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特許7290317映像信号送信装置、映像信号受信装置および映像信号送受信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】映像信号送信装置、映像信号受信装置および映像信号送受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20230606BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20230606BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20230606BHJP
【FI】
H04N23/60 300
H04L25/02 S
H04N23/66
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019155571
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021034953
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】藤木 礼
(72)【発明者】
【氏名】岩間 大介
(72)【発明者】
【氏名】井手口 峻
【審査官】佐藤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-120037(JP,A)
【文献】特開平08-340522(JP,A)
【文献】特開2005-020362(JP,A)
【文献】特開平09-130655(JP,A)
【文献】特開平09-205639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04L 25/02
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号受信装置との間で映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う映像信号送信装置であって、
前記映像信号受信装置へ映像信号を送信する映像信号送信部と、
前記映像信号受信装置との間で制御信号を送受信する制御信号送受信部と、
前記映像信号送信部から到達した映像信号を前記伝送線路へ出力し、前記制御信号送受信部から到達した制御信号を前記伝送線路へ出力し、前記伝送線路から到達した制御信号を前記制御信号送受信部へ出力するフィルタ回路と、
前記映像信号送信部による前記映像信号の送信の開始または条件変更のタイミングを調整して、前記映像信号の送信の開始または条件変更から定常状態に至るまでの過渡状態の期間における前記映像信号と前記制御信号との間の干渉を抑制する制御部と、
を備える映像信号送信装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信の期間の後に、前記映像信号送信部による前記映像信号の送信の開始または条件変更を許可する、
請求項1に記載の映像信号送信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記制御信号送受信部が受信した前記制御信号に、前記映像信号送信部による前記映像信号の送信の開始または条件変更を指示する信号が含まれていることを検知した場合であっても、前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信の期間の後に、前記映像信号送信部による前記映像信号の送信の開始または条件変更を許可する、
請求項2に記載の映像信号送信装置。
【請求項4】
映像信号送信装置との間で映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う映像信号受信装置であって、
前記映像信号送信装置から映像信号を受信する映像信号受信部と、
前記映像信号送信装置との間で制御信号を送受信する制御信号送受信部と、
前記伝送線路から到達した映像信号を前記映像信号受信部へ出力し、前記伝送線路から到達した制御信号を前記制御信号送受信部へ出力し、前記制御信号送受信部から到達した制御信号を前記伝送線路へ出力するフィルタ回路と、
前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信の期間を調整して、前記映像信号の送信の開始または条件変更から定常状態に至るまでの過渡状態の期間における前記映像信号と前記制御信号との間の干渉を抑制する制御部と、
を備える映像信号受信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信の期間の間の長さを前記映像信号の送信の過渡状態の期間より長く設定する、
