(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
H02K33/16 A
(21)【出願番号】P 2019062559
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013094(JP,A)
【文献】特開2004-000925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
可動体と、
前記可動体と前記支持体とに接続される接続体と、
前記可動体を移動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに対向する磁石と、を備え、
前記接続体は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備え、
前記コイルと前記磁石とが対向する対向方向を第1方向、前記可動体の移動方向を第2方向、第1方向および第2方向と直交する方向を第3方向としたときに、前記可動体は、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第1方向で対向する第1板部および第2板部と、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第3方向で対向して前記第1板部と前記第2板部とを接続する一対の接続部と、を備え
、
前記支持体は、前記コイルと、前記コイルを保持するコイルホルダと、を備え、
前記可動体は、前記磁石を備え、
前記第1板部および前記第2板部は、前記第1方向の両側から前記コイルホルダを挟んでおり、
前記コイルホルダは、前記第1方向から見た場合に一対の前記接続部と重なる位置に、前記第2方向に延びる一対の長穴と、前記第1板部および前記第2板部の前記第2方向の両側が当接することによって、前記可動体が前記第2方向に移動する際の可動範囲を規定する度当たり部と、を備え、
各接続部は、前記第2方向に移動可能な状態で各長穴を貫通することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1板部および前記第2板部は、磁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
一対の前記接続部のそれぞれは、前記第1板部と一体に形成された第1接続部分、および、前記第2板部と一体に形成された第2接続部分を備え、
前記第1接続部分と前記第2接続部分とは、前記第1方向に対して垂直な面を基準とし
て対称な形状であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
一対の前記接続部は、前記第1板部または前記第2板部と一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
一対の前記接続部は、前記第1板部および前記第2板部と別体であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
給電基板を有し、
前記給電基板は、前記支持体の前記第3方向の一方側に配置されており、
前記コイルから引き出されたコイル線は、一対の前記長穴のうち前記第3方向の一方側に位置する長穴の前記第2方向を経由して前記給電基板に接続されることを特徴とする請求項
1から5のうちいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
給電基板を有し、
前記給電基板は、前記支持体の前記第2方向の一方側に配置されていることを特徴とする請求項1から
5のうちいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
情報を振動によって報知するデバイスとして用いられるアクチュエータは特許文献1に開示されている。特許文献1のアクチュエータは、永久磁石を備えた可動体と、コイルを備えた支持体と、を有する。可動体は、振動方向と直交する方向で対向する第1ヨークおよび第2ヨークを備えており、第1ヨークと第2ヨークの間に永久磁石とコイルとが配置される。永久磁石は、第1ヨークに固定される第1磁石、および、第2ヨークに固定される第2磁石を備える。第1磁石および第2磁石は、コイルに対して振動方向と直交する方向で対向する。
【0003】
