(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】情報収集装置及び方法並びに情報収集システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230606BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230606BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
G07C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019142757
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼上 斉
(72)【発明者】
【氏名】塩津 真一
(72)【発明者】
【氏名】盛林 敏之
(72)【発明者】
【氏名】大築 ともえ
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-117778(JP,A)
【文献】特開2002-042288(JP,A)
【文献】特開2004-291761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/09
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される情報収集装置であって、
第1取得情報と、当該第1取得情報より情報量が小さい第2取得情報と、を取得して対象情報として記録媒体に記録
し、
前記車両が、
特定の通信回線を利用可能な第1の通信エリア内に位置している
場合には、
前記対象情報を
前記特定の通信回線を用いて外部装置に転送
し、
前記車両が、前記特定の通信回線を利用できない第2の通信エリアに位置している場合には、
前記特定の通信回線と異なる通信回線を用いて前記第2取得情報を前記外部装置に転送する、
情報収集装置。
【請求項2】
車両に搭載される情報収集装置であって、
情報を取得して対象情報として記録媒体に記録し、
前記車両が、特定の通信回線を利用可能な第1の通信エリア内に位置している場合には、
前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて外部装置に転送し、
前記車両が、前記特定の通信回線を利用できない第2の通信エリアに位置している所定の通知条件の成立下においては、
前記車両の搭乗者に対して前記第1の通信エリアへ前記車両の移動を促す通知をする、
情報収集装置。
【請求項3】
前記記録媒体の空き容量が所定容量以下となったときに前記通知をする、
請求項2に記載の情報収集装置。
【請求項4】
前記第1の通信エリアが複数ある場合、
前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて前記外部装置に転送する際の転送情報量、又は、転送時間に基づき、前記複数の第1の通信エリアの中から選択された第1の通信エリアへ前記車両の移動を促す通知をする、
請求項2又は3に記載の情報収集装置。
【請求項5】
前記特定の通信回線はローカルエリア回線であり、前記第1の通信エリアはローカルエリアネットワークエリアであり、前記第2の通信エリアは移動体通信回線を利用できるエリアである、
請求項1~4の何れかに記載の情報収集装置。
【請求項6】
前記対象情報として複数種類の対象情報が記録される場合、
前記複数種類の対象情報に対して互いに異なる優先度を設定し、前記車両が前記第1の通信エリア内に位置しているとき、より高い優先度が設定された対象情報から前記外部装置に対する転送を行う、
請求項1~5の何れかに記載の情報収集装置。
【請求項7】
前記複数種類の対象情報は、
車両情報に基づくイベント
を契機にして前記記録媒体に記録される
対象情報と、それ以外の対象情報と、を含み、
前記イベントを契機にして
前記記録媒体に記録される対象情報に対し、
前記それ以外の対象情報よりも高い優先度を設定する、
請求項6に記載の情報収集装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の情報収集装置をn台備えるとともに前記外部装置を備えた情報収集システムであって、
nは2以上の整数であり、第1~第nの情報収集装置は第1~第nの車両に搭載され、
前記外部装置は、
第iの車両及び第jの車両が前記
第1の通信エリア内に位置しているとき(i及びjはn以下の互いに異なる整数)、前記第iの車両に搭載された第iの情報収集装置及び前記第jの車両に搭載された第jの情報収集装置の内、何れか一方に対し他方より高い転送優先順位を設定
し、
前記第iの車両及び前記第jの車両が前記
第1の通信エリア内に位置しているとき、より高い転送優先順位が設定された情報収集装置から先に前記対象情報の前記外部装置への転送が行われるよう、前記第iの情報収集装置及び前記第jの情報収集装置を制御
し、
前記第iの情報収集装置の記録媒体である第iの記録媒体の状態及び前記第jの情報収集装置の記録媒体である第jの記録媒体の状態に基づいて、前記転送優先順位の設定を行う
、
情報収集システム。
【請求項9】
前記第iの記録媒体の空き容量及び前記第jの記録媒体の空き容量の内、より小さな空き容量に対応する情報収集装置に対し、より高い転送優先順位を設定する、
請求項8に記載の情報収集システム。
【請求項10】
前記第1~第nの情報収集装置の夫々は請求項7に記載の情報収集装置であって、
前記第iの記録媒体に記録されている前記イベントを契機にして記録媒体に記録される対象情報の総情報量及び前記第jの記録媒体に記録されている前記イベントを契機にして記録媒体に記録される対象情報の総情報量の内、より大きな総情報量に対応する情報収集装置に対し、より高い転送優先順位を設定する、
請求項8に記載の情報収集システム。
【請求項11】
車両に搭載される情報収集装置にて用いられる情報収集方法であって、
第1取得情報と、当該第1取得情報より情報量が小さい第2取得情報と、を取得して対象情報として記録媒体に記録し、
前記車両が、特定の通信回線を利用可能な第1の通信エリア内に位置している場合には、
前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて外部装置に転送し、
前記車両が、前記特定の通信回線を利用できない第2の通信エリアに位置している場合には、
前記特定の通信回線と異なる通信回線を用いて前記第2取得情報を前記外部装置に転送する、
情報収集方法。
【請求項12】
車両に搭載される情報収集装置にて用いられる情報収集方法であって、
情報を取得して対象情報として記録媒体に記録し、
前記車両が、特定の通信回線を利用可能な第1の通信エリア内に位置している場合には、
前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて外部装置に転送し、
前記車両が、前記特定の通信回線を利用できない第2の通信エリアに位置している所定の通知条件の成立下においては、
前記車両の搭乗者に対して前記第1の通信エリアへ前記車両の移動を促す通知をする、
情報収集方法。
【請求項13】
前記対象情報として複数種類の対象情報が前記記録媒体に記録される場合、
前記複数種類の対象情報に対して互いに異なる優先度を設定し、前記車両が前記第1の通信エリア内に位置しているとき、より高い優先度が設定された前記対象情報から前記外部装置に対する転送を行う、
請求項11に記載の情報収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報収集装置及び方法並びに情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に情報収集装置を搭載しておき、情報収集装置にて収集された情報を様々な形で役立てることが盛んに行われている。例えば、情報収集装置の一種であるドライブレコーダでは、車両の外部又は内部の画像情報(映像情報)を収集する。このような画像情報は、事故が発生した場合における事故の原因分析等に利用される。
【0003】
この種の情報収集装置では、カメラを用いて取得される画像情報だけでなく、車速情報及びブレーキ情報などの車両情報や、GPSを用いて得た位置情報なども収集されることがあり、収集された情報を利用したテレマティクスサービスも実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】“テレマティクスサービス(e-テレマ・e-テレマPRO)”、[online]、オリックス自動車株式会社、[令和1年6月27日検索]、インターネット<URL:https://www.orix.co.jp/auto/hojin/telema/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個々の車両に搭載される情報収集装置にはメモリカード等の記録媒体が設けられ、この記録媒体に収集された情報が記録される。記録媒体の記録容量は有限であるため、長い時間にわたる収集情報を消去することなくためておく際には、大容量の記録部を備えたサーバ装置への情報の転送が必要となる。また、複数の車両に搭載される複数の情報収集装置での各収集情報をサーバ装置に集約し、サーバ装置において有益な二次情報(例えばヒヤリハットマップ)を生成するといったこともある。
【0006】
この際、記録媒体の空き容量が無くなる前にメモリカード等の記録媒体を情報収集装置から抜き取り、当該記録媒体の記録情報をパーソナルコンピュータ等の端末装置を介してサーバ装置に送る、又は、当該記録媒体をサーバ装置に直接挿入して当該記録媒体の記録情報をサーバ装置に与えるといった方法が考えられる。しかしながら、この方法では、人的な手間がかかる。
【0007】
このような人的な手間を軽減すべく、或る通信エリアに車両が入ったときに、自動的に記録媒体の記録情報をサーバ装置へ無線で転送するといったシステムも考えられる。
【0008】
但し、情報の転送には有限の時間がかかるので、何ら工夫を設けることなく情報の転送を行うことは効率的とは言えない。
【0009】
本発明は、収集した情報の効率的な転送に寄与する情報収集装置及び方法並びに情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る情報収集装置は、車両に搭載される情報収集装置であって、前記情報収集装置内又は外に設けられた装置から情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部にて取得された情報の全部又は一部を対象情報として記録する記録媒体と、前記記録媒体の記録動作を制御する記録制御部と、前記車両が特定の通信エリア内に位置しているときに、前記記録媒体に記録されている前記対象情報を特定の通信回線を用いて外部装置に転送する転送処理部と、を備え、前記記録制御部は、前記対象情報として複数種類の対象情報が前記記録媒体に記録される場合、前記複数種類の対象情報に対して互いに異なる優先度を設定し、前記転送処理部は、前記車両が前記特定の通信エリア内に位置しているとき、より高い優先度が設定された対象情報から前記外部装置に対する転送を行う構成(第1の構成)である。
【0011】
上記第1の構成に係る情報収集装置において、前記情報取得部は、単位時間当たりの情報量が相対的に大きい第1取得情報と、単位時間当たりの情報量が相対的に小さい第2取得情報と、を順次取得し、前記転送処理部は、前記車両が前記特定の通信エリア外に位置しているが、前記特定の通信回線と異なる所定の通信回線を用いて前記外部装置との通信が可能である場合には、順次取得される前記第2取得情報を前記所定の通信回線を用いて前記外部装置に順次転送する構成(第2の構成)であっても良い。
【0012】
上記第1又は第2の構成に係る情報収集装置において、所定の通知条件が成立したとき、前記車両の搭乗者に対して前記特定の通信エリアへの前記車両の移動を促す通知処理を実行する通知処理部を更に備える構成(第3の構成)であっても良い。
【0013】
上記第3の構成に係る情報収集装置において、前記通知処理部は、前記記録媒体の状態に基づいて前記通知条件の成否を判定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0014】
上記第4の構成の何れかに係る情報収集装置において、前記通知処理部において、前記記録媒体の空き容量が所定容量以下となったときに前記通知条件が成立する構成(第5の構成)であっても良い。
【0015】
上記第3~第5の構成の何れかに係る情報収集装置において、前記特定の通信エリアとして複数の通信エリアがあり、前記通知処理部は、前記通知処理において、所定の選択指標に基づき前記複数の通信エリアの中から選択された通信エリアへの前記車両の移動を促し、前記選択指標は、前記記録媒体に記録されている前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて前記外部装置に転送する際の転送情報量である、又は、前記記録媒体に記録されている前記対象情報を前記特定の通信回線を用いて前記外部装置に転送する際の必要転送時間である構成(第6の構成)であっても良い。
【0016】