請求項4に記載の映像信号受信装置。
【請求項6】
映像信号送信装置との間で映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う映像信号受信装置であって、
前記映像信号送信装置から映像信号を受信する映像信号受信部と、
前記映像信号送信装置との間で制御信号を送受信する制御信号送受信部と、
前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信の期間を調整して、前記映像信号の送信の過渡状態の期間における前記映像信号と前記制御信号との間の干渉を抑制する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記映像信号の送信の過渡状態の期間においては前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信を禁止し、前記映像信号の送信の過渡状態の期間の後に前記制御信号送受信部による前記制御信号の送受信を許可する、
像信号受信装置。
【請求項7】
請求項1~3の何れか1項に記載の映像信号送信装置と、
前記映像信号送信装置から映像信号を受信するとともに、前記映像信号送信装置との間で制御信号を送受信する映像信号受信装置と、
を備える映像信号送受信システム。
【請求項8】
請求項4~6の何れか1項に記載の映像信号受信装置と、
前記映像信号受信装置へ映像信号を送信するとともに、前記映像信号受信装置との間で制御信号を送受信する映像信号送信装置と、
を備える映像信号送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号送信装置、映像信号受信装置および映像信号送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な箇所にカメラが設置されてきている。例えば、工場の生産ラインの各所にカメラが設置されて生産状況等がモニタされ、生産ラインで何らかのトラブルが発生した場合に迅速な対処をとることを可能としている。医療の現場でも例えば内視鏡の先端にカメラが設けられて患者体内の様子がモニタされ、そのモニタ結果に応じて適切な処置を患者に施すことを可能としている。また、乗用車にも多くの車載用カメラが設置されて周囲の交通状況等をモニタすることで、安全運転の向上に寄与している。
【0003】
これらの例からも分かるように、カメラは目的の対象を撮像することができる箇所に設置される必要があるのに対して、カメラによる撮像により取得された映像信号を処理したり映像を表示したりする映像信号処理部は、そのカメラから或る距離を隔てた箇所に設置される場合が多い。したがって、カメラによる撮像により取得された映像信号を映像信号処理部へ長距離伝送することが必要となる。また、非圧縮映像による情報量の保存および外乱に対するロバスト性の観点から、無線ではなく有線の伝送線路で映像信号を伝送することが望ましい。
【0004】
通常、カメラは、中心的なデバイスであるイメージセンサが滞りなく動作することが最優先される。また、通常、イメージセンサは多くの機能を有しており様々な設定が可能である。したがって、カメラは、イメージセンサに対して適切な設定をした上でイメージセンサにより撮像を行う。カメラは、ノイズが少ない映像を取得することや、例えば使用温度範囲のうちの高温の限界においても常温に比して劣化が少ない映像を取得すること等が求められる。このことから、イメージセンサによる撮像により出力されたアナログ信号を処理するアナログ電子回路は完成度が高いことが要求される。このアナログ電子回路により処理された後のアナログ信号は、AD変換回路によりデジタル信号に変換される。一方、肉眼に自然な画像へ変換するためにデジタル信号に対して画像処理演算等を行うロジック電子回路は、カメラの外部(例えば上記の映像信号処理部)に配置される場合が多い。
【0005】
このような場合、時々刻々変化する撮像環境に応じてイメージセンサに対し外部から適切な設定を細やかに行う必要がある。その設定を指示する為の制御信号は、カメラから或る距離を隔てた箇所から送られることになる。その制御信号を伝送するための伝送線路は、上述した映像信号を伝送するための伝送線路と同様に、長距離となる場合がある。
【0006】
カメラのイメージセンサによる撮像は、画素数の増加に伴い高精細化が進むとともに、リフレッシュレートの増加に伴い高速化が進んでいる。その結果、単位時間当たりに映像信号として伝送しなければならないデータ量が増加し、より高い周波数で映像信号が伝送されるようになってきている。
【0007】
映像信号と比べると、制御信号は、単位時間当たりに伝送しなければならないデータ量が少なく、低い周波数で伝送されればよい。何故なら、カメラによる或る一回の撮像と次の一回の撮像との間の間隔が短いから、同様の撮像環境が継続していることが多く、イメージセンサの設定の変更を頻繁に行う必要はない。また、イメージセンサの設定の変更を行うにしても、変更の頻度が少なくてよいだけでなく、変更すべき項目の数も少なくてよい。
