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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】車両用通信装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20230606BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230606BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20230606BHJP
   B62H 5/00 20060101ALI20230606BHJP
   H01Q 1/44 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B60R11/02 A
H05K1/02 F
B60R25/24
B62H5/00
H05K1/02 Q
H01Q1/44
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019037257
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020138677
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 昂博
(72)【発明者】
【氏名】長山 航大
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-075307(JP,A)
【文献】特開2015-023042(JP,A)
【文献】特開2014-107601(JP,A)
【文献】特開2003-283144(JP,A)
【文献】特開2016-220088(JP,A)
【文献】特開2004-175162(JP,A)
【文献】特開2005-191874(JP,A)
【文献】特開2015-050580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
H05K 1/02
B60R 25/24
B62H 5/00
H01Q 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線にて信号の送信又は受信を行うアンテナ部材と、
前記アンテナ部材で信号を送信又は受信させて通信可能とする通信回路と、
前記通信回路による通信に基づいて車両に搭載された所定の電装部品の通電を制御する制御回路と、
前記アンテナ部材、通信回路及び制御回路が形成された基板と、
を有する車両用通信装置において、
前記アンテナ部材は、屈曲した形状で延設されるとともに、前記基板との接続部が前記制御回路の近傍位置とされて前記制御回路で発生した熱を吸収可能とされ、且つ、前記基板は、厚さ方向に電流を流し得る複数の層が形成されるとともに、前記制御回路で発生した熱が前記アンテナ部材が接続された層を通じて当該アンテナ部材に伝熱するよう構成されたことを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
前記アンテナ部材は、L字状に延設された金属製板材から成ることを特徴とする請求項1記載の車両用通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ部材は、前記基板との接続部が複数形成されるとともに、これら接続部が前記制御回路の周囲にそれぞれ位置することを特徴とする請求項記載の車両用通信装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記アンテナ部材の基端部が折り曲げられて形成された第1基端部及び第2基端部を有し、前記第1基端部及び第2基端部が前記制御回路の周囲に位置することを特徴とする請求項3記載の車両用通信装置。
【請求項5】
前記アンテナ部材は、操作者が携帯可能な携帯機との間で車両固有のIDコードが送信又は受信可能とされるとともに、前記電装部品は、ロック部材を駆動してロック又はアンロックを行うアクチュエータとされ、制御回路は、前記アンテナ部材で受信した信号が正規のIDコードと一致した場合に限って前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の車両用通信装置。
【請求項6】
前記制御回路の発熱量を演算又は推定し得るとともに、その演算又は推定した発熱量に基づいて前記通信回路による通信を制限することを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載の車両用通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて信号の送信又は受信を行うアンテナ部材と、アンテナ部材で信号を送信又は受信させて通信可能とする通信回路と、通信回路による通信に基づいて車両に搭載された所定の電装部品の通電を制御する制御回路と、アンテナ部材、通信回路及び制御回路が形成された基板とを有する車両用通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搭乗者が携帯するとともに車両固有の認証コードを電波にて送信し得る携帯機と、その送信された認証コードを受信可能な車載ユニットとを具備し、携帯機から無線送信された認証コードが正規の認証コードである場合に限り、車両の各種ロックの解除、及び駆動源の始動を許可し得る車両用通信装置(所謂、スマートキー装置)が普及している。
