(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ガス検知装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
G01N21/21 A
(21)【出願番号】P 2019067141
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】世古 暢哉
(72)【発明者】
【氏名】山根 治起
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172993(JP,A)
【文献】特開平08-015130(JP,A)
【文献】特開平07-159321(JP,A)
【文献】特開2012-122835(JP,A)
【文献】特表2007-506976(JP,A)
【文献】米国特許第09097677(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
光検知器と、
前記光源から光検知器までの光路上に配置されたガス検知素子と、
前記光源と前記ガス検知素子との間の前記光路上に配置された第1光学素子と、
前記ガス検知素子と前記光検知器との間の前記光路上に配置された第2光学素子と、
前記ガス検知素子に磁場を与える、磁場印加装置と、
を含み、
前記光源、光検知器、前記ガス検知素子、及び、前記磁場印加装置は、同一のベース上に固定されており、
前記ガス検知素子は、検知面において前記光路上の入射光を反射し、
前記ガス検知素子による反射光は、前記ガス検知素子の特定のガスとの接触の程度に応じて特性が変化し、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、それぞれ、前記光路を曲げ、
前記第1光学素子から前記光路において光が出射する点と前記第2光学素子に前記光路において光が入射する点とを含む、前記ガス検知素子の検知面への前記入射光の入射面に垂直な仮想面を基準にして、前記ガス検知素子、前記光源、前記光検知器及び前記磁場印加装置は同一の側に配置されて
おり、
前記光源から出射する光線の方向ベクトルは、前記ガス検知素子の検知面の法線ベクトルに平行で同じ向きの成分を有し、
前記ガス検知素子への前記入射光は、前記ガス検知素子の検知面の法線ベクトルに平行で逆向きの成分と、前記法線ベクトルに垂直な成分と、を含み、
前記ガス検知素子による反射光は、前記法線ベクトルに平行で同じ向きの成分と、前記法線ベクトルに垂直な成分と、を含み、
前記光検知器に入射する光線の方向ベクトルは、前記法線ベクトルと平行で逆向きの成分を有する、
ガス検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記ガス検知素子を前記法線ベクトルの逆向きに見て、前記光源及び前記光検知器は、前記ガス検知素子と重ならないように配置されている、
ガス検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記磁場印加装置及びガス検知素子の少なくとも一方は、前記光源と前記光検知器との間に配置されている、
ガス検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方は、前記光路上の入射光を反射するミラーである、
ガス検知装置。
【請求項5】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方は、光ファイバである、
ガス検知装置。
【請求項6】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子はミラーであり、
前記光源と前記第1光学素子との間の前記光路上に配置された、第1偏光子と、
前記第2光学素子と前記光検知器との間の前記光路上に配置された、第2偏光子と、
をさらに含み、
前記第1偏光子と前記第2偏光子の間の前記光路上の光学素子は、前記第1光学素子、前記ガス検知素子、及び前記第2光学素子のみである、
ガス検知装置。
【請求項7】
光源と、
光検知器と、
前記光源から光検知器までの光路上に配置されたガス検知素子と、
前記光源と前記ガス検知素子との間の前記光路上に配置された第1光学素子と、
前記ガス検知素子と前記光検知器との間の前記光路上に配置された第2光学素子と、
前記ガス検知素子に磁場を与える、磁場印加装置と、
を含み、
前記ガス検知素子は、検知面において前記光路上の入射光を反射し、
前記ガス検知素子による反射光は、前記ガス検知素子の特定のガスとの接触の程度に応じて特性が変化し、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、それぞれ、前記光路を曲げ、
前記第1光学素子から前記光路において光が出射する点と前記第2光学素子に前記光路において光が入射する点とを含む、前記ガス検知素子の検知面への前記入射光の入射面に垂直な仮想面を基準にして、前記ガス検知素子、前記光源、前記光検知器及び前記磁場印加装置は同一の側に配置されており、
前記光源、前記光検知器及び前記磁場印加装置の磁場生成素子を収容する、密閉された容器をさらに含み、
前記容器は、前記光源と前記ガス検知素子との間の前記光路上に配置されている第1ウィンドウと、前記ガス検知素子と前記光検知器との間の前記光路上に配置されている第2ウィンドウと、を含み、
前記ガス検知素子の前記入射光が入射する面は前記容器の外に存在する、
