(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】空調機用制御システム及び空調機用制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/80 20180101AFI20230606BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20230606BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20230606BHJP
【FI】
F24F11/80
F24F11/46
F24F11/70
(21)【出願番号】P 2019106173
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三野 洋介
(72)【発明者】
【氏名】津田 晃宏
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-145088(JP,A)
【文献】特開2014-159895(JP,A)
【文献】特開平1-147244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0283965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が出入り可能な空間(以下、空調エリアという。)を設定温度に基づいて冷房又は暖房を行う空調機、及び
利用者が希望する室内温度に関する情報(以下、希望温度情報という。)が入力される入力部を有し、
1つ又は複数の前記希望温度情報を利用して前記設定温度を決定する空調装置に適用される空調機用制御システムにおいて、
前記空調エリアに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された前記希望温度情報(以下、無効情報という。)を選別する選別部と、
前記無効情報が前記設定温度の決定に利用されることを禁止する無効情報利用禁止部と
を備える空調機用制御システム。
【請求項2】
利用者により前記希望温度情報が入力された後、予め決められた時間内に同一の利用者により入力された1つ又は複数の前記希望温度情報(以下、第2の無効情報という。)を選別する第2の選別部と、
前記1つ又は複数の第2の無効情報が前記設定温度の決定に利用されることを禁止する第2の無効情報利用禁止部と
を備える請求項1に記載の空調機用制御システム。
【請求項3】
前記空調装置は、前記希望温度情報を蓄積する蓄積部を有するとともに、前記蓄積部に蓄積された1つ又は複数の前記希望温度情報を利用して前記設定温度を決定する空調装置であって、
前記無効情報利用禁止部及び前記第2の無効情報利用禁止部それぞれは、前記無効情報又は第2の無効情報が有効な情報として前記蓄積部に蓄積されることを禁止する請求
項2に記載の空調機用制御システム。
【請求項4】
利用者が出入り可能な空間(以下、空調エリアという。)を設定温度に基づいて冷房又は暖房を行う空調機、及び
利用者が希望する室内温度に関する情報(以下、希望温度情報という。)が入力される入力部を有し、
1つ又は複数の前記希望温度情報を利用して前記設定温度を決定する空調装置の制御部に組み込まれるプログラムであって、
前記制御部を、
空調エリアに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された前記希望温度情報(以下、無効情報という。)を選別する選別部、及び
前記無効情報が前記設定温度の決定に利用されることを禁止する無効情報利用禁止部
として機能させる空調機用制御プログラム。
【請求項5】
前記制御部を、さらに、
利用者により前記希望温度情報が入力された後、予め決められた時間内に同一の利用者により入力された1つ又は複数の前記希望温度情報(以下、第2の無効情報という。)を選別する第2の選別部、及び
前記1つ又は複数の第2の無効情報が前記設定温度の決定に利用されることを禁止する第2の無効情報利用禁止部
として機能させる請求項4に記載の空調機用制御プログラム。
【請求項6】
利用者が出入り可能な空間(以下、空調エリアという。)を設定温度に基づいて冷房又は暖房を行う空調機、
利用者が希望する室内温度に関する情報(以下、希望温度情報という。)が入力される
力部、及び
前記希望温度情報を蓄積する蓄積部を有し、
前記蓄積部に蓄積された1つ又は複数の前記希望温度情報を利用して前記設定温度を決定する空調装置の制御部に組み込まれるプログラムであって、
前記制御部を、
空調エリアに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された前記希望温度情報(以下、第1無効情報という。)を選別する第1選別部、
前記第1無効情報が有効な情報として前記蓄積部に蓄積されることを禁止する第1無効情報利用禁止部、
利用者により前記希望温度情報が入力された後、予め決められた時間内に同一の利用者により入力された1つ又は複数の前記希望温度情報(以下、第2無効情報という。)を選別する第2選別部、
前記1つ又は複数の第2無効情報が有効な情報として前記蓄積部に蓄積されることを禁止する第2無効情報利用禁止部
