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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】接続構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230606BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20230606BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20230606BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61M25/00 550
B21D39/00 A
F16B4/00 N
F16F1/12 K
F16F1/12 N
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018174427
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020044080
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】595054361
【氏名又は名称】株式会社共進
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】林 弘
(72)【発明者】
【氏名】依田 結香
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-501854(JP,A)
【文献】米国特許第5356379(US,A)
【文献】実開昭54-77006(JP,U)
【文献】特開平4-165142(JP,A)
【文献】実開平3-118103(JP,U)
【文献】特表2018-526082(JP,A)
【文献】特開2012-233547(JP,A)
【文献】特開2002-263755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
B21D 39/00
F16B 4/00
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状部材と、該コイル状部材に接続された部品とを備える、カテーテルや内視鏡に用いられる医療用材料である接続構造体の製造方法であって、
前記コイル状部材を螺旋状溝を備えた第1の前記部品に対して内外のいずれか一方側から螺合させるとともに、前記第1の部品とは内外の反対側から第2の前記部品を前記コイル状部材に当接させた状態で、前記コイル状部材を挟んだ前記第1の部品と前記第2の部品の対向領域を少なくとも半径方向に加圧することにより塑性変形させ、前記コイル状部材を前記第1の部品及び前記第2の部品に対し接着剤や加熱処理を用いることなしに固着させる塑性加工工程が行われ、
前記塑性加工工程では、前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品の端部を、前記第1の部品と前記第2の部品のうちの他方の部品に向けて、前記コイル状部材の軸線方向と半径方向の間の傾斜方向に沿って前記軸線方向及び前記半径方向に対して斜めに加圧することにより、前記対向領域を塑性変形させる、
ことを特徴とする接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記傾斜方向は、前記軸線方向に対して20~40度の範囲内で傾斜する加圧面により設定される、
請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品は円筒面状の外周面若しくは内周面を備え、前記一方の部品の端部は、外周縁若しくは内周縁の全周にわたる角部である、
請求項1又は2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記接続構造体は、前記コイル状部材を構成するコイルばねと、その端部に接続される前記部品である金属片との接続構造を有する医療用材料である、
請求項1-3のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の部品は、前記コイル状部材の内部に配置される内側部品であり、前記第2の部品は、前記コイル状部材の外部に配置される外側部品である、
請求項1-4のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記接続構造体では、前記螺旋状溝の深さは、前記対向領域内に配置される前記コイル状部材の素線の断面形状の高さの25~45%の範囲内である、
請求項1-5のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
