(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】電極カテーテルに使用されるカテーテルチューブユニットとその製造方法、カテーテルチューブ及び電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20230606BHJP
A61B 5/25 20210101ALI20230606BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61B5/25
A61M25/00 504
A61M25/00 620
(21)【出願番号】P 2018147587
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518279749
【氏名又は名称】ジェイソル・メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 丈士
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0060885(US,A1)
【文献】特開2006-61350(JP,A)
【文献】特開2009-268696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
A61M 25/00
A61B 5/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブユニットと、該カテーテルチューブユニットの先端に連結された電極ユニットとを備え、基端側でワイヤを操作することにより先端を屈曲及び伸展可能なカテーテルチューブであって、
前記カテーテルチューブユニットは、1本の前記ワイヤと、
このワイヤを挿通する芯管、この芯管の外周に配置され、前記電極に接続される複数のリード線、及びこの複数のリード線の全体における少なくとも外側を被覆する被覆材と、この被覆材の外周に配置された編組を有する長尺かつ一体の構造体と、
この構造体の外周面に配置され、前記構造体を芯材とした押出成形体である外装チューブとを
備えており、
前記電極ユニットは、電極チューブと、この電極チューブの内部に収容され前記カテーテルチューブの先端を屈曲及び伸展可能とする板バネとを備えており、
前記カテーテルチューブユニットから延在する前記ワイヤ及び前記リード線が前記電極チューブに挿入され、前記ワイヤが前記板バネの片面に配置されるとともに、前記電極チューブの先端側に固定され、前記リード線が前記電極に接続されている、カテーテルチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の
カテーテルチューブと、このカテーテルチューブの基端側に設けられ、前記カテーテルチューブの前記先端が屈曲及び伸展するように前記ワイヤを操作可能な操作部とを備える、電極カテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルチューブの内部に収容されるカテーテルチューブユニットの製造方法であって、以下の工程を含む、カテーテルチューブユニットの製造方法:
前記ワイヤを挿通する芯管の外周に、前記電極に接続される複数のリード線を配置すること、この複数のリード線の全体における少なくとも外側を被覆材によって被覆すること、及び前記被覆材の外周に編組を配置することを含み、前記芯管、前記複数のリード線、前記被覆材及び前記編組を有する長尺かつ一体の構造体を得る工程;及び
前記構造体を芯材として、その外周面に外装チューブを押出成形する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルに使用されるカテーテルチューブユニットとその製造方法、カテーテルチューブ及び電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈の原因の特定を目的とする電気生理学的検査に使用される電極カテーテルは(特許文献1等参照)、EPカテーテルとも呼ばれ、不整脈治療の現場で使用されている。このようなEPカテーテルは現在、海外製が大半を占めており、その構造の一例を