【0008】
従来では、映像信号用の伝送線路と制御信号用の伝送線路とを別個に設けることで、高速の映像信号および低速の制御信号の全二重通信を実現していた。しかしながら、このように2本の伝送線路を設ける場合には、1本の伝送線路を設ける場合と比較すると、必要な部材の増加によりコストが増加するだけでなく、伝送線路となるケーブルを端点でコネクタ金具と結線する加工処理および仕上げ作業等において作業ミスにより不良が発生する確率が単純に2倍になる。
【0009】
コスト削減および不良発生低減の為には、共通の伝送線路を用いて高速の映像信号および低速の制御信号の双方の伝送を行うことが望ましい。この場合、送信側および受信側それぞれにおいて、周波数が互いに異なる映像信号と制御信号とを分離または合波するフィルタ回路が配置される。ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line、非対称デジタル加入者線)等は、このフィルタ回路を用いることにより実現されている技術である(特許文献1参照)。また、この場合の伝送線路として同軸線を用いることができる。同軸線は、長手方向に沿って断面構造が一定に保持されていることから、信号に対する特性インピーダンスを長手方向に沿って一定に保つことができ、映像信号のような高速な信号の伝送にも適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-103647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下では、カメラによる撮像により取得された映像信号を送信する装置を映像信号送信装置といい、映像信号を受信する装置を映像信号受信装置という。映像信号受信装置から映像信号送信装置へ制御信号が送られる。また、制御信号を受信した映像信号送信装置において、その制御信号の指示に基づいて所要の処理が行われる他、その制御信号の指示に基づいて映像信号送信装置から映像信号受信装置へ信号(例えば映像信号送信装置の状態を示す信号)が送られる場合がある。この信号も制御信号と同様に低速に伝送されればよい。以下では、映像信号送信装置から映像信号受信装置へ送られる低速の信号も制御信号という。
【0012】
共通の伝送線路を用いて高速の映像信号および低速の制御信号の双方の伝送を行う場合、次のような問題点がある。上記のフィルタ回路は、所要の動作特性が得られるように選ばれた複数の受動部品により構成されている。フィルタ回路の動作特性は、定常状態の期間における映像信号の周波数、電圧およびノイズ状態に対して最適となるように設計され、動的に切り替えることができない。
【0013】
映像信号送信装置から映像信号受信装置へ映像信号の送信を開始した後の過渡状態の期間においては、定常状態の期間と比べると、映像信号の周波数、電圧およびノイズ状態が異なる場合がある。したがって、定常状態において最適な動作特性が得られるように設計されたフィルタ回路は、過渡状態の期間では、映像信号と制御信号との間の干渉が大きくなり、伝送エラー発生の要因となる場合がある。
【0014】
この干渉の問題に対処するために、過渡状態に対するフィルタを別途追加することが考えられる。しかし、この場合、定常状態において、伝送線路の負荷が増えて、伝送能力が低下することになるので、好ましくない。
【0015】
干渉による伝送エラーは、映像信号および制御信号の双方において発生し得るが、映像信号と比べて制御信号に発生する伝送エラーの方が影響度が大きく深刻な問題となる。
【0016】
伝送エラーが映像信号側に発生しても、映像信号に含まれている同期信号を用いることにより、映像信号送信装置および映像信号受信装置は映像信号の伝送に関して正常動作状態へ復帰することができる。したがって、伝送エラーが映像信号伝送に影響を与える期間は過渡状態の期間に限定される。伝送エラーが発生する期間が予め予期されていれば、その予期された期間の映像信号を破棄する等の対処をすることも可能である。また、映像信号に基づく映像の表示に対して伝送エラーが与える悪影響は、過渡状態の期間が短ければ、映像を見る者の残像認識能力には軽微に映る。これらのことから、伝送エラーにより映像信号にノイズが発生しても許容される場合がある。
【0017】
