(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230606BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20230606BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20230606BHJP
B60N 2/70 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/58
A47C7/62 Z
B60N2/70
(21)【出願番号】P 2019017509
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沼 弘治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 忍
(72)【発明者】
【氏名】大川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堀江 弘人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161913(JP,A)
【文献】特許第6356882(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
B60N 2/58
A47C 7/62
B60N 2/70
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを有する乗物用シートであって、
前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ、前記サイドメンバの前後方向の一側の端部同士を接続する第1クロスメンバ、及び前記サイドメンバの前後方向の他側の端部同士を接続する第2クロスメンバを有する枠形のフレームと、
前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体、前記本体の前記一側の縁から延出して前記第1クロスメンバに係合する第1取付部、及び前記本体の前記他側の縁から延出して前記第2クロスメンバに係合する第2取付部を有して、乗員を支持する支持部材と、
前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッドと、
前記パッドを覆う表皮材と、
前記支持部材の前後方向の中央よりも前記一側の表側に取り付けられた圧力センサとを有し、
前記第1取付部は、前後方向において前記圧力センサに整合する第1一側取付片を有し、
前記支持部材の前記本体は、前記圧力センサが載置されるセンサ載置部と、前記センサ載置部の左右両側縁を画定するように前記センサ載置部の左右両側方に設けられた開口とを有し、
前記第1一側取付片は、前記本体の前記一側の縁から前記第1クロスメンバに係合するまでの範囲で、前記センサ載置部の左右方向の幅よりも広い左右方向の幅を有
し、
前記支持部材は、前記本体の前記他側の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部と、前記一側の左右両側部に前記第1取付部の左右両端縁よりも外方に位置するように形成された羽部と、前記羽部と前記傾斜部との間に形成された側部切欠きとを更に有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記センサ載置部の左側縁は、前記第1一側取付片の左側縁よりも右方に位置し、前記センサ載置部の右側縁は、前記第1一側取付片の右側縁よりも左方に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記支持部材の前記本体は、前記第1一側取付片に対して左右方向にずれた位置にクリップを取り付け可能なクリップ取付孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1一側取付片は、第1取付片開口を有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1取付片開口は、少なくとも1つの内側開口と、前記内側開口に対して左右それぞれに設けられた外側開口とを有し、
前記内側開口は、前記外側開口よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
左右方向の延在範囲において、前記内側開口は前記外側開口よりも前記センサ載置部に重なる範囲が広いことを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記センサ載置部は、前記圧力センサに係合する係合爪を有し、
前記係合爪は、前記第1一側取付片の左右両側縁よりも左右方向の内側に位置することを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記係合爪は、前後方向において、前記第1取付片開口の少なくとも一部に整合していることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第1取付部は、前記第1一側取付片の左方及び右方に設けられた1対の第2一側取付片を有し、
