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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】筒状ヒーター及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/54 20060101AFI20230606BHJP
   H05B 3/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H05B3/54
H05B3/06 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019120053
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021005535
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達郎
(72)【発明者】
【氏名】関 庄太
(72)【発明者】
【氏名】岩城 宏和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-71199(JP,U)
【文献】実開平4-38697(JP,U)
【文献】特開平11-219775(JP,A)
【文献】特開2014-135157(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1906079(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02- 3/86
F16L 53/00ー53/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弾性体部と、
前記弾性体部に一体的に設けられ、かつ、加熱用回路が形成された加熱部を有するフレキシブルプリント配線板と、を備えると共に、
前記フレキシブルプリント配線板は前記加熱部を有する部分が前記弾性体部の内周面に配されると共に、前記フレキシブルプリント配線板のうち前記弾性体部の内周面に配された部分は、周方向に対して先端同士が間隔を空けた状態で前記弾性体部の内周面に沿うように、かつ、内周面側に露出した状態で前記弾性体部に設けられることを特徴とする筒状ヒーター。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント配線板をインサート部品として、インサート成形により前記弾性体部を成形する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の筒状ヒーターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用回路が形成されたフレキシブルプリント配線板を有する筒状ヒーター及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状部材や柱状部材を加熱するために、これらの部材の外周面を覆うように設けられる筒状ヒーターが知られている。図6を参照して、従来例に係る筒状ヒーターについて説明する。図6は従来例に係る筒状ヒーターの模式的断面図である。
【0003】
図示の筒状ヒーター700は、両面テープ710と、両面テープ710に貼り付けられるフレキシブルプリント配線板720と、フレキシブルプリント配線板720を保持するための保持部材730とを備えている。フレキシブルプリント配線板720には、加熱用回路が形成されており、電圧を印加することにより発熱する機能を有している。また、保持部材730は筒状の部材により構成されている。
【0004】
以上のように構成される筒状ヒーター700を、円柱状の加熱対象物550に取り付ける場合の手順について説明する。まず、加熱対象物550の外周面に両面テープ710が貼り付けられる。次に、両面テープ710にフレキシブルプリント配線板720が貼り付けられる。その後、フレキシブルプリント配線板720が自己の弾性復元力等によって、両面テープ710から剥がれてしまわないように保持部材730が装着される。以上の手順により筒状ヒーター700が加熱対象物550に取り付けられた後に、フレキシブルプリント配線板720の加熱用回路に電圧が印加されると、加熱用回路が発熱し、加熱対象物550は加熱される。
【0005】
上記のように構成される従来例に係る筒状ヒーター700においては、両面テープ710を貼り付ける作業が煩わしく、部品点数も多いため作業工程が多いという欠点がある。また、両面テープ710の貼り付け位置が不正確な場合、両面テープ710を貼り付け直さなければならないという欠点もある。また、加熱対象物550とフレキシブルプリント配線板720との間に両面テープ710が介在するため、加熱効率が低下してしまう原因にもなっている。
【0006】
また、熱収縮チューブを用いた技術(特許文献1参照)や、コア本体に発熱体を貼り付けた後に合成ゴムにより被覆する技術(特許文献2参照)なども知られている。しかしながら、これらの技術においても部品点数が多いため、製造工程が多くなり、また、加熱対象物と発熱体等との間に他の部材が介在するため、加熱効率が低いといった欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-165542号公報