上記第1~第6の構成の何れかに係る情報収集装置において、所定のイベント条件の成否を判定するイベント検出部を更に備え、前記複数種類の対象情報は、前記イベント条件の成立を契機にして前記記録媒体に記録される第1種類の対象情報と、それ以外の第2種類の対象情報と、を含み、前記記録制御部は、前記第1種類の対象情報に対し、前記第2種類の対象情報よりも高い優先度を設定する構成(第7の構成)であっても良い。
【0017】
本発明に係る情報収集システムは、上記第1~第7の構成の何れかに係る情報収集装置をn台備えるとともに前記外部装置を備えた情報収集システムであって、nは2以上の整数であり、第1~第nの情報収集装置は第1~第nの車両に搭載され、前記外部装置は、第iの車両及び第jの車両が前記特定の通信エリア内に位置しているとき(i及びjはn以下の互いに異なる整数)、前記第iの車両に搭載された第iの情報収集装置及び前記第jの車両に搭載された第jの情報収集装置の内、何れか一方に対し他方より高い転送優先順位を設定する車両間優先順位設定部と、前記第iの車両及び前記第jの車両が前記特定の通信エリア内に位置しているとき、より高い転送優先順位が設定された情報収集装置から先に前記対象情報の前記外部装置への転送が行われるよう、前記第iの情報収集装置及び前記第jの情報収集装置を制御する転送調停部と、を備え、前記車両間優先順位設定部は、前記第iの情報収集装置の記録媒体である第iの記録媒体の状態及び前記第jの情報収集装置の記録媒体である第jの記録媒体の状態に基づいて、前記転送優先順位の設定を行う構成(第8の構成)であっても良い。
【0018】
上記第8の構成の何れかに係る情報収集システムにおいて、前記車両間優先順位設定部は、前記第iの記録媒体の使用容量及び前記第jの記録媒体の使用容量の内、より大きな使用容量に対応する情報収集装置に対し、より高い転送優先順位を設定する構成(第9の構成)であっても良い。
【0019】
上記第8の構成の何れかに係る情報収集システムにおいて、前記車両間優先順位設定部は、前記第iの記録媒体の空き容量及び前記第jの記録媒体の空き容量の内、より小さな空き容量に対応する情報収集装置に対し、より高い転送優先順位を設定する構成(第10の構成)であっても良い。
【0020】
上記第8の構成の何れかに係る情報収集システムにおいて、前記第1~第nの情報収集装置の夫々は上記第7の構成に係る情報収集装置であって、前記車両間優先順位設定部は、前記第iの記録媒体に記録されている前記第1種類の対象情報の総情報量及び前記第jの記録媒体に記録されている前記第1種類の対象情報の総情報量の内、より大きな総情報量に対応する情報収集装置に対し、より高い転送優先順位を設定する構成(第11の構成)であっても良い。
【0021】
本発明に係る情報収集方法は、車両に搭載される情報収集装置にて用いられる情報収集方法であって、前記情報収集装置内又は外に設けられた装置から情報を取得する情報取得ステップと、前記情報取得ステップにて取得された情報の全部又は一部を対象情報として記録媒体に記録させる記録制御ステップと、前記車両が特定の通信エリア内に位置しているときに、前記記録媒体に記録されている前記対象情報を特定の通信回線を用いて外部装置に転送する転送処理ステップと、を備え、前記記録制御ステップは、前記対象情報として複数種類の対象情報が前記記録媒体に記録される場合、前記複数種類の対象情報に対して互いに異なる優先度を設定し、前記転送処理ステップは、前記車両が前記特定の通信エリア内に位置しているとき、より高い優先度が設定された対象情報から前記外部装置に対する転送を行う構成(第12の構成)である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、収集した情報の効率的な転送に寄与する情報収集装置及び方法並びに情報収集システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る情報収集システムの概略全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る車載装置及び周辺装置の構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係り、車載装置に設けられた記録媒体の構造図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係り、イベント発生に伴って行われるイベント記録制御を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係り、車両が通信エリア内に位置しているときの、情報の転送に注目した車載装置のフローチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態に係り、車載装置の記録媒体における使用容量の変遷例を示す図である。
【
図8】車載装置の記録媒体に関する全記録容量、使用容量及び空き容量の関係を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係り、複数の車両と複数の車載装置とを示す図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係り、複数の車載装置における複数の記録媒体を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係り、サーバ制御部の内部構成を示す図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係り、高速通信回線を用いた転送処理に注目した情報収集システムの動作フローチャートである。
【
図13】本発明の第2実施形態にて想定される或る状況を示す図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係り、サーバ記録部に保持される管理テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の符号“1”によって参照される車載装置1は(
図2参照)、車載装置1と表記されることもあるし、装置1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0025】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1(a)及び(b)の夫々に本発明の第1実施形態に係る情報収集システムSSの概略全体構成図を示す。情報収集システムSSは、車両CRに搭載される情報収集装置の例である車載装置1と、車載装置1にとっての外部装置であるサーバ装置2と、を備える。車載装置1及びサーバ装置2は、任意の通信回線を介し、それらの間の双方向通信が可能に構成されている。車載装置1は例えばドライブレコーダに分類される装置であって良い。尚、サーバ装置2は互いに分離した複数のサーバ装置にて構成されていても良い。
【0026】
車両CRは路面上を走行可能な車両(自動車等)であれば任意であるが、ここでは、車両CRがタクシーであることを想定する。運転手とは車両CRの運転手を指す。また、以下の説明において、車両CRの搭乗者とは、主として運転手を指すが、車両CRに搭乗している人物の内、運転手以外の人間であっても良い。情報収集システムSSは複数の車両CRに搭載される複数の車載装置1を備えて構成される場合もあるが、第1実施形態では、車両CRとして、1台の車両CRにのみ注目すると共に、車載装置1として、注目された車両CRに搭載された1台の車載装置1にのみ注目する。
【0027】
図1(a)及び(b)において、APは、無線LAN(ローカルエリアネットワーク)を形成するためのアクセスポイントを表す。アクセスポイントAPも情報収集システムSSの構成要素に含まれると考えても構わない。車載装置1及びアクセスポイントAP間の接続は無線接続であるが、サーバ装置2及びアクセスポイントAP間の接続は無線接続であっても良いし有線接続であっても良い。サーバ装置2とアクセスポイントAPとはインターネット網などを介して接続されていても良い。アクセスポイントAPにより形成される無線LANは、Wi-Fi(登録商標)に準拠するものであって良い。
【0028】
アクセスポイントAPによりアクセスポイントAPの設置位置を含む所定の通信エリアAR(特定の通信エリア)が形成され、通信エリアAR内に車両CRが位置しているときに、車載装置1及びアクセスポイントAP間が無線接続されて車載装置1及びアクセスポイントAP間の無線通信が実現可能となる。サーバ装置2及びアクセスポイントAP間は常時接続が可能な状態にある。故に、通信エリアAR内に車両CRが位置しているとき、車載装置1及びサーバ装置2間がアクセスポイントAPを介して相互に接続され、アクセスポイントAPを介した車載装置1及びサーバ装置2間の無線による双方向通信が可能となる。つまり、
図1(a)に示す如く、通信エリアAR内に車両CRが位置しているとき、アクセスポイントAPを用いて形成される特定の通信回線(以下、通信回線CL
Aと称する)を介して、車載装置1及びサーバ装置2間の無線による双方向通信が可能となる。
【0029】
アクセスポイントAPは、例えば、車両CRを用いてタクシー業務を運営するタクシー営業所や、タクシー業者の車庫、タクシー乗り場に設置される。
図1(a)及び(b)では、アクセスポイントAPが1つしか示されていないが、複数の地点の夫々にアクセスポイントAPが設置されて良く、この場合、設置されたアクセスポイントAPごとに通信エリアARが形成される。
【0030】
車両CRが通信エリアAR外に位置しているときには、車載装置1及びアクセスポイントAP間が非接続となり、故にアクセスポイントAPを介した(換言すれば通信回線CLAを介した)車載装置1及びサーバ装置2間の無線による双方向通信が不能となるが、通信回線CLAと異なる所定の通信回線CLBを用いて、車載装置1及びサーバ装置2間の無線による双方向通信が可能である。但し、通信回線CLBの電波状況によっては、通信回線CLBを用いた車載装置1及びサーバ装置2間の無線による双方向通信は不能となることもある。通信回線CLBは、基地局を含む移動体通信網を形成する移動体通信回線であって良く、例えば、LTE(Long Term Evolution)の通信規格、第3世代移動通信システムの通信規格、又は、第3世代以降の移動通信システムの通信規格に準拠した移動体通信回線であって良い。
【0031】
ここでは、通信回線CLAによる通信の速度は通信回線CLBによる通信の速度よりも高いものとし、故に、以下、通信回線CLAを高速通信回線CLAと称することがあり、通信回線CLBを低速通信回線CLBと称することがある。但し、通信回線CLAによる通信の速度と通信回線CLBによる通信の速度との高低関係が逆転することがありえても良い。
【0032】
また、以下では、説明の簡略化上、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、常に高速通信回線CLAを介した装置1及び2間の双方向通信が可能であって且つ装置1及び2間の信号及び情報の送受信は高速通信回線CLAを介して行われるものとし、車両CRが通信エリアAR外に位置しているとき、常に低速通信回線CLBを介した装置1及び2間の双方向通信が可能であって且つ装置1及び2間の信号及び情報の送受信は低速通信回線CLBを介して行われるものとする。尚、車両CRに対し車載装置1が設置されているのであるから、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとは車載装置1が通信エリアAR内に位置していることと同義であり、車両CRが通信エリアAR外に位置しているとは車載装置1が通信エリアAR外に位置していることと同義である。また、車両CRの位置とは車載装置1の位置でもある。
【0033】
図2に車載装置1の構成を車載装置1の周辺装置と共に示す。車載装置1は車載制御部10及び記録媒体20を備える。記録媒体20は任意の情報の読み書きが可能な任意の記録媒体である。記録媒体20は、車載装置1に対して任意に装着及び脱着が可能な記録媒体であって良く、例えばSDカードに代表されるメモリカードである。
【0034】
車載装置1に対し複数の周辺装置が接続される。ここにおける複数の周辺装置も、車載装置1と同様に車両CRに設置される。複数の周辺装置は、カメラ部31、車載センサ部32、GPS処理部33、計時部34、免許証カードリーダ35及びインターフェース装置40を含む。各周辺装置と車載装置1との間の情報のやり取りは、車両CR内に形成されたCAN(Controller Area Network)を通じて行われる。
【0035】
カメラ部31は車両CRに設置された1以上のカメラから成る。カメラ部31を構成する各カメラは、自身の撮影範囲内の様子を所定のフレームレートで順次撮影して、撮影結果を示す撮影画像の画像情報(画像データ)を含むカメラ情報を順次車載装置1に送る。カメラ部31は、少なくとも、車両CRの前方の様子を撮影する前方カメラを含む。前方カメラ以外に、車両CRの後方の様子を撮影する後方カメラや、車両CRの内部の様子を撮影する車内カメラなどが、更にカメラ部31に含まれていても良い。尚、車両CRにおいて、車両CRの運転席から車両CRのステアリングホイールに向かう向きが「前方」であり、車両CRのステアリングホイールから運転席に向かう向きが「後方」である。カメラ部31はマイクロホンを有していても良く、この場合、車両CRの外部又は内部の音を表す音声情報(音声データ)もカメラ部31にて生成され、生成された音声情報も画像情報に付加された態様でカメラ部31から車載装置1に送られる。以下では、カメラ情報は、画像情報と音声情報を含むものとする。