特許文献1のアクチュエータでは、第1ヨークは、第1磁石を保持する第1板部と、第1板部の振動方向の両端からそれぞれ第2ヨークの側へ折れ曲がって延びる一対の接続部を備える。第2ヨークは、振動方向の両端が、一対の接続部の先端に固定される。各接続部は、振動方向に対して垂直な壁状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動体が振動方向の両端に垂直な壁状の部分(一対の接続部)を備える場合には、可動体の移動距離が2枚の壁状の部分の厚み分だけ短く制限されるという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体の移動距離を確保することが容易なアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、支持体と、可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続される接続体と、前記可動体を移動させる磁気駆動回路と、を有し、前記磁気駆動回路は、前記支持体および前記可動体のうちの一方側部材に設けられたコイルと、前記支持体および前記可動体のうちの他方側部材に設けられて前記コイルに対向する磁石と、を備え、前記接続体は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備え、前記コイルと前記磁石とが対向する対向方向を第1方向、前記可動体の移動方向を第2方向、第1方向および第2方向と直交する方向を第3方向としたときに、前記可動体は、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第1方向で対向する第1板部および第2板部と、前記コイルおよび前記磁石を挟んで前記第3方向で対向して前記第1板部と前記第2板部とを接続する一対の接続部と、を備え、前記支持体は、前記コイルと、前記コイルを保持するコイルホルダと、を備え、前記可動体は、前記磁石を備え、前記第1板部および前記第2板部は、前記第1方向の両側から前記コイルホルダを挟んでおり、前記コイルホルダは、前記第1方向から見た場合に一対の前記接続部と重なる位置に、前記第2方向に延びる一対の長穴と、前記第1板部および前記第2板部の前記第2方向の両側が当接することによって、前記可動体が前記第2方向に移動する際の可動範囲を規定する度当たり部と、を備え、各接続部は、前記第2方向に移動可能な状態で各長穴を貫通することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1板部および第2板部は、可動体の移動方向と直交する第3方向に設けられた接続部によって接続される。これにより可動体が移動方向の両端に垂直な壁状の部分を備える必要がないので、その分だけ、可動体の移動距離を長く確保できる。また
、コイルが支持体に設けられていれば、コイルが可動体に設けられている場合と比較して、コイルへの配線が容易となる。また、可動体が移動する際にコイルへの配線が変形することによる負荷が発生しない。また、このようにすれば、接続部と長穴の内壁面との当接によって、可動体の第2方向の可動範囲を規定できる。
【0009】
本発明において、前記第1板部および前記第2板部は、磁性材料からなるものとすることができる。コイルおよび磁石を挟んで第1方向で対向する第1板部および第2板部を磁
性材料とすれば、第1板部および第2板部はヨークとして機能する。これにより、漏れ磁束の発生を抑制できるので、磁気駆動回路の駆動力を確保することが容易となる。
【0010】
本発明において、一対の前記接続部のそれぞれは、前記第1板部と一体に形成された第1接続部分、および、前記第2板部と一体に形成された第2接続部分を備え、前記第1接続部分と前記第2接続部分は、前記第1方向に対して垂直な面を基準として対称な形状であることが望ましい。また、磁石とコイルを第1方向の一方側から囲む部材(第1板部および第1接続部分によって構成される部材)と、磁石とコイルを第1方向の他方側から囲む部材(第2板部および第2接続部分によって構成される部材)とを同一形状にすることができる。従って、部品を共通化でき、部品点数を削減できる。
【0011】
本発明において、一対の前記接続部は、前記第1板部または前記第2板部と一体に形成されているものとすることができる。接続部が第1板部または第2板部と一体になっていれば、接続部が、第1板部および第2板部と別体の場合と比較して、部品点数を少なくすることができる。
【0012】
本発明において、一対の前記接続部は、前記第1板部および前記第2板部と別体であってもよい。接続部を、第1板部および第2板部と別の部材にすれば、接続部の部品形状の自由度が高まる。
【0015】
本発明において、給電基板を有し、前記給電基板は、前記可動体の前記第3方向の一方側に配置されており、前記コイルから引き出されたコイル線は、一対の前記長穴のうち前記第3方向の一方側に位置する長穴の前記第2方向を経由して前記給電基板に接続されるものとすることができる。このようにすれば、給電基板が可動体の移動方向と直交する第3方向に配置されるので、給電基板によって可動体の移動距離が制限されることはない。また、このようにすれば、コイルから引き出されて給電基板に接続されるコイル線が可動体と干渉することを回避できる。
【0016】
