(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】荷役装置、及び衝突監視装置
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B65G67/60 G
B65G67/60 D
(21)【出願番号】P 2019013439
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 聖康
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171440(JP,A)
【文献】特開2014-166909(JP,A)
【文献】特開2014-223990(JP,A)
【文献】特開平5-147747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハッチ船用の荷役装置であって、
前記ハッチ船内に挿入される荷役部と、
上下方向に延びて、前記荷役部と前記荷役装置の本体部とを連結する連結部と、
前記連結部に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視部と、を備え、
前記衝突監視部は、
前記連結部の上端側に設けられ、距離を測定する距離計と、
前記距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での前記干渉物の有無を判定する判定部と、を備え
前記距離計から計測方向に所定の距離だけ離れた位置に仮想的に基準位置を設定し、前記距離計と前記基準位置との範囲を監視範囲とし、
前記判定部は、前記距離計で検出された物の中で、前記基準位置より近い位置に存在する物が一つも無いことを確認した場合、前記監視範囲内に前記干渉物が存在していないと判定する、荷役装置。
【請求項2】
前記距離計は、前記荷役部の前記ハッチ船内での位置に関わらず、常時、前記ハッチ船のハッチ口より上方に配置される位置に設けられる、請求項1に記載の荷役装置。
【請求項3】
前記衝突監視部は、前記距離計として、一軸のレーザー距離計またはマイクロ波距離計を前記連結部の周方向に所定のピッチで複数備えている、請求項1又は2に記載の荷役装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記距離計から前記荷役部付近の範囲内での干渉物の有無を判定する、請求項1~3の何れか一項に記載の荷役装置。
【請求項5】
前記荷役部は、無端状に巻き掛けられたバケットエレベータが設けられることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の荷役装置。
【請求項6】
監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置であって、
前記監視対象物に対して設けられ、距離を測定する距離計と、
前記距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での前記干渉物の有無を判定する判定部と、を備え、
前記距離計から計測方向に所定の距離だけ離れた位置に仮想的に基準位置を設定し、前記距離計と前記基準位置との範囲を監視範囲とし、
前記判定部は、前記距離計で検出された物の中で、前記基準位置より近い位置に存在する物が一つも無いことを確認した場合、前記監視範囲内に前記干渉物が存在していないと判定する、衝突監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役装置、及び衝突監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ハッチ船用の荷役装置が記載されている。この荷役装置は、ハッチ船内に挿入される部分がハッチ口の縁部と衝突しないように監視を行う、衝突監視部を有している。この荷役装置は、監視対象となる部位の上端側にセンサを有し、当該センサから下方へ離間した位置に検出波を反射するリフレクタを有している。ハッチ口の縁部がセンサから離れているときは、センサは、リフレクタから高い強度の反射波を受信する。一方、センサの検出波がハッチ口の縁部で遮られることで、センサが受信する反射波の強度が低下する。このように、センサが受信する反射波の強度に基づいて衝突監視がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような荷役装置は、衝突監視のためにハッチ船の内部に配置されるリフレクタを必要としている。しかしながら、ハッチ船の内部は落粉、落炭が多い場所であるため、リフレクタの表面に汚損、破損等が生じる可能性がある。この場合、衝突監視の精度が低下してしまうという問題がある。ハッチ船の内部以外でも、ハッチ船用の荷役装置の作業現場では、リフレクタの表面に汚損、破損等が生じることで、衝突監視の精度が低下する可能性がある。