【0003】
このような車両用通信装置は、通常、携帯機との間で無線にて車両固有のIDコードの送信又は受信を行うアンテナ部材と、アンテナ部材でIDコードを送信又は受信させて通信可能とする通信回路と、通信回路による通信に基づいて車両に搭載された所定の電装部品の通電を制御する制御回路と、アンテナ部材、通信回路及び制御回路が形成された基板とを有し、受信したIDコードが正規のIDコードと一致した場合に限って、制御回路がアクチュエータを駆動させ、ロック部材のロック等を解除してエンジン始動を許可し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-220088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用通信装置においては、制御回路で発生した熱を外部に放散するためのヒートシンク等を別個に形成する必要があり、装置が大型化してしまう虞があった。特に、車両に配設されたロック部材のロックを解除するためのダイオード、IPD等から成る制御回路においては、発熱が高くなってしまい、小型化を図りつつ通信機能を維持するのが困難となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置の小型化を図りつつ通信機能を維持することができる車両用通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、無線にて信号の送信又は受信を行うアンテナ部材と、前記アンテナ部材で信号を送信又は受信させて通信可能とする通信回路と、前記通信回路による通信に基づいて車両に搭載された所定の電装部品の通電を制御する制御回路と、前記アンテナ部材、通信回路及び制御回路が形成された基板とを有する車両用通信装置において、前記アンテナ部材は、屈曲した形状で延設されるとともに、前記基板との接続部が前記制御回路の近傍位置とされて前記制御回路で発生した熱を吸収可能とされ、且つ、前記基板は、厚さ方向に電流を流し得る複数の層が形成されるとともに、前記制御回路で発生した熱が前記アンテナ部材が接続された層を通じて当該アンテナ部材に伝熱するよう構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の車両用通信装置において、前記アンテナ部材は、L字状に延設された金属製板材から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項記載の車両用通信装置において、前記アンテナ部材は、前記基板との接続部が複数形成されるとともに、これら接続部が前記制御回路の周囲にそれぞれ位置することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の車両用通信装置において、前記接続部は、前記アンテナ部材の基端部が折り曲げられて形成された第1基端部及び第2基端部を有し、前記第1基端部及び第2基端部が前記制御回路の周囲に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか1つに記載の車両用通信装置において、前記アンテナ部材は、操作者が携帯可能な携帯機との間で車両固有のIDコードが送信又は受信可能とされるとともに、前記電装部品は、ロック部材を駆動してロック又はアンロックを行うアクチュエータとされ、制御回路は、前記アンテナ部材で受信した信号が正規のIDコードと一致した場合に限って前記アクチュエータを駆動させることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載の車両用通信装置において、前記制御回路の発熱量を演算又は推定し得るとともに、その演算又は推定した発熱量に基づいて前記通信回路による通信を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、アンテナ部材は、制御回路で発生した熱を吸収可能とされたので、アンテナ部材がヒートシンク機能を有することとなり、発熱対策のための別個の手段を不要とすることができ、装置の小型化を図りつつ通信機能を維持することができる。
【0014】
また、アンテナ部材は、基板との接続部が制御回路の近傍位置とされたので、制御回路で発生した熱を効率よくアンテナ部材で吸収させることができ、制御回路の熱による不具合の発生を抑制することができる。
