(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸着材、二酸化炭素吸着装置、その製造方法、及び二酸化炭素吸着方法。
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20230606BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20230606BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20230606BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20230606BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230606BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230606BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
B01J20/22 A
B01J20/30
B01J20/34 E
B01J20/34 F
C07F7/18 M
(21)【出願番号】P 2022180323
(22)【出願日】2022-11-10
【審査請求日】2022-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390020215
【氏名又は名称】株式会社西部技研
(72)【発明者】
【氏名】藤 章裕
(72)【発明者】
【氏名】馬見塚 璃奈
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和行
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏志
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107899545(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108993413(CN,A)
【文献】特開2019-147099(JP,A)
【文献】国際公開第2022/102683(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0137725(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0110645(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0260561(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0169027(US,A1)
【文献】特開2006-051486(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074270(WO,A1)
【文献】特開2015-113337(JP,A)
【文献】Journal of the American Chemical Society,2018年,140,18016-18031
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/18、
53/34-53/85、
53/92、53/96
B01J 20/20-20/28、
20/30-20/34
C07F 7/18
C01B 32/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1級アミノ基からなる第1アミノ基と
、
第2級アミノ基又は第3級アミノ基からなる第2アミノ基と、
前記第1アミノ基と前記第2アミノ基とを連結する、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換された、炭素数2~6の直鎖アルキレンと、
を含むアミン化合物
であって、
前記アミン化合物が、
炭素数1~6のアルコキシ基により置換されたケイ素原子と、
前記ケイ素原子と、前記第2アミノ基中の窒素原子と、を連結する、炭素数1~6の直鎖アルキレンと、を含み、
二酸化炭素の吸着処理の際に、前記直鎖アルキレンの一部を置換する前記アルキル基によって、前記第1アミノ基と前記第2アミノ基のアミノ基間で、二酸化炭素分子が立体的に接近し難い最適な立体障害を形成することにより、酸素共存下において経年劣化の発生を抑制し、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対して高い耐久性を持つことを特徴とする
二酸化炭素吸着材。
【請求項2】
請求項
1に記載の二酸化炭素吸着材において、
前記アミン化合物が、以下の一般式(1)で表されるアミン化合物であることを特徴とする
二酸化炭素吸着材。
【化1】
[式中、R
1は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R
21m及びR
22mは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~3の直鎖状のアルキル基もしくは炭素数3~4の分岐状のアルキル基であり、R
21m及びR
22mのうち少なくともいずれか1つが、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、R
31、R
32、及びR
33は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルコキシ基もしくは炭素数1~6のアルキル基であり、R
31、R
32、及びR
33のうち少なくともいずれか1つがアルコキシ基であり、
mは2~6の自然数であり、nは1~6の自然数である]