従って、衝突監視の精度を向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、監視対象物に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる荷役装置、及び衝突監視装置。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷役装置は、ハッチ船用の荷役装置であって、ハッチ船内に挿入される荷役部と、上下方向に延びて、荷役部と荷役装置の本体部とを連結する連結部と、連結部に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視部と、を備え、衝突監視部は、連結部の上端側に設けられ、距離を測定する距離計と、距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する判定部と、を備える。
【0007】
本発明に係る荷役装置は、連結部に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視部を備える。この衝突監視部は、連結部の上端側に設けられ、距離を測定する距離計を有している。距離計は、計測方向に存在する物体との距離を測定するものである。従って、距離計は、リフレクタを用いて反射波を検出するものではないため、連結部の下端にはリフレクタのような他の部材が必要とされるものではない。衝突監視部の判定部は、このような距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する。すなわち、判定部は、リフレクタなどの他の部材の状態に影響を受けることなく、干渉物が連結部に近接しているかどうかを判定することができる。以上により、監視対象物に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる。
【0008】
荷役装置において、距離計は、荷役部のハッチ船内での位置に関わらず、常時、ハッチ船のハッチ口より上方に配置される位置に設けられてよい。これにより、距離計がハッチ船の内部の落粉、落炭などの影響を受けることを回避できる。従って、距離計に対するダメージを抑制し、衝突の監視の精度が低下することを抑制できる。
【0009】
荷役装置において、衝突監視部は、距離計として、一軸のレーザー距離計またはマイクロ波距離計を連結部の周方向に所定のピッチで複数備えていてよい。この場合、一軸のレーザー距離計またはマイクロ波距離計は、スキャンタイプの距離計とは異なり、検出のためのレーザーまたはマイクロ波が移動しない。従って、干渉物が周方向のある角度から連結部に近接したとき、距離計は、タイムラグなく干渉物との距離を測定することができる。
【0010】
荷役装置において、判定部は、距離計から荷役部付近の範囲内での干渉物の有無を判定してよい。この場合、衝突監視部は、連結部の広い範囲にわたって監視を行うことができる。
【0011】
本発明に係る衝突監視装置は、監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置であって、監視対象物に対して設けられ、距離を測定する距離計と、距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する判定部と、を備える。
【0012】
本発明に係る衝突監視装置は、監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する。この衝突監視装置は、監視対象物に設けられ、距離を測定する距離計を有している。距離計は、計測方向に存在する物体との距離を測定するものである。従って、距離計は、リフレクタを用いて反射波を検出するものではないため、監視対象物にはリフレクタのような他の部材が必要とされるものではない。衝突監視装置の判定部は、このような距離計の検出結果に基づき、当該距離計から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する。すなわち、判定部は、リフレクタなどの他の部材の状態に影響を受けることなく、干渉物が連結部に近接しているかどうかを判定することができる。以上により、監視対象物に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、監視対象物に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる荷役装置、及び衝突監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る荷役装置を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る荷役装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるクレーンシステムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る荷役装置を示す概略図である。