【文献】特開2008-153042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、取付作業が容易で、加熱効率が高い筒状ヒーター及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
本発明の筒状ヒーターは、
筒状の弾性体部と、
前記弾性体部に一体的に設けられ、かつ、加熱用回路が形成された加熱部を有するフレキシブルプリント配線板と、を備えると共に、
前記フレキシブルプリント配線板は前記加熱部を有する部分が前記弾性体部の内周面に配されると共に、前記フレキシブルプリント配線板のうち前記弾性体部の内周面に配された部分は、周方向に対して先端同士が間隔を空けた状態で前記弾性体部の内周面に沿うように、かつ、内周面側に露出した状態で前記弾性体部に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、筒状の弾性体部の筒内を拡げるように変形させながら、筒状ヒーターを加熱対象物に取り付けることができる。従って、取付作業は容易である。また、フレキシブルプリント配線板の加熱部は弾性体部の内周面側に露出しているため、加熱対象物に加熱部を直接接触させることができる。従って、加熱効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、取付作業が容易で、加熱効率が高い筒状ヒーターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの使用例を示す外観図である。
図2図2は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの斜視図である。
図3図3は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの製造工程図である。
図5図5は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの製造工程図である。
図6図6は従来例に係る筒状ヒーターの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(実施例)
図1図5を参照して、本発明の実施例に係る筒状ヒーターについて説明する。図1は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの使用例を示す外観図であり、加熱対象物に取り付けられた筒状ヒーターの付近を示している。図2は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの斜視図である。図3は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの模式的断面図である。なお、本実施例に係る筒状ヒーターは円筒形状であり、図3においては、円筒の中心軸線に対して垂直な面で筒状ヒーターを切断した断面図を示している。図4及び図5は本発明の実施例に係る筒状ヒーターの製造工程図である。
【0016】
<筒状ヒーターの使用例>
図1に示すように、本実施例に係る筒状ヒーター10は、加熱対象物500の外周面を覆うように取り付けられる。加熱対象物500の形状は特に限定されるものではないが、筒状部材や柱状部材が適している。例えば、鏡筒や、液体が通る管を加熱するために筒状ヒーター10を用いることができる。前者の場合には、筒状ヒーター10によって加熱対象物である鏡筒を加熱することでレンズの曇りを抑制することができる。後者の場合には、筒状ヒーター10によって加熱対象物である管を加熱することで管内を通る液体の氷結
を抑制することができる。図示の例においては、円筒状の加熱対象物500に、円筒状の筒状ヒーター10が取り付けられた様子を示している。
【0017】
<筒状ヒーター>
本実施例に係る筒状ヒーター10の構成について説明する。本実施例に係る筒状ヒーター10は、筒状の弾性体部200と、この弾性体部200に一体的に設けられるフレキシブルプリント配線板100とにより構成される。弾性体部200は、ゴムなどのエラストマー材料により構成される。フレキシブルプリント配線板100は、加熱用回路110aが形成された加熱部110と、加熱用回路110aに電圧を印加するための送電部120とから構成される。なお、送電部120は不図示の電源等に電気的に接続される。
【0018】
フレキシブルプリント配線板100における加熱部110は、周方向に対して先端同士が間隔Sを空けた状態で弾性体部200の内周面に沿うように、かつ、内周面側に露出した状態で弾性体部200に設けられる。なお、送電部120は、弾性体部200から引き出された状態で設けられる。
【0019】
以上のように構成される筒状ヒーター10によれば、弾性体部200について、上記の間隔Sの付近を引き延ばすように変形させることができる。これにより、筒状ヒーター10は、筒状の弾性体部200の筒内を拡げるように変形させることができる。
【0020】
<筒状ヒーターの製造方法>
特に、図4及び図5を参照して、本実施例に係る筒状ヒーター10の製造方法の一例について説明する。本実施例に係る筒状ヒーター10は、例えば、フレキシブルプリント配線板100をインサート部品として、弾性体部200を、射出成形法を用いたインサート成形を行うことにより得ることができる。より具体的には、図4及び図5に示すように、下型310と、上型320と、中子330とを備える成形金型300を用いて、インサート成形を行うことができる。以下、このような成形金型を用いてインサート成形を行う場合について、製造工程の順に説明する。
【0021】
