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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】布類展開装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 67/04 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
D06F67/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019080772
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020175005
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502407130
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 武彦
(72)【発明者】
【氏名】竹本 伸一
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-140769(JP,A)
【文献】特開2005-278688(JP,A)
【文献】特開2009-127172(JP,A)
【文献】特開2013-199013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 67/04
D06C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、
展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、
前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、
前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、
前記布類の前端が前記次工程装置の増速位置に到達した時から予め設定された浮上時間経過した時を浮上時とし、
前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、
前記第2速度は、前記次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度よりも速い
ことを特徴とする布類展開装置。
【請求項2】
布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、
展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、
前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、
前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、
前記次工程装置から該次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度が入力され、
前記第3速度と前記第1速度との速度差を求め、
予め設定された行過距離を前記速度差で除して浮上時間を求め、
前記布類の前端が前記増速位置に到達した時から前記浮上時間経過した時を浮上時とし、
前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、
前記第2速度は、前記第3速度よりも速い
ことを特徴とする布類展開装置。
【請求項3】
布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、
展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、
前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、
前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、
前記中間コンベアと前記排出コンベアとの接続部における前記布類の浮き上がりを検知する浮上検知センサと、を備え、
前記制御部は、
前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、
前記浮上検知センサが前記布類の浮き上がり検知した時を浮上時とし、
前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、
前記第2速度は、前記次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度よりも速い
ことを特徴とする布類展開装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記布類の後端が前記中間コンベアと前記排出コンベアとの接続部に到達した搬送終了時、または該搬送終了時から次の前記布類が前記中間コンベアに供給される時までの間に、該中間コンベアの搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に減速する
