(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】照明装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230606BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20230606BHJP
F21V 3/06 20180101ALI20230606BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20230606BHJP
B60Q 3/70 20170101ALI20230606BHJP
B60Q 3/225 20170101ALI20230606BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20230606BHJP
F21V 3/10 20180101ALI20230606BHJP
G09F 13/04 20060101ALN20230606BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230606BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20230606BHJP
F21W 106/00 20180101ALN20230606BHJP
【FI】
F21S2/00 670
F21V3/00 350
F21S2/00 481
F21V3/06 130
B60Q3/217
B60Q3/70
B60Q3/225
F21V3/02 600
F21V3/10 330
F21V3/10 370
G09F13/04 K
F21Y115:10
F21Y103:00
F21W106:00
(21)【出願番号】P 2019177925
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】396019974
【氏名又は名称】冨士ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】三井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】坂本 貴樹
(72)【発明者】
【氏名】茶座 聖始
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-018747(JP,A)
【文献】特開平01-301782(JP,A)
【文献】特開2011-107689(JP,A)
【文献】特開2018-014307(JP,A)
【文献】特開2014-041351(JP,A)
【文献】特開2018-045191(JP,A)
【文献】特許第6561193(JP,B1)
【文献】特開2008-305940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 8/00
F21V 3/00- 3/10
B60Q 3/00- 3/88
G09F 13/04
F21Y 115/10
F21Y 103/00
F21W 106/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面板と前面板とが積層されてなる意匠板と、光照射手段とを備える照明装置であって;
前記裏面板が、メタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物からなるとともに、その一方の表面に凹凸を有し、
前記前面板の一方の表面が前記凹凸と接するとともに、他方の表面が平坦であり、
前記裏面板が前記光照射手段と対向する向きに配置されてなり、
前記前面板を構成する樹脂の全光線透過率(X)が20~100%/2mmであり、かつ
前記裏面板を構成する樹脂の全光線透過率(Y)が0.1~80%/2mmであることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記裏面板の前記表面が、筋模様をさらに有し、該筋模様のピッチが前記凹凸のピッチよりも小さい請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記裏面板の最大厚み(A)が1~20mmであり、最小厚み(B)が0.5~10mmであり、
厚さ(A)と厚さ(B)との差が0.5mm以上である請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記凹凸のピッチが0.5~20mmである請求項1~3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記裏面板の厚みが緩やかに変化してなる請求項1~4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記意匠板の厚さが、2~30mmである請求項1~5のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