さらに、基板は、厚さ方向に電流を流し得る複数の層が形成されるとともに、制御回路で発生した熱がアンテナ部材が接続された層を通じて当該アンテナ部材に伝熱するよう構成されたので、制御回路で発生した熱を基板を介してアンテナ部材に伝熱させて確実に吸収させることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、アンテナ部材は、基板との接続部が複数形成されるとともに、これら接続部が制御回路の周囲にそれぞれ位置するので、制御回路で発生した熱をより効率よくアンテナ部材でより吸収させることができ、制御回路の熱による不具合の発生を確実に抑制することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、アンテナ部材は、操作者が携帯可能な携帯機との間で車両固有のIDコードが送信又は受信可能とされるとともに、電装部品は、ロック部材を駆動してロック又はアンロックを行うアクチュエータとされ、制御回路は、アンテナ部材で受信した信号が正規のIDコードと一致した場合に限ってアクチュエータを駆動させるので、アンテナ部材における通信のタイミングと熱の吸収のタイミングが一致してしまうのを回避でき、熱の吸収によってアンテナ部材の通信機能に悪影響が及ぼされるのを抑制することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、制御回路の発熱量を演算又は推定し得るとともに、その演算又は推定した発熱量に基づいて通信回路による通信を制限するので、熱により通信機能に支障がある場合のアンテナ部材による通信を制限することができ、誤作動等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用通信装置の外観を示す斜視図
図2】同車両用通信装置に係るケース部材の内部構成を示す平面図
図3】同車両用通信装置に係る基板とアンテナ部材との接続部近傍を示す斜視図
図4】同車両用通信装置に係るアンテナ部材を示す3面図
図5】同アンテナ部材を示す斜視図
図6】同車両用通信装置を示すブロック図
図7】同車両用通信装置に係る基板に対するアンテナ部材の接続形態を示す模式図
図8】同車両用通信装置に係るアンテナ部材の接続関係を示す模式図
図9】同車両用通信装置における制限回路による制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る車両用通信装置1は、二輪車等の車両に搭載された車載ユニットとの間で無線通信を行い、車載ユニットで取得されたIDコードが正規のIDコードである場合に、車両の駆動源であるエンジンの始動を許可又は車両の走行を可能とし得る所謂、パッシブ・キーレスエントリーシステムに適用されたもので、図6に示すように、携帯機K(電子キー)のアンテナKaとの間で無線にて信号の送信又は受信を行うアンテナ部材2と、通信回路3と、制御回路4と、その他回路5と、基板6とを有して構成されている。
【0021】
本実施形態に係る車両用通信装置1は、図1、2に示すように、基板6を収容したケースCにステアリングロック装置F(所定の電装部品)が取り付けられるとともに、基板6には、アンテナ部材2、通信回路3、制御回路4及びその他回路5が形成されている。その他回路5は、図6に示すように、判定回路5aや制限回路5b等を有しており、それぞれが基板6の所定位置に取り付けられている。
【0022】
ステアリングロック装置Fは、ロック部材Lと、アクチュエータとしてのモータMとを有したもので、車両のステアリング近傍に取り付けられるとともに、車両用通信装置1の制御回路4にてモータMを駆動制御することにより、ステアリングをロックするロック位置と当該ロックを解除するアンロック位置との間でロック部材Lを移動させ得るようになっている。
【0023】
携帯機Kは、操作者が携帯可能とされ、例えば車両側からのアクセス信号を受信したことを条件として、車両固有のIDコード(認証コード)をアンテナKaにて無線送信可能なものである。なお、携帯機Kは、内部に制御回路等が形成された基板を有するとともに、電池やコイル等を具備している。かかる携帯機Kから送信された車両固有のIDコードは、本車両用通信装置1のアンテナ部材2にて受信される。
【0024】
アンテナ部材2は、携帯機Kとの間で無線にて信号の送信又は受信を行うもので、図4、5に示すように、L字状に延設された延設部2aと、延設部2aの端部から折り曲げられて形成された第1基端部2b及び第2基端部2cとを有した金属性板材から成る。そして、ケース部材Cに収容された基板6に対して第1基端部2bの接続部P1及び第2基端部2cの接続部P2がそれぞれ接続されると、図2に示すように、延設部2aが基板6の上面においてL字状に配置するようになっている。
【0025】
通信回路3は、アンテナ部材2で信号を送信又は受信させて通信可能とするもので、図8に示すように、アンテナ部材2及びグランド層dと電気的に接続されている。また、通信回路3は、その他回路5と電気的に接続されており、アンテナ部材2で受信した信号をその他回路5を構成する判定回路5aや制限回路5b(図6参照)に送信し得るよう構成されている。
【0026】