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の布類展開装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記浮上検知センサが非検知となった時から予め設定された遅延時間経過した時に、前記中間コンベアの搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に減速する
ことを特徴とする請求項記載の布類展開装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記次工程装置から該次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度が入力され、
前記第3速度に所定の係数を乗じて得られる値を前記第2速度とする
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の布類展開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布類展開装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、洗濯済みのシーツ、包布(2枚生地の布団カバー)、枕カバー、タオル、テーブルクロスなどの布類を展開し、次工程の処理装置に供給するための布類展開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル、病院などでは大量にシーツが使用される。使用済みのシーツはランドリー工場で洗濯、アイロンがけされ、再度ホテル、病院などで使用される。ランドリー工場では、シーツなどの布類を洗濯した後、ロールアイロナーでアイロンがけしたり、布類折畳装置で折り畳んだりする作業が行なわれる。これらの処理装置に布類を供給するには、予め布類を展開する必要がある。布類を展開する作業を作業員が行なう場合、作業に多大な時間と労力が必要である。そこで、近年では、布類展開装置を用いてこの作業を行なっている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-215361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布類展開装置に後続するロールアイロナーは、布類の搬送速度が布類展開装置のそれよりも若干速く設定されている。この速度差により布類展開装置から排出された布類が搬送方向に引っ張られ、皺の発生が抑えられるとともに、皺を伸ばすことができる。
【0005】
しかし、図12に示すように、ロールアイロナー200の搬送速度が速すぎると、布類Cが過度に引っ張られ、コンベア101、102から浮き上がる。この状態のまま搬送が進むと、布類Cの後端がコンベア101から離れて飛び跳ねる。そうすると、図13に示すように、布類Cの後部に大きな皺が発生する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、次工程装置との速度差に起因する布類の飛び跳ねを抑制できる布類展開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の布類展開装置は、布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、前記布類の前端が前記次工程装置の増速位置に到達した時から予め設定された浮上時間経過した時を浮上時とし、前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、前記第2速度は、前記次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度よりも速いことを特徴とする。
第2発明の布類展開装置は、布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、前記次工程装置から該次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度が入力され、前記第3速度と前記第1速度との速度差を求め、予め設定された行過距離を前記速度差で除して浮上時間を求め、前記布類の前端が前記増速位置に到達した時から前記浮上時間経過した時を浮上時とし、前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、前記第2速度は、前記第3速度よりも速いことを特徴とする。
第3発明の布類展開装置は、布類を展開して次工程装置に供給する布類展開装置であって、展開済みの前記布類を搬送する中間コンベアと、前記中間コンベアの終端と接続し、前記布類を前記次工程装置に排出する排出コンベアと、前記中間コンベアの動作を制御する制御部と、前記中間コンベアと前記排出コンベアとの接続部における前記布類の浮き上がりを検知する浮上検知センサと、を備え、前記制御部は、前記布類が前記中間コンベアに供給された搬送開始時における該中間コンベアの搬送速度を第1速度とし、前記浮上検知センサが前記布類の浮き上がり検知した時を浮上時とし、前記浮上時に、該中間コンベアの搬送速度を前記第1速度から第2速度に増速し、前記第2速度は、前記次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度よりも速いことを特徴とする。