前記前面板が、ヘイズが90%以下の樹脂からなる請求項1~6のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
前記光照射手段が拡散光を照射する請求項1~7のいずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
前記光照射手段が光拡散板と光源とを有する請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記裏面板と前記光照射手段との間に遮光パターンを形成してなる請求項1~9のいずれかに記載の照明装置。
【請求項11】
前記光照射手段がパターン情報を含む請求項1~9のいずれかに記載の照明装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の照明装置からなる自動車用内装部品。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の照明装置の製造方法であって;
共通型と第1交換型の間に形成される裏面板用キャビティにメタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物を射出して充填して前記裏面板を形成する工程1と、
第1交換型を第2交換型に交換する工程2と、
前記裏面板と第2交換型の間に形成される前面板用キャビティに樹脂を射出して充填して前記前面板を形成する工程3と、
前記共通型及び前記第2交換型を冷却して、該共通型及び第2交換型から前記意匠板を取り出す工程4と、
前記裏面板が前記光照射手段と対向する向きに前記意匠板を配置する工程5を有する照明装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意匠板と光照射手段とを備える照明装置に関する。また本発明は、その照明装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明装置は室内等を明るくすることを主な目的として用いられてきたが、近年では車両や建物などの装飾品としても使用されるようになっている。
【0003】
特許文献1には、自動車内装に設置された表面に装飾意匠層を施された光拡散板と、該光拡散板の裏面側に設置された光源とを備えてなる自動車内装用照明装置が記載されている。この自動車内装用照明装置は、消灯時(昼間)には金属調等の外観を有しながら、点灯時(夜間)には、光拡散板の作用により光がぼんやり浮かぶ照明となるようなものである。そしてこの照明装置を用いることにより、昼間と夜間とで異なる演出を達成することができるとされている。
【0004】
近年、消費者ニーズの多様化に伴って、消灯時及び点灯時のいずれにおいても高度な意匠性を有する照明装置が求められている。しかしながら、特許文献1に記載の照明装置はこのような要求を十分に満足しているとは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、消灯時には深みのある立体的な模様を有するとともに、点灯時には濃淡模様を有する照明装置及びその製造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
裏面板と前面板とが積層されてなる意匠板と、光照射手段とを備える照明装置であって;
前記裏面板が、メタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物からなるとともに、その一方の表面に凹凸を有し、
前記前面板の一方の表面が前記凹凸と接するとともに、他方の表面が平坦であり、
前記裏面板が前記光照射手段と対向する向きに配置されてなり、
前記前面板を構成する樹脂の全光線透過率(X)が20~100%/2mmであり、かつ
前記裏面板を構成する樹脂の全光線透過率(Y)が0.1~80%/2mmであることを特徴とする照明装置を提供することによって解決される。
【0008】
このとき、前記裏面板の最大厚み(A)が1~20mmであり、最小厚み(B)が0.5~10mmであり、厚さ(A)と厚さ(B)との差が0.5mm以上であることが好ましい。前記凹凸のピッチが0.5~20mmであることも好ましい。前記裏面板の厚みが緩やかに変化してなることも好ましい。前記意匠板の厚さが、2~30mmであることも好ましい。前記前面板が、ヘイズが90%以下の樹脂からなることも好ましい。
【0009】
また、前記光照射手段が拡散光を照射することが好ましい。前記光照射手段が光拡散板と光源とを有することも好ましい。前記裏面板と前記光照射手段との間に遮光パターンを形成してなることも好ましい。前記光照射手段がパターン情報を含むことも好ましい。
【0010】
上記課題は、
上記照明装置の製造方法であって;
共通型と第1交換型の間に形成される裏面板用キャビティにメタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物を射出して充填して前記裏面板を形成する工程1と、
第1交換型を第2交換型に交換する工程2と、
前記裏面板と第2交換型の間に形成される前面板用キャビティに樹脂を射出して充填して前記前面板を形成する工程3と、