本発明において、給電基板を有し、前記給電基板は、前記支持体の前記第2方向の一方側に配置されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、可動体の第1板部および第2板部は、移動方向と直交する第3方向に設けられた接続部によって接続される。これにより、可動体が移動方向の両端に垂直な壁状の部分を備える必要がないので、その分だけ、可動体の移動距離を長く確保できる。また、可動体が移動方向の両端に垂直な壁状の部分を備える必要がないので、可動体の振動時に空気を押す部分の面積を小さくできる。従って、可動体の移動時に空気が押されることに起因する動作音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用したアクチュエータの外観斜視図である。
【
図2】
図1のアクチュエータのA-A断面図である。
【
図4】ケースを取り外したアクチュエータの分解斜視図である。
【
図5】支持体を第1方向の他方側からみた分解斜視図である。
【
図6】支持体を第1方向の一方側からみた分解斜視図である。
【
図7】
図1のアクチュエータのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明のアクチュエータの実施の形態を説明する。
図1は本発明を適用したアクチュエータ1の外観斜視図である。
図2は、アクチュエータ1の断面図(
図1のA-A断面図)である。
図3は、アクチュエータ1の分解斜視図である。
図4は、ケース3を取り外したアクチュエータ1の分解斜視図である。
図5は、支持体2を第1方向Zの他方側Z2からみた分解斜視図である。
図6は、支持体2を第1方向Zの一方側Z1からみた分解斜視図である。
図7は、アクチュエータの断面斜視図(
図1のB-B断面図)である。
【0020】
(全体構成)
図1、
図2に示すように、アクチュエータ1は、直方体形状である。アクチュエータ1は、アクチュエータ1の外形を規定する角形のケース3等を含む支持体2と、ケース3の内部において支持体2に対して相対移動可能に支持された可動体6と、を有する。支持体2は、ケース3、コイルホルダ4、コイル5、および給電基板10を備える。可動体6は、磁石7およびヨーク8を備える。コイル5と磁石7とは、対向しており、可動体6を移動させる磁気駆動回路1aを構成する。コイル5と磁石7とが対向する対向方向は、可動体6が移動する移動方向と直交する。また、アクチュエータ1は、可動体6と支持体2との間に配置された接続体91、92を備える。可動体6は、接続体91、92を介して、支持体2に支持される。接続体91、92は、可動体6を移動方向に変位可能に支持する。接続体91、92は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。
【0021】
以下の説明では、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとする。本例において、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。第1方向Zは、コイル5と磁石7とが対向する対向方向である。第2方向Xは、可動体6の移動方向である。アクチュエータ1は、長手方向を第3方向Yに向けている。また、以下では、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付し、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付して説明する。
【0022】
アクチュエータ1は、可動体6が第2方向Xに振動することにより、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者の身体を通して利用者に情報を報知する。従って、アクチュエータ1は、可動体6の第2方向Xの振動によって利用者に触覚を与える触覚デバイスとして使用することができ、例えば、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルやイス等に組み込んで利用することができる。アクチュエータ1を触覚デバイスとして使用する際、例えば、コイル5に印加する交流波形を調整して、可動体6が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体6が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0023】
ここで、本発明を適用したアクチュエータ1の磁気駆動回路1aは、コイル5が支持体
2(一方側部材)の側に設けられ、磁石が可動体6(他方側部材)の側に設けられた態様、および、磁石7が支持体2(他方側部材)の側に設けられ、コイル5が可動体6(一方側部材)の側に設けられた態様を採用することができる。以下に説明する実施例は、コイル5を保持する一方側部材が支持体2であり、磁石7を保持する他方側部材が可動体6である。
【0024】
