(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】炭素素材の製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/184 20170101AFI20230606BHJP
【FI】
C01B32/184
(21)【出願番号】P 2019032486
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018125145
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018179780
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318008886
【氏名又は名称】ジカンテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518161318
【氏名又は名称】坂本 秀男
(73)【特許権者】
【識別番号】518148294
【氏名又は名称】木下 貴博
(74)【代理人】
【識別番号】100167690
【氏名又は名称】横井 直
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
(72)【発明者】
【氏名】太田 慶新
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199774(JP,A)
【文献】特開2015-174788(JP,A)
【文献】特公昭49-032440(JP,B1)
【文献】特開2016-188163(JP,A)
【文献】特開2007-063081(JP,A)
【文献】特開平06-293576(JP,A)
【文献】Z. WANG et al.,Nanocarbons from rice husk by microwave plasma irradiation: Fromgraphene and carbon nanotubes to graphenated carbon nanotube hybrids,Carbon,2015年,Vol.94,p.479-484
【文献】H. MURAMATSU et al.,Rice husk-derived graphene with nano-sized domains and clean edges,Small,2014年07月23日,Vol.10,No.14,p.2766-2770
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内の圧力を調整する圧力調整部と、
前記チャンバー内に複数種類のガスを切り替え供給するガスユニットと、
複数種類の燃焼する形式を備えた燃焼部と、
燃焼する対象物を
収容する複数の収納容器と、
前記燃焼部は、対象とする前記収納容器まで移動し、燃焼する形式毎に供給するガスを切り替える移動燃焼装置を備え、
前記移動燃焼装置は、
一方から移動し不活性ガスを供給し、プラズマ雰囲気において加熱する加熱プラズマ装置と 、
他方から移動し不活性ガスとは異なるガスを供給し、電気加熱によりチャンバーを加熱する電気炉装置と、を備えたことを特徴とする
炭素素材の製造装置。
【請求項2】
前記チャンバー内に収納される前記収納容器は、長手方向に対して間隔をあけ、且つ幅方向に重ならない位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の
炭素素材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性原料を炭素源として、短時間により多くの炭素素材であるグラフェンを製造する製造方法及びその方法により製造されたグラフェンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からナノカーボンを製造する方法には、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等がある。その中でも量産化される方法として知られているのは化学気相成長法(CVD法)の一種であるスーパーグローズ法により、単相のカーボンナノチューブが量産化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機物処理材料を熱分解してタール混入熱分解液を回収する熱分解液回収手段と、回収したタール混入熱分解液からタール分を除去する熱分解液タール分除去手段と、タール分を除去した熱分解液からナノカーボンを生成するナノカーボン生成手段とを有し、有機物処理材料からナノカーボンを製造することを特徴とするナノカーボン製造装置の発明が挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献2には、中心部に貫通孔を有した仕切り板により仕切られた還元雰囲気の熱分解室及びナノカーボン生成室を有する回転ドラムと、ナノカーボン生成室内に配置されたナノカーボン生成板と、回転ドラムの外周部に配置された電気ヒータと、熱分解室にバイオマス原料又は廃棄物を供給する原料供給手段と、ナノカーボン生成板に生成されたナノカーボンを掻き取る掻取り手段とを具備し、熱分解室でバイオマス原料又は廃棄物を熱分解し、炭化水素を含んだ熱分解ガスをナノカーボン生成室へ送り、このナノカーボン生成室内でナノカーボン生成板と熱分解ガスを還元雰囲気で接触させてナノカーボン生成板にナノカーボンを生成して成長させることを特徴とするナノカーボン製造装置の発明が挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献3には、カーボンナノホーンを含む焼結体の製造方法であって、 流体中のアーク放電により製造されたカーボンナノホーンを含む予備成形体を、1000℃以上の温度に加熱し加圧して焼結する焼結工程、を備える製造方法の発明が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-242180号公報