前記共通型及び前記第2交換型を冷却して、該共通型及び第2交換型から前記意匠板を取り出す工程4と、
前記裏面板が前記光照射手段と対向する向きに前記意匠板を配置する工程5を有する照明装置の製造方法を提供することによっても解決される。
【0011】
上記照明装置からなる自動車用内装部品が本発明の好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明装置は、消灯時には深みのある立体的な模様を有するとともに、点灯時には濃淡模様を有するので消灯時と点灯時のいずれにおいても高い意匠性を有する。また本発明の製造方法によれば、このような照明装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例で作製した意匠板の形状を示した図である。
【
図2】
図1のA-A線断面模式図を示した図である。
【
図3】
図2のA-A線断面模式図において四角で囲んだ箇所(B)を拡大した図である。
【
図4】実施例4において照明を消灯させたときの外観写真である。
【
図5】実施例4において照明を点灯させたときの外観写真である。
【
図6】実施例6において照明を消灯させたときの外観写真である。
【
図7】実施例6において照明を点灯させたときの外観写真である。
【
図8】実施例13において照明を消灯させたときの外観写真である。
【
図9】実施例13において照明を点灯させたときの外観写真である。
【
図10】比較例1において照明を消灯させたときの外観写真である。
【
図11】比較例1において照明を点灯させたときの外観写真である。
【
図12】比較例3において照明を消灯させたときの外観写真である。
【
図13】比較例3において照明を点灯させたときの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、意匠板と光照射手段とを備える照明装置に関するものである。以下、図面を参照しつつ本発明の照明装置について説明する。
【0015】
本発明者らは、消灯時には深みのある立体的な模様を有するとともに、点灯時には濃淡模様を有する照明装置を得るために、メタリック顔料を含有する樹脂組成物からなるとともに、その一方の表面に凹凸を有する板のみからなる意匠板を用いて照明装置を作製した(比較例1)。消灯時における外観を評価したところ、メタリック顔料を用いなかった場合(比較例2)と比べて、凹凸表面での光の反射率が向上したためにより立体的な模様となったが、凹凸表面からの直接反射光が目に入るために、深みのある立体感を得ることができなかった。
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果、このような裏面板に前面板を積層することにより、消灯時に深みのある立体的な模様を有する照明装置を得ることができた。また、点灯時には濃淡模様を表現することができ、消灯時と点灯時とで印象の異なった模様を表現することもできた。一方、裏面板と前面板とが積層されてなる意匠板であっても、裏面板にメタリック顔料を配合しなかった場合(比較例3)には、消灯時の模様に立体感が感じられず、点灯時に濃淡模様をわずかに確認できるにとどまった。
【0017】
図1は、本発明における意匠板の一例を示した模式図である。
図2は、
図1のA-A線断面模式図であり、
図3は、
図2のA-A線断面模式図において四角で囲んだ箇所(B)を拡大した図である。図で示した距離の単位はmmである。
【0018】
まず、意匠板における裏面板について説明する。裏面板は、メタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物からなるとともに、その一方の表面に凹凸を有する。
【0019】
本発明で用いられる樹脂組成物は、裏面板となる樹脂に、メタリック顔料又はパール顔料を添加することにより得ることができる。メタリック顔料の種類は特に限定されず、アルミニウム、金、銀、銅等の金属フレークを含むものなどが挙げられる。パール顔料の種類は特に限定されず、マイカなどを含むものが挙げられる。中でも、明りょうな凹凸を表現するためにはメタリック顔料の方が好適である。また、着色した顔料や染料を併せて含有することもできる。本発明においては、樹脂にこれらのメタリック顔料又はパール顔料を分散させたマスターバッチを用いて、メタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物を得ることもできる。メタリック顔料又はパール顔料の含有量は特に限定されず、本発明の効果が阻害されない範囲で適宜選択できる。
【0020】
本発明で用いられる裏面板は、その一方の表面に凹凸を有する。前記凹凸の形状は特に限定されない。例えば、
図2及び3に示したような丸みを帯びた波状の凹凸や、矩形の凹凸や三角山形などが挙げられる。
【0021】