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の二酸化炭素吸着材を、シリカ、バーミキュライト、活性炭、アルミナ、アルミノシリケート、珪藻土、多孔性ガラス、多孔性樹脂、多孔性繊維、及びゼオライトからなる群から選択される基材に固定されてなる吸着部を備え、
前記アミン化合物に二酸化炭素含有ガスを接触させて、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離させることを特徴とする
二酸化炭素吸着装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の二酸化炭素吸着装置において、
前記吸着部が、二酸化炭素吸着材をシランカップリング反応、含浸、蒸発乾固その他の接着により前記基材に担持されてなることを特徴とする
二酸化炭素吸着装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の二酸化炭素吸着装置において、
前記吸着部が固定されたフィルタからなるフィルタ部を備えることを特徴とする
二酸化炭素吸着装置。
【請求項6】
請求項
3の二酸化炭素吸着装置を製造する製造方法であって、
前記二酸化炭素吸着材を、噴霧、浸漬、塗布、又はシランカップリング反応、含浸、蒸発乾固その他の接着を用いて前記基材に担持させる担持工程を含むことを特徴とする
二酸化炭素吸着装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
3の二酸化炭素吸着装置に、二酸化炭素含有ガスを流通させて、二酸化炭素を吸着させる吸着工程を含むことを特徴とする
二酸化炭素吸着方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の二酸化炭素吸着方法において、
前記吸着工程により二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材を加熱又は減圧し、二酸化炭素を放出させる再生工程を含むことを特徴とする
二酸化炭素吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の二酸化炭素を吸着する二酸化炭素吸着材に関し、特に、経年劣化を抑制して耐久性を向上させた二酸化炭素吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多方面で空気清浄へのニーズが高い。例えば、二酸化炭素を除去して、清浄な空気を居住空間に維持することへのニーズがある。また、大気に放出される燃焼排気ガス中の二酸化炭素を吸着して空気清浄できる材料のニーズも高い。
【0003】
その一方で、植物の生育にとっては、二酸化炭素の供給が必要である。特にビニルハウスなどでは昼間、温度上昇を避けるための換気時を除いて、閉め切っている場合が多く、ビニルハウスなどで栽培されるイチゴやトマトなどの栽培植物の生育に必要な二酸化炭素が不足しがちとなる。
【0004】
さらに、ビニルハウスなどで栽培される栽培植物は、日中光合成により、二酸化炭素を吸収しており、葉の周りの二酸化炭素濃度が大気の二酸化炭素濃度(約400ppm)よりも下がってきてしまう。
【0005】
この場合、栽培植物の光合成が抑制されて、栽培植物の収穫量や糖度などが下がってしまうため、二酸化炭素を外部から強制的に供給して栽培植物の収穫量を向上させるという処理が行われている。具体的には、二酸化炭素の供給方法としては、灯油などを燃焼させる方法や液化炭酸ガスボンベによる供給がなされている。
【0006】
しかし、このような従来の二酸化炭素の供給方法は、環境中の二酸化炭素を増大させるもので、カーボンニュートラル等の二酸化炭素の削減方針とは相反する方向性であることから、よりクリーンな二酸化炭素の供給方法が求められている。
【0007】
出願人は、このような社会的ニーズに応えるべく、環境にやさしく、交換などの手間を必要としない、クリーンなガスを供給することを目的として、従来からハニカムロータを用いた二酸化炭素供給装置を開発してきた。
【0008】
例えば、出願人がこれまでに開発した従来の二酸化炭素供給装置としては、二酸化炭素吸収機能を持つ二酸化炭素吸着材などを保持した二酸化炭素除去ロータを有し、前記二酸化炭素除去ロータを少なくとも吸着ゾーンと脱離ゾーンとに分け、前記吸着ゾーンに処理対象空気を通風することで、前記処理対象空気に含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素除去ロータ部分の保持吸収剤に吸収させて分離除去して供給先に給気し、前記脱離ゾーンでは、全熱交換器で前記脱離ゾーンからの再生排気の潜熱と顕熱を回収した再生用空気を通風することで、前記保持吸収剤が前記吸着ゾーンで吸収した二酸化炭素を脱離させることによって、前記保持吸収剤を再生するようにした二酸化炭素吸収式除去・濃縮装置がある(特許文献1参照)。
【0009】
このような二酸化炭素吸収式除去・濃縮装置では、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどの有機系吸収剤、或いはアミン系の弱塩基性陰イオン交換樹脂、アミンを担持した活性炭やシリカゲルやメソポーラスシリカなどのアミン担持固体吸収剤(以下、「アミン化合物」という。)が、二酸化炭素を吸収できる性質を利用して、二酸化炭素吸着材として使用されている。
【0010】
当該アミン化合物に吸収された二酸化炭素を脱離するために、一般にアミン化合物は加熱される。しかし、この加熱によって、アミン化合物を構成するアミノ基が酸化又は脱離してしまう。つまり、アミン化合物を使った二酸化炭素吸着材は、長期間使用することで、経年的な酸化等により容易に劣化してしまい、二酸化炭素の吸収・脱離特性が低下してしまう。
【0011】
アミン化合物の酸化を抑制する手法も研究されており、例えば、窒素雰囲気を形成する手法によって、アミン化合物の酸化が抑制されることが知られている(非特許文献1参照)。また、例えば、酸化防止剤を混合する手法によって、アミン化合物の酸化が抑制されることも知られている(非特許文献2参照)。