前記コイル状部材は、前記対向領域から軸線方向の一方の側へ延在し、
前記第1の部品と前記第2の部品のうちの内側にある前記部品は、外側にある前記部品に対して前記コイル状部材の延在側に抜け止めされた構造を有する、
請求項1-6のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項8】
前記塑性加工工程において、前記第1の部品と前記第2の部品は、前記コイル状部材の延在側とは反対側でカシメ固定される、
請求項7に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記コイル状部材は、前記対向領域から軸線方向の一方の側へ延在し、
前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品は、前記第1の部品と前記第2の部品のうちの他方の部品の端部よりも前記対向領域から前記コイル状部材の延在側に軸線方向に沿って突出する延長部を有する、
請求項1-8のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項10】
前記一方の部品は前記第1の部品であり、前記螺旋状溝は、前記対向領域内から連続して前記延長部にも形成される、
請求項9に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項11】
前記接続構造体では、前記対向領域における前記コイル状部材の前記端部の素線断面の高さは、前記対向領域外における前記コイル状部材の素線断面の高さより低い、
請求項1-10のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項12】
前記塑性加工工程において、
前記コイル状部材の一方の端部は、先端側の前記第1の部品と前記第2の部品により内外両側から挟持された対向領域が塑性変形されることによって前記先端側の前記第1の部品及び前記第2の部品に対して接続され、固着され、
前記コイル状部材の他方の端部は、基端側の前記第1の部品と前記第2の部品により内外両側から挟持された対向領域が塑性変形されることによって前記基端側の前記第1の部品及び前記第2の部品に対して接続され、固着される、
請求項1-4のいずれか一項に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接続構造体及びその製造方法に係り、特に、コイル状部材を含む構造体の接続構造及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の器具にコイルばね等のコイル状部材を装着することが行われている。例えば、医療器具としては、カテーテルの先端部にコイルばねを接続し、或いは、先端部の内側にコイルばねを収容することにより、適度な剛性を備えるとともに可撓性を有する先端部を設ける場合がある。これは、多くの場合、体内の細管内にカテーテルを操作性よく導入するために、その先端部に柔軟性を確保しつつ或る程度の復元力を持たせる必要があるからであり、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを導入する場合や操作ワイヤによって先端部を屈曲操作する場合などに有用である(例えば、以下の特許文献1~6参照)。また、体内に設置する閉鎖材を開くためにコイルばねの弾性を用いることもある(以下の特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-235621号公報
【文献】特開平3-228773号公報
【文献】特開平9-206274号公報
【文献】特開2002-224221号公報
【文献】特開2008-245765号公報
【文献】特開2008-245852号公報
【文献】国際公開第2016/174972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような各種の器具においては、コイル状部材を他部品に接続する必要があるが、近年、カテーテルなどの微小な器具が増加しているため、微小なコイル状部材を微小な他部品に確実に接続する必要がある。しかし、微小なコイル状部材を他部品に接続することは、コイルばねであれば弾性を備えていることと、コイル状部材の端部が素線からなることにより、十分な固定力を得ることが難しいという問題点がある。
【0005】
