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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】分子篩/繊維複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/18 20060101AFI20230606BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/52 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20230606BHJP
   A61L 17/10 20060101ALI20230606BHJP
   C01B 39/02 20060101ALI20230606BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61L15/18 100
A61L15/32 100
A61L15/28 100
A61L15/52 100
A61L15/26 100
A61L15/24 100
A61L15/44 100
A61L15/42 100
A61L17/10
C01B39/02
C01B39/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020551956
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2019082930
(87)【国際公開番号】W WO2019242390
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】201810625864.0
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520510324
【氏名又は名称】杭州沸創生命科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】範 杰
(72)【発明者】
【氏名】余 麗莎
(72)【発明者】
【氏名】肖 麗萍
(72)【発明者】
【氏名】陳 昊
(72)【発明者】
【氏名】尚 小強
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101804327(CN,A)
【文献】特許第6933411(JP,B2)
【文献】特開2000-225327(JP,A)
【文献】特開2007-144154(JP,A)
【文献】特表2011-502635(JP,A)
【文献】特開2009-297507(JP,A)
【文献】Comptes Rendus Chimie,2005年,Vol.8, No.3-4,p.475-484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-15/64
A61L 17/00-17/14
A61F 13/00-13/14
D06M 11/00-11/84
C01B 39/00-39/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子篩と有機繊維を含む分子篩/有機繊維複合止血材料であって、
前記分子篩が有機繊維表面に分布し且つ前記有機繊維表面に直接接触し、
前記分子篩の粒径D90が0.01~50μmであり、前記分子篩の粒径D50が0.005~30μmであり、
前記分子篩は前記有機繊維表面に均一に分布し、
前記分子篩の前記有機繊維表面における均一な分布を検出する方法は、前記分子篩/有機繊維複合材料は異なる部位でn個のサンプルをランダムに取り、nは8以上の正の整数であり、前記分子篩の前記有機繊維表面における含有量を分析し、前記n個のサンプルにおける前記分子篩の含有量の変動係数は≦15%であることを特徴とする分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項2】
前記分子篩の有機繊維との接触面は内表面であり、前記内表面は有機繊維表面に対応する平面であり、前記分子篩の有機繊維との非接触面は外表面であり、前記外表面は非平面である ことを特徴とする請求項1に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項3】
前記内表面と外表面は、いずれも分子篩ナノ粒子で構成されることを特徴とする請求項2に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項4】
前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは、内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズよりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項5】
前記分子篩は前記有機繊維の表面に独立して分散されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項6】
前記独立して分散されるとは、分子篩ミクロ粒子とその最も隣接する分子篩ミクロ粒子との間の最小距離が、2つの分子篩ミクロ粒子の粒径の和の2分の1以上であることを特徴とする請求項5に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項7】
前記内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは2~100nmであることを特徴とする請求項3に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項8】
前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは50~500nmであることを特徴とする請求項3に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項9】
前記分子篩は、アルミノケイ酸塩分子篩、リン酸塩分子篩、ホウ酸塩分子篩、ヘテロ原子分子篩のいずれか1種又は複数種から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項10】
前記分子篩は金属イオン交換後の分子篩であることを特徴とする請求項9に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項11】
前記金属イオンは、ストロンチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、銅イオンのいずれか1種または複数種から選択されることを特徴とする請求項10に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項12】
前記有機繊維は、繰り返し単位中に水酸基を含むポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項13】
前記有機繊維は、絹繊維、キチン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、カルボキシメチルセルロース、竹繊維、綿繊維、亜麻布繊維、羊毛、木繊維、ラクチド重合体繊維、グリコリド重合体繊維、ポリエステル繊維(ポリエステル(PET)と略称される)、ポリアミド繊維(ナイロン(PA)と略称される)、ポリプロピレン繊維(PPと略称される)、ポリエチレン繊維(PE)、ポリ塩化ビニル繊維(PVCと略称される)、ポリアクリロニトリル繊維(アクリル、人造羊毛と略称される)、ビスコース繊維のいずれか1種または複数種から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料。
【請求項14】
請求項1に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料の製造方法であって、前記製造方法はイン・サイチュ成長法であり、前記イン・サイチュ成長法が、
1)分子篩前駆体溶液を調製し、その後有機繊維と混合するステップ、
2)ステップ1)の有機繊維と分子篩前駆体溶液の混合物を熱処理して分子篩/有機繊維複合材料を得るステップ、
を含むことを特徴とする分子篩/有機繊維複合止血材料の製造方法。
【請求項15】
前記有機繊維は、前処理を行わない有機繊維、又/或いは接着剤を添加しない有機繊維であり、前記前処理は、有機繊維構造を破壊する処理方式であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップ2)の熱処理の温度は60~220℃であり、時間は4~240hであることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記分子篩はメソポーラス分子篩であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載の分子篩/有機繊維複合止血材料を含むことを特徴とする止血複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料分野に属し、具体的に、分子篩/繊維複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子篩は、優れた止血効果を有し、緊急止血、特に大動脈出血に適しており、かつ安価で、性能が安定し、携帯しやすいなどの特徴を有する。規則的な細孔のチャンネル構造を有し、分子をふるい分ける作用を有する物質は、分子篩(Molecule sieves)と呼ばれる。TO四面体(TはSi、Al、P、B、Ga、Geなどから選ばれる)は分子篩骨格を構成する最も基本的な構造単位(SiO、AlO、PO、BO、GaO、GeOなど)であり、共有する酸素原子が結合することにより三次元網目構造の結晶を形成する。このような結合形態で、分子レベルを有し、孔径が均一なキャビティおよびチャンネルを構成している。骨格中のT原子とは、通常、Si、Al、P原子を指し、少数の場合はB、Ga、Geなどの他の原子を指す。例えば、ゼオライトはアルミノケイ酸塩分子篩であり、分子に対してふるい分け、吸着、イオン交換、触媒作用を有するアルミノケイ酸塩である。ゼオライトの化学組成の一般式は(M)2/nO・xAl・ySiO・pHOであり、Mは金属イオン(例えばK、Na、Ca2+、Ba2+など)、nは金属イオンの価数、xはAlのモル数、yはSiOのモル数、pはHOのモル数を表す。前記分子篩は、X型分子篩、Y型分子篩、A型分子篩、ZSM-5分子篩、菱沸石、β分子篩、モルデナイト、L型分子篩、P型分子篩、メルリーノ沸石、AlPO4-5型分子篩、AlPO4-11型分子篩、SAPO-31型分子篩、SAPO-34型分子篩、SAPO-11型分子篩、BAC-1分子篩、BAC-3分子篩、BAC-10分子篩であってもよい。
【0003】
分子篩材料の広範な応用(例えば、吸着分離、イオン交換、触媒)は、その構造的な特徴と密接な関係にある。例えば、吸着分離性能は、分子篩のチャンネルと孔の容積の大きさによって決まり、イオン交換性能は、分子篩中の陽イオンの数、位置及びそのチャンネルの通行可能性によって決まり、触媒過程で発現される形状選択性は、分子篩のチャンネルの大きさ、向きに関連し、触媒反応中の中間生成物及び最終生成物は分子篩のチャンネルの次元数又はそのケージ構造に関連する。
【0004】
繊維とは、長さがその直径よりも何倍か大きく、太さが数μmから百μmまでの柔らかく細長いもので、高い柔軟性と強度を有する極細の物質をいう。本発明で言う繊維とは有機繊維を指し、前記有機繊維は大きく二種類に分けることができる:一種類は天然繊維であり、例えば綿、羊毛、絹と亜麻などであり、もう一つの種類は化学繊維であり、天然又は合成高分子化合物を化学加工して製造された繊維である。化学繊維は高分子化合物の由来、化学構造によって分類することができ、レーヨン繊維と合成繊維に分類することができる。レーヨン繊維は、再生タンパク質繊維、再生セルロース繊維、繊維素繊維に分類される。合成繊維は炭素鎖繊維(高分子の主鎖はすべてC-Cからなる)とヘテロ鎖繊維(高分子の主鎖は炭素原子の他に、他の元素例えばN、Oなどを含む)に分けられる。炭素鎖繊維には、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアセタール繊維、ポリ塩化ビニル繊維及びフッ素含有繊維などが含まれる。ヘテロ鎖繊維には、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリウレタン弾性繊維、ポリ尿素繊維、ポリトルエン繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド-ポリヒドラジン繊維、ポリベンズイミダゾール繊維などが含まれる。
【0005】
使いやすくするために、分子篩を適切な担体に担持させる必要がある。繊維は柔軟性、弾力性、剛性、織物性などの良好な物理的性能を有し、分子篩担体としての好ましい選択肢の一つである。無機繊維には、主にガラス繊維、石英ガラス繊維、炭素繊維、硼素繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭化珪素繊維などがある。一部の無機繊維(例えばシリカ繊維)の表面化合物は分子篩と化学反応を起こすことができ、分子篩を無機繊維の表面に結合させることができるが、無機繊維は脆く断裂しやすく、耐摩耗でなく、分子篩のフレキシブル担体として適していないため、本発明に記載の繊維の範囲内に属さない。有機繊維は、その繊維表面の極性基(例えば水酸基など)が不活性(inert)であるため、活発でなく、分子篩と繊維との相互作用力が非常に弱い。現在、大部分の分子篩は繊維にスプレー又は浸漬するが、分子篩と繊維は単純な物理的混合でしかないため、結合力が弱く、これにより繊維上の分子篩の吸着量が少なく、脱落しやすいなどの欠陥がある。従来技術では、分子篩を繊維表面によりよく結合させるために、主に繊維に対する前処理(繊維構造の破壊)、接着剤による接着、分子篩と繊維の混紡の3種の方式を採用する。
【0006】
1)繊維に前処理(pretreatment)を施す。前記前処理とは、繊維構造を破壊するための処理方式である。従来技術では、分子篩を繊維上に直接結合できるようにするために、先に繊維を前処理しなければならない。前処理の方式には、主に化学処理、機械処理、超音波処理、マイクロ波処理などが含まれる。化学処理の方式は、アルカリ類化合物、酸類化合物、有機溶媒などの処理に分かれ、前記アルカリ類化合物はNaOH、KOH、NaSiO等のいずれか1種以上から選択することができ、前記酸類化合物は塩酸、硫酸、硝酸等のいずれか1種以上から選択され、前記有機溶媒は、エチルエーテル、アセトン、エタノール等のいずれか1種以上から選択される。機械的処理(mechanical treatment)は、繊維を粉砕又は研磨する方式などであってもよい。以上に述べた繊維処理方式は、繊維表面の極性基(例えば水酸基など)をある程度活性化させる前処理であるが、繊維自体の構造(図1)を大きく破壊し、繊維の柔軟性、弾性などの特性に影響を与え、繊維が脆くなる、硬くなるなどの不具合が現れ、繊維を担体とする優位性を十分に発揮させることができない。また、繊維に対する前処理により、分子篩が繊維表面に凝集してしまう。例えば、分子篩は、凝集や塊状の構造で繊維表面を包み(図2、3)、繊維の柔軟性を低下させたり、繊維表面に分子篩の部分的な凝集が不均一に分布したり(図4)、繊維と分子篩との間に隙間ができたりし(図5)、分子篩と繊維との間の作用力が弱くなる。繊維表面での分子篩の凝集は、繊維表面での分子篩の不均一な分布をもたらし、また、分子篩/繊維複合材料の各所の性能に差異をもたらし、分子篩本来の有効比表面積を低下させ、分子篩のチャンネルの閉塞をもたらし、分子篩のイオン交換およびチャンネルの物質交換能力を低下させ、物質の伝達に不利になる。繊維表面の前処理は繊維構造を破壊することを代償とし、ある程度繊維の部分構造と分子篩の力を増強させ、分子篩/繊維複合材料を形成するが、その力はまだ十分には強くなく、外部条件下で使用する場合、例えば簡単な洗浄方式でも大量(50~60%)の分子篩が繊維表面から脱落する(Microporous&Mesoporous Materials、2002、55(1):93-101及びUS20040028900A1)。
【0007】
2)接着剤(binder)で接着する。分子篩と繊維との間の結合強度を増加させるために、従来の技術では主に接着剤を介して分子篩及び繊維とをそれぞれ相互に作用させ、サンドイッチ構造に類似した構造を形成し、接着剤を中間層とし、分子篩が接着剤を介して繊維に間接的に結合させるようにする(図18)。「接着剤」は粘着性を有する物質であり、化学反応や物理的作用を介して、分離した分子篩と繊維材料とを接着剤によって結合させる。接着剤の主な欠点は以下のとおりである:(1)接着箇所の品質を目視で検査できない;(2)被着体に対して注意深く表面処理を行う必要があり、一般的に化学的腐食方法を採用する;(3)硬化時間が長い;(4)使用温度が低く、一般的に接着剤の使用温度の上限は約177℃であり、特殊な接着剤の使用温度の上限は約37l℃である;(5)多くの接着剤は厳密なプロセス制御を必要とし、特に接着面の清潔さに対する要求がより高い;(6)接着部の使用寿命は所在する環境、例えば湿度、温度、風通しなどに依存する。接着剤の性能を所定期間にわたってほぼ一定に保つためには、接着剤を保管する方法に注意を払う必要がある。分子篩において、接着剤を用いる主な欠点は以下のとおりである:(1)分子篩の繊維表面への分布が不均一である;(2)分子篩が凝集しやすくなり、分子篩の有効比表面積が低下し、分子篩の目詰まりを引き起こし、分子篩のイオン交換及びチャンネルの物質交換能力が低下し、物質の伝達に不利であり、分子篩を合成するコストが増加するおそれがある。また、接着剤の添加によって、分子篩の繊維への担持量は有意には向上せず、分子篩と繊維との結合を大幅に強化することもなく、分子篩は依然として繊維表面から脱落しやすい。微視的視点から、走査型電子顕微鏡で観察したところ、先行技術でいう「分子篩/繊維複合材料」で、分子篩と繊維の明らかな結合界面は観察されず、これは接着剤による分子篩と繊維との結合が強固でないことを説明する。
【0008】
