリアコート層)
ガスバリアコート層は、アンダーコート層にガスバリアコート剤を塗布、乾燥させて形成された層である。ガスバリアコート剤としては従来公知のものを用いることができ、一例としてビニルアルコール系重合体と、水性溶剤とを含むものが挙げられる。具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどが挙げられる。ビニルアルコール系重合体は、アセトアセチル基、カルボキシル基、アニオン性カルボキシル基、スルホン酸基、アニオン性スルホン酸基等の水酸基以外の反応性官能基を有していてもよい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ビニルアルコール系重合体としては、ビニルエステルの単独重合体または共重合体の加水分解物や、ビニルエステルの単独重合体または共重合体の加水分解物をアルデヒドまたはケトンと反応させ、アセタール化した化合物が挙げられる。水酸基以外の反応性官能基を有するビニルアルコール系重合体としては、ビニルエステルと反応性官能基を有するモノマーとの共重合体の加水分解物や、ビニルエステルの単独重合体または共重合体の加水分解物の水酸基またはアセチル基を、反応性官能基を有する化合物を用い、公知の方法で修飾したものが挙げられる。
【0061】
ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル、アセト酢酸ビニル等が挙げられ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。酢酸ビニルを用いることが好ましい。
【0062】
ビニルエステルと共重合可能な重合性化合物としては、エチレン、プロペン、1-ブテン、イソブチレン、1,3-ブタジエン、酢酸イソプロペニル、酢酸2-プロペニル、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-(ヒドロキシメチル)-N-ビニルホルムアミドアクリル酸ヒドロキシエチル、メチルビニルケトン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセテート、ビニルスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、オルトスチレンスルホン酸、メタスチレンスルホン酸、パラスチレンスルホン酸等が挙げられ、1種または2種以上を組みわせて用いることができる。中でもエチレン、酢酸イソプロペニル、酢酸2-プロペニルを用いることが好ましい。
【0063】
ビニルエステルと、重合性化合物とを併用する場合、これらの使用量は適宜調整され得るが、ガスバリア性の観点から重合性化合物の配合量をビニルエステルと重合性化合物の総量の60モル%以下に留めることが好ましく、25モル%以下に留めることがより好ましい。
【0064】
ビニルアルコール系重合体の前駆体であるビニルエステル重合体の重合度は特に限定されないが、一例として500~10000であり、より好ましくは800~6000、より好ましくは1000~3000である。これにより、ガスバリア性と塗工適性のバランスに優れたコーティング剤とすることができる。
【0065】
ビニルアルコール系重合体は、ガスバリア性に優れることからケン化度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが好ましい。100%であってもよい。ケン化度は、例えば、OMNICソフトウェアにより制御されたNicolet 5700FTIR分光計を用いて、FTIRにより測定することができる。
【0066】
ビニルアルコール系重合体をアセタール化する場合、アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ドデシルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;シクロヘキサンカルボアルデヒドなどの脂環族アルデヒド;ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、トルアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、ベンジルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;シクロヘキセンアルデヒド、ジメチルシクロヘキセンアルデヒド、アクロレインなどの不飽和アルデヒド;フルフラール、5-メチルフルフラールなどの複素環を有するアルデヒド;グルコース、グルコサミンなどのヘミアセタール;4-アミノブチルアルデヒドなどのアミノ基を有するアルデヒドなどが挙げられる。ケトンとしては2-プロパノン、メチルエチルケトン、3-ペンタノン、2-ヘキサノンなどの脂肪族ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの脂肪脂環式ケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどの芳香族ケトンなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
【0067】