【0036】
車載センサ部32は、車両CRに設置された複数の車載センサから成り、各車載センサを用いて車両情報を検出及び取得する。車両情報は所定周期で順次取得され、取得された車両情報は順次車載装置1に送られる。車両情報は、車両CRの速度を表す車速情報、車両CRに設けられたアクセルペダルの踏み込み量を表すアクセル情報、車両CRに設けられたブレーキペダルの踏み込み量を表すブレーキ情報、及び、車両CRに設けられたステアリングホイールの操舵角を表す操舵角情報などを含む。上記複数の車載センサには加速度センサも含まれ、加速度センサから出力される加速度情報も上記車両情報に含まれる。加速度センサは、互いに直交する3軸又は2軸の夫々の方向において車両CRの加速度を検出し、その検出結果を示す加速度情報を出力する。
【0037】
GPS処理部33は、GPS(Global Positioning System)を形成する複数のGPS衛星からの信号を受信することで車両CRの位置(現在地)を検出し、検出位置を示す位置情報を求める。位置情報では、車両CRの位置(現在地)が、地球上における経度及び緯度によって表現される。位置情報は所定周期で順次取得され、取得された位置情報は順次車載装置1に送られる。
【0038】
計時部34は、現在の日付及び時刻を示す時刻情報を生成して車載装置1に送る。GPS処理部33の受信信号を用いて時刻情報が生成又は修正されても良い。
【0039】
免許証カードリーダ35は、運転手の免許証に組み込まれたICチップ内の情報を読み取ることで運転手ID情報を取得する。車両CRの運転手は、車両CRに乗り込んで車両CRの運転を開始する前に、自身の免許証(運転免許証)を免許証カードリーダ35にかざす。これにより、運転手を特定する個人情報が運転手ID情報として上記ICチップから免許証カードリーダ35により読み出される。運転手ID情報は車載装置1に送られる。
【0040】
インターフェース装置40は、車載装置1と車両CRの搭乗者(主として運転手)との間のマンマシンインターフェースであり、表示部41、スピーカ42及び操作部43を備える。表示部41は液晶ディスプレイパネル等にて構成される表示装置であり、車載制御部10の制御の下で任意の画像を表示できる。スピーカ42は車載制御部10の制御の下で任意の音を出力できる。操作部43は車両CRの搭乗者(主として運転手)から任意の操作を受け付ける。表示部41及び操作部43によりタッチパネルが構成されていても良い。表示部41、スピーカ42及び操作部43は、車両CRに設置されうるカーナビゲーション装置(不図示)の構成要素であっても良い。
【0041】
車載装置1における車載制御部10は、情報取得部11、記録制御部12、転送処理部13、イベント検出部14及び通知処理部15を備える。車載制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)及びRAM(Random access memory)等にて構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで情報取得部11、記録制御部12、転送処理部13、イベント検出部14及び通知処理部15の機能が実現されて良い。また、車載制御部10は、通信回線CLA又はCLBを介してサーバ装置2と双方向通信を実現する通信機能を有する。この通信機能を用いて後述の転送処理が実現される。
【0042】
情報取得部11は、所定の装置にて生成される所定種類の情報を所定の装置から取得する。情報取得部11により取得される情報は、カメラ部31からのカメラ情報、車載センサ部32からの車両情報、GPS処理部33からの位置情報、計時部34からの時刻情報、及び、免許証カードリーダ35から運転手ID情報を含んでいる。
【0043】
記録制御部12は記録媒体20の記録動作を制御する。即ち、記録媒体20は、記録制御部12の制御の下で、指定された情報を指定された記録領域に記録し、また、指定された記録領域内に記録済みの情報を消去する。情報取得部11により取得された情報の全部又は一部は、記録媒体20に記録される情報の対象となる。
【0044】
転送処理部13は、記録媒体20に記録されている情報を通信回線CLA又はCLBを介してサーバ装置2に転送する転送処理を実行する。転送処理の詳細は後述される。
【0045】
イベント検出部14は、所定のイベント条件の成否を継続監視してイベント条件が成立したとき、イベントが発生したと判断する。イベント条件の成立とイベントの発生は同義であると考えて良い。
イベント検出部14は、車両情報に基づいてイベントの発生有無を判断しても良い。例えば、イベント検出部14は、上記加速度情報に基づき車両CRに発生した加速度の絶対値をG値として算出し、所定閾値以上のG値が観測されたとき、イベントの1つであるGイベントが発生したと判断する(即ちイベント条件が成立する)。また例えば、イベント検出部14は、上記車速情報に基づき車両CRの速度の増加方向における変化量絶対値を算出し、その変化量絶対値が所定の加速上限値以上となっていることが観測されたとき、イベントの1つである急加速イベントが発生したと判断する(即ちイベント条件が成立する)。また例えば、イベント検出部14は、上記車速情報に基づき車両CRの速度の減少方向における変化量絶対値を算出し、その変化量絶対値が所定の減速上限値以上となっていることが観測されたとき、イベントの1つである急減速イベントが発生したと判断する(即ちイベント条件が成立する)。この他、ステアリングホイールの操舵角が急激に変化する急ハンドルイベント、急ブレーキがかかる急ブレーキイベントなど、車両CRにて発生する様々な事象を車両情報に基づきイベントとして検出して良い。
イベント検出部14は、カメラ情報に基づいてイベント条件の成否を判断しても良い。例えば、カメラ情報に基づき車両CRの走行が左右にふらつくふらつきイベントの発生有無を判断しても良いし、カメラ情報に基づき赤信号で交差点に進入する信号無視イベントの発生有無を判断しても良い。
【0046】
通知処理部15は、所定の通知条件が成立したときに車両CRの搭乗者(主として運転手)に対して所定の通知処理を実行する(詳細は後述)。
【0047】
図3に記録媒体20の構造の概略を示す。記録媒体20は、通常情報が記録されるべき通常記録領域21と、イベント情報が記録されるべきイベント記録領域22と、を備える。通常情報及びイベント情報は、夫々に、カメラ情報と非カメラ情報とから成る。カメラ情報については上述した通りである。非カメラ情報は、情報取得部11により取得される情報の内のカメラ情報以外の情報であり、上述の車両情報、位置情報、時刻情報及び運転手ID情報を含む。但し、車両情報、位置情報、時刻情報及び運転手ID情報の一部が記録媒体20に記録されないことがあっても良い。
【0048】
記録制御部12は、通常記録制御とイベント記録制御を行うことができる。記録制御部12は、車両CRのエンジン始動を契機にして通常記録制御を開始することができ、その後、車両CRのエンジンが停止するまで通常記録制御を継続実行することができる。車両CRのエンジン始動を契機にして通常記録制御を開始した後、車両CRのエンジンが停止したとしても一定時間は通常記録制御を継続実行し、エンジンが一定時間を超えて停止していた場合に限り、通常記録制御を終了するようにしても良い。
【0049】
通常記録制御では、カメラ部31から順次得られるカメラ情報が時系列に沿って通常記録領域21に順次記録されてゆく。この際、非カメラ情報もカメラ情報に関連付けられた状態で通常記録領域21に記録される。即ち、通常記録制御において、或る時刻で取得されたカメラ情報及び非カメラ情報は互いに関連付けられた状態で通常記録領域21に記録される。このように、通常情報は、通常記録制御において通常記録領域21に記録されるカメラ情報及び非カメラ情報から成る。通常記録領域21は一定時間分の通常情報を記録できるだけの記録容量を有し、通常記録制御において、通常記録領域21に空き領域が無くなると最も古い時刻に取得された通常情報に対し新たな通常情報を上書きしてゆく。
【0050】
通常記録制御がエンジン停止時を除き常時実行されるのに対し、イベント記録制御は、イベントの発生時においてのみ実行される。
図4に示す如く、或るタイミングT
Eにおいて所定のイベント条件が成立したことを考える。この場合、記録制御部12は、そのイベント条件の成立を契機にイベント記録制御を実行する。記録制御部12は、当該イベント記録制御において、タイミングT
Eを基準としたイベント保護期間を設定し、イベント保護期間におけるカメラ情報及び非カメラ情報から成る情報をイベント情報としてイベント記録領域22に記録する。イベント保護期間は、例えば、タイミングT
Eより所定時間Δt1だけ前のタイミングを始期とし、タイミングT
Eより所定時間Δt2だけ後のタイミングを終期とする期間である。車載制御部10は、少なくとも所定時間Δt1分のカメラ情報及び非カメラ情報を一時的に保持するバッファメモリを有していて良く、バッファメモリを用いてイベント記録制御を実現して良い。
【0051】
イベント記録領域22は一定時間分のイベント情報を記録できるだけの記録容量を有する。イベント記録制御において、イベント記録領域22に対するイベント情報の上書きは禁止されている。従って、イベント記録領域22に空き領域が無い状態で、新たにイベントが発生したとき、その新たに発生したイベントについてのイベント情報はイベント記録領域22に記録されない。
【0052】
図5にサーバ装置2の概略構成図を示す。サーバ装置2は、サーバ制御部210及びサーバ記録部220を備える。サーバ制御部210は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)及びRAM(Random access memory)等にて構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで様々な機能を実現する。サーバ制御部210は、通信回線CL
A又はCL
Bを介して車載装置1と双方向通信を実現する通信機能を有する他、車載装置1から提供された通常情報及びイベント情報を用いて様々な処理を行うことができる。サーバ記録部220はサーバ装置2に設けられた大容量の記録媒体である。サーバ記録部220は、車載装置1から転送を受けた任意の情報を記録することができる。
【0053】
サーバ装置2では、通常情報に基づいて運転手としてのタクシードライバの日報等を生成することができ、イベント情報に基づいて所謂ヒヤリハットマップの生成等を行うことができる。記録媒体20の空き容量が無くなる前にメモリカード等にて構成された記録媒体20を車載装置1から抜き取って端末装置(不図示)に差し込み、記録媒体20の記録情報を端末装置からサーバ装置2に送るという方法も考えられる。しかしながら、この方法では、人的な手間がかかる。そこで、情報収集システムSS(
図1(a)及び(b)参照)では、通信回線CL
A又はCL
Bを用い、記録媒体20の抜き差しを必要とすることなく、無線通信にて記録媒体20の記録情報をサーバ装置2に送るようにしている。この際、カメラ情報のデータ量が相当に大きいことを考慮し、カメラ情報は高速通信回線CL
Aを用いてサーバ装置2に転送するようにする。
【0054】
ここで、イベント情報は、通常情報よりも、安全運転の支援、事故の分析等の観点から重要度の高い情報であり、通常情報よりも優先してサーバ装置2に転送した方が好ましい。一方で、タクシー業務の勤務時間中に車両CRが通信エリアAR内に位置する時間の長さは不定であり、且つ、高速通信回線CLAを用いたとしても車載装置1からサーバ装置2への情報転送には有限に時間がかかる。これを考慮し、本実施形態では、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、イベント情報を通常情報よりも優先して車載装置1からサーバ装置2へ転送するようにする。
【0055】
これについてより詳細に説明する。
図6は、車両CRが通信エリアAR内に位置しているときの、情報の転送に注目した車載装置1のフローチャートである。車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、車載装置1及びサーバ装置2がアクセスポイントAPを介して互いに無線接続され、サーバ制御部210は車載装置1に対し所定の転送要求信号を送信する。車載装置1及びサーバ装置2が無線接続された後、ステップS11において、車載制御部10は転送要求信号の受信を待機し、転送要求信号を受信すると、記録媒体20に記録されている情報を順次サーバ装置2に転送してゆく。但し、この際、記録媒体20に記録されている情報の内、より高い優先度が設定された情報からサーバ装置2に転送する。
【0056】
ここで、車載制御部10の記録制御部12は、記録媒体20に情報を記録する段階で、各情報に対し優先度を設定している。具体的には、記録制御部12は、通常情報よりもイベント情報に対して、より高い優先度を設定する。相対的に優先度が高いイベント情報はイベント記録領域22に記録され、相対的に優先度が低い通常情報は通常記録領域21に記録される。尚、記録領域の切り分けによって優先度を設定するのではなく、記録媒体20に記録される各情報に対して優先度を表すフラグ等を付与することで優先度の設定を行うようにしても良い。