材料由来に応じて、接着剤は、(1)デンプン、タンパク質、デキストリン、ゼラチン、シェラック、獣皮膠、骨膠、天然ゴム、ロジン等の生物由来の接着剤を含み、またピッチ等の鉱物接着剤も含む天然接着剤;(2)主に人工的に合成されたものであり、ケイ酸塩、リン酸塩等の無機接着剤、及びエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアセタール、パークロロエチレン樹脂等の樹脂、ならびにクロロプレンゴム、ニトリルゴム等の合成高分子化合物を含む合成接着剤、に分かれる。使用特性に応じて、(1)水を溶媒とする水溶性接着剤(主にデンプン、デキストリン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなど);(2)ホットメルト型接着剤(例えばポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体など);(3)溶媒型接着剤(水に溶解せず、ある溶媒に溶解する接着剤であり、例えばシェラック、ブチルゴムなど);(4)多くは水中で懸濁状を呈するエマルジョン型接着剤(例えば酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ゴムなど);(5)常温で粘稠液体状を呈する無溶媒液体接着剤(例えばエポキシ樹脂など)、に分かれる。素材に応じて、(1)変性シランポリマーの末端がメトキシシランであるMS変性シラン;(2)主鎖に繰り返しウレタン基を有する高分子化合物の総称であるポリウレタン;(3)シリコーン(Silicones)(シリコーンオイル又はジメチルシリコーンオイルと称される、分子式:(CHSiO(CHSiOSi(CHであり、シリコーン酸化物の重合体で、分子量が異なる一連のポリジメチルシロキサンであり、分子量が大きくなるにつれて粘度が増加する)、に分かれる。
【0009】
論文(Applied Surface Science、2013、287(18):467-472)には、接着剤により結合されたA型分子篩/羊毛繊維複合材料について開示されている。そのうち、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを接着剤とし、A型分子篩が羊毛繊維表面に接着し、A型分子篩の繊維における含有量が2.5%以下である。走査電子顕微鏡によって、シラン分子篩を添加していない羊毛繊維の形態に対して、シラン接着剤を添加した後、羊毛繊維の表面に大きな塊になった分子篩が現れ、活性シラン接着剤が分子篩顆粒の凝集を引き起こすことが観察されている。分子篩顆粒の凝集現象は、分子篩の有効比表面積とチャンネルの物質交換能力を減少させる。
【0010】
論文(ACS Appl.Mater.Interfaces 2016、8、3032-3040)には、接着剤により結合されたNa-LTA型分子篩/ナノセルロース繊維複合材料について開示されている。そのうち、ナノセルロース繊維は、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化アンモニウムpolyDADMAC水溶液に60℃で30min浸漬することで、LTA型分子篩に対する吸着を実現する(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化アンモニウムpolyDADMACが接着剤である)。分子篩をポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドのポリカチオン吸着作用によって繊維表面に付着させることができるが、150nmのナノNa-LTAに対して、メソポーラスNa-LTAとミクロンオーダー Na-LTAの繊維上の含有量はそれぞれ2.6±0.6wt%(変動係数は23.1%、計算方法は0.6×100%/2.6=23.1%である)、2.9±0.9wt%(変動係数31.0%)、12.5±3.5wt%(変動係数28%)であり、分子篩繊維表面における分布が不均一であり、繊維表面のどこにおいても分子篩の含有量を同等とすることを実現できない。変動係数(coefficient of variance)は、「標準偏差率」とも呼ばれ、標準偏差と平均値の比に100%を乗じたものである。変動係数はデータの分散の程度を反映する絶対値であり、変動係数の値が高いほど、データの分散の程度が大きく、繊維表面の各所で分子篩の含有量の差が大きいことを示す。走査型電子顕微鏡から、Na-LTA型分子篩と繊維との間にカップリング界面が形成されていないことが観察され(図6)、繊維と分子篩との結合が強固でなく、分子篩が繊維表面から脱落しやすいことが示されている。
【0011】
論文(Advanced Materials、2010、13(19):1491-1495)には、接着剤を介して結合したY型分子篩/繊維複合材料について開示されている。分子篩は接着剤の共有結合によって植物繊維の表面に付着することができるが、付着量には限界がある(いずれも5wt%未満)。そのうち、3-クロロプロピルトリメトキシシランは接着剤として分子篩の表面に修飾され、それを綿繊維に付着させた場合、超音波処理10minの条件で39.8%が脱落し(分子篩の繊維における保留率は60.2%である)、超音波処理60minの条件で95%が脱落し(分子篩の繊維における保留率は5%である)、当該技術では分子篩と繊維の化学結合が強くないことを示している。分子篩と繊維との結合強度を高めるために、当該技術ではポリエーテルイミドを接着剤として繊維表面において修飾させ、さらに3-クロロプロピルトリメトキシシランにより修飾された分子篩を接着剤修飾繊維に付着させている。この条件では、接着剤が繊維と分子篩の結合強度をある程度高めているが、超音波条件下で依然として脱落する現象がある。そのような複合材料に対して、分子篩と繊維の表面はそれぞれ接着剤と相互に作用し、中間層の接着剤によってサンドイッチ構造に類似する材料を形成し、合成過程のコストが増加し、分子篩の有効比表面積が低下する。
【0012】
論文(Microporous&Mesoporous Materials、2011、145(1-3):51-58)には、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーの接着剤で結合されたNaY型分子篩/繊維複合材料について開示されている。NaY型分子篩をセルロースとポリビニルアルコールアミン溶液に加え、さらにポリアクリルアミドポリマー溶液を加えることで、対応する複合材料が形成される。走査電子顕微鏡から、NaY型分子篩と繊維の間は結合されておらず、両者の間には作用力がなく、2種類の材料の単なる物理的組み合わせでしかなく(図7)、分子篩が繊維から容易に脱落することが観察される。
【0013】
3)分子篩と繊維とを混紡する。分子篩の溶液と合成繊維溶液を均一に混合し、紡糸する場合、分子篩と繊維は単なる物理的結合でしかない。分子篩の大部分は繊維中に存在し、繊維表面に結合していない(図8)。
【0014】
米国特許第7390452号には、静電紡糸したメソポーラス分子篩/繊維複合材料について開示されている。ポリエーテルイミド(PEI)メタノール溶液とメソポーラス分子篩溶液を静電紡糸して複合材料を形成したところ、走査型電子顕微鏡では繊維表面に分子篩が明らかに観察されず(図9)、即ち、分子篩の大部分は繊維中に存在し、内部の分子篩はその性能を発揮できていないとわかる。
【0015】
中国特許出願公報CN1779004Aには、抗菌ビスコース繊維及びその製造方法について開示されている。当該発明は、銀分子篩抗菌剤とセルローススルホネート溶液を混紡してなるものであり、銀分子篩抗菌剤がセルロースの0.5~5%を占める。銀分子篩を0.01%のMET分散剤でセルローススルホネート溶液中に分散させ、浴温49℃で紡糸成型したところ、分子篩の大部分は繊維中に存在し、分子篩のチャンネルを塞ぎやすく、分子篩の有効比表面積を小さくする。
【0016】
以上をまとめると、従来技術により製造された分子篩/繊維複合材料は、1)分子篩と繊維の単純な物理混合;2)分子篩が繊維表面に形成された凝集;3)分子篩と繊維が接着剤によってサンドイッチ構造に類似する構造を形成;4)分子篩の大部分が繊維中に存在し、繊維表面と結合していない、という四種類の構造形態がある。前記四種類の構造形態の複合材料は、分子篩の分散性が悪く、有効比表面積が小さく、その性能を発揮することができない。上に述べた三種類の構造形態の複合材料は、分子篩と繊維との結合作用が弱く、分子篩が繊維表面から脱落しやすい。分子篩/繊維複合材料中の分子篩の有効比表面積は、分子篩本来の有効比表面積より小さい。接着剤を添加しないことを前提として、従来技術では、分子篩が繊維表面に均一に分布し、且つ前記繊維表面に直接接触し、分子篩が繊維表面に強固に結合した分子篩/繊維複合材料を製造することができず、繊維上の分子篩が本来の大きな有効比表面積と強いチャンネル物質交換能力を保持することもできなかった。
【0017】
国際純正・応用化学連合の規定によれば、チャンネルのサイズが2nm以下のものをミクロ孔材料と呼び、チャンネルの範囲が2~50nmのものをメソポーラス材料と呼び、チャンネルのサイズが50nmより大きいものをマクロポーラス材料と呼ぶ。分子篩は、その小さなチャンネル(一般的に0.4~1.2nm)であるため、その内部活性部位における物質輸送に深刻な影響を与え、それにより大分子反応(接触分解など)触媒としての性能が深刻に制限される。この問題を解決するために、ミクロ孔とメソポーラスの二種類の材料の利点を有するメソポーラス分子篩を調製した。メソポーラス分子篩を触媒材料に応用する利点は以下のとおりである:(1)拡散制御される触媒反応に対し、反応速度が顕著に向上する;(2)物質移動速度の向上により、ある生成物の選択性を向上させることができる;(3)反応分子が活性中心により近づきやすくなる;(4)触媒が失活しにくく、耐用年数がより長くなる;(5)担体として触媒が二次孔において均一に分散されることができる。
【0018】
現在、メソポーラス分子篩の合成には二種類の方法がある。
【0019】
(1)ミクロ孔分子篩後処理法(ミクロ孔分子篩を高温熱処理、高温水蒸気処理、酸処理、アルカリ処理などを行う)。処理により、骨格から選択的にアルミニウム又は珪素を除去することができ、形成された分子篩結晶粒に二次孔を発生させるが、後処理において脱アルミニウム又は脱珪素過程で分子篩骨格の崩壊が発生しやすく、またメソポーラスチャンネル同士の連通性が良好でなく、大分子への拡散輸送があまり向上せず、且つ合成過程で大量の廃液が発生し、環境を汚染するだけでなく、薬品を浪費するため、該方法は実際の応用において大きな制限を受ける。
【0020】
(2)テンプレート法(ソフトテンプレート法とハードテンプレート法)。ミクロ孔分子篩後処理法を採用しないと、テンプレート法しか採用できず、必然的にテンプレート剤を使用することになるが、テンプレート法はソフトテンプレート法とハードテンプレート法に分けられる。ソフトテンプレート法のテンプレート剤には、主に高分子ポリマー、界面活性剤、有機シランなどが含まれる。肖豊収の研究グループは、2006年に初めて高分子ポリマー(polydiallyldimethylammonium chloride)をテンプレートとして用い、メソポーラスβ分子篩の合成に成功した。結果として、分子篩結晶に0.8nm程度のミクロ孔と5~20nmのメソポーラスがともに含まれることが示された(Angew. Chem.,2006、118(9):3162.)。その後、この方法はメソポーラスZSM-5、X型、Y型などの分子篩の合成まで展開された。Guらは、分子篩を合成する過程でセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTABr)をメソポーラステンプレートとして加え、同時に溶解補助剤であるターシャリーブタノール(TBA)と拡孔剤であるメシチレン(TMB)を加え、メソポーラス構造を有するY型分子篩を得た(Chem.Mater.,2010、22:2442.)。ソフトテンプレート法では、メソポーラス分子篩を合成することができるが、ソフトテンプレートのコストが一般に高価であり、また実験条件に対する要求が厳しいため、この方法は一般的に工業生産の要求を満たすことができない。
【0021】
ハードテンプレート法は、分子篩を合成する過程で、系中の珪素源やアルミニウム源などのゲルと作用せず、空間を占有する目的のみを果たす。結晶化反応が終了した後、テンプレート剤を焙焼等の手段で除去し、メソポーラス分子篩を得る。ハードテンプレート法のテンプレート剤とされるものは、ナノCaCO、ナノMgO、及びトウモロコシデンプン、炭素材料(例えば、規則性メソポーラスカーボンなど)などがある。ハードテンプレート法で使用できるテンプレート剤は、種類や形状などに大きな制限があり、特にハードテンプレート剤を除去した後、得られたメソポーラスチャンネルの連通性が相対的に劣り、そのため、実際的応用が制限される。
【0022】
以上をまとめると、従来技術のメソポーラス分子篩の合成方法にはまだ不足点がある:(1)テンプレート法(ハードテンプレート法とソフトテンプレート法を含む)で合成されたメソポーラス分子篩は、テンプレート剤が存在する場合、分子篩のチャンネルの連通性に影響を与え、且つ分子篩表面の触媒などの応用を制限する。(2)ハードテンプレート法で製造されたメソポーラス分子篩は一般的にメソポーラス構造の連通性が劣り、ソフトテンプレート法は価格が比較的高価であり、ある程度テンプレート法の応用が制限される。(3)ミクロ孔分子篩後処理法では分子篩に二次孔を形成させることができるだけでなく、分子篩の骨格のシリカアルミナ比を変化させることにより分子篩の酸性を変調させるが、この方法では分子篩の骨格が崩壊しやすく、二次孔の制御性が悪く、また環境汚染などの問題がある。
【0023】
そのため、従来技術で、メソポーラス分子篩の合成は比較的複雑で、時間と手間がかかり、分子篩が所望の触媒効果を達成することができず、且つ有機テンプレート剤の環境への汚染が大きい。テンプレート剤を必要とせず、コストが低く、プロセスが簡単で、環境に優しく、工業化生産を満たすメソポーラス分子篩の合成方法は、発見されていない。
【0024】
多くの場合、ヒト(動物を含む)は傷を受ける可能性がある。場合によって、創傷や出血は軽微であり、簡単な救急に加えて、通常の血液凝固機能を必要とするだけで正常な止血が可能である。しかし、不幸なことは、多くの不慮の場合には大量の出血が起こる可能性があり、例えば、皮膚が破れるか、貫通傷(ナイフや弾丸によって引き起こされる)により大動脈損傷を引き起こし、正常な人は大部分の血液が数分で失われて死亡する。従って、日常生活における突発的な事故の救急治療、病院の患者に対する手術中の創傷止血、特に戦争中の負傷戦士の救護において、患者に対する効果的な迅速な止血は重要である。
【0025】
分子篩は優れた止血効果を有し、緊急止血に適し、特に大動脈出血に適し、かつ安価で、性能が安定し、携帯しやすいなどの特徴を有する。分子篩は吸着時にファンデルワールス力によるものであり、分子が互いに引き合う過程で分子間の距離が小さくなり、分子の位置エネルギーが内部エネルギーに変換されてエネルギーを放出するため、分子篩は吸水すると発熱する。従来技術で、分子篩は主に顆粒や粉末の形で傷口を覆って止血しており、負傷者に不快感を与える。止血材は傷口を全面的に覆う必要があるため、粉末や顆粒状の分子篩は止血材として使用量が非常に大きく、これにより分子篩は傷口で大量に吸水発熱し、傷口が焼けやすい。使用中に分子篩は傷口に付着し、クリーニングしにくく、複数回すすがないと除去することができず、二度目の出血を引き起こしやすい。顆粒状の分子篩は接着剤により接着する必要があり、分子篩と傷口の血液が十分に接触できず、分子篩の止血効果に影響を与える。さらに、粉末や顆粒状の分子篩は使用中に傷口と直接接触するため、傷口に付着した分子篩が血管や他の組織に入るリスクがあり、血管内腔に残留して血栓を形成し末梢動脈の流動を閉塞しやすい。
【0026】
分子篩(または無機止血材料)を小さいサイズで繊維上に分散させれば、分子篩材料が傷口に付着してクリーニングしにくいという問題をある程度解決でき、分子篩の使用量を減らし、吸水による発熱効果を希釈できる。しかし、従来の分子篩/繊維複合材料は止血織物材料とすることができる。従来技術で製造された分子篩/繊維複合材料は、四種類の構造形態がある:1)分子篩と繊維の単純な物理混合;2)分子篩が繊維表面に形成された凝集;3)分子篩と繊維が接着剤によってサンドイッチ構造に類似する構造を形成する;4)分子篩の大部分が繊維中に存在し、繊維表面と結合していない。このような前記四種類の構造形態の複合材料は、分子篩の分散性が悪く、有効比表面積が小さく、使用過程で血液と十分に接触できず、止血効果が悪い。分子篩/繊維複合材料中の分子篩の有効比表面積は、分子篩本来の有効比表面積より小さい。そのうち、上に述べた前の三種類の構造形態の複合材料は、分子篩が繊維表面から脱落しやすく、脱落した分子篩は傷口に粘着したり、血液循環に入ったりして、分子篩が血管内に残りやすく、血栓が生じるリスクを誘発する。一方、粘土などの珪酸塩無機止血材料の性質は分子篩と類似し、無機止血材料と繊維からなる複合材料にも上記の欠点のある4種類の構造形態が存在し、止血材料の性能と安全性に大きく影響を及ぼしている。
【0027】
また、Z-Medica合同会社(Z-Medica社)は、「救命神器」と評価された止血製品であるコンバットガーゼ(Combat Gauze)を開発した。この製品は、アメリカ軍のCo-TCCC(Committee on Tactical Combat Casualty Care)で推奨されている緊急止血製品であり、現在では重要な軍隊装備品や救急車の救急機器とされている。米国特許第8114433号、中国特許第101541274号、及び第101687056号等には、それらの止血製品の技術が出血創傷の止血作用を提供する装置であり、接着剤を用いてガーゼの表面に粘土材料を付着させることが開示されている。しかし、前記接着剤は、粘土材料と血液との接触面積を減少させるだけでなく、粘土材料とガーゼ繊維との結合作用が強くない。この技術で製造された止血材製品は水にさらされた後、ガーゼ表面の粘土材がガーゼ繊維表面から非常に容易に脱落する(図20)。超音波洗浄器で1min超音波処理する条件下では、粘土のガーゼ繊維における保留率は10%以下であり、5min超音波処理する条件下では、粘土のガーゼ繊維における保留率は5%以下であり(図21)、20min超音波処理する条件下では、粘土のガーゼ繊維における保留率は5%以下である。こうした欠陥のある構造形態では、当該止血製品の止血性能が制限され、後遺症または他の副作用を誘発するリスク(例えば血栓など)が潜伏している。
【0028】
