(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2019100293
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古市 暁史
(72)【発明者】
【氏名】中山 一隆
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦保
(72)【発明者】
【氏名】内藤 康広
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073052(WO,A1)
【文献】特開2016-117141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記ロボットが、第1部材と、該第1部材に対して所定の第1軸線回りに回転駆動させられる第2部材と、前記第1軸線回りのトルクを検出する第1トルク検出部とを備え、
前記制御装置が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて前記第2部材に作用した外力の想定し得る上限値である外力上限値を推定する外力上限値推定部を備え、
該外力上限値推定部が、
前記第1トルク検出部により検出された前記トルクと、前記ロボットの姿勢および動作から算出した算出トルクとの差分トルクの絶対値を、前記第2部材の回転方向の両端部となる表面上に、物理的に接触可能な位置の前記第1軸線からの最小半径で除算した値を前記外力上限値として推定
し、推定された前記外力上限値が、所定の閾値よりも大きい場合に、前記外力の増加を回避するよう前記ロボットを制御するロボットシステム。
【請求項2】
ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記ロボットが、第1部材と、該第1部材に対して所定の第1軸線回りに回転駆動させられる第2部材と、前記第1軸線回りのトルクを検出する第1トルク検出部とを備え、
前記制御装置が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて前記第2部材に作用した外力の想定し得る上限値である外力上限値を推定する外力上限値推定部を備え、
該外力上限値推定部が、
前記第1トルク検出部により検出された前記トルクと、前記ロボットの姿勢および動作から算出した算出トルクとの差分トルクの絶対値を、前記第2部材の回転方向の両端部となる表面上に、前記ロボットの設置環境上、接触可能な位置の前記第1軸線からの最小半径で除算した値を前記外力上限値として推定
し、推定された前記外力上限値が、所定の閾値よりも大きい場合に、前記外力の増加を回避するよう前記ロボットを制御するロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットが、前記第1軸線に直交する平面内に配置される所定の第2軸線回りに前記第1部材に対して相対的に回転駆動される第3部材と、前記第2軸線回りのトルクを検出する第2トルク検出部とを備え、
前記外力上限値推定部が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した第1外力上限値と、前記第2トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した第2外力上限値とを用いて前記外力上限値を推定する請求項1
または請求項
2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記外力上限値推定部が、前記第1外力上限値と、前記第2外力上限値との2乗和の平方根により前記外力上限値を推定する請求項
3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットが、前記第1軸線に平行な第3軸線回りに前記第2部材に対して回転駆動される第4部材と、前記第3軸線回りのトルクを検出する第3トルク検出部とを備え、
前記外力上限値推定部が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した前記第1外力上限値と、前記第3トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した第3外力上限値とを用いて前記外力上限値を推定する請求項
3または請求項
4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記ロボットが、前記第1軸線に平行な第3軸線回りに前記第2部材に対して回転駆動される第4部材と、前記第3軸線回りのトルクを検出する第3トルク検出部とを備え、