図10により説明すると、カテーテルチューブ200は、予め成形した樹脂製の外装チューブ111の内部に、ワイヤ105を案内する芯管106を挿入し、カテーテルチューブ200の先端側にある検査用の電極に接続される複数のリード線107,107…を、外装チューブ111の内周面と芯管106の外周面の間に形成された内部空間201に挿通していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造を有するカテーテルチューブ200は太径であり、その直径は例えば6Fr(2mm)、5Fr(1.65mm)、4Fr(1.32mm)等である。しかし、検査時における静脈穿刺箇所を減らし、施術時間の短縮、及び使用後の止血等の負担を軽減するためには、細径化が望まれていた。ところが、例えば直径1mm程度に細径化した場合、ワイヤ105を用いたデフレクタブル機構を入れると、十分な内部空間201を確保することが困難になり、複数のリード線107,107…を挿通することができなくなるため、細径の電極カテーテルを製造できないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、デフレクタブル機構を有していても細径化が可能な、電極カテーテルに使用されるカテーテルチューブユニットとその製造方法、カテーテルチューブ及び電極カテーテルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明のカテーテルチューブユニットは、電極カテーテルにおけるカテーテルチューブの内部に収容され、その先端側に固定されたワイヤを基端側で操作することにより、前記先端を屈曲及び伸展可能な前記カテーテルチューブに使用されるカテーテルチューブユニットであって、
前記ワイヤと、
このワイヤを挿通する芯管、この芯管の外周に配置され、前記電極に接続される複数のリード線、及びこの複数のリード線の全体における少なくとも外側を被覆する被覆材を少なくとも有する長尺かつ一体の構造体と、
この構造体の外周面に配置され、前記構造体を芯材とした押出成形体である外装チューブとを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明のカテーテルチューブは、前記カテーテルチューブユニットと、このカテーテルチューブユニットの先端に連結された電極ユニットとを備え、
前記電極ユニットは、電極チューブと、この電極チューブの内部に収容され前記カテーテルチューブの先端を屈曲及び伸展可能とする部材とを備え、
前記カテーテルチューブユニットから延在する前記ワイヤ及び前記リード線が前記電極チューブに挿入され、前記ワイヤが前記電極チューブの先端側に固定され、前記リード線が前記電極に接続されていることを特徴する。
【0008】
本発明の電極カテーテルは、前記カテーテルチューブと、このカテーテルチューブの基端側に設けられ、前記カテーテルチューブの前記先端が屈曲及び伸展するように前記ワイヤを操作可能な操作部とを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明のカテーテルチューブユニットの製造方法は、電極カテーテルにおけるカテーテルチューブの内部に収容され、その先端側に固定されたワイヤを基端側で操作することにより、前記先端を屈曲及び伸展可能な前記カテーテルチューブに使用されるカテーテルチューブユニットの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴としている:
前記ワイヤを挿通する芯管の外周に、前記電極に接続される複数のリード線を配置すること、及びこの複数のリード線の全体における少なくとも外側を被覆材によって被覆することを含み、前記芯管、前記複数のリード線、及び前記被覆材を少なくとも有する長尺かつ一体の構造体を得る工程;及び
前記構造体を芯材として、その外周面に外装チューブを押出成形する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外装チューブの成形時にその内部に収容する構造体を芯材として一体で押出成形することにより、外装チューブ成形後のリード線の挿入工程がなくなり、外装チューブと芯管の間に内腔を確保せずともリード線を配置することができる。従って、デフレクタブル機構を有していても細径化が可能で、従来品では実現できなかった径の電極カテーテルも製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のカテーテルチューブユニット、カテーテルチューブ、及び電極カテーテルの実施形態を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1のカテーテルチューブユニットのA-A’線断面図である。
【
図3】
図1のカテーテルチューブのB-B’線部分を紙面手前側から見た縦断面図である。
【
図4】本発明のカテーテルチューブユニットの製造方法の一例を概略的に示す、長手方向と垂直な縦断面図である。
【
図5】本発明のカテーテルチューブユニットの製造方法の一例を概略的に示す、長手方向と垂直な縦断面図である。
【
図6】本発明のカテーテルチューブユニットの製造方法の一例を概略的に示す、長手方向と垂直な縦断面図である。
【