として機能させる空調機用制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調エリアを設定温度に基づいて冷房又は暖房を行う空調機を制御するための空調機用制御システム及び空調機用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空調機用制御システムでは、複数の利用者から受け付けた要求環境設定情報を蓄積し、蓄積された情報を用いて、推奨される設定温度等の情報(推奨環境設定)を利用者に提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、複数の利用者からの要求に応じて空調エリア内の冷房又は暖房を行う場合において、各利用者の要求が大きく異なる場合、当該空調エリアを適切に冷房又は暖房を行うことが難しい。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、複数の利用者からの要求に応じて空調エリア内の冷房又は暖房を行う場合において、当該空調エリアを適切に冷房又は暖房を行うことが可能となり得る空調機用制御システム又は空調機用制御プログラムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空調エリアを設定温度に基づいて冷房又は暖房を行う空調機(2)、及び利用者が希望する室内温度に関する情報(以下、希望温度情報という。)が入力される入力部(31)を有し、1つ又は複数の希望温度情報を利用して設定温度を決定する空調装置に適用される空調機用制御システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、空調エリアに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された希望温度情報(以下、無効情報という。)を選別する選別部と、無効情報が設定温度の決定に利用されることを禁止する無効情報利用禁止部とである。
【0008】
また、当該空調装置の制御部(3)に組み込まれるプログラムにあっては、例えば、以下の機能のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、無効情報を選別する機能、及び無効情報が設定温度の決定に利用されることを禁止する機能である。
【0009】
無効情報は、「空調エリアに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された希望温度情報」であるので、一時的(過渡的)な要求である可能性が高い。
【0010】
そして、当該空調機用制御システム等では、無効情報が設定温度の決定に利用されることが禁止されるので、設定温度が過度に低く又は高くなってしまうことが抑制され得る。延いては、当該空調エリアが適切に冷房又は暖房される可能性が高くなる。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るビル用空調装置の概要を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る判別部の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0014】
(第1実施形態)
<1.空調機用制御システム等の概要>
本実施形態は、ビル用空調装置1に本開示に係る空調機用制御システム及び空調機用制御プログラムの一例が適用されたものである。以下の説明は、ビル内に設けられた特定の空間(以下、空調エリアという。)の空調を行う空調装置に適用した例である。
【0015】
空調エリアAは、
図1に示されるように、利用者が出入り可能な空間である。本実施形態に係る空調エリアAは、例えば、利用者の自席が配置された建物内の部屋である。利用者は、例えば、当該空調エリアAを利用して働く者である。
【0016】
ビル用空調装置1は、空調機2及び制御装置3等を少なくとも備える。空調機2は、設定温度に基づいて空調エリアA内を冷房又は暖房する。設定温度は、冷房能力又は暖房能力の大きさの度合いを示すパラメータである。
【0017】
つまり、設定温度は、目標とする室内(空調エリアA内の)空気温度や空調機2から吹き出される空気の目標温度等である。したがって、例えば、冷房運転時においては、設定温度が低くなるほど空調機2が発揮する冷房能力が大きくなり、かつ、設定温度が高くなるほど当該冷房能力が小さくなる。
【0018】
設定温度は、利用者が希望する室内温度に関する情報(以下、希望温度情報という。)を利用して決定される。なお、本実施形態では、制御装置3が設定温度を決定し、かつ、空調機2は、室内空気温度が当該決定された設定温度となるように、冷房能力又は暖房能力を発生させる。
【0019】
本実施形態に係る制御装置3は、入力部31、判別部32、蓄積部33、算出部34及び出力部35等を少なくとも有するコンピュータにて構成されている。具体的には、制御装置3は、CPU、ROM及びRAM等を有して構成された演算部、並びに入力部31、蓄積部33及び出力部35を構成する回路基板等を有している。
【0020】
入力部31には希望温度情報が入力される。利用者は、自らが携帯する携帯型端末機(例えば、スマートフォン)S1、空調エリアA内に設置された温度設定装置(図示せず。)又は自席のコンピュータ等を利用して、自身が希望する希望温度情報を入力部31に送信する。
【0021】
判別部32及び算出部34は、演算部にてプログラムが実行されることにより実現される。当該プログラムは、ROM等の不揮発性記憶部に予め記憶されているとともに、CPUにて実行される。
【0022】
蓄積部33には、1つ以上の希望温度情報が蓄積される。当該蓄積部33は、書き換え可能な不揮発性記憶装置にて構成されている。算出部34は、蓄積部33に記憶されている1つ又は複数の希望温度情報を利用して設定温度を決定する。
【0023】
出力部35は、決定された設定温度を空調機2に送信する。空調機2は、室内空気温度が当該設定温度となるように、冷房能力又は暖房能力を調節する。なお、制御装置3は、空調機2の筐体内又は当該筐体外に配置されている。
【0024】
<2.設定温度の決定プロセス>
判別部32は、第1選別機能及び第2選別機能のうち少なくとも一方(本実施形態では、2つの)機能を有する。
【0025】
<第1選別機能>
第1選別機能は、利用者が空調エリアAに進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された希望温度情報(以下、第1無効情報という。)を選別する機能である。
【0026】
なお、本実施形態では、例えば、以下の手法にて「利用者が空調エリアAに進入したか否か」が判断される。
すなわち、空調エリアA内には、ビーコンBeが少なくとも1つ設置されている。ビーコンBeは、当該空調エリアA内に無線信号(電波や赤外線等)を発信する。携帯型端末機S1には、利用者位置検知用のアプリケーションが組み込まれている。