前記凹凸のピッチが0.5~20mmであることが好ましい。ここで凹凸のピッチとは、凹部から隣の凹部までの距離、又は凸部から隣の凸部までの距離のことをいう。前記凹凸のピッチが上記範囲から外れると、模様の立体感が不十分となるおそれがある。前記凹凸のピッチは1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましい。一方、前記凹凸のピッチは15mm以下であることがより好ましい。なお、全ての凹凸が同じピッチである必要はなく、
図3に示すように、例えば、凸部から隣の凸部までの距離(5.32mm、5.89mm、8.15mm)はそれぞれ異なっていても構わない。
【0022】
前記裏面板の前記表面が、筋模様(図示せず)をさらに有し、該筋模様のピッチが前記凹凸のピッチよりも小さいことが好ましい。これによってメタリックによるウエルドが分かりにくくなる。筋模様の方向は特に限定されないが、前記凹凸の溝に沿った方向であることが好ましい。筋模様は、一定の間隔で規則正しく形成された筋模様であっても構わないし、ランダムな筋模様であっても構わない。前記筋模様の筋の幅は限定されないが、0.1~2mmであることが好ましい。前記凹凸のピッチ(P1)と前記筋模様の筋の幅(P2)との比(P1/P2)は3以上であることが好ましい。(P1/P2)は、通常、20以下である。なお、後述する実施例では、ピッチが5~8mm程度の凹凸において、その凹凸の溝の中には、それぞれ5~8本程度の筋模様が確認されている。
【0023】
前記裏面板の最大厚み(A)が1~20mmであり、最小厚み(B)が0.5~10mmであることが好ましい。最大厚み(A)及び最小厚み(B)が上記範囲にあることにより、意匠板の重量や製造コストの上昇を抑えつつ、意匠板の強度を保つことができる。最大厚み(A)は2mm以上であることがより好ましい。最大厚み(A)は10mm以下であることがより好ましい。一方、最小厚み(B)は1mm以上であることがより好ましい。最小厚み(B)は5mm以下であることがより好ましい。
【0024】
厚さ(A)と厚さ(B)との差が0.5mm以上であることが好ましい。厚さ(A)と厚さ(B)との差が0.5mm未満の場合、模様の立体感が不十分となるおそれがある。厚さ(A)と厚さ(B)との差は1mm以上であることがより好ましい。厚さ(A)と厚さ(B)との差は、通常、5mm以下である。
【0025】
前記裏面板の厚みが緩やかに変化してなることが好ましい。ここで、凹凸の溝に対して垂直な方向に沿って厚みが緩やかに変化してなる例を
図2に示す。
図2に示すように、意匠板全体を均一な厚みとした場合、裏面板の厚みが薄い箇所では前面板の厚みが厚くなり、裏面板の厚みが厚い箇所では前面板の厚みが薄くなる。そして、前面板の全光線透過率(X)を所定の値以下とすることで、消灯時に、裏面板の厚みの変化に応じて色に濃淡が生じ、しかも観察する位置に応じて模様の立体感に変化が生じ意匠効果が高い照明装置となる。
【0026】
本発明において、前記裏面板を構成する樹脂の全光線透過率(Y)は0.1~80%/2mmである。全光線透過率(Y)が0.1%/2mm未満の場合、光照射手段からの光が意匠板を十分に透過せず、照明装置として十分に機能しない。一方、全光線透過率(Y)が80%/2mmを超える場合、点灯時に濃淡模様を表すことが困難になる。
【0027】
ここで、全光線透過率(Y)が高い裏面板を用いると、点灯時に明るい照明装置を得ることができる。また、後述するように、照明装置が前記裏面板と前記光照射手段との間に遮光パターンを形成してなる場合や、光照射手段がパターン情報を含む場合、全光線透過率(Y)を高くすると、その遮光パターンやパターン情報を明りょうに表示することができる。かかる点を重視する場合には、全光線透過率(Y)は、2%/2mm以上であることが好ましく、4%/2mm以上であることがより好ましく、10%/2mm以上であることがさらに好ましい。
【0028】
一方、全光線透過率(Y)が低く、メタリック顔料の含有率の高い裏面板を用いると、裏面板の凹凸表面での反射率が上昇するので消灯時により深みのある立体的な模様を表すことができる。かかる点を重視する場合には、全光線透過率(Y)は、40%/2mm以下であることが好ましく、20%/2mm以下であることがより好ましく、10%/2mm以下であることがさらに好ましい。全光線透過率(Y)は、JIS K7361-1(1997)に準じて測定した値であり、表面反射による減少を含んだ値である(以下の全光線透過率(X)についても同様)。
【0029】
次に、本発明で用いられる前面板について説明する。
図2及び3に示すように、前記前面板の一方の表面は、前記凹凸と接するとともに、他方の表面が平坦である。ここで、裏面板の凹凸を視認することができるのであれば、本発明の効果が阻害されない範囲で、前面板の平坦面が、シボやスリを有していても構わない。また、裏面板の表面にも凹凸があっても構わない。また、この凹凸の形状は金型で作製しても良いし、製品を切削して作っても構わない。
【0030】
本発明において、前記前面板を構成する樹脂の全光線透過率(X)は20~100%/2mmである。全光線透過率(X)が20%/2mm未満の場合、光照射手段からの光が意匠板を十分に透過せず、照明装置として機能し難くなるとともに、模様を視認することが困難となる。全光線透過率(X)は、30%/2mm以上であることが好ましく、40%/2mm以上であることがより好ましい。