【0016】
本実施形態に係る荷役装置100は、ハッチ船50用の荷役装置である。荷役装置100は、岸壁に設けられて、停留しているハッチ船50からの荷の取り出しを行う。本実施形態では、荷役装置100としてバケットエレベータ式連続アンローダが例示されている。
図1に示すように、荷役装置100は、本体部1と、荷役部2と、連結部3と、制御部40と、を備える。
【0017】
本体部1は、埠頭を岸壁に沿って走行する走行部(図示せず)と、走行部に旋回自在かつ俯仰自在に設けられたブーム11と、を有する。ハッチ船50から荷を取り出すとき、ブーム11は、ハッチ船50のハッチ口51の上方まで延びる。
【0018】
荷役部2は、ハッチ船50内に挿入され、当該ハッチ船50内の荷を掻き取る。連結部3は、上下方向に延びて、荷役部2と本体部1とを連結する。連結部3は、本体部1のブーム11の先端に設けられている。荷役部2は、連結部3の下端に設けられている。荷役部2の下端部は、水平方向に延びている。荷役部2及び連結部3には、無端状に巻き掛けられたバケットエレベータ(図示せず)が設けられている。
【0019】
制御部40は、荷役装置100全体を制御する装置である。制御部40は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェース等を備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御部40では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部40は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0020】
制御部40は、荷役装置100の動作を制御する運転制御部41と、後述の衝突監視装置20を構成する判定部42及び警告部43と、を備える。制御部40は、バケットエレベータを循環させてハッチ船50内の荷を掻き取るように制御を行う。荷を掻き取った各バケット(図示せず)は、連結部3の上部で反転して、当該バケットからの落下物を図示しない回転フィーダを介してブーム11上の図示しないコンベヤに移送する。制御部40は、コンベアで回収した荷を搬送すると共に回収する。制御部40は、ハッチ船50の荷の状況に合わせて、荷役部2を水平方向及び上下方向に移動させる。
【0021】
荷役装置100は、監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置20(衝突監視部)を備える。本実施形態では、衝突監視装置20は、監視対象物として連結部3を監視する。衝突監視装置20は、干渉物としてハッチ口51の縁部51aが連結部3に衝突しないように監視する。また、衝突監視装置20は、監視対象物としてブーム11を監視する。衝突監視装置20は、干渉物として荷役装置100周辺の構造物がブーム11に衝突しないように監視する。具体的に、衝突監視装置20は、監視部30Aと、監視部30Bと、前述の制御部40と、を備えている。
【0022】
監視部30Aは、監視対象物としての連結部3を監視する。監視部30Aは、複数の距離計31Aと、支持部32Aと、を備える。監視部30Bは、監視対象物としてのブーム11を監視する。監視部30Bは、複数の距離計31Bと、支持部32Bと、を備える。なお、監視部30A、30Bをまとめて監視部と呼ぶことがある。同様に、支持部32A、支持部32Bをまとめて支持部と呼ぶことがある。同様に、距離計31A、距離計31Bをまとめて距離計と呼ぶことがある。単に「距離計31」と称した場合は、距離計31A及び距離計31Bに共通した内容を説明しているものとする。
【0023】
支持部32Aは、距離計31Aを支持するための部材である。支持部32Aは、連結部3の上端側に設けられている。支持部32Aは、連結部3のうち、本体部1との接続部より若干の隙間を空けて下方に配置される。支持部32Aは、連結部3の外周面の周囲を囲むように設けられる。支持部32Aは、作業者にとっての足場としても用いることができる。作業者は、支持部32Aにて、距離計31Aのメンテナンスや交換などを行うことができる。なお、支持部32Aは、距離計31Aの配置に応じて連結部の外周面の一部にのみ設けられてもよい。支持部32Aは、例えばL字状でもよい。
【0024】
距離計31は、計測範囲内に物体が存在する場合に、距離計31からの物体の距離を測定する機器である。距離計31は、レーザー光などの検出信号を計測方向に向けて発信する。距離計31は、検出信号が物体に当たって反射したら、当該反射した検出信号を受信することで、物体との距離を測定する。距離計31は、ワイヤー(
図3参照)のように物理的に物体と接触することなく、検出信号を用いて非接触で測定を行うことができる。このような距離計31として、一軸のレーザー距離計、二軸のレーザー距離計(レーザースキャンセンサ)、マイクロ波距離計、超音波距離計、その他距離計として使用可能な各種センサを用いることができる。本実施形態では距離計31として、一軸のレーザー距離計を用いるものとして説明を行うが、この説明は、一軸のマイクロ波距離計を用いる場合にも適用することができる。従って、距離計31は、計測方向に向けてレーザー光を出射する。