【文献】特開2010-042935号公報
【文献】国際公開WO2013/058382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のように化石由来の原料からグラフェンを製造する方法があるが、二酸化炭素低減の観点から、特許文献1及び2は、化石由来の原料を使用せずに、バイオマス材料を使用してグラフェンを得ることが可能である。
バイオマス材料は、グラファイトや炭化水素ガスに比較して低コストであり、安価に原料を調達することも可能である。
しかしながらバイオマス材料にはケイ素等が含まれることが知られており、このケイ素の除去について課題が多く存在していた。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ナノカーボンの素材であるグラフェンの大量生産に適した製造方法を提供し、及びこの製造方法を使用し高純度なグラフェンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
植物性原料を乾燥し、粉砕して炭素源を得る前処理工程と、
前記炭素源を炭化し炭化物を得る炭化工程と、
前記炭化工程で得られた前記炭化物からケイ素を含む不純物を除去する精製工程と、
を含み、
前記炭化工程は、チャンバー内に不活性ガスを供給し、前記チャンバー内の前記炭素源をプラズマ雰囲気において加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の特徴により、本発明は、多量のグラフェンを安価に且つ短時間で効率よく製造することが可能であって、純度の高いグラフェンの製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
【
図2】実施形態のプラズマ装置の構成を示す概要図である。
【
図3】実施形態の他の形態のプラズマ装置の構成を示す概要図である。
【
図4】実施形態の不純物除去装置の構成を示す概要図である。
【
図5】実施形態の炭化炉装置の構成を示す概要図である。
【
図6】実施形態の製造工程における炭化源の温度と炭化物の理論収率との関係を示す図である。
【
図7】本発明の製造装置で得られた炭化物の電子顕微鏡写真である。
【
図8】本発明の製造装置で得られた炭化物の電子顕微鏡写真である。
【
図9】本発明の製造装置で得られた炭化物の電子顕微鏡写真である。
【
図10】本発明の製造装置で得られた炭化物の電子顕微鏡写真である。
【
図11】鉱物から生成したグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図12】鉱物から生成したグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図13】本発明の製造装置で得られたグラフェンのラマンスペクトルである。
【
図14】実施形態のプラズマ装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】実施形態のプラズマ装置の構成を示す概要図である。
【
図16】実施形態のプラズマ装置の一部を現す断面図である。
【
図17】実施形態のプラズマ装置の一部を現す概要図である。
【
図18】実施形態のグラフェンの黒鉛化度と温度の関係を現す概要図である。
【
図19】本発明の製造装置で得られた炭化物のラマンスペクトルである。
【
図20】従来の鉱物から得られたグラフェンのラマンスペクトルである。
【
図21】本発明の製造装置で得られたグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図22】本発明の製造装置で得られたグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図23】本発明の製造装置で得られたグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図24】本発明の製造装置で得られたグラフェンの電子顕微鏡写真である。
【
図25】本発明の製造装置で得られたグラフェンの構造を表す概念図である。
【
図26】本発明の製造装置で得られたグラフェンのラマンスペクトルである。
【
図27】本発明の製造装置で得られたグラフェンの蛍光X線による定量分析を現したチャート図である。
【
図28】本発明の製造装置で得られたグラフェンの蛍光X線による定量分析を現したチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかるグラフェンの製造方法及びその方法により製造されたグラフェンについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0013】
<バイオマス材料>
実施例1から実施例6によりグラフェンを製造するバイオマス原料である植物性原料について説明する。本発明は、食物の残渣や廃棄される植物性原料を使用して最終生成物であるグラフェンを製造する。植物性原料は、植物や木材等を使用するが、特に植物を収穫した際の残渣等の廃棄される植物性原料をグラフェンを製造する原料として使用すれば安価に、原料を入手することが可能である。
【表1】
【0014】
表1は、植物性原料の成分表である。表1は、最も左に示す原料を構成する成分の割合を以下右に百分率で示している。例えば、稲わらは、炭素(C)が37.4%、窒素(N)が0.53%、リン(P)が0.06%、リン酸(P2O5)が0.14%、カリウム(K)が1.75%、カリ(K2O)が2.11%、カルシウム(Ca)が0.05%、マグネシウム(Mg)が0.19%及びナトリウム(Na)が0.11%となっている。