ガス検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガス検知装置であって、
前記容器は、前記第1光学素子及び前記第2光学素子を収容している、
ガス検知装置。
【請求項9】
請求項7に記載のガス検知装置であって、
前記第1ウィンドウ及び前記第2ウィンドウの少なくとも一方は偏光子である、
ガス検知装置。
【請求項10】
請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記ガス検知素子は、少なくとも、金属反射層と、前記金属反射層の前記仮想面側に積層された誘電体光干渉層と、前記誘電体光干渉層の前記仮想面側に積層された金属磁性層と、前記金属磁性層の前記仮想面側に積層されたガス検知層とを含む積層膜であって、
前記ガス検知層の表面が前記検知面である、
ガス検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検知層、磁性層、光干渉層、反射層を積層した積層膜(検知素子)の磁気光学効果を利用して、水素ガスを検知する技術が知られている(例えば特開2017-172993号公報)。特開2017-172993号公報に開示されている水素ガスセンサは、検知素子の膜面に光を入射し、反射光を検知して偏光角の変化を計測することで、水素を検知する。この水素センサの主要構成要素の光源、光検知器、検知素子、磁場印加装置は、被測定雰囲気を挟んで配置されている。具体的には、検知素子の裏面(基板側)に磁場発生機構が配置され、表面(膜面側)に光源及び光検知器が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-172993号公報
【文献】特開2002-131449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記水素ガスセンサは、被測定雰囲気に検知素子の膜面が曝露されることによる検知素子の中のガス検知層の変化を、光の照射と磁場の印加で光によって検知する。上記構造では、被測定雰囲気側に光源、検知器が配置され、これらを支える機構も必要となる。検知素子の膜厚は、全ての層の厚みを加算しても200nm(0.200μm)程度と極薄である。積層膜が配置されるガラス基板は例えば0.5mm(500μm)程度と、検知素子自体は薄く小さいものである。しかし、検知素子の被測定雰囲気側前方には、光源、検知器とそれを支える構造が存在するために、被測定雰囲気側から見れば、検知素子は奥まった位置に配置されることになる。
【0005】
したがって、例えば、水素ガスの漏洩検知に用いるような場合、被測定雰囲気にガス検知素子の膜面を曝すためには、ガス検知素子の膜面上側に配置されている構成物の間に雰囲気を導入する必要があり、構造が複雑になり、取り付け方法の制約も多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のガス検知装置は、光源と、光検知器と、前記光源から光検知器までの光路上に配置されたガス検知素子と、前記光源と前記ガス検知素子との間の前記光路上に配置された第1光学素子と、前記ガス検知素子と前記光検知器との間の前記光路上に配置された第2光学素子と、前記ガス検知素子に磁場を与える磁場印加装置とを含む。前記ガス検知素子は、前記光路上で前記光検知器への入射光を反射する。前記ガス検知素子による反射光は、前記ガス検知素子の特定のガスとの接触の程度に応じて特性が変化する。前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、それぞれ、前記光路を曲げる。前記第1光学素子から前記光路において光が出射する点と前記第2光学素子に前記光路において光が入射する点とを含む、前記ガス検知素子の検知面への前記入射光の入射面に垂直な仮想面を基準にして、前記ガス検知素子、前記光源、前記光検知器及び前記磁場印加装置は同一の側に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、検知素子の検知面前方の構成が単純化され、被測定雰囲気にガス検知素子の検知面を曝露しやすくなり、ガス検知装置の設置の制約が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1において、ガス検知装置1の構成例を模式的に示す。
【
図2】実施形態1において、ガス検知素子の積層構造の例を示す。
【
図3A】実施形態1において、光路により定義される面と構成要素との位置関係を示す。
【
図3B】実施形態1において、光路により定義される面と構成要素との位置関係を示す。
【
図3C】実施形態1において、光源、ガス検知素子、及び光検知器の配置、並びに、各構成要素に入射する又は出射する光の方向を示す。
【
図4】実施形態1において、ガス検知装置のより具体的な構成例を示す。
【
図5A】実施形態2において、ガス検知装置の構成例を模式的に示す。
【
図5B】実施形態2において、ガス検知装置の他の構成例を模式的に示す。
【
図6A】実施形態2において、光路により定義される面と構成要素との位置関係を示す。
【
図6B】実施形態2において、光路により定義される面と構成要素との位置関係を示す。
【
図6C】実施形態2において、光源、ガス検知素子、及び光検知器の配置、並びに、各構成要素に入射する又は出射する光の方向を示す。
【
図7】実施形態3において、防爆型ガス検知装置の構成例を示す。
【
図8】実施形態3において、防爆型ガス検知装置の他の構成例を示す。
【
図9】実施形態3において、防爆型ガス検知装置の他の構成例を示す。