【0031】
一方、全光線透過率(X)を低くすることで、消灯時に、前面板の厚みの変化に応じて色に濃淡が生じ、しかも観察する位置に応じて模様の立体感に変化が生じ意匠効果が高くなる。このような意匠効果を求める場合には、全光線透過率(X)は90%/2mm以下であることが好ましく、80%/2mm以下であることがより好ましい。
【0032】
また、前面板において、ヘイズを高くすることで凹凸模様を艶消し調にすることができる。このような意匠効果を求める場合には、前記前面板が、ヘイズが30%以上の樹脂からなることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。ヘイズを高くし過ぎると凹凸模様の視認性が損なわれるおそれがあるので、前記前面板が、ヘイズが90%以下の樹脂からなることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
【0033】
全光線透過率(Y)、(X)及びヘイズは、裏面板となる樹脂及び前面板となる樹脂に顔料や染料を添加することにより調節することができる。このとき、裏面板や前面板は着色されていてもよい。このように、前面板を構成する樹脂の全光線透過率(X)及び裏面板を構成する樹脂の全光線透過率(Y)を適宜調整することにより、消灯時及び点灯時において、照明装置の意匠性を観察者の好みに応じて変化させることができる。
【0034】
本発明において、裏面板及び前面板となる樹脂はいずれも特に限定されず、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂及びアクリル樹脂などが挙げられる。また樹脂が、ポリマーブレンドであっても構わない。さらに樹脂は着色されていても無色であってもかまわない。
【0035】
次に、本発明の照明装置について説明する。本発明の照明装置は、上述した意匠板と、光照射手段とを備えるものである。本発明の照明装置は、前記意匠板の裏面側が前記光照射手段と対向する向きに配置されてなる。
【0036】
前記光照射手段の種類は特に限定されず、例えば発光ダイオード(light emitting diode: LED)のような点光源、蛍光灯のような線光源などを用いることができる。
【0037】
本発明においては、前記光照射手段が拡散光を照射するものであることが好ましい。拡散光を照射する光照射手段を用いることにより、点灯時に、深みのある濃淡模様を表すことができる。拡散光を照射する光照射手段としては、光拡散板と光源とを有する光照射手段が好適に用いられる。
【0038】
また、前記裏面板と前記光照射手段との間に遮光パターンを形成してなることが好ましい。遮光パターンの形成方法は特に限定されない。当該形成方法としては、裏面板の表面又は光照射手段の光照射面に印刷によりパターンを成形する方法、パターンが形成されたフィルムをそれらの面に張り付ける方法、塗装、めっき、蒸着、スパッタリングなどによりパターンを形成する方法、ホットスタンプなどが挙げられる。また遮光パターンの形状も特に限定されず文字や図形が挙げられる。後述する実施例13に示されるように、照明装置を点灯させると、消灯時には表示されていなかった文字が意匠板の表面に表示されるようになる。
【0039】
また、光照射手段がパターン情報を含むことも好ましい。パターン情報とは、光照射手段から出力される光によって示される文字や模様である。パターン情報を含む光照射手段としては、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置、プラズマ表示装置、LED表示装置などの表示装置が挙げられる。より具体的には、カーナビゲーションシステムの表示パネル、電子部品の表示パネル、操作を行う静電スイッチなどである。
【0040】
本発明の照明装置の製造方法は特に限定されないが、好適な製造方法は、共通型と第1交換型の間に形成される裏面板用キャビティにメタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物を射出して充填して前記裏面板を形成する工程1と、第1交換型を第2交換型に交換する工程2と、前記裏面板と第2交換型の間に形成される前面板用キャビティに樹脂を射出して充填して前記前面板を形成する工程3と、前記共通型及び前記第2交換型を冷却して、該共通型及び第2交換型から前記意匠板を取り出す工程4と、前記裏面板が前記光照射手段と対向する向きに前記意匠板を配置する工程5を有する方法である。
【0041】
工程1において、共通型と第1交換型の間に形成される裏面用キャビティにメタリック顔料又はパール顔料を含有する樹脂組成物を射出して充填して前記裏面板を形成する。裏面用キャビティに樹脂を射出することにより、意匠板における裏面板に相当する一次成形体が成形される。このとき、表面に凹凸模様や筋模様が付された第1交換型を用いることにより、裏面板の一方の表面に凹凸模様や筋模様が転写される。
【0042】
射出成形時の成形条件は特に限定されるものではないが、シリンダー設定温度を180~330℃にして成形することが好ましい。共通型や第1交換型は、それぞれ複数の金型から構成されていてもよい。