【0015】
ここで、植物由来のケイ素含有の多孔質の植物性原料は、低温(300℃以上且つ1000℃以下)にて炭化しても実質的な変化がなく、ケイ素を除去することで細孔の配列を維持できる。植物性原料は、細胞が軸に沿って規則正しく配列し、細胞壁にケイ酸が沈積して肥厚している構造のものが多くある。そして、ケイ化細胞列の間には圧縮された狭い細胞列があり、炭素化後ケイ素等を除去することにより高い比表面積を有する炭素材料を得ることが可能である。上述したようにケイ酸が13%以上且つ35%以下と多くケイ酸が含まれるものが適している。ケイ酸が多すぎても得られるグラフェンが少なくなるため、20%程度の範囲の植物性原料が良い。
【0016】
炭素が多く含まれる植物性原料の例として表1に示しているが、稲わらの他に、小麦わら、大麦わら、米ぬか、もみ殻、そばわら、大豆わら、サツマイモのつる、カブの葉、ニンジンの葉、トウモロコシの稈、サトウキビ梢頭部、ヤシ粕、ピーナッツ殻、みかんの皮、レッド杉のおがくず、カラ松の樹皮及び銀杏の落ち葉がある。その他、残渣ではなく植物そのものを使用しても良い。
【0017】
例えば、竹は、繊維素がセルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成され、ミネラルが鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銅、ニッケル等から構成されている。また、竹の葉には焼成すると、シラノール基(Si-OH)が抽出され、焼成の過程でSiO4となって抽出される。
【0018】
【0019】
表2、3は、本発明にて、上述した表1の植物性原料である炭素源9のうち、炭素材料を製造する方法で最も適している植物性原料のもみ殻の成分組成表である。表2は、原料を構成する成分の割合を百分率で示している。例えば、水分が8%~10%、灰分が10%~18%、脂質が0.1%~0.5%、リグニンが18%~25%、ヘミセルロースが16%~20%、セルロースが30%~35%及びその他が5%~10%である。このように、炭化物19となる主な成分は、リグニン、ヘミセルロース、セルロースである。
【0020】
表3は、表2に示す植物性原料である炭素源9の無機質の化学成分である。表2に示す植物性原料である炭素源9は、セルロース等の有機質が80wt%であり、無機質は20wt%である。表3の無機質の化学成分は、SiO2が92.14wt%、Al2O3が0.04wt%、CaOが0.48wt%、Fe2O3が0.03wt%、K2Oが3.2wt%、MgOが0.16wt%、MnOが0.18wt%、Na2Oが0.09wt%となっている。表2に示す植物性原料である炭素源9は、無機質に酸化ケイ素(SiO2)が多く含まれている。
【0021】
(グラフェン及び炭化物)
実施例1から実施例10により製造した炭化工程S2で得られた炭化物19及び賦活工程S3で得られた炭素素材であるグラフェン113を
図16から
図34に示す。
図24は、賦活工程S3で得られた炭素素材であるグラフェン113の50,000倍の電子顕微鏡写真である。
図26は、炭化工程S2で得られたケイ素(Si)24wt%を含む炭化物19の
10,000倍の電子顕微鏡写真である。
【0022】
図10は、炭化工程S2で得られた炭化物19となる炭化物19の100,000倍の電子顕微鏡写真である。
図21は、炭化工程
S2で得られたグラフェン113の2500倍の電子顕微鏡写真である。グラフェン113又は炭化物19の粒子は、15μmから229μmの分布の径を示し、分布の積算値の中央値で示すメジアン径で約110μmである。グラフェン113の比表面積は、1128.6((cm
2)平方センチメートル)/(cm
3)立方センチメートル)であり、炭化物19の比表面積は、1651.8((cm
2)平方センチメートル) /(cm
3)立方センチメートル)である 。
【0023】
【表4】
図9及び
図10にみられるように、精製工程S3を行っていない炭化工程S2で得られた炭化物19は、ケイ素を多く含み、不活性ガス中で炭化される場合には、強還元されず、SiO2-xとなり、芳香族の-OH基などと-O-Si-O-Rの形で結合し、リグニン多糖複合体になり、C/SiOxの形になりやすいと考えられる。炭化工程S2で得られた炭化物19のケイ素は、10wt%から50wt%とケイ素の量が多くなっている。
そのため、炭化工程S2で得られ
た炭化物19は、電池材料の負極材に使用した場合には、サイクル容量が向上するという効果がある。
【0024】
図7、
図8、
図21及び表4に示すように、炭化物19であるグラフェン113及び炭化物19は単層もしく2層程度であり、CO2吸着測定の結果では細孔径が0.8から2nmの微細な細孔が形成されていることが確認できた。そのため、金属イオン等を吸着しやすくと考えられる。また表4に示すように水蒸気吸着測定法により測定されたメソ孔の容積は、グラフェン113が、0.487ml/gであり、炭化物19が、0.259ml/gであった。このように、0.2ml/gから0.6ml/gのメソ孔容積を形成している。
【0025】
また、
図21又は
図25に示すように炭化物19及びグラフェン113は、細孔92よりも1000倍から10000倍の大きな2μmから10μmの径の孔91も設けられている。このように、大きな孔だけではなく、細孔径が0.8から2nmの細孔92もあり多孔性の性質を備えている。
図25に示すように、これらの縦方向や横方向に伸びている大小からなる多孔は、植物性原料の成長過程で形成された多孔があり、ケイ素の除去や有機物の炭化の際に形成される多孔もある。
また、表4に示すように水蒸気吸着測定法により測定された比表面積は、グラフェン113が、1182m2/gであり、炭化物19が、726.4m2/gとなり、何れも比表面積が大きくケイ素成分(Si)を取り除いた後のグラフェン113は、より比表面積が大きくなっている。