(可動体)
図2、
図4に示すように、本例は、磁石7として、第1永久磁石71および第2永久磁石を備える。第1永久磁石71は、コイル5に第1方向Zの一方側Z1で対向し、第2永久磁石72は、コイル5に第1方向Zの他方側Z2で対向する。第1永久磁石71および第2永久磁石72は各々、第2方向Xの一方側X1と第2方向Xの他方側X2とが異なる極に着磁されている。
【0025】
ヨーク8は、磁性材料からなる。ヨーク8は磁石7を保持する。
図3に示すように、ヨーク8は、第1ヨーク81および第2ヨーク82の2部材を備える。第1ヨーク81は、平板状の第1板部811を備える。第2ヨーク82は、第1板部811と第1方向Zで対向する第2板部821を備える。第1板部811および第2板部821は、第3方向Yを長手方向とする略長方形である。第1永久磁石71は第1板部811に固定されている。第2永久磁石72は第2板部821に固定されている。
【0026】
図4に示すように、第1ヨーク81は、第1板部811の第3方向Yの中間部分から第2方向Xの一方側X1および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部812を備える。第2ヨーク82は、第2板部821の第3方向Yの中間部分から第2方向Xの一方側X1および他方側X2へ張り出した一対の張り出し部822を備える。
図2に示すように、第1永久磁石71は、第1板部811の第1方向Zの他方側Z2の面に保持される。また、第2永久磁石72は、第2板部821の第1方向Zの一方側Z1の面に保持される。
【0027】
また、ヨーク8は、第1板部811と第2板部821を第3方向Yで離間した2箇所で接続する一対の接続部88を備える。一対の接続部88は、コイル5および磁石7を挟んで第3方向Yで対向する。各接続部88は、第1板部811の第3方向Yの一方側Y1および他方側Y2の端部からそれぞれ第1方向Zの他方側Z2へ延びる第1接続部分88aと、第2板部821の第3方向Yの一方側Y1および他方側Y2の端部からそれぞれ第1方向Zの一方側Z1へ延びる第2接続部分88bを備える。すなわち、第1接続部分88aは、第1板部811と一体に形成されている。第2接続部分88bは、第2板部821と一体に形成されている。第1接続部分88aの第1方向Zの他方側Z2の端部は、溶接により、第2接続部分88bの第1方向Zの一方側Z1の端部に固定される。
【0028】
(支持体)
図1~
図3に示すように、支持体2において、アクチュエータ1の外形を規定するケース3は、第1ケース部材31と、第1ケース部材31の第1方向Zの他方側Z2に重ねられた第2ケース部材32と、を備える。第1ケース部材31と第2ケース部材32との間には、コイルホルダ4、コイル5および可動体6が収容される。ケース3は、第1ケース部材31の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部311に、第2ケース部材32の第2方向Xの両側に設けられた一対の側板部321が被さった状態に組み立てられる。ケース3の第3方向Yの両端は開口部になっており、第3方向Yの一方側Y1の開口部に給電基板10が配置される。
【0029】
第1ケース部材31の一対の側板部311には、第3方向Yの両端部に切欠き311a、311bが形成されている。第2ケース部材32の一対の側板部321には、第3方向Yの両端部に切欠き321a、321bが形成されている。また、第2ケース部材32の
側板部321において第3方向Yで離間する2箇所には、係合穴321dが形成されている。
【0030】
図5に示すように、コイルホルダ4は、第1方向Zから見て第3方向Yに長い長方形である。
図3に示すように、コイルホルダ4の第2方向Xの一方側X1の側面には、第3方向Yの両端の2箇所に凸部414e、418eが形成されるとともに、第3方向Yで離間する2箇所に係合凸部414d、418dが形成されている。
【0031】
図1に示すように、ケース3は、コイルホルダ4の凸部414e、418eが、第1ケース部材31の切欠き311aおよび第2ケース部材32の切欠き321aに嵌まるとともに、コイルホルダ4の係合凸部414d、418dが、第2ケース部材32の係合穴321dに係合されるように組み立てられる。コイルホルダ4の第2方向Xの他方側X2の側面にも、同様に、第1ケース部材31の切欠き311aおよび第2ケース部材32の切欠き321aに嵌まる凸部が形成されるとともに、第2ケース部材32の係合穴321dに係合される係合突部が形成されている。
【0032】
図5、
図6に示すように、コイル5は、長円状に巻回された環状の平面形状を有する空芯コイルである。コイル5はコイルホルダ4に保持される。コイル5は、第2方向Xで並列して第3方向Yに延びる2つの長辺部51と、2つの長辺部51の第3方向Yの両端を繋ぐ円弧状の2つの短辺部52とを備えている。可動体6と支持体2とを組み立てると、コイル5の長辺部51には、第1方向Zの一方側Z1で第1永久磁石71が対向し、第1方向Zの他方側Z2で第2永久磁石72が対向する。