第4発明の布類展開装置は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記制御部は、前記布類の後端が前記中間コンベアと前記排出コンベアとの接続部に到達した搬送終了時、または該搬送終了時から次の前記布類が前記中間コンベアに供給される時までの間に、該中間コンベアの搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に減速することを特徴とする。
第5発明の布類展開装置は、第3発明において、前記制御部は、前記浮上検知センサが非検知となった時から予め設定された遅延時間経過した時に、前記中間コンベアの搬送速度を前記第2速度から前記第1速度に減速することを特徴とする。
第6発明の布類展開装置は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記制御部は、前記次工程装置から該次工程装置の増速位置以降の搬送速度である第3速度が入力され、前記第3速度に所定の係数を乗じて得られる値を前記第2速度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布類の搬送の途中で中間コンベアの搬送速度を増速するので、浮き上がった布類を沈めることができ、布類の飛び跳ねを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る布類展開装置の側面図である。
図2図1の布類展開装置の正面図である。ただし、投入部を省略している。
図3】搬送開始時における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
図4】布類が増速位置に到達した時における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
図5】浮上時における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
図6】浮上時後における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
図7】第1実施形態における中間コンベアの搬送速度の変化を示すタイミングチャートである。
図8】2つのコンベアの接続部における布類の様子を示した模式図である。
図9】第3実施形態に係る布類展開装置の側面図である。
図10図9におけるX-X線矢視断面図である。
図11】第3実施形態における中間コンベアの搬送速度の変化を示すタイミングチャートである。
図12】布類が浮き上がった状態における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
図13】布類が飛び跳ねた後の状態における布類展開装置およびロールアイロナーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る布類展開装置1は、洗濯済みのシーツ、包布(2枚生地の布団カバー)、枕カバー、タオル、テーブルクロスなどの方形状布類Cを展開し、ロールアイロナーなどの次工程装置に供給するための装置である。本明細書では、布類展開装置1の前後・左右・上下方向を図1および図2に示すように定義する。
【0011】
(基本構成)
まず、布類展開装置1の基本構成を動作と共に説明する。
図1に示すように、布類展開装置1は機枠10を備えている。また、布類展開装置1は、以下に説明する各種装置の動作を制御する制御部11を備えている。制御部11は、CPU、メモリなどで構成されたコンピュータである。
【0012】
機枠10の前面には作業員が布類Cを投入する投入部20が設けられている。投入部20の数は特に限定されず、1つでもよいし複数でもよい。投入部20は、布類Cを把持する投入チャック21と、投入チャック21を昇降させる昇降機22とからなる。投入チャック21は人の肩幅程度の幅を有するチャックベースの左右両端部に設けられている。左右の投入チャック21、21に布類Cの一辺の両端角部が把持される。
【0013】
昇降機22の動作により、投入チャック21は、作業員が布類Cを投入チャック21に取り付ける投入位置(図1に示す位置)と、最上端まで上昇した上昇位置との間で昇降する。投入位置で待機している投入チャック21に作業員が手作業で布類Cを取り付ける。そうすると、昇降機22は投入チャック21とともに布類Cを上昇させる。
【0014】
投入チャック21の上昇位置には展張部30が設けられている。展張部30は、布類Cの一辺の両端角部を把持する一対の展張チャック31、31を有する(図2参照)。各展張チャック31はレールに沿って横行可能なキャリッジ32に取り付けられている。左右の展張チャック31、31は個別に横行可能である。
【0015】