前記外力上限値推定部が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した前記第1外力上限値と、前記第3トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて算出した第3外力上限値とを比較して、いずれか小さい方のみを用いて前記外力上限値を推定する請求項
3または請求項
4に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ロボットが、前記ロボットに備えられた全ての前記トルク検出部により前記トルクを検出困難な外力が加わる接触の可能性がある特定姿勢であるか否かを判定し、前記特定姿勢であると判定される場合には前記ロボットの動作を制限する請求項
3から請求項
6のいずれかに記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記ロボットが前記特定姿勢であると判定される場合には、前記ロボットの動作速度を低下させる請求項
7に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記ロボットが前記特定姿勢であると判定される場合には、前記トルクを検出困難な前記外力の方向への前記ロボットの動作を制限する請求項
7に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットに作用するトルクを検出し、検出されたトルクが上限値を超えた場合にロボットを停止させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットに物体が接触することにより、物体からロボットに与えられる外力によってロボットの各軸に作用するトルクをトルクセンサ等を用いて検出する場合、ロボットへの物体の具体的な接触位置が特定できないため、外力の大きさを精度よく検出することは困難である。
協働ロボットのように、人と協働して作業するロボットの場合に、ロボットと人とが接触することにより、ロボットから人に与えることが許容される力(許容接触力)の大きさは、ISO/TS15066に規定されている。
【0005】
したがって、ロボットに作用する外力を検出するトルクセンサ等を備えている場合においても、検出されたトルクが上限値を超えていなくても、ISO/TS15066に規定されている許容接触力よりも小さい外力においてロボットを停止させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、前記ロボットが、第1部材と、該第1部材に対して所定の第1軸線回りに回転駆動させられる第2部材と、前記第1軸線回りのトルクを検出する第1トルク検出部とを備え、前記制御装置が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクに基づいて前記第2部材に作用した外力の想定し得る上限値である外力上限値を推定する外力上限値推定部を備え、該外力上限値推定部が、前記第1トルク検出部により検出された前記トルクと、前記ロボットの姿勢および動作から算出した算出トルクとの差分トルクの絶対値を、前記第2部材の回転方向の両端部となる表面上に、物理的に接触可能な位置の前記第1軸線からの最小半径で除算した値を前記外力上限値として推定し、推定された前記外力上限値が、所定の閾値よりも大きい場合に、前記外力の増加を回避するよう前記ロボットを制御するロボットシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットシステムを示す全体構成図である。
【
図2】
図1のロボットシステムに備えられる制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図1のロボットシステムに備えられるロボットのJ1軸線からJ3軸線回りの外力上限値の一例を示すロボットの側面図である。
【
図4】
図1のロボットシステムの変形例における外力上限値を説明するロボットの平面図である。
【
図5】
図4のロボットシステムにおけるロボットの側面図である。
【
図6】
図4および
図5のロボットシステムにおいて推定された各軸の外力上限値から合成外力を算出する方法を説明する図である。
【
図7】
図1のロボットシステムの他の変形例における外力上限値を説明するロボットの側面図である。
【
図8】
図7のロボットシステムにおけるロボットの手首ユニットの正面図である。
【
図9】
図7および
図8のロボットシステムにおいて推定された各軸の外力上限値から合成外力を算出する方法を説明する図である。
【
図10】