判定回路5aは、通信回路3から送信された信号のIDコードが正規のIDコードか否か判定し得るもので、図6、8に示すように、制御回路4と電気的に接続されている。すなわち、携帯機Kから送信された信号のうちIDコードがアンテナ部材2及び通信回路3を介して判定回路5aに送信されるとともに、そのアンテナ部材2で受信したIDコードが予め車両毎に設定された車両固有のIDコードであるか否か判定回路5aにて判定するのである。
【0027】
制御回路4は、図6、8に示すように、車両に搭載された所定の電装部品であるステアリングロック装置F及び車両に搭載されたバッテリ等の電源Eとそれぞれ電気的に接続されたIPD(インテリジェントパワーデバイス)、ダイオード等の半導体素子から成り、通信回路3による通信に基づいて車両に搭載されたステアリングロック装置F(所定の電装部品)の通電を制御するものである。
【0028】
そして、判定回路5aによってアンテナ部材2で受信したIDコードが正規のIDコードと一致したと判定されると、制御回路4は、ステアリングロック装置FにおけるモータM(アクチュエータ)に対する通電を制御して駆動させ、ロック部材Lをロック位置からアンロック位置まで移動させることにより、ステアリングロックを解除し得るよう構成されている。なお、本実施形態においては、判定回路5aによってアンテナ部材2で受信したIDコードが正規のIDコードと一致したと判定されると、ステアリングロックの解除に加え、エンジン始動を許可する制御が行われるようになっている。
【0029】
基板6は、アンテナ部材2、通信回路3及び制御回路4やその他回路5がそれぞれ形成されるとともに、図7に示すように、厚さ方向に電流を流し得る複数の層(本実施形態においては銅から成る層)が形成されたプリント基板から成る。具体的には、本実施形態に係る基板6は、下方に位置する第1基板6aと上方に位置する第2基板6bの2段の基板6で構成され、そのうち第1基板6aに少なくともアンテナ部材2及び制御回路4が取り付けられている。この基板6aには、その表裏面において所定の回路を構成する表層(a1、a2、a3及びa4)及び裏層(b1、b2)に加えて、内部に形成された中層(c1、c2)及びグランド層d等が形成されており、これら層間に基板6の材質であるガラスエポキシ層が位置している。
【0030】
また、図7において、制御回路4が表層a3及び表層a4に接続、その他回路5が表層a1~a3(厳密には表層a1~a3、並びに中層c1及び中層c2)に接続されるとともに、通信回路3が裏層b1及び裏層b2に接続されており、各回路がグランド層dに接続されて電流が流れるようになっている。なお、図7中符号hは、層間を電気的に接続する接続穴を示している。
【0031】
ここで、本実施形態に係る車両用通信装置1のアンテナ部材2は、その基板6との接続部(P1、P2)が制御回路4の近傍に位置しており、制御回路4で発生した熱を吸収可能とされている。具体的には、本実施形態に係るアンテナ部材2は、既述のように、第1基端部2b及び第2基端部2cといった複数の基端部を有しており、図2、3に示すように、基板6との接続部である第1基端部2bの接続部P1及び第2基端部2cの接続部P2が制御回路4の周囲にそれぞれ位置している。
【0032】
しかして、制御回路4で発生した熱は、アンテナ部材2の第1基端部2b及び第2基端部2cに伝わり、そこから延設部2a全体に伝熱されるので、制御回路4で発生した熱をアンテナ部材2が吸収することができる。吸収された熱は、アンテナ部材2全体に吸収された後に蓄熱されるので、制御回路4の過熱を抑制することができる。なお、アンテナ部材2をケース部材Cの外部に位置させ、吸収した熱を外部に放散させるようにしてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態に係るアンテナ部材2は、図7に示すように、その接続部P1、P2が裏層b2及びグランド層dに接続されている。これにより、制御回路4で発生した熱がアンテナ部材2が接続された層であるグランド層dを通じて当該アンテナ部材2に伝熱させることができる。また、アンテナ部材2の接続部P1、P2が制御回路4の近傍に位置するので、制御回路4で発生した熱をガラスエポキシを介してグランド層dに伝熱させることができる。
【0034】
なお、本実施形態に係る基板6は、下方に位置する第1基板6aと上方に位置する第2基板6bの2段の基板6で構成され、制御回路4及びアンテナ部材2の接続部(P1、P2)が第1基板6aに位置しているが、第2基板6bを有さないものであってもよい。この場合、第1基板6aに、アンテナ部材2が接続されるとともに、通信回路3、制御回路4及びその他回路5が形成されることとなる。また、基板6が取り付けられたケース部材Cの内部には、所定の樹脂材が充填されており、防水及び防塵が図られている。
【0035】