また、医療器具では、医学的な理由等から、コイル状部材と他部品との接続方法として、加熱処理を施したり、接着剤を用いたりすることができない場合がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、その課題は、微小な器具であっても、コイル状部材と他部品とを容易に接続でき、加熱処理や接着剤を必要としない接続構造を備えた接続構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の接続構造体は、コイル状部材と、該コイル状部材に接続された部品とを具備する接続構造体であって、前記コイル状部材に対して内外のいずれか一方側から螺合する螺旋状溝を備えた第1の前記部品と、前記第1の部品とは内外の反対側から前記コイル状部材に当接する第2の前記部品とを有し、前記コイル状部材を挟んだ前記第1の部品と前記第2の部品の対向領域が少なくとも半径方向に加圧されることにより塑性変形され、前記コイル状部材が前記第1の部品及び前記第2の部品に固着されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記第1の部品は、前記コイル状部材の内部に配置される内側部品であり、前記第2の部品は、前記コイル状部材の外部に配置される外側部品であることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記螺旋状溝の深さは、前記対向領域内に配置される前記コイル状部材の素線の断面形状の高さの半分以下であることが好ましい。この場合において、前記螺旋状溝の深さは、前記高さの25~45%の範囲内であることが望ましい。特に、30~35%の範囲内であることがさらに望ましい。
【0010】
本発明において、前記コイル状部材は、前記対向領域から軸線方向の一方の側へ延在し、前記第1の部品と前記第2の部品のうちの内側にある前記部品は、外側にある前記部品に対して前記コイル状部材の延在側に抜け止めされていることが好ましい。この場合において、前記第1の部品と前記第2の部品は、前記コイル状部材の延在側とは反対側でカシメ固定されていることが望ましい。
【0011】
本発明において、前記コイル状部材は、前記対向領域から軸線方向の一方の側へ延在し、前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品は、前記第1の部品と前記第2の部品のうちの他方の部品の端部よりも前記対向領域から前記コイル状部材の延在側に前記軸線方向に沿って突出する延長部を有することが好ましい。この場合において、前記一方の部品は前記第1の部品であることが望ましい。このとき、前記螺旋状溝は、前記対向領域内から連続して前記延長部にも形成されることがさらに望ましい。また、前記一方の部品は前記コイル状部材の内部に配置される内側部品であることが望ましい。
【0012】
本発明において、前記対向領域における前記コイル状部材の前記端部の素線断面の高さは、前記対向領域外における前記コイル状部材の素線断面の高さより低いことが好ましい。この場合において、前記対向領域の前記素線断面は、前記対向領域外の前記素線断面の前記当接面の側にある部分が除去されたカット形状を有することが望ましい。
【0013】
本発明の接続構造体の製造方法は、コイル状部材と、該コイル状部材に接続された部品とを具備する接続構造体の製造方法であって、前記コイル状部材を、螺旋状溝を備えた第1の前記部品に対して内外のいずれか一方側から螺合させるとともに、前記第1の部品とは内外の反対側から第2の前記部品を前記コイル状部材に当接させた状態で、前記コイル状部材を挟んだ前記第1の部品と前記第2の部品の対向領域を少なくとも半径方向に加圧することにより塑性変形させ、前記コイル状部材を前記第1の部品及び前記第2の部品に固着させることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品の端部を、前記第1の部品と前記第2の部品のうちの他方の部品に向けて、前記コイル状部材の軸線方向と半径方向の間の傾斜方向に斜めに加圧することにより、前記対向領域を塑性変形させることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記傾斜方向は、前記軸線方向に対して20~40度の範囲内で傾斜した加圧面により設定されることが好ましく、特に、25~35度の範囲内で傾斜した加圧面により設定されることが望ましい。
【0016】
本発明において、前記第1の部品と前記第2の部品のうちのいずれか一方の部品は円筒面状の外周面若しくは内周面を備えることが好ましい。この場合において、前記一方の部品の端部は、外周縁若しくは内周縁の全周にわたる角部であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、微小な器具であっても、コイル状部材と他部品とを容易に接続でき、加熱処理や接着剤を必要としない接続構造を備えた接続構造体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る第1実施形態の接続構造体の断面図である。
図2】第1実施形態の接続構造体の先端部を固定するための塑性加工工程を示す加工断面図である。