【0025】
距離計31Aは、支持部32Aの下面側に取り付けられている。従って、距離計31Aは、連結部3の上端側に設けられている。距離計31Aは、連結部3のうち、本体部1との接続部より若干の隙間を空けて下方に配置される。距離計31Aは、荷役部2のハッチ船50内での位置に関わらず、常時、ハッチ船50のハッチ口51より上方に配置される位置に設けられる。具体的には、荷役部2の下端がハッチ船50内で移動可能な範囲の最も低い位置に配置される状態にあるときでも、距離計31Aは、ハッチ口51より上側に配置される。
【0026】
距離計31Aは、下方へ向けてレーザーを出射する。距離計31Aは、鉛直方向と平行になるようにレーザーを出射してもよく、鉛直方向から傾斜する方向へレーザーを出射してもよい。また、距離計31Aは、連結部3の周方向に所定のピッチで複数設けられている。すなわち、衝突監視装置20は、距離計31Aとして、一軸のレーザー距離計を連結部3の周方向に所定のピッチで複数備えている。距離計31Aが設けられる周方向のピッチは特に限定されないが、例えば、60°、90°、120°程度のピッチで設けられてよい。また、距離計31Aは、連結部3の外周面から外周側へ径方向に離間した位置に設けられる。これにより、干渉物が連結部3に接触するよりも手前側で、当該干渉物を検出することができる。距離計31Aの連結部3の外周面からの離間距離は特に限定されないが、例えば、30cm~100cm程度の離間距離であってよい。距離計31Aが連結部3の外周面から遠すぎる場合は、連結部3との衝突の可能性が低い位置でも必要以上に干渉物を検出してしまう。一方、距離計31Aが連結部3の外周面に近すぎる場合は、干渉物を検出した時点で、当該干渉物が連結部3にかなり近づいた状態となってしまう。
【0027】
なお、距離計31は、リフレクタを用いて当該リフレクタとセンサとの間の干渉物を検出するセンサとは異なり、物体との距離を測定するためのセンサである。干渉物を検出するセンサは、当該センサからリフレクタへ向けて電波を出射し、リフレクタで反射した反射波の強度を検出する。センサとリフレクタとの間に干渉物が存在する場合、センサが検出できる反射波の強度が低下する。センサは、このような反射波の強度の低下に基づいて干渉物の存在を検出する。これに対し、距離計31は、物体で反射するレーザー光そのものに基づいて、当該物体との距離を測定する。従って、距離計31から計測方向に離間した位置にはリフレクタは設けられない。
【0028】
支持部32Bは、ブーム11の本体側端部付近に設けられる。これにより、距離計31Bは、ブーム11の本体側端部付近にて、当該ブーム11に複数設けられる。距離計31Bは、ブーム11の先端側へ向けてレーザーを出射する。これにより、ブーム11に干渉物が近づいた時に、距離計31Bが干渉物を検出できる。例えば、距離計31Bは、ブーム11の旋回方向両側にそれぞれ設けられてもよい。
【0029】
判定部42は、距離計31の検出結果に基づき、当該距離計31から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する。判定部42は、距離計31から計測方向に所定の距離だけ離れた位置に基準位置SLを仮想的に設定する。これにより、判定部42は、距離計31と基準位置SLとの範囲を監視範囲Eとして設定することができる。判定部42は、連結部3を監視する監視部30Aに対しては、荷役部2の上端付近に基準位置SLを設定する。これにより、判定部42は、連結部3の上端付近から下端付近に至る全範囲を監視範囲Eとして監視することができる。判定部42は、ブーム11を監視する監視部30Bに対しては、ブーム11の先端付近に基準位置SLを設定する。これにより、判定部42は、ブームの付根付近から先端付近に至る全範囲を監視範囲Eとして監視することができる。
【0030】
判定部42は、監視範囲E内に干渉物が存在していないと判定することによって、監視対象物に干渉物が近接していないことを確認することができる。監視範囲Eに干渉物が存在していない場合、複数の距離計31は、基準位置SLよりも遠い位置に存在する物(例えば、荷役部2や、船底)の距離を検出する。あるいは、距離計31の計測方向に存在する物が、距離計31の検出可能距離を超えている場合、距離計31は、レーザー光の反射を確認できず(ロスト)、計測方向の前方に物が存在していないことを検出する。判定部42は、全ての距離計31の測定結果を取得する。判定部42は、距離計31で検出された物の中で、基準位置SLより近い位置に存在する物が一つも無いことを確認した場合、監視範囲E内に干渉物が存在していないと判定する。
【0031】