中国特許出願公報CN104888267Aには、医療用止血スパンデックス繊維織物及びその製造方法について開示されている。医療用スパンデックス繊維織物の製造方法は、以下のステップを含む:1)ポリウレタン尿素原液を製造する;2)無機止血粉剤、分散剤をジメチルアセトアミド溶媒で研磨して止血スラリーを得る;3)前記ポリウレタン尿素原液、前記止血スラリーを同時に反応容器に入れ、乾式紡糸プロセスによりスパンデックス繊維を製造し、最後にスパンデックス繊維織物を編む。前記無機止血粉剤は珪藻土、モンモリロナイト、ゼオライト、生物ガラス及びハロイサイトナノチューブの一種又は数種である。この方法で製造されたポリウレタン繊維織物中の無機止血粉剤は大部分が繊維内部に存在し、血液と十分に接触できずにその止血作用を発揮することができず、無機止血粉の使用量が増加するため、止血効果が良好でない。
【0029】
従来技術で、止血材料に存在する問題は以下のとおりである:1)粉末と顆粒状の分子篩(又は無機止血材料)は傷口において大量に吸水して発熱する;2)分子篩(又は無機止血材料)と繊維により形成された複合材料における分子篩は、分散性が悪く、有効比表面積が小さく、使用過程で血液と十分に接触できず、止血効果が劣る;3)分子篩(又は無機止血材料)は繊維との結合力が弱く、実際の使用過程で分子篩が繊維表面から脱落しやすく、分子篩の保留率が低く、止血材料が止血効果を失いやすくなる。接着剤を添加しないことを前提として、従来技術では、分子篩(又は無機止血材料)と繊維とが強固な結合し、脱落しにくく、ひいては脱落せず、分子篩が繊維表面で分散性がよく、分子篩が本来の大きな有効比表面積を保持し、止血効果に優れた止血材を実現することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従来技術の不足に対し、本発明が解決しようとする第一の技術的問題は、以下のとおりである。本発明では初めて分子篩/繊維複合材料における分子篩が繊維表面に凝集する問題を解決し、接着剤を添加しないことを前提として、分子篩と繊維の結合が強固で、分子篩が繊維表面に均一に分布する分子篩/繊維複合材料を提供することである。前記複合材料における分子篩は、既存の大きな有効比表面積と強いチャンネル物質交換能力を保持する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は以下の技術方案を採用する。
【0032】
本発明では、意外に簡単な方法で全く新しい止血材である分子篩/繊維複合材料が得られ、前記分子篩は繊維表面に分布し且つ前記繊維表面と直接接触し、前記分子篩の粒径D90は0.01~50μmであり、前記分子篩の粒径D50は0.005~25μmであり、前記分子篩は繊維表面に均一に分布する(perfect homogeneity)。
【0033】
D50とは、分子篩/繊維複合材料の表面の分子篩ミクロ粒子の累積粒度分布の百分率が50%に達した場合に対応する粒径を指す。その物理的意義は、粒径がそれより大きい分子篩ミクロ粒子が50%を占め、それより小さい分子篩ミクロ粒子も50%を占めることを意味し、D50はメジアン径またはメディアン径とも呼ばれ、分子篩ミクロ粒子の平均粒径を表すことができる。前記分子篩ミクロ粒子は、本来の分子篩の成長成形の境界(boundary、図10a)を残した一定の形状を有し、50μm未満のサイズを有する分子篩の幾何学的形状である。
【0034】
D90とは、分子篩/繊維複合材料の表面の分子篩ミクロ粒子の累積粒度分布のパーセンテージが90%に達した場合に対応する粒径を指す。その物理的意義は、粒径がそれより大きい分子篩ミクロ粒子が10%を占め、それより小さい分子篩ミクロ粒子が90%を占めることを意味する。
【0035】
前記分子篩の繊維表面における均一な分布を検出する方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料は異なる部位でn個のサンプルをランダムに取り、分子篩の繊維表面における含有量を分析する。nは8以上の正の整数である。変動係数(coefficient of variance)は、「標準偏差率」とも呼ばれ、標準偏差と平均値の比に100%を乗じたものである。変動係数はデータの分散の程度を反映した絶対値であり、変動係数の値が小さいほど、データの分散の程度が小さく、繊維表面の各所における分子篩の含有量の差が小さいほど、繊維表面における分子篩の分布が均一であることを示す。前記n個のサンプルにおける分子篩の含有量の変動係数は≦15%であり、前記変動係数は≦10%であり、好ましくは、前記変動係数は≦5%であり、好ましくは、前記変動係数は≦2%であり、好ましくは、前記変動係数は≦1%であり、好ましくは、前記変動係数は≦0.5%であり、より好ましくは、前記変動係数は≦0.2%である。
【0036】
本発明の前記n個のサンプルにおける分子篩の含有量の変動係数≦15%は、分子篩が繊維表面に均一に分布されている(perfect homogeneity)と定義され、好ましくは、前記変動係数は≦10%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義され;好ましくは、前記変動係数は≦5%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義され;好ましくは、前記変動係数は≦2%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義され;好ましくは、前記変動係数は≦1%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義され;好ましくは、前記変動係数は≦0.5%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義され;より好ましくは、前記変動係数は≦0.2%であり、分子篩が繊維表面に均一に分布すると定義される。
【0037】
例えば、分子篩/繊維複合材料は異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、10個のサンプルで、分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が0.1wt%であり、変動係数が0.4%であることが求められ、前記分子篩が繊維表面に均一に分布すると考えられる(図11)。
【0038】
好ましくは、前記分子篩の粒径D90は0.1~30μmであり、前記分子篩の粒径D50は0.05~15μmであり、好ましくは、前記分子篩の粒径D90は0.5~20μmであり、前記分子篩の粒径D50は0.25~10μmであり、好ましくは、前記分子篩の粒径D90は1~15μmであり、前記分子篩の粒径D50は0.5~8μmであり、より好ましくは、前記分子篩の粒径D90は5~10μmであり、前記分子篩の粒径D50は2.5~5μmである。
【0039】
好ましくは、前記分子篩の繊維との接触面の接着剤の含有量は0である。
【0040】
好ましくは、前記分子篩と繊維との接触面は内表面であり、前記内表面は粗い平面であり、前記内表面において分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、これにより分子篩と繊維との結合作用が強くなる。前記分子篩と繊維との非接触面は外表面であり、前記外表面は非平面である。
【0041】
分子篩ミクロ粒子の溶液での従来の成長方式とは別に、分子篩ミクロ粒子の周囲は完全に均一な成長面を有し(図16)、前記成長マッチングカップリング(growth-matched coupling)は分子篩ミクロ粒子を繊維表面に合わせるために成長させた、繊維表面とマッチングする、密着結合したカップリング界面であり(図12)、これにより分子篩と繊維の結合作用が強くなる。
【0042】
前記成長マッチングカップリングの形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で20min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、これにより分子篩と繊維との結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0043】
好ましくは、前記成長マッチングカップリングの形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で40min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、これにより分子篩と繊維の結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0044】
好ましくは、前記成長マッチングカップリングの形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で60min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、これにより分子篩と繊維の結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0045】
好ましくは、前記内表面と外表面は、いずれも分子篩ナノ粒子で構成される。
【0046】
前記分子篩ナノ粒子は、分子篩がナノスケール(2~500nm)のサイズで成長して成形された粒子である。
【0047】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは、内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズよりも大きい。
【0048】
好ましくは、前記分子篩は前記繊維の表面に独立して分散され、すなわち分子篩は前記繊維の表面に凝集せず、繊維が本来の柔軟性と弾性の物理的特性を維持するように、繊維表面に独立して分散される。前記独立して分散されるとは、分子篩ミクロ粒子ごとに自身の独立した境界(boundary)を持つことをいい、図10aに示されるように、それぞれの分子篩ミクロ粒子の境界がはっきり見られる。
【0049】
一つの例として、分子篩が繊維表面に凝集している(例えば、分子篩が繊維表面に凝集している、又は塊状の構造に分布している)とは、分子篩ミクロ粒子とその最も隣接する分子篩ミクロ粒子とが空間的に一部又は全部重なっていること、すなわち、分子篩ミクロ粒子間の最小距離が、2つの分子篩ミクロ粒子の粒径の和の2分の1未満であることを意味する(図22(1)に示されるとおり、d<r+r)。
【0050】
分子篩の繊維表面での凝集とは別に、前記独立して分散されるとは、分子篩ミクロ粒子が互いに隙間が存在するように繊維表面に分散していることをいい、前記独立して分散されるとは、分子篩ミクロ粒子とその最も隣接する分子篩ミクロ粒子との間の最小距離が、2つの分子篩ミクロ粒子の粒径の和の2分の1以上であることをいい(図22(2)に示されるとおり、d≧r+r)、隣接する分子篩ミクロ粒子同士の間に存在する限界を示す。
【0051】
前記分子篩は前記繊維の表面に独立して分散されており、繊維の表面に凝集または塊状に分布されていないため、分子篩の繊維表面における均一な分布が促進される。
【0052】
好ましくは、前記分子篩/繊維複合材料において、分子篩全体が繊維の表面に分布される。
【0053】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子は角張った粒子である。
【0054】
好ましくは、前記内表面の分子篩ナノ粒子は角がとれている粒子である。前記角がとれているナノ粒子は、分子篩の内表面と繊維の表面とをよりよくマッチングさせ、分子篩と繊維の結合に有利である。
【0055】
好ましくは、前記内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは2~100nmであり、好ましくは、前記平均サイズは10~60nmである。
【0056】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは50~500nmであり、好ましくは、前記平均サイズは100~300nmである。
【0057】
好ましくは、前記非平面は、曲線又は直線で構成され、好ましくは、前記非平面は球面であり、前記球面は物質と接触する有効面積を向上させる。
【0058】
好ましくは、前記分子篩はメソポーラス分子篩である。
【0059】
好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の0.05~80wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の1~50wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の5~35wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の10~25wt%を占め、より好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の15~20wt%を占める。
【0060】
好ましくは、前記分子篩は、アルミノケイ酸塩分子篩、リン酸塩分子篩、ホウ酸塩分子篩、ヘテロ原子分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0061】
さらに、好ましくは、前記アルミノケイ酸塩分子篩は、X型分子篩、Y型分子篩、A型分子篩、ZSM-5分子篩、菱沸石、β分子篩、モルデナイト、L型分子篩、P型分子篩、メルリーノ沸石のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0062】
さらに、前記リン酸塩分子篩は、AlPO-5型分子篩、AlPO-11型分子篩、SAPO-31型分子篩、SAPO-34型分子篩、SAPO-11型分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0063】
さらに、前記ホウ酸塩分子篩は、BAC-1分子篩、BAC-3分子篩、BAC-10分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0064】
さらに、前記ヘテロ原子分子篩は、ヘテロ原子元素で分子篩の骨格における一部のケイ素、アルミニウム、リンを置換して形成されたその他の元素を含む分子篩である。
【0065】
さらに、前記ヘテロ原子分子篩は、第4、5、6周期の遷移元素の任意の一種または任意の複数種から選択されることができる。
【0066】
好ましくは、前記分子篩は金属イオン交換後の分子篩である。前記金属イオンは、ストロンチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、銅イオンのいずれか1種または複数種から選択される。
【0067】
好ましくは、前記繊維は、繰り返し単位中に水酸基を含むポリマーである。
【0068】
さらに、前記繊維は、絹繊維、キチン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、カルボキシメチルセルロース、竹繊維、綿繊維、亜麻布繊維、羊毛、木繊維、ラクチド重合体繊維、グリコリド重合体繊維、ポリエステル繊維(ポリエステル(PET)と略称される)、ポリアミド繊維(ナイロン(PA)と略称される)、ポリプロピレン繊維(PPと略称される)、ポリエチレン繊維(PE)、ポリ塩化ビニル繊維(PVCと略称される)、ポリアクリロニトリル繊維(アクリル、人造羊毛と略称される)、ビスコース繊維のいずれか1種または複数種から選択される。
【0069】
さらに、前記ポリエステル繊維とは、水酸基とカルボキシル基を併せ持つ単量体を重縮合させてなるポリエステル、または脂肪族二塩基酸と脂肪族ジオールを重縮合させてなるポリエステル、または脂肪族ラクトンを開環重合させてなるポリエステル又はコポリエステルをいい、脂肪族ポリエステルの分子量は50000~250000である。前記水酸基とカルボキシル基を併せ持つ単量体を縮重合させてなるポリエステルは、乳酸を介して直接重縮合してなるポリ乳酸であり、前記脂肪族二塩基酸と脂肪族ジオールを重縮合させてなるポリエステルは、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキシレンセバケート、ポリエチレンサクシネート又はポリヘキシレンサクシネートであり、脂肪族ラクトンを開環重合させてなるポリエステルはラクチドを開環重合させてなるポリ乳酸、カプロラクトンを開環重合してなるポリカプロラクトンであり、コポリエステルはポリエチレングリコールラクチドである。
【0070】
さらに、前記ポリアミド繊維は、ジアミンと二酸を重縮合させて得られるポリアジピン酸ヘキサメチレンジアミンを指し、その長鎖分子の化学構造式はH-[HN(CHNHCO(CHCO]n-OHであり、あるいはカプロラクタムを重縮合又は開環重合して得られるものを指し、その長鎖分子の化学構造式はH-[NH(CHCO]n-OHである。
【0071】
好ましくは、前記分子篩/繊維複合材料はイン・サイチュ成長法で製造される。
【0072】
好ましくは、前記イン・サイチュ成長法は以下のステップを含む:
1)分子篩前駆体溶液を調製し、その後繊維と混合する;
2)ステップ1)の繊維と分子篩前駆体溶液の混合物を熱処理して分子篩/繊維複合材料を得る。
【0073】
好ましくは、前記分子篩前駆体溶液はテンプレート剤を含まない。
【0074】
好ましくは、前記ステップ2)の熱処理の温度は60~220℃であり、時間は4~240hである。
【0075】
好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:0.5~1:1000であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:0.8~1:100であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:1~1:50であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:1.5~1:20であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:2~1:10であり、より好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:2~1:5である。
【0076】