【0057】
図6のフローチャートの説明に戻る。車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、転送処理部13は、サーバ制御部210からの転送要求信号を受信すると(ステップS11のY)、その転送要求信号に応答し、まずステップS12において、記録媒体20に記録されているイベント情報をサーバ装置2に転送する。ステップS12にて転送されるイベント情報は、イベント情報におけるカメラ情報と非カメラ情報を含む。サーバ装置2は、転送されたイベント情報をサーバ記録部220に記録する。転送処理部13は、或るイベント情報の転送を完了すると、そのイベント情報を記録媒体20から消去する。イベント情報はイベントの発生のたびに生成及び記録されるので、例えば、ステップS12に至る前に計5つのイベントが発生していたのであれば、5つのイベント情報が独立して記録媒体20に記録されている。5つのイベント情報の内、転送が済んだものから記録媒体20より消去されて良い。記録媒体20に記録されているイベント情報のサーバ装置2への転送が進行してゆき、記録媒体20に記録されているイベント情報のサーバ装置2への転送が全て完了すると、ステップS12からステップS13を経由してステップS14に進む。
【0058】
ステップS14において、転送処理部13は、記録媒体20に記録されている通常情報をサーバ装置2に転送する。ステップS14にて転送される通常情報は、通常情報におけるカメラ情報と非カメラ情報を含む。サーバ装置2は、転送された通常情報をサーバ記録部220に記録する。例えば、通常記録制御において、一定時間分のカメラ情報と、その一定時間分のカメラ情報に対応する非カメラ情報とを1つのファイルにまとめたものが、1ファイル分の通常情報として記録媒体20に記録される。通常記録制御が長時間継続実行されれば、複数ファイル分の通常情報が記録媒体20に記録されることになる。ステップS14において、転送処理部13は、ファイル単位で通常情報の転送を行い、1ファイル分の通常情報の転送を完了すると、転送が完了した1ファイル分の通常情報を記録媒体20から消去する。記録媒体20に記録されている通常情報のサーバ装置2への転送が進行してゆき、記録媒体20に記録されている通常情報のサーバ装置2への転送が全て完了すると(ステップS15のY)、転送要求信号に応答した転送処理が完了する。
【0059】
尚、通信エリアAR内に車両CRが位置しているときにおいて、通常記録制御が継続実行されている場合にあっては、通常記録制御にて1ファイル分の通常情報が記録媒体20に記録されるたびに、その1ファイル分の通常情報がサーバ装置2に転送されても良い。また、サーバ制御部210からの転送要求信号が車載制御部10にて受信されたときにおいて、記録媒体20にイベント情報が1つも記録されていないケースでは、ステップS12及びS13では何も行われずに直接ステップS14に移行し、通常情報の転送が行われる。ファイル単位で通常情報を転送する方法を説明したが、通常情報の転送方法は任意であって良い。
【0060】
このように、車載装置1において、情報取得部11にて取得された情報の全部又は一部が対象情報(例えばカメラ画像及び非カメラ画像を含む通常情報又はイベント情報)として記録媒体20に記録され、転送処理部13は、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、記録媒体20に記録されている対象情報を通信回線CLA(特定の通信回線)を用いてサーバ装置2に転送する。記録制御部12は、対象情報として複数種類の対象情報(例えば通常情報とイベント情報)を記録媒体20に記録させることがあり、複数種類の対象情報が記録媒体20に記録される場合、その複数種類の対象情報に対して互いに異なる優先度を設定する。そして、転送処理部13は、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、より高い優先度が設定された対象情報からサーバ装置2に対する情報の転送を行う。
【0061】
記録媒体20に通常情報が記録されているとき、対象情報は記録媒体20に記録された通常情報を含み、記録媒体20にイベント情報が記録されているとき、対象情報は記録媒体20に記録されたイベント情報を含む。通常情報及びイベント情報は、夫々に、カメラ情報及び非カメラ情報を含んでいるため、対象情報はカメラ情報に加えて非カメラ情報を含む。但し、本発明において、対象情報はカメラ情報のみを含み、非カメラ情報を含まないことがあっても良い。
【0062】
上記複数種類の対象情報の例として、本実施形態では、イベント情報である第1種類の対象情報と、通常情報である第2種類の対象情報とがあり、記録制御部12は第1種類の対象情報に対して第2種類の対象情報よりも高い優先度を設定している。但し、互いに異なる優先度が設定される3種類以上の対象情報があっても良い。
【0063】
情報の重要度(換言すれば有益性)を考慮して優先度を定めておけば、情報の重要度がより高い対象情報が優先的にサーバ装置2に転送されることになり、サーバ装置2における効率的な情報集約が可能となる。サーバ装置2において重要度の高い情報の分析等を速やかに行うことで、有益な二次情報(所謂ヒヤリハットマップや運転手への指導情報等)を速やかに生成する、といったことが可能となる。例えば、本実施形態で想定されるように車両CRがタクシーであるとき、イベント情報の分析は、通常情報の分析よりも、ヒヤリハットマップ等の作成に役立ち、安全運転の支援や運転手への指導等に有益となる。
【0064】
図7に記録媒体20の使用容量の変遷例を示す。
図7において、斜線領域は、記録媒体20の全記録容量の内、情報の記録に使用されている容量(即ち使用容量)を模式的に表している。
図7の例では、使用容量がゼロである状態を起点にして、連続して3時間、車両CRを用いたタクシーの運行を行う。これにより、3時間分の容量が使用容量となり、その後、車両CRはアクセスポイントAPが設置された営業所に移動する。営業所への移動後、車両CRを営業所の駐車場に停車させた状態で運転手は休憩をとる。営業所の駐車場は通信エリアAR内に位置する。故に、この休憩時間中に、記録媒体20の記録情報が
図6を参照して示した手順でサーバ装置2に転送され、この転送に伴って使用容量はゼロに戻る。その後、配車指示に基づき、連続して1時間、車両CRを用いたタクシーの運行を行う。これにより、1時間分の容量が使用容量となる。
【0065】
その後、車両CRは他のアクセスポイントAPが設置されたタクシー乗り場に移動し、タクシー乗り場にてタクシーの利用客が訪れるのを待機する。このタクシー乗り場は通信エリアAR内に位置する。故に、タクシー乗り場での車両CRの停車中に記録媒体20の記録情報が
図6を参照して示した手順でサーバ装置2に転送され、この転送に伴って使用容量はゼロに戻る。その後、連続して2時間、車両CRを用いたタクシーの運行を行う。これにより、2時間分の容量が使用容量となる。
【0066】
その後、車両CRは更に他のアクセスポイントAPが設置された車庫に移動し、運転手は、その日の業務を終える。車庫は通信エリアAR内に位置する。故に、車庫での車両CRの停車中に記録媒体20の記録情報が
図6を参照して示した手順でサーバ装置2に転送され、この転送に伴って使用容量はゼロに戻る。
【0067】
このようなサーバ装置2への情報の転送に際し、記録媒体20の抜き差しを含む運転手の作業は不要であり、運転手に何ら手間をとらせることなく、必要な情報の転送が完了する。タクシー業者では、いつ、どのような人物を、どこからどこまでタクシーに乗車させたのか等の運行管理情報を含む日報を、日々、車両CRの運転手に相当する従業者に作成させたり、日報を月単位でまとめた月報を従業者に作成させたりすることも多い。これらの作成は、従業者の業務負担を増大させるため、自動化が期待されている。
【0068】
サーバ装置2におけるサーバ制御部210は、車載装置1から転送されてサーバ記録部220に蓄積された通常情報を解析することで、車両CRの運転手に相当する従業者のマニュアル作業を必要とすることなく、上記の日報や月報を作成するといったことも可能となり、従業者の業務負担を大きく軽減させることも可能である。これとは別に、サーバ記録部220に蓄積された通常情報を解析することで、従業者(運転手)の勤怠管理を行うことも可能である。また、サーバ制御部210は、蓄積されたイベント情報を解析することで、従業者(運転手)の運転に関する注意点、アドバイスを生成することもできる他、ヒヤリハットマップ等を作成することができる。
【0069】
第1実施形態は、上述の構成及び動作を基礎とした以下の実施例EX1_1~EX1_4を含む。矛盾無き限り、実施例EX1_1~EX1_4の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち実施例EX1_1~EX1_4の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0070】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。情報取得部11にて取得される情報の内、カメラ情報の情報量は他の情報の情報量よりも随分と大きく、故に、必要な通信速度、通信に係る費用等を考慮すれば、上述の如く、カメラ情報は高速通信回線CLAを用いて転送されることが合理的又は有利である。一方で、情報取得部11にて取得される情報の内、カメラ情報以外の情報は、低速通信回線CLBでも十分に転送可能であり、また、従業者(車両CRの運転手)の運転支援や注意喚起等を行う観点では、リアルタイムでサーバ装置2に転送した方が望ましい。
【0071】
そこで、転送処理部13は、情報取得部11にて順次取得される情報を、単位時間当たりの情報量が相対的に大きい第1取得情報と、単位時間当たりの情報量が相対的に小さい第2取得情報とに分類し、車両CRが通信エリアAR外に位置しているが、低速通信回線CLBを用いて車載装置1及びサーバ装置2間の通信が可能な状態においては、順次取得される第2取得情報を低速通信回線CLBを用いてサーバ装置2に順次リアルタイムで転送する。
【0072】
これにより、単位時間当たりの情報量が相対的に小さいが、車両CRの運転手の運転支援や注意喚起等を行う観点から素早くサーバ装置2に送られるべき情報を、リアルタイムでサーバ装置2に転送することが可能となり、有益である。
【0073】
ここで、第1取得情報はカメラ情報であり、1秒当たりの第1取得情報の情報量は、例えば数メガビットにおよぶ。第2取得情報は車両情報及び位置情報を含み、更に時刻情報と運転手ID情報を含みうる。第2取得情報はカメラ情報を含まない。1秒当たりの第2取得情報の情報量は、例えば数キロビット程度である。つまり、第2取得情報の単位時間当たりの情報量は第1取得情報の単位時間当たりの情報量よりも随分と小さい。車両CRが通信エリアAR外に位置しているとき、車両情報及び位置情報に対して時刻情報と運転手ID情報が付加及び対応付けされた状態で、低速通信回線CLBを用いて車両情報及び位置情報がサーバ装置2に順次リアルタイムで転送されると良い。第1取得情報としてのカメラ情報は、上述したように、車両CRが通信エリアAR内に位置しているときに限り、高速通信回線CLAを用いてサーバ装置2に転送されることになる。
【0074】
低速通信回線CLBを用いてサーバ装置2にリアルタイムで転送される第2取得情報は、通常記録制御の下で記録媒体20に記録され、サーバ装置2にリアルタイムで転送されたからといって記録媒体20から即時消去されるものではない。順次取得される第2取得情報は通常記録領域21に設けられた所定の記録領域に時系列に沿って記録されてゆき、その所定の記録領域に空き領域が無くなると、最も古い時刻に取得された第2取得情報に対し新たな第2取得情報を上書きしてゆく。
【0075】
尚、車両CRが通信エリアAR外から通信エリアAR内に移動する際、車載装置1及びサーバ装置2間の接続が通信回線CLBによる接続から通信回線CLAによる接続に切り替えられ、逆に、車両CRが通信エリアAR内から通信エリアAR外に移動する際、車載装置1及びサーバ装置2間の接続が通信回線CLAによる接続から通信回線CLBによる接続に切り替えられる。このような通信回線の切り替え方法は周知であるので、その説明を省略する。
【0076】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。実施例EX1_2では通知処理部15(
図2参照)の動作例を説明する。
【0077】
上述したたように、通知処理部15は、所定の通知条件が成立したときに車両CRの搭乗者(主として運転手)に対して所定の通知処理を実行する。所定の通知処理では、車両CRの搭乗者に対して通信エリアARへ車両CRを移動させることを促す通知を行う。この通知は、視覚的な通知又は聴覚的な通知であっても良いし、それらの双方の通知を組み合わせたものであっても良い。上記通知処理では、例えば、通信エリアARへ車両CRを移動させることを促す画像を表示部41に表示する、或いは、通信エリアARへ車両CRを移動させることを促す音声をスピーカ42から出力する。通知処理において、車両CRの現在地と通信エリアARが存在する地点とを明示した地図の画像を表示部41に表示するようにしても良い。