【0033】
コイルホルダ4は、第1方向Zから見て第3方向Yに長い長方形である。コイルホルダ4は、第2方向Xの中央において第3方向Yに延びる板部41を備える。板部41の第3方向Yの中央部分には、コイル配置穴410が第1方向Zで開口している。コイル配置穴410は、コイル5が内側に配置される長円状の貫通穴である。また、板部41には、第3方向Yにおけるコイル配置穴410の両側に一対のホルダ貫通穴61が設けられている。ホルダ貫通穴61はコイルホルダ4を第1方向Zに貫通する。すなわち、ホルダ貫通穴61は第1方向Zで開口している。一対のホルダ貫通穴61のそれぞれは、第2方向Xに延びる長穴である。
【0034】
コイルホルダ4には、板部41に対して第1方向Zの一方側Z1および他方側Z2から重なるように第1プレート47および第2プレート48が取り付けられる。第1プレート47および第2プレート48は、非磁性材料からなる。本例では、第1プレート47および第2プレート48は、非磁性のステンレンス板からなる。第1プレート47には、コイルホルダ4に重ねたときに、一対のホルダ貫通穴61にそれぞれ重なる一対の第1プレート側貫通穴62が設けられている。第2プレート48には、コイルホルダ4に重ねたときに、一対のホルダ貫通穴61にそれぞれ重なる一対の第2プレート側貫通穴63が設けられている。第1プレート側貫通穴62および第2プレート側貫通穴63は、それぞれ第2方向Xに延びる長穴である。
【0035】
コイルホルダ4は、板部41の第2方向Xの両側の縁を内側へ切り欠いた切欠き部42、43を備える。切欠き部42、43は、板部41の第3方向Yの中間部分に設けられている。
【0036】
コイルホルダ4は、切欠き部42、43の第3方向Yの一方側Y1において、板部41の第3方向Yの一方側Y1の縁から第1方向Zの一方側Z1に向けて突出する側板部413を備える。また、コイルホルダ4は、切欠き部42、43の第3方向Yの一方側Y1において、板部41の第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁か
らは、第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて突出する側板部414、415を備える。さらに、コイルホルダ4は、切欠き部42、43の第3方向Yの他方側Y2において、板部41の第3方向Yの他方側Y2の縁から第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて突出する側板部417を備える。また、コイルホルダ4は、切欠き部42、43の第3方向Yの他方側Y2において、板部41の第2方向Xの一方側X1の縁、および第2方向Xの他方側X2の縁から第1方向Zの一方側Z1、および他方側Z2に向けて突出する側板部418、419を備える。
【0037】
第1プレート47は、第2方向Xの両側から第1方向Zの一方側Z1に斜めに突出した爪部472を有する。また、第2プレート48は、第2方向Xの両側から第1方向Zの他方側Z2に斜めに突出した爪部482を有する。爪部482は、側板部414、415、418、419の内面414s、415s、418s、419sに形成された溝状の凹部内部に弾性をもって当接し、コイルホルダ4に保持されている。
【0038】
コイル5は、接着剤により、コイルホルダ4に固定される。接着剤は、コイル5の空芯部50に充填されて、コイル5とコイルホルダ4との間に流れ込んで硬化する。また、接着剤は、コイル5と第1プレート47との間、第1プレート47とコイルホルダ4との間、コイル5と第2プレート48との間、および、第2プレート48とコイルホルダ4との間に流れ込んで硬化する。従って、コイル5、第1プレート47、第2プレート48、およびコイルホルダ4は、接着剤が流れ込んで硬化した接着剤層9(
図2参照)によって固定される。
【0039】
(接続体)
可動体6は、可動体6と支持体2との間に設けられた接続体91、92によって第2方向Xに移動可能に支持される。
図2、
図4に示すように、接続体91は、第1ヨーク81と第1プレート47とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。また、接続体92は、第2ヨーク82と第2プレート48とが第1方向Zで対向する部分に設けられている。より具体的には、接続体91、92は、第3方向Yにおいてコイル配置穴410の両側に配置される。すなわち、接続体91、92は、コイル配置穴410と第3方向Yの一方側Y1に位置するホルダ貫通穴61との間、および、コイル配置穴410と第3方向Yの他方側Y2に位置するホルダ貫通穴61との間に配置されている。本例では、接続体91、92は、第1方向Zの両面が各々、可動体6および支持体2に接着等の方法で接続されている。また、接続体91、92は、支持体2と可動体6との間で第1方向Zに圧縮された状態にある。