前記第2一側取付片は、第2取付片開口と、左右側縁の外側に設けられた切欠きとを有することを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記センサ載置部は、前記圧力センサの左右両側縁を係止する左右1対の係止リブを有し、
左右1対の前記係止リブは、前記第1一側取付片の左右両側縁よりも左右方向の内側に位置することを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳細にはフレームの内側に設けられて乗員を支持する支持部材を備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートクッションフレームの内側に設けられ、乗員を支持する支持部材を板状の樹脂部材によって形成したものが公知である(例えば、特許文献1)。支持部材は、本体の後部の左右の側縁から上方に傾斜して外方に延出する傾斜部を有する。傾斜部が乗員の臀部を斜め側方から支持するため、乗員の臀部への支持力は分散される。また、乗物用シートにおいて、乗員の着座を確認するため、支持部材とパッドとの間に圧力センサを設けたものが公知である(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6309130号明細書
【文献】特開2016-144987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜部を有する支持部材に圧力センサを設置すると、傾斜部によって乗員の臀部からの圧力は分散されて支持部材に伝わる。そのため、圧力センサに加わる圧力が小さくなり、着座による圧力と、荷物をシートに置いたことによる圧力とを区別できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、傾斜部を有する板状の支持部材と、支持部材に配置された圧力センサとを有する乗物用シートにおいて、着座の判定の正確性が向上した乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(2)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ(14)、前記サイドメンバの前後方向の一側の端部同士を接続する第1クロスメンバ(15)、及び前記サイドメンバの前後方向の他側の端部同士を接続する第2クロスメンバ(16)を有する枠形のフレーム(7)と、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体(20)、前記本体の前記一側の縁から延出して前記第1クロスメンバに係合する第1取付部(22)、及び前記本体の前記他側の縁から延出して前記第2クロスメンバに係合する第2取付部(23)を有して、乗員を支持する支持部材(8)と、前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッド(9)と、前記パッドを覆う表皮材(10)と、前記支持部材の前後方向の中央よりも前記一側の表側に取り付けられた圧力センサ(25)とを有し、前記第1取付部は、前後方向において前記圧力センサに整合する(圧力センサに対して左右方向にずれていない)第1一側取付片(22a)を有し、前記支持部材の前記本体は、前記圧力センサが載置されるセンサ載置部(26)と、前記センサ載置部の左右両側縁を画定するように前記センサ載置部の左右両側方に設けられた開口(28)とを有し、前記第1一側取付片は、前記本体の前記一側の縁から前記第1クロスメンバに係合するまでの範囲で、前記センサ載置部の左右方向の幅よりも広い左右方向の幅を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、圧力センサが傾斜部に対して前方にずれて配置され、かつ圧力センサの左右に開口が設けられたことによって、圧力センサに加わる圧力が増大し、前後方向において圧力センサに整合する第1前部取付片の幅が広いことによって圧力センサの揺れが抑制されるため、着座判定の正確性が向上する。
【0008】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記センサ載置部の左側縁は、前記第1一側取付片の左側縁よりも右方に位置し、前記センサ載置部の右側縁は、前記第1一側取付片の右側縁よりも左方に位置することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、前後方向から見てセンサ載置部が第1一側取付片に重なるように配置され、前部クロスメンバに固定される第1一側取付片によってセンサ載置部が安定する