【0078】
上記通知処理を実行可能しておけば、高速通信回線CLAを用いた情報の転送処理を速やかに行うべき要請のある状況下において、その旨を車両CRの搭乗者(主として運転手)に知らしめることができ、以って、実際に上記要請が満たされることが期待される。
【0079】
具体的には、通知処理部15は、記録媒体20の状態に基づいて通知条件の成否を判定することができる。
【0080】
記録媒体20の空き容量が逼迫している状況では、転送前の通常情報が上書きにより記録媒体20から失われる又は新たなイベント情報を記録媒体20に記録できなくなる可能性がある。記録媒体20の状態に基づいて通知条件の成否を判定し、必要に応じて通知処理を行うようにすれば、上記可能性を低減することができる。
【0081】
より具体的には例えば、通知処理部15において、記録媒体20の空き容量が所定容量以下となったときに上記通知条件が成立すると良い。
【0082】
図8に示す如く、記録媒体20の全記録容量は使用容量と空き容量とに分類される。ここにおける記録媒体20の全記録容量とは、記録媒体20の全記録領域の内、通常情報及びイベント情報の記録に割り当てることのできる記録領域の全体の大きさを指す。記録媒体20の全記録領域には、通常情報及びイベント情報の記録に割り当てることのできない管理領域も存在しうるが、ここでは、そのような管理領域は存在しないと考える。記録媒体20の使用容量とは、記録媒体20の全記録容量の内、実際に情報の記録に用いられている容量(記録領域の大きさ)を指す。記録媒体20の空き容量とは、記録媒体20の全記録容量の内、情報の記録に用いられていない容量(記録領域の大きさ)を指す。
【0083】
記録媒体20の全記録容量、使用容量、空き容量を、夫々、記号“MT”、“MA”、“MB”にて表す。そうすると例えば、記録媒体20に一切の情報が記録されていない状況(即ち記録媒体20の使用容量がゼロである状況)を起点にして、記録媒体20に情報量MS分の情報(通常情報又はイベント情報)が記録されたとき、 “MA=MS”且つ“MB=MT-MS”となる。その後、高速通信回線CLAを用いた情報の転送処理により情報量MS分の情報がサーバ装置2に転送され、且つ、その情報量MS分の情報が記録媒体20から消去されると、“MA=0”且つ“MB=MT”となる。
【0084】
車両CRが移動可能なエリア内に複数の通信エリアARが存在する場合において通知条件が成立したとき、通知処理部15は、通知処理において、特に何れの通信エリアARを指定することなく単に任意の通信エリアARへ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良いし、複数の通信エリアARの存在位置とGPS処理部33を用いて取得される位置情報とに基づき、複数の通信エリアARの内、車両CRの現在地から最も近い通信エリアARへ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良い。
【0085】
或いは、以下の第1エリア選択方法が採用されても良い。即ち、車両CRが移動可能なエリア内に複数の通信エリアARが存在する場合において通知条件の成立が成立したとき、第1エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、所定の第1選択指標に基づき上記複数の通信エリアARの中から推奨通信エリアを選択し、車両CRの搭乗者に対し推奨通信エリアに車両CRを移動させることを促す通知を行う。第1選択指標は、記録媒体20に記録されている通常情報及びイベント情報を高速通信回線CLAを用いてサーバ装置2に転送する際の転送情報量IIAである。転送情報量IIAは記録媒体20の使用容量に相当する。
【0086】
第1エリア選択方法について説明を加える。複数の通信エリアARには、互いに異なる種類の通信エリアとして通信エリアAR1及び通信エリアAR2が含まれているものとする。ここで、通信エリアAR2に設置されるアクセスポイントAPが実現可能な情報の最大転送速度は、通信エリアAR1に設置されるアクセスポイントAPが実現可能な情報の最大転送速度よりも大きい。例えば、通信エリアAR1としてタクシー乗り場が想定され、通信エリアAR2として車両CRを用いてタクシー業務を運営するタクシー営業所が想定される。
【0087】
転送情報量IIAが比較的大きい場合には通信エリアAR2で転送処理を行った方が効率的である。一方で、転送情報量IIAが比較的小さい場合には通信エリアAR1で転送処理を行っても、それほど問題は生じない。これを考慮し、車両CRが移動可能なエリア内に複数の通信エリアARが存在する場合において通知条件の成立が成立したとき、第1エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、転送情報量IIAを所定情報量と比較し、転送情報量IIAが所定情報量未満であれば通信エリアAR1を推奨通信エリアとして選択する一方、転送情報量IIAが所定情報量以上であれば通信エリアAR2を推奨通信エリアとして選択する。
【0088】
通知条件が成立し且つ通信エリアAR1が推奨通信エリアとして選択された場合において、車両CRが移動可能なエリア内に通信エリアAR1が複数存在する場合、第1エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、複数の通信エリアAR1の内、特に何れの通信エリアAR1を指定することなく単に任意の通信エリアAR1へ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良いし、複数の通信エリアAR1の存在位置とGPS処理部33を用いて取得される位置情報とに基づき、複数の通信エリアAR1の内、車両CRの現在地から最も近い通信エリアAR1へ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良い。この際、車両CRの現在地と1以上の通信エリアAR1(車両CRの現在地から最も近い通信エリアAR1を少なくとも含む)が存在する地点とを明示した地図の画像を表示部41に表示するようにしても良い。通知条件が成立し且つ通信エリアAR2が推奨通信エリアとして選択された場合において、車両CRが移動可能なエリア内に通信エリアAR2が複数存在する場合も同様である。
【0089】
更に或いは、以下の第2エリア選択方法が採用されても良い。即ち、車両CRが移動可能なエリア内に複数の通信エリアARが存在する場合において通知条件の成立が成立したとき、第2エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、所定の第2選択指標に基づき上記複数の通信エリアARの中から推奨通信エリアを選択し、車両CRの搭乗者に対し推奨通信エリアに車両CRを移動させることを促す通知を行う。第2選択指標は、記録媒体20に記録されている通常情報及びイベント情報を高速通信回線CLAを用いてサーバ装置2に転送する際の必要転送時間IIB(即ち、その転送に必要な時間)である。必要転送時間IIBは、上記の転送情報量IIAを所定の転送速度で割ることで得た値(商)に相当し、実際には転送情報量IIAに所定の係数を乗じて得た値であって良い。
【0090】
第2エリア選択方法について説明を加える。複数の通信エリアARには、互いに異なる種類の通信エリアとして通信エリアARa及び通信エリアARbが含まれているものとする。ここで、通信エリアARa及びARbの内、通信エリアARbの方が通信エリア内の車両CRの滞在時間が長いことが期待される。即ち、通信エリアARa内に移動してから車両CRが通信エリアARa内に継続的に留まると想定される時間の期待値と、通信エリアARb内に移動してから車両CRが通信エリアARb内に継続的に留まると想定される時間の期待値とを比較したとき、前者の期待値(例えば10分)よりも後者の期待値(例えば1時間)の方が大きい。例えば、通信エリアARaとしてタクシー乗り場が想定され、通信エリアARbとして運転手が食事休憩を行う昼食場所が想定される。
【0091】
必要転送時間IIBが比較的大きい場合には通信エリアARbで転送処理を行わないと記録媒体20の空き容量が十分に高まらない可能性が高い又は可能性がある。一方で、必要転送時間IIBが比較的小さい場合には短時間の転送処理であっても記録媒体20の空き容量を相応に確保できるようになる。これを考慮し、車両CRが移動可能なエリア内に複数の通信エリアARが存在する場合において通知条件の成立が成立したとき、第2エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、必要転送時間IIBを所定時間と比較し、必要転送時間IIBが所定時間未満であれば通信エリアARaを推奨通信エリアとして選択する一方、必要転送時間IIBが所定時間以上であれば通信エリアARbを推奨通信エリアとして選択する。
【0092】
通知条件が成立し且つ通信エリアARaが推奨通信エリアとして選択された場合において、車両CRが移動可能なエリア内に通信エリアARaが複数存在する場合、第2エリア選択方法に係る通知処理部15は、通知処理において、複数の通信エリアARaの内、特に何れの通信エリアARを指定することなく単に任意の通信エリアARaへ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良いし、複数の通信エリアARaの存在位置とGPS処理部33を用いて取得される位置情報とに基づき、複数の通信エリアARaの内、車両CRの現在地から最も近い通信エリアARaへ車両CRを移動させることを促す通知を行っても良い。この際、車両CRの現在地と1以上の通信エリアARa(車両CRの現在地から最も近い通信エリアARaを少なくとも含む)が存在する地点とを明示した地図の画像を表示部41に表示するようにしても良い。通知条件が成立し且つ通信エリアARbが推奨通信エリアとして選択された場合において、車両CRが移動可能なエリア内に通信エリアARbが複数存在する場合も同様である。
【0093】
このような第1又は2エリア選択方法を用いることにより、転送情報量IIA又は必要転送時間IIBに、より適合した通信エリアAR(即ち推奨通信エリア)への移動を促すことが可能となる。
【0094】
尚、第1エリア選択方法が採用される場合において通知条件が成立し且つタクシー乗り場としての通信エリアAR1が推奨通信エリアとして選択された場合、又は、第2エリア選択方法が採用される場合において通知条件が成立し且つタクシー乗り場としての通信エリアARaが推奨通信エリアとして選択された場合、転送情報量IIA又は必要転送時間IIBが大きいほど、通知処理において、より待合人数が多いタクシー乗り場への移動を促すようにしても良い。待合人数が多いほど、タクシー乗り場での高速通信回線CLAを用いた情報の転送時間の増大が見込まれるからである。この場合、サーバ装置2は、各タクシー乗り場での待合人数(タクシーの乗車を希望しながらタクシー乗り場で待機している人の数)を集約する機能を有し、集約結果が車載装置1に提供されるものとする。
【0095】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、サーバ装置2はアクセスポイントAPを介して所定のイベント条件設定信号を車載装置1に送信することで、上記イベント条件を任意に設定できても良い。
【0096】
イベント条件設定信号は、イベント検出部14(
図2参照)にて成否が判定されるイベント条件の内容を規定する信号であり、サーバ装置2からのイベント条件設定信号が車載装置1にて受信されたとき、イベント検出部14は、イベント条件を、受信したイベント条件設定信号に従ったものに更新設定する。これにより、サーバ装置2の管理者(例えばタクシー会社の管理者)が望む状況のイベント情報を収集すること可能となる。
【0097】
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。イベント検出部14(
図2参照)にて成否が判定されるイベント条件は複数種類あっても良い。この場合、複数種類のイベント条件の内、何れかの種類のイベント条件が成立すれば、イベント検出部14によりイベントが発生したと判断されて、記録制御部12によりイベント記録制御が実行される。
【0098】
例えば、複数種類のイベント条件として第1~第3イベント条件があるものとし、Gイベント、急加速イベント、急減速イベントが発生したと判断される状況において、夫々、第1、第2、第3イベント条件が成立するものとする。この場合、イベント記録制御を通じて記録媒体20に記録される各イベント情報中の非カメラ情報は、当該イベント情報が何れの種類のイベントについてのイベント情報であるのかを特定するイベントタイプ情報を含んでいて良い。Gイベントについてのイベント情報、急加速イベントについてのイベント情報、急減速イベントについてのイベント情報を、夫々、第1イベント情報、第2イベント情報、第3イベント情報と称する。
【0099】
そして、サーバ装置2は、車両CRが通信エリアAR内に位置しているとき、優先イベントタイプ値を含めた転送要求信号を車載装置1に送信しても良い(
図6参照)。優先イベントタイプ値は、第1~第3イベント情報の何れを優先して転送すべきかを指定する。この場合、