まず、中子330に対して、フレキシブルプリント配線板100における加熱部110が巻き付けられる。図4(a)には中子330に対してフレキシブルプリント配線板100を近付けている途中の様子が示されており、図4(b)には中子330にフレキシブルプリント配線板100の加熱部110が巻き付けられた状態が示されている。図4(b)に示すように、加熱部110は、周方向に対して先端同士が間隔Sを空けた状態で、中子330に巻き付けられる。
【0022】
次に、加熱部110が巻き付けられた中子330が、下型310と上型320との間に配置される。下型310の上面側には、中子330が装着されるための断面半円形の溝部311が設けられている。また、この溝部311の中央には弾性体部200を成形するための深溝部312が設けられている。この深溝部312と中子330との間に形成される空間部がキャビティとなる。また、上型320の下面側にも同様に、中子330が装着されるための断面半円形の溝部321が設けられており、その中央にはキャビティを形成するための深溝部(不図示)が設けられている。この上型320には、キャビティに成形材料(本実施例においては、ゴムなどのエラストマー材料)を注入するための注入口322が設けられている。
【0023】
図5(a)には、下型310と上型320との間に、加熱部110が巻き付けられた中子330を配置する途中の様子が示されており、図5(b)には、型締めされた様子が示されている。型締め後に、射出成形機によって、注入口322から成形材料が注入され、インサート成形がなされる。その後、成形品が金型から取り出されて、バリ取りなどの後
処理が行われることで、図2に示すような筒状ヒーター10を得ることができる。なお、ここでは、射出成形法を用いた場合を例にして説明したが、筒状ヒーター10は、射出成形法に限らず、押出成形法など、その他の成形方法を用いても製造可能である。また、成形用の金型の構造についても、上記の内容は一例に過ぎず、様々な構造の金型を採用し得る。
【0024】
<本実施例に係る筒状ヒーターの優れた点>
本実施例に係る筒状ヒーター10によれば、筒状の弾性体部200の筒内を拡げるように変形させながら、筒状ヒーター10を加熱対象物500に取り付けることができる。従って、取付作業は容易である。また、フレキシブルプリント配線板100の加熱部110は弾性体部200の内周面側に露出しているため、加熱対象物500に加熱部110を直接接触させることができる。従って、加熱効率を高めることができる。更に、部品点数も少ないため、製造工程も少なくて済む。
【0025】
なお、加熱対象物に対して、筒状ヒーターを容易かつ確実に取り付けることができ、加熱効率を十分に高めるためには、加熱対象物の外周面の断面形状と、筒状ヒーターの内周面の断面形状が相似形状であって、後者の寸法の方を前者の寸法よりも適度に小さくするのが望ましい。なお、上記の「断面形状」とは、筒状ヒーターにおける筒が伸びる方向に対して垂直な断面の形状を意味する。
【0026】
例えば、上述した実施例の場合、加熱対象物500の外周面の断面形状と、筒状ヒーター10の内周面の断面形状は、いずれも円形である。そして、前者の円の直径(加熱対象物500の外径)をD1とし、後者の円の直径(筒状ヒーター10の内径)をD2とすると、D1>D2を満たすように設定する。例えば、D1×0.93≧D2と設定することで、上述した間隔Sが4倍程度になるまで、弾性体部200の筒内を拡げるように変形させることを可能にしつつ、加熱対象物500に対して位置ずれが発生してしまうことを抑制可能な状態で筒状ヒーター10を取り付けることができる。
【0027】
なお、加熱対象物の外周面の断面形状と、筒状ヒーターの内周面の断面形状については、円形に限られることはない。これらの断面形状については、例えば、オーバル形状(楕円、長円、トラック形状など)の他、矩形の場合にも適用可能である。また、上記の通り、加熱対象物の外周面の断面形状と、筒状ヒーターの内周面の断面形状は、相似形状であることが望ましいものの、筒状ヒーターは弾性変形が可能なため、多少、両者の形状が異なっていても構わない。
【0028】
また、加熱対象物500をより効率的に加熱したい場合には、弾性体部200の材料として、熱伝導率の低い材料を採用するとよい。これにより、弾性体部200の外周面側への放熱を抑制することができるため、加熱対象物500をより効率的に加熱することができる。一方、弾性体部200の外周面側にも、他の加熱対象物が設けられる場合には、弾性体部200の材料として、熱伝導率の高い材料を採用するとよい。この場合には、加熱部110からの熱が弾性体部200の外周面側にも伝わり易くなるため、弾性体部200の内周面側の加熱対象物500だけでなく、外周面側の加熱対象物も加熱することが可能となる。
【0029】
なお、上記実施例においては、弾性体部200に対して、1枚のフレキシブルプリント配線板100が一体的に設けられる場合の構成を示した。しかしながら、本発明においては、弾性体部に対して複数枚のフレキシブルプリント配線板が一体的に設けられる場合も含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10 筒状ヒーター
100 フレキシブルプリント配線板
110 加熱部
110a 加熱用回路
120 送電部
200 弾性体部
300 成形金型
310 下型
311 溝部
312 深溝部
320 上型
321 溝部
322 注入口
330 中子
500 加熱対象物
S 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6