【0026】
図11は、従来の方法により鉱物から生成したグラフェンCの50,000倍の電子顕微鏡写真である。
図12は、従来の方法により鉱物から生成したグラフェンCの100,000倍の電子顕微鏡写真である。ここで、電子顕微鏡写真の目盛りは、10刻みでされ、100,000倍の電子顕微鏡写真は、1つの目盛りが、50nmであり、50,000倍の電子顕微鏡写真は、1つの目盛りが、0.1μmである。
図13は、本発明の製造装置で得られたグラフェン113となるグラフェン113のラマンスペクトルである。
図19は、本発明の製造装置で得られた炭化物19のラマンスペクトルである。
図20は、従来の鉱物から得られたグラフェンのラマンスペクトルである。
図13、
図19及び
図20は、ラマン分光装置により解析し、得られたデータは、横軸を波長(波数(Raman shift(cm-1)))、縦軸を強度とするラマンスペクトルである。
【0027】
グラフェンは、炭素原子がsp2混成軌道によるπ結合で、一平面上に六角形状に並ぶシート状の単原子膜である。
図11及び
図12は、鉱物から生成されたグラフェンCは多層であるのに対し、
図7から
図10及び
図13に示す本発明で生成されたグラフェン113、Bは、単層であって且つ非常に純度が高いグラフェンであることが確認できる。
【0028】
図13、
図19、
図20及び表4に示すように、レーザーラマン分光光度計を用いて、グラフェン113及び炭化物19は、ラマンスペクトル法による波長のピークが植物性原料の中でも強く結晶性が高いことを示している。
また、表4に示すように、ラマンスペクトル法による波長のピークとなるGバンド(1590cm-1)のピーク値IG及びDバンド(1350cm-1)のピーク値IDである。
【0029】
そして、表4に示すようにIGをID割った値は、グラフェン113が、0.91とな
り、炭化物19が、1.37であり、植物性原料の中でも結晶性が高いことを示している
。特に炭化物19は、ケイ素が多く含んでおりグラフェン113よりも結晶性が高く、こ
のケイ素を取り除いても、グラフェン113は、結晶性が高いままである。このように、
ケイ素を除去する前の炭化物19が結晶性が高いため、グラフェン113はケイ素を除去
しても高いままである。このように炭化物19又はグラフェン113のIGをID割った
値は、好ましいのは0.9以上であって0.9から1.5程度の値を示している。グラフ
ェン113は、後述する精製工程(S3)の調整により10wt%から20wt%とケイ
素成分の量を残すことも可能である。
【0030】
(実施例1)
<プラズマ装置1>
本実施例のプラズマ装置10について
図2を参照し説明する。
図2は、本実施例のプラズマ装置10の構成を示す概要図である。プラズマ装置10は、主に、不活性ガス6、コントロール装置20、チャンバー1、真空ポンプ30から構成されている。
【0031】
ガスボンベに収められる不活性ガス6は、主にアルゴンを使用したが、その他にヘリウム、ネオン、窒素等が挙げられる。不活性ガス6は、導入管7からガス量コントロール装置21を経由し、チャンバー1に充填が可能である。ガス量コントロール装置21は、不活性ガス6の流量を調整することが可能である。
【0032】
チャンバー1は、制御弁22と接続され、真空ポンプ30によりチャンバー1内を真空状態に減圧が可能である。チャンバー1に接続され、チャンバー1内に不活性ガス6を導入している。制御弁22とチャンバー1との間には、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁23が設けられている。また、チャンバー1内の空気を導入する導出管8と真空ポンプ30との間にも制御弁14と、チャンバー1内の真空状態を大気圧に開放するリーク弁15とが設けられている。
【0033】
また、温度制御装置24は、高周波電源4を制御し、チャンバー1内の温度保持や保持時間等を管理している。本実施例のプラズマ装置10は、真空状態に近い低圧下に、作動ガスとして、不活性ガス6であるアルゴンガスを充填し、電極間であるカソード2及びアノード3間に高電流を流し、アーク放電により熱プラズマを得る方法である。このカソード2及びアノード3間には、カーボン製のるつぼ5が設置され、そのるつぼ5には後述する炭素源9が入っている。炭素源9は、アーク放電による熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。
【0034】
(実施例2)
<プラズマ装置2>
実施例1のプラズマ装置100について
図3を参照し説明する。
図3は、プラズマ装置10と同じ構成を示す箇所には同じ符号を付し、同じ構成の箇所は説明を省略する。プラズマ装置100は、主に、不活性ガス6、コントロール装置20、チャンバー1、真空ポンプ30から構成されている。主にプラズマ装置
10と異なる箇所は、熱プラズマを得る方法として、プラズマ用の不活性ガス6を流し、4MHzの高周波磁場を高周波電源32から高周波コイル31に印加することにより、熱プラズマを発生している点である。炭素源9は、熱プラズマにより300℃から1000℃の温度帯の加熱により、10~30分程度で炭化される。
【0035】
以上のようなプラズマ装置10、100を使用することにより熱分解が困難なリグニンであっても分解が可能である。
尚、上述したプラズマ装置の他にバリヤ放電、コロナ放電、パルス放電、直流放電型により熱プラズマを得る方法がある。また、高周波の交流を印加することにより絶縁性のある例えばケイ素等に高い電極を与えることができ、炭素源9は微細に分解が可能である。
【0036】
<不純物除去装置>
図4は、上述したプラズマ装置10、100により炭素源9を炭化した炭化物19から酸化ケイ素(ケイ素)等の不純物を除去する不純物除去装置40の例である。