一方、本実施形態に係るその他回路5には、制限回路5bが形成されている。かかる制限回路5bは、制御回路4の発熱量を演算又は推定し得るとともに、その演算又は推定した発熱量に基づいて通信回路3による通信を制限するものである。この制限回路5bは、図9に示すように、制御回路4にて通電が制御されたアクチュエータ(モータM)の駆動時間に基づいて制御回路4の発熱量を演算又は推定し(S1)、演算又は推定した発熱量が所定の発熱量に達したと判定する(S2)。そして、S2にて所定の発熱量に達したと判定されると、S3に進み、通信回路3による通信を制限するようになっている。
【0036】
本実施形態によれば、アンテナ部材2が制御回路4で発生した熱を吸収可能とされたので、アンテナ部材2がヒートシンク機能を有することとなり、発熱対策のための別個の手段を不要とすることができ、車両用通信装置1の小型化を図りつつ通信機能を維持することができる。また、本実施形態に係るアンテナ部材2は、基板6との接続部(P1、P2)が制御回路4の近傍位置とされたので、制御回路4で発生した熱を効率よくアンテナ部材2で吸収させることができ、制御回路4の熱による不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係るアンテナ部材2は、基板6との接続部(P1、P2)が複数(本実施形態においては2つ)形成されるとともに、これら接続部(P1、P2)が制御回路4の周囲にそれぞれ位置するので、制御回路4で発生した熱をより効率よくアンテナ部材2でより吸収させることができ、制御回路4の熱による不具合の発生を確実に抑制することができる。なお、本実施形態に係るアンテナ基板2は、基板6との接続部が2つ形成されているが、基板6との接続部が1つ形成されたもの、或いは3つ以上形成されたもの等であってもよい。
【0038】
またさらに、本実施形態に係る基板6は、厚さ方向に電流を流し得る複数の層が形成されるとともに、制御回路4で発生した熱がアンテナ部材2が接続された層(グランド層d)を通じて当該アンテナ部材2に伝熱するよう構成されたので、制御回路4で発生した熱を基板6を介してアンテナ部材2に伝熱させて確実に吸収させることができる。なお、他の層にて制御回路4で発生した熱をアンテナ部材2に伝熱するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態に係るアンテナ部材2は、操作者が携帯可能な携帯機Kとの間で車両固有のIDコードが送信又は受信可能とされるとともに、電装部品は、ロック部材Lを駆動してロック又はアンロックを行うアクチュエータ(本実施形態においてはモータM)とされ、制御回路4は、アンテナ部材2で受信した信号が正規のIDコードと一致した場合に限ってアクチュエータを駆動させるので、アンテナ部材2における通信のタイミングと熱の吸収のタイミングが一致してしまうのを回避でき、熱の吸収によってアンテナ部材2の通信機能に悪影響が及ぼされるのを抑制することができる。
【0040】
さらに、制御回路4の発熱量を演算又は推定し得るとともに、その演算又は推定した発熱量に基づいて通信回路3による通信を制限するので、熱により通信機能に支障がある場合のアンテナ部材2による通信を制限することができ、通信不良や通信機能を構成する回路素子或いは電子素子等の破損等を防止することができる。この通信の制限は、通信を遮断してもよく、或いは所定の条件の通信のみを行わせるようにしてもよい。
【0041】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば制限回路5bを有さないもの、制御回路4にて通電を制御される対象(所定の電装部品)がステアリングロック装置Fとは異なるもの(燃料タンクのリッドのロックを解除するもの等)としてもよい。また、本実施形態においては、IDコードが正規のIDコードである場合に、車両の駆動源であるエンジンの始動を許可又は車両の走行を可能とし得る所謂、パッシブ・キーレスエントリーシステムに適用されているが、IDコードが正規のIDコードである場合に、単に制御回路4にて所定の電装部品の通電を制御するものであってもよい。なお、本実施形態においては、二輪車に適用されているが、自動車等他の車両に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
アンテナ部材は、屈曲した形状で延設されるとともに、基板との接続部が制御回路の近傍位置とされて制御回路で発生した熱を吸収可能とされ、且つ、基板は、厚さ方向に電流を流し得る複数の層が形成されるとともに、制御回路で発生した熱がアンテナ部材が接続された層を通じて当該アンテナ部材に伝熱するよう構成された車両用通信装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 車両用通信装置
2 アンテナ部材
2a 延設部
2b 第1基端部
2c 第2基端部
3 通信回路
4 制御回路
5 その他回路
5a 判定回路
5b 制限回路
6 基板
M モータ(アクチュエータ)
F ステアリングロック装置(所定の電装部品)
L ロック部材
P1、P2 接続部
E 電源
C ケース部材
K 携帯機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9