【0012】
しかし、一般に、二酸化炭素吸収式除去・濃縮装置では、大気中で二酸化炭素の吸収・脱離を行い酸素共存下が使用前提となっているため、上記非特許文献1や非特許文献2のようにアミン化合物の使用条件を変更させる手法は適用することができず、実効的ではない。
【0013】
そのため、それ自体で二酸化炭素吸着材として優れた特性を発揮できるアミン化合物の新素材開発が盛んになされている。
【0014】
アミン化合物の性質としては、一般に、アミノ基が関与する化学反応によって、大気圧下で二酸化炭素を吸収・脱離している。しかし、アミノ基単独では二酸化炭素吸収量が十分ではない。そのため、大気中の二酸化炭素をより効率的に吸収・脱離するために、従来の二酸化炭素吸着材では、複数の第1級アミノ基や第2級アミノ基を含むアミン化合物が主として使用されている。
【0015】
例えば、従来の二酸化炭素吸着材としては、環状アミジン部分又は鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物(例えば、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-2-イミダゾリン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1-[3-(シラトラニル)プロピル]-2-イミダゾリン、又は1-[3-(シラトラニル)プロピル]-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン)を含むものが知られている(特許文献2参照)。
【0016】
また、例えば、従来の二酸化炭素吸着材としては、少なくとも第1級アミノ基を含む官能基が結合した化学構造を有し、繰り返し二酸化炭素を吸着し且つ加熱されることにより放出する高分子化合物を含み、多孔質状に形成され、乾燥状態における10%変形時応力dと、湿潤状態における10%変形時応力wとの比率d/wが、1以上10以下の範囲の値であるものが知られている(特許文献3参照)。
また、例えば、従来の二酸化炭素吸着材としては、下記一般式で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミン化合物と担体を含む組成物を用いるものもある(以下の式中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは、0又は1を表す。R
9は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を表す。R
10及びR
11は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレンを表す。)(特許文献4参照)。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2020-89891号公報
【文献】特許第5498717号
【文献】特開2022-122253号公報
【文献】特開2022-154003号公報
【非特許文献】
【0018】
【文献】Energy Fuels, (米), 2019, Vol.33, p.3370‐3379
【文献】Industrial & Engineering Chemistry Research, (米), 2019, Vol.58, p.15598‐15605
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、従来の二酸化炭素吸着材は、第1級アミノ基と第2級アミノ基の双方を含むアミン化合物であっても、酸素が含まれる大気雰囲気下で使用すると、この第1級アミノ基と第2級アミノ基間の反応性によって、アミノ基の酸化や脱離が起きる結果、分解されやすい。
【0020】
例えば、上記特許文献2の請求項2に記載された以下一般式に示されるように、従来の二酸化炭素吸着材を構成するアミン化合物は、アミノ基間に二重結合が存在している。この二重結合を形成しているπ結合は、電子密度が相対的に高い。そのため、ラジカル反応によって切断が起きやすい構造となっている。
上記特許文献2の請求項2に記載の一般式:
【0021】
【0022】
上記式中、R21は、水素原子又は炭素数1~27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基である。
【0023】
また、例えば、上記特許文献3の
図7に記載された以下化合物57に示されるように、従来の二酸化炭素吸着材を構成するアミン化合物は、2つのアミノ基間にC=S二重結合が存在している。このC=S二重結合を形成しているπ結合は、電子密度が相対的に高い。そのため、ラジカル反応によって切断が起きやすい構造となっている。
上記特許文献3の
図7の化合物57:
【0024】
【0025】
この他にも、上記とは異なり、アミノ基間に二重結合が存在しないものもある。例えば、従来の二酸化炭素吸着材を構成するアミン化合物は、上記特許文献3の
図8に記載された以下化合物67のように、2つのアミノ基を接続するアルキレン(メチレン)上に二重結合が存在しないものもある。
上記特許文献3の
図8の化合物67:
【0026】
【0027】
しかし、この場合には、2つのアミノ基を接続するアルキレン(例えば、メチレン)自体が、今度は、以下のホフマン脱離(A)の進行によって、切断されやすい構造となっている。
【0028】
【0029】
より具体的には、従来の二酸化炭素吸着材(例えば上記化合物67)では、2つのアミノ基を接続するアルキレン(例えば、メチレン)上に二重結合が存在しないことから、二酸化炭素吸着処理の過程において、末端のアミノ基に二酸化炭素由来のカルボニル基が付加した酸アミド化合物が化学平衡状態で存在している。
【0030】