加熱炉41は、炉42を2000℃近くまで加熱することが可能である。大型るつぼ50には、蓋51が付いており、壺52の内部に小型るつぼ60と活性炭53が入っている。小型るつぼ60は、壺62中に炭化物19の上方に水酸化カリウム(KOH)18が混入させ、蓋61が設けてある。小型るつぼ60及び大型るつぼ50は、安定したファインセラミック材料等が考えられ、酸化アルミニウムAl2O3等が使用される。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同じ構成については同様の符号を付して説明を省略する。
図5に実施例1で説明したとおり前処理工程S1にて植物性原料から生成した炭素源9及び酸化抑制物質70を釜83に入れる。ここで、炭素源9は釜83の容量の1/10~2/3程度の容量を入れるのが好ましい。前処理工程S1は、造粒剤を使用せず、ミル等で粉砕するだけでも良い。
【0038】
ここで、酸化抑制物質70は、燃焼時に酸化を防ぐため酸素濃度を抑えながら燃焼させる物質であれば良く、ハロゲン化物(ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301)のガスや液体を混入させ燃焼させても良い。
その後、燃焼炉80の路81内の雰囲気を8000℃以上にし、炭素源9を20気圧及
び400℃以上及び900℃以下の条件で3時間燃焼させる。
【0039】
(実施例4)
<プロセスフロー1>
図1を参照し、上述した実施例2を中心にグラフェンを製造する方法について製造工程を説明する。
図1は、実施形態の製造工程を示すプロセスフローを示す図である。
先ず、前処理工程S1は、上述のように植物性原料を乾燥した後、植物性原料を粉砕し、その粉砕した植物性原料と造粒剤を10対1の割合に、水を混ぜ合わせて植物性原料を適度な大きさにして練り合わせ、ホットプレート等の乾燥装置の上で100℃近くに加熱し水分を蒸発させて炭素源9を生成する。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。
【0040】
次に、炭化工程S2を説明する。前処理工程S1で炭素源9を0.8g程度をるつぼ5に入れて金属の網等で覆う。上述したプラズマ装置10、100の所定の加熱する位置にるつぼ5を配置する。チャンバー1内の圧を真空ポンプ30により80Paまで減圧を行い、不活性ガス6をチャンバー1内に8から10ml/分の流量により注入し、チャンバー1内は、1300から1500Paの圧力に保たれている。尚、炭化工程S2は、実施例1及び実施例3を使用しても同様のグラフェンが製造可能である。
【0041】
出願人は、
図6に示すように、熱プラズマにより200℃から1100℃の温度の間を100℃刻みにより炭化工程S2を行い、炭素源9を炭化する際の温度と収率を求めた。0.8gの炭素源9から得られた最終生成物であるグラフェン113の重量を割り得られた値を
図6に示している。600℃から700℃にて36%と最も大きな収率が測定され、300℃以上且つ1000℃以下で比較的大きな収率が得られた。本測定では、稲わら、ぬか、ヤシ殻、もみ殻及びピーナッツ殻等を行ったが、同様の結果が得られた。
【0042】
次に、精製工程S3を説明する。上記で得られた炭化物19を1に対し、水酸化カリウム(KOH)18を5の比率の重量で混合し、
図4に示す小型るつぼ60の壺62中に入れて蓋61をする。また小型るつぼ60は、大型るつぼ50の中に収容し、周りに活性炭53を埋設する。小型るつぼ60内への酸素の侵入を防ぐために活性炭53が埋設されている。加熱炉41は、炉42を950℃近くまでの温度にし、2~3時間程度焼成を行った。
【0043】
ここで水酸化カリウム18は、ケイ素の除去を促進させるため、最終生成物であるグラフェン113の収率向上を挙げる観点から使用される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウム等のアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。その他に、炭化しきれなかったリグニンは酸により塩酸、硫酸、PTSA、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸により除去することも考えられる。
【0044】
水酸化カリウムと反応させた炭化物19のうち、ケイ酸は水酸化カリウム18と反応し、ケイ酸カリウムとなり、水溶性である残った水酸化カリウム(KOH)18(
図4)やケイ酸カリウムを水に溶かし、この混合液を濾紙セットし、真空や減圧した濾過器に通すことにより酸化ケイ素(ケイ素)を除去する。そして、乾燥させた精製工程S3では、最初の植物性原料を造粒したときと比較して約1/8~1/10の重量の最終生成物となるグラフェン113の生成が可能であった。
【0045】
(実施例5)
本実施例は、
図14から
図17を参照し、上述した炭化物19を製造するプラズマ装置10、100を元に、さらに量産化を進めたプラズマ装置200である。
プラズマ装置200は、主に量産が可能なように、透視可能な石英管203の内部に植物性原料である炭素源9を収容するカーボン又はカーボンの複合材料により形成した複数の収納箱205を設けている。
【0046】
先ず、
図14及び
図15を参照し、プラズマ装置200について説明する。左フランジ231と右フランジ232の間に透明な円柱状の石英管203を設けている。左右のフランジ231、232により、石英管203の内部を真空状態や低圧状態に保つことが可能なように密封及び開放が可能である。また、石英管203は、左右のフランジ231、232の開放された一方から脱着可能である。左右のフランジ231、232は、水冷式の冷却機能を備えている。
尚、石英管203は、左右のフランジ231、232の両側から挟み込むように脱着及び固定する方法であっても良い。
【0047】