【0040】
接続体91、92は、本例では、粘弾性部材である。例えば、接続体91、92(粘弾性部材)は、シリコーンゲル等からなるゲル状部材である。本例において、接続体91、92は、針入度が10度から110度のシリコーンゲルからなる。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さいほど硬いことを意味する。また、粘弾性を備えた接続体91、92として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0041】
接続体91、92は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、接続体91、92は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分が大きい伸縮特性を備える一方、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(
バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、接続体91、92は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。
【0042】
ここで、可動体6が接続体91、92を介して支持体2に支持された状態では、
図3に示すように、コイルホルダ4の切欠き部42、43には、それぞれ、ヨーク8の張り出し部812および張り出し部822が配置される。これにより、コイルホルダ4の側板部414と側板部418、および、側板部415と側板部419は、可動体6が第3方向Yに移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0043】
また、可動体6が接続体91、92を介して支持体2に支持された状態では、コイルホルダ4の板部41の第1方向Zの一方側Z1では、第1ヨーク81と内面414s、415s、418s、419sとが第2方向Xで対向する。また、板部41の第1方向Zの他方側Z2では、第2ヨーク82と内面414s、415s、418s、419sとが第2方向Xで対向する。従って、側板部414、415の内面414s、415s、および、側板部418、419の内面418s、419sは、可動体6が第2方向Xに移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0044】
さらに、可動体6が接続体91、92を介して支持体2に支持された状態では、ヨーク8の一対の接続部88のそれぞれは、第2方向Xに移動可能な状態で第1プレート側貫通穴62、ホルダ貫通穴61、および第2プレート側貫通穴63を第1方向Zに貫通する。従って、第1プレート側貫通穴62、ホルダ貫通穴61、および第2プレート側貫通穴63の内壁面は、可動体6が第3方向Yに移動する際の可動範囲を規定する度当たり部として機能する。
【0045】
ここで、本例において、可動体6が第2方向Xに振動した際に、接続体91、92は、せん断方向に変形する。従って、接続体91、92では、可動体6が第2方向Xに振動した際、せん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもって振動を実現することができる。
【0046】
(給電基板)
アクチュエータ1は、給電基板10を介して外部(上位の機器)からコイル5に給電する。
図1、
図3に示すように、給電基板10は、コイルホルダ4のうち、第3方向Yの一方側で側板部413、414、415に囲まれた開口部に保持されている。コイル5から引き出されるコイル線56は、コイルホルダ4の第3方向Yの一方側Y1のホルダ貫通穴61の第2方向Xの一方側X1を経由して、コイルホルダ4の板部41に形成されたガイド溝411c(
図5参照)を通って給電基板10の側に引き出され、第1方向Zの他方側Z2へ曲げられて、給電基板10に接続される。また、コイル5から引き出されるコイル線57は、コイルホルダ4の第3方向Yの一方側Y1のホルダ貫通穴61の第2方向Xの他方側X2を経由して、コイルホルダ4の板部41に形成されたガイド溝411cを通って給電基板10の側に引き出され、第1方向Zの他方側Z2へ曲げられて、給電基板10に接続される。
【0047】
コイルホルダ4には、第2方向Xで対向する側板部414、415の端部に一対のスリット414t、415tが形成されており、給電基板10の第2方向Xの両側の端部が各々、スリット414t、415tの内側に嵌っている。本例では、給電基板10の端部をスリット414t、415tに嵌めた後、さらに接着剤によってコイルホルダ4と給電基板10とを固定し、給電基板10の振動を抑制する構造になっている。
【0048】
(作用効果)