これに対して、伝送エラーが制御信号に発生することは、映像信号の場合と異なり、許容されない場合が多い。一般に、イメージセンサの設定を指示するための制御信号は同一内容で繰り返して伝送されることはないから、制御信号に伝送エラーが発生すると、イメージセンサの設定が意図しないものとなる。その結果、以降の全ての映像信号は意図しないものとなり、映像が破綻する可能性がある。例えば、制御信号の指示によりイメージセンサを或る設定で初期化した後に撮像を開始する場合を想定すると、その制御信号に伝送エラーが発生すれば、イメージセンサの初期化が失敗することになり、以降の全ての映像が破綻する可能性がある。また、その後にイメージセンサの設定の変更を指示する制御信号を伝送する度に映像信号伝送の過渡状態が発生し、それにより再び制御信号に伝送エラーが発生する場合がある。このような連鎖的な伝送エラーの発生により、イメージセンサが意図どおりの正しい設定に到達できない事態が生じる場合がある。
【0018】
このように、映像信号と比べて制御信号に発生する伝送エラーの方が影響度が大きく深刻な問題となる。なお、上記では、制御信号の指示によりイメージセンサを或る設定で初期化して撮像を開始する場合の問題点について述べたが、制御信号の指示によりイメージセンサの動作条件や映像信号の送信条件を他の設定に変更する場合にも同様の問題が生じる場合がある。
【0019】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う場合に制御信号の伝送エラー発生を抑制することができる映像信号送信装置および映像信号受信装置を提供することを目的とする。また、このような映像信号送信装置と映像信号受信装置とを備える映像信号送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の映像信号送信装置は、映像信号受信装置との間で映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う映像信号送信装置であって、(1) 映像信号受信装置へ映像信号を送信する映像信号送信部と、(2) 映像信号受信装置との間で制御信号を送受信する制御信号送受信部と、(3) 映像信号送信部による映像信号の送信の開始または条件変更のタイミングを調整して、映像信号の送信の過渡状態の期間における映像信号と制御信号との間の干渉を抑制する制御部と、を備える。
【0021】
本発明の映像信号送信装置において、制御部は、制御信号送受信部による制御信号の送受信の期間の後に、映像信号送信部による映像信号の送信の開始または条件変更を許可するのが好適である。また、制御部は、制御信号送受信部が受信した制御信号に、映像信号送信部による映像信号の送信の開始または条件変更を指示する信号が含まれていることを検知した場合であっても、制御信号送受信部による制御信号の送受信の期間の後に、映像信号送信部による映像信号の送信の開始または条件変更を許可するのが好適である。
【0022】
本発明の映像信号受信装置は、映像信号送信装置との間で映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路を介して行う映像信号受信装置であって、(1) 映像信号送信装置から映像信号を受信する映像信号受信部と、(2) 映像信号送信装置との間で制御信号を送受信する制御信号送受信部と、(3) 制御信号送受信部による制御信号の送受信の期間を調整して、映像信号の送信の過渡状態の期間における映像信号と制御信号との間の干渉を抑制する制御部と、を備える。
【0023】
本発明の映像信号受信装置において、制御部は、制御信号送受信部による制御信号の送受信の期間の間の長さを映像信号の送信の過渡状態の期間より長く設定するのが好適である。また、制御部は、映像信号の送信の過渡状態の期間においては制御信号送受信部による制御信号の送受信を禁止し、映像信号の送信の過渡状態の期間の後に制御信号送受信部による制御信号の送受信を許可するのが好適である。
【0024】
本発明の映像信号送受信システムは映像信号送信装置と映像信号受信装置とを備える。映像信号送信装置および映像信号受信装置の双方または何れか一方は上記の本発明のものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、共通の伝送線路により映像信号および制御信号の双方の伝送を行う場合に制御信号の伝送エラー発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、映像信号送受信システム1の構成を示す図である。
図2図2は、比較例の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間を説明する図である。
図3図3は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間を説明する図である。
図4図4は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第1の例を説明する図である。
図5図5は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第2の例を説明する図である。