【0010】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記支持部材の前記本体は、前記第1一側取付片に対して左右方向にずれた位置にクリップを取り付け可能なクリップ取付孔(35)を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、クリップ取付孔によって他部材を保持したクリップ(32)を支持部材に取り付けることができるとともに、クリップ取付孔が第1一側取付片に対して左右方向にずれているためセンサ載置部の前後位置の剛性を損なわない。
【0012】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記第1前部取付片は、第1取付片開口(42)を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1一側取付片が第1取付片開口を有するため、第1前部取付片の前部クロスメンバへの固定強度の低下を抑制しつつ、支持部材を部分的に撓みやすくすることができる。
【0014】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記第1取付片開口は、少なくとも1つの内側開口(42a)と、前記内側開口に対して左右それぞれに設けられた外側開口(42b)とを有し、前記内側開口は、前記外側開口よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、内側開口が外側開口よりも大きいため、支持部材の左右方向内側を撓みやすくでき、圧力センサに極端な負荷が加わることを抑制できる。
【0016】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、左右方向の延在範囲において、前記内側開口は前記外側開口よりも前記センサ載置部に重なる範囲が広いことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、左右方向の延在範囲において内側開口は外側開口よりもセンサ載置部に重なる範囲が広いため、センサ載置部を撓みやすくすることができる。
【0018】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、第1取付片開口を有する上記構成の何れかにおいて、前記センサ載置部は、前記圧力センサに係合する係合爪(46)を有し、前記係合爪は、前記第1一側取付片の左右両側縁よりも左右方向の内側に位置することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、前部クロスメンバへの固定強度が強い位置に設けられた係合爪によって圧力センサを係合することにより、圧力センサを安定させることができる。
【0020】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成において、前記係合爪は、前後方向において、前記第1取付片開口の少なくとも一部に整合していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前後方向から見て係合爪が第1取付片開口の少なくとも一部に重なるため、第1取付片開口の近傍の撓みによって、係合爪が圧力センサに加わる圧力に影響を与えることを抑制できる。
【0022】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記一側取付部は、前記第1一側取付片の左方及び右方に設けられた1対の第2一側取付片(22b)を有し、前記第2一側取付片は、第2取付片開口(43)と、左右側縁の外側に設けられた切欠き(44)とを有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、第2一側取付片が第2取付片開口及び切欠きを有することにより、支持部材の左右方向外側を撓みやすくすることができる。
【0024】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、上記構成の何れかにおいて、前記センサ載置部は、前記圧力センサの左右両側縁を係止する左右1対の係止リブ(47)を有し、左右1対の前記係止リブは、前記第1一側取付片の左右両側縁よりも左右方向の内側に位置することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、左右1対の係止リブによって圧力センサを安定させることができる。