本例では、コイル5および磁石7を挟んで第1方向Zで対向する第1板部811および第2板部821は、コイル5および磁石7を挟んで第3方向Yで対向する一対の接続部88によって接続されている。かかる構成によれば、可動体6は、その移動方向である第2方向Xの両端に垂直な壁状の部分を備える必要がないので、その分だけ、可動体6の移動距離を長く確保できる。また、可動体6が第2方向Xの両端に垂直な壁状の部分を備える必要がないので、可動体6の移動時に空気を押す部分の面積を小さくできる。従って、可動体6の移動時に空気が押されることに起因する動作音を低減させることができる。
【0049】
また、コイル5および磁石7を挟んで第1方向Zで対向する可動体6の第1板部811および第2板部821は磁性材料からなり、ヨーク8として機能する。また、第1板部811および第2板部821は、コイル5および磁石7を挟んで第3方向Yで対向する一対の接続部88により接続されており、これら一対の接続部88も磁性材料からなる。これにより、漏れ磁束の発生を抑制できるので、磁気駆動回路1aの駆動力を確保することが容易である。
【0050】
さらに、本例では、一対の接続部88のそれぞれは、第1板部811と一体に形成された第1接続部分88a、および、第2板部821と一体に形成された第2接続部分88bを備え、第1接続部分88aと第2接続部分88bは、第1方向Zに対して垂直な仮想面Sを基準として対称な形状である。これにより、第1板部811および第1接続部分88aを備えた部材と、第2板部821および第2接続部分88bを備えた部材とが同一形状になっているので、部品形状の共通化を図ることができる。よって、部品の製造コストおよび管理コストを低減させることができる。
【0051】
(変形例)
各接続部88は、第1板部811と一体に設けてもよい。すなわち、第1ヨーク81が一対の接続部88を備えるものとすることができる。この場合には、一対の接続部88の第1方向Zの他方側Z2の端を第2ヨーク82に溶接する。或いは、各接続部88は、第2板部821と一体に設けてもよい。すなわち、第2ヨーク82が一対の接続部88を備えるものとすることができる。この場合には、一対の接続部88の第1方向Zの一方側Z1の端を第2ヨーク82に溶接する。
【0052】
このようにすれば、一対の接続部88が第1ヨーク81、或は、第2ヨーク82と一体に形成されるので、一対の接続部88を、第1ヨーク81および第2ヨーク82と別体に設ける場合と比較して、部品点数を少なくすることができ、可動体6の強度を確保することができる。
【0053】
なお、一対の接続部88は、第1板部811および第2板部821と別体であってもよい。このようにすれば、一対の接続部88について、部品形状の自由度が高まる。
【0054】
また、上記の例では、接続体91、92としてゲル状部材(粘弾性部材)を用いたが、ゴムやバネ等を用いてもよい。
【0055】
また、上記の例では、コイル5に対する第1方向Zの両側に磁石7を配置しているが、コイル5に対する第1方向Zの一方側Z1または他方側Z2のみに磁石7を配置したアクチュエータに本発明を適用してもよい。また、上記形態は、第1方向Zで対向するコイル5と磁石7の組を2組備えているが、第1方向Zで対向するコイル5と磁石7の組を1組または3組以上備えたアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【0056】
また、接続体91、92は可動体6とケース3との間に配置してもよい。このようにし
ても、接続体91、92により可動体6を第1方向(移動方向)に変位可能に支持できる。
【0057】
ここで、給電基板10は、支持体2の第2方向Xの一方側の側面に配置することができる。
【0058】
また、第1板部811の一対の張り出し部812、および第2ヨーク82の一対の張り出し部822は、省略してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…アクチュエータ、1a…磁気駆動回路、2…支持体、3…ケース、4…コイルホルダ、5…コイル、6…可動体、7…磁石、8…ヨーク、9…接着剤層、10…給電基板、31…第1ケース部材、32…第2ケース部材、41…板部、42、43…切欠き部、47…第1プレート、48…第2プレート、50…空芯部、51…長辺部、52…短辺部、61…ホルダ貫通穴、62…第1プレート側貫通穴、63…第2プレート側貫通穴、71…第1永久磁石、72…第2永久磁石、81…第1ヨーク、82…第2ヨーク、88…接続部、88a…第1接続部分、88b…第2接続部分、91、92…接続体、311、321、413、414、415、417、418、419…側板部、410…コイル配置穴、410…コイル配置穴、411c…ガイド溝、811…第1板部、812…張り出し部、821…第2板部、822…張り出し部、X…第2方向(移動方向)、Y…第3方向、Z…第1方向(対向方向)