アセタール化の際に用いられる酸触媒としては酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸など従来公知の有機酸や無機酸を用いることができる。
【0068】
ビニルアルコール系重合体は、ケン化度が95%以上の前駆体をアセタール化したものであることが好ましい。
【0069】
ビニルエステルの単独重合体または共重合体の加水分解物の水酸基またはアセチル基を修飾する方法としては、例えば、ガス状または液状のジケテンを直接反応させる方法、酢酸等の有機酸を予め吸着吸蔵させた後、これに不活性ガス雰囲気下でガス状または液状のジケテンを反応させる方法、あるいは有機酸とジケテンの混合物を噴霧して反応させる方法等により、ジケテンを反応させ(反応生成工程)、その後、炭素数1~3のアルコールを用いて未反応のジケテンを洗浄除去し(洗浄工程)、ついで所定の条件にて乾燥させる(乾燥工程)方法、ビニルエステルの単独重合体または共重合体の加水分解物とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法等が挙げられる。これにより、ビニルアルコール系重合体にアセトアセチル基を導入することができる。
【0070】
水性溶剤としては水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコールなどのアルコール類;スルホラン、エステル、ケトン、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリンおよびそのポリアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。水性溶剤は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
ガスバリアコート剤はさらに層状無機化合物、ビニルアルコール系重合体が有する官能基と反応可能な架橋剤、無機充填剤、消泡剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、レベリング剤等を含んでいてもよい。
【0072】
層状無機化合物としては、モンモリロナイト等に代表される天然スメクタイト、合成スメクタイト、天然マイカ、合成マイカ、ハイドロタルサイト及びタルク、ならびにそれらを有機処理した親油性処理スメクタイト及び親油性合成マイカ等が挙げられる。層状無機化合物を用いることによりガスバリアコート層のガスバリア性は向上する。層状無機化合物の配合量は、ビニルアルコール系重合体100質量部に対して10質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
【0073】
架橋剤としては、ホルムアルデヒド、シュウ酸アルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類;グルタルアルデヒドのジアセタール化物等のアセタール類;ヘキサメチレンジイソシアネートやその誘導体(アダクト体、ヌレート体、ビュレット体等)に代表される脂肪族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネートやその誘導体に代表される芳香脂肪族ポリイソシアネート、トルエンジイソシアネートやその誘導体に代表される芳香族ポリイソシアネート、これらイソシアネートとポリオールとの反応生成物であるウレタンプレポリマー等のイソシアネート類;エポキシ類;チタン、けい素、アルミ、ジルコニウム、硼素等とアルコキシド等との有機金属化合物;メチロール尿素、メチロールメラミン等のメチロール尿素類;ポリアクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸系ポリマー等のカルボキシル基含有ポリマー類;p-フェニレン-ビス(2,6-キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン-1,4-ビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド等のカルボジイミド類;メチレンジヒドラジン、エチレンジヒドラジン、プロピレンジヒドラジン、ブチレンジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;アジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、ポリヒドラジド等のヒドラジド化合物;ホウ酸;乳酸チタン等が挙げられる。イソシアネート類は、公知のブロック化剤を用いたブロック化イソシアネートを用いてもよいし、エマルジョン型イソシアネートを用いてもよい。
【0074】
架橋剤の配合量は適宜調整されるが、一例としてビニルアルコール系重合体100質量部に対して0.5~30質量部である。
【0075】
ガスバリア性に優れることから、ビニルアルコール系重合体と、水性溶剤と、層状無機化合物とを含むガスバリアコート剤を用いることが好ましい。ヒートシール性に優れることから、アセタール化ビニルアルコール系重合体と、水性溶剤と、架橋剤とを含むガスバリアコート剤を用いることが好ましい。
【0076】