図3】第1実施形態の接続構造体の基端部を固定するための塑性加工工程を示す加工断面図である。
図4】第1実施形態の塑性加工前後の対向領域の状態を示す拡大断面図である。
図5】第2実施形態の接続構造体の先端部を固定するための塑性加工工程を示す加工断面図である。
図6】第2実施形態の接続構造体の先端部を固定するための他の塑性加工工程を示す加工断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して、本発明に係る接続構造体及びその製造方法の第1実施形態について説明する。この接続構造体10は、例えば、特許文献7に示されるコイルばねとその端部に接続される金属片との接続構造を有する医療用材料などに用いることができる。
【0020】
図1は、第1実施形態の接続構造体10の全体構成を示す縦断面図である。この接続構造体10は、他部品に接続されたコイル状部材を含む。このコイル状部材11は、素線11aの断面及び巻回形状がいずれも円形のコイルばね状の部材である。コイル状部材11は、通常の所定の弾性を有するコイルばねそのものであってもよく、Ni-Ti系合金などの形状記憶合金からなる弾性率が変化するコイルばねであってもよい。コイルばねとしては、圧縮コイルばねであっても、引張りコイルばねであっても構わない。さらには、コイルばねには該当しない単なるコイル状の部材であってもよい。一方、コイル状部材の素線11aの断面は、図示例とは異なり、矩形その他の多角形、楕円形などの円形以外の形状を備えたものであってもよい。また、コイル状部材11の素線11aの巻回形状も、図示例の円形だけでなく、楕円形、隅丸矩形状その他の多角形状など、種々の巻回形状とすることができる。さらに、コイル状部材11の全体形状も図示例のような円筒形状に限らず、円錐形状、樽形状、鼓形状、段付形状などの種々の形状であってもよい。
【0021】
コイル状部材11は、軸線11xに沿った方向(以下、単に「軸線方向」という)に延在する形状を備え、その両側に端部11bと11cを有する。コイル状部材11の端部11bは、先端側の内側部品12と外側部品13により内外両側から挟持された対向領域10Aにおいて、内側部品12及び外側部品13に対して接続され、固着されている。また、コイル状部材11の端部11cは、基端側の内側部品14と外側部品15により内外両側から挟持された対向領域10Bにおいて、内側部品14及び外側部品15に対して接続され、固着されている。
【0022】
上記第1の部品に相当する内側部品12,14には、円筒面状の外周面上に螺旋状溝12a,14aが形成された対向部12b,14bが設けられる。対向部12b,14bでは、コイル状部材11の端部11b,11cにおいて、素線11aは、螺旋状溝12a,14aに螺合した状態で、後述するカシメ加工による塑性変形によって固着されている。螺旋状溝12a,14aは、素線11aを収容可能とされ、素線11aの断面形状に対応する溝断面形状を有することが好ましい。図示例では、断面円形の素線11aに整合させるために、素線11aの円形断面の半径とほぼ一致した曲率半径の断面円弧状の溝形状を備える。なお、素線11aを容易に螺合させるために素線11aの円形断面の半径よりやや大きい(好ましくは当該半径の110%以下の)曲率半径の断面形状としてもよい。また、内側部品12には、上記対向部12bよりも大径の拡大部12cが設けられる。この拡大部12cは、対向部12b上において上記螺旋状溝12aに螺合したコイル状部材11の端部11bよりもさらに大径に構成されている。対向部12bと拡大部12cの間の外周部分には、図示例では傾斜面として構成された、段差部12dが設けられる。
【0023】
螺旋状溝12a,14aの深さは、素線11aの高さの半分以下であることが、後述する半径方向の加圧作用による塑性変形による固着力の向上を図る上で好ましい。特に、上記深さは、上記高さの25~45%の範囲内であることが好ましく、特に、30~35%の範囲内であることが望ましい。上記深さが大きすぎると、素線11aと当接面13a,15aとの間の当接面積の増加や嵌合状態の生成を阻害し、対向領域における各部の固着力の増加を妨げる虞がある。逆に、上記深さが小さすぎると、螺旋状溝12a,14aと素線11aの嵌合機能による固着力の確保が不十分となる虞がある。
【0024】