図6図6は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第3の例を説明する図である。
図7図7は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第4の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
図1は、映像信号送受信システム1の構成を示す図である。映像信号送受信システム1は、伝送線路30により互いに接続された映像信号送信装置10および映像信号受信装置20を備える。映像信号送受信システム1は、映像信号送信装置10と映像信号受信装置20との間で、映像信号および制御信号の伝送を共通の伝送線路30を介して行う。
【0029】
映像信号送信装置10は、映像信号送信部11、制御信号送受信部12、フィルタ回路13、制御部14およびカメラ15を備える。制御部14は、映像信号送信部11、制御信号送受信部12およびカメラ15を制御するとともに、これらから信号を受け取る。
【0030】
カメラ15は、CCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサ、このイメージセンサを駆動する駆動回路、イメージセンサからデータを読み出す読出回路、および、イメージセンサの受光面に像を形成するレンズ系等を含む。カメラ15は、制御部14による制御の下で撮像を行い、その撮像により得られた映像信号のデータを制御部14へ送る。
【0031】
映像信号送信部11は、PLL(phase locked loop)回路および出力バッファ回路等を含む。映像信号送信部11は、制御部14から映像信号を受け取り、制御部14による制御の下で映像信号をフィルタ回路13へ出力する。
【0032】
制御信号送受信部12は、制御部14による制御の下で、フィルタ回路13から到達した制御信号を受け取って該制御信号を制御部14へ出力する。フィルタ回路13から到達する制御信号は、例えば、カメラ15の動作や映像信号送信部11による映像信号の送信の条件を設定するコマンド、カメラ15等の状態のモニタを行うポーリングを指示するコマンド、事情発生時に行うイベントを指示するコマンド、等を含む。なお、事情発生時とは、例えば、映像信号送受信システム1を制御する意図により動作中にカメラのズームを行うケースであったり、環境起因で明るさの異なる環境に変わったことを検出してカメラの露光時間設定を変更するケースであったりする。
【0033】
また、制御信号送受信部12は、制御部14による制御の下でフィルタ回路13へ信号を出力する。制御信号送受信部12からフィルタ回路13へ送られる信号は、例えば、ポーリングの結果として得られた情報を映像信号受信装置20へ伝えるための信号を含む。このような信号も制御信号と同様に低速に伝送されればよい。映像信号送信装置から映像信号受信装置へ送られる低速の信号も制御信号という。
【0034】
フィルタ回路13は、映像信号送信部11、制御信号送受信部12および伝送線路30と接続されている。フィルタ回路13は、受動部品であるインダクタおよびキャパシタを含んで構成される。フィルタ回路の動作特性は、定常状態の期間における映像信号の周波数、電圧およびノイズ状態に対して最適となるように設計される。
【0035】
フィルタ回路13は、高速の映像信号と低速の制御信号とを分離または合波する。フィルタ回路13は、映像信号送信部11から到達した映像信号を伝送線路30へ出力し、制御信号送受信部12から到達した制御信号を伝送線路30へ出力し、伝送線路30から到達した制御信号を制御信号送受信部12へ出力する。
【0036】
映像信号受信装置20は、映像信号受信部21、制御信号送受信部22、フィルタ回路23および制御部24を備える。制御部24は、映像信号受信部21および制御信号送受信部22を制御するとともに、これらから信号を受け取る。
【0037】
映像信号受信部21は、入力バッファ回路およびCDR(clock data recovery)回路等を含む。映像信号受信部21は、フィルタ回路23から映像信号を受け取り、その映像信号を制御部24へ出力する。制御信号送受信部22は、制御部24による制御の下で、フィルタ回路23へ制御信号を出力し、また、フィルタ回路23から到達した制御信号を受け取って該制御信号を制御部24へ出力する。
【0038】
フィルタ回路23は、映像信号受信部21、制御信号送受信部22および伝送線路30と接続されている。フィルタ回路23は、フィルタ回路13と同様の構成を有する。フィルタ回路23は、伝送線路30から到達した映像信号を映像信号受信部21へ出力し、伝送線路30から到達した制御信号を制御信号送受信部22へ出力し、制御信号送受信部22から到達した制御信号を伝送線路30へ出力する。
【0039】