ガスバリアコート剤としては市販のものを用いることもでき、一例として住友化学社製のエクセビア(登録商標)、サンケミカル社製のSunBar(登録商標)シリーズ、三井化学社製のタケラックWPB(登録商標)シリーズ、東京インキ社製のLG-OX等が挙げられる。
【0077】
ガスバリアコート剤の塗布量は、目的とするガスバリア性の程度によって適宜調整されるが、一例として0.1g/m2~5.0g/m2、より好ましくは0.3g/m2~2.0g/m2である。
【0078】
ガスバリアコート剤の塗工方法としては特に限定されず、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法、ダイコート(ダイコーティング)法、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、フレキソ法、ナイフコート法、ドットコーコート法等を用いることができる。
【0079】
(ヒートシール層)
ヒートシール層は、ヒートシール剤を塗布、乾燥させて形成される。ヒートシール層は紙基材またはガスバリアコート層上に、直接または任意の層を介して配置される。ヒートシール剤の形成に用いられるヒートシール剤としては特に限定されず、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプなど、いずれの形態のものであってもよい。
【0080】
ヒートシール性樹脂としては、例えば、セラック類、ロジン類、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、硝化綿、酢酸セルロース、セルロースアセチルプロピオネート、セルロースアセチルブチレート、塩化ゴム、環化ゴム、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化エチレンビニルアセテート樹脂、エチレンビニルアセテート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、カゼイン、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらは一種類または二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0081】
有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。
【0082】
水性の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられる。
【0083】
ヒートシール層の形成に用いられるヒートシール剤は、さらに他の成分、例えばワックス、フィラーなどの滑剤、消泡剤、可塑剤、レベリング剤、乳化剤、分散安定剤、界面活性剤、粘着性付与剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0084】
ワックスとしては、脂肪酸アミドワックス、カルバナワックス、ポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし併用してもよい。これにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。ヒートシール性を低下させずに耐ブロッキング性を向上させることができることから、ポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
【0085】
ワックスの配合量は適宜調整され得るが、熱可塑性樹脂の0.1~20質量%であることが好ましい。ヒートシール性と耐ブロッキング性のバランスの観点から、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0086】
フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、タルク、ウレタンビーズ、アクリルビーズ、メラミンビーズ等が挙げられ、単独または複数を組合わせて用いることができる。シリカ、アクリルビーズのいずれかまたは両方を用いることが好ましい。これにより、耐ブロッキング性を向上させることができる。また、例えば本発明の積層体を高温下で保管した場合にヒートシール層が流れ出し、膜厚が薄くなるのを抑制することもできる。
【0087】
フィラーの形状は特に限定されないが、熱による変形の影響が少なく、塗膜中での分散の仕方によらず安定的な耐ブロッキング効果を得られることから球状であることが好ましい。フィラーの平均粒子径は、用いるフィラーにより適宜調整されるが、一例として0.5~10μmである。
【0088】
消泡剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸塩類、液体脂肪油硫酸エステル類、脂肪族アミン及び脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコールリン酸エステル類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪酸アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アクリル系ポリマー、シルコーン混合アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