図7】構造体を芯材として、その外周面に外装チューブを押出成形する工程を概略的に示す、押出方向の断面図である。
【
図8】本発明のカテーテルチューブユニットの別の実施形態を概略的に示す、
図2と同様な断面図である。
【
図9】本発明のカテーテルチューブユニットの更に別の実施形態を概略的に示す、
図2と同様な断面図である。
【
図10】電極カテーテルに使用される従来のカテーテルチューブを概略的に示す、長手方向と垂直な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のカテーテルチューブユニット2a、カテーテルチューブ2、及び電極カテーテル1を示している。電極カテーテル1は、不整脈の原因の特定を目的とする電気生理学的検査に使用されるものであり、カテーテルチューブ2の電極4,4…は、生体内、例えば心腔内に挿入され、心筋に接触し活動電位を計測する。
【0014】
本実施形態のカテーテルチューブユニット2aは、その先端に連結された電極ユニット2bと共に、カテーテルチューブ2を構成している。電極カテーテル1は、カテーテルチューブ2と、その基端に装着された操作部3を備えている。カテーテルチューブ2は、
図2及び
図3に示すように、その内部にワイヤ5が収容されている。ワイヤ5は、カテーテルチューブ2の先端側に固定され、カテーテルチューブ2の基端側にある操作部3でワイヤ5を操作することにより、
図1に示すように、カテーテルチューブ2の先端が屈曲及び伸展する。
【0015】
カテーテルチューブユニット2aは、
図2及び
図3に示すように、ワイヤ5と、構造体10と、外装チューブ11を備えている。構造体10は、芯管6と、複数のリード線7,7…と、被覆材8と、編組9を備えている。
【0016】
ワイヤ5は、芯管6の内部に長手方向へ移動自在に挿通されている。ワイヤ5の縦断面の形状は、特に限定されないが、概略円形状が好ましい。ワイヤ5の直径は、特に限定されないが、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
【0017】
ワイヤ5の材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ニッケル-チタン系合金等の金属等が挙げられる。また、必ずしも金属で構成する必要はなく、高強度の非導電性ワイヤを用いてもよい。ワイヤ5は、単線と撚り線のいずれであってもよい。
【0018】
芯管6は、ワイヤ5を内部に挿通して長手方向へ案内する。芯管6は、チューブを形成するものであれば、パイプ形状、コイル形状等であってよいが、パイプ形状が好ましい。芯管6の縦断面の形状は、特に限定されないが、概略円形状が好ましい。芯管6の外径は、ワイヤ5を挿通でき所望の本数の複数のリード線7,7…を外周面に配置できるものであれば特に限定されないが、細径化の観点から、0.2~0.5mmが好ましく、0.3~0.4mmがより好ましい。芯管6の内径は、ワイヤ5の外径よりも僅かに大きい。
【0019】
芯管6の材料としては、特に限定されないが、有機高分子材料や、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。これらの中でも、有機高分子材料は絶縁性が高いため、電極カテーテル1の構成部材に適している。その中でも、芯管6に挿通されたワイヤ5との摺動抵抗を低減する観点では、低摩擦材料が好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンやエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン66、高密度ポリエチレン、ポリアミド12等を用いることができる。芯管6に樹脂材料を用いる場合、押出成形によって得ることができる。
【0020】
複数のリード線7,7…は、主にカテーテルチューブ2の電極4,4…に接続されるものであり、芯管6の外周に配置される。リード線7は芯管6に接しながら長手方向へ延び、複数のリード線7,7…の配置態様としては、特に限定されないが、
図2に示すように、隣接するリード線7,7同士が密に接し、かつ複数のリード線7,7…の各々が芯管6の外周面に接するように配置することが好ましい。このような配置にすることで、カテーテルチューブユニット2aの径を小さくしても、複数の電極4,4…に接続するための多数のリード線7を収容することができる。
【0021】
その他、場合によっては、所望に応じて、隣接するリード線7,7同士の少なくとも一部が離間した配置や、複数のリード線7,7…が芯管6の外周面で螺旋状に捩れた配置や、
図8に示すように、芯管6の外周面に接する複数のリード線7,7…の外周面に更に複数のリード線7,7…を配置した多段配置等であってもよい。
【0022】