【
図10】実施形態3において、防爆型ガス検知装置の他の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【0010】
以下において、ガス検知装置の実施形態を説明する。以下に説明するガス検知装置の特徴の一つは、構成要素の配置にある。構成要素の所定の配置によって、ガス検知素子の検知面(表面)の前方が開放しやすくなり、ガス検知装置の取り付け方法の制約を軽減することが可能となる。
【0011】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態にかかるガス検知装置1の構成例を模式的に示す。ガス検知装置1は、光源11、第1偏光子12、第1ミラー13、ガス検知素子(単に検知素子とも呼ぶ)14、第2ミラー15、第2偏光子16、光検知器17、磁場印加装置18、を含む。ガス検知素子14は、基板141及び基板上に形成されている積層膜142を含む。積層膜142表面は、被検知ガスが存在し得る被測定雰囲気30に曝露されている。
【0012】
ガス検知装置1は、被検知ガスによるガス検知素子14の磁気光学効果(磁気カー効果)の変化を測定することで、被検知ガスを検知する。より具体的には、被検知ガスによる積層膜142の磁気光学効果の変化を光の変化として測定することで、被検知ガスを検知する。
【0013】
光源11は、積層膜142に照射するための光(測定光)を生成及び出射する。光源11からの光は、積層膜142において反射され、光検知器17が積層膜142において反射された光を検知する。光源11から光検知器17までの光路50上において、光源11とガス検知素子14との間に、第1偏光子12及び第1ミラー13が配置されている。
【0014】
図1の構成例においては、第1偏光子12は、光路50上で、光源11と第1ミラー13との間に配置されている。さらに、光路50上おいて、ガス検知素子14と光検知器17との間に、第2ミラー15及び第2偏光子16が配置されている。
図1の構成例においては、第2偏光子16は、光路50上で、第2ミラー15と光検知器17との間に配置されている。
【0015】
磁場印加装置18は、ガス検知素子14に対して、ミラー13、15と反対側に配置されている。
図1の例で、磁場印加装置18は、ガス検知素子14の下側に配置され、ミラー13、15は積層膜142の上側に配置されている。
図1の例において、ガス検知素子14は、積層膜142の検知面の法線方向において見て、光源11及び光検知器17との間に配置されている。
【0016】
積層膜142の検知面の法線方向において見て、磁場印加装置18は、ガス検知素子14と少なくとも部分的に重なっている。
図1において、磁場印加装置18の下面は、ガス検知素子14の下面よりも積層膜142の検知面から遠い位置にある。磁場印加装置18は、積層膜142の検知面の法線方向において見て、光源11及び光検知器17との間に配置されている。
【0017】
光源11は、ガス検知素子14に入射する光を生成し、出射する。光源11は、例えば、半導体レーザや発光ダイオードである。光源11からの光は、積層膜142によるガスの検知に適した所定波長を含み、例えば、当該所定波長の単色光である。第1偏光子12は、入射した光から特定方向に振動する光(直線偏光)を透過し、他の方向に振動する光を減衰させる。すなわち、第1偏光子12は、光源11の光から直線偏光を生成する。
【0018】
本構成例は、光源11及び第1偏光子12によって直線偏光を生成するが、他の構成例は、偏光子が内蔵された半導体レーザのように、直線偏光を出力する光源を使用して、第1偏光子12を省略してもよい。第1偏光子12は、
図1の構成例と異なり、第1ミラー13とガス検知素子14との間の光路50上に配置されていてもよい。
【0019】
第1ミラー13は、第1偏光子12を通過した光を反射して、光路50を曲げる。第1ミラー13に反射された直線偏光は、ガス検知素子14の積層膜142に入射する。磁場印加装置18は、積層膜142に磁場を印加する。磁場の方向は、積層膜142の膜面に平行又は垂直である。
【0020】
磁場が印加されている状態において、積層膜142が、入射した光を反射すると、積層膜142の磁気光学効果によって、反射された光の特性(偏光角や強度)が入射光の特性から変化する。また、反射光の特性は、被検知ガスの有無、濃度により変化する。反射された光は、第2ミラー15に入射する。
【0021】
第2ミラー15に入射された光は、第2偏光子16に入射する。第2偏光子16は、入射した光から特定方向に振動する光(直線偏光)を透過し、他の方向に振動する光を減衰させる。第2偏光子16は、積層膜142での磁気光学効果による反射光の特性の変化を検知できるようにする。すなわち、極カー効果、縦カー効果のように反射光の特性変化が偏光角の変化として現れる構成においては、第2偏光子16を通過させることで、反射光の特性変化を光の強度の変化に変換する。第2偏光子16を通過した光は、光検知器17に入射する。光検知器17は、入射した光の強度を測定する。なお、
図1の構成に他の光学素子を追加してもよく、例えば、第2ミラー15と光検知器17との間に光源11から出射される所定の波長を通過させる波長フィルタを配置してもよい。
【0022】
図2は、ガス検知素子14の積層構造の例を示す。
図2は、水素ガス検知素子の例を示す。基板141上に、積層膜142が配置されている。なお、積層膜142の積層構造(各層の材料、層数、層順序、膜厚等)を選択することで、検知できるガスの濃度範囲の調整や、水素ガスと異なるガスの検知が可能となる。