【0043】
そして、樹脂が裏面用キャビティに充填され型締め圧縮され冷却された後、続く工程2において、第1交換型が第2交換型に交換される。
【0044】
工程3において、前記裏面板と第2交換型の間に形成される前面板用キャビティに樹脂を射出して充填して前記前面板を形成する。前面板用キャビティに樹脂を射出することにより意匠板における前面板に相当する二次成形体が一次成形体(裏面板)上に成形される。射出成形時の成形条件は特に限定されるものではないが、シリンダー設定温度を180~350℃にして成形することが好ましい。
【0045】
そして、工程4において、共通型及び第2交換型を冷却して、該共通型及び第2交換型から意匠板を取り出し、続く工程5において、裏面板が前記光照射手段と対向する向きに当該意匠板を配置することにより照明装置を得る。
【0046】
工程4の後に、裏面板の表面に遮光パターンを形成することができる。遮光パターンの形成方法は特に限定されず、上述した方法を用いることができる。
【0047】
工程4の後、又は工程5の後に、前面板の表面に対して表面処理を行うこともできる。例えば、前面板の表面に対して、塗装やめっきなどを施すことができる。塗装としては、スプレー塗装、刷毛塗り、電着塗装、静電塗装、紫外線硬化塗装などが挙げられる。めっきとしては、電気めっき、無電解めっき、蒸着などが挙げられる。また、前面板の表面にフィルムをラミネートすることもできる。このとき用いられるフィルムとしては、アンチグレアフィルム(反射防止フィルム)やアンチフィンガーフィルム(指紋付着防止フィルム)などが挙げられる。
【0048】
こうして得られる、本発明の照明装置は、消灯時には立体的な模様を有するとともに、点灯時には濃淡模様を有する。したがって、本発明の照明装置は消灯時と点灯時のいずれにおいても高い意匠性を有する。
【0049】
本発明の照明装置は、上記の特徴を活かして、車両(自家用車、商用車)、建物(住宅、飲食店などの店舗)、民生用機器(映像や音響などの電子機器)、家具などにおいて、装飾用照明に用いることができる。中でも、自動車用内装部品が本発明の好適な実施態様である。自動車用内装部品はユーザーの目に触れるものであるとともに、昼間も夜間も使用されるものであるため、本発明の照明装置をオーディオパネル、エアコンパネル、ドアトリム、センターコンソール、シート周りのスイッチ、天井などに用いれば、昼間(消灯時)と夜間(点灯時)とで異なった雰囲気を演出することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0051】
(樹脂(裏面板用))
・RB-1:三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「PCユーピロンH3000UR(透明)」
【0052】
(顔料)
・MB-1:オーケー化成社製のメタリック顔料含有マスターバッチ「MB/PCM-A183967-11 L2850(メタリックオレンジ)」
・MB-2:オーケー化成社製のメタリック顔料含有マスターバッチ「MB/PCM-A1183966-11 L3258(メタリックレッド)」
・MB-3:三菱エンジニアリングプラスチックス社製の顔料含有マスターバッチ「PCユーピロンMB2218R 8682F(茶色:メタリック顔料を含まない)」
【0053】
(樹脂(表面板用))
・RF-1:ダイセルポリマー社製の「ABSノバロイE80FB-4X2768(ブルースモーク)」
・RF-2:三菱ケミカル社製の「デュラビオH0C2F501(スモーク)」
・RF-3:三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「PCユーピロンH3000UR(透明)」
【0054】
(全光線透過率及びヘイズ)
裏面板用又は前面板用の樹脂を用い、射出成形機で射出成形して厚さ2mmの試験片を作製した。そして、積分球を取り付けた紫外可視分光光度計(日本分光社製「V-560」)を用いて全光線透過率及びヘイズを測定した。ここで、全光線透過率は表面反射による減少を含んだ値である。結果を表1に示す。
【0055】
(評価:照明を点灯しなかったとき)
LED照明を点灯させずに、室内蛍光灯の下で意匠板を目視にて観察し、立体感、色の濃淡、艶消し感を評価した。立体感及び色の濃淡については下記の評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
【0056】
・立体感
A:深みのある立体的な模様を確認することができた。
B:立体的な模様を確認することができたが、その模様の深みはやや不十分であった。
C:模様の立体感及び深みともにやや不十分であった。
D:立体的な模様を確認することができたが、凹凸表面での反射によって深みが感じられなかった。
E:模様の立体感が不十分であり、凹凸表面での反射によって深みが感じられなかった。
F:立体的な模様をほとんど確認することができなかった。
【0057】
・凹凸模様の濃淡
A:凹凸の溝に対して垂直な方向に沿って色の濃淡を確認することができた。また、観察する位置に応じて模様の立体感に変化が生じた。