投入チャック21が上昇する過程において、投入チャック21から展張チャック31に布類Cが受け渡される。布類Cを受け取った一対の展張チャック31、31が左右に開くように横行することで、布類Cは展開状態で吊り下げられる(図2の状態)。
【0016】
機枠10の下部には、整形ダクト41と、整形ダクト41に接続されたブロワー42とが設けられている。展張チャック31に吊り下げられた布類Cはその下部が整形ダクト41に挿入される。整形ダクト41は布類Cを下方に吸引する。整形ダクト41内の気流により布類Cの皺が除去される。
【0017】
展張部30の下方にはバキュームボックス43が配置されている。バキュームボックス43は前後進可能である。整形ダクト41による皺除去の後、展張チャック31を開くと、布類Cの上端部が前進したバキュームボックス43に吸着される。
【0018】
バキュームボックス43の下方には、中間コンベア51が配置されている。中間コンベア51のコンベアベルトは多数の小孔を有する。また、中間コンベア51の搬送面の下方にはバキュームボックス44が配置されている。したがって、中間コンベア51は布類Cを吸引しつつ搬送できる。中間コンベア51の終端(搬送方向下流側の端部)には、排出コンベア52が接続されている。
【0019】
布類Cを吸着したバキュームボックス43を後進させると、布類Cの上端部がバキュームボックス43から中間コンベア51に乗り移る。この際、中間コンベア51に布類Cが吸着される。中間コンベア51は展開済みの布類Cを後方に搬送する。また、排出コンベア52は布類Cを次工程装置に向けて後方に排出する。
【0020】
中間コンベア51と排出コンベア52とは谷状に接続されている。すなわち、中間コンベア51は搬送方向に下り勾配を有するのに対し、排出コンベア52は上り勾配を有する。これにより、中間コンベア51の搬送面と排出コンベア52の搬送面とはV字形をなし、その接続部53が下方に窪んでいる。なお、中間コンベア51が下り勾配を有する場合、排出コンベア52が水平であるか、中間コンベア51よりも角度の浅い下り勾配を有してもよい。また、排出コンベア52が上り勾配を有する場合、中間コンベア51が水平であるか、排出コンベア52よりも角度の浅い上り勾配を有してもよい。これらの場合にも、中間コンベア51と排出コンベア52とが谷状に接続される。
【0021】
以下、中間コンベア51および排出コンベア52の搬送方向を基準として、布類Cの搬送方向下流側の端を「前端」と称し、上流側を「後端」と称する。布類Cは前端を先頭として搬送される。
【0022】
整形ダクト41には後端センサ12が設けられている。後端センサ12は検知位置における布類Cの有無を検知できるセンサである。後端センサ12として光電センサ、超音波センサなどの非接触式センサが好適に用いられる。本実施形態は後端センサ12として光電センサを用いた例である。整形ダクト41の背面に拡散反射形の光電センサが配置されている。拡散反射形の光電センサは布類Cによる光の反射の有無により布類Cの有無を検知する。
【0023】
後端センサ12の光軸(検知軸)は、整形ダクト41内であって、前後方向に沿って略水平に配置されている。また、後端センサ12は整形ダクト41の幅方向略中央に設けられている(図2参照)。後端センサ12はこの検知位置おける布類Cの有無を検知することで、布類Cの後端の通過を検知する。
【0024】
(次工程装置)
つぎに、次工程装置を説明する。
図3に示すように、布類展開装置1の後ろには次工程装置が配置される。次工程装置は展開済みの布類Cに対して何らかの処理を行なう装置である。次工程装置として、ロールアイロナー、検査装置、折畳装置などが挙げられる。以下、次工程装置がロールアイロナー2の場合を例に説明する。
【0025】
ロールアイロナー2は布類Cにアイロンがけをする装置である。ロールアイロナー2は導入コンベア61を有している。布類展開装置1から供給された布類Cは導入コンベア61により搬送され、ロールアイロナー2の内部に導入される。また、ロールアイロナー2は一または複数のアイロンロール62を有している。布類Cをアイロンロール62に接触させながら搬送することで、布類Cに対して連続的にアイロンがけできる。
【0026】
図3は布類Cが中間コンベア51に供給された時点の状態を示す。以下、中間コンベア51に供給された時点における布類Cの前端の位置を供給位置P1と称する。
【0027】
図4に示すように、布類Cは、中間コンベア51、排出コンベア52、導入コンベア61により搬送され、前端が最初のアイロンロール62に到達する。ここで、中間コンベア51、排出コンベア52および導入コンベア61は、搬送速度がほぼ同じ速度v1に設定されている。
【0028】
その後、図5に示すように、布類Cの前端部はアイロンロール62に引き込まれる。アイロンロール62の搬送速度v3は、中間コンベア51などの搬送速度v1よりも速く設定されている。例えば、アイロンロール62の搬送速度v3は中間コンベア51などの搬送速度v1より約5%速く設定されている。
【0029】