図6のステップS12での転送処理において、転送処理部13は、優先イベントタイプ値が“1”であれば、記録媒体20に記録されている第1~第3イベント情報の内、第1イベント情報を第2及び第3イベント情報よりも優先して(即ち第2及び第3イベント情報よりも先に)サーバ装置2に転送し、その後に第2及び第3イベント情報をサーバ装置2に転送し、優先イベントタイプ値が“2”であれば、記録媒体20に記録されている第1~第3イベント情報の内、第2イベント情報を第1及び第3イベント情報よりも優先して(即ち第1及び第3イベント情報よりも先に)サーバ装置2に転送し、その後に第1及び第3イベント情報をサーバ装置2に転送する。優先イベントタイプ値が“3”である場合も同様である。このような方法により、サーバ装置2にて収集したいタイプのイベント情報を優先的に収集することができるようになる。
【0100】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態に適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1~第3実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
【0101】
第2実施形態では、車載装置1として複数の車両CRに搭載される複数の車載装置1に注目する。
図9に示す如く、複数の車両CRは互いに異なるn台の車両CRであるとし、n台の車両CRを互いに区別する場合、それらを車両CR[1]~CR[n]で表す。また、複数の車載装置1を車載装置1[1]~1[n]で表す。nは2以上の任意の整数である。各車両CRに1台ずつ車載装置1が搭載されているものとし、車両CR[1]~CR[n]には、夫々、車載装置1[1]~1[n]が搭載される。第2実施形態に係る情報収集システムSSは、n個の車載装置1[1]~1[n]とサーバ装置2とを含んで構成されることになる。また、
図10に示す如く、車載装置1[1]~1[n]に設けられる記録媒体20を、夫々、記録媒体20[1]~20[n]と称することがある。
【0102】
尚、第1実施形態では、複数のアクセスポイントAPに対応する複数の通信エリアARの存在を前提とした技術説明も行ったが、第2実施形態では、説明の明確化及び具体化のため、単一のアクセスポイントAPに対応する単一の通信エリアARにのみ注目し、第2実施形態の以下に説明におけるアクセスポイントAP及び通信エリアARとは、特に記述なき限り、注目された或る1つのアクセスポイントAP、及び、注目された或る1つのアクセスポイントAPにより形成される1つの通信エリアARを指すものとする。
【0103】
図11に示す如く、第2実施形態に係るサーバ制御部210(
図5も参照)には、車両間優先順位設定部211及び転送調停部212が設けられている。尚、車両間優先順位設定部は車載装置間優先順位設定部と読み替えられても良い。
【0104】
車両CR[1]~CR[n]の内、2以上の車両CRが同時に通信エリアAR内に位置しているとき、車両間優先順位設定部211(以下設定部211と略記されうる)は、所定の優先順位設定指標に基づいて、通信エリアAR内に位置している2以上の車両CRに搭載された2以上の車載装置1に対し互いに異なる転送優先順位を設定し、転送調停部212(以下調停部212と略記されうる)は、より高い転送優先順位が設定された車載装置1から順に対象情報のサーバ装置2への転送が行われるよう、上記2以上の車載装置1を制御する。対象情報の意義は第1実施形態で述べた通りである。また、優先順位設定指標については後に説明される。
【0105】
図12は、高速通信回線CL
Aを用いた転送処理に注目した情報収集システムSSの動作フローチャートである。
図12では、ステップS21において、車両CR[1]~CR[n]が同時に通信エリアAR内に入ってきたことが想定されており、且つ、以後、
図12の全処理が完了するまで車両CR[1]~CR[n]が通信エリアAR内に留まり続けることが想定されている。車両CR[1]~CR[n]が通信エリアAR内に位置しているとき、アクセスポイントAPを介して車載装置1[1]~1[n]がサーバ装置2と無線接続され、車載装置1[1]~1[n]及びサーバ装置2間で高速通信回線CL
Aを用いた双方向通信が可能となる。
【0106】
ステップS21に続くステップS22において、設定部211は転送優先順位設定処理を行う。転送優先順位設定処理において、設定部211は、所定の優先順位設定指標に基づき、通信エリアAR内に位置している車両CR[1]~CR[n]に搭載された車載装置1[1]~1[n]に対し、互いに異なる転送優先順位を設定する。この際、車載装置1[1]~1[n]に対し、第1~第nの転送優先順位の何れかが1つずつ設定される。第1~第nの転送優先順位の内、第1の転送優先順位が最も高い転送優先順位であって第1の転送優先順位から第nの転送優先順位に向けて転送優先順位が低くなってゆくものとする。
【0107】
ステップS22の処理の後、ステップS23に進む。ステップS23では、設定部211にて管理される変数kに“1”が代入され、その後、ステップS24に進む。
【0108】
ステップS24において、転送調停部212は、第kの転送優先順位が設定された車載装置1に対し転送要求信号を送信する。続くステップS25において、第kの転送優先順位が設定された車載装置1にて転送要求信号が受信され、転送要求信号を受信した車載装置1(即ち第kの転送優先順位が設定された車載装置1)の転送処理部13は、サーバ装置2に対し対象情報を転送する。ステップS25で転送される対象情報は通常情報及びイベント情報を含み、第1実施形態で示したようにイベント情報が通常情報よりも先に転送される。つまり、転送要求信号を受信した車載装置1によるステップS25の動作は、
図6のステップS12~S15から成る動作と同じである。ステップS25での転送が全て完了するとステップS26に進む。
【0109】
より具体的には例えば、転送要求信号を受信した車載装置1(即ち第kの転送優先順位が設定された車載装置1)が車載装置1[1]であるとした場合、ステップS25において、車載装置1[1]の転送処理部13は、記録媒体20[1]に記録されている通常情報及びイベント情報の内、イベント情報を先にサーバ装置2に対して転送し、イベント情報の転送が完了すると通常情報をサーバ装置2に対して転送する。転送が完了した情報が記録媒体20[1]から消去される点は第1実施形態と同様である。記録媒体20[1]に記録されていたイベント情報及び通常情報の転送が全て完了するとステップS26に進む。転送要求信号を受信した車載装置1(即ち第kの転送優先順位が設定された車載装置1)が車載装置1[2]~1[n]の何れかである場合も同様である。
【0110】
ステップS26において、設定部211にて管理される変数kの値と、通信エリアAR内に位置している車両CRの台数(即ち通信エリアAR内に位置している車載装置1の台数)とが比較され、それらが一致している場合、即ち“k=n”である場合には
図12の処理を終える。それらが不一致である(即ち“k<n”である)場合には、ステップS27にて設定部211により変数kに“1”が加算された後、ステップS24に戻り、ステップS24以降の処理が繰り返される。ステップS26にて“k=n”となる段階では、記録媒体20[1]~20[n]に記録されていた全てのイベント情報及び通常情報のサーバ装置2への転送が完了していることになる。
【0111】
以下では、説明の便宜上又は具体化のため、適宜、
図13に示す状況αが想定されることがある。状況αでは、車両CR[i]及びCR[j]が同時に通信エリアAR内に位置している。i及びjはn以下であって且つ互いに異なる任意の整数を表す。最も単純には“(n,i,j)=(2,1,2)”であると考えて良い。
【0112】
車両間優先順位設定部211は、車両CR[i]及びCR[j]が同時に通信エリアAR内に位置しているとき、所定の優先順位設定指標に基づいて、車両CR[i]に搭載された車載装置1[i]及び車両CR[j]に搭載された車載装置1[j]の内、何れか一方に対し他方よりも高い転送優先順位を設定する。転送調停部212は、車両CR[i]及びCR[j]が同時に通信エリアAR内に位置しているとき、車載装置1[i]及び1[j]の内、より高い転送優先順位が設定された車載装置1から先に対象情報のサーバ装置2への転送が行われるよう、車載装置1[i]及び1[j]を制御する。
【0113】
尚、車両CR[p]に対し車載装置1[p]が設置されているのであるから、車両CR[p]が通信エリアAR[p]内に位置しているとは車載装置1[p]が通信エリアAR[p]内に位置していることと同義であり、車両CR[p]が通信エリアAR[p]外に位置しているとは車載装置1[p]が通信エリアAR[p]外に位置していることと同義である。また、車両CR[p]の位置とは車載装置1[p]の位置でもある。pは任意の自然数を表す。
【0114】
第2実施形態は以下の実施例EX2_1~EX2_8を含む。矛盾無き限り、実施例EX2_1~EX2_8の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち実施例EX2_1~EX2_8の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。実施例EX2_1~EX2_8において、転送優先順位の設定方法が例示されるが、設定優先順位が設定された後の動作は
図12を参照して上述した通りであって良い。
【0115】
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。車両CR[1]~CR[n]の内、2以上の車両CRが同時に通信エリアAR内に位置しているとき、設定部211は、上述したように、所定の優先順位設定指標に基づいて、通信エリアAR内に位置している2以上の車両CRに搭載された2以上の車載装置1に対し互いに異なる転送優先順位を設定するが、実施例EX2_1では、上記2以上の車載装置1に設けられた2以上の記録媒体20の状態を優先順位設定指標として用いる。従って、
図13の状況αにおいては、設定部211は、車載装置1[i]の記録媒体20[i]の状態及び車載装置1[j]の記録媒体20[j]の状態に基づいて転送優先順位の設定を行うことになる。
【0116】
これにより例えば、記録媒体20の使用容量又は空き容量から先に転送処理を行った方が良いと判断される車載装置1に対して、より高い転送優先順位を与えて、実際に先に転送処理を行わせるといったことが可能となる。或いは例えば、収集の要求度の高い情報(例えばイベント情報)をより多く保持している車載装置1に対して、より高い転送優先順位を与えて、実際に先に転送処理を行わせるといったことも可能となる。
【0117】
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。実施例EX2_2では、実施例EX2_1に示した記録媒体20の状態に基づく転送優先順位の設定方法の一具体例を示す。
【0118】
図13の状況αを想定する。状況αにおいて、実施例EX2_2に係る設定部211は、車載装置1[i]の記録媒体20[i]の使用容量及び車載装置1[j]の記録媒体20[j]の使用容量を評価値として参照し、車載装置1[i]及び1[j]の内、より大きな評価値(即ち使用容量)に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。
【0119】
より具体的には、状況αにおいて、実施例EX2_2に係る設定部211は、記録媒体20[i]の使用容量を評価値EVA[i]として且つ記録媒体20[j]の使用容量を評価値EVA[j]として参照し、“EVA[i]>EVA[j]”であれば車載装置1[i]に対して車載装置1[j]よりも高い転送優先順位を設定し、“EVA[i]<EVA[j]”であれば車載装置1[j]に対して車載装置1[i]よりも高い転送優先順位を設定する。“EVA[i]=EVA[j]”のとき、車載装置1[i]及び1[j]の内の任意の一方に他方よりも高い転送優先順位を設定して良い。
【0120】
これを実現するべく、
図12のステップS22の転送優先順位設定処理の中で、又は、ステップS22の前に、各車載装置1は設定部211の要求に応じ自身の記録媒体20の使用容量を示す値をサーバ装置2に対して伝達するものとする。
【0121】
通信エリアAR内に3台以上の車両CRが位置している場合も同様である。即ち例えば、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が位置しているとき、実施例EX2_2に係る設定部211は、車載装置1[1]~1[3]の記録媒体20[1]~20[3]の使用容量をそれぞれ評価値EVA[1]~EVA[3]として参照し、車載装置1[1]~1[3]の内、より大きな評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定すれば良い。
【0122】
通信エリアAR内に入ってきた車両CRは、配車指示等を受けると通信エリアAR外へ出ていくことになる。このため、通信エリアAR内に入ってきたものの、相対的に低い転送優先順位に対応する車両CRは、サーバ装置2への情報の転送が行われる前に通信エリアAR外へ出ていくことが多くなる。一方、記録媒体20の空き容量が逼迫している状況では、転送前の通常情報が上書きにより記録媒体20から失われる又は新たなイベント情報を記録媒体20に記録できなくなる可能性がある。これらを考慮し、実施例EX2_2では、記録媒体20の使用容量が相対的に大きく、記録媒体20の空き容量が逼迫する可能性の高い車載装置1から順に情報の転送処理が行われるようにしている。これにより、上記可能性が低減される。