映像信号送信装置10のカメラ15による撮像により得られた映像信号は、映像信号送信部11からフィルタ回路13を経て伝送線路30へ送出され、伝送線路30により映像信号受信装置20へ伝送される。伝送線路30を経て映像信号受信装置20に到達した映像信号は、フィルタ回路23を経て映像信号受信部21により受信される。
【0040】
映像信号受信装置20の制御信号送受信部22から出力された制御信号は、フィルタ回路23を経て伝送線路30へ送出され、伝送線路30により映像信号送信装置10へ伝送される。伝送線路30を経て映像信号送信装置10に到達した制御信号は、フィルタ回路13を経て制御信号送受信部12により受信される。逆に、映像信号送信装置10の制御信号送受信部12から出力された制御信号は、フィルタ回路13を経て伝送線路30へ送出され、伝送線路30により映像信号受信装置20へ伝送される。伝送線路30を経て映像信号受信装置20に到達した制御信号は、フィルタ回路23を経て制御信号送受信部22により受信される。
【0041】
一般に、映像信号は、カメラ15による撮像の開始から長期間に亘って連続的に映像信号送信装置10から伝送線路30を経て映像信号受信装置20へ送られる。これに対して、制御信号は、映像信号送信装置10と映像信号受信装置20との間で、長期間に亘って連続的に伝送されるのではなく、断続的に繰り返される短い通信期間に伝送される。
【0042】
図2は、比較例の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間を説明する図である。この図に示されるように、制御信号については通信期間と無通信期間とが交互に繰り返される。或る通信期間に映像信号受信装置20から映像信号送信装置10へ送られて来た制御信号の途中に、カメラ15による撮像および映像信号送信の開始を指示するコマンドが含まれていると、そのコマンドを受けてカメラ15による撮像が開始されるとともに、映像信号送信装置10から映像信号受信装置20への映像信号の送信も開始される。しかし、映像信号の送信の開始時から定常状態に至るまでの過渡状態の期間において、映像信号受信装置20から映像信号送信装置10へ制御信号が送られて来ていると、映像信号と制御信号との間の干渉が大きくなり、伝送エラー発生の要因となる。伝送エラーは、映像信号および制御信号の双方において発生し得るが、映像信号と比べて制御信号に発生する伝送エラーの方が影響度が大きく深刻な問題となる。
【0043】
図3は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間を説明する図である。この図に示されるように、本実施形態では、制御部14または制御部24により、映像信号の送信の過渡状態の期間が制御信号の無通信期間内にあるようにタイムマネジメント制御をすることで、映像信号の送信の過渡状態の期間における映像信号と制御信号との間の干渉を抑制する。つまり、映像信号の送信の定常状態の期間では全二重通信を行うのに対して、映像信号の送信の過渡状態の期間に限っては半二重通信を行う。
【0044】
これに際して、映像信号送信装置10において制御部14がタイムマネジメント制御をしてもよい。この場合、制御部14は、映像信号送信部11による映像信号の送信の開始または条件変更のタイミングを調整する。好適には、制御部14は、制御信号送受信部12による制御信号の送受信の期間の後に、映像信号送信部11による映像信号の送信の開始または条件変更を許可する。また、制御部14は、制御信号送受信部12が受信した制御信号に、映像信号送信部11による映像信号の送信の開始または条件変更を指示する信号が含まれていることを検知した場合であっても、制御信号送受信部12による制御信号の送受信の期間の後に、映像信号送信部11による映像信号の送信の開始または条件変更を許可する。なお、映像信号の条件変更とは、例えば、イメージセンサの解像度やリフレッシュレートの設定変更、 Spread Spectrum Clockingなどの映像信号周波数に影響を与える変更や、映像信号の電圧振幅設定変更など、映像信号電圧に影響を与える変更を含む。
【0045】
或いは、映像信号受信装置20において制御部24がタイムマネジメント制御をしてもよい。この場合、制御部24は、制御信号送受信部22による制御信号の通信期間を調整する。好適には、制御部24は、制御信号送受信部22による制御信号の送受信の期間の間の長さを映像信号の送信の過渡状態の期間より長く設定する。また、制御部24は、映像信号の送信の過渡状態の期間においては制御信号送受信部22による制御信号の送受信を禁止し、映像信号の送信の過渡状態の期間の後に制御信号送受信部22による制御信号の送受信を許可する。
【0046】
制御部14によるタイムマネジメント制御および制御部24によるタイムマネジメント制御は、何れか一方が行われる場合もあり、また、双方が行われる場合もある。