【0027】
アプリケーションは、当該無線信号を受信したときに、利用者位置検知サーバS2にその旨の信号を自動的に無線送信するプログラムである。利用者位置検知サーバS2は、携帯型端末機S1から送信されてきた信号を利用して、当該携帯型端末機S1の位置、つまり利用者の位置を把握する。
【0028】
つまり、本実施形態に係る空調機用制御システムは、「利用者が空調エリアAに進入したか否か」を判断するための判断装置を備える。本実施形態に係る判断装置は、利用者位置検知サーバS2及びアプリケーション等にて構成されている。
【0029】
なお、上記「予め決められた時間」は、試行錯誤的に決定される時間であって、空調エリアAの環境及び利用形態等に応じて適宜決定される時間である。因みに、当該時間は、ビル用空調装置1の管理者又は空調装置の施工業者により手動設定された時間、及び予め決められたルールに従って自動設定された時間等、いずれであってもよい。
【0030】
<第2選別機能>
第2選別機能は、利用者により希望温度情報が入力された後、予め決められた時間内に同一の利用者により入力された1つ又は複数の希望温度情報(以下、第2無効情報という。)を選別する機能である。
【0031】
当該選別は、例えば、以下の手法により実行される。すなわち、希望温度情報には、当該情報の発信元を示す識別信号が含まれている。判別部32は、当該識別信号を利用して入力された希望温度情報が第2無効情報であるか否かを識別する。
【0032】
<無効情報利用禁止機能>
判別部32は、第1無効情報及び第2無効情報が有効な情報として蓄積部33に蓄積されることを禁止する。具体的には、判別部32は、第1無効情報及び第2無効情報に対して、以下の(a)又は(b)の処理を実行する。
【0033】
(a)第1無効情報及び第2無効情報を蓄積部33に記憶させることなく破棄する処理
(b)利用禁止信号(フラグ)が追加された第1無効情報及び第2無効情報を蓄積部33に記憶する処理。利用禁止信号(フラグ)とは、当該情報が設定温度の決定に利用されることを禁止すること示す信号(フラグ)である。
【0034】
因みに、(b)の処理では、設定温度の決定に利用可能な希望温度情報、つまり有効な情報には、その旨を示す利用可能信号(フラグ)が追加されていてもよい。つまり、算出部34は、利用可能信号が追加されている情報、又は利用禁止信号が追加されていない情報を利用して設定温度を決定する。
【0035】
<判別部等の詳細作動>
図2は、主に判別部32の作動を示すフローチャートである。当該フローチャートに示される制御は、制御装置3のCPU(以下、制御装置3と記載する。)で実行される。当該制御は、入力部31に希望温度情報が入力された時に実行される。
【0036】
当該制御が起動されると、制御装置3は、入力された情報が第1無効情報であるか否かを判断する(S1)。制御装置3は、当該情報が第1無効情報であると判断した場合には(S1:YES)、当該情報を蓄積部33に記憶させることなく、破棄する(S7)。
【0037】
制御装置3は、当該情報が第1無効情報でないと判断した場合には(S1:NO)、当該情報が第2無効情報であるか否かを判断する(S3)。制御装置3は、当該情報が第2無効情報であると判断した場合には(S3:YES)、当該情報を蓄積部33に記憶させることなく、破棄する(S7)。
【0038】
制御装置3は、当該情報が第2無効情報でないと判断した場合には(S3:NO)、当該情報を蓄積部33に記憶させる(S5)。つまり、本実施形態に係る判別部32は、上記(a)の処理を実行する。
【0039】
3.本実施形態に係るビル用空調装置の特徴
第1無効情報は、「空調エリアAに利用者が進入後、予め決められた時間が経過する前に当該利用者により入力された希望温度情報」であるので、一時的(過渡的)な要求である可能性が高い。
【0040】
第2無効情報は、「利用者により希望温度情報が入力された後、予め決められた時間内に同一の利用者により入力された1つ又は複数の希望温度情報」であるので、第1無効情報と同様に、一時的(過渡的)な要求である可能性が高い。
【0041】
そして、本実施形態に係るビル用空調装置1では、第1無効情報及び第2無効情報が設定温度の決定に利用されることが禁止されるので、設定温度が過度に低く又は高くなってしまうことが抑制され得る。延いては、空調エリアAが適切に冷房又は暖房される可能性が高くなる。
【0042】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、利用者の自席が配置された建物内の部屋を空調エリアAとした場合の例であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、建物全体を空調エリアAとしたものにも適用可能である。
【0043】
なお、建物全体を空調エリアAとした場合には、判断装置の具体的構成や上記「予め決められた時間」等は、建物全体を空調エリアAとした場合に適した構成又は時間とする必要がある。
【0044】
上述の実施形態では、第1無効情報であるか否かの判断ステップ(S1)、及び第2無効情報であるか否かの判断ステップ(S3)を有していた。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、いずれかの判断ステップが廃止された構成であってもよい。
【0045】
上述の実施形態に係る判別部32は、上記(a)の処理を実行した、しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、上記(b)の処理が実行される構成であってもよい。なお、上記(b)の処理が実行される構成においては、第1無効情報及び第2無効情報のいずれかに利用可能信号(フラグ)が追加されない構成であってもよい。
【0046】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1… ビル用空調装置
2… 空調機
3… 制御装置
31… 入力部
32… 判別部
33… 蓄積部
34… 算出部
35… 出力部
A… 空調エリア
Be… ビーコン
S1… 携帯型端末機
S2… 利用者位置検知サーバ