この化学平衡状態で存在する酸アミド化合物に対してさらに反応が進行し、この酸アミド化合物からアミドのカルボニル基が脱離して、他方のアミンが分離する(ホフマン脱離)。すなわち、二酸化炭素を吸着する過程において、このホフマン脱離(A)の進行によって、従来の二酸化炭素吸着材は分解されてしまう。特許文献4のアミノ化合物も、上記のようにアミノ基間に二重結合が存在しない構造であるが、上記特許文献3と同様の事象が起きる。
【0031】
また、従来の二酸化炭素吸着材では、上記特許文献2、3及び4に示されるように、アミン化合物のうち特にアミノシランとして、シリカゲルやメソポーラスシリカ等の高比表面積の担体に担持して使用されることもあるが、二酸化炭素の吸着と脱離が一層加速されるため、上記アミン化合物では、アミン化合物が酸化・脱離される頻度も加速され、二酸化炭素の吸着、脱離性能が加速的に低下してしまう。
【0032】
このように、従来の二酸化炭素吸着材は、アミン化合物の構造上、二酸化炭素の吸着・脱離を繰り返すことで、容易に経年劣化してしまうという耐久性に課題があった。
【0033】
そのため、酸素共存下においても、二酸化炭素の吸着・脱離特性が低下しにくいアミン化合物で構成される二酸化炭素吸着材が求められているが、現在のところ、そのような優れた二酸化炭素吸着材は知られていない。
【0034】
本発明は、如上の課題を解決するためになされたものであり、経年劣化の発生を抑制し、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対しても高い耐久性を発揮できる二酸化炭素吸着材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明者らは、鋭意研究の結果、二酸化炭素吸着材となり得るアミン化合物の化学構造に工夫を凝らし、経年劣化の発生を抑制できる新たな二酸化炭素吸着材となるアミン化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0036】
かくして、本願に開示する二酸化炭素吸着材は、第1級アミノ基からなる第1アミノ基と、第1級アミノ基、第2級アミノ基又は第3級アミノ基からなる第2アミノ基と、前記第1アミノ基と前記第2アミノ基とを連結する、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換された、炭素数2~6の直鎖アルキレンと、を含むアミン化合物から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係る第1の実施形態に係る二酸化炭素吸着材の構成図を示す。
【
図2】本発明に係る第1の実施形態に係る二酸化炭素吸着材の製造方法の説明図を示す。
【
図3】本発明に係る第1の実施形態に係る二酸化炭素吸着材の使用方法のフローチャート図を示す。
【
図4】本発明に係る第2の実施形態に係る二酸化炭素吸着材の構成図を示す。
【
図5】本発明に係る第2の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置のフィルタ形状の一例を示す。
【
図6】本発明に係る第2の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置の使用方法の説明図を示す。
【
図7】本発明に係る第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置の使用方法のフローチャート図を示す。
【
図8】本発明に係る第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置の使用方法の説明図を示す。
【
図9】本発明に係る第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置のハニカムロータとしての構成図を示す。
【
図10】本発明に係る第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置の使用方法の説明図を示す。
【
図11】本発明に係る実施例1に係る二酸化炭素吸着材の耐久性試験結果を示す。
【
図12】本発明に係る実施例2に係る二酸化炭素吸着材の動的性能試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る二酸化炭素吸着材は、第1級アミノ基からなる第1アミノ基と、第1級アミノ基、第2級アミノ基又は第3級アミノ基からなる第2アミノ基と、前記第1アミノ基と前記第2アミノ基とを連結する、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換された、炭素数2~6の直鎖アルキレンと、を含むアミン化合物から構成される。
【0039】
この第1アミノ基が、このアミン化合物の末端に第1級アミノ基として構成されることから、二酸化炭素の吸着反応に関与するNH結合がリッチとなり、低温条件においても十分に二酸化炭素の吸着が可能となり、二酸化炭素に対して高い吸着性能を発揮することができる。
【0040】
この第2アミノ基は、第1級アミノ基でもよいし、第2級アミノ基でもよいし、第3級アミノ基でもよく、特に限定されない。二酸化炭素に対して高い吸着性能を発揮するという点では、二酸化炭素の吸着反応に関与するNH結合を持つ第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好適である。
【0041】
この第1アミノ基と第2アミノ基は、前記直鎖アルキレンの両末端の炭素原子と、各々CN結合により接続される。
【0042】