リード線7は、芯線に絶縁被膜を設けたものが好ましく、例えば、電気抵抗の低い、金、銀、銅等を芯線にし、その周囲にポリウレタン、エナメル、フッ素樹脂等の絶縁被膜を施したリード線7を用いることができる。芯線と絶縁被膜を含むリード線7の直径は、特に限定されないが、細径化の観点のみならず、心内電位のシャープな表示、並びに、心内電位のドラフトの回避、及び、断線リスクの回避等から、0.05~0.12mmが好ましく、0.05~0.08mmがより好ましい。複数のリード線7,7…の数は、心内電位の複数の情報を得るため、10本以上が好ましく、20本以上がより好ましい。
【0023】
被覆材8は、複数のリード線7,7…の全体における少なくとも外側を被覆し、複数のリード線7,7…を保護する。本実施形態では、被覆材8は、複数のリード線7,7…の全体の外周面に配置されている。被覆材8は、例えば、外装チューブ11の押出成形等において熱によるリード線7の絶縁破壊を防止し、カテーテルチューブユニット2aを製造する際の作業時においてリード線7の断線を防止する。被覆材8の材料としては、特に限定されず、絶縁性の各種材料を用いることができ、例えば、有機高分子材料等が挙げられる。
【0024】
例えば、複数のリード線7,7…全体の外周面に被覆材8を巻き付けることによって、複数のリード線7,7…全体の外周面に被覆材8を配置することができる。
【0025】
また、加熱することによりその径が縮小する性質を有する熱収縮チューブで全体を覆い、加熱炉に通す等の方法で外部から熱をかけることで、熱収縮チューブを収縮させることによって複数のリード線7,7…全体の外周面に被覆材8を配置することができる。
【0026】
あるいは、複数のリード線7,7…を外周面に配置した芯管6を、これと同程度の内径を持つ樹脂チューブに挿通することによって、複数のリード線7,7…全体の外周面に被覆材8を配置することができる。
【0027】
なお、
図9の実施形態のようにリード線7,7…の全周を被覆材8によって被覆したリード線群を用いる場合にも、以上のような方法のうち適宜のものを選択し、リード線7,7…の全周に被覆材8を被覆することができる。
【0028】
編組9は、被覆材8の外周に配置される。編組9は、構造体10を芯材とした押出成形時に外装チューブ11に埋め込まれ、カテーテルチューブ2の補強材として機能し、電極カテーテル1の基端に加えられた回転力が先端に伝達されるトルク伝達性と、曲がった血管内で折れ曲がりを生じない耐キンク性等を付与することができる。編組9を配置する方法としては、特に限定されないが、巻き付け等の方法が挙げられる。編組9は、金属素線等の交差、編み込み等によって形成されたものであり、例えば、カテーテルチューブの分野における公知技術が参照され、このような公知技術に基づく編組を用いることができる。編組9の金属素線としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、ニッケル-チタン系合金、コバルト-クロム系合金、アモルファス合金等が挙げられる。編組9は、金属以外の材料、例えば樹脂を材料とするものであってもよい。樹脂を材料とする編組9としては、例えば、外装チューブ11よりも融点が高い樹脂材料のチューブを挙げることができ、そのような樹脂材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0029】
以上の芯管6と、複数のリード線7,7…と、被覆材8と、編組9は、芯管6を中心としてリード線7,7…、被覆材8、編組9がその外周面に配置されることにより、長尺かつ一体の構造体10を構成する。
【0030】
外装チューブ11は、構造体10の外周面に配置され、構造体10を芯材とした押出成形体である。本実施形態のカテーテルチューブユニット2aによれば、外装チューブ11の成形時にその内部に収容する構造体10を芯材として一体で押出成形することにより、外装チューブ11を成形後のリード線7の挿入工程がなくなり、外装チューブ11と芯管6の間に内腔を確保せずともリード線7を配置することができる。従って、デフレクタブル機構を有していても細径化が可能で、従来品では実現できなかった径の電極カテーテル1も製造できる。これにより、検査時における静脈穿刺箇所を減らすことができ、施術時間の短縮、及び使用後の止血等の負担を軽減することが可能となる。
【0031】
外装チューブ11の材料としては、特に限定されないが、押出成形可能な熱可塑性の成形材料を用いることができ、例えば、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、フッ素系エラストマー等の各種可撓性を有する樹脂や、シリコーンゴム、ラテックスゴム等のゴム材料、またはこれらのうちの2種以上を組み合わせたもの等が挙げられる。
【0032】