【0026】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(3)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ(14)、前記サイドメンバの前後方向の一側の端部同士を接続する第1クロスメンバ(15)、及び前記サイドメンバの前後方向の他側の端部同士を接続する第2クロスメンバ(16)を有する枠形のフレーム(7)と、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体、前記本体の前記一側の縁から延出して前記第1クロスメンバに係合する第1取付部(22)、及び前記本体の前記他側の縁から延出して前記第2クロスメンバに係合する第2取付部(23)を有して、乗員を支持する支持部材(8)と、前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッド(9)と、前記パッドを覆う表皮材(10)と、前記支持部材の表側に取り付けられた圧力センサ(25)とを有し、前記支持部材は、前記圧力センサに対して左右方向にずれた位置にクリップを取付可能なクリップ取付孔を有することを特徴とする。前記クリップ取付孔は、前記圧力センサに対して前後方向にずれた位置に設けられることが好ましい。前記支持部材の表面は、前記開口の左右方向の外方に凹部(40)を有し、前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記凹部に設けられることが好ましい。前記支持部材は、前記本体の後部(20a)の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる左右1対の傾斜部(21)を更に有し、前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、左右1対の前記傾斜部の左右方向の内側の縁部よりも左右内方に設けられることが好ましい。前記本体の前記後部には、前記クリップ取付孔が設けられていないことが好ましい。前記圧力センサは、前記傾斜部よりも前方に配置され、前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記支持部材における前記圧力センサの後縁よりも後方に設けられることが好ましい。前記支持部材における前記傾斜部よりも前方の部分(20b)を、左右方向の最大幅の部分の左右方向幅で3等分して、中央領域及び左右2つの側部領域に分けたとき、各々の前記側部領域に含まれる前記クリップ取付孔の数は、前記中央領域に含まれる前記クリップ取付孔の数よりも多いことが好ましい。前記支持部材の左右の側縁には、前記傾斜部の前方に側部切欠き(33)が設けられており、前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記側部切欠きに対して左右に整合する位置に設けられることが好ましい。前記クリップ取付孔の少なくとも2つは、互いに前後に並んで配置されることが好ましい。
【0027】
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、シートクッション(3)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションに設けられ、左右一対のサイドメンバ(14)、並びに前記サイドメンバの前方及び後方の対応する端部同士をそれぞれ接続する前部クロスメンバ(15)及び後部クロスメンバ(16)を有する枠形のフレーム(7)と、前記フレーム内に位置するように前記フレームに支持され、前記フレームと略平行に延びる板状の本体(20)、前記本体の後部(20a)の左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部(21)、前記本体の前縁から延出して前記前部クロスメンバに係合する前部取付部(22)、及び前記本体の後縁から延出して前記後部クロスメンバに係合する後部取付部(23)を有して、乗員を支持する支持部材(8)と、前記フレーム及び前記支持部材の表側に配置されたパッド(9)と、前記パッドを覆う表皮材(10)と、前記支持部材の前記本体における前記傾斜部よりも前方に位置する前部(20b)の表側に取り付けられた圧力センサ(25)とを有し、前記支持部材の左右の側縁には、前記傾斜部の前方であって前記前部の後端部に側部切欠き(33)が設けられており、かつ、前記前部の左右両端縁の中間部が前記前部取付部の左右両端縁よりも外方に位置することによって、前記前部は左右両側部に羽部を有することを特徴とする。前記羽部の一部は、前記圧力センサに対して左右方向に整合していることが好ましい。前記支持部材は、前記圧力センサの左右に設けられた1対の開口(28)を有し、前記開口の前後方向長さは、前記圧力センサの前後方向長さの1.2倍以下であることが好ましい。前記羽部は、クリップ(32)が取付可能なクリップ取付孔(35)を有することが好ましい。前記シートクッションの昇降を規制するハイトブレーキを更に有し、前記クリップは、平面視で前記ハイトブレーキを避けた位置に配置されることが好ましい。前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記羽部及び前記前部取付部の近傍に設けられることが好ましい。前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記圧力センサに対して左右方向に整合していることが好ましい。前記支持部材において前記圧力センサが載置されるセンサ載置部(26)は、載置部開口(45)を有し、前記クリップ取付孔の少なくとも一部は、前記載置部開口に対して左右方向に整合していることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、圧力センサが傾斜部に対して前方にずれて配置され、かつ圧力センサの左右に開口が設けられたことによって圧力センサに加わる圧力が増大し、前後方向において圧力センサに整合する第1前部取付片の幅が広いことによって圧力センサの揺れが抑制されるため、着座判定の正確性を向上させることができる。