この直鎖アルキレンは、主骨格が炭素数2~6の直鎖構造であるが、さらに、この直鎖構造を構成する少なくとも1つの原子が、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換されている。なお、置換されたアルキル基が多いと、比熱が向上して二酸化炭素の脱離にエネルギー負荷が増えるため、直鎖状のアルキル基では炭素数3、分岐状のアルキル基では炭素数4を上限とする。また、直鎖アルキレンは、後述するが、直鎖アルキレンの一部を置換するアルキル基によって、第1アミノ基と第2アミノ基のアミノ基間で、二酸化炭素分子が立体的に接近し難い最適な立体障害を形成し、第1級アミノ基の脱離(例えばホフマン脱離)や第2級アミノ基の還元が抑制されると共に、第1級アミノ基の酸化(例えばラジカル機構)が抑制されていると考えられ、直鎖アルキレンが長いと比熱が向上して二酸化炭素の脱離にエネルギー負荷が増えるため、炭素数6を上限とする。一方、直鎖アルキレンの炭素数が1(メチレン)の場合、上述のようにホフマン脱離が進行しやすくなるため、炭素数1を含まないものとする。また、置換されたアルキル基や直鎖アルキレンの炭素数が多くなるとアミン化合物の分子量に対し、二酸化炭素の吸着反応に関与するNH結合の割合が低くなり、二酸化炭素の吸着性能が低下することになるため、上述の炭素数を上限とする。
【0043】
この直鎖アルキレンの主骨格の直鎖構造としては、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレンが挙げられ、いずれを用いることも可能であり、例えば、エチレンを用いることができる。
【0044】
この直鎖アルキレンの主骨格の直鎖構造の一部を置換するアルキル基としては、直鎖状のものでは、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、分岐状のものでは、イソプロピル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0045】
この直鎖アルキレンの主骨格の直鎖構造の一部を置換するアルキル基は、この直鎖構造を構成する少なくとも1つの炭素原子を置換するものであり、この直鎖構造を構成する1つの炭素原子のみを置換してもよく、この直鎖構造を構成する2つ以上の炭素原子を置換してもよく、また、この直鎖構造を構成する同一の炭素原子上の複数の水素原子を置換してもよい。
【0046】
このような構成を有するアミン化合物としては、例えば、以下の一般式(1)で示されるものが挙げられる。
【0047】
【0048】
上記式中、R1及びR1'は、前記第2アミノ基を構成する官能基であり、各々独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R1及びR1'のうちいずれも水素原子の場合には、この第2アミノ基は、第1級アミノ基を構成する。R1及びR1'のうちいずれかが水素原子の場合には、この第2アミノ基は、第2級アミノ基を構成する。R1及びR1'のうちいずれもアルキル基の場合には、この第2アミノ基は、第3級アミノ基を構成する。
【0049】
R21m及びR22mは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~3の直鎖状のアルキル基もしくは炭素数3~4の分岐状のアルキル基であり、R21m及びR22mのうち少なくともいずれか1つが、直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、mは2~6の自然数である。
【0050】
すなわち、この自然数mは、前記第1アミノ基と前記第2アミノ基とを連結する、上述の直鎖アルキレンの炭素鎖長を示す。そのため、直鎖アルキレンは、エチレンよりも長い鎖長であることを示す。
【0051】
この炭素鎖を構成する炭素原子のうち少なくとも1つが、R21m又はR22mで示される直鎖状又は分岐状のアルキル基によって置換された構造である。
【0052】
例えば、この自然数mが2の場合には、R21m及びR22mとしては、R211、R212、R221及びR222の4つのアルキル基が存在するが、例えばこのうち1つであるR211のみが直鎖状又は分岐状のアルキル基で、その他のR212、R221及びR222が水素原子であってもよい。また、例えばこのうち2つであるR211及びR212が直鎖状又は分岐状のアルキル基で、その他のR221及びR222が水素原子であってもよい。また、例えばこのうち3つであるR211、R212及びR221が直鎖状又は分岐状のアルキル基で、その他のR222が水素原子であってもよい。また、例えばこのうち4つR211、R212、R221及びR222すべてが直鎖状又は分岐状のアルキル基であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る二酸化炭素吸着材は、アミン化合物の中でも特にアミノシランを使うことがハンドリングでは望ましいことから、より好適には、炭素数1~6のアルコキシ基により置換されたケイ素原子と、前記ケイ素原子と、前記第2アミノ基中の窒素原子と、を連結する、炭素数1~6の直鎖アルキレンと、を含む構成である。
【0054】
このケイ素原子は、1つのアルコキシ基により置換されていてもよいし、2つのアルコキシ基により置換されていてもよいし、3つのアルコキシ基により置換されていてもよい。なお、アルコキシ基の炭素数が多いと、比熱が向上して二酸化炭素の脱離にエネルギー負荷が増えるため、炭素数6を上限とする。また、同様の理由により、前記ケイ素原子と、前記第2アミノ基中の窒素原子と、を連結する、直鎖アルキレンは炭素数6を上限とする。
【0055】
この第2アミノ基中の窒素原子とケイ素原子を連結する、炭素数1~6の直鎖アルキレンとしては、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレンが挙げられ、いずれを用いることも可能であり、例えば、エチレン基やn-プロピレン基を用いることができる。
【0056】
例えば、本実施形態に係る二酸化炭素吸着材としては、以下の一般式(2)で示されるアミン化合物又はその誘導体が挙げられる。
【0057】
【0058】
上記一般式(2)中、R1、R21m、R22m、及びmは、上記一般式(1)における定義と同一である。R31、R32、及びR33は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルコキシ基もしくは炭素数1~6のアルキル基であり、R31、R32、及びR33のうち少なくともいずれか1つがアルコキシ基であり、nは1~6の自然数である。なお、アルコキシ基やアルキル基の炭素数が多いと、比熱が向上して二酸化炭素の脱離にエネルギー負荷が増えるため、炭素数6を上限とする。