【0123】
尚、実施例EX2_2では、記録媒体20の全記録容量が記録媒体20[1]~20[n]間で互いに同じであることが前提とされて良い。この場合、“(記録媒体20[i]の使用容量)>(記録媒体20[j]の使用容量)”であれば、必然的に、“(記録媒体20[i]の空き容量)<(記録媒体20[j]の空き容量)”となる。但し、記録媒体20の全記録容量が記録媒体20[1]~20[n]間で全て又は部分的に互いに異なる(例えば記録媒体20[i]の全記録容量と記録媒体20[j]の全記録容量とが互いに異なる)ことがあっても良い。
【0124】
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。実施例EX2_3では、実施例EX2_1に示した記録媒体20の状態に基づく転送優先順位の設定方法の他の具体例を示す。
【0125】
図13の状況αを想定する。状況αにおいて、実施例EX2_3に係る設定部211は、車載装置1[i]の記録媒体20[i]の空き容量及び車載装置1[j]の記録媒体20[j]の空き容量を評価値として参照し、車載装置1[i]及び1[j]の内、より小さな評価値(即ち空き容量)に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。
【0126】
より具体的には、状況αにおいて、実施例EX2_3に係る設定部211は、記録媒体20[i]の空き容量を評価値EVB[i]として且つ記録媒体20[j]の空き容量を評価値EVB[j]として参照し、“EVB[i]<EVB[j]”であれば車載装置1[i]に対して車載装置1[j]よりも高い転送優先順位を設定し、“EVB[i]>EVB[j]”であれば車載装置1[j]に対して車載装置1[i]よりも高い転送優先順位を設定する。“EVB[i]=EVB[j]”のとき、車載装置1[i]及び1[j]の内の任意の一方に他方よりも高い転送優先順位を設定して良い。
【0127】
これを実現するべく、
図12のステップS22の転送優先順位設定処理の中で、又は、ステップS22の前に、各車載装置1は設定部211の要求に応じ自身の記録媒体20の空き容量を示す値をサーバ装置2に対して伝達するものとする。
【0128】
通信エリアAR内に3台以上の車両CRが位置している場合も同様である。即ち例えば、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が位置しているとき、実施例EX2_3に係る設定部211は、車載装置1[1]~1[3]の記録媒体20[1]~20[3]の空き容量をそれぞれ評価値EVB[1]~EVB[3]として参照し、車載装置1[1]~1[3]の内、より小さな評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定すれば良い。
【0129】
通信エリアAR内に入ってきた車両CRは、配車指示等を受けると通信エリアAR外へ出ていくことになる。このため、通信エリアAR内に入ってきたものの、相対的に低い転送優先順位に対応する車両CRは、サーバ装置2への情報の転送が行われる前に通信エリアAR外へ出ていくことが多くなる。一方、記録媒体20の空き容量が逼迫している状況では、転送前の通常情報が上書きにより記録媒体20から失われる又は新たなイベント情報を記録媒体20に記録できなくなる可能性がある。これらを考慮し、実施例EX2_3では、記録媒体20の空き容量が逼迫している車載装置1から順に情報の転送処理が行われるようにしている。これにより、上記可能性が低減される。
【0130】
尚、実施例EX2_3において、記録媒体20の全記録容量が記録媒体20[1]~20[n]間で互いに同じであるか、記録媒体20[1]~20[n]間で全て又は部分的に互いに異なるかは任意である。
【0131】
[実施例EX2_4]
実施例EX2_4を説明する。実施例EX2_4では、実施例EX2_1に示した記録媒体20の状態に基づく転送優先順位の設定方法の更に他の具体例を示す。
【0132】
図13の状況αを想定する。状況αにおいて、実施例EX2_4に係る設定部211は、車載装置1[i]の記録媒体20[i]に記録されているイベント情報の総情報量及び車載装置1[j]の記録媒体20[j]に記録されているイベント情報の総情報量を評価値として参照し、車載装置1[i]及び1[j]の内、より大きな評価値(即ちイベント情報の総情報量)に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。記録媒体20[i]に記録されているイベント情報の総情報量とは、記録媒体20[i]にイベント情報が1つだけ記録されている場合には、その1つのイベント情報の情報量を指し、記録媒体20[i]に複数回のイベント条件の成立に基づく複数のイベント情報が記録されている場合には、その複数のイベント情報の合計情報量を指す。記録媒体20[i]に記録されているイベント情報の総情報量は、記録媒体20[i]に記録されているイベント情報の個数によって表現されていても良い。記録媒体20[j]に記録されているイベント情報の総情報量についても同様である。
【0133】
より具体的には、状況αにおいて、実施例EX2_4に係る設定部211は、記録媒体20[i]に記録されているイベント情報の総情報量を評価値EVC[i]として且つ記録媒体20[j]に記録されているイベント情報の総情報量を評価値EVC[j]として参照し、“EVC[i]>EVC[j]”であれば車載装置1[i]に対して車載装置1[j]よりも高い転送優先順位を設定し、“EVC[i]<EVC[j]”であれば車載装置1[j]に対して車載装置1[i]よりも高い転送優先順位を設定する。“EVC[i]=EVC[j]”のとき、車載装置1[i]及び1[j]の内の任意の一方に他方よりも高い転送優先順位を設定して良い。
【0134】
これを実現するべく、
図12のステップS22の転送優先順位設定処理の中で、又は、ステップS22の前に、各車載装置1は設定部211の要求に応じ自身の記録媒体20に記録されているイベント情報の総情報量を示す値をサーバ装置2に対して伝達するものとする。
【0135】
通信エリアAR内に3台以上の車両CRが位置している場合も同様である。即ち例えば、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が位置しているとき、実施例EX2_4に係る設定部211は、車載装置1[1]~1[3]の記録媒体20[1]~20[3]に記録されているイベント情報の総情報量をそれぞれ評価値EVC[1]~EVC[3]として参照し、車載装置1[1]~1[3]の内、より大きな評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定すれば良い。
【0136】
イベント情報は、運転の安全性支援や運転手に対する指導等に役立つ重要度の高い情報である。故に、より多くのイベント情報を記録している車載装置1から優先して情報の転送を行って、運転の安全性支援等に役立てることが好ましい。また、記録媒体20に記録されているイベント情報の総情報量が多いほど、新たなイベント情報を記録媒体20に記録できなくなる可能性が高まる。実施例EX2_4では、これらを考慮した適正な転送優先順位を設定することができる。
【0137】
[実施例EX2_5]
実施例EX2_5を説明する。実施例EX2_5では、実施例EX2_1に示した記録媒体20の状態に基づく転送優先順位の設定方法の更に他の具体例を示す。
【0138】
既に述べたように、イベント検出部14(
図2参照)にて成否が判定されるイベント条件は複数種類あっても良い。この場合、複数種類のイベント条件の内、何れかの種類のイベント条件が成立すれば、イベント検出部14によりイベントが発生したと判断されて、記録制御部12によりイベント記録制御が実行される。イベント記録制御を通じて記録媒体20に記録される各イベント情報中の非カメラ情報は、当該イベント情報が何れの種類のイベントについてのイベント情報であるのかを特定するイベントタイプ情報を含む。ここでは、説明の具体化のため、Gイベント、急加速イベント及び急減速イベントに注目し、Gイベントについてのイベント情報、急加速イベントについてのイベント情報、急減速イベントについてのイベント情報を、夫々、第1イベント情報、第2イベント情報、第3イベント情報と称する。
【0139】
実施例EX2_5に係る設定部211は、特定のイベント情報をより多く保持している車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。サーバ装置2の管理者(例えばタクシー会社の管理者)はサーバ装置2に所定の指示を与えることで特定のイベント情報を任意に指定することができる。特定のイベント情報は第1~第3イベント情報の何れかであって良い。
【0140】
図13の状況αを想定すると。状況αにおいて、実施例EX2_5に係る設定部211は、車載装置1[i]の記録媒体20[i]に記録されている特定のイベント情報の総情報量及び車載装置1[j]の記録媒体20[j]に記録されている特定のイベント情報の総情報量を評価値として参照し、車載装置1[i]及び1[j]の内、より大きな評価値(即ち特定のイベント情報の総情報量)に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。記録媒体20[i]に記録されている特定のイベント情報の総情報量とは、記録媒体20[i]に特定のイベント情報が1つだけ記録されている場合には、その1つの特定のイベント情報の情報量を指し、記録媒体20[i]に複数回のイベント条件の成立に基づく複数の特定のイベント情報が記録されている場合には、その複数の特定のイベント情報の合計情報量を指す。記録媒体20[i]に記録されている特定のイベント情報の総情報量は、記録媒体20[i]に記録されている特定のイベント情報の個数によって表現されていても良い。記録媒体20[j]に記録されている特定のイベント情報の総情報量についても同様である。
【0141】
より具体的には、状況αにおいて、実施例EX2_5に係る設定部211は、記録媒体20[i]に記録されている特定のイベント情報の総情報量を評価値EVD[i]として且つ記録媒体20[j]に記録されている特定のイベント情報の総情報量を評価値EVD[j]として参照し、“EVD[i]>EVD[j]”であれば車載装置1[i]に対して車載装置1[j]よりも高い転送優先順位を設定し、“EVD[i]<EVD[j]”であれば車載装置1[j]に対して車載装置1[i]よりも高い転送優先順位を設定する。“EVD[i]=EVD[j]”のとき、車載装置1[i]及び1[j]の内の任意の一方に他方よりも高い転送優先順位を設定して良い。
【0142】
これを実現するべく、
図12のステップS22の転送優先順位設定処理の中で、又は、ステップS22の前に、各車載装置1は設定部211の要求に応じ自身の記録媒体20に記録されている特定のイベント情報の総情報量を示す値をサーバ装置2に対して伝達するものとする。
【0143】
通信エリアAR内に3台以上の車両CRが位置している場合も同様である。即ち例えば、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が位置しているとき、実施例EX2_5に係る設定部211は、車載装置1[1]~1[3]の記録媒体20[1]~20[3]に記録されている特定のイベント情報の総情報量をそれぞれ評価値EVD[1]~EVD[3]として参照し、車載装置1[1]~1[3]の内、より大きな評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定すれば良い。
【0144】
実施例EX2_5によれば、サーバ装置2の管理者が特定のイベント情報の収集を希望するとき、特定のイベント情報をより多く記録している車載装置1から優先して情報の転送が行われることになるので、希望する特定のイベント情報を素早くサーバ装置2に集めることができるようになる。
【0145】
尚、実施例EX2_5では、
図12のステップS25において、サーバ装置2からの転送要求信号を受信した車載装置1の転送処理部13は、特定のイベント情報、特定のイベント情報と異なるイベント情報(以下、非特定のイベント情報と称する)、通常情報の順にサーバ装置2への情報の転送を行って良い。より具体的には例えば、転送要求信号を受信した車載装置1が車載装置1[1]であるとした場合、ステップS25において、車載装置1[1]の転送処理部13は、記録媒体20[1]に記録されている特定のイベント情報(例えば第1イベント情報)、非特定のイベント情報(例えば第2及び第3イベント情報)、及び、通常情報の内、最初に特定のイベント情報をサーバ装置2に対して転送し、特定のイベント情報の転送完了後に非特定のイベント情報をサーバ装置2に対して転送し、非特定のイベント情報の転送完了後に通常情報をサーバ装置2に対して転送しても良い。転送が完了した情報が記録媒体20[1]から消去される点は第1実施形態と同様である。記録媒体20[1]に記録されていた特定のイベント情報、非特定のイベント情報及び通常情報の転送が全て完了するとステップS26に進む。転送要求信号を受信した車載装置1が車載装置1[2]~1[n]の何れかである場合も同様である。