【0023】
基板141は、例えば0.5mm(500μm)程度のガラス基板である。積層膜142は、最下層から、金属反射層424、誘電体光干渉層423、金属磁性層422、ガス検知層421の順で積層されている。追加の誘電体光干渉層が、金属磁性層422とガス検知層421との間に挿入されていてもよい。後述するように、各層の厚さは、積層膜142に入射した光が、積層膜142内で多重反射するように適切に決められる。例えば、各層の厚さは、数十nm程である。また、積層膜142は
図2の構成以外にも後述する作用が生じる他の構成であってもかまわない。
【0024】
ガス検知層421は、水素ガスとの反応によって屈折率や吸収係数等の光学特性が変化する。ガス検知層421の光学特性の変化による反射光の特性変化を測定することで、水素ガスを検知することができる。ガス検知層421は、水素ガスとの反応に伴って屈折率や吸収係数等の光学特性が変化する任意の材料で形成でき、例えば、水素ガスの接触による光学的な変化が大きいPdが使用される。
【0025】
金属磁性層422は、Fe、Co、Ni等の金属や合金等からなる一般的な磁性材料で形成することができ、単層膜又は多層膜で構成できる。誘電体光干渉層423は、例えば、SiO2、ZnO、MgO、TiO2、AlN等の、所定波長の光に対して透明な酸化物又は窒化物で形成できる。金属反射層424に用いる材料としては、Ag、Al、Au、Cu等の金属や合金等からなる一般的な金属材料が挙げられ、光源11から照射される所定波長の光に対して、高い反射率を有する。
【0026】
ガス検知装置1による水素ガスの検知方法を説明する。積層膜142は、所定波長の直線偏光の光を照射したときに、積層膜142内での多重反射によって、反射される光の偏光角が、入射した直線偏光を基準として、最も大きく変化するように構成されているとする。
【0027】
ガス検知装置1は、金属磁性層422の磁化を一方向に飽和させることができる強度の所定の磁場を磁場印加装置18により積層膜142に印加した状態で、直線偏光の光を積層膜142に照射する。照射された光(入射光)は、積層膜142内での多重反射によって大きな磁気光学効果を受け、結果として反射光は入射光に対して大きな偏光角の変化を持って出射される。
【0028】
ガス検知層421が水素ガスと接触した場合、ガス検知層421の屈折率又は吸収係数などの光学特性が変化する。これにより、積層膜142での光の干渉条件が変化するため、多重反射の効果が減少する。磁場が印加された状態でこの作用が生じると、金属磁性層422で起きる磁気光学効果による偏光角の変化の頻度が減少し、結果として、出射された光の偏光角の、入射した直線偏光を基準とした変化の大きさは、水素ガスが無い状態に比較して小さくなる。
【0029】
積層膜142から反射される光の偏光角は、積層膜142を構成する金属磁性層422の磁化の向きによって変化する。ガス検知装置1は、磁場印加装置18により周期的に逆向きに変化する磁場を積層膜142に印加し、積層膜142から反射された光の偏光角の変化を検知することにより、水素ガスを高精度に検知できる。
【0030】
第2偏光子16は所定方向の直線偏光(成分)のみを通過させるため、積層膜142による反射光のうち第2偏光子16を透過する光の強度は、積層膜142で反射された光の偏光角に応じて変化する。光検知器17は、偏光角の変化を、光の強度の変化として検知する。
【0031】
ガス検知装置1は、他の方法によって、水素ガスの有無による積層膜142の磁気光学効果の変化を測定してもよい。例えば、偏光ビーム分割器を用いた差動検知のように、光検知器で偏光角を検知する方法をとれば、第2偏光子16が省略できる。他の例において、ガス検知装置1は、一定の磁場を積層膜142に印加した状態で、被検知ガスの検知を行ってもよい。また、例えば、ガス検知装置1は、横カー効果を利用してもよい。横カー効果は、印加磁場の方向が、積層膜142の面内であって、かつ、入射光と反射光の反射面への射影に対して垂直である場合に起きる。横カー効果の変化は、偏光角ではなく、光の反射率(反射光の強度)に現れる。したがって、第2偏光子16を省略できる。第2偏光子16に代えて波長フィルタを配置してもよい。
【0032】
図3Aは、ガス検知装置1の光路50により定義される面(仮想面)と、ガス検知装置1の構成要素との位置関係を示す。光路50上の光は、第1ミラー13の点511に入射し、反射される。点511は、第1ミラー13から光が出射する点である。光路50上の光は、第2ミラー15の点512に入射し、反射される。点512は、第2ミラー15に光が入射する点である。
【0033】
ガス検知素子14の検知面への入射光501及び反射光502の入射面は、入射光501及び反射光502を含む面である。
図3Aの例において、入射面の法線方向は、紙面に垂直である。上記点511及び512を含む、入射光501の入射面に垂直な仮想面513が定義できる。以下、仮想面を面と略記する場合がある。
図3Aの例において、面513は、紙面に垂直である。
図3Aの例において、ガス検知素子14、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18は、面513を基準にして同一の側(
図3Aにおいて下側)に配置されている。この配置により、検知素子の検知面前方の構成が単純化され、被測定雰囲気にガス検知素子の検知面を曝露しやすくなり、ガス検知装置の設置の制約が少なくなる。
【0034】