判定部42は、監視範囲E内に干渉物が存在していると判定することによって、監視対象物に干渉物が近接していると判断することができる。監視範囲Eに干渉物が存在している場合、複数の距離計31の少なくとも一つは、基準位置SLよりも近い位置に存在する物の距離を検出する。判定部42は、全ての距離計31の測定結果を取得する。判定部42は、距離計31で検出された物の中で、基準位置SLより近い位置に存在するものが一つでもあることを確認した場合、監視範囲E内に干渉物が存在していると判定する。
【0032】
例えば
図2に示すように、ハッチ口51の縁部51aが連結部3に近接した場合、当該縁部51aが監視範囲E内に入り込む。このとき、一部の距離計31Aのレーザーは縁部51a付近で反射して距離計31Aに検出される。これにより、距離計31Aは、物体との距離を検出する。判定部42は、基準位置SLよりも近い距離が検出されていることに基づき、監視範囲E内に干渉物が存在していると判定する。
【0033】
警告部43は、判定部42によって、監視範囲E内に干渉物が存在していると判定された場合、オペレータに対して警告を出力する。警告部43は、モニタへの表示、警報音、または警報の光などによりオペレータに注意喚起を行う。また、警告部43は、荷役装置100を制御して、緊急停止してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る荷役装置100、及び衝突監視装置20の作用・効果について説明する。
【0035】
本実施形態に係る荷役装置100は、ハッチ船用の荷役装置100であって、ハッチ船50内に挿入される荷役部2と、上下方向に延びて、荷役部2と荷役装置100の本体部1とを連結する連結部3と、連結部3に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置20と、を備え、衝突監視装置20は、連結部3の上端側に設けられ、距離を測定する距離計31Aと、距離計31Aの検出結果に基づき、当該距離計31Aから所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する判定部42と、を備える。
【0036】
本実施形態に係る荷役装置100は、連結部3に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置20を備える。この衝突監視装置20は、連結部3の上端側に設けられ、距離を測定する距離計31Aを有している。距離計31Aは、計測方向に存在する物体との距離を測定するものである。従って、距離計31Aは、リフレクタを用いて反射波を検出するものではないため、連結部3の下端にはリフレクタのような他の部材が必要とされるものではない。ハッチ船50の内部は落粉、落炭が多い場所であるため、リフレクタを用いた場合、当該リフレクタの表面に汚損、破損等が生じる可能性がある。この場合、衝突監視の精度が低下してしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態の距離計31Aでは、このような問題が生じない。衝突監視装置20の判定部42は、このような距離計31Aの検出結果に基づき、当該距離計31Aから所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する。すなわち、判定部42は、リフレクタなどの他の部材の状態に影響を受けることなく、干渉物が連結部3に近接しているかどうかを判定することができる。以上により、監視対象物(ここでは連結部3)に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる。
【0037】
ここで、比較例として、
図3に示す荷役装置150について説明する。この荷役装置150は、ワイヤ131を用いた衝突監視装置130を有する。連結部3には、監視範囲の上端に支持部132、下端に支持部133は設けられる。ワイヤ131は、支持部132,133間で上下方向に延びている。ハッチ口51の縁部51aが連結部3に近接したら、当該縁部51aがワイヤ131と接触し、ワイヤ131に張力が作用する。これにより、衝突監視装置130は、ワイヤ131の張力に基づいて干渉物の衝突を監視できる。このような衝突監視装置130は、接触式の検出機構であるため、検出機構に曲がりが生じて復帰不能になってしまった場合、正確に衝突監視を行えなくなる。これに対し、本実施形態に係る衝突監視装置20は、距離計31Aを用いた非接触式の検出機構であるため、検出機構の不具合による問題が生じにくい。また、衝突監視装置130は、検出のためにワイヤがある程度曲がらなくてはならず、検出の応答性が低下する。これに対し、衝突監視装置20は、距離計31Aを用いているため、ある一定以上の距離変化を検出したら、直ちに衝突を検出できるため応答性が良い。また、衝突監視装置130は、支持部133が必要であるため、当該部分が荷役部2に近くなると、作業性が低下する。よって、支持部133をある程度上側に配置しなくてはならず、監視範囲に制限が出てしまう。これに対し、衝突監視装置20は、距離計31Aを用いているため、支持部133のような他の部材が不要である。従って、荷役部2と連結部3の境界付近にまで監視範囲Eを広げることができる。