【0059】
上記一般式(2)の一例としては、例えば、以下の構造(2-1)~(2-3)を有するアミン化合物又はその誘導体が挙げられる。なお、下記式(2-1)~(2-3)中、R31、R32、及びR33のうち、少なくともいずれか1つがメトキシ基であり、他はメチル基である。なお、下記一般式を含めて以降の化学式では、無置換のアルキレン(例えばメチレン、エチレン)は、簡略化のため、最小単位であるメチレンの繰り返し数(例えば、エチレンの場合は2、プロピレンの場合は3)を下付きで付したカッコ書きで表記する。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
すなわち、本実施形態に係る二酸化炭素吸着材は、例えば、上記の化学式(2-1)及び化学式(2-2)のように、前記第1アミノ基と第2アミノ基のアミノ基間のアルキレン(プロピレン)にメチル基が1つ付加した構造でもよいし、上記の化学式(2-3)のように、前記第1アミノ基と第2アミノ基のアミノ基間のアルキレン(プロピレン)にメチル基が2つ付加した構造でもよい。
【0064】
この本実施形態に係る二酸化炭素吸着材に必要となるアミン化合物は、合成することも可能ではあるが、市場から入手可能である。
【0065】
このように構成された本実施形態に係る二酸化炭素吸着材は、室温で二酸化炭素を吸着し、また200℃以下で二酸化炭素を脱離できるものである。さらに、経年劣化の発生も抑制することができ、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対して優れた耐久性を発揮することが確認されている(後述の実施例参照)。
【0066】
この優れたメカニズムは、未だ詳細には解明されていないが、このアミン化合物において、第1アミノ基と第2アミノ基とを連結する直鎖アルキレンの一部が、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換されることによって、二酸化炭素の吸着処理の際に、二酸化炭素の吸着性能を維持しつつ、直鎖アルキレンの一部を置換するアルキル基によって、第1アミノ基と第2アミノ基のアミノ基間で、二酸化炭素分子が立体的に接近し難い最適な立体障害を形成し、第1級アミノ基の脱離(例えばホフマン脱離)や第2級アミノ基の還元が抑制されると共に、第1級アミノ基の酸化(例えばラジカル機構)が抑制されているものと推察される。
【0067】
このように構成された本実施形態に係る二酸化炭素吸着材1は、その用途は幅広く、特にその使用形態は限定されないが、例えば、
図1(a)に示すように、所定の基材21に固定されてなる吸着部2を備え、前記アミン化合物に二酸化炭素含有ガスを接触させて、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離させる二酸化炭素吸着装置10として利用することができる。
【0068】
この基材21は、この二酸化炭素吸着材1を固定できるものであれば特に限定されないが、
図1(b)に示すように、ポーラス孔21aを有するポーラス体が高い比表面積を有することから好適である。このような基材21としては、シリカ、バーミキュライト、活性炭、アルミナ、アルミノシリケート、珪藻土、多孔性ガラス、多孔性樹脂、多孔性繊維、及びゼオライトからなる群から選択することができる。
【0069】
このような二酸化炭素吸着装置10の製造方法としては、例えば、
図2(a)に示すポーラス孔21aを有する基材21に対して、
図2(b)に示すように、この二酸化炭素吸着材1を、噴霧、浸漬、塗布、又はシランカップリング反応、含浸、蒸発乾固その他の接着を用いてこの基材21に担持させる(担持工程)。
【0070】
例えば、この二酸化炭素吸着材1を溶液状にして、スプレー噴霧により基材21に噴霧することや浸漬させることで基材21に担持させることができる。この他にも、例えば、この二酸化炭素吸着材1を溶液状にして、含浸させることや蒸発乾固や塗布を用いて基材21に担持させることも可能である。
【0071】
また、例えば、この二酸化炭素吸着材1を構成するアミン化合物が上記一般式(2)で表されるアミノシランの場合には、この二酸化炭素吸着材1をシランカップリング反応により基材21に担持させることもでき、基材21との高い接着性が得られる。
【0072】
このようにして、
図2(c)に示すように、ポーラス孔21aにこの二酸化炭素吸着材1が浸透する。この吸着部2は、二酸化炭素吸着材1をシランカップリング反応、含浸、蒸発乾固その他の接着により前記基材21に担持されて構成される。
【0073】
この基材21は、上記のようにポーラス体であるか否かは問わないが、特に基材21がポーラス体の場合には浸透性が高いことから含浸効率が高く強固な担持が得られる。
【0074】
この二酸化炭素吸着装置10を用いた二酸化炭素吸着方法は、
図3に示すように、二酸化炭素含有ガスを流通させることで二酸化炭素を吸着することが可能となる(S1:吸着工程)。
【0075】
対象となる二酸化炭素含有ガスとしては、二酸化炭素を含む気体であれば特に限定されず、例えば、大気や、工場や自動車等から排出される排気ガス等でも二酸化炭素を含むことから利用可能である。二酸化炭素含有ガスを流通させる方法として、強制対流を起こす送風機を用いてもよい。
【0076】
このように、この二酸化炭素吸着装置10に二酸化炭素含有ガスを流通させるのみという簡易な手段によって、容易に二酸化炭素を吸着すると共に、上述のように、経年劣化の発生を抑制し、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対して優れた耐久性を発揮することができる。
【0077】