図1のロボットシステムの変形例における外力上限値の推定方法を説明するロボットの側面図である。
【
図11】
図4とは異なる姿勢における外力上限値の推定方法を説明するロボットの側面図である。
【
図12】
図1のロボットシステムにおけるロボットの特定姿勢を説明するロボットの側面図である。
【
図13】
図1のロボットシステムにおけるロボットの変形例を示すロボットの側面図である。
【
図14】
図1のロボットシステムにおけるロボットの他の変形例を示すロボットの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るロボットシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットシステム1は、
図1に示されるように、ロボット2と、ロボット2を制御する制御装置3とを備えている。
【0009】
ロボット2は、床面Gに設置されるベース(第3部材)4と、鉛直なJ1軸線(第2軸線)A回りにベース4に対して回転可能に支持された旋回胴(第1部材)5とを備えている。また、ロボット2は、水平なJ2軸線(第1軸線)B回りに旋回胴5に対して回転可能に支持された第1アーム(第2部材)6と、J2軸線Bに平行なJ3軸線(第3軸線)C回りに第1アーム6に対して回転可能に支持された第2アーム(第4部材)7とを備えている。
【0010】
また、ロボット2は、第2アーム7の先端に3軸の手首ユニット8を備えている。
手首ユニット8は、第2アーム7の長手方向に延びるJ4軸線D回りに第2アーム7に回転可能に支持された第1手首要素9を備えている。また、手首ユニット8は、J4軸線Dに直交するJ5軸線E回りに第1手首要素9に回転可能に支持された第2手首要素10を備えている。さらに、手首ユニット8は、J5軸線Eに直交し、J4軸線DとJ5軸線Eとの交点を通過するJ6軸線F回りに第2手首要素10に回転可能に支持された第3手首要素11を備えている。
【0011】
また、本実施形態に係るロボット2は、床面Gとベース4との間に配置され、J1軸線A回りのトルクを検出するトルクセンサ(第2トルク検出部)12を備えている。また、ロボット2は、旋回胴5と第1アーム6との間のJ2軸線B回りのトルクを検出するトルクセンサ(第1トルク検出部)13を備えている。さらに、ロボット2は、第1アーム6と第2アーム7との間のJ3軸線C回りのトルクを検出するトルクセンサ(第3トルク検出部)14を備えている。
【0012】
制御装置3は、プロセッサおよびメモリにより構成されている。制御装置3は、
図2に示されるように、教示されたプログラムに従って、ロボット2に対して指令信号を出力する制御部15を備えている。また、制御装置3は、制御部15からロボット2のツール先端点の位置(姿勢)および各軸の速度(動作)を受け取って、当該姿勢および動作をとることによってJ1軸線AからJ3軸線C回りにそれぞれ作用するトルク値を逐次算出するトルク算出部16を備えている。
【0013】
さらに、制御装置3は、各トルクセンサ12,13,14により検出されたトルク値を受け取って、トルク算出部16において、ロボット2の姿勢、各駆動部の速度および加速度により算出されたトルク値との差分である差分トルク値の絶対値を軸毎に算出する差分トルク算出部17を備えている。そして、制御装置3は、算出された差分トルク値に基づいて、ロボット2に作用した外力Pの想定し得る上限値である外力上限値Paを推定する外力上限値推定部18を備えている。
【0014】
外力上限値推定部18は、軸毎に、軸線A,B,C回りに相対回転させられる2つの部材4,5,6,7のいずれかの回転方向の両端に配置される表面に、ロボット2の構造上、物理的に接触可能な位置の軸線からの最小半径を記憶している。
【0015】
例えば、ベース4に対してJ1軸線A回りに回転させられる旋回胴5については、作業者が物理的に接触する可能性のある旋回胴5の径方向およびJ1軸線A方向に延びる表面のJ1軸線Aに最も近い位置の半径寸法を記憶している。例えば、旋回胴5が、
図3に示されるように、J1軸線Aを中心とする円錐状の外面を有する場合には、横断面の最も小さい位置の表面におけるJ1軸線Aからの半径寸法R1を記憶している。
【0016】
また、例えば、旋回胴5に対してJ2軸線B回りに回転させられる第1アーム6については、作業者が物理的に接触する可能性のある第1アーム6の径方向およびJ2軸線B方向に延びる表面のJ2軸線Bに最も近い位置の半径寸法を記憶している。例えば、第1アーム6が、
図3に示されるように、J2軸線Bを中心とした円筒状の外面を有する端部6aと、該端部6aの表面から径方向外方に延びるアーム部6bとを備える場合には、アーム部6bの付け根のJ2軸線Bからの半径寸法R2、すなわち、端部6aの外面の半径寸法R2を記憶している。