一方、上記第2の部品に相当する外側部品13,15には、上記対向領域10A,10Bにおいてコイル状部材11に当接する当接面13a、15aを備えた対向部13b,15bが設けられる。対向部13b,15bでは、コイル状部材11の端部11b,11cにおいて、素線11aが当接面13a,15aに当接した状態で、後述するカシメ加工により生じた塑性変形によって固着されている。すなわち、コイル状部材11の端部11b,11cは、内側の対向部12b,14bと外側の対向部13b,15bによって内外から狭圧された状態で固着されている。また、外側部品13には、上記対向部13bよりも内径の大きな収容部13cが設けられる。この収容部13cは、内側部品12の上記拡大部12cを収容可能に構成される。対向部13bと収容部13cの間の内周部分には、図示例では傾斜面として構成された、段差部13dが設けられる。ここで、段差部13dは上記段差部12dに対して、内側に向かうほど、或いは、軸線方向の対向部12b,13bの側に向かうほど間隔が広がる態様で、相互に離間している。上記各部品12~15は、金属製であることが好ましく、特に限定されないが、SUS316などのステンレス鋼を用いることができる。
【0025】
外側部品13,15には、軸線方向のコイル状部材11の側の端部13s,15sと、これとは反対側の端部13t,15tとが設けられる。上記端部13s,15sの外周縁に角部13sc、15scが設けられる。また、上記端部13t,15tの外周縁に角部13tc、15tcが設けられる。この接続構造体10において、内側部品12,14には、外側部品13,15の端部13s,15sよりもコイル状部材11の延在側に軸線方向に沿って突出した延長部12e,14eが設けられる。この延長部12e,14eは、上記対向部12b,14b(対向領域10A,10B)から出てコイル状部材11の内部において軸線方向に延在した部分である。図示例では、延長部12e,14eには、対向部12b,14bから連続した螺旋状溝12a,14aが形成される。これにより、コイル状部材11に対する保持力或いは支持力を高めることができるため、コイル状部材11の変形を確実に防止できる。ただし、一般的には、延長部は、コイル状部材11を支持できればよいので、螺旋状溝を備えていなくても構わない。
【0026】
上記構造を備えた接続構造体10は、図2及び図3に示す塑性加工工程により製造される。図2に示す工程は、コイル状部材11の端部11bを、先端部を構成する内側部品12及び外側部品13により固定する工程である。この工程では、サーボプレスなどの加圧機構により与えられる加圧力により、カシメ冶具16と17を用いて、上記対向領域10Aの端縁にある、外側部品13の端部13sの外周縁の角部13scを、軸線方向と半径方向の間の傾斜方向に加圧する。加圧力Fpの傾斜方向の半径方向成分により、対向領域10Aが半径方向に加圧される。このとき、半径方向の変形量Rpは、カシメ治具16,17の軸線方向のストローク量Spと、カシメ冶具16の傾斜した円錐状の加圧面16pの軸線11xに対する傾斜角度θpとによって定まる。傾斜角度θpは、20~40度の範囲内であることが好ましく、特に、25~35度の範囲内であることが望ましい。これは、カシメ冶具16,17により角部13scを軸線方向に加圧したとき、軸線方向のストローク量Spと、半径方向の変形量RpとがSp>Rpの関係になるように設定することにより、加圧機構をストロークSpで制御する場合において、変形量Rpを高精度に設定しやすくなるためである。一方、傾斜角度θpが小さすぎると、後述する軸線方向の加圧作用が生じにくくなる。
【0027】
この工程では、本実施形態の場合、上記と同時に、上記角部13scとは反対側の角部13tcを、カシメ冶具17の傾斜した円錐状の加圧面17qによって加圧する。この加圧面17qに関しても、上記と同様に、加圧面17qの傾斜角度θqに応じて角部13tcに与えられる加圧力Fqの傾斜方向が定まる。傾斜角度θqの好ましい範囲に関しては、上述の傾斜角度θpと同様であるので、説明を省略する。
【0028】
上記工程による加圧力Fpによる塑性変形は、対向領域10Aにおける対向部12b及び対向部13bによるコイル状部材11の端部11bに対する半径方向の狭圧作用を生じさせる。これにより、対向領域10Aが少なくとも半径方向に加圧されることにより、素線11aと螺旋状溝12aの内面及び当接面13aとが相互に密着した状態で塑性変形し、密着面積が増加する。これにより、コイル状部材11の端部11bは対向部12bと13bの間において狭圧された状態で固着される。
【0029】
このとき、加圧力Fpが端部13sの外周縁の角部13scに対して加わると、コイル状部材11は端部13sの開口縁の近傍で半径方向の応力を受けやすくなり、この工程においてコイル状部材11の軸線方向に沿った形状に曲がりや折れが生ずる場合がある。しかし、本実施形態では、内側部品12において、上記端部13sの開口縁に一致する内側部品12の対向部12bの境界位置からさらにコイル状部材11の延在側に軸線方向に沿って突出する延長部12eが設けられているため、コイル状部材11が延長部12eによって内側から支えられることにより、上記の曲がりや折れを防止できる。
【0030】