【0029】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、前後方向から見てセンサ載置部が第1前部取付片に重なるように配置され、前部クロスメンバに固定される第1前部取付片によってセンサ載置部を安定させることができる。
【0030】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、クリップ取付孔によって他部材を保持したクリップを支持部材に取り付けることができるとともに、クリップ取付孔が第1前部取付片に対して左右方向にずれているためセンサ載置部の前後位置の剛性を損なわない。
【0031】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第1前部取付片が第1取付片開口を有するため、第1前部取付片の前部クロスメンバへの固定強度の低下を抑制しつつ、支持部材を部分的に撓みやすくすることができる。
【0032】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第1前部取付片における内側開口が外側開口よりも大きいため、支持部材の左右方向内側を撓みやすくすることができ、圧力センサに極端な負荷が加わることを抑制できる。
【0033】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、左右方向の延在範囲において内側開口は外側開口よりもセンサ載置部に重なる範囲が広いため、センサ載置部を撓みやすくすることができる。
【0034】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、前部クロスメンバへの固定強度が強い位置に設けられた係合爪によって圧力センサを係合することにより、圧力センサを安定させることができる。
【0035】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、前後方向から見て係合爪が第1取付片開口の少なくとも一部に重なるため、第1取付片開口の近傍の撓みによって、係合爪が圧力センサに加わる圧力に影響を与えることを抑制できる。
【0036】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、第2前部取付片が第2取付片開口及び切欠きを有することにより、支持部材の左右方向外側を撓みやすくすることができる。
【0037】
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、左右1対の係止リブによって圧力センサを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】実施形態に係るフレーム及び支持部材の平面図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、前後、左右及び上下の方向は、特に説明しない限り車両の前後、左右及び上下の方向に従う。
【0040】
図1に示すように、シート1は、車両の運転席又は助手席として使用され、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4を有する。シートクッション2は、車室のフロア5に固定された左右一対のスライドレール6に前後にスライド移動可能に支持される。また、シート1は、フレーム7及び支持部材8(
図2参照)上に配置されたウレタンフォーム等からなる可撓性のパッド9と、パッド9を覆う表皮材10とを有する。スライドレール6は、フロア5に結合されたロアレール11と、ロアレール11に前後にスライド移動可能に支持されたアッパレール12とを有する。
【0041】
シートクッション2は、
図2に示すように、枠形のフレーム7と、フレーム7内に位置するように、フレーム7に支持されて、表皮材10及びパッド9(
図1参照)を介してシート1の乗員の荷重を弾発的に支持する支持部材8とを有する。フレーム7及び支持部材8は、その左右方向に直交する中央の平面に対して、略鏡像対称形をなす。
【0042】