【0017】
また、例えば、第1アーム6に対してJ3軸線C回りに回転させられる第2アーム7については、作業者が物理的に接触する可能性のある第2アーム7の径方向に延びる表面のJ2軸線Bに最も近い位置の半径寸法を記憶している。例えば、第2アーム7が、
図3に示されるように、J3軸線Cを中心とした円筒状の外面を有する端部7aと、該端部7aの表面から径方向外方に延びるアーム部7bとを備える場合には、アーム部7bの付け根のJ3軸線J3からの半径寸法R3、すなわち、端部7aの外面の半径寸法R3を記憶している。
【0018】
そして、外力上限値推定部18は、差分トルク算出部17により算出された差分トルクの絶対値を記憶している最小半径によって除算することにより、外力上限値Paを算出する。
すなわち、差分トルク算出部17により差分トルクが存在する場合には、差分トルクが存在する軸について、ロボット2の表面のいずれかの場所に外力Pが作用していることがわかる。
【0019】
外力Pの作用している場所は特定できないため、差分トルクの大きさだけでは、実際に作用している外力Pの大きさを求めることはできない。しかし、物理的に接触可能な位置の最小半径R1,R2,R3によって差分トルクを除算することにより、接触によって発生し得る外力の最大値P1,P2,P3を外力上限値Paとして求めることができる。
【0020】
そして、制御部15は、外力上限値推定部18により推定された外力上限値Paと所定の閾値とを比較し、外力上限値Paが所定の閾値よりも大きい場合には、ロボット2を停止または退避動作させるよう制御する。
ISO/TS15066には、ロボット2と作業者とが接触することにより、作業者が損傷を受けずに耐え得る生体力学的な負荷の閾値が、接触する身体の部位ごとに設定されている。制御部15は、これらの閾値の内の最も小さい値を閾値として記憶しておき、算出された外力上限値Paが閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0021】
制御部15の行うロボット2の停止動作または退避動作は、外力上限値Paを増大させないための動作であり、停止動作は、ロボット2をその場で停止させる動作であり、退避動作は、ロボット2を外力を緩和させる方向、例えば直前の動作の逆方向に移動させる動作である。
【0022】
このように構成された本実施形態に係るロボットシステム1によれば、トルクセンサ12,13,14により検出されるトルクを発生することができる外力の内、物理的に接触可能な最小半径の位置に作用する外力上限値Paを所定の閾値と比較する。すなわち、トルクセンサ12,13,14によって有意なトルクが検出された場合には、物理的に接触可能な最小半径の位置に外力上限値Paの大きさを有する外力Pが作用したものとして取り扱われる。
【0023】
これにより、例えば、作業者がロボット2に接触することにより実際に作業者にかかる負荷は、確実に外力上限値Pa以下となる。すなわち、本実施形態に係るロボットシステムに1よれば、作業者が損傷を受けずに耐え得る生体力学的な負荷が作業者に加わる前に、確実にロボット2を停止動作あるいは退避動作させることができるという利点がある。
【0024】
最小半径の値としてさらに小さい値を記憶しておくことにより、外力上限値Paをさらに大きく見積もることができる。しかしながらこの場合には過度に安全側の外力上限値Paとなってしまい、軸線A,B,Cから離れた位置に極めて小さい外力Pが作用した場合にもロボット2が停止動作あるいは退避動作させられてしまうので好ましくない。
【0025】
なお、本実施形態においては、軸毎に外力上限値P1,P2,P3を算出して、それぞれ閾値と比較することとした。これに代えて、例えば、トルクセンサ12によりJ1軸線A回りのトルクが検出され、トルクセンサ13によりJ1軸線Aに直交する平面内に配置されるJ2軸線B回りのトルクが検出された場合には、以下の通りに外力上限値Paを推定してもよい。
【0026】
すなわち、J1軸線A回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値(第2外力上限値)P1を算出し、J2軸線B回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値(第1外力上限値)P2を算出し、算出された2つの外力上限値を合成する。これにより合成された外力上限値(合成外力)Paを下式により算出することにしてもよい。
【0027】
Pa=√(P12+P22) (1)
ここで、Paは合成された外力上限値、P1はJ1軸線A回りの外力上限値、P2はJ2軸線B回りの外力上限値である。
【0028】