以上の構成を有する本実施形態のカテーテルチューブユニット2aの外径は、特に限定されないが、細径化の観点から、1.32mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0033】
なお、
図1~
図3のカテーテルチューブユニット2aでは、構造体10の構成要素として芯管6と、複数のリード線7,7…と、被覆材8と、編組9を用いているが、編組9を用いずに構造体10を構成してもよい。
【0034】
すなわち、カテーテルチューブユニット2aは、i)ワイヤ5と、ii)このワイヤ5を挿通する芯管6、この芯管6の外周に配置され、電極4,4…に接続される複数のリード線7,7…、及びこの複数のリード線7,7…の全体における少なくとも外側を被覆する被覆材8を少なくとも有する長尺かつ一体の構造体10と、iii)この構造体10の外周面に配置され、構造体10を芯材とした押出成形体である外装チューブ11とを備えることを特徴とし、構造体10は、被覆材8の外周に編組9が配置されていてもよい。
【0035】
カテーテルチューブユニット2aは、
図4~
図7にも示すように、以下の工程を含む方法によって製造することができる:
(A)ワイヤ5を挿通する芯管6の外周に、電極4,4…に接続される複数のリード線7,7…を配置すること(
図4)、及び(B)この複数のリード線7,7…の全体における少なくとも外側を被覆材8によって被覆すること(
図5)を含み、芯管6、複数のリード線7,7…、及び被覆材8を少なくとも有する長尺かつ一体の構造体10を得る工程;及び
構造体10を芯材として、その外周面に外装チューブ11を押出成形する工程(
図7)。
【0036】
構造体10は、
図6のように、被覆材8の外周に編組9を更に配置してもよい。
【0037】
また、
図4~
図7に示す本実施形態では上記(A)の後に上記(B)を行う手順となるが、本発明においては、例えば
図9の実施形態のように、リード線7,7…の全周を被覆材8によって被覆したリード線群を予め作製し、芯管6の外周面に配置する場合等、必ずしもこの手順に限るものではなく任意である。
【0038】
上記カテーテルチューブユニット2aの製造方法において、外装チューブ11を押出成形する際には、例えば、
図7に示すように、押出し路を形成したリング状の口金16を用い、この口金4の中空部内に構造体10を通し、口金4の押出し路から熱可塑性の成形材料11aをチューブ状に成形して構造体10の外周面に押出すと共に、構造体10を一方向に移動させて構造体10の外周面全面を成形材料11aで被覆する。これにより、成形材料11aを用いた外装チューブ11を構造体10の外周面に形成することができる。
【0039】
以上に説明した本実施形態のカテーテルチューブユニット2aを用いたカテーテルチューブ2は、
図1及び
図3に示すように、カテーテルチューブユニット2aと、このカテーテルチューブユニット2aの先端に連結された電極ユニット2bを備えている。
【0040】
電極ユニット2bは、検査用の電極4,4…が配置された電極チューブ14と、
図3に示すように、この電極チューブ14の内部に収容された、カテーテルチューブ2の先端を屈曲及び伸展可能とする部材である板バネ15を備えている。
【0041】
図3に示すように、カテーテルチューブユニット2aの先端と電極チューブ2bの基端は、連結部13で連結されている。カテーテルチューブユニット2aと電極チューブ2bを連結する態様は、これらが離間しないものであれば特に限定されない。
【0042】
カテーテルチューブユニット2aの先端からは、ワイヤ5及び複数のリード線7,7…が延在している。すなわち、前記の方法によって製造したカテーテルチューブユニット2aの先端側において外装チューブ11や被覆材8等を剥ぎ取り、芯管6もカテーテルチューブユニット2aの先端から延びる一部を残して切断することによって、その内部にあるワイヤ5及び複数のリード線7,7…を露出させている。そして電極チューブ2bには、カテーテルチューブユニット2aから延在するワイヤ5及び複数のリード線7,7…が挿入されている。
【0043】
カテーテルチューブユニット2aの先端から延び出した芯管6には、樹脂製の連結管12が嵌め込まれて装着されている。電極チューブ2bは、その可撓性においてカテーテルチューブユニット2aと同じ特性のチューブで構成しても良いが、好ましくは、カテーテルチューブ2のうち先端側にある電極チューブ2bは比較的可撓性のある部分とされ、基端側にあるカテーテルチューブユニット2aは比較的に剛性のある部分とされる。電極チューブ2bと、カテーテルチューブユニット2aの外装チューブ11の厚みは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、