従来技術の不足に対して、本発明が解決しようとする第二の技術的問題は、接着剤を添加しないことを前提として、繊維を分子篩が核生成、結晶成長する支持具とし、全く新しいテンプレート剤のないイン・サイチュ成長法で分子篩/繊維複合材料を合成する方法を提供することである。当該方法はコストが低く、過程が簡単で環境に優しいという特徴を有する。
【0077】
本発明では以下の技術方案を採用する。
【0078】
本発明は、以下のステップを含む前記分子篩/繊維複合材料の調製方法を提供し、
1)分子篩前駆体溶液を調製し、その後繊維と混合し、
2)ステップ1)の繊維と分子篩前駆体溶液の混合物を熱処理し、分子篩/繊維複合材料を得る。
【0079】
好ましくは、分子篩前駆体溶液はテンプレート剤を含まない。
【0080】
好ましくは、前記ステップ2)の熱処理の温度は60~220℃であり、時間は4~240hである。
【0081】
好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:0.5~1:1000であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:0.8~1:100であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:1~1:50であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:1.5~1:20であり、好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:2~1:10であり、より好ましくは、前記ステップ1)で繊維と分子篩前駆体溶液との質量比が1:2~1:5である。
【0082】
好ましくは、前記分子篩はメソポーラス分子篩である。
【0083】
製造された分子篩/繊維複合材料は、分子篩と繊維を含み、前記分子篩が繊維表面に分布し、且つ前記繊維表面に直接接触し、前記分子篩の粒径D90が0.01~50μmであり、前記分子篩の粒径D50が0.005~25μmであり、前記分子篩が繊維表面に均一に分布される(perfect homogeneity)。
【0084】
前記分子篩が繊維表面に均一に分布する(perfect homogeneity)ことを検出する方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料は異なる部位でn個のサンプルをランダムに取り、分子篩の繊維表面における含有量を分析する。nは8以上の正の整数である。変動係数(coefficient of variance)は、「標準偏差率」とも呼ばれ、標準偏差と平均値の比に100%を乗じたものである。変動係数はデータの分散の程度を反映した絶対値であり、変動係数の値が小さいほど、データの分散の程度が小さく、繊維表面の各所における分子篩の含有量の差が小さいほど、繊維表面における分子篩の分布が均一であることを示す。前記n個のサンプルにおける分子篩の含有量の変動係数は≦15%であり、前記変動係数は≦10%であり、好ましくは、前記変動係数は≦5%であり、好ましくは、前記変動係数は≦2%であり、好ましくは、前記変動係数は≦1%であり、好ましくは、前記変動係数は≦0.5%であり、より好ましくは、前記変動係数は≦0.2%である。
【0085】
好ましくは、前記分子篩の粒径D90が0.1~30μmであり、前記分子篩の粒径D50が0.05~15μmであり、好ましくは、前記分子篩の粒径D90が0.5~20μmであり、前記分子篩の粒径D50が0.25~10μmであり、好ましくは、前記分子篩の粒径D90が1~15μmであり、前記分子篩の粒径D50が0.5~8μmであり、より好ましくは、前記分子篩の粒径D90が5~10μmであり、前記分子篩の粒径D50が2.5~5μmである。
【0086】
好ましくは、分子篩と繊維との接触面の接着剤の含有量は0である。
【0087】
好ましくは、前記分子篩と繊維との接触面は内表面であり、前記内表面は粗い平面であり、前記内表面において分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、これにより分子篩と繊維との結合作用が強くなる。前記分子篩と繊維との非接触面は外表面であり、前記外表面は非平面である。
【0088】
好ましくは、前記成長マッチングカップリング形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で20min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、すなわち分子篩と繊維の結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0089】
好ましくは、前記成長マッチングカップリング形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で40min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、すなわち分子篩と繊維の結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0090】
好ましくは、前記成長マッチングカップリング形成の検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料を超音波洗浄器で60min以上超音波処理する条件下で、分子篩の繊維における保留率が90%以上、好ましくは、前記保留率が95%以上、より好ましくは、前記保留率が100%であり、すなわち分子篩と繊維の結合作用が強く、分子篩が繊維表面から脱落しにくい。
【0091】
好ましくは、前記内表面と外表面はいずれも分子篩ナノ粒子で構成される。
【0092】
前記分子篩ナノ粒子は、分子篩がナノスケール(2~500nm)のサイズで成長して成形された粒子である。
【0093】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは、内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズよりも大きい。
【0094】
好ましくは、前記分子篩は前記繊維の表面に独立して分散されている。前記分子篩が繊維表面に独立して分散されることにより、繊維を元の柔軟性および弾性の物理的特性を保持させる。
【0095】
分子篩の繊維表面における凝集(例えば、分子篩が繊維表面に凝集又は塊状構造で分布していること)とは、分子篩のミクロ粒子とその最も隣接する分子篩のミクロ粒子とが空間的に一部又は全部重なること、すなわち、分子篩のミクロ粒子間の最小距離が、二つの分子篩のミクロ粒子の粒子径の和の2分の1未満であることを意味する(図22、1)に示すとおり、d<r+r)。
【0096】
分子篩の繊維表面における凝集とは別に、前記独立して分散されるとは、分子篩のミクロ粒子間に隙間があるように繊維表面に分散することをいい、前記独立して分散されるとは、分子篩のミクロ粒子とその最も隣接する分子篩のミクロ粒子との間の最小距離が、2つの分子篩のミクロ粒子の粒子径の和の2分の1以上であることを指し(図22、2)に示すとおり、d≧r+r)、隣接する分子篩のミクロ粒子同士の間に存在する限界を示す。
【0097】
好ましくは、前記分子篩/繊維複合材料において、分子篩全体が繊維表面に分布されている。
【0098】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子は角張った粒子である。
【0099】
好ましくは、前記内表面の分子篩ナノ粒子は角がとれている粒子である。前記角がとれているナノ粒子は、分子篩の内表面と繊維の表面とをよりよくマッチングさせ、分子篩と繊維の化学結合に有利である。
【0100】
好ましくは、前記内表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは2~100nmであり、好ましくは、前記平均サイズは10~60nmである。
【0101】
好ましくは、前記外表面の分子篩ナノ粒子の平均サイズは50~500nmであり、好ましくは、前記平均サイズは100~300nmである。
【0102】
好ましくは、前記非平面は、曲線又は直線で構成され、好ましくは、前記非平面は球面であり、前記球面は物質と接触する有効面積を増加させる。
【0103】
好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の0.05~80wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の1~50wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の5~35wt%を占め、好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の10~25wt%を占め、より好ましくは、前記分子篩の含有量は分子篩/繊維複合材料の15~20wt%を占める。
【0104】
好ましくは、前記分子篩は、アルミノケイ酸塩分子篩、リン酸塩分子篩、ホウ酸塩分子篩、ヘテロ原子分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0105】
さらに、好ましくは、前記アルミノケイ酸塩分子篩は、X型分子篩、Y型分子篩、A型分子篩、ZSM-5分子篩、菱沸石、β分子篩、モルデナイト、L型分子篩、P型分子篩、メルリーノ沸石のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0106】
さらに、前記リン酸塩分子篩は、AlPO-5型分子篩、AlPO-11型分子篩、SAPO-31型分子篩、SAPO-34型分子篩、SAPO-11型分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0107】
さらに、前記ホウ酸塩分子篩は、BAC-1分子篩、BAC-3分子篩、BAC-10分子篩のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0108】
さらに、前記ヘテロ原子分子篩は、ヘテロ原子元素で分子篩の骨格における一部のケイ素、アルミニウム、リンを置換して形成されたその他の元素を含む分子篩である。
【0109】
さらに、前記ヘテロ原子分子篩は、第4、5、6周期の遷移元素の任意の一種または任意の複数種から選択することができる。
【0110】
好ましくは、前記分子篩は金属イオン交換後の分子篩である。前記金属イオンは、ストロンチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、銅イオンのいずれか1種または複数種から選択される。
【0111】
好ましくは、前記繊維は、繰り返し単位中に水酸基を含むポリマーである。
【0112】
さらに、前記繊維は、絹繊維、キチン繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維、カルボキシメチルセルロース、竹繊維、綿繊維、亜麻布繊維、羊毛、木繊維、ラクチド重合体繊維、グリコリド重合体繊維、ポリエステル繊維(ポリエステル(PET)と略称される)、ポリアミド繊維(ナイロン(PA)と略称される)、ポリプロピレン繊維(PPと略称される)、ポリエチレン繊維(PE)、ポリ塩化ビニル繊維(PVCと略称される)、ポリアクリロニトリル繊維(アクリル、人造羊毛と略称される)、ビスコース繊維のいずれか1種または複数種から選択される。
【0113】
さらに、前記ポリエステル繊維とは、水酸基とカルボキシル基を併せ持つ単量体を重縮合させてなるポリエステル、または脂肪族二塩基酸と脂肪族ジオールを重縮合させてなるポリエステル、または脂肪族ラクトンを開環重合させてなるポリエステル又はコポリエステルをいい、脂肪族ポリエステルの分子量は50000~250000である。前記水酸基とカルボキシル基を併せ持つ単量体を縮重合させてなるポリエステルは、乳酸を介して直接重縮合してなるポリ乳酸であり、前記脂肪族二塩基酸と脂肪族ジオールを重縮合させてなるポリエステルは、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキシレンセバケート、ポリエチレンサクシネート又はポリヘキシレンサクシネートであり、脂肪族ラクトンを開環重合させてなるポリエステルはラクチドを開環重合させてなるポリ乳酸、カプロラクトンを開環重合してなるポリカプロラクトンであり、コポリエステルはポリエチレングリコールラクチドである。
【0114】
さらに、前記ポリアミド繊維は、ジアミンと二酸を重縮合させて得られるポリアジピン酸ヘキサメチレンジアミンを指し、その長鎖分子の化学構造式はH-[HN(CHNHCO(CHCO]n-OHであり、あるいはカプロラクタムを重縮合又は開環重合して得られるものを指し、その長鎖分子の化学構造式はH-[NH(CHCO]n-OHである。
【0115】
本発明の第三の目的は、分子篩/繊維複合改質材料を提供することであり、前記改質材料は、添加剤、前記のいずれかの形態の分子篩/繊維複合材料、または前記のいずれかの形態の製造方法によって製造された分子篩/繊維複合材料を含む。
【0116】
好ましくは、前記添加剤は、金属、金属イオン含有化合物、合成高分子化合物、難溶性多糖、タンパク質、核酸、顔料、酸化防止剤、防カビ剤、洗浄剤、界面活性剤、抗生物質、抗菌剤、抗微生物剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤のいずれか1種または複数種から選択される。
【0117】
好ましくは、前記合成高分子化合物は、付加重合反応により得られる高分子化合物、重縮合反応により得られる高分子化合物、ポリアミド類高分子化合物、合成ゴム類高分子化合物のいずれか1種または複数種から選択することができる。
【0118】
好ましくは、前記タンパク質は、フィブリン、コラーゲン、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、合成酵素のいずれか1種又は複数種から選択することができる。
【0119】
好ましくは、前記トランスフェラーゼは、メチルトランスフェラーゼ、アミノトランスフェラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、硫酸転移酵素、キナーゼ、ポリメラーゼから選択することができる。
【0120】
好ましくは、加水分解酵素は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼのいずれか1種または2種以上から選択することができる。
【0121】
好ましくは、前記リアーゼは、脱水酵素、脱炭酸酵素、炭酸無水物酵素、アルドラーゼ、クエン酸シンターゼのいずれか1種または2種以上から選択することができる。
【0122】
好ましくは、前記合成酵素は、グルタミン合成酵素、DNAリガーゼ、ビオチン依存カルボキシラーゼのいずれか1種または2種以上から選択することができる。
【0123】
好ましくは、前記抗生物質は、キノロン系抗生物質、β-ラクタム系抗生物質、マクロライド系、アミノグリコシド系抗生物質のいずれか1種または複数種であってもよい。
【0124】
好ましくは、前記難溶性多糖は、天然かつ化学処理されていない高分子多糖であってもよく、前記高分子多糖はセルロース、リグニン、デンプン、キトサン、アガロースのいずれか一種又は任意の複数種から選択されてもよく、化学処理された改質高分子多糖であってもよく、前記改質高分子多糖はカルボキシル基改質高分子多糖、アミノ基改質高分子多糖、メルカプト基改質高分子多糖のいずれか一種又は任意の複数種から選択され、前記高分子多糖はセルロース、リグニン、デンプン、キトサン、アガロースのいずれか一種又は任意の複数種から選択されてもよい。本発明の前記難溶性多糖は、天然かつ化学処理されていない高分子多糖と化学処理された改質高分子多糖の混合物であってもよい。
【0125】
本発明の第四の目的は、前記のいずれかの形態の分子篩/繊維複合材料または前記のいずれかの形態の製造方法によって製造された分子篩/繊維複合材料を含む複合体を提供することである。
【0126】
好ましくは、前記複合体は止血材料である。
【0127】
好ましくは、前記止血材料は、止血織物(textile)である。
【0128】
さらに、前記止血織物は、止血包帯、止血ガーゼ、止血生地、止血服装、止血綿、止血縫合糸、止血紙、止血絆創膏のいずれか1種または複数種から選択される。
【0129】
さらに、前記止血服は、人が着用して保護や装飾の役割を果たす材料である。
【0130】
さらに、前記止血服は、止血下着、止血チョッキ、止血キャップ、止血ズボンのいずれか1種または複数種から選択される。
【0131】
好ましくは、前記複合体は耐放射線性材料である。
【0132】
さらに、前記耐放射線性材料は、耐放射線性衣類、耐放射線性傘、耐放射線性キャップのいずれか1種または複数種から選択される。
【0133】
好ましくは、前記複合体は抗菌材料である。
【0134】
本発明の第五の目的は、前記のいずれかの形態の分子篩/繊維複合改質材料の、止血、美容、脱臭、殺菌、水浄化、空気浄化、耐放射線性の分野での用途を提供することである。
【0135】
本発明の第六の目的は、止血、美容、脱臭、殺菌、水浄化、空気浄化、耐放射線性の分野における、前記のいずれかの形態の複合体の用途を提供することである。
【0136】
本発明の前記分子篩/繊維複合改質材料又は複合体は、止血、美容、脱臭、殺菌、水浄化、空気浄化、耐放射線分野に応用することができる。例えば、止血分野では、止血包帯、止血ガーゼ、止血生地、止血服などに製造され、突発的事故の救急治療、病院の患者に対する手術中の創傷止血の問題を解決することができる。水浄化において、本発明に記載の分子篩/繊維複合改質材料、または複合体の分子篩と繊維との結合が強固で、分子篩の大きな有効比表面積を維持するという特徴を利用して、浄化過程において分子篩と水とを直接十分接触させ、有害物質を吸収することにより水浄化の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0137】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0138】