例えば、
図4および
図5に示されるように、ロボット2に対して直交座標系を概念する。
そして、ロボット2の第1アーム6に、
図4に示されるように、水平面内における外力成分F1および、
図5に示されるように、垂直面内における外力成分F2の外力が作用した場合を想定する。
【0029】
この場合には、
図4に示されるように、トルクセンサ12により検出されたJ1軸線A回りのトルクから外力上限値P1が推定される。外力上限値P1は、Fx-Fy平面上の任意の方向に作用するものと考えることができる。また、
図5に示されるように、トルクセンサ13により検出されたJ2軸線B回りのトルクから外力上限値P2が推定される。外力上限値P2は、Fx-Fz平面上の任意の方向に作用するものと考えることができる。
【0030】
したがって、この場合には、
図6に示されるように、式(1)に示される外力上限値P1,P2の2乗和の平方根により、合成された外力上限値Paを算出することができる。
また、上記においては、J1軸線A回りのトルクとJ2軸線B回りのトルクとを検出する場合を例示したが、これに限定されるものではない。
【0031】
例えば、
図7および
図8に示されるように、J4軸線D回りのトルクを検出するトルクセンサ(図示略)と、J5軸線E回りのトルクを検出するトルクセンサ(図示略)とを備える場合についても同様である。すなわち、トルクセンサにより検出されたJ4軸線D回りのトルクから推定された外力上限値P1が、
図8に示されるように、Fx-Fy平面上の任意の方向に作用する。
【0032】
また、トルクセンサにより検出されたJ5軸線E回りのトルクから推定された外力上限値P2が、
図7に示されるように、Fx-Fz平面上の任意の方向に作用する。
J4軸線DとJ5軸線Eとは、相互に直交する平面に沿って延びている。
したがって、この場合にも、
図9に示されるように、式(1)に示される外力上限値P1,P2の2乗和の平方根により、合成された外力上限値Paを算出することができる。
【0033】
また、上記においては、ロボット2が備える軸線A,B,C,D,E,Fのうち、隣接する2つの軸線B,C回りのトルクを検出する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、J1軸線AとJ3軸線C、J2軸線BとJ4軸線Dのように、隣接していない2つの軸線A,B,C,D,E,F回りのトルクを検出して合成してもよい。
【0034】
また、J2軸線B回りのトルクと、J2軸線Bに平行なJ3軸線C回りのトルクとが検出される場合に、J2軸線B回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値P2を算出し、J3軸線C回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値(第3外力上限値)P3を算出する。そして、算出された第1外力上限値P2および第3外力上限値P3から例えばJ1軸線Aベース換算の外力上限値Paを推定してもよい。
【0035】
また、J2軸線B回りのトルクと、J2軸線Bに平行なJ3軸線C回りのトルクとが検出される場合に、J2軸線B回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値P2を算出し、J3軸線C回りのトルクに基づいて上記手法により外力上限値(第3外力上限値)P3を算出する。そして、算出された第1外力上限値P2と第3外力上限値P3とを比較していずれか小さい方を外力上限値Paとして推定してもよい。
【0036】
すなわち、
図10および
図11に示されるように、第2アーム7の先端に外力が作用する場合に、相互に平行なJ2軸線BおよびJ3軸線C回りの同一方向のトルクがそれぞれ検出される。検出された2つのトルクに基づいて算出される2つの外力上限値P2,P3は、いずれも同じ外力を推定するものであり、かつ、それぞれが想定し得る最大値であるため、小さい方の値が実際の外力Pにより近い値となる。
【0037】
したがって、
図10の場合には、J2軸線B回りのトルクに基づいて算出した外力上限値P2を外力上限値Paとして推定し、
図11の場合には、J3軸線C回りのトルクに基づいて算出した外力上限値P3を外力上限値Paとして推定すればよい。これにより、より精度よく外力Pを推定することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、ロボット2の構造上、物理的に接触可能な位置の最小半径を用いて外力上限値Paを算出することとした。これに代えて、ロボット2が部分的にカバーあるいは安全柵で覆われている場合のように、カバーあるいは安全柵によって物理的に接触が不可能な位置が発生する場合に適用してもよい。