フレーム7は、左右一対のサイドメンバ14,14と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部を互いに接続する前部クロスメンバ15と、左右一対のサイドメンバ14,14の後端部を互いに接続する後部クロスメンバ16と、左右一対のサイドメンバ14,14の前端部に連結して左右の中間部が前部クロスメンバ15よりも前方に位置するパンフレーム17とを有する。左右一対のサイドメンバ14,14は、板金からなる前後に長い長尺材であり、上下にフランジが形成されている。前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16は、左右方向に延在する金属製のパイプからなる。パンフレーム17は、板金からなり、概ね座面の前部に沿った表面を有する。
【0043】
図2及び
図3に示すように、支持部材8は、フレーム7に対して略平行に延在する板状の本体20と、本体20の後部20aにおける左右の側縁から表側に傾斜して外方に延びる傾斜部21と、本体20の前縁から前方に延出して前部クロスメンバ15に係合する前部取付部22と、本体20の後縁から斜め上後方に延出して後部クロスメンバ16に係合する後部取付部23とを有する。本体20は、その後部20aの前後方向の中間位置を境にして、その前側が、その後側に対して前方に向かうにつれて上方に向かうようにわずかに傾斜している。支持部材8は、金属製のワイヤー24がインサート成形された樹脂によって形成され、乗員の荷重を受けて撓み、乗員を弾発的に支持する。前部取付部22は、前部クロスメンバ15に上方から係合しており、左右方向の中央に位置する第1前部取付片22aと、左右の端部近傍に位置する1対の第2前部取付片22b、22bとを有する。後部取付部23は、後部クロスメンバ16に上方から係合しており、左右方向の中央に位置する第1後部取付片23aと、左右の端部近傍に位置する1対の第2後部取付片23b、23bとを有する。このように、前部取付部22及び後部取付部23は、それぞれ3つに分離しているため、前部クロスメンバ15及び後部クロスメンバ16に取り付けやすくなっている。
【0044】
シート1(
図1参照)には、乗員が着座しているにもかかわらずシートベルトを着用していない場合に警報が発せられるシートベルトリマインダ(SBR)システムが採用されており、そのために圧力センサ25が設置される。本体20の前部20b又は本体20の前後方向の中央より前側における左右方向の中央部の表側には、圧力センサ25が載置されるセンサ載置部26が形成されている。圧力センサ25は、乗員がシート1に着座しているか否かを判断するために、シートクッション2にかかる圧力を検出する。本体20の後部20aは、傾斜部21によって乗員の荷重が分散されるため、着座時に係る圧力が小さくなる。そこで、傾斜部21による圧力分散の影響を受けないように、圧力センサ25は、傾斜部21に対して前方にずれた位置に配置される。従って、圧力センサ25から信号を受信したECU等の着座判定手段(図示せず)による着座の判定の正確性が向上する。
【0045】
シート1(
図1参照)には、シート1の表面に対して空気を吸引又は送風して湿度を調整するエアーベンチレーションシステムが採用されており、本体20におけるセンサ載置部26の左右には、空気の通路となるように上下に貫通した一対の空気用開口28,28が設けられている。各々の空気用開口28は平面視で概ね矩形をなし、空気用開口28,28の左右方向内側の側縁が、センサ載置部26の左右両側縁を画定している。一対の空気用開口28,28に挟まれたセンサ載置部26の形成する樹脂部分には、縦方向に沿って通過する、補強のためのワイヤー24が埋設されている。
【0046】
また、本体20の後部20aには、表皮材10の端部に取り付けられた複数のフック(図示せず)を係止するとともに支持部材8の撓みを調整する貫通孔であって、左右方向の中央に位置する中央係止孔29及び中央係止孔29の左右に位置する一対の側部係止孔30,30が設けられている。中央係止孔29及び一対の側部係止孔30,30は、それぞれ、平面視で矩形をなす。
【0047】
傾斜部21には、下方(本体20に垂直な方向の裏向き)に向けて突出する筒状部31が形成されており、筒状部31には、下方からクリップ32を取り付けることができる。クリップ32は、下部において他部材を保持し、上部において筒状部31の底壁に設けられた貫通孔に嵌合して筒状部31の底壁の上面に係止されることによって支持部材8に固定される。筒状部31に係合したクリップ32の上端が、筒状部31内に位置して傾斜部21の表面から上方に突出しないため、クリップ32を筒状部31に取り付けても着座感に影響を与えない。
【0048】
支持部材8の左右の側縁には、傾斜部21の前方であって本体20の前部20bの後端部に側部切欠き33が形成されている。側部切欠き33を設けることによって、支持部材8を小型化及び軽量化できる。
【0049】