図14に示すように右フランジ232は、不活性ガス217や燃焼用ガス218の流量を制御する制御弁224と接続される配管と接続され、不活性ガス217又は燃焼用ガス218を石英管203の内部に満たすことが可能である。また、右フランジ232は、低真空圧力計219と接続し、左フランジ231は、フィルタ221を経由し、圧力制御バルブ222や制御弁224と接続している。
【0048】
また、制御弁224は、工程に応じ温度条件や燃焼時間に応じて不活性ガス217又は燃焼用ガス218を切り替えて石英管203内に流入することが可能である。
制御装置210は、圧力制御バルブ222や制御弁224と接続したドライポンプ223により、石英管203の内部の圧力を制御している。
【0049】
図14及び
図15に示すように、プラズマ装置200は、様々な温度を作り上げることが可能であり、植物性原料である炭素源9から炭素だけでなくケイ素を含むシリカの抽出や上述した精製工程でも使用できるように高周波コイル240及び電気炉250を備えている。
高周波コイル240は石英管203の周囲を取り囲むように形成され、コイル243が支持されるコイル支持具242が駆動装置1(214)に固定されている。その駆動装置1(214)は、レール236に沿って、X、-X方向へ移動を行う。駆動装置1(214)は、モータが使用されている。尚、モータの替わりにリニヤ駆動等であっても良い。
【0050】
上述した実施例2のプラズマ装置100と、原理や製造過程は同じであるが、高周波コイル240は、X、-X方向への移動が可能である点が異なり、一度設置すれば炭素源9を収容する複数の収納箱205を順次炭化させることが可能であるため、一度に多くの炭素源9を炭化させることが可能である。主に、製造工程では上述した
図1のS2の炭化工程で活用が可能である。
また、高周波コイル240は、コイル243の近傍にコイル243から発する電磁波の影響を少なくするため遮蔽板241を備えている。
【0051】
プラズマ装置200は、不活性ガス217を流し、4MHzの高周波磁場を高周波電源212から高周波コイル240に印加することにより、
図6に示すように熱プラズマを発生させ300℃以上且つ1000℃以下で比較的大きな収率が得られた。
以上のような高周波コイル240と不活性ガス217を使用することにより熱分解が困難なリグニンであっても分解が可能である。また、製造工程において毒性のある物質等が発生しない点、量産化するには最適である。
尚、上述したプラズマ装置の他にバリヤ放電、コロナ放電、パルス放電及び直流放電型により熱プラズマを得る方法がある。
【0052】
高周波電源212は、コイル243や電源を冷却するための水冷の冷却装置213が設けられている。また、石英管203内にて燃焼時に発生するタール成分等がドライポンプ223に影響を及ぼさないために、不織布、綿、紙等で形成したフィルタ221を設けている。
【0053】
また、
図14に示す温度制御装置211は、
図15に示しように熱電対235が各々の収納箱205に近接して設けられている。従って、これら温度制御装置211から得られた情報により制御装置210は、所望する温度により炭化させることが可能である。特に温度により収率が異なるために温度管理が重要であると共に、プラズマ装置200は、温度を制御することにより植物性原料から炭化物19の抽出だけでなくケイ素を含むシリカを多く抽出することも可能である。
【0054】
電気炉250は、石英管203の周囲を取り囲むように形成され、駆動装置2(216)に固定されている。その駆動装置2(216)は、レール236に沿って、X、-X方向へ移動を行う。駆動装置2(216)は、モータが使用されている。尚、モータの替わりにリニヤ駆動等であっても良い。
【0055】
電気炉250は、ジュール熱を利用するような、備えられる発熱体からの熱により2000℃近くまで温度を上げることが可能であり、燃焼用ガス218を供給しながら石英管203内を炭素源9や炭化物19を精錬させる際に燃焼させることが可能である。
また、燃焼用ガス218は燃焼の支援用として用いられ、燃焼用ガス218は酸素等が考えられる。主に
図22に示す精製工程S2-1での工程で使用され、1000℃近くでの燃焼時に使用される。
【0056】
尚、電気炉250は、電磁誘導電流を利用する低周波誘導炉、渦電流を利用する高周波誘導炉、孤高の高熱を利用するアーク炉等でも良い。また、電気炉250は、燃焼用ガス218である酸素を供給し、燃焼することによりCO2として除去し、本来透明である石英管203に付いた炭化物を除去し清掃することが可能である。そうすることにより、高周波コイル240による熱プラズマの温度低下を防ぐことが可能である。
【0057】
次に、
図15から
図17を参照し、石英管203及び収納箱205について説明する。
図16及び
図17に示すように、収納箱205は、炭素源9や炭化物19を収納するように上端が開放した箱状に炭素材料により形成されている。特に、プラズマ装置200は、上述したプラズマ装置10、100に比較して多くの量を炭化できるように収納箱205を複数個設けている。
【0058】
表面に4隅に棒状の片が突出した上端片部208と、裏面に両端の上方に突出した片状の下端片部207を複数設けた載置台206に、収納箱205は固定される。収納箱205は、下方の上端片部208と同じ位置に、上端片部208の片が挿入することが可能な穴が設けられ、その穴に上端片部208が嵌合し、収納箱205は載置台206に固定される。
【0059】
収納箱205を固定した載置台206は、土台202に設けられた溝である土台溝204に沿って下端片部207を嵌合させ土台202に載置される。土台溝204は、収納箱205をずらして設置できるように、幅方向にY1分ずらして複数本設けられている。また、収納箱205は、幅方向だけでなく、
図15に示すようにX方向に所定間隔X1離間させて設けられている。
【0060】
図15及び