1.本発明は、初めて分子篩/繊維複合材料において分子篩が繊維表面に凝集する問題を解決し、全く新しい分子篩/繊維複合材料を製造した。当該複合材料で、分子篩が適切なサイズ(分子篩の粒径D90は0.01~50μmであり、前記分子篩の粒径D50は0.005~30μmである)で繊維表面に均一に分布(perfect homogeneity)し、これにより複合材料の全体性能が一致性を保持させる。本発明の複合材料で、分子篩が繊維表面に分布し、繊維表面に直接接触し、分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、分子篩と繊維との結合が強固である。従来の複合材料に比べて、本発明は繊維に前処理を行う必要がなく、接着剤も添加しない。本発明の複合材料は分子篩が繊維表面に凝集して低い有効表面積、分子篩の目詰まりの欠陥を解決し、分子篩/繊維複合材料は比較的高い強度と弾性回復能力、寸法安定性を有し、これによって該複合材料は堅固で使用に耐える。本発明の分子篩/繊維複合材料は構造が簡単で、コストが低く、安定性が強く、性能再現性が高く、実用効率が高い。
【0139】
2.本発明では、初めて繊維を分子篩が核生成、結晶成長するブラケットとし、テンプレートのないイン・サイチュ成長法で分子篩/繊維複合材料を合成する方法を提供する。当該方法は、コストが低く、プロセスが簡単で環境に優しいという特徴を有し、非常に優れた技術的効果が得られる。
【0140】
3、本発明の前記分子篩/繊維複合改質材料又は複合体は、止血、美容、脱臭、殺菌、水浄化、空気浄化、耐放射線分野に応用できる。特に、その構造の安定性(分子篩と繊維との強固な結合)を利用し、使用が安全で、医療業界、特に止血業界において比較的良い応用展望を有し、分子篩/繊維複合改質材料又は複合体の分子篩の高い有効表面積と物質交換能力により、該材料は吸着、分離、触媒等の方面によりよく利用される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
図1】従来技術における繊維の前処理によって繊維構造が破壊されたことを示す模式図である。
図2】従来技術における繊維が前処理された分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像であり、そのうち分子篩は凝集の形で繊維表面を包んでいる(Journal of Porous Materials、1996、3(3):143-150)。
図3】従来技術における繊維が前処理された分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像であり、そのうち分子篩は凝集又は塊状の形態で繊維表面を包んでいる(Cellulose、2015、22(3):1813-1827)。
図4】従来技術における繊維が前処理された分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像であり、そのうち分子篩の一部分が凝集し且つ繊維表面に不均一に分布する(Journal of Porous Materials、1996、3(3):143-150)。
図5】従来技術における繊維が前処理された分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像であり、そのうち繊維と分子篩との間に隙間が存在する(Journal of Porous Materials、1996、3(3):143-150)。
図6】従来技術におけるポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドにより接着されたNa-LTA型分子篩/ナノセルロース繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像である(ACS Appl.Mater.Interfaces 2016、8、3032-3040)。
図7】従来技術におけるカチオンとアニオン性ポリマー接着剤により接着されたNaY型分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像である(Microporous&Mesoporous Materials、2011、145(1-3):51-58)。
図8】従来技術における混紡された分子篩/繊維複合材料の模式図である。
図9】従来技術における静電紡糸された分子篩/繊維複合材料の模式図である(米国特許第7390452号)。
図10】本発明の分子篩/繊維複合材料の走査電子顕微鏡画像である(測定パラメータSU80100 3.0kV;9.9mm)。
図11】分子篩の繊維表面における10箇所の異なる部位における分子篩/繊維複合材料の含有量を示す図である。
図12】本発明の分子篩/繊維複合材料に対応する繊維(a)及び分子篩(b)の走査電子顕微鏡画像(測定パラメータSU80100 3.0kV;9.9mm)であり、そのうち分子篩は複合材料から繊維を除去した後に得られたものであり、繊維は分子篩と複合する前のものである。
図13】本発明の分子篩/繊維複合材料の分子篩の内表面(分子篩と繊維の接触面)及び外表面の走査電子顕微鏡画像(測定パラメータSU80100 5.0kV;9.9mm)である。
図14】本発明の分子篩/繊維複合材料の分子篩の内表面(分子篩と繊維の接触面)と外表面のナノ粒子粒径の統計分布図である。
図15】本発明の分子篩/繊維複合材料の分子篩の窒素吸脱着等温線図である。そのうち、分子篩/繊維複合材料における分子篩はメソポーラス分子篩である。
図16】比較例1の分子篩の走査型電子顕微鏡画像である(測定パラメータSU80100 5.0kV;9.9mm)。
図17】本発明及び比較例2の分子篩/繊維複合材料の分子篩と繊維より形成された成長マッチングカップリングの結合強度への影響の模式図である。
図18】従来技術における接着剤により接着された分子篩/繊維複合材料の模式図であり、繊維、接着剤及び分子篩がサンドイッチに類似する構造を形成し、中間層は接着剤である。
図19】比較例11のZ-Medica合同会社(Z-Medica社)が商品化したコンバットガーゼ(Combat Gauze)の走査型電子顕微鏡画像である。
図20】従来技術の粘土/繊維複合材料の水溶液における写真である。
図21】従来技術の粘土/繊維複合材料の水溶液中で異なる時間での超音波処理における粘土保留率のグラフである。
図22】分子篩/繊維複合材料の繊維表面の隣接する分子篩ミクロ粒子の位置関係を示す模式図であり、そのうち、模式図1)は従来技術の複合材料における分子篩の繊維表面における凝集を示し、模式図2)は本発明の複合材料における分子篩が前記繊維表面に独立して分散されることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0142】
以下、図面と実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0143】
「イオン交換度(ion exchange capacity)」は、分子篩骨格外の補償カチオンと溶液カチオンの交換能力である。前記イオン交換能力の検出方法としては、5M濃度の塩化ストロンチウム、塩化カルシウムと塩化マグネシウム溶液で室温で12h浸漬し、イオン交換後の分子篩/繊維複合材料を得、分子篩のストロンチウムイオン、カルシウムイオンとマグネシウムイオン交換度を測定する。
【0144】
「分子篩の有効比表面積」は、分子篩/繊維複合材料の分子篩が繊維表面にあらわれる比表面積である。前記分子篩の有効比表面積の検出方法は以下のとおりである:窒素吸脱着等温線によって分子篩/繊維複合材料の比表面積を分析する。分子篩の有効比表面積=分子篩/繊維複合材料の比表面積-繊維の比表面積である。
【0145】
「繊維表面における分子篩の含有量」の検出方法:熱重量分析器を用いて繊維上の分子篩の質量分率を分析する。
【0146】
「分子篩が繊維表面に均一に分布する」ことの検出方法は以下のとおりである:前記分子篩/繊維複合材料は異なる箇所でn個のサンプルをランダムに取り、分子篩の繊維表面における含有量を分析し、nは8以上の正の整数である。変動係数(coefficient of variance)は、「標準偏差率」とも呼ばれ、標準偏差と平均値の比に100%を乗じたものである。変動係数はデータの分散の程度を反映した絶対値であり、変動係数の値が小さいほど、データの分散の程度が小さく、繊維表面の各所における分子篩の含有量の差が小さく、繊維表面における分子篩の分布が均一であることを示す。前記n個のサンプルにおいて分子篩の含有量の変動係数が15%以下であることは、分子篩が繊維表面に均一に分布していることを示す。好ましくは、前記変動係数が10%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示し、好ましくは、前記変動係数が5%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示し、好ましくは、前記変動係数が2%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示し、好ましくは、前記変動係数が1%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示し、好ましくは、前記変動係数が0.5%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示し、より好ましくは、前記変動係数が0.2%以下であり、分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【0147】
分子篩と繊維との間の結合強度の検出方法は以下のとおりである:分子篩/繊維複合材料を脱イオン水中で20min以上超音波処理し、熱重量分析器を利用して分子篩の繊維表面における含有量を分析し、超音波前後の分子篩の繊維表面における含有量を比較し、分子篩の繊維における保留率を算出する。前記保留率=(超音波処理前の分子篩の繊維表面における含有量-超音波処理後の分子篩の繊維表面における含有量)×100%/超音波処理前の分子篩の繊維表面における含有量である。もし、前記保留率が90%以上であれば、分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、分子篩と繊維との結合が強固であることを示す。
【0148】
D50とD90の検出方法としては、走査電子顕微鏡を用いて分子篩/繊維複合材料表面の分子篩ミクロ粒子を観察し、且つ粒度統計分析を行い、それぞれ、分子篩ミクロ粒子の分布百分率が50%に達する場合に対応する粒径と分布百分率が90%に達する場合に対応する粒径を求める。
【0149】
止血機能の検出方法:ウサギ大腿動脈致死モデル血液凝固実験を利用して止血機能を評価する。具体的なステップは以下のとおりである:(1)実験前に、ペントバルビタールナトリウムで静脈注射によりホワイトラビットに麻酔し(45mg/kg体重)、四肢と頭部を固定し、仰臥位で実験台に固定し、一部の毛髪を取り除き、後右肢の股間を露出させる。(2)次に、大腿動脈の皮膚と筋肉を縦方向に切断し、大腿動脈を露出させ、部分的に大腿動脈を切断する(周長の約2分の1)。大腿動脈を30s自由に噴血させた後、コットンガーゼで創傷部の血液をクリーニングし、その後速やかにそれぞれ止血材で動脈が切開された傷口に押し当て、手で圧迫することで止血し(計時を開始する)、60s圧迫した後、10s毎に止血材を少し持ち上げて創傷部の血液凝固状況を観察し、血液凝固時間を記録する。赤外線測温器で傷口の温度変化(止血材を用いた前後)を測定する。(3)血液が凝固した後、傷口の状況を観察し、傷口を縫合し、2h計時し、動物の生存状況を観察する。前記生存率=(実験したホワイトラビットの総数-止血後2h観察したホワイトラビットの死亡数)×100%/実験したホワイトラビットの総数(ここで各グループで実験するホワイトラビットの数はn匹であり、nは6以上の正の整数である)。(4)使用前後の止血複合体の質量の差を記録し、傷口の止血中の出血量とする。
【実施例1】
【0150】
本発明のY型分子篩/綿繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む:
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と綿繊維を、綿繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0151】
(2)綿繊維と均一に混合した分子篩前駆体溶液とを移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩/綿繊維複合材料を得た。
【0152】
得られたY型分子篩/綿繊維複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、熱重量分析装置によりY型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルの分子篩の繊維における含有量は、それぞれ、25wt%、24.9wt%、25.1wt%、25.2wt%、25wt%、25wt%、24.9wt%、25wt%、25.1wt%、24.9wt%であり、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が0.1wt%であり、変動係数が0.4%であり、前記Y型分子篩の繊維表面における分布が均一であることを示す。
【0153】
得られたY型分子篩/綿繊維複合材料を走査型電子顕微鏡で観察し、平均粒径が5μmである半球状の分子篩が独立して繊維表面に分散され(図10)、分子篩/繊維複合材料表面の分子篩ミクロ粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒度統計分析を行ったところ、粒径D90値で25μm、粒径D50値で5μmの値が得られた。焼却によって繊維が除去され、分子篩の繊維と接触している内表面は平面(繊維との結合が緊密であることに起因する)であり、外表面は球面であった。前記分子篩の内面の平面は粗面であった(図12)。分子篩の外表面は角張ったナノ粒子で構成され、内表面(繊維との接触面)は角がとれているナノ粒子で構成され(図13)、前記角がとれているナノ粒子は、分子篩の内表面と繊維の表面をよりよくマッチングさせ、分子篩と繊維の化学結合に有利であり、内表面のナノ粒子の平均サイズ(148nm)は外表面(61nm)より明らかに小さく、サイズの小さい粒子は繊維と結合して緊密になるという点で有利であった(図14)。分子篩と繊維との間の結合強度の検出方法は以下のとおりである:分子篩/繊維複合材料を脱イオン水中で20min超音波処理し、熱重量分析器を利用してY型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、分子篩の繊維表面における含有量が超音波処理前後で同じであることを発見したが、これは分子篩の繊維における保留率が100%であること、分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成されており、分子篩と繊維との結合が強固であることを示す。窒素吸脱着等温線によりY型分子篩/綿繊維止血複合材料中の分子篩を分析し、吸着等温曲線にヒステリシスループがあることを発見したが、これは前記分子篩がメソポーラス構造を有することを示す(図15)。上記のとおり前記分子篩の有効比表面積の検出方法を用いて、本実施例で得られたY型分子篩/綿繊維止血複合材料における分子篩の有効比表面積が490m-1であることが測定され、上記のとおり前記Y型分子篩/綿繊維止血複合材料における分子篩のイオン交換能力の検出方法を用いたところ、カルシウムイオン交換度が99.9%であり、マグネシウムイオン交換度が97%であり、ストロンチウムイオン交換度が90%であることが測定された。
【0154】
比較例1
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0155】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0156】
Y型分子篩の有効比表面積が490m-1、カルシウムイオン交換度が99.9%、マグネシウムイオン交換度が97%、ストロンチウムイオン交換度が90%であることが測定された。
【0157】
このY型分子篩の有効比表面積とイオン交換能力を参照値とし、後述する比較例の分子篩の繊維表面における性能を評価するのに用いた。本比較例と実施例1との違いは、繊維を添加しない条件(従来の溶液成長方式)で、Y型分子篩のみを合成し、走査電子顕微鏡(図16)を用いたところ、合成された分子篩はナノ粒子で構成された完全なミクロスフェアであり、実施例1との相違点は、繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことである。
【0158】
比較例2
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0159】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0160】
(3)上記Y型分子篩サンプルに脱イオン水を加え、Y型分子篩を水溶液に均一に分散させた。
【0161】
(4)綿繊維をステップ(3)で調製した溶液に浸漬し、30min浸漬した。
【0162】
(5)65℃で乾燥し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得た(浸漬法)。
【0163】
本比較例と実施例1との違いは以下のとおりである:繊維を添加しない条件(従来の溶液成長方式)で対応する分子篩を合成し、合成された分子篩はナノ粒子で構成された完全なミクロスフェアであり、走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点が繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、分子篩と繊維の表面に成長マッチングカップリングが存在しなかった(図17)。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(浸漬法)は超音波処理20minの条件下で、分子篩の繊維上の保留率が5%であり、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(浸漬法)における分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(浸漬法)の分子篩が脱落しやすいことを示す(図15)。
【0164】
比較例3
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0165】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0166】