【0089】
ヒートシール剤の塗工方法としては、特に限定されないが、一例としてグラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、エアナイフコート法、メイヤーバーコート法、ロールコート法、ディップコート法等が挙げられる。ヒートシール層は、積層体の全面に設けられていてもよいし、製袋する際にヒートシールする部分のみに設けられていてもよい。
【0090】
ヒートシール剤を塗布した後、乾燥させることでヒートシール層が形成される。乾燥温度は50~180℃、乾燥時間は0.5秒~1分程度である。乾燥方法は特に限定されないが、一例として熱風乾燥が挙げられる。必要に応じ、後処理としてコロナ放電処理などを施してもよい。
【0091】
ヒートシール剤の塗布量(固形分)は特に制限されないが、一例として1.0~15.0g/m2である。2.0~10.0g/m2であることが好ましく、2.0~8.0g/m2であることがより好ましい。
【0092】
(印刷層)
本発明の積層体は、紙基材、ヒートシール層以外の層を有していてもよい。一例として印刷層が挙げられる。印刷層は紙基材上に直接設けられていてもよいし、印刷層と紙基材との間にバリア層やアンカーコート層が設けられていてもよい。印刷層は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来、紙基材への印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。
【0093】
(オーバーコート層)
さらに印刷層上に、印刷層の保護を目的としたオーバーコート層が設けられていてもよい。オーバーコート層は、従来公知のコート剤を好適に用いることができ、一例としてDIC社製のHydbar(登録商標)シリーズ、Hydlith(登録商標)シリーズ、ディックセーフ(登録商標)シリーズ、サイアスHR(登録商標)シリーズ、サンケミカル社製のVaporblocシリーズ、サカタインクス製のブライトーン(登録商標)シリーズが挙げられる。印刷層、オーバーコート層を備える場合の積層体の構成例としては、オーバーコート層/印刷層/紙基材/アンダーコート層/ガスバリアコート層/ヒートシール層、オーバーコート層/印刷層/ガスバリアコート層/アンダーコート層/紙基材/ヒートシール層が挙げられる。
【0094】
<包装材>
本発明の積層体は、食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0095】
本発明の包装材は、本発明の積層体を製袋し、その周辺端部をヒートシールして得られる。製袋方法としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールする部分は、対向する両方の面にヒートシール層が設けられていてもよいし、片方の面のみに設けられていてもよい。
【0096】
ヒートシールの際の加熱方法としては、バーナー等の熱源、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができる。バーナーや熱風で加熱する方法や、成形の形によっては熱溶着シール法や超音波シール法、あるいは高周波シール法が好ましい。この時の加熱温度は200~500℃、加熱時間は0.1~3秒が好ましい。
【0097】
ヒートシール層を加熱軟化させた後、圧着させる。圧着方法としては特に限定なく、熱板方式、超音波シール、高周波シールの方法で行うことができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を具体的な合成例、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ表す。
【0099】
<紙基材>
紙基材として、以下のものを用いた。
紙基材1:大王製紙(株)製、ナゴヤ晒竜王、坪量70g/m2
紙基材2:王子マテリア(株)製、OKブリザード、坪量70g/m2
紙基材3:日本製紙(株)製、キャピタルラップ、坪量70g/m2
紙基材4:日本製紙(株)製、キャピタルラップ、坪量80g/m2
紙基材5:UPM製、UPM Brilliant Pro、坪量62g/m2
紙基材6:王子マテリア(株)製、OK未晒クラフト紙、坪量100g/m2
【0100】
<水性コート剤>
(水性コート剤1)
窒素ガス置換した四つ口フラスコに、イソプロピルアルコールを100部仕込み、温度を80~82℃に上げた後、滴下ロートに仕込んだミリスチルアクリレート1部、スチレン30部、アクリル酸10部、メチルメタクリレート5部、過酸化ベンゾイル1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過酸化ベンゾイル0.5部を追加し、更に2時間反応させた。温度を40℃に下げ、ジメチルエタノールアミン、イオン交換水を添加した。その後、反応フラスコの温度を80~82℃に上げ、ストリッピングを行ない、最終的に固形分30%の水溶性樹脂を得た。
【0101】