布類Cの搬送速度は最初のアイロンロール62の導入部において速くなる。このように、布類Cの搬送速度が速くなる位置を増速位置P2と称する。増速位置P2は布類展開装置1の次工程装置(ロールアイロナー2)において、布類Cの搬送速度が排出コンベア52の搬送速度v1よりも速くなる位置を意味する。したがって、増速位置P2はアイロンロール62の導入部に限定されない。例えば、導入コンベア61の搬送速度が排出コンベア52の搬送速度v1よりも速く設定されている場合には、排出コンベア52と導入コンベア61との接続部が増速位置P2となる。
【0030】
中間コンベア51などの搬送速度v1とアイロンロール62の搬送速度v3との速度差により布類Cが搬送方向に引っ張られる。これにより、皺の発生が抑えられるとともに、皺を伸ばすことができる。
【0031】
しかし、特に長尺物の布類Cの場合、布類Cの後部を残して前端が引っ張られることから、谷状となった中間コンベア51と排出コンベア52との接続部53において布類Cが浮き上がる。この状態のまま搬送が進むと、布類Cの後端が飛び跳ね、大きな皺が発生する(図13の状態)。
【0032】
(搬送速度の制御)
このような布類Cの飛び跳ねを抑制するため、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を以下に説明するように制御する。なお、中間コンベア51は駆動ロールを回転させるモータがインバータにより制御されている。制御部11はインバータに速度信号を与えることで、モータの回転数を変化させ、中間コンベア51の搬送速度を制御する。
【0033】
図7に示すように、制御部11は、定常状態において、中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1とする。第1速度v1は排出コンベア52および導入コンベア61の搬送速度とほぼ同じである。第1速度v1はアイロンロール62との速度差により布類Cが搬送方向に引っ張られ、布類Cの皺を伸ばせるように設定される。第1速度v1は予め制御部11に記憶されている。
【0034】
布類Cが中間コンベア51に供給された搬送開始時t1図3の時点)において、中間コンベア51の搬送速度は第1速度v1である。制御部11は布類Cを中間コンベア51に受け渡すバキュームボックス43が後進する時を搬送開始時t1と判断する。
【0035】
中間コンベア51が一の布類Cを搬送する期間のうちの前期、すなわち搬送開始時t1から時刻t2までの間、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に維持する。そして、時刻t2において、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1から第2速度v2に増速する。なお、排出コンベア52の搬送速度は第1速度v1のままである。
【0036】
ここで、時刻t2は中間コンベア51と排出コンベア52との接続部53において布類Cが浮き上がる時(図5の時点)である。以下、時刻t2を浮上時t2と称する。制御部11は、布類Cの前端が増速位置P2に到達した時t4図4の時点)から予め定められた浮上時間Tが経過した時を浮上時t2とする。
【0037】
中間コンベア51にはロータリーエンコーダなどの搬送距離検知センサが設けられている。また、供給位置P1から増速位置P2までの搬送距離L1は既知である。制御部11は搬送開始時t1から計測した中間コンベア51の搬送距離がL1に達した時を、布類Cの前端が増速位置P2に到達した時t4と判断する。あるいは、制御部11は搬送距離L1を中間コンベア51の搬送速度v1で除して、布類Cの前端が供給位置P1から増速位置P2まで搬送されるのに要する時間T1を求め、搬送開始時t1から時間T1が経過した時を、布類Cの前端が増速位置P2に到達した時t4と判断してもよい。また、増速位置P2に光電センサなどの布類Cの有無を検知するセンサを設け、センサが布類Cの前端を検知した時を、布類Cの前端が増速位置P2に到達した時t4と判断してもよい。
【0038】
浮上時間Tは布類Cの前端が増速位置P2に到達してから、接続部53において布類Cが所定の高さまで浮き上がるまでに要する時間として設定される。浮上時間Tは予め制御部11に記憶されている。
【0039】
第2速度v2は浮き上がった布類Cを沈めることができる速度に設定される。第2速度v2は予め制御部11に記憶されている。第2速度v2は少なくとも第1速度v1より速い。また、浮き上がった布類Cを沈めるには、第2速度v2はアイロンロール62の搬送速度v3より速いことが必要である。
【0040】
中間コンベア51が一の布類Cを搬送する期間のうちの後期、すなわち浮上時t2から時刻t3までの間、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第2速度v2に維持する。そして、時刻t3において、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第2速度v2から第1速度v1に減速する。ここで、時刻t3は布類Cの後端が中間コンベア51と排出コンベア52との接続部53に到達した時である。すなわち、布類Cの全体が中間コンベア51を通過し、中間コンベア51による布類Cの搬送が終了した時点である。以下、時刻t3を搬送終了時t3と称する。
【0041】