図16に示すようにY1方向又はX方向に収納箱205を離間させることにより、プラズマ熱による炭化の際に、炭化する目標以外の収納箱205が影響を受けることを極力防ぐようにしている。また、土台202は、温度制御を可能にするため、土台溝204の近傍に熱電対が固定できる空間となる熱電対収納スペース209を確保している。
【0061】
図16に示すように、石英管203は、透明な石英で形成した外径が125mm程度の円形の筒状に設けている。また、載置台202は、石英管203の内部の中心より下方に収納箱205を設置できる幅に形成されている。
【0062】
プラズマ装置200は、炭素を得るように構成されているが、温度条件によりバイオマス材料からケイ素を含むシリカの抽出を行うことも可能であり、特に非結晶シリカを製造することも可能である。また、上述した炭化工程S2だけでなく精製工程S3も電気炉250により可能である。そのため、同一の装置で様々な工程を温度管理しながら行うことが可能である。
【0063】
以上のプラズマ装置200は、熱を与える部分である高周波コイル240又は電気炉250が移動し、収納箱205に収められる炭素源9に熱を与えるため、原料が移動するコンベア式と比較し、圧力制御が可能な空間内を容易に作り上げることができる。また、コンベア式は、コンベア等に必要な油分との化学反応が懸念され、不純物が混ざる要因ともなる。また、コンベア式と比較し、プラズマ装置200は、不活性ガスの混入等の装置が複雑になる等のコストが掛かる心配もない。プラズマ装置200は、石英管203の外部に設けられているため、外からの点検、整備作業も容易である。
【0064】
また、1つの装置で、後述する燃焼工程S2又は精製工程S3の工程に使用することも可能である。さらに、プラズマ装置200は、温度条件を変えれば、グラフェンも製造することも可能である。以上のようにプラズマ装置200は、多機能な装置であるために生産効率だけでなく多用途にも応用が可能である。
【0065】
(実施例6)
<プロセスフロー2>
図1を参照し、実施例5のプラズマ装置200を使用してグラフェンを製造する方法について製造工程を説明する。尚、上述した実施例4のプロセスフロー1内、前処理工程S1は、同じであるため省略する。
【0066】
本実施例の
図14から
図17に示すプラズマ装置200を使用した場合の燃焼工程S2を説明する。前処理工程S1で炭素源9を収納箱205内に敷き詰め、ステンレス等の金属の網等で覆う。上述したプラズマ装置200の所定の加熱する位置に複数の収納箱205をずらして配置する。石英管203内の圧をドライポンプ223により80Paまで減圧を行い、不活性ガス217を石英管203内に8から10ml/分の流量により注入し、チャンバー1内は、1300から1500Paの圧力に保たれている。
【0067】
出願人は、
図6に示すように、熱プラズマにより200℃から1100℃の温度の間を100℃刻みにより炭化工程S2を行い、炭素源9を炭化する際の温度と収率を求めた。0.8gの炭素源9から得られた炭化物19の重量を割り得られた値を
図6に示している。600℃から800℃にて36%と最も大きな収率が測定され、300℃以上且つ1000℃以下で比較的大きな収率が得られた。本測定では、稲わら、ぬか、ヤシ殻、もみ殻及びピーナッツ殻等を行ったが、同様の結果が得られた。
【0068】
次に、精製工程S3を説明する。上記で得られた炭化物19を1に対し、水酸化カリウム(KOH)18を5の比率の重量で混合し、
図4に示す小型るつぼ60の壺62中に入れて蓋61をする。また小型るつぼ60は、
図17に示す収納箱205の中に収容し、周りに活性炭53を埋設する。小型るつぼ60内への酸素の侵入を防ぐために活性炭53が埋設されている。電気炉250は、石英管203内を950℃近くまで高温にし、2~3時間程度焼成を行った。
【0069】
ここで水酸化カリウム18は、ケイ素の除去を促進させるため、グラフェン113の収率向上を挙げる観点から使用される。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物、硫化マグネシウム、硫化カルシウム等のアルカリ土類金属硫化物などが挙げられる。その他に、炭化しきれなかったリグニンは酸により塩酸、硫酸、PTSA、及び塩化アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の酸により除去することも考えられる。
【0070】
水酸化カリウムと反応させた炭化物19のうち、ケイ酸は水酸化カリウム18と反応し、ケイ酸カリウムとなり、水溶性である残った水酸化カリウム(KOH)18(
図4)やケイ酸カリウムを水に溶かし、この混合液を濾紙セットし、真空や減圧した濾過器に通すことにより酸化ケイ素(ケイ素)を除去する。そして、乾燥させた精製工程S3では、最初の植物性原料を造粒したときと比較して約1/8~1/10の重量の最終生成物となるグラフェン113の生成が可能であった。
【0071】
(実施例7)
他の実施形態のグラフェンPの製造方法を、
図18を参照し説明する。この製造方法は
、上述した製造装置(10、100、200)を使用し、温度条件により
精製工程(S3
)を行うことなくグラフェンPの製造が可能である。その際、石英管203又はチャンバ
ー20内を覆う外壁及びパッキン類等は、3500℃近くまで耐える構造とするためタン
グステンや耐熱の石英の材料等が使用される。
【0072】
そして、
図18に示すように、窒素やアルゴン等の不活性ガスを充填した雰囲気において、Aの300℃から900℃附近までは低温領域71はケイ素を多く含む炭化物19が形成される。次に、Bの1000℃から1800℃附近までは中温領域
72は、炭化物19よりも電気伝導度がすぐれ、ケイ素を含まないグラフェンPが形成される。特に1300℃附近が最も良い。さらに、Cの2500℃から3500℃附近までは高温領域