上記で得た水溶性樹脂に、イオン交換水10部を反応フラスコに仕込み、温度を80℃~82℃に上げた後、過硫酸カリウムを2部添加し、スチレン15部、αメチルスチレン5部、2-エチルヘキシルアクリレート24部、ブチルアクリレート10部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、過硫酸カリウム0.2部を添加し、2時間反応させた。このようにして得られたアクリルエマルションの固形分は40%であり、最低造膜温度は1℃、ガラス転移点は-27℃、固形分の酸価は64mgKOH/gであった。これを水性コート剤1として用いた。
【0102】
(水性コート剤2)
CARBOSET GAW 7448(Lubrizol社製、水性アクリルエマルション)を水性コート剤2として用いた。
【0103】
<溶剤系コート剤>
(溶剤系コート剤1’)
サイアス HR メジューム(DIC社製、ニトロセルロース系樹脂溶液)を溶剤系コート剤1’として用いた。
【0104】
(溶剤系コート剤2’)
ソルバイン M5(日信化学工業(株)社製、塩酢ビ樹脂)100質量部、ソルバイン A(日信化学工業(株)社製、塩酢ビ樹脂)5質量部、PARALOID A-11(DOW Inc.社製、アクリル樹脂)25部を酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒に溶解させたものを溶剤系コート剤2’として用いた。
【0105】
(溶剤系コート剤3’)
バイロン500(東洋紡(株)社製、ポリエステル樹脂)50質量部と、エリーテルUE-3240(ユニチカ(株)社製、ポリエステル樹脂)50質量部を、酢酸エチルとメチルエチルケトンの混合溶媒に溶解させたものを溶剤系コート剤3’として用いた。
【0106】
<バリアコート剤>
(バリアコート剤1)
ゴーセネックスZ-100(三菱ケミカル(株)製、変性ポリビニルアルコール樹脂)を不揮発分が10%になるように水に溶解させたもの95部に対し、ADH(大塚化学(株)製、アジピン酸ジヒドラジド)を水/IPAの混合溶剤に不揮発分が5%になるように溶解させたもの5部を加え、混合したものをバリアコート剤1として用いた。
【0107】
(バリアコート剤2)
エクセバールAQ-4104(クラレ(株)製、変性ポリビニルアルコール樹脂)50質量部、クニピア-F(クニミネ工業(株)社製、ベントナイト)50質量部を、エタノール20質量部、水80質量部の混合溶剤に不揮発分が6%になるよう分散させたものをバリアコート剤2として用いた。
【0108】
(実施例1)
紙基材1のザラ面に、水性コート剤1を固形分が5.0g/m2となるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させてアンダーコート層を形成した。次いでアンダーコート層上にバリアコート剤1を固形分が0.8g/m2となるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させてバリアコート層を形成した。バリアコート層上にディックシールA-970NT(DIC(株)製、ヒートシール剤)を固形分が5.0g/m2となるよう塗布し、80℃のオーブンで1分間乾燥させてヒートシール層を形成し、実施例1の積層体を得た。
【0109】
(実施例2~6、比較例1~5)
用いる紙基材、水性コート剤(または溶剤系コート剤)およびその塗布量、バリアコート剤およびその塗布量を表1、表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2~6、比較例1~5の積層体を得た。
【0110】
<評価>
(ガスバリア性)
実施例、比較例の積層体を10cm×10cmのサイズに調整し、OX-TRAN2/21(モコン社製:酸素透過率測定装置)を用い、JIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃0%RHの雰囲気下で酸素透過率を測定し、結果を表1、2にまとめた(単位はcc/m2・day・atm)。なおRHとは、湿度を表す。
【0111】
(シール強度)
熱傾斜式ヒートシールテスター(テスター産業(株)製)を用い、シール温度120℃、圧力1kg/cm2 、時間1秒でヒートシール剤の塗工面同士をヒートシールした。サンプル幅を15mmとし、引張り速度200mm/minでT型ピール強度を測定し、結果を表1、2にまとめた。ヒートシール強度が十分に高く、測定途中に紙基材が破断した場合は紙破れとした。
【0112】
【0113】
【0114】
実施例、比較例から明らかなように、本発明の積層体は良好なガスバリア性を示した。一方、Ra1が5.0μm以上である比較例1のガスバリア性は、実施例の積層体と比較すると劣るものであった。水性コート剤に換えて溶剤系コート剤1’~3’を用いた比較例2~4、アンダーコート層を省略した比較例5は、コッブ吸水度を所定の範囲まで下げることができず、非常にガスバリア性に劣るものとなった。
【要約】
ガスバリア性に優れ、プラスチックの使用量を低減することができる包装用積層体、包装材を提供する。
紙基材と、アンダーコート層と、ガスバリアコート層と、ヒートシール層とを含み、アンダーコート層は紙基材に隣接して配置され、ガスバリアコート層はアンダーコート層に隣接して配置され、アンダーコート層はアクリルエマルションを含む水性コート剤の乾燥塗膜であり、アンダーコート層のガスバリアコート層側の面の算術平均粗さRaが5.0μm以下であり、コッブ吸水度が10.0g/m2以下である積層体、当該積層体からなる包装材。