整形ダクト41に設けられた後端センサ12により、布類Cの後端の通過を検知できる。また、後端センサ12の検知位置から接続部53までの搬送距離L2は既知である。制御部11は後端センサ12が布類Cの通過を検知した時t5から計測した中間コンベア51の搬送距離がL2に達した時を、搬送終了時t3と判断する。あるいは、制御部11は搬送距離L2を中間コンベア51の搬送速度v2で除して、布類Cの後端が検知位置から接続部53まで搬送されるのに要する時間T2を求め、後端センサ12が布類Cの通過を検知した時t5から時間T2が経過した時を、搬送終了時t3と判断してもよい。また、接続部53に光電センサなどの布類Cの有無を検知するセンサを設け、センサが布類Cの後端の通過を検知した時を、搬送終了時t3と判断してもよい。
【0042】
なお、中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に減速するタイミングは、搬送終了時t3より後でもよい。次の布類Cが中間コンベア51に供給される前に中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に戻しておけばよい。すなわち、布類Cの搬送終了時t3から次の布類Cの搬送開始時t1までの間に、中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に減速すればよい。そうすれば、次の布類Cが中間コンベア51に供給された時点においても、中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1とすることができる。
【0043】
以上のように中間コンベア51の搬送速度を二段階で制御すると、布類Cはつぎのように搬送される。
図3に示すように、はじめに、布類Cは中間コンベア51に供給される。布類Cの前端は供給位置P1に位置している。この時点が搬送開始時t1であり、中間コンベア51の搬送速度は第1速度v1となっている。
【0044】
その後、図4に示すように、布類Cは中間コンベア51、排出コンベア52および導入コンベア61により搬送され、前端が増速位置P2に到達する。この時点t4における中間コンベア51の搬送速度は第1速度v1のままである。
【0045】
その後、図5に示すように、布類Cがアイロンロール62に引き込まれ、前端部はアイロンロール62の搬送速度v3で搬送される。布類Cの前端が増速位置P2より進んだ浮上位置P3に到達した時に、中間コンベア51と排出コンベア52との接続部53において布類Cが浮き上がる。この時点が浮上時t2である。搬送開始時t1から浮上時t2までの間、中間コンベア51の搬送速度は第1速度v1に維持されている。浮上時t2において、中間コンベア51の搬送速度が第2速度v2に増速する。
【0046】
その後、図6に示すように、中間コンベア51により布類Cの後部が第2速度v2で搬送された結果、接続部53において浮き上がっていた布類Cが下降する。
【0047】
その後、布類Cの後端が接続部53に到達した時、すなわち搬送終了時t3に、中間コンベア51の搬送速度が第1速度v1に戻る。これにより次の布類Cを中間コンベア51に供給可能な状態となる。
【0048】
以上のように、布類Cの搬送の途中で中間コンベア51の搬送速度を増速することで、接続部53において浮き上がった布類Cを沈めることができる。その結果、布類Cの飛び跳ねを抑制でき、飛び跳ねによる皺の発生を防止できる。
【0049】
〔第2実施形態〕
第1実施形態において、浮上時間Tおよび第2速度v2は、作業員が実機の様子を確認しながら調整するパラメータである。作業員は布類Cが接続部53において浮き上がるタイミングを見て浮上時間Tを設定する。また、作業員は浮上した布類Cが沈むように第2速度v2を設定する。このように、作業員による調整作業が必要である。これに対して、第2実施形態では制御部11が浮上時間Tおよび第2速度v2を自動的に設定する。
【0050】
本実施形態では、次工程装置(ロールアイロナー2)から制御部11に速度情報が入力される。この速度情報は次工程装置(ロールアイロナー2)の増速位置P2以降の搬送速度v3である。以下、搬送速度v3を第3速度v3と称する。
【0051】
図8は、谷状に接続された2つのコンベア51、52の接続部における布類の様子を模式的に示したものである。浮き上がりのない状態の布類C1を実線で示す。浮き上がった状態の布類C2を一点鎖線で示す。布類C1の後端と布類C2の後端とを同位置とした場合、浮き上がった布類C2の前端は布類C1の前端よりも距離Lだけ進んでいる。換言すれば、布類C2は前端が距離Lだけ行き過ぎているために、浮き上がりが生じている。以下、距離Lを行過距離Lと称する。
【0052】
布類C2が接続部から高さHだけ浮き上がるときの行過距離Lは、2つのコンベア51、52の接続角度から幾何学的に求められる。したがって、許容限度の浮き上がり高さHを設定した場合、それに対応する行過距離Lを求めることができる。行過距離Lは予め設定され、制御部11に記憶される。
【0053】