図3の例においては、電極チューブ2bはその外周が外装チューブ11と同径とされている一方、カテーテルチューブ2の先端を屈曲及び伸展可能とする等のための可撓性を確保するために、カテーテルチューブユニット2aの外装チューブ11よりも薄肉とされている。そのため、電極チューブ2bの内周面と芯管6の間には、複数のリード線7,7…を挟んでも隙間がある。そこで、
図3に示すように、電極チューブ2bの基端では部分的にその厚みを外装チューブ11と同程度とし、この連結部13から芯管6よりも太径の連結管12を、複数のリード線7,7…を挟んで押し込むことで、カテーテルチューブユニット2aの先端と電極チューブ2bの基端を連結している。
【0044】
電極チューブ2bの材料としては、特に限定されないが、例えば、前記において外装チューブ11の材料として例示した成形材料等が挙げられる。
【0045】
電極チューブ2bに挿入されたワイヤ5は、電極チューブ2bの先端側に固定される。ワイヤ5は、電極チューブ2bの内部において板バネ15の片面に配置される。ワイヤ5を電極チューブ2bの先端側に固定する態様は特に限定されないが、例えば、板バネ15の先端側や、電極チューブ2bの先端に設けた部材等に、半田付け、レーザ溶接、超音波溶着、アーク溶接、ロウ付け等の手段によって固定される。
【0046】
そして、ワイヤ5をカテーテルチューブ2の基端で引張り操作することにより、板バネ15を撓ませ、カテーテルチューブ2の先端を屈曲させることができる。引張った状態からワイヤ5を緩ませる操作により、板バネ15の弾性回復力によって、屈曲したカテーテルチューブ2の先端を元の状態に伸展させることができる。このようにカテーテルの先端を基端側で操作して屈曲及び伸展させる機構自体は、既に公知で実用化もされており、例えば特許文献1や特表平05-507212号公報等に記載されている。
【0047】
板バネ15の材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金、コバルト-ニッケル合金、フッ素樹脂やポリアミド樹脂等の高分子材料等が挙げられる。
【0048】
この電極チューブ14の内部に収容されカテーテルチューブ2の先端を屈曲及び伸展可能とする部材としては、ワイヤ5を用いて当該操作を可能とするものであれば特に限定されず、板バネ15以外のものであってもよい。例えば、リング部材をワイヤなどで連結した機構等が知られている。
【0049】
図3においてカテーテルチューブユニット2aの先端から延在する複数のリード線7,7…は、電極4,4…に接続されている。複数のリード線7,7…のうち、電極4,4…の数に応じて、一部の本数をカテーテルチューブユニット2aの先端から引き出すようにしてもよい。
【0050】
電極4,4…の配置形態、配置位置、配置数等は、例えば、電極カテーテルチューブの分野における公知技術が参照され、このような公知技術に基づく構成を採用することができる。
図1は電極4,4…の例を概略的に示しているが、その配置形態、配置位置、配置数等は、その目的等に応じて適宜のものとすることができる。一例を示すと、カテーテルチューブ2の外径と同程度である環状の電極4,4…が長手方向に等間隔もしくは異なる間隔で装着され、電極チューブ14にリード線7を通す穴をあけ、穴を通してリード線7の芯線を一旦表面に出してから電極4と接続する。電極4,4…は、等間隔で配置されてもよく、2つの電極4,4を対として2電極ずつ等間隔に配置されてもよく、電極チューブ14の先端に電極4が配置されてもよい。電極4の数は、カテーテルチューブ2の外径によって収容できる最大数が制限を受けるが、好ましくは1~40、より好ましくは2~24である。また、電極カテーテル1における検査用の電極の一部が、カテーテルチューブユニット2aに存在するものであってもよく、この場合、カテーテルチューブユニット2aの内部の複数のリード線7,7…のうち一部が当該電極に接続される。
【0051】
電極4の材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、金、白金、イリジウム、レニウム、及び合金等が挙げられる。
【0052】
操作部3から先のカテーテルチューブ2の長さは、特に限定されないが、例えば心臓の活動電位を計測するためには、60~180cmが好ましい。
【0053】
以上に説明した本実施形態のカテーテルチューブユニット2aを用いたカテーテルチューブ2は、
図1に示すように、電極カテーテル1として使用される。電極カテーテル1は、カテーテルチューブ2と、このカテーテルチューブ2の基端側に設けられ、カテーテルチューブ2の先端が屈曲及び伸展するようにワイヤ5を操作可能な操作部3を備えている。
【0054】