【0047】
映像信号の送信の開始または条件変更の後の過渡状態の期間の長さは、映像信号送信部11に含まれるPLL回路や出力バッファ回路の動作が安定化するまでの所要時間として把握することができる。そして、映像信号の送信の過渡状態の期間より制御信号の無通信期間を長く設定することにより、上記のタイムマネジメント制御をすることが可能である。
【0048】
ポーリングを指示するコマンドを制御信号として映像信号受信装置20から映像信号送信装置10へ送ることで、映像信号送信装置10の内部処理エラー発生の有無や動作状況を監視し、その監視結果の情報を制御信号として映像信号送信装置10から映像信号受信装置20へ送る場合がある。しかし、この監視は、映像信号送受信システム1が定常状態となってから行えば十分であって、映像信号の送信の過渡状態の期間では実施できなくても許容され得る。
【0049】
図4は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第1の例を説明する図である。これは、例えばポーリング制御の無通信期間を長くすることがシステムとして許容される場合の例である。この場合、映像信号受信装置20の制御部24により、映像信号の送信が安定化するまでの所要時間(映像信号の送信が過渡状態にある時間)より制御信号の無通信周期を長く設定する。また、映像信号送信装置10の制御部14により、制御信号の通信期間においては映像信号送信部11による映像信号の送信を開始させず、制御信号の通信期間が終了すると映像信号送信部11による映像信号の送信の開始を許可する。これにより、制御信号の送受信が映像信号の送信の過渡状態に影響されることが回避され、定期的なポーリング制御通信間隔が保持されるので、意図された状態のモニタが遅れることがない。
【0050】
図5は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第2の例を説明する図である。これは、映像信号送信装置10の制御部14が、或る通信期間に映像信号受信装置20から映像信号送信装置10へ送られて来た制御信号の途中に、カメラ15による撮像および映像信号送信の開始を指示するコマンドが含まれていることを検知した場合の例である。この場合、映像信号送信装置10の制御部14により、制御信号の通信期間においては映像信号送信部11による映像信号の送信を開始させず、制御信号の通信期間が終了すると映像信号送信部11による映像信号の送信の開始を許可する。これにより、カメラ15による撮像および映像信号送信の開始を指示するコマンドを制御部14が検知した後にも、映像信号受信装置20から映像信号送信装置10へ制御信号が送られて来ていたとしても、その制御信号の通信期間においては映像信号の送信が開始されないので、制御信号の伝送エラーが回避される。
【0051】
図6は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第3の例を説明する図である。これは、例えばポーリング制御の無通信期間を一時的に長くすることがシステムとして許容される場合の例である。この場合、映像信号受信装置20の制御部24により、映像信号の送信開始が検知されると、その後の制御信号送受信部22による制御信号の通信開始までの時間を、映像信号の送信の過渡状態の期間より長く設定する。または、映像信号受信装置20の制御部24により、映像信号の送信開始が検知されると、映像信号の送信の過渡状態の期間においては制御信号送受信部22による制御信号の送受信を禁止し、映像信号の送信の過渡状態の期間の後に制御信号送受信部22による制御信号の送受信を許可する。これにより、干渉の発生回避時間を意図的に制御することができ、マージンも含めて設定できる。
【0052】
図7は、本実施形態の映像信号および制御信号それぞれの伝送期間のタイムマネジメントの第4の例を説明する図である。この図に示されるように、映像信号の送信の過渡状態であって未だ定常状態に至っていなくても、映像信号と制御信号との干渉による制御信号の伝送エラーを回避できる程度に、映像信号の周波数、電圧およびノイズ状態が定常状態に近づいてきていれば、制御信号の送受信を開始してもよい。これにより、制御信号の無通信期間を短縮することができるので、状態監視の漏れや時間ロスを防止することができ、より迅速な制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1…映像信号送受信システム、10…映像信号送信装置、11…映像信号送信部、12…制御信号送受信部、13…フィルタ回路、14…制御部、15…カメラ、20…映像信号受信装置、21…映像信号受信部、22…制御信号送受信部、23…フィルタ回路、24…制御部、30…伝送線路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7