(3)Y型分子篩サンプルに脱イオン水を加え、Y型分子篩を水溶液に均一に分散させた。
【0167】
(4)ステップ(3)で調製した溶液を綿繊維止血複合材料にスプレー塗装した。
【0168】
(5)65℃で乾燥し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得た(スプレー塗装法)。
【0169】
本比較例と実施例1との違いは、合成した分子篩を綿繊維にスプレー塗装することにあるが、走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点が繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、成長マッチングカップリングが存在しなかった。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記分子篩/繊維複合材料は超音波処理20minの条件で、分子篩の繊維上の保留率が2%であり、分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(スプレー塗装)の分子篩が脱落しやすいことを示す。
【0170】
比較例4
実験ステップの部分は参考文献(Acs Appl Mater Interfaces,2016,8(5):3032-3040)を参照した。
【0171】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0172】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0173】
(3)Y型分子篩を水溶液に均一に分散させた。
【0174】
(4)綿繊維を0.5wt%のポリジアリルジメチルアンモニウム塩化アンモニウムpolyDADMAC水溶液に60℃で30min浸漬し、Y型分子篩への吸着を実現した(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩化アンモニウムpolyDADMACは接着剤1である)。
【0175】
(5)65℃で乾燥し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得た(接着剤1を含む)。
【0176】
本比較例と実施例1との違いは、合成した分子篩を接着剤により綿繊維に接着することにある。走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点が繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、成長マッチングカップリングが存在しなかった。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記分子篩/繊維複合材料は超音波処理20minの条件で、分子篩の繊維上の保留率が50%であり、分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤1を含む)中の分子篩が脱落しやすいことを示す。走査電子顕微鏡で検出したところ、分子篩は繊維表面に不均一に分布し、分子篩の一部分の凝集現象があった。検出したところ、接着剤の添加により、分子篩の有効比表面積は320m-1、カルシウムイオン交換度は75.9%、マグネシウムイオン交換度は57%、ストロンチウムイオン交換度は50%となった。接着剤を添加した複合材料は、分子篩と反応系との有効接触面積を減少させ、分子篩のイオン交換及びチャンネル物質交換能力を低下させた。
【0177】
製造されたY型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤1を含む)を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、Y型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が10wt%であり、変動係数が40%であり、前記Y型分子篩の繊維表面における分布が不均一であることを示す。
【0178】
比較例5
実験ステップの部分は参考文献(Colloids&Surfaces B Biointerfaces,2018,165:199.)を参照した。
【0179】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0180】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0181】
(3)上記Y型分子篩をポリN-ハロアミン前駆体水(polymeric N-halamine precursor)/エタノール溶液中に分散させた(ポリN-ハロアミン前駆体は接着剤2である)。
【0182】
(4)ステップ(3)で調製した溶液を綿繊維止血複合材料にスプレー塗装した。
【0183】
(5)65℃で乾燥し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得た(接着剤2を含む)。
【0184】
本比較例と実施例1との違いは、接着剤を含んだ分子篩を綿繊維にスプレー塗装することにあった。走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点が繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、成長マッチングカップリングが存在しなかった。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記分子篩/繊維複合材料は超音波処理20minの条件で、分子篩の繊維上の保留率が41%であり、分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤2を含む)中の分子篩が脱落しやすいことを示す。走査電子顕微鏡で検出したところ、分子篩は繊維表面に不均一に分布し、分子篩の一部分の凝集現象があった。検出したところ、接着剤の添加により、分子篩の有効比表面積は256m-1、カルシウムイオン交換度は65.9%、マグネシウムイオン交換度は47%、ストロンチウムイオン交換度は42%となった。接着剤を添加した複合材料は、分子篩と反応系との有効接触面積を減少させ、分子篩のイオン交換及びチャンネル物質交換能力を低下させた。
【0185】
製造されたY型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤2を含む)を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、Y型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が4wt%であり、変動係数が16%であり、前記Y型分子篩の繊維表面における分布が不均一であることを示す。
【0186】
比較例6
実験ステップの部分は参考文献(Key Engineering Materials,2006,317-318:777-780)を参照した。
【0187】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0188】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0189】
(3)上記Y型分子篩のサンプルをシリカゾル系無機接着剤(接着剤3)溶液に分散させ、分子篩と接着剤の混合物スラリーを得た。
【0190】
(4)ステップ(3)で調製されたスラリーを綿繊維に塗布した後、室温で1h保温し、その後100℃で1h保温し、繊維を完全に乾燥させ、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(粘着剤3を含む)を得た。
【0191】
本比較例と実施例1との違いは、シリカゾル系無機接着剤を含んだ分子篩を綿繊維に塗布することにあった。走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点は繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、成長マッチングカップリングが存在しなかった。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記分子篩/繊維複合材料は超音波処理20minの条件で、分子篩の繊維上の保留率が46%であり、分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤3を含む)中の分子篩が脱落しやすいことを示す。走査電子顕微鏡で検出したところ、分子篩は繊維表面に不均一に分布し、分子篩の一部分に凝集現象があった。検出したところ、接着剤の添加により、分子篩の有効比表面積は246m-1、カルシウムイオン交換度は55.9%、マグネシウムイオン交換度は57%、ストロンチウムイオン交換度は40%となった。接着剤を添加した複合材料は、分子篩と反応系との有効接触面積を減少させ、分子篩のイオン交換及びチャンネル物質交換能力を低下させた。
【0192】
製造されたY型分子篩/綿繊維止血複合材料(接着剤3を含む)を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、Y型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が8.5wt%であり、変動係数が34%であり、前記Y型分子篩の繊維表面における分布が不均一であることを示す。
【0193】
比較例7
実験ステップの部分は参考文献(Journal of Porous Materials、1996、3(3):143-150.)を参照した。
【0194】
(1)繊維を化学的に予処理した。まず繊維をエチルエーテルで20min処理し、蒸留水中で10min超音波処理した。
【0195】
(2)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比7.5NaO:Al:10SiO:230HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成し、さらに1h磁気撹拌し、室温で24h放置した。当該分子篩前駆体溶液と前処理した綿繊維とを混合した。
【0196】
(3)綿繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を移し、100℃で6h熱処理し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得た(繊維前処理)。
【0197】
本比較例と実施例1の違いは、繊維に前処理を施した点であるが、繊維自体の構造を大きく破壊し、繊維の柔軟性、弾性などの特性に影響を与え、繊維が脆くなり、硬くなるなどの不具合が発生し、繊維を担体とする優位性を発揮できなかった。走査電子顕微鏡で検出したところ、分子篩が塊状に繊維の外層を包み、繊維と分子篩との間に依然として隙間が存在しており、これは該技術が分子篩と繊維の二種類の分離独立した材料を緊密に結合することができないことを示す。走査電子顕微鏡で検出したところ、実施例1との相違点が繊維と接触する粗い平面(内表面)がないことにあるため、成長マッチングカップリングが存在しなかった。分子篩と繊維との間の結合強度を検出したところ、前記分子篩/綿繊複合材料は超音波処理20minの条件で、分子篩の繊維上の保留率が63%であり、分子篩と繊維との結合作用が弱く、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料(繊維前処理)中の分子篩が脱落しやすいことを示す。検出したところ、分子篩の凝集や塊により、分子篩の有効比表面積は346m-1、カルシウムイオン交換度は53%、マグネシウムイオン交換度は52%、ストロンチウムイオン交換度は42%となり、分子篩と反応系との有効接触面積を減少させ、分子篩のイオン交換及びチャンネル物質交換能力を低下させた。
【0198】
製造されたY型分子篩/綿繊維止血複合材料(繊維前処理)を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、Y型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が9wt%であり、変動係数が36%であり、前記Y型分子篩の繊維表面における分布が不均一であることを示す。
【0199】
比較例8
実験ステップの部分は中国特許出願公報CN104888267Aを参照した。
【0200】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。
【0201】
(2)分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩を得た。
【0202】
(3)ポリウレタン尿素原液を調製した。
【0203】
(4)前記Y型分子篩をジメチルアセトアミド溶媒中で研磨し、Y型分子篩溶液を得た。
【0204】
(5)前記ポリウレタン尿素原液、前記Y型分子篩溶液を同時に反応容器に入れ、乾式紡糸プロセスによってスパンデックス繊維を製造し、最後にY型分子篩/スパンデックス繊維止血複合材料(混紡法)に編んだ。
【0205】
本比較例と実施例1との違いは、Y型分子篩を混紡して繊維に入れ、走査電子顕微鏡で測定したところ、分子篩と繊維が単に物理混合されている点であり、成長マッチングカップリングが存在しないことである。検出したところ、当該方法により分子篩の有効比表面積が126m-1、カルシウムイオン交換度が45.9%、マグネシウムイオン交換度が27%、ストロンチウムイオン交換度が12%となった。混紡法で分子篩/繊維止血複合材料を製造することは、有効分子篩と反応系の接触面積を大幅に減少させ、分子篩のイオン交換及び孔の物質交換能力を低下させた。
【0206】
比較例9
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と綿繊維を、綿繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:0.3で混合した。
【0207】
(2)綿繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を移し、100℃で24h熱処理し、Y型分子篩/綿繊維止血複合材料を得たが、Y型分子篩の含有量は90wt%であった。
【0208】
本比較例と実施例1との違いは、Y型分子篩の含有量が異なることにあり、本比較例のY型分子篩の含有量は80wt%を超え、走査電子顕微鏡で検出したところ、分子篩は塊状になって繊維表面を包み、独立して繊維表面に分散しておらず、これにより繊維が硬くなるという不具合が発生した。検出したところ、分子篩の凝集や塊により分子篩の有効比表面積が346m-1、カルシウムイオン交換度が53%、マグネシウムイオン交換度が52%、ストロンチウムイオン交換度が42%となり、有効比表面積とイオン交換能力がいずれも明らかに低下した。
【実施例2】
【0209】
本発明の菱沸石/綿繊維止血複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0210】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と綿繊維を、綿繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:0.5で混合した。
【0211】
(2)綿繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を80℃、36h熱処理し、菱沸石/綿繊維止血複合材料を得た。
【0212】
製造された菱沸石/綿繊維止血複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、菱沸石の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が2.5wt%であり、変動係数が10%であり、前記菱沸石が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例3】
【0213】
本発明のX型分子篩/絹繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0214】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比5.5NaO:1.65KO:Al:2.2SiO:122HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と絹繊維を、絹繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:10で混合した。
【0215】
(2)絹繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を100℃で12h熱処理し、X型分子篩/絹繊維複合材料を得た。
【0216】
製造されたX型分子篩/絹繊維複合材料を、異なる部位で8つのサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、8つのサンプルにおける分子篩の繊維における平均含有量が15wt%であり、サンプルの標準偏差が1.5wt%であり、変動係数が10%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例4】
【0217】
本発明のA型分子篩/ポリエステル繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0218】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比3NaO:Al:2SiO:120HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリエステル繊維を、ポリエステル繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:50で混合した。
【0219】
(2)ポリエステル繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を100℃で4h熱処理し、A型分子篩/ポリエステル繊維複合材料を得た。