【0146】
[実施例EX2_6]
実施例EX2_6を説明する。実施例EX2_6では、転送優先順位の設定方法の他の例を示す。端的に言えば、実施例EX2_6では、過去の転送優先順位の設定履歴に基づき、情報転送の順番待ちをした経験の多い運転手についての車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。
【0147】
図14は、サーバ装置2の記録媒体220に記録される管理テーブルTBLを示している。管理テーブルTBLは、複数の車両CRを用いてタクシー業務を運営するタクシー会社の管理テーブルであって、当該タクシー会社に属する複数の運転手についての各種情報が格納されている。当該タクシー会社に属する複数の運転手の内、第pの運転手を記号“DRV[p]”により参照する(pは任意の自然数)。第pの運転手には数値“p”を持つ運転手ID情報が割り当てられ、テーブルTBLには、運転手ごとに管理情報が格納されている。運転手ごとの管理情報は、運転手の年齢、性別及び勤怠状況等を含み、更に、転送待機評価値及び運行予定時間帯を含む。運転手DRV[p]に対する転送待機評価値を記号“EV
E[p]”にて参照する。尚、運行予定時間帯については後述の実施例EX2_7にて参照される。
【0148】
転送待機評価値は
図12のステップS22にて転送優先順位設定処理にて参照され且つ更新されうる。説明の具体化のため、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきた場合を想定して、転送優先順位の設定方法及び転送待機評価値の更新方法を説明する。車両CR[1]~CR[3]の運転手は、夫々、運転手DRV[1]~DRV[3]であるとする。
【0149】
通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきて、車載装置1[1]~1[3]及びサーバ装置2が高速通信回線CL
Aを介して互いに無線接続されると、
図12のステップS22において、設定部211は、運転手ID情報の送信を要求するID送信要求信号を車載装置1[1]~1[3]に対して送信する。車載装置1[1]~1[3]は、ID送信要求信号を受信すると、各々に、対応する運転手ID情報をサーバ装置2に送信する。これにより、設定部211は、車両CR[1]~CR[3]の運転手が夫々運転手DRV[1]~DRV[3]であると認識する。
【0150】
その後、設定部211は、運転手DRV[1]~DRV[3]に対応付けられた転送待機評価値EVE[1]~EVE[3]を管理テーブルTBLから読み出し、読み出した転送待機評価値EVE[1]~EVE[3]に基づき、車載装置1[1]~1[3]に対して互いに異なる転送優先順位を設定する。ここでは、より大きな転送待機評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位が設定されるものとする。今、“EVE[1]>EVE[2]>EVE[3]”であるとすると、車載装置1[1]、1[2]、1[3]に対し、夫々、第1、第2、第3の転送優先順位が設定される。実施例EX2_6では、転送待機評価値が優先順位設定指標として機能することになる。
【0151】
転送優先順位が設定された後の情報の転送処理の流れは上述した通りであるが、設定部211は、ステップS22にて転送優先順位を設定した際、テーブルTBL内の転送待機評価値EVE[1]~EVE[3]を以下のように更新する。即ち、第1の転送優先順位が設定された車載装置1[1]に対応する運転手DRV[1]の転送待機評価値EVE[1]を正の所定値Q1(例えば2)だけ減少させ、第2の転送優先順位が設定された車載装置1[2]に対応する運転手DRV[2]の転送待機評価値EVE[2]を正の所定値Q2(例えば1)だけ増加させ、第3の転送優先順位が設定された車載装置1[3]に対応する運転手DRV[3]の転送待機評価値EVE[3]を正の所定値Q3(例えば2)だけ増加させる。ここで、“Q2<Q3”である。
【0152】
これにより、次回、同様の状況が発生したときには、運転手DRV[2]又はDRV[3]に対応する車載装置1に対して第1の転送優先順位が設定されやすくなり、情報の転送待ちに関する公平性が得られる。
【0153】
[実施例EX2_7]
実施例EX2_7を説明する。実施例EX2_7では、転送優先順位の設定方法の更に他の例を示す。端的に言えば、実施例EX2_7では、各運転手の運行予定時間帯に基づき、運行予定時間帯の終了が近い運転手についての車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。
【0154】
図14を再度参照する。テーブルTBLには、運転手ごとに運行予定時間帯が格納されている。運行予定時間帯は運転手がタクシー業務に従事する予定時間帯であり、運転手ごとに異なりうる。ここでは、或る注目した1日の運行予定時間帯は、24時間表記で、運転手DRV[1]については9時から18時までであり、運転手DRV[2]については12時から20時までであり、運転手DRV[2]については16時から22時までであるとする。
【0155】
説明の具体化のため、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきた場合を想定して、実施例EX2_7に係る転送優先順位の設定方法を説明する。車両CR[1]~CR[3]の運転手は、夫々、運転手DRV[1]~DRV[3]であるとする。
【0156】
通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきて、車載装置1[1]~1[3]及びサーバ装置2が高速通信回線CL
Aを介して互いに無線接続されると、
図12のステップS22において、設定部211は、運転手ID情報の送信を要求するID送信要求信号を車載装置1[1]~1[3]に対して送信する。車載装置1[1]~1[3]は、ID送信要求信号を受信すると、各々に、対応する運転手ID情報をサーバ装置2に送信する。これにより、設定部211は、車両CR[1]~CR[3]の運転手が夫々運転手DRV[1]~DRV[3]であると認識する。
【0157】
その後、設定部211は、運転手DRV[1]~DRV[3]に対応付けられた運行予定時間帯を管理テーブルTBLから読み出し、現在時刻と、運転手DRV[1]~DRV[3]の運行予定時間帯の終了時刻との差を、夫々、時間評価値EV
F[1]~EV
F[3]として求めて、時間評価値EV
F[1]~EV
F[3]に基づき車載装置1[1]~1[3]に対して互いに異なる転送優先順位を設定する。この際、より小さな時間評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位が設定される。現在時刻が18時直前であるとすれば、
図14に示した数値例では、“EV
F[1]<EV
F[2]<EV
F[3]”となるので、車載装置1[1]、1[2]、1[3]に対し、夫々、第1、第2、第3の転送優先順位が設定される。実施例EX2_7では、時間評価値が優先順位設定指標として機能することになる。
【0158】
小さな時間評価値に対応する車載装置1に対して低い転送優先順位が設定されると、転送の待ち時間が影響して、その車載装置1に対応する運転手について、いわゆる残業が発生することがある。実施例EX2_7によれば、そのような残業の発生を抑制することが可能となる。
【0159】
[実施例EX2_8]
実施例EX2_8を説明する。実施例EX2_8では、転送優先順位の設定方法の更に他の例を示す。端的に言えば、実施例EX2_8では、アクセスポイントAPとの通信の電波強度が高い車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。
【0160】
説明の具体化のため、通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきた場合を想定して、実施例EX2_8における転送優先順位の設定方法を説明する。通信エリアAR内に車両CR[1]~CR[3]が入ってきて、車載装置1[1]~1[3]及びサーバ装置2が高速通信回線CL
Aを介して互いに無線接続されると、
図12のステップS22において、設定部211は、アクセスポイントAPと車載装置1[1]間の通信における電波強度、アクセスポイントAPと車載装置1[2]間の通信における電波強度、アクセスポイントAPと車載装置1[3]間の通信における電波強度を、夫々、電波強度評価値EV
G[1]、EV
G[2]、EV
G[3]として取得し、より大きな電波強度評価値に対応する車載装置1に対し、より高い転送優先順位を設定する。例えば“EV
G[1]>EV
G[2]>EV
G[3]”であるとすると、車載装置1[1]、1[2]、1[3]に対し、夫々、第1、第2、第3の転送優先順位が設定される。実施例EX2_8では、電波強度評価値が優先順位設定指標として機能することになる。
【0161】
アクセスポイントAP及び車載装置1[1]間の通信における電波強度の検出機能をアクセスポイントAPが有している場合には、設定部211は、その電波強度の情報をアクセスポイントAPから取得しても良いし、アクセスポイントAP及び車載装置1[1]間の通信における電波強度の検出機能を車載装置1[1]が有している場合には、設定部211は、その電波強度の情報をアクセスポイントAP経由で車載装置1[1]から取得しても良い。他の電波強度についても同様である。
【0162】
電波強度が高いほど安定した高速通信が可能となる。より高い電波強度に対応する車載装置1から情報の転送処理を行うようにすることで、サーバ装置2への情報の集積が進みやすくなる。例えば、車載装置1[1]~1[3]が各々に20メガバイト分の情報を記録媒体20に記録している状況で車両CR[1]~CR[3]が同時に通信エリアAR内に入ってきて、所定時間後に、車両CR[1]~CR[3]が同時に通信エリアAR外に出ていくことを想定する。この場合、“EVG[1]>EVG[2]>EVG[3]”であるときに、車載装置1[1]、1[2]、1[3]に対し、夫々、第1、第2、第3の転送優先順位が設定されたならば、上記所定時間が短かったとしても、車載装置1[1]についての20メガバイト分の情報転送は全て完了する可能性がある。一方で、“EVG[1]>EVG[2]>EVG[3]”であるときに、車載装置1[1]、1[2]、1[3]に対し、夫々、第3、第2、第1の転送優先順位が設定されたならば、上記所定時間内に車載装置1[3]についての10メガバイト分の情報転送のみしか行われない、といったことが考えられる。
【0163】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では第1及び第2実施形態に適用可能な注釈事項、変形技術等を説明する。
【0164】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態では第1及び第2実施形態に適用可能な注釈事項、変形技術等を説明する。
【0165】
車両CRが通信エリアAR外に位置しているとき、転送処理部13は、順次取得される第2取得情報(車両情報等)を低速通信回線CLBを用いてサーバ装置2に順次リアルタイムで転送すると上述したが、このような転送の実行は必須ではない。
【0166】
情報収集システムSSは車両CRに搭載される情報収集装置を備えている。上述の車載装置1は情報収集装置の一例である。第1及び第2実施形態では、カメラ部31、車載センサ部32、GPS処理部33、計時部34、免許証カードリーダ35及びインターフェース装置40の全てが車載装置1の外部に設けられていると考えたが、カメラ部31、車載センサ部32、GPS処理部33、計時部34、免許証カードリーダ35及びインターフェース装置40の内、全部又は任意の一部は車載装置1内に設けられていても良い。
【0167】
これらをまとめると、情報収集装置における情報取得部11は、情報収集装置内又は外に設けられた装置から情報を取得することになる。即ち例えば、カメラ部31が情報収集装置内に設けられた装置であると考えた場合、情報取得部11は情報収集装置内に設けられたカメラ部31からカメラ情報を取得し、カメラ部31が情報収集装置の外に設けられた装置であると考えた場合、情報取得部11は情報収集装置の外に設けられたカメラ部31からカメラ情報を取得することになる。車載センサ部32、GPS処理部33、計時部34及び免許証カードリーダ35についても同様である。
【0168】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 車載装置(情報収集装置)
2 サーバ装置(外部装置)
10 車両制御部
11 情報取得部
12 記録制御部
13 転送処理部
14 イベント検出部
15 通知処理部
20 記録媒体
31 カメラ部
32 車載センサ部
33 GPS処理部
34 計時部
35 免許証カードリーダ
210 サーバ制御部
211 車両間優先順位設定部
212 転送調停部
220 サーバ記録部
SS 情報収集システム
CR 車両
CLA、CLB 通信回線