図3Bは、ガス検知装置1の光路50により定義される他の面(仮想面)と、ガス検知装置1の構成要素との位置関係を示す。面521は、入射光501を含み、入射光501及び反射光502の入射面に垂直であり、その一端はガス検知素子14の検知面で画定されている。面522は、反射光502を含み、入射光501及び反射光502の入射面に垂直であり、その一端はガス検知素子14の検知面で画定されている。面521及び面522の検知面上の端は共通である。
【0035】
図3Bの例において、ガス検知素子14、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18は、面521及び522から見て同一の側(
図3Bにおいて下側)に配置されている。この配置により、検知素子の検知面前方の構成が単純化され、被測定雰囲気にガス検知素子の検知面を曝露しやすくなり、ガス検知装置の設置の制約が少なくなる。
【0036】
図3Cは、光源11、ガス検知素子14、及び光検知器17の配置、並びに、各構成要素に入射する又は出射する光の方向と向きを方向ベクトルで示す。ここで、ガス検知素子14の検知面に対して垂直な法線143に沿って、検知面から被測定雰囲気に向いた検知面の法線ベクトル59を定義することで光の向きを考える基準とする。ガス検知素子14への入射光の方向ベクトル54は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分541を有している。入射光の方向ベクトル54は、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分も有している(斜め入射及び反射)。
【0037】
光源11から出射される光の方向ベクトル53は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分を有する。本例において、方向ベクトル53は検知面の法線ベクトル59に平行であり、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分を有していない。方向ベクトル53の向きは、検知面の法線ベクトル59と逆向きである。
【0038】
光検知器17に入射する光の方向ベクトル57は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分を有する。本例において、方向ベクトル57は検知面の法線ベクトル59に平行であり、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分を有していない。方向ベクトル57の向きは、検知面の法線ベクトル59と逆向きである。
【0039】
図1を参照して説明したように、第1ミラー13及び第2ミラー15は、光源11から光検知器17の間において、光路50を曲げる。これにより、
図3Cを参照して説明したベクトルの関係が可能となる。三つの方向ベクトル53、54及び57が上述のような関係を有することで、光源11及び光検知器17がガス検知素子14との間に被測定雰囲気30を挟むように、光源11及び光検知器17を配置するのではなく、光源11及び光検知器17を、ガス検知素子14に対して同一の側に配置することが可能となる。
【0040】
具体的には、被検知ガスが存在し得る被測定雰囲気30の空間に対して、ガス検知素子14の基板側に、光源11、光検知器17が配置されている。さらに、
図1の構成例において、光源11、光検知器17、ガス検知素子14、及び磁場印加装置18は、被測定雰囲気30の片側に配置されている。
【0041】
ガス検知装置1は、ガス検知素子14の基板側から積層膜側へ出射した測定光を、第1ミラー13で反射して、被測定雰囲気側からガス検知素子14に光を照射する。ガス検知素子14から被測定雰囲気側への反射光は、第2ミラー15によって光検知器17に向かって反射される。この構成により、ガス検知素子14の積層膜142の前方が開放しやすくなる。
【0042】
図1の構成例において、ガス検知素子14を法線143に沿って積層膜142の膜面側から見て、光源11及び光検知器17は、ガス検知素子14と重ならないように配置されている。これにより、積層膜142の前面が開放されて、積層膜142を被測定雰囲気30により適切に曝露することができる。
【0043】
図1の構成例において、光源11から出射される光の方向ベクトル53及び光検知器17に入射する光の方向ベクトル57は、積層膜142の法線143に平行であるが、これらは、法線143と平行な成分及び垂直な成分を持っていてもよい。例えば、ベクトル53の法線143に平行な成分は法線143に垂直な成分より大きく、ベクトル57の法線143に平行な成分は法線143に垂直な成分より大きい。
【0044】
図1の構成例において、光源11の出射面(
図1における頂面)及び光検知器17の入射面(
図1における頂面)は、積層膜142の曝露されている検知面(膜表面)よりも、被測定雰囲気側、つまり、
図1における上側に位置する。他の例において、光源11の出射面及び光検知器17の入射面の少なくとも一方は、積層膜142の検知面よりも
図1における下側、つまり、被測定雰囲気30から離れて位置してもよい。
【0045】
図4は、ガス検知装置1のより具体的な構成例を示す。