【0220】
製造されたA型分子篩/ポリエステル繊維複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、A型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が50wt%であり、サンプルの標準偏差が7.5wt%であり、変動係数が15%であり、前記A型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例5】
【0221】
本発明のZSM-5分子篩/ポリプロピレン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0222】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比3.5NaO:Al:28SiO:900HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリプロピレン繊維を、ポリプロピレン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:200で混合した。
【0223】
(2)ポリプロピレン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を180℃で42h熱処理し、ZSM-5分子篩/ポリプロピレン繊維複合材料を得た。
【0224】
製造されたZSM-5分子篩/ポリプロピレン繊維複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、ZSM-5分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が30wt%であり、サンプルの標準偏差が1.5wt%であり、変動係数が5%であり、前記ZSM-5分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例6】
【0225】
本発明のβ分子篩/レーヨン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0226】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比2NaO:1.1KO Al:50SiO:750HO:3HClで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とレーヨン繊維を、レーヨン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:100で混合した。
【0227】
(2)レーヨン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を135℃で25h熱処理し、β分子篩/レーヨン繊維複合材料を得た。
【0228】
製造されたβ分子篩/レーヨン繊維複合材料を、8つのサンプルを異なる場所でランダムに取り、β分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、8つのサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が25wt%であり、サンプルの標準偏差が2wt%であり、変動係数が8%であり、前記ZSM-5分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例7】
【0229】
本発明のモルデナイト/アセテート繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0230】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比5.5NaO:Al:30SiO:810HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。分子篩前駆体溶液とアセテート繊維を、アセテート繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:300で混合した。
【0231】
(2)アセテート繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を170℃で24h熱処理し、モルデナイト/アセテート繊維複合材料を得た。
【0232】
製造されたモルデナイト/アセテート繊維複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、モルデナイトの繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が35wt%であり、サンプルの標準偏差が5.25wt%であり、変動係数が15%であり、前記モルデナイトが繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例8】
【0233】
本発明のL型分子篩/カルボキシメチルセルロース繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0234】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比2.5KO:Al:12SiO:155HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とカルボキシメチルセルロースを、カルボキシメチルセルロースの使用量と分子篩前駆体溶液の質量比1:1で混合した。
【0235】
(2)カルボキシメチルセルロースと均一な分子篩前駆体を混合した溶液を220℃で50h熱処理し、L型分子篩/カルボキシメチルセルロース繊維複合材料を得た。
【0236】
製造されたL型分子篩/カルボキシメチルセルロース繊維複合材料を、異なる部位で10個のサンプルをランダムに取り、L型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、10個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が10wt%であり、サンプルの標準偏差が0.2wt%であり、変動係数が2%であり、前記L型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例9】
【0237】
本発明のP型分子篩/竹繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0238】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:400HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と竹繊維を、竹繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:2で混合した。
【0239】
(2)竹繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を150℃で96h熱処理し、P型分子篩/竹繊維複合材料を得た。
【0240】
製造されたP型分子篩/竹繊維複合材料を、異なる部位で20個のサンプルをランダムに取り、P型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、20個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が80wt%であり、サンプルの標準偏差が4wt%であり、変動係数が5%であり、前記P型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例10】
【0241】
本発明のメルリーノ沸石/亜麻布繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0242】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:320HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と亜麻布繊維を、亜麻布繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:1000で混合した。
【0243】
(2)亜麻布繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を120℃で24h熱処理し、マカデライト/亜麻布繊維複合材料を得た。
【0244】
製造されたメルリーノ沸石/亜麻布繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、メルリーノ沸石の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が30wt%であり、サンプルの標準偏差が0.3wt%であり、変動係数が1%であり、前記メルリーノ沸石が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例11】
【0245】
本発明のX型分子篩/羊毛複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0246】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と羊毛を、羊毛の使用量と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0247】
(2)羊毛と均一に混合された分子篩前駆体溶液を60℃で16h熱処理し、X型分子篩/羊毛複合材料を得た。
【0248】
製造されたX型分子篩/羊毛複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が27wt%であり、サンプルの標準偏差が2.1wt%であり、変動係数が7.8%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例12】
【0249】
本発明のX型分子篩/木繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0250】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液と木繊維を、木繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:5で混合した。
【0251】
(2)木繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を90℃で24h熱処理し、X型分子篩/木繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は42wt%であった。
【0252】
製造されたX型分子篩/木繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が42wt%であり、サンプルの標準偏差が2.1wt%であり、変動係数が5%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例13】
【0253】
本発明のX型分子篩/ラクチド重合体繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0254】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とラクチド重合体繊維を、ラクチド重合体繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:50で混合した。
【0255】
(2)ラクチド重合体繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を90℃で30h熱処理し、X型分子篩/ラクチド重合体繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は26wt%であった。
【0256】
製造されたX型分子篩/ラクチド重合体繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が26wt%であり、サンプルの標準偏差が1.1wt%であり、変動係数が4.2%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例14】
【0257】
本発明のX型分子篩/グリコリド重合体繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0258】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とグリコリド重合体繊維を、グリコリド重合体繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:200で混合した。
【0259】
(2)グリコリド重合体繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を120℃で24h熱処理し、X型分子篩/グリコリド重合体繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は37wt%であった。
【0260】
製造されたX型分子篩/グリコリド重合体繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が37wt%であり、サンプルの標準偏差が0.2wt%であり、変動係数が0.5%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例15】
【0261】
本発明のX型分子篩/ポリラクチド-グリコリド重合体繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0262】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリラクチド-グリコリド重合体繊維を、ポリラクチド-グリコリド重合体繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0263】
(2)ポリラクチド-グリコリド重合体繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を熱処理して90℃で24h反応させ、X型分子篩/ポリラクチド-グリコリド重合体繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は20wt%であった。
【0264】
製造されたX型分子篩/ポリラクチド-グリコリド重合体繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が20wt%であり、サンプルの標準偏差が0.04wt%であり、変動係数が0.2%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例16】
【0265】
本発明のX型分子篩/ポリアミド繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0266】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリアミド繊維を、ポリアミド繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:0.8で混合した。
【0267】
(2)ポリアミド繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を90℃で24h熱処理し、X型分子篩/ポリアミド繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は50wt%であった。
【0268】
製造されたX型分子篩/ポリアミド繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析し、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が50wt%であり、サンプルの標準偏差が2wt%であり、変動係数が4%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例17】
【0269】
本発明のX型分子篩/レーヨン-ポリエステル繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0270】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とレーヨン-ポリエステル繊維を、レーヨン-ポリエステル繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:50で混合した。
【0271】
(2)レーヨン-ポリエステル繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を110℃で28h熱処理し、X型分子篩/レーヨン-ポリエステル繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は5wt%であった。
【0272】
製造されたX型分子篩/レーヨン-ポリエステル繊維複合材料を、異なる部位で8つのサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、8つのサンプルにおける分子篩の繊維における平均含有量が5wt%であり、サンプルの標準偏差が0.05wt%であり、変動係数が1%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例18】
【0273】
本発明のX型分子篩/キチン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0274】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比10NaO:Al:9SiO:300HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とキチン繊維を、キチン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:1.5で混合した。