73は、黒鉛化を行う場合の温度管理であり、黒鉛化度がすぐれ、さらに電気伝導度が優れたグラフェンPが形成される。特に、2800℃附近が最も良い。
【0073】
図22から
図28に示すように、本実施形態により生成された黒鉛化度が向上したグラフェンPについて説明する。
図22は、本発明の製造装置で得られたグラフェンPの1000倍の電子顕微鏡写真である。
図23は、本発明の製造装置で得られたグラフェンPの1000倍の電子顕微鏡写真である。
図24は、本発明の製造装置で得られたグラフェンPの1000倍の電子顕微鏡写真である。
図25は、本発明の製造装置で得られたグラフェンPの構造を表す概念図である。
図26は、本発明の製造装置で得られたグラフェンPのラマンスペクトルである。
図27は、本発明の製造装置で得られたグラフェン113の蛍光X線による定量分析を現したチャート図である。
図28は、本発明の製造装置で得られたグラフェン113の蛍光X線による定量分析を現したチャート図である。
【0074】
グラフェンPは、
図24、
図25又は
図27に示すように細孔92よりも1000倍から10000倍の大きな2μmから10μmの径の孔91も設けられている。このように、大きな孔だけではなく、細孔径が0.8から2nmの細孔92もあり多孔性の性質を備えている。
図25に示すように、これらの縦方向や横方向に伸びている大小からなる多孔は、植物性原料の成長過程で形成された多孔があり、ケイ素の除去や有機物の炭化の際に形成される多孔もある。
図28に示すようにグラフェンPは、不純物に金属成分は少なくAlが僅かばかり含み0.07wt%となっており、炭素が97.34wt%と炭素が約98%の純度となっている。このように金属成分が1wt%未満であるために、純度が高いものとなっている。
【0075】
図26は、レーザーラマン分光光度計を用いて測定されたグラフェンPのラマンスペクトル法による波長のピークを示しており、結晶性が高いことを示している。ラマンスペクトル法による波長のピークとなるGバンド(1590cm-1)のピーク値IG及びDバンド(1350cm-1)のピーク値IDである。
【0076】
そして、
図26に示すようにIGをID割った値は、約10となり、グラフェンPにおいては非常に高い値を示し、結晶性が高いことを示している。尚、本実施例では、後述する前処理工程(S1)により
精製工程(S3)を省くことができるが、グラフェンPは、IGをID割った値は、好ましいのは0.9以上であって0.9から1.5程度の値を示すグラフェン113を再度2500℃から3500℃附近でプラズマ装置10、100、200を使用して炭化させても良い。ここでグラフェン1113は、
図27に示すように炭素(C)が79.82wt%、ケイ素(Si)が、15.5wt%、カリウム(K)が2.13wt%と構成されている。これにより、酸化グラフェン等の絶縁性が高く、熱伝導性の優れた炭素材料が形成される。
【0077】
(実施例8)
上述した実施形態の前処理工程(S1)について、さらに以下に示す処理を行うことにより、ケイ素の除去の作業工程を削減しやすくなり、炭素の純度の高い最終生成物であるグラフェンを製造することができる。ケイ素を予め除去することにより、ケイ素の燃焼により炉やチャンバー内を汚すことが少なくなる。
【0078】
前処理工程(S1)として、植物性原料である炭素原9を粉砕するか若しくは粉砕する前に無機酸を使用し、炭素原9のケイ素を減らすか若しくは除去をすることが可能である。 このような前処理工程(S1)を行うことにより精製工程(S3)を省くことが可能であり、特に実施例7のように黒鉛化度を上げるための炭化工程(S2)を行うことにより炭素が98%以上であって不純物に金属の含まない高純度の結晶性の高いグラフェンが製造可能である。
【0079】
無機酸には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸及びフッ化水素酸があり、これらのうち二酸化ケイ素(SiO2)とフッ化水素酸(6HF)による反応により、水(H2O)と四フッ化ケイ素(SiF4)を生成し、ケイ素を除くことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の炭素材料であるグラフェンの産業上の利用に関して、電池材料、半導体、放熱材料、透明導電膜、フレシキブル薄膜、フィルター、軽量・高強度複合部材(ゴム等を含む)、トナー及びインク材料等に利用が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 チャンバー
2 カソード
3 アノード
4、32 高周波電源
5 るつぼ
6、217 不活性ガス
7 導入管
8 導出管
9 炭素源
10、100、200 プラズマ装置
14、22、224 制御弁
15、23 リーク弁
19 炭化物
20 コントロール装置
21 ガス量コントロール装置
30 真空ポンプ
31、240 高周波コイル
40 本体部
41 加熱炉
42、81 炉
50 大型るつぼ
51、61 蓋
52、62 壺
53 活性炭
60 小型るつぼ
70 酸化抑制物質
71 低温領域
72 中温領域
73 高温領域
80 燃焼炉
83 釜
91 孔
92 細孔
113、P グラフェン
202 土台
203 石英管
204 土台溝
205 収納箱
206 載置台
207 下端片部
208 上端片部
209 収納スペース
210 制御装置
211 温度制御装置
212 高周波電源
213 冷却装置
214 駆動装置1
215 電源制御装置
216 駆動装置2
218 燃焼用ガス
219 真空圧力計
221 フィルタ
223 ドライポンプ
231 左フランジ
232 右フランジ
235 熱電対
236 レール
241 遮蔽板
242 コイル支持具
243 コイル
250 電気炉
S1 前処理工程
S2 炭化工程
S3 精製工程。