図4に示す構成例において、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18はベース19に固定されている。第1偏光子12、第1ミラー13、第2ミラー15、及び第2偏光子16は、ベース19に固定された不図示の部品によって支持されている。第1偏光子12は光源11の前側に固定され、第2偏光子16は光検知器17の前側に固定されていてもよい。これらの構造により、各構成要素の位置、姿勢が固定され、光路50が確定するとともに、ガス検知装置1として一体化する。実用上はこの一体化したガス検知装置1を所望の位置に設置すればよい。
【0046】
磁場印加装置18は、磁場を生成する磁場生成素子であるコイル181、及び、コイル181が生成した磁場をガス検知素子14に導くヨーク182を含む。コイル181はヨーク182に巻かれており、ヨーク182の磁極ギャップ内にガス検知素子14が配置されている。ヨーク182は、台座を介して、ベース19に固定されている。本例においてベース19は板状であるが、その形状は板状に限定されない。
【0047】
図4の構成例において、ガス検知素子14の検知面の法線方向において見て、ガス検知素子14及び磁場印加装置18は、光源11及び光検知器17の間に位置している。同様に見て、ガス検知素子14は磁場印加装置18に重なっており、磁場印加装置18の下面(底面)は、ガス検知素子14の下面よりもベース19に近い。ガス検知素子14の膜面への入射光、反射光を含む面(反射面)に垂直に見て、磁場印加装置18は、光源11及び光検知器17の間に位置している。
【0048】
図4の構成例において、磁場印加装置18は、積層膜142の検知面(主面)に沿った方向の磁場を印加する。コイル181及びヨーク182を含む磁場印加装置18は、磁場の強度を容易に制御でき、また、積層膜142に磁場を効率的に印加することができる。磁場印加装置18は他の構成を有してよく、例えば、硬磁性体を使用する、又は、中空コイル内にガス検知素子14が配置されてもよい。
【0049】
上述のように、本実施形態のガス検知装置1の構成要素の配置は、第1ミラー13、第2ミラー15以外の電気配線を伴うような構成要素はベース19側にまとまっており、ガス検知素子14の積層膜142の検知面側の構造が単純化しており、検知面を被測定雰囲気30に簡単に曝すことができガスを検知するための設置の制約が少ない。
【0050】
〔実施形態2〕
実施形態1は、光路50を曲げる第1光学素子として第1ミラー13を含み、光路50を曲げる第2光学素子として第2ミラー15を含んでいた。以下に説明する実施形態2は、光路50を曲げる第1光学素子及び第2光学素子として、光ファイバを使用する。光ファイバは、光路50の形成の自由度を上げる。
【0051】
図5Aは、本実施形態に係るガス検知装置1の構成例を模式的に示す。実施形態1との相違点を主に説明する。第1光ファイバ21は、光路50上において、光源11と第1偏光子12との間に配置されている。第2光ファイバ23は、光路50上において、第2偏光子16と光検知器17との間に配置されている。光路50の一部は第1光ファイバ21内に存在し、光路50の他の一部は第2光ファイバ23内に存在する。第1光ファイバ21及び第2光ファイバ23は、それぞれ、光路50を曲げる。
【0052】
光ファイバ21、23を使用することで、光源11、光検知器17、ガス検知素子14、及び磁場印加装置18を、被測定雰囲気30の片側に配置することが可能となっている。光源11からの光は、第1光ファイバ21を通過して、第1偏光子12に入射する。第1偏光子12からの直線偏光は積層膜142に入射し、その反射光は第2偏光子16に入射する。第2偏光子16を通過した光は、第2光ファイバ23を通過して、光検知器17に入射する。
【0053】
なお、
図5Aでは、
図1に近い位置に光源11、光検知器17が配置された実施形態を説明した。しかし、光ファイバ21、23の敷設経路の途中で前記のような条件を満たすようになっていれば、様々な構成も可能である。
図5Bは、実施形態2において、ガス検知装置の他の構成例を模式的に示す。
図5Bに示すように、光ファイバを延伸して、例えば光源11から横方向に出射させるとか、光検知器17に横方向から入射するという構成、さらに、光源11及び光検知器17を、ガス検知素子14から十分に離れた場所に設置した構成も可能になる。
【0054】
図6Aは、
図5Aに示す構成例において、ガス検知装置1の光路50により定義される面(仮想面)と、ガス検知装置1の構成要素との位置関係を示す。点531は、第1光ファイバ21から光が出射する点である。点532は、第2光ファイバ22に光が入射する点である。
【0055】
上記点531及び532を含む、ガス検知素子14の検知面への入射光501及び反射光502の入射面に垂直な仮想面533が定義できる。
図6Aの例において、面533は、紙面に垂直である。
図6Aの例において、ガス検知素子14、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18は、面533を基準にして同一の側(
図6Aにおいて下側)に配置されている。この配置により、検知素子の検知面前方の構成が単純化され、被測定雰囲気にガス検知素子の検知面を曝露しやすくなり、ガス検知装置の設置の制約が少なくなる。
【0056】
図6Bは、
図5Aに示す構成例において、ガス検知装置1の光路50により定義される他の面(仮想面)と、ガス検知装置1の構成要素との位置関係を示す。面541は、入射光501を含み、入射光501及び反射光502の入射面に垂直であり、その一端はガス検知素子14の検知面で画定されている。面542は、反射光502を含み、入射光501及び反射光502の入射面に垂直であり、その一端はガス検知素子14の検知面で画定されている。面541及び面542の検知面上の端は共通である。