これに対して、上記工程による加圧力Fqによる塑性変形は、外側部品13の端部13tの角部13tcが内側部品12の同側の端部に対して斜めに加圧されることによって生ずるので、内側部品12が外側部品13に対して軸線方向の図示左側に抜け出すことを防止することができる。これにより、上記対向領域10Aの狭圧状態の固定態様が軸線方向に外れることを回避できる。これは、通常、内側部品12において、対向部12bの外径並びに対向部13bの内径よりも拡径された拡大部12cが設けられることにより、内側部品12が外側部品13に対して軸線方向の図示右側へは抜け止めされている。しかし、何らかの理由により、外側部品13に対して内側部品12にそれとは逆側へ応力が加わったときの上記対向領域10Aの固着状態の解除を防止することにより、より確実な固着状態を実現できる。なお、加圧力Fqに対応する加圧面17qの傾斜角度θqの好ましい範囲については、上記加圧力Fpに対応する加圧面16pの傾斜角度θpと同様であるので、説明を省略する。
【0031】
一方、図3に示す工程は、コイル状部材11の端部11cを、基端部を構成する内側部品14及び外側部品15により固定する工程である。この工程では、サーボプレスなどの加圧機構により与えられる加圧力により、カシメ冶具18と19を用いて、上記対向領域10Bの端縁にある、外側部品15の端部15sの外周縁の角部15scを、軸線方向と半径方向の中間の傾斜方向に加圧する。加圧力Frの傾斜方向は、カシメ冶具18の傾斜した円錐面状の加圧面18rの軸線11xに対する傾斜角度θrによって定まる。この傾斜角度θrの好ましい範囲についても、上記傾斜角度θpと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
この工程では、外側部品15の端部15tの側でカシメ加工を行う必要がないため、カシメ冶具19は単に端部15tを支持した状態とされる。これは、外側部品15の内部の端部15sの側だけに内側部品14が配置されているため、端部15sの外周縁の角部15scにのみ加圧力Frを加えてカシメ加工を行えばよいためである。この工程における対向領域10Bの塑性変形による固定態様は、上記対向領域10Aの塑性変形による固定態様と同様であるので、その説明も省略する。また、内側部品14には、対向部14bからさらに軸線方向に突出する延長部14eが設けられることにより、角部15scに加圧力Frを加えたとき、コイル状部材11の端部15sに沿った位置に曲がりや折れが生ずることを防止できる。
【0033】
図4は、上記対向領域10Aと10Bの拡大断面図である。対向領域10A及び10Bでは、内側部材12,14の螺旋状溝12a,14aにコイル状部材11の端部11b,11cの素線11aが嵌合した状態で、対向部12b,14bと対向部13b,15bとの間に挟圧された状態となっている。この状態は、上述のように端部13sの外周縁の角部13sc及び端部15sの外周縁の角部15scに与えられた上記傾斜方向の加圧力Fp、Frに基づく半径方向の加圧により形成されたものである。このとき、対向部13b,15bは、加圧力Fp、Frの方向に変形しつつ移動し、その結果、当接面13a,15aが端部11b,11cの素線11aを図示斜め左下若しくは斜め右下に押圧するとともに、素線11aからの反力によって当接面13a,15aも凹状に塑性変形する。このとき、半径方向の加圧力成分により、対向領域10A,10Bでは、素線11a、対向部12b,14bの螺旋状溝12a,14aの内面、及び、対向部13b,15bの当接面13a,15aがそれぞれ塑性変形する。ここで、対向部の間に挟まれた素線11aは、高さが減少して幅が広がる方向に変形し、これによって螺旋状溝12a,14aの内部における固着力が増大する。また、螺旋状溝12a,14aの内面は素線11aによって凹状に変形し、これによって素線11aを幅方向に挟み付けることで固着力が増大する。さらに、当接面13a,15aは素線11aによって凹状に変形し、これによって素線11aとの当接面積が増大し、しかも素線11aを幅方向に挟み付けることで固着力が増大する。
【0034】
ここで、上記のように傾斜方向に加圧することにより、カシメ加工時においては軸線方向への加圧作用も生ずる。この場合、断面円弧状の螺旋状溝12a,14aが素線11aを完全に収容し、しっかりと受け止めている場合、例えば、素線11aの下端が螺旋状溝12a,14aの内面の最下端に当接した状態となっている場合には、上記加圧力Fp,Frにより素線11aが図示左側若しくは右側に移動しようとすれば、素線11aは螺旋状溝12a,14aの円弧状の内面上で半径方向に押し上げられるため、僅かではあるものの素線11aは長さ方向に引き伸ばされながらねじれ、それによって、自らが変形し、或いは、その代わりに、若しくは、それとともに、螺旋状溝12a,14aの内面や当接面13a,15aを変形させる。
【0035】