側部切欠き33が設けられ、かつ、前部20bの左右両端縁の中間部が前部取付部22の左右両端縁よりも外方に位置することによって、前部20bには左右両側部に羽部34が形成されている。羽部34は、前部20bの左右方向の中間部に対して傾斜していない。羽部34の一部は、圧力センサ25に対して左右方向に整合している。羽部34によって、前部20bに加わる荷重が分散されるため、圧力センサ25に過大な荷重が加わることが抑制される。前部20bの前後方向長さは、後部20aの前後方向長さよりも短く、羽部34の左右方向の外縁は、傾斜部21の左右方向の外縁よりも内方に位置する。このため、前部20bにかかる荷重が小さくなり、後部20aにかかる荷重は側方に分散するため、全体として支持部材8の強度が向上する。羽部34及びセンサ載置部26の間の剛性の低下を抑制するべく、空気用開口28の前後方向長さは、圧力センサの前後方向長さの1.2倍以下であることが好ましい。
【0050】
前部20bには、クリップ32を取り付けるためのクリップ取付孔35が複数設けられている。クリップ取付孔35は、センサ載置部26に対して左右及び前後にずれた位置に設けられている。クリップ取付孔35から支持部材8の表側に突出したクリップ32の先端によって圧力センサ25に加わる圧力が影響を受けるおそれがあるが、クリップ取付孔35がセンサ載置部26に対して前後及び左右にずれた位置に設けられているため、その影響が抑制される。なお、支持部材8におけるセンサ載置部26の近傍を撓みやすくするため、クリップ取付孔35の一部の配置を、センサ載置部26に対して前後にずらすことに代え、前後にずれない(左右方向に整合する)位置に設けてもよい。センサ載置部26と後部20aとの間のスペースを有効利用するため、クリップ取付孔35の一部は、圧力センサ25の後縁よりも後方に設けられる。また、支持部材8の前部20bを、左右方向の最大幅の部分の左右方向幅で3等分して、中央領域A及び左右2つの側部領域B,Bに分けたとき、各々の側部領域Bに含まれるクリップ取付孔35の数は、中央領域Aに含まれるクリップ取付孔35の数よりも多い。このようにクリップ取付孔35を配置することにより、圧力センサ25に近い中央領域Aの剛性の低下を抑制することができる。また、クリップ取付孔35の一部は、側部切欠き33に対して左右に整合する位置に設けられている。これにより、圧力センサ25が荷重を受けた際に、傾斜部21よりも前部20b側の領域を撓みやすくすることができる。また、左右方向の空間を有効利用するため、クリップ取付孔35の一部は、互いに前後に並んで配置されることが好ましい。クリップ32の取付可能位置を増加させるため、羽部34にクリップ取付孔35を設けてもよい。なお、クリップ32及びクリップ32に保持される部材は、シートクッション2の昇降を規制するハイトブレーキ(図示せず)に影響を与えないように、平面視でハイトブレーキを避けて配置されることが好ましい。また、クリップ取付孔35の一部は、羽部34及び第2前部取付片22bの近傍に設けられ、その周囲の剛性を弱めることが好ましい。クリップ取付孔35は、傾斜部21よりも前方に位置する前部20bに配置され、本体20の後部20aには設けないことが好ましい。乗員の荷重は、傾斜部21と傾斜部21が左右に隣接する後部20aとに加わりやすいため、比較的荷重を受け難い前部20bにクリップ取付孔35を設けることより、後部20aの強度の低下を抑制できる。クリップ取付孔35の一部は、左右1対の傾斜部21,21の左右方向の内側の縁部よりも左右内方に設けられている。このように配置されたクリップ取付孔35は傾斜部21よりも低い位置に存在するため、支持部材8の裏側に取り付けられたクリップ32の先端が表側に突出していても、クリップ32の先端が着座感に与える影響は小さくなる。
【0051】
本体20の前部20bにおける空気用開口28よりも左右外方の部分は、側面視で前方が後方に比べて低くなるようなクランク形状36を有し、側部切欠き33によって低下した剛性を補っている。クランク形状36は、前方が後方よりも低いため、乗員の脚にかかる負担は小さい。また、本体20における左右一対の空気用開口28,28のそれぞれの左右外側の近傍部分は、本体20の前部20bにおけるクランク形状36によって低くなった部分に連結するように正面視で屈曲する屈曲部37を有する。屈曲部37は、空気用開口28の近傍から、本体20の前縁の近傍まで延出している。屈曲部37により、左右一対の空気用開口28,28により低下した剛性を補っている。羽部34の左右方向の外側の縁部には、表側に突出したフランジ38が設けられている。また、前部20bには、屈曲部37の前端から左右方向の外方に延びてフランジ38の前端に至る前壁部39が設けられている。クランク形状36、屈曲部37、フランジ38及び前壁部39によって、前部20bの左右の両側部の前側の表面に凹部40が画成される。また、凹部40によって低くなった部分にクリップ取付孔35を設け、その裏側にクリップ32によって他部材を取り付ける場合、表側に突出するクリップ32の先端による影響が凹部40によって緩和され、着座感の低下や圧力センサ25への影響が抑制される。また、前側が低くなっても後側で乗員の臀部を支持するため、凹部40が臀部の支持に与える影響は小さく、着座感の低下が抑制される凹部40を画成するクランク形状36、屈曲部37、フランジ38及び前壁部39によってその周囲の剛性が向上するため、左右両側部に配置された第2前部取付片22bの前部クロスメンバ15への取り付け安定性が向上する。