【0057】
図6Bの例において、ガス検知素子14、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18は、面541及び542から見て同一の側(
図6Bにおいて下側)に配置されている。この配置により、検知素子の検知面前方の構成が単純化され、被測定雰囲気にガス検知素子の検知面を曝露しやすくなり、ガス検知装置の設置の制約が少なくなる。
図6A及び6Bを参照した説明は、
図5Bに示す構成例にも適用できる。
【0058】
図6Cは、光源11、ガス検知素子14、及び光検知器17の配置、並びに、各構成要素に入射する又は出射する光の方向と向きを方向ベクトルで示す。ここでも、検知面の法線ベクトル59を定義することで光の向きを考える基準とする。ガス検知素子14への入射光の方向ベクトル54は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分541を有している。入射光の方向ベクトル54は、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分も有している(斜め入射及び反射)。
図6Cにおいて、一点鎖線145A及び145Bは、法線143に平行な線である。
【0059】
光源11から出射される光の方向ベクトル53は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分531を有する。方向ベクトル53は、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分も有している。方向ベクトル53の検知面の法線ベクトル59に平行な成分531の向きは、検知面の法線ベクトル59と同じ向きである。本例において、方向ベクトル53の検知面の法線ベクトル59に平行な成分531は、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分より大きい。
【0060】
光検知器17に入射する光の方向ベクトル57は、検知面の法線ベクトル59に平行な成分571を有する。本例において、方向ベクトル57は検知面の法線ベクトル59に垂直な成分も有している。方向ベクトル57の検知面の法線ベクトル59と平行な成分571の向きは、検知面の法線ベクトル59と逆向きである。本例において、方向ベクトル57の検知面の法線ベクトル59に平行な成分571は、検知面の法線ベクトル59に垂直な成分より大きい。
【0061】
図5Aを参照して説明したように、第1光ファイバ21及び第2光ファイバ23は、光源11から光検知器17の間において、光路50を曲げる。これにより、
図6Cを参照して説明したベクトルの関係が可能となる。三つの方向ベクトル53、54及び57が上述のような関係を有することで、光源11及び光検知器17がガス検知素子14との間に被測定雰囲気30を挟むように、光源11及び光検知器17を配置するのではなく、光源11及び光検知器17を、ガス検知素子14に対して同一の側に配置することが可能となる。
【0062】
さらに
図5Aに対して、第1光ファイバ21及び第2光ファイバ23を延伸した
図5Bの配置の場合には、光源11からの出射光、光検知器17への入射光の方向ベクトルについて
図6Cを参照して説明した関係は成り立たないが、光源11から第1偏光子12への光路を形成する第1光ファイバ21および、第2偏光子16から光検知器17への光路を形成する第2光ファイバ23の途中で、光路に沿った接線ベクトルが
図6Cを参照して説明した関係が成立する区間、例えば区間A、区間B(
図5B参照)が少なくとも1箇所存在する。
【0063】
このように、
図6A及び6Bの構成において、光源11の光線出射位置から第1光ファイバ21の光線出射位置までの区間において、ガス検知素子14の検知面の法線ベクトル59に平行で同じ向きの成分を有する光線の方向ベクトルが存在する。また、ガス検知素子14の検知面の入射光は法線ベクトル59に平行で逆向きの成分を有する。さらに、第2光ファイバ23の光線入射位置から光検知器17への光線入射位置までの区間において、法線ベクトル59と平行で逆向きの成分を有する光線の方向ベクトルが存在する。この構成は、第1光ファイバ21及び第2光ファイバ23に代えて、第1ミラー13及び第2ミラー15を含む
図5A及び
図5Bの構成にも当てはまる。
【0064】
上記のような区間が存在する経路で光ファイバを敷設した場合には、光源11及び光検知器17がガス検知素子14との間に被測定雰囲気を挟むように、光源11及び光検知器17を配置するのではなく、光源11及び光検知器17を、ガス検知素子14に対して同一の側に配置することが可能となるのに加えて、ガス検知装置内における、さらに光源11及び光検知器17の配置の自由度が増す。
【0065】
上述のように、第1光ファイバ21によって被測定雰囲気側からガス検知素子14に光を照射し、反射光を第2光ファイバ23で取り込んで光検知器17へと導く構造は、実施形態1におけるミラーを含む構成より、積層膜142の膜面(検知面)前方の構造を簡単化でき、被測定雰囲気30への積層膜142の曝露が容易となる。光ファイバの使用により、光源11、光検知器17の配置の制約が減り、ガス検知装置1の設計の自由度が上がり、また、高さ方向の寸法を小さくすることで、ガス検知装置1についての制約が大きく緩和される。なお、二つの光ファイバの一方をミラーに置き換えてもよい。
【0066】
〔実施形態3〕