これにより、本実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10は、その用途は幅広く、例えば、大気中の二酸化炭素を吸着して除去し、低二酸化炭素濃度の空気を居住空間に供給することが可能となる。また、例えば、燃焼排気ガス中の二酸化炭素を吸着濃縮する空気清浄材料としても利用することが可能となる。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10は、第1の実施形態と同様に、前記二酸化炭素吸着材1と、前記基材21と、前記吸着部2とを備え、さらに、
図4に示すように、前記吸着部2が固定されたフィルタからなるフィルタ部3を備える構成である。
【0079】
このフィルタ部3の形状は、特に限定されないが、例えば、ハニカム構造(honeycomb structure)とすることができる。このハニカム構造としては、
図5(a)~(d)に示すように、狭義のハニカム構造としてハチの巣形状のような中空の正六角柱を隙間なく並べた構造を含むが、この形状に限定されず、広義のハニカム構造として、中空の正六角柱に限定されない中空の任意の立体図形を隙間なく並べた構造も含まれ、例えば、不燃性無機繊維を段ボール形状に加工して積層してロータ状に形成した構造もハニカム構造として含まれる。
【0080】
このハニカム構造により、この二酸化炭素吸着装置10は、
図6に示すように、二酸化炭素吸着装置10の処理部分である二酸化炭素吸着材1の表面積が増大することとなり、二酸化炭素含有ガスXがフィルタ部3を流通させるのみで、フィルタ部3で容易に二酸化炭素を効率的に吸着することが可能となり、二酸化炭素除去ガスXaが排出される。
【0081】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10を用いた二酸化炭素吸着方法は、第1及び第2の実施形態と同様に、前記吸着工程(S1)を含み、さらに、
図7に示すように、前記吸着工程(S1)により二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素吸着材1を加熱又は減圧し、二酸化炭素を放出させる再生工程(S2)を含むものである。
【0082】
この再生工程(S2)における加熱は、二酸化炭素吸着材1を直接加熱してもよいし、二酸化炭素吸着材1に高温気体を流通させてもよい。また、この再生工程(S2)における減圧は、二酸化炭素吸着材1を直接減圧してもよいし、二酸化炭素吸着材1に低圧気体を流通させてもよい。
【0083】
第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10は、
図8(a)に示すように、二酸化炭素吸着材1に二酸化炭素を含んでいない初期状態Lで、大気等の二酸化炭素含有ガスXが、二酸化炭素吸着装置10に送り込まれる。
【0084】
この二酸化炭素含有ガスXが二酸化炭素吸着材1に流通することによって、
図8(b)に示すように、二酸化炭素吸着材1が二酸化炭素含有ガスX中の二酸化炭素を吸着して、二酸化炭素を含む吸着状態Mとなり、二酸化炭素除去ガスXaが排出される。
【0085】
この吸着状態Mの二酸化炭素吸着材1に対して、
図8(c)に示すように、加熱又は減圧である外力Pを加えることによって、二酸化炭素含有ガスXbが放出されると共に、この二酸化炭素吸着材1はもとの初期状態Lに再生される(S2:再生工程)。
【0086】
この二酸化炭素吸着材1は、上述のように、経年劣化の発生を抑制し、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対して優れた耐久性を発揮することから、長期間にわたり繰り返し使用が可能となる。
【0087】
また、第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10は、ハニカムロータの形状として構成することも可能である。
【0088】
ハニカムロータとは、
図9に示すように、断面が円形状のドラム状に成形されたハニカム構造のフィルタ部3を有するロータである。このハニカムロータとして構成された二酸化炭素吸着装置10の断面を二分割して各々吸着ゾーンA及び脱離ゾーンBが形成される。より好適には、
図9に示すように、このハニカムロータ1の円形断面を円の直径で二等分割した2つの半円形状断面の各々として吸着ゾーンA及び脱離ゾーンBが形成される。
【0089】
このハニカムロータとしての二酸化炭素吸着装置10の動作については、大気等の二酸化炭素含有ガスXが、このハニカムロータの吸着ゾーンAに送り込まれることで、
図10(a)に示すように、二酸化炭素含有ガスX中の二酸化炭素が、ハニカムロータの吸着ゾーンAにある二酸化炭素吸着材1に吸着され、二酸化炭素除去ガスXaが排出される。
【0090】
この場合、ハニカムロータの吸着ゾーンAでは、この二酸化炭素吸着材1に二酸化炭素が吸着された状態となる。この後のロータ回転によって、
図10(b)に示すように、当初は吸着ゾーンAにあった側が、今度は脱離ゾーンBに位置することとなり、脱離ゾーンBに二酸化炭素が吸着された状態が形成される。
【0091】
次に、この二酸化炭素が豊富に含まれた脱離ゾーンBを加熱又は減圧する。これにより、高濃度の二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガスXbが放出されると共に、この二酸化炭素吸着材1の二酸化炭素吸着性能が再生される(S2:再生工程)。
【0092】
結果として得られる二酸化炭素含有ガスXbは、原料である二酸化炭素含有ガスXよりも高濃度の二酸化炭素を有することから、二酸化炭素を利用できる用途に幅広く利用することができる。例えば、植物の生育にとっては、二酸化炭素の供給が必要であることから、例えば、植物ハウス(ビニルハウス)に二酸化炭素含有ガスXbを供給することで、栽培植物の生育を促進することができる。この植物の他にも、藻類に対しても同様に、二酸化炭素含有ガスXbを供給することで生育を促進することができる。
【0093】