操作部3は、操作者が把持可能なケーシングとして構成され、ワイヤ5を操作する機構を備えている。カテーテルチューブ2は、操作部先端3aからケーシングの内部に挿通され、ケーシングの内部では、カテーテルチューブ2の基端からワイヤ5及び複数のリード線7,7…が延在している。ワイヤ5の基端は、操作部3のケーシングの内部に固定されている。
【0055】
操作部3においてワイヤ5を操作する機構は、特に限定されず、例えば、電極カテーテルの分野における公知技術が参照され、このような公知技術に基づく構成を採用することができる。このような公知技術は、例えば、ワイヤ5に接続された軸方向に移動可能な部材や回動可能な部材を、軸方向への移動や回動によって操作する機構、ワイヤ5の軸方向移動を螺合機構により回転移動に変換し、回転部材を操作する機構を含む。
図1においては、ワイヤ5に接続された軸方向に移動可能な可動部材3cが設けられている。可動部材3cを摘んで手前側に引くと、ワイヤ5が引っ張られてカテーテルチューブ2の先端で板バネ15を撓ませ、カテーテルチューブ2の先端を屈曲させることができる。可動部材3cを軸方向に押し出すと、引張った状態からワイヤ5が緩み、板バネ15の弾性回復力によって、屈曲したカテーテルチューブ2の先端を元の状態に伸展させることができる。
【0056】
操作部3における操作部後端3bは、カテーテルチューブ2の基端から延在する複数のリード線7,7…が引き出されたコネクタが設けられている。
【0057】
図8は本発明のカテーテルチューブユニットの別の実施形態を概略的に示す、
図2と同様な断面図である。本実施形態では、芯管6の外周に配置され、電極4,4…に接続される複数のリード線7,7…は、厚み方向へ2段に配置されている。芯管6の外周面に接して全周にわたり配置された内側のリード線7,7…と、その外側に全周にわたり配置された外側のリード線7,7…の全体を、被覆材8が外側のリード線7,7…に接して被覆することにより、複数のリード線7,7…の全体における少なくとも外側を被覆材8が被覆している。
【0058】
図9は、本発明のカテーテルチューブユニットの更に別の実施形態を概略的に示す、
図2と同様な断面図である。本実施形態では、電極4,4…に接続される複数のリード線7,7…は、複数の束に分割されて、その各々のリード線群を、個別の被覆材8によって被覆している。これにより、複数のリード線7,7…の全体における少なくとも外側を被覆材8,8…が被覆している。
【0059】
この場合の製造方法では、各々のリード線群の全周を被覆材8によって被覆し、その後に、この被覆材8によって被覆したリード線群を、芯管6の外周面に配置することで構造体10を得ることができる。
【0060】
図9の例では、リード線群が複数(4つ)ある例を示しているが、本発明における別の例として、全てのリード線7,7…の全周を1つの被覆材8によって予め被覆し、その後に、この被覆材8によって被覆した1つのリード線群を、芯管6の外周に配置することで構造体10を得ることもできる。すなわち、
図9に示すようなリード線群を複数ではなく1つのみ配置する態様であってもよい。
【0061】
また、
図9の例では、各々のリード線群において、リード線7,7…が厚み方向に1段に配置された場合を示しているが、各々のリード線群において、
図8のようにリード線7,7…を厚み方向へ2段に配置してもよい。
【0062】
以上に、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、各種の変更が可能である。例えば、本実施形態では、不整脈の原因の特定を目的とする電気生理学的検査に使用される電極カテーテル1(EPカテーテル)を例として説明したが、本発明においては、心臓内の不整脈の原因となっている心筋組織まで挿入し、電極から高周波電気を流してこの心筋組織又はその近傍を焼灼(アブレーション)して凝固壊死せしめ、不整脈の回路を遮断する治療法に使用されるアブレーションカテーテルに使用することもでき、また、脳波の検査や、心筋の電位検査等あらゆる人体の電気信号の検査・測定等にも使用できる。本発明において電極カテーテルは、体内のあらゆる部位への適用を意図しており、その使用目的は何ら制限されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 電極カテーテル
2 カテーテルチューブ
2a カテーテルチューブユニット
2b 電極ユニット
3 操作部
3a 操作部先端
3b 操作部後端
3c 可動部材
4 電極
5 ワイヤ
6 芯管
7 リード線
8 被覆材
9 編組
10 構造体
11 外装チューブ
11a 成形材料
12 連結管
13 連結部
14 電極チューブ
15 板バネ
16 口金
105 ワイヤ
106 芯管
107 リード線
111 外装チューブ
200 カテーテルチューブ
201 内部空間