B:凹凸の溝に対して垂直な方向に沿って色の濃淡を少し確認することができた。
C:色の濃淡を確認することができなかった。
【0058】
(外観評価:照明を点灯したとき)
LED照明を点灯させて意匠板を目視にて観察し下記の評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
A:筋状の濃淡模様を明りょうに確認することができた。
B:筋状の濃淡模様を確認することができたが、やや不十分であった。
C:筋状の濃淡模様をわずかに確認することができた。
【0059】
実施例1
一色目用の樹脂射出路と二色目用の樹脂射出路を有する共通型と、第1交換型と、第2交換型とを備える二色成形用射出成形機を用いた。第1交換型の表面には凹凸模様が付されているとともに、この凹凸のピッチよりも小さい筋模様が付されている。この第1交換型を用いることにより、裏面板の一方の表面に凹凸模様及び筋模様が転写される。
【0060】
まず、一色目用の樹脂として上記「RB-1」100質量部及びマスターバッチとして上記「MB-1」2質量部をブレンドしてホッパー(一色目用)に投入し、次いで二色目用の樹脂として上記「RF-1」100質量部をホッパー(二色目用)に投入した。そして、共通型と第1交換型の間に形成される裏面板用キャビティに、上記「RB-1」とマスターバッチとの混合物を射出することにより、裏面板に相当する一次成形体を成形した(シリンダー設定温度、金型温度、射出速度、及び射出圧力は表2参照)。
【0061】
次いで、40秒間冷却してから、第1交換型を第2交換型に交換した。次いで、前記裏面板と第2交換型の間に形成される前面板用キャビティに上記「RF-1」を射出することにより、前面板に相当する二次成形体を裏面板上に成形した(シリンダー設定温度、金型温度、射出速度、及び射出圧力は表2参照)。次いで、共通型及び第2交換型を冷却して、共通型及び第2交換型から意匠板を取り出した。
【0062】
得られた意匠板の形状を
図1に示す。
図2は、
図1のA-A線断面模式図であり、
図3は、
図2のA-A線断面模式図において四角で囲んだ箇所(B)を拡大した図である。
図2及び3に示すように、裏面板1は、その一方の表面に丸みを帯びた波状の凹凸を有していた。凹凸のピッチは5~8mm程度であり、その凹凸の溝の中にはそれぞれ5~8本程度の筋模様が確認された。一方、前面板2の一方の表面が前記凹凸と接するとともに、他方の表面は平滑であった。また、意匠板全体の厚みは均一であった。
【0063】
表1に、裏面板1の全光線透過率(Y)、最大厚さ、最小厚さ、前面板2の全光線透過率(X)、ヘイズ、及び意匠板の厚さを示す。
【0064】
次いで、LED照明を準備した。このLED照明は、光拡散板の裏側に白色LED光源を配してなり、拡散光を照射することのできる照明である。このLED照明と前記意匠板を用い、裏面板とLED照明とを対向する向きに設置することにより照明装置を得た。次いで、LED照明を点灯及び消灯して、意匠板を目視にて観察し上記の評価基準にて評価した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例2~12
樹脂の種類を表1に示すように変更し、シリンダー設定温度、金型温度、射出スピード、射出圧力を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして意匠板を得て、それを用いて評価した。結果を表1に示す。また、実施例4及び6の照明装置について、消灯時の外観写真を
図4及び6に示すとともに、点灯時の外観写真を
図5及び7に示す。
【0066】
実施例13
樹脂の種類を表1に示すように変更するとともに、シリンダー設定温度、金型温度、射出スピード、射出圧力を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして意匠板を得た。そして、得られた意匠板において、光照射手段と対向する面(裏面板の表面)に文字を印刷し、この意匠板を用いて評価した。結果を表1に示す。
図10及び11に示されるように、LED照明を点灯させると、消灯時には表示されていなかった文字が意匠板の表面に表示された。
【0067】
比較例1及び2
樹脂の種類を表1に示すように変更するとともに、シリンダー設定温度、金型温度、射出スピード、射出圧力を表2に示すように変更し、二次成形を行わなかった以外は実施例1と同様にして、前面板のない意匠板を得て、これを用いて評価した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例3
樹脂の種類を表1に示すように変更し、シリンダー設定温度、金型温度、射出スピード、射出圧力を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、裏面板がメタリック顔料を含まない意匠板を得て、これを用いて評価した。結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
【符号の説明】
【0071】
1 裏面板
2 前面板