すなわち、上記の対向領域10A,10Bに対する傾斜方向への加圧は、半径方向の加圧作用とともに軸線方向の加圧作用をももたらし、少なくとも一方(図示例では内側部品12,14)に形成された螺旋状溝12a,14aに保持されたコイル状部材11の端部11b,11cに対しては、素線11aの僅かな長さ方向への引き伸ばし作用や軸線周りのねじれ作用を生じさせながら、端部11b,11cが対向部12b,14bと13b,15bの間で挟圧された状態で塑性変形し、固着される。これによって、素線11aの表面の螺旋状溝12a,14aや当接面13a,15aに対する固着力が向上するので、コイル状部材11の内側部品12,14及び外側部品13,15に対する固着力をさらに高めることができる。なお、このような作用効果は、コイル状部材11の素線11aの断面が円形であることによって好適に高められる。もっとも、素線11aの断面形状が矩形(正方形若しくは長方形)や多角形(三角形、五角形など)である場合にも、程度の差こそあれ、上記作用効果を得ることができる。
【0036】
特に、対向領域10Aにおいては、加圧力Fpが角部13scに与えられると、段差部12dと13dによって内側部品12に対する外側部品13の軸線方向の図示左側への移動は妨げられるものの、段差部12dと13dが相互に離間しているために軸線方向の塑性変形は妨げられない。このため、対向部13bは、軸線方向に移動することが規制されつつ、図示点線で示すように塑性変形する。このとき、端部13sの開口縁には、カシメ加工前にコイル状部材11の端部11bを導入する際の案内のための面取部13eが設けられる。この面取部13eは、面取角度を15~25度の範囲内にすることにより、案内作用を確保しつつ、カシメ加工の効果を減じないようにしている。また、内側部品12には対向部12bから外側部品13の端部13sを越えてコイル状部材11の延在側に軸線方向に沿って突出する延長部12eを形成し、この延長部12eがコイル状部材11を内側から支持することにより、カシメ加工時において、上記端部13sの位置に対応する部分でコイル状部材11が曲がったり折れたりすることを防止できる。さらに、この工程では外側部品13の反対側の角部13tcにも加圧力Fqが同時に与えられるので、外側部品13が内側部品12に対してカシメ加工され、その結果、内側部品12が外側部品13の図示左側へ抜けてしまうことも防止される。
【0037】
一方、対向領域10Bにおいても、塑性変形の態様、面取部や面取角度の点、延長部14eの作用効果については、上記と同様である。しかし、対向領域10Bでは、内側部品14が外側部品15の図示右側へ抜けるような構造を有していない(図示例では、そもそも貫通さえしていない)ため、外側部品15の反対側の角部へ加圧力を与える必要はない。なお、素材の剛性や弾性、形状寸法などによって種々の態様を示すため、固着状態にある対向領域の構造的な状況を一概に表現することはできない。しかし、少なくとも半径方向の加圧による塑性変形による固着力の向上効果と、傾斜方向の加圧によるさらなる固着力の向上効果は、いずれも、従来技術に対する有利な効果に該当する。
【0038】
本実施形態では、内側部品12,14に螺旋状溝12a,14aを形成し、外側部品13,15に平坦な当接面13a,15aを形成している。これにより、内側部品12,14及び外側部品13,15の成形加工が容易になるとともに、内側部品12,14の螺旋状溝12a,14aへのコイル状部材11の端部11b,11cの装着作業も容易化される。また、外側部品13,15の外周縁の角部13sc,15scを加圧することにより、カシメ治具16,17等の加圧構造を簡易に構成できる。
【0039】
次に、図5及び図6を参照して、本発明に係る接続構造体及びその製造方法の第2実施形態について説明する。この第2実施形態の接続構造体20では、コイル状部材21の先端に、先端部を構成する内側部品22と外側部品23が固定される。この接続構造体20は、例えば、カテーテルの先端構造や内視鏡のセンサの先端構造を構成する、可撓性とある程度の剛性を備えた先端部を備えた医療器具に用いることができる。
【0040】
コイル状部材21は、断面円形の素線21aを円形状に巻回した第1実施形態と同様のコイル形状を備えるが、先端側の端部21bに、素線21aの断面をカットした形状のカット状素線21cが設けられている。このカット状素線21cは、上記素線21aの外周側の一部を除去することによって外径が小さくなるように構成される。特に限定されるものではないが、図示例では、カット状素線21cの外面は平坦面21dとなっている。このカット状素線21cを有する端部21bの範囲は、外側部品23と対向する範囲とされる。
【0041】
内側部品22は、コイル状部材21の先端側の端部21bに接続される、螺旋状溝22aを備えた対向部22bと、この対向部22bよりも拡径された頭部22cとを有する。また、内側部品22は、コイル状部材21の軸線21xに沿った方向(軸線方向)に貫通する軸孔22dを備える。