以下に、本実施形態の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本実施形態は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0094】
(実施例1)
実施例1に係る二酸化炭素吸着材として、上述した以下の構造(2-4)を有するアミン化合物の市場から入手した。
【0095】
【化11】
上記式(2-4)中、R
31、R
32、及びR
33は、少なくともいずれか1つがメトキシ基であり、他はメチル基である。
【0096】
また、比較例に係る二酸化炭素吸着材として、以下の構造(B)を有するアミン化合物の市販品を従来品として購入した。
【0097】
【化12】
上記式(B)中、R
31、R
32、及びR
33は、少なくともいずれか1つがメトキシ基であり、他はメチル基である。
【0098】
上記の実施例1に係るアミン化合物と、従来品のアミン化合物の各々について、シリカに担持させ、このシリカを上述のハニカム構造を有するフィルタ部3に担持させて、上記第3の実施形態に係る二酸化炭素吸着装置10を構築した。
【0099】
二酸化炭素の吸着はアミノ基由来であることから、二酸化炭素吸着等温線を測定することでアミノ基の二酸化炭素の吸着性能低下の判断をすることが可能である。そこで、上記実施例1に係るアミン化合物と、従来品のアミン化合物との各々を使った加速試験を実施し、加速試験前後の二酸化炭素吸着等温線を測定した。各アミン化合物を通常使用する温度域以上の温湿度に静置することで、加速試験として80℃/50%RH耐久試験を行った。
【0100】
この耐久試験を7日間実施し、測定された二酸化炭素吸着等温線を二酸化炭素吸着性能として、従来品と実施例1を比較した。この二酸化炭素吸着性能の耐久性について横軸を耐久日数とした実験結果を
図11に示す。
【0101】
得られた結果から、実施例1に係るアミン化合物は、比較例の従来品のアミン化合物と比較して、加速試験後においても高い二酸化炭素吸着量を維持し、2倍以上の耐久性を示すことが確認された。このことから、実施例1に係るアミン化合物は、従来品とは異なり、第1級アミノ基の脱離(例えばホフマン脱離)や第2級アミノ基の還元が抑制されると共に、第1級アミノ基の酸化(例えばラジカル機構)等の劣化反応が抑制されたといえる。
【0102】
(実施例2)
上記実施例1と同様に、上記実施例1に係るアミン化合物と、従来品のアミン化合物の各々について、シリカに担持させ、このシリカを上述のハニカム構造を有するフィルタ部3に担持させて、上述の実施形態3の二酸化炭素吸着装置10を構築した。このハニカム構造を有する二酸化炭素吸着装置を用いて二酸化炭素吸着の動的性能を確認するための動的性能試験を以下の条件下で実施した。
・吸着ゾーン入口温度TP1=23.5℃, 吸着ゾーン入口絶対湿度XP1=12g/kg', 吸着ゾーン入口二酸化炭素濃度400ppm
・脱離ゾーン入口温度TR1=45℃, 脱離ゾーン入口絶対湿度XR1=18.5g/kg', 脱離ゾーン入口二酸化炭素濃度550ppm
【0103】
上述の実施形態3の二酸化炭素吸着装置において上記
図10で示した二酸化炭素含有ガスXbの二酸化炭素濃度を再生出口CO
2濃度[ppm]について、ハニカムロータ回転数[rph]ごとに測定してプロットした結果を
図12に示す。得られた結果から、上記実施例1に係るアミン化合物は、比較例の従来品のアミン化合物と比較して同等以上の二酸化炭素吸着性能を発揮することが確認された。
【0104】
(実施例3)
実施例3に係る二酸化炭素吸着材として、以下の構造を有するアミン化合物を市場から入手した(上から順に、エチレンジアミン、2-メチル-1, 3-プロパンジアミン、1, 4-ジアミノブタン)。これらのアミン化合物は、各々、炭素鎖長の違いや、炭素鎖の分岐の有無に違いがある。これらのアミン化合物の各々について、上記実施例1と同様に、シリカに担持させ、吸着材を作製した。
【0105】
【0106】
二酸化炭素の吸着はアミノ基由来であることから、二酸化炭素吸着等温線を測定することでアミノ基の二酸化炭素の吸着性能低下の判断をすることが可能である。そこで、上記アミン化合物の各々を使った加速試験を実施し、加速試験前後の二酸化炭素吸着等温線を測定した。各アミン化合物を通常使用する温度域以上の温湿度に静置することで、加速試験として80℃/50%RH耐久試験を行った。
【0107】
この加速試験を3日間実施し、測定された二酸化炭素吸着等温線を二酸化炭素吸着性能として、各々の吸着材を比較した。
【0108】
得られた結果から、エチレンジアミンの化学構造に対し、アミン基間の直鎖アルキレンが長くメチル基の分岐がある2-メチル-1, 3-プロパンジアミンと、アミン基間の直鎖アルキレンが長い1, 4-ジアミノブタンの加速試験後の二酸化炭素吸着性能は、加速試験後のエチレンジアミンの二酸化炭素吸着性能と比較して、いずれもほぼ2倍の二酸化炭素吸着性能を維持し、耐久性が向上することを確認した。
【0109】
上記各実施例の結果から、上記実施例1に係るアミン化合物は、比較例の従来品のアミン化合物と比較して、二酸化炭素吸着性能を維持しつつ、耐久性を飛躍的に向上させたことが確認された。
【符号の説明】
【0110】
1 二酸化炭素吸着材
2 吸着部
21 基材
21a ポーラス孔
3 フィルタ部
10 二酸化炭素吸着装置
【要約】
【課題】 経年劣化の発生を抑制し、二酸化炭素吸着処理の繰り返し使用に対しても高い耐久性を発揮できる二酸化炭素吸着材を提供する。
【解決手段】 二酸化炭素吸着材は、第1級アミノ基からなる第1アミノ基と、第1級アミノ基、第2級アミノ基又は第3級アミノ基からなる第2アミノ基と、前記第1アミノ基と前記第2アミノ基とを連結する、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基又は炭素数3~4の分岐状のアルキル基で置換された、炭素数2~6の直鎖アルキレンと、を含むアミン化合物から構成される。
【選択図】
図1