【0038】
荷役装置100において、距離計31Aは、荷役部2のハッチ船50内での位置に関わらず、常時、ハッチ船50のハッチ口51より上方に配置される位置に設けられる。これにより、距離計31Aがハッチ船50の内部の落粉、落炭などの影響を受けることを回避できる。従って、距離計31Aに対するダメージを抑制し、衝突の監視の精度が低下することを抑制できる。
【0039】
荷役装置100において、衝突監視装置20は、距離計31として、一軸のレーザー距離計を連結部3の周方向に所定のピッチで複数備えている。この場合、一軸のレーザー距離計は、レーザースキャンタイプの距離計とは異なり、検出のためのレーザーが移動しない。従って、干渉物が周方向のある角度から連結部に近接したとき、レーザー距離計は、タイムラグなく干渉物との距離を測定することができる。なお、距離計31として、レーザースキャンタイプのものを採用した場合、少ない数量の距離計31にて衝突監視を行うことができる。なお、当該効果は、距離計31としてマイクロ波距離計などを適用した場合も成り立つ。
【0040】
荷役装置100において、判定部42は、距離計31から荷役部2付近の範囲内での干渉物の有無を判定する。この場合、衝突監視装置20は、連結部3の広い範囲にわたって監視を行うことができる。
【0041】
本実施形態に係る衝突監視装置20は、監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する衝突監視装置20であって、監視対象物に対して設けられ、距離を測定する距離計31と、距離計31の検出結果に基づき、当該距離計31から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する判定部42と、を備える。
【0042】
本実施形態に係る衝突監視装置20は、監視対象物に対する干渉物の衝突を監視する。この衝突監視装置20は、監視対象物に設けられ、距離を測定する距離計31を有している。距離計31は、計測方向に存在する物体との距離を測定するものである。従って、距離計31は、リフレクタを用いて反射波を検出するものではないため、監視対象物にはリフレクタのような他の部材が必要とされるものではない。衝突監視装置20の判定部42は、このような距離計の検出結果に基づき、当該距離計31から所定の距離の範囲内での干渉物の有無を判定する。すなわち、判定部42は、リフレクタなどの他の部材の状態に影響を受けることなく、干渉物が連結部に近接しているかどうかを判定することができる。以上により、監視対象物に対する干渉物の衝突の監視の精度を向上できる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、荷役装置としてバケットエレベータ式連続アンローダを例示した。これに代えて、
図4に示すように、ツインベルト式連続アンローダの荷役装置200に対して、衝突監視装置を適用してよい。この荷役装置200は、荷役部202と、本体部201と、両者を連結する連結部203と、を有する。荷役部202は、本体部の走行、ブームの旋回及び起伏、連結部のスイング、などの動作により、荷役部202を移動させながら荷をかき取る。距離計31は、連結部203の上端付近に設けられ、判定部42は、荷役部202の上端付近に基準位置SLを設定している。本体部201は、埠頭を岸壁に沿って走行する走行部(図示せず)と、走行部に旋回自在かつ俯仰自在に設けられたブームと、を有する。ハッチ船50から荷を取り出すとき、ブームは、ハッチ船50のハッチ口51の上方まで延びる。
【0045】
また、
図5に示すように、バーチカルスクリュー式連続アンローダの荷役装置300に対して、衝突監視装置を適用してよい。この荷役装置300は、荷役部302と、本体部301と、両者を連結する連結部303と、を有する。荷役部302は、スクリューと堀削ブレードを回転させることによって、荷をかき取って上方へ搬送する。距離計31は、連結部303の上端付近に設けられ、判定部42は、荷役部302の上端付近に基準位置SLを設定している。
【0046】
また、
図6に示すように、シップローダの荷役装置400に対して、衝突監視装置を適用してよい。この荷役装置400は、荷役部402と、本体部401と、両者を連結する連結部403と、を有する。荷役部402は、本体部401のコンベアで搬送された荷を連結部403を介してハッチ船50の内部へ供給する。距離計31は、連結部403の上端付近に設けられ、判定部42は、荷役部402の上端付近に基準位置SLを設定している。
【符号の説明】
【0047】
1,201,301,401…本体部、2,202,302,402…荷役部、3,203,303,403…連結部、20…衝突監視装置(衝突監視部)、31…距離計、50…ハッチ船、51…ハッチ口、100,200,300,400…荷役装置。