制御部11はつぎの手順で浮上時間Tを設定する。まず、制御部11は入力された第3速度v3と第1速度v1との速度差dv(=v3-v1)を求める。つぎに、制御部11は行過距離Lを速度差dvで除して浮上時間T(=L/dv)を求める。このように、制御部11は第3速度v3に基づいて浮上時間Tを設定できる。浮上時間Tは浮上時t2の到来を判断するのに用いられる。すなわち、制御部11は、布類Cの前端が増速位置P2に到達した時t4から浮上時間Tが経過した時を浮上時t2とする。
【0054】
また、制御部11はつぎの手順で第2速度v2を設定する。すなわち、制御部11は入力された第3速度v3に所定の係数kを乗じて得られる値を第2速度v2(=k・v3)とする。ここで、係数kは1より大きい値に設定される。例えば、k=1.05とすれば、第2速度v2を第3速度v3よりも5%速い速度に設定できる。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、第3速度v3に基づいて浮上時間Tおよび第2速度v2を自動的に設定できる。そのため、作業員による調整作業が不要である。
【0056】
〔第3実施形態〕
第1、第2実施形態では、布類Cが実際に浮き上がっているかどうかは検知しない。布類展開装置1に供給される布類Cの全てに対して同様の制御を行なう。これに対して、第3実施形態では布類Cの浮き上がりを検知して、それに基づき制御を行なう。
【0057】
図9に示すように、本実施形態の布類展開装置1は浮上検知センサ13を有する。浮上検知センサ13は検知位置における布類Cの有無を検知できるセンサであり、光電センサ、超音波センサなどの非接触式センサが好適に用いられる。本実施形態は浮上検知センサ13として光電センサを用いた例である。
【0058】
浮上検知センサ13の光軸(検知軸)は、中間コンベア51と排出コンベア52との接続部53の上方であって、機枠10の幅方向に沿って略水平に配置されている。そのため、浮上検知センサ13は接続部53における布類Cの浮き上がりを検知できる。
【0059】
図10に示すように、排出コンベア52の左右両側の側壁に浮上検知センサ13を構成する光電センサの投光器および受光器がそれぞれ配置されている。光電センサの仕様によっては、一方の側壁に投光部および受光部を有するセンサを配置し、他方の側壁に反射板を配置してもよい。
【0060】
厚みのない布類Cを真横から検知することは困難である。そこで、浮上検知センサ13の光軸(検知軸)は水平に対して若干傾斜するように配置されている。これにより、検知軸が布類Cに対して斜めに配置され、布類Cの存在を検知しやすくなる。
【0061】
本実施形態の制御部11はつぎのように中間コンベア51の搬送速度を制御する。
図7に示すように、搬送開始時t1において、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1とする。そして、浮上時t2において、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1から第2速度v2に増速する。ここで、制御部11は浮上検知センサ13が布類Cの浮き上がりを検知した時を浮上時t2とする。したがって、実際に布類Cが浮き上がったタイミングを浮上時t2とすることができる。そして、搬送終了時t3において、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第2速度v2から第1速度v1に減速する。
【0062】
制御部11はつぎのように中間コンベア51の搬送速度を制御してもよい、
図11に示すように、制御部11は浮上検知センサ13が布類Cの浮き上がり検知した浮上時t2に中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1から第2速度v2に増速する。中間コンベア51が増速した結果、浮き上がっていた布類Cが下降する。これにより、浮上検知センサ13は非検知状態となる。浮上検知センサ13が非検知となった時を下降時t6とする。
【0063】
制御部11は下降時t6から予め設定された遅延時間Tdが経過した時に、中間コンベア51の搬送速度を第2速度v2から第1速度v1に減速する。その後、浮上検知センサ13が非検知状態を維持している場合には、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に維持する。
【0064】
浮上検知センサ13が再び検知状態となった場合には、制御部11は中間コンベア51の搬送速度を第2速度v2に増速する。そして、再び、下降時t6から遅延時間Tdが経過した時に、中間コンベア51の搬送速度を第1速度v1に減速する。
【0065】
このように、本実施形態では布類Cが実際に浮き上がったことを検知して、必要に応じて中間コンベア51を増速する。これにより、浮き上がった布類Cを沈めることができ、布類Cの飛び跳ねを抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
1 布類展開装置
11 制御部
20 投入部
30 展張部
51 中間コンベア
52 排出コンベア
53 接続部
2 ロールアイロナー
61 導入コンベア
62 アイロンロール
C 布類
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図13