【0275】
(2)キチン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を90℃で24h熱処理し、X型分子篩/キチン繊維複合材料を得た。X型分子篩の含有量は20wt%であった。
【0276】
製造されたX型分子篩/キチン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、X型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が20wt%であり、サンプルの標準偏差が2.5wt%であり、変動係数が12.5%であり、前記X型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例19】
【0277】
本発明のAlPO-5型分子篩/ポリエチレン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0278】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比Al:1.3P:1.3HF:425HO:6COHで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリエチレン繊維を、ポリエチレン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0279】
(2)ポリエチレン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を180℃で6h熱処理し、AlPO-5型分子篩/ポリエチレン繊維複合材料を得た。AlPO-5型分子篩の含有量は18wt%であった。
【0280】
得られたAlPO-5型分子篩/ポリエチレン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、AlPO-5型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が18wt%であり、サンプルの標準偏差が2.5wt%であり、変動係数が13.9%であり、前記AlPO-5型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例20】
【0281】
本発明のAlPO-11型分子篩/ポリ塩化ビニル繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0282】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比Al:1.25P:1.8HF:156HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリ塩化ビニル繊維を、ポリ塩化ビニル繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:0.5で混合した。
【0283】
(2)ポリ塩化ビニル繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を145℃で18h熱処理し、AlPO-11型分子篩/ポリ塩化ビニル繊維複合材料を得た。AlPO-11型分子篩の含有量は28wt%であった。
【0284】
得られたAlPO-11型分子篩/ポリ塩化ビニル繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、AlPO-11型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が28wt%であり、サンプルの標準偏差が2wt%であり、変動係数が7.1%であり、前記AlPO-11型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例21】
【0285】
本発明のSAPO-31型分子篩/ポリアクリロニトリル繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0286】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比Al:P:0.5SiO:60HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とポリアクリロニトリル繊維を、ポリアクリロニトリル繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:1000で混合した。
【0287】
(2)ポリアクリロニトリル繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を175℃で14.5時間熱処理し、SAPO-31型分子篩/ポリアクリロニトリル繊維複合材料を得た。SAPO-31型分子篩の含有量は34wt%であった。
【0288】
製造されたSAPO-31型分子篩/ポリアクリロニトリル繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、SAPO-31型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が34wt%であり、サンプルの標準偏差が5wt%であり、変動係数が14.7%であり、前記SAPO-31型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例22】
【0289】
本発明のSAPO-34型分子篩/ビスコース繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0290】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比Al:1.06P:1.08SiO:2.09モルホリン:60HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とビスコース繊維を、ビスコース繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0291】
(2)ビスコース繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を175℃で14.5時間熱処理し、SAPO-34型分子篩/キチン繊維複合材料を得た。SAPO-34型分子篩の含有量は1wt%であった。
【0292】
製造されたSAPO-34型分子篩/ビスコース繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、SAPO-34型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が1wt%であり、サンプルの標準偏差が0.01wt%であり、変動係数が1%であり、前記SAPO-34型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例23】
【0293】
本発明のSAPO-11型分子篩/キチン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0294】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比Al:P:0.5SiO:60HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とキチン繊維を、キチン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:1.5で混合した。
【0295】
(2)キチン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を175℃で48h熱処理し、SAPO-11型分子篩/キチン繊維複合材料を得た。SAPO-11型分子篩の含有量は35wt%であった。
【0296】
製造されたSAPO-11型分子篩/キチン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、SAPO-11型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が35wt%であり、サンプルの標準偏差が1.5wt%であり、変動係数が5%であり、前記SAPO-11型分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例24】
【0297】
本発明のBAC-1分子篩/キチン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0298】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比で1.5B:2.25Al:2.5CaO:200HOを出発原料とし、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とキチン繊維を、キチン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:100で混合した。
【0299】
(2)キチン繊維と均一に混合された分子篩ス前駆体溶液を200℃で72h熱処理し、BAC-1分子篩/キチン繊維複合材料を得た。BAC-1分子篩の含有量は0.5wt%であった。
【0300】
製造されたBAC-1分子篩/キチン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、BAC-1分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が0.5wt%であり、サンプルの標準偏差が0.04wt%であり、変動係数が8%であり、前記BAC-1分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例25】
【0301】
本発明のBAC-3分子篩/キチン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0302】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比3B:Al:0.7NaO:100HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。分子篩前駆体溶液とキチン繊維を、キチン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:2で混合した。
【0303】
(2)キチン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を200℃で240h熱処理し、BAC-3分子篩/キチン繊維複合材料を得た。BAC-3分子篩の含有量は27wt%であった。
【0304】
製造されたBAC-3分子篩/キチン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、BAC-3分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が27wt%であり、サンプルの標準偏差が0.08wt%であり、変異係数が0.3%であり、前記BAC-3分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【実施例26】
【0305】
本発明のBAC-10分子篩/キチン繊維複合材料の製造方法は、以下のステップを含む。
【0306】
(1)分子篩前駆体溶液を調製し、下記のモル比2.5B:2Al:CaO:200HOで出発原料を構成し、分子篩前駆体溶液を合成した。当該分子篩前駆体溶液とキチン繊維を、キチン繊維と分子篩前駆体溶液の質量比1:20で混合した。
【0307】
(2)キチン繊維と均一に混合された分子篩前駆体溶液を160℃で72h熱処理し、BAC-10分子篩/キチン繊維複合材料を得た。BAC-10分子篩の含有量は21wt%であった。
【0308】
製造されたBAC-10分子篩/キチン繊維複合材料を、異なる部位で15個のサンプルをランダムに取り、BAC-10分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、15個のサンプルにおいて分子篩の繊維における平均含有量が21wt%であり、サンプルの標準偏差が0.9wt%であり、変動係数が4.2%であり、前記BAC-10分子篩が繊維表面に均一に分布することを示す。
【0309】
比較例10と11
米国会社のZ-Medica社から市販されている顆粒状の分子篩材料(Quikclot)と、市販のコンバットガーゼ(Combat Gauze)とを商業的に入手し、それぞれ比較例10および11とした。ウサギ大腿動脈致死モデル血液凝固実験を利用して材料の止血機能を評価した。
【0310】
そのうち、市販のコンバットガーゼ(Combat Gauze)は、繊維表面に無機止血材(クレー、カオリンkaolin)が付着したものである。走査型電子顕微鏡で観察すると、無機止血材は繊維表面に偏在しており(図20)、繊維表面と結合せず、繊維表面からきわめて脱落しやすい。超音波洗浄器で1min超音波処理する条件で、粘土のガーゼ繊維上の保留率は10%以下であり、5min超音波処理する条件で、粘土のガーゼ繊維上の保留率は5%以下であり(図21)、20min超音波処理する条件で、粘土のガーゼ繊維上の保留率は5%以下であった。この欠陥のある構造形態は、当該止血製品の止血性能を制限し、後遺症または他の副作用を誘発するリスクが潜伏している。
【0311】
分子篩/繊維複合材料における適切なサイズの分子篩は、分子篩の繊維表面における均一な分布を促進することができる。走査電子顕微鏡観察による実施例1~26で合成された複合材料における分子篩のサイズ及び内外表面のナノ粒子の平均粒径の統計を表1に示す。分子篩と繊維との結合強度を評価するために、実施例1~26で合成された分子篩/繊維複合材料を脱イオン水中でそれぞれ20、40、60、80min超音波処理し、検出された分子篩の繊維における保留率を表2に示す。本発明の分子篩/繊維複合材料中の分子篩の繊維における良好な構造及び性能を説明するために、検出された実施例1~26で合成された分子篩/繊維複合材料の分子篩の有効比表面積及びイオン交換能力を表3に示す。複合材料が優れた止血性能を有することを説明するために、ウサギ大腿動脈致死モデル凝血実験を利用して実施例1~26で合成された分子篩/繊維複合材料及び比較例の止血材の止血機能を評価し、観察及び検出した結果、止血性能の統計データを表4に示す。
【0312】
【表1-1】
【表1-2】
【0313】
【表2-1】
【表2-2】
【0314】
【表3-1】
【表3-2】
【0315】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【0316】
以上の結果により、以下のことがわかる。実施例1~26は異なる分子篩と異なる繊維より合成された分子篩/繊維複合材料を列挙する。合成された分子篩/繊維複合材料は、いずれも分子篩が適切なサイズで繊維表面に均一に分布するという特徴を有し、繊維性能を全体的に均一に保持させる。実施例1~26の分子篩/繊維複合材料の分子篩と繊維が接触する内表面は粗い平面であり、分子篩/繊維複合材料を脱イオン水中で≧20min超音波処理し、熱重量分析器を利用してY型分子篩の繊維表面における含有量を分析したところ、前記保留率は≧90%であり、分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、分子篩と繊維が強固に結合することを示す。本発明の実施例1~26で、分子篩と繊維の接触面の接着剤の含有量は0であり、分子篩のカルシウムイオン交換度≧90%、マグネシウムイオン交換度≧75%、ストロンチウムイオン交換度≧70%であり、接着剤によって繊維に付着する高い合成コスト、低い有効表面積、分子篩の目詰まりという欠陥を克服している。また、前記分子篩は独立して繊維表面に分散され、分子篩が繊維表面に均一に分布することを促進し、前記分子篩の内表面はいずれも角がとれているナノ粒子で構成され、角がとれているナノ粒子は分子篩の内表面と繊維の表面をよりよくマッチングさせ、分子篩と繊維の結合に有利である。分子篩/繊維複合材料を合成する方法はテンプレート剤を含まず、前記分子篩はメソポーラス分子篩であり、当該方法はコストが低く、プロセスが簡単で環境に優しいという特徴を有する。
【0317】
本発明はさらに分子篩/繊維複合材料の止血材料を提供し、分子篩/繊維複合材料の止血材料は分子篩顆粒の止血材料に対する分子篩の使用量が減少するが、分子篩/繊維複合材料の止血材料の止血効果は商業化されている顆粒状分子篩材料(Quikclot)より優れ、さらに、吸水発熱と安全性の問題を解決した。分子篩は適切なサイズで繊維表面に均一に分布し、分子篩と繊維との間に成長マッチングカップリングが形成され、分子篩と繊維との結合作用が強く、分子篩が繊維表面において高い有効比表面積と物質交換能力を有し、これにより本発明の止血材料の止血過程における止血効果は、従来技術における分子篩と繊維との結合能力が弱い、又は有効比表面積と物質交換能力が低い複合材料より優れ、ウサギ大腿動脈致死モデル血液凝固実験の止血時間が短く、失血量が低く、生存率が顕著に向上し、且つ分子篩/繊維複合材料の止血過程における安全性が確保される。また、分子篩/繊維複合材料は、止血材料としてさらに以下の利点がある:1)止血後の創傷面がクリーニングしやすく、専門家による後処理に便利である;2)傷口の大きさと実際の操作に応じて裁断することが可能である;3)止血後の傷口が乾燥し、癒合が良好である。
【0318】
以上の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。また、当業者は、本発明の教示内容に接した後、本発明に対して様々な変更や修正を行うことができ、それらの同等形態も同様に本出願の特許請求の範囲に規定された範囲内にあることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
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図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20
図21
図22