以下に説明するガス検知装置は、通電される構成要素を容器内に収容する。被検知ガスが水素等の可燃性、爆発性のガスである場合、通電される構成要素を被測定雰囲気から隔離することで、安全性をより高めることができる。
【0067】
図7は、防爆型ガス検知装置1の構成例を示す。実施形態1の
図1に示す構成例との相違点を主に説明する。ガス検知装置1は気密容器40を含む。容器40は、例えば樹脂や金属で形成することができる。容器40は、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18を収容している。これらは通電される構成要素(能動的構成要素)である。容器40は、さらに、第1偏光子12及び第2偏光子16を収容している。これらは通電されない構成要素であり、容器40の外に配置されていてもよい。第1ミラー13及び第2ミラー15は通電されない構成要素であり、容器40の外に配置されている。
【0068】
ガス検知素子14は、積層膜142が被測定雰囲気30に曝露されるように、容器40に固定されている。
図7の構成例においては、容器40に設けた開口(不図示)にガス検知素子14の基板141が固定されており、基板141の一部が容器40内に存在し、他の一部が容器40外に露出している。基板141上の積層膜142は容器40外に露出している。また、容器が磁力線を透過させる材質で形成しておき、ガス検知素子14全体を容器40の外側に設置して、容器40越しに磁場印加装置18からガス検知素子14に磁場を印加する構成であってもよい。
【0069】
容器40は、第1ウィンドウ41及び第2ウィンドウ42を含む。第1ウィンドウ41及び第2ウィンドウ42は、所定波長の測定光に対して透明である。第1ウィンドウ41は、光路50上において、光源11と第1ミラー13との間に配置され、より具体的には、第1偏光子12と第1ミラー13との間に配置されている。第2ウィンドウ42は、光路50上において、第2ミラー15と光検知器17との間に配置され、より具体的には、第2ミラー15と第2偏光子16との間に配置されている。
【0070】
図7の構成により、ガス検知装置1の計測機能を維持しつつ、通電される構成要素である光源11、光検知器17、及び磁場印加装置18を被測定雰囲気30から隔離することができる。本構成例において、実施形態1において説明したように、光源11、光検知器17、ガス検知素子14、及び磁場印加装置18は、被測定雰囲気30の片側に配置されているため、一つの単純な形状の気密容器40(気密室)に上記構成要素を収容しつつ、ガス検知素子14の積層膜142を被測定雰囲気30に曝すことができる。
【0071】
図8は、防爆型ガス検知装置1の他の構成例を示す。
図7に示す構成例との差異を主に説明する。気密容器40は、
図7の構成例が収容する構成要素に加え、第1ミラー13及び第2ミラー15を収容している。この構成により、防爆型ガス検知装置1の設置の容易さを維持しつつ、第1ミラー13、第2ミラー15の反射面を汚れから守ることができる。
【0072】
図9は、防爆型ガス検知装置1の他の構成例を示す。
図7に示す構成例との差異を主に説明する。
図9の構成例において、気密容器40のウィンドウが他の機能を併せ持つ。具体的には、第1偏光子12及び第2偏光子16が気密容器40の開口にウィンドウとしてはめ込まれている。
図7に示す構成例の第1ウィンドウ41が第1偏光子12に交換され、第2ウィンドウ42が第2偏光子16に交換されている。この構成例により、構成要素数を低減できる。
【0073】
図10は、防爆型ガス検知装置1の他の構成例を示す。
図5A、
図5Bに示す構成例との相違点を主に説明する。容器40は、光源11、光検知器17及び磁場印加装置18を収容している。容器40は、さらに、第1光ファイバ21及び第2光ファイバ23を収容している。これらは通電されない構成要素であり、容器40の外に配置されていてもよい。第1偏光子12及び第2偏光子16が気密容器40の開口にウィンドウとしてはめ込まれており、ガス検知装置1の構成要素数を低減する。
【0074】
ガス検知素子14は、積層膜142が被測定雰囲気30に暴露されるように、容器40に固定されている。
図10の構成例においては、ガス検知素子14の開口(不図示)にガス検知素子14の基板141が固定されており、基板141の一部が容器40内に存在し、他の一部が容器40外で露出している。基板141上の積層膜142は容器40外で露出している。
【0075】
上述のように、通電される能動素子を気密シールされた容器内で保護することで、被測定環境に存在するのは、ガス検知素子14やミラー13、15のような通電されない構成のみである。このような防曝構造は、可燃性のガスの検知を行うガス検知装置に、特に有用である。
【0076】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ガス検知装置、11 光源、12 第1偏光子、13 第1ミラー、14 ガス検知素子、15 第2ミラー、16 第2偏光子、17 光検知器、18 磁場印加装置、19 ベース、21 第1光ファイバ、23 第2光ファイバ、30 被測定雰囲気、40 気密容器、41 第1ウィンドウ、42 第2ウィンドウ、50 光路、53、54、57 方向ベクトル、59 検知面の法線ベクトル、141 基板、142 積層膜、181 コイル、182 ヨーク、143 法線、421 ガス検知層、422 金属磁性層、423 誘電体光干渉層、424 金属反射層、513、521、522、533、541、522 光路から決まる仮想面