(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
A01K87/04 E
(21)【出願番号】P 2019156306
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】神納 芳行
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-234663(JP,A)
【文献】特開昭49-066477(JP,A)
【文献】特開2006-034228(JP,A)
【文献】特開2018-113926(JP,A)
【文献】特開2019-050795(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042856(WO,A1)
【文献】特開2000-270721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿本体と、
前記釣竿本体の所定部位に当接する脚を有する釣糸ガイドと、
前記所定部位に
当接した前記脚
と前記釣竿本体
とを囲繞
した熱可塑性樹脂からなる脚固定部と、を備え
、
前記脚固定部は、前記釣竿本体の長手方向に隣り合って融合する第1囲繞部及び第2囲繞部を有し、前記第1囲繞部及び前記第2囲繞部は、線径の異なる糸状に成形された熱可塑性樹脂からなる、釣竿。
【請求項2】
前記脚固定部の外周面に、前記釣竿本体の周方向に螺旋状に延びる凸条が形成されている請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第1囲繞部及び
前記第2囲繞部は、1本の糸状に
成形された熱可塑性樹脂からなる
請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記脚固定部は、
前記釣竿本体の径方向に隣り合う第3囲繞部及び第4囲繞部を有し、両者は互いに融合している
請求項1から3のいずれかに記載の釣竿。
【請求項5】
前記第3囲繞部及び
前記第4囲繞部は、線径の異なる糸状に
成形された熱可塑性樹脂からなる
請求項4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記第3囲繞部及び
前記第4囲繞部は、1本の糸状に
成形された熱可塑性樹脂からなる
請求項4又は5に記載の釣竿。
【請求項7】
前記第3囲繞部及び
前記第4囲繞部は、互いに異なる熱可塑性樹脂からなる
請求項4から6のいずれかに記載の釣竿。
【請求項8】
釣竿本体と、
前記釣竿本体の所定部位に当接する脚を有する釣糸ガイドと、
前記所定部位に当接した前記脚と前記釣竿本体とを囲繞した熱可塑性樹脂からなる脚固定部と、を備え、
前記脚固定部は、前記釣竿本体の長手方向に隣り合って融合する第1囲繞部及び第2囲繞部を有し、前記第1囲繞部及び前記第2囲繞部は、互いに異なる熱可塑性樹脂からなる、釣竿。
【請求項9】
前記脚固定部の外周面に、前記釣竿本体の周方向に螺旋状に延びる凸条が形成されている請求項8に記載の釣竿。
【請求項10】
前記第1囲繞部及び前記第2囲繞部は、1本の糸状に成形された熱可塑性樹脂からなる請求項8又は9に記載の釣竿。
【請求項11】
前記脚固定部は、前記釣竿本体の径方向に隣り合う第3囲繞部及び第4囲繞部を有し、両者は互いに融合している請求項8から10のいずれかに記載の釣竿。
【請求項12】
前記第3囲繞部及び前記第4囲繞部は、線径の異なる糸状に成形された熱可塑性樹脂からなる請求項11に記載の釣竿。
【請求項13】
前記第3囲繞部及び前記第4囲繞部は、1本の糸状に成形された熱可塑性樹脂からなる請求項11又は12に記載の釣竿。
【請求項14】
前記第3囲繞部及び前記第4囲繞部は、互いに異なる熱可塑性樹脂からなる請求項11から13のいずれかに記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣糸ガイドを備えた釣竿の構造、詳しくは、釣糸ガイドの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣糸リールを装着することができる釣竿は、複数の釣糸ガイドを備える。一般に釣糸ガイドは、釣糸が挿通されるガイドリングと、これを保持するガイドフレームとを有する。ガイドフレームは、釣竿本体に固定される脚を有し、この脚は、たとえば木綿糸が巻回されることにより釣竿本体に固定される。なお、この木綿糸の上から樹脂が塗布され、脚の固定部分が仕上げられる(たとえば特許文献1参照)。この木綿糸の上から塗布される樹脂として、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂やプレポリマー、モノマー、光重合開始剤、添加剤等からなる紫外線硬化樹脂が採用される(たとえば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された脚の固定方法では、木綿糸がガイドフレームの脚に密に巻き付けられるが、この作業は一般に熟練を要し、その結果、釣竿の製造コストが高くなる。そのうえ、木綿糸の上から樹脂が塗布された場合、さらに製造コストが上昇する。そのため、かかる木綿糸による前記脚の固定に代えて、樹脂シートにより前記脚を固定する方法も提案されている(たとえば特許文献3参照)。すなわち、たとえば炭素繊維に樹脂が含浸されたプリプレグシートによって、ガイドフレームの脚が釣竿本体の所定位置に位置決めされ、加熱処理により前記脚が釣竿本体に固定される。この方法では、ガイドフレームが簡単に釣竿本体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-157769号公報
【文献】特開2006-34228号公報
【文献】特開2018-113926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のようにプリプレグシートが採用された場合、ガイドフレームを釣竿本体に固定する作業が、木綿糸の巻回に比べれば若干簡略化されるとしても、やはり、プリプレグシートを巻き付ける作業は容易ではない。しかも、プリプレグシートは一般に高価であり、これを硬化させるための熱処理行程が必要となり、結局のところ製品としての釣竿のコストダウンを実現することは困難である。
【0006】