【0042】
外側部品23は、全体が円筒状に構成され、コイル状部材21の上記端部21bに当接する当接面23aを備えるとともに、この当接面23aの軸線方向の両側にコイル状部材21の端部21bを案内するための面取部23b及び23cが設けられる。面取部23cは、第1実施形態の面取部13eと同様の面取角度を有することが好ましい。
【0043】
この実施形態でも、第1実施形態と同様に、カシメ冶具26,27を用いて円錐状の加圧面26pにより塑性加工を行うことにより、対向領域20Aの固定状態を実現する。このとき、カシメ冶具26の加圧面26pが外側部品23の端部23sの外周縁の角部23scに加圧力を与えることにより、軸線方向と半径方向の間の傾斜方向に加圧する。これにより、第1実施形態と同様の塑性変形が生じ、固着力が発生する。
【0044】
この実施形態では、コイル状部材21の端部21bにカット状素線21cが設けられるため、この端部21b以外の断面円形の素線11aを備える他の部分に比べて外径を小さくすることができる。このため、外側部品23の外径も小さくすることができるから、内側部品22と外側部品23により構成される先端部の外径と、それ以外のコイル状部材21の部分の外径との間の段差量を小さくすることができる。
【0045】
この場合に、第1実施形態と同様の作用効果であるが、塑性変形のための加圧力を角部23scに与えるとき、端部23sと一致する位置から軸線方向に突出した延長部22eを有することで、コイル状部材21が内側から支持されるため、上記位置でコイル状部材21の曲がりや折れが生ずることを回避できる。
【0046】
次に、図6を参照して 第3実施形態について説明する。この実施形態の接続構造体20′は上記第2実施形態の接続構造体20とほぼ同様の基本構造を備えている。すなわち、コイル状部材21′の端部21b′のカット状素線21c′が設けられている対向領域20A′において、内側部品22′の対向部22b′と外側部品23′(対向部)が上記端部21b′を狭圧固定している。ここで、この第3実施形態が上記第2実施形態と異なる点は、外側部品23の角部23scに対して加圧力を与えるカシメ冶具26の代わりに、内側部品22′の内周縁の角部22scに対して、コイル状部材21′の内部に配置されたカシメ冶具28の円錐状の加圧面28aにより傾斜方向の加圧力を与えている点である。このとき、外側部品23′には、上記対向領域20A′内に設けられる対向部23b′から内側部品22′の端部22s′より軸線方向に突出する延長部23e′が設けられる。この延長部23e′の作用効果は先の各実施形態の延長部と同様である。
【0047】
ただし、本実施形態の場合、カシメ加工時におけるコイル状部材21′の支持をさらに補強するために、カシメ冶具29を設けている。このカシメ冶具29は、外側部品23′を外周側から支持するとともに、外側部品23′の上記延長部23e′のさらに先にあるコイル状部材21′の部分を支持する円柱状の孔内面を備える。これによって、コイル状部材21′のカシメ加工時の曲がりや折れをより確実に防止できる。なお、このカシメ冶具29を設けることにより、図示点線で示すように、外側部品23′に上記延長部23e′を設けなくても、当該延長部23e′に相当する部分にカシメ治具29の支持面を配置することで、コイル状部材21′の曲がりや折れを防止することが可能である。
【0048】
なお、本発明の接続構造体及びその製造方法は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態では、コイル状部材や各部品が円筒状や円柱状に構成されるとともに加圧面が円錐状に構成されることによりコイル状部材の軸線周りの全周にわたり加圧する場合について説明しているが、コイル状部材や各部品が楕円筒状や角筒状に構成される場合には、これらに対応する形状の加圧面を構成してもよく、また、軸線周りの一部の角度範囲だけで加圧するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態のそれぞれの特徴点は、他の実施形態でも支障のない限り、任意に採用することができる。例えば、内側部品に螺旋状溝を設ける代わりに、外側部品に螺旋状溝を設けてもよく、或いは、内側部品と外側部品の双方に螺旋状溝を設けても構わない。
【符号の説明】
【0049】
10…接続構造体、11…コイル状部材(コイルばね)、11a…素線、11b,11c…端部、12,14…内側部品(第1の部品)、12a,14a…螺旋状溝、12b,14b…対向部、12c…拡大部、12d…段差部、12e…延長部、13,15…外側部品(第2の部品)、13a,15a…当接面、13b,15b…対向部、13c…収容部、13d…段差部、13e…導入部、16,17,18,19…カシメ冶具
図1
図2
図3
図4
図5
図6