【0052】
センサ載置部26から第1前部取付片22aの間は、ワイヤー24を埋設する連結部41が形成されている。第1前部取付片22aの外輪郭は平面視で略矩形であり、その左右方向の幅は、センサ載置部26の左右方向幅よりも広い。このため、支持部材8の前後方向を軸とした揺れが抑制される。好ましくは、センサ載置部26の左側縁は、第1前部取付片22aの左側縁よりも右方に位置し、センサ載置部26の右側縁は、第1前部取付片22aの右側縁よりも左方に位置する。
【0053】
第1前部取付片22aは、前部クロスメンバ15に係合する湾曲部に第1取付片開口42を有する。第1取付片開口42によって、第1前部取付片22aの前部クロスメンバ15への取付強度の低下を抑制しつつ、支持部材8を部分的に撓みやすくできる。第1取付片開口42は、2つの内側開口42aと、内側開口42aに対して左右方向の外方に設けられた2つの外側開口42bとを有する。内側開口42a及び外側開口42bの左右方向長さは互いに略等しく、内側開口42aの前後方向長さは外側開口42bの前後方向長さよりも長い。このような内側開口42aと外側開口42bとの大きさの違いによって、支持部材8の左右方向内側が撓みやすくなり、圧力センサ25に極端な負荷が加わることを抑制できる。また、左右方向の延在範囲において、内側開口42aは外側開口42bよりも前記センサ載置部に重なる範囲が広いため、センサ載置部26が撓みやすくなっている。
【0054】
第2前部取付片22bは、前部クロスメンバ15に係合する湾曲部に、第2取付片開口43と、左右方向の外側の側縁に設けられた切欠き44とを有する。第2取付片開口43及び切欠き44の左右方向長さは互いに略等しく、前後方向長さも互いに略等しい。第2取付片開口43及び切欠き44によって、第2前部取付片22bの前部クロスメンバ15への取付強度の低下を抑制しつつ、支持部材8の左右方向の外側を撓みやすくできる。
【0055】
センサ載置部26には、上方が圧力センサ25によって覆われる載置部開口45と、圧力センサ25に係合する係合爪46と、圧力センサ25の左右両側縁を係止する左右1対の係止リブ47,47とを有する。センサ載置部26が第1前部取付片22aに対して前後方向に整合しているため、圧力センサ25は支持部材8の中で比較的安定した部位に取り付けられるが、更に係合爪46によって係合され、第1前部取付片22aの左右両側縁よりも左右方向の内側に位置する係止リブ47に係止されるため、圧力センサ25は更に安定する。また、係合爪46は、第1前部取付片22aの左右両側縁よりも左右方向の内側に位置し、前後方向において、第1取付片開口42の少なくとも一部に整合している。このため、圧力センサ25に荷重が加わった際に荷重を受ける支持部材の部位を前部クロスメンバ15に対して撓みやすくできる。センサ載置部26及びその近傍を撓みやすくするため、載置部開口45は、クリップ取付孔35の一部と左右方向に整合していることが好ましい。
【0056】
図3に示すように、パンフレーム17にクリップ取付孔35を設けてもよい。
【0057】
圧力センサ25が傾斜部21に対して前方にずれて配置され、圧力センサ25の左右に空気用開口28,28が設けられたことによって、圧力センサ25に加わる圧力が増大する。空気用開口28,28を設けたことによってセンサ載置部26の安定性が低下するが、前後方向において圧力センサ25に整合する第1前部取付片22aの左右方向幅がセンサ載置部26の左右方向幅よりも広いことによって圧力センサ25の揺れが抑制される。このように、圧力センサ25に加わる圧力が増大するとともにセンサ載置部26が安定するため、着座判定の正確性が向上する。
【0058】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態の構成は、車両以外の乗物、例えば飛行機等のシートに適用してもよい。センサ載置部が、前後方向の中央よりも後側に設けられて、上記実施形態に記載した圧力センサと前部取付部との関係が、圧力センサと後部取付片との関係に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1:シート
2:シートクッション
8:支持部材
9:パッド
10:表皮材
14:サイドメンバ
15:前部クロスメンバ(第1クロスメンバ)
16:後部クロスメンバ(第2クロスメンバ)
20:本体
20a:後部
20b:前部
21:傾斜部
22:前部取付部(第1取付部)
22a:第1前部取付片(第1一側取付片)
22b:第2前部取付片(第2一側取付片)
23:後部取付部(第2取付部)
25:圧力センサ
26:センサ載置部
28:空気用開口(開口)
32:クリップ
33:側部切欠き
34:羽部
35:クリップ取付孔
42:第1取付片開口
42a:内側開口
42b:外側開口
43:第2取付片開口
44:切欠き
45:載置部開口
46:係合爪
47:係止リブ