本発明はかかる背景のもとになされたものであり、その目的は、簡単な取付構造によって確実に釣糸ガイドが釣竿本体に固定された安価な釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る釣竿は、釣竿本体と、前記釣竿本体の所定部位に当接する脚を有する釣糸ガイドと、前記所定部位に前記脚が当接された状態で前記釣竿本体及び脚を囲繞し硬化した熱可塑性樹脂からなる脚固定部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、釣糸ガイドの脚が釣竿本体の所定部位に配置される。脚固定部は、前記脚を釣竿本体に固定する。この脚固定部は、熱可塑性樹脂からなるので、加熱されることにより簡単に軟化する。したがって、この軟化された熱可塑性樹脂によって前記脚及び釣竿本体が囲繞され、そのまま冷却されることにより、簡単に前記脚が釣竿本体に対して強固に固定される。
【0009】
(2) 前記脚固定部の外周面に、前記釣竿本体の周方向に螺旋状に延びる凸条が形成されているのが好ましい。
【0010】
この構成では、脚固定部の剛性が向上し、前記脚がより強固に釣竿本体に固定される。
【0011】
(3) 前記脚固定部は、釣竿本体の長手方向に隣り合う第1囲繞部及び第2囲繞部を有し、両者は互いに融合しているのが好ましい。
【0012】
この構成では、脚固定部が長手方向に沿って構造的に二つの部分(第1囲繞部及び第2囲繞部)に分けられるので、前記脚に加わることが予想される外力に応じて、脚固定部の最適な強度設計が可能となる。
【0013】
(4) 前記第1囲繞部及び第2囲繞部は、線径の異なる糸状に射出された熱可塑性樹脂から構成されてもよい。
【0014】
この場合、第1囲繞部及び第2囲繞部の機械的強度が調整される。したがって、脚固定部のうち、前記脚に対して大きな外力が負荷される部位について、簡単に機械的強度が向上される。
【0015】
(5) 前記第1囲繞部及び第2囲繞部は、1本の糸状に射出された熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
【0016】
この場合、螺旋状に巻回される熱可塑性樹脂によって第1囲繞部及び第2囲繞部が簡単に形成される。したがって、前記脚固定部は、より簡単且つ安価に構成される。
【0017】
(6) 前記第1囲繞部及び第2囲繞部は、互いに異なる熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
【0018】
この場合、第1囲繞部及び第2囲繞部の機械的強度設計の自由度が大きくなる。したがって、脚固定部への外力の負荷態様に応じて、緻密な強度設計が可能となる。
【0019】
(7) 前記脚固定部は、釣竿本体の径方向に隣り合う第3囲繞部及び第4囲繞部を有し、両者は互いに融合しているのが好ましい。
【0020】
この構成では、熱可塑性樹脂が釣竿の径方向に重ね合わされるように配置され、前記脚固定部が形成される。したがって、前記脚が熱可塑性樹脂によって幾重にも巻き付けられた状態で釣竿本体に強固に固定される。
【0021】
(8) 前記第3囲繞部及び第4囲繞部は、線径の異なる糸状に射出された熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
【0022】
この場合、第3囲繞部及び第4囲繞部の機械的強度が調整される。したがって、脚固定部のうち、前記脚に対して大きな外力が負荷される部位の機械的強度が簡単に向上される。
【0023】
(9) 前記第3囲繞部及び第4囲繞部は、1本の糸状に射出された熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
【0024】
この場合、螺旋状に巻回される熱可塑性樹脂によって第1囲繞部及び第2囲繞部が簡単に形成される。したがって、前記脚固定部は、より簡単且つ安価に構成される。
【0025】
(10)前記第3囲繞部及び第4囲繞部は、互いに異なる熱可塑性樹脂から構成されていてもよい。
【0026】
この場合、第1囲繞部及び第2囲繞部の機械的強度設計の自由度が大きくなる。したがって、脚固定部への外力の負荷態様に応じて、緻密な強度設計が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、釣糸ガイドは、簡単な構造で釣竿本体に強固に取り付けられるので、釣竿の製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の正面図である。
【
図2】
図2は、釣竿10の釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の正面図である。
【0031】
この釣竿10は、釣竿本体11と、その後端部を支持すると共に、図示されていない釣糸リールを着脱自在に保持するグリップ12と、釣竿本体11に設けられた複数の釣糸ガイド13~20とを備えている。グリップ12は、リールシート21を備えており、図示されていない釣糸リールは、このリールシート21に固定されるようになっている。
【0032】
本実施形態では、釣竿本体11は単一の棒状部材からなり、グリップ12の内部に前方から後方に向かって(同図において左から右に向かって)挿通されている。釣竿本体11は、既知の要領で成形される。すなわち、炭素繊維により強化された樹脂(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これが筒状に巻回された後に熱処理が施されることによって、円筒状の竿管が焼成される。なお、本実施形態では、釣竿本体11は、いわゆるワンピースタイプとして構成されているが、本発明は、かかる仕様の釣竿本体11に限定して適用されるものではなく、複数の竿管が接続されることによって釣竿本体11が構成されるタイプのものにも適応される。
【0033】
同図が示すように、釣竿本体11の所定部位に釣糸ガイド13~20が取り付けられており、これらは、前後方向に沿って所定の間隔で配置されている。各釣糸ガイド13~20が取り付けられる位置は、釣竿本体11の調子(曲げモーメントが作用した場合に釣竿本体11が形成するたわみ曲線)に応じて決定される。釣糸ガイド20は、トップガイドと称され、釣竿本体11の先端に設けられる。釣糸リールかがリールシート21に固定され、この釣糸リールから繰り出された釣糸は、釣糸ガイド13~20に順に挿通される。
【0034】
本実施形態に係る釣竿10の特徴とするところは、各釣糸ガイド13~20の取付構造である。すなわち、後に詳述されるように、釣糸ガイド13~20の脚25が硬化された熱可塑性樹脂によって釣竿本体11に固定されている。
【0035】
図2は、釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【0036】
釣糸ガイド15は、既知の構成であり、ガイドフレーム22及びガイドリング23を備えている。ガイドリング23は