【0039】
また、ロボット2の設置環境上において、作業者が外部から接触不可能な部分が存在する場合には、ロボット2への接触可能な範囲における最小半径を用いることにしてもよい。設置環境上接触不可能な場合としては、センサ等によって作業者のロボット2の特定部分への接近が制限されている場合などを挙げることができる。
【0040】
また、
図12に示されるように、J1軸線Aを含む平面上において、J2軸線BおよびJ3軸線Cに直交する直線に沿う方向に外力Pが作用する場合には、J1軸線AからJ3軸線C回りのトルクはいずれも微小なものとなる。すなわち、ロボット2のこのような姿勢は、全てのトルクセンサ12,13,14によってトルクの検出が困難な姿勢(特定姿勢)となる。
【0041】
本実施形態においては、外力上限値Paの推定はトルクが検出可能であることを前提としているため、制御装置3が、ロボット2の各駆動部の角度からロボット2が特定姿勢にあるか否かを判定し、特定姿勢であると判定される場合にはロボット2の動作を制限してもよい。
ロボット2の動作制限としては、動作速度を所定の速度以下に低下させることにしてもよい。また、トルクセンサ12,13,14によってトルクを検出することが困難な外力Pの方向へロボット2を移動させないことにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、垂直多関節型のロボット2を例示したが、これに代えて、水平多関節型のロボットを採用してもよい。
また、本実施形態においては、トルクを検出するトルク検出部としてトルクセンサ12,13,14を例示したが、これに代えて、各部を駆動するモータの電流を検出してトルクを推定してもよい。
また、セカンダリエンコーダを備える場合には、セカンダリエンコーダにより検出された角度情報に基づいてトルクを推定してもよい。
【0043】
また、6軸多関節型のロボット2を例示したが、7軸多関節型のロボット20に適用してもよい。この場合には、
図13に示されるように、J1軸線A1~J4軸線D1回りのトルクを検出するトルクセンサ12,13,14,22を配置すればよい。符号21は、J3軸線C1に平行なJ4軸線D1回りに第2アーム7に対して回転可能に支持された第3アームである。
【0044】
この場合、第1手首要素9は、第3アーム21の長手方向に延びるJ5軸線E1回りに第3アーム21に回転可能に支持されている。また、第2手首要素10は、J5軸線E1に直交するJ6軸線F1回りに第1手首要素9に回転可能に支持され、第3手首要素11は、J6軸線F1に直交し、J5軸線E1とJ6軸線F1との交点を通過するJ7軸線H1回りに第2手首要素10に回転可能に支持されている。
【0045】
そして、外力上限値推定部18は、トルクセンサ13,14,22によって検出されたトルク値に基づいて推定した3つの外力上限値のうちの最も小さい外力上限値と、トルクセンサ12によって検出されたトルク値に基づいて推定した外力上限値とに基づいて、所定の閾値との比較に用いる外力上限値を推定する。
【0046】
また、本実施形態においては、トルクセンサ12がベース4、トルクセンサ13が旋回胴5、およびトルクセンサ14が第1アーム6に設けられているものを例示したが、これに代えて、トルクセンサ12が床面G、トルクセンサ13が第1アーム6、およびトルクセンサ14が第2アーム7に設けられていてもよい。すなわち、トルク算出部16におけるトルク算出方法を調整することによって、各軸線A,B,C回りの回転によって相対移動する2つの駆動部のどちらに配置してもよい。
【0047】
例えば、2つの駆動部として第1アーム6および第2アーム7を用いる場合、
図14に示されるように、第1アーム6および第2アーム7にトルクセンサ14、J3軸線C回りに第2アーム7を駆動させるモータ23、および減速機24が配置される。この場合、細くしたい駆動部である第2アーム7にトルクセンサ14を設けることにより、第2アーム7を細くすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボットシステム
2,20 ロボット
3 制御装置
4 ベース(第3部材)
5 旋回胴(第1部材)
6 第1アーム(第2部材)
7 第2アーム(第4部材)
12 トルクセンサ(第2トルク検出部)
13 トルクセンサ(第1トルク検出部)
14 トルクセンサ(第3トルク検出部)
18 外力上限値推定部
A,A1 J1軸線(第2軸線)
B,B1 J2軸線(第1軸線)
C,C1 J3軸線(第3軸線)
P 外力
Pa 外力上限値
P1 外力上限値(第2外力上限値)
P2 外力上限値(第1外力上限値)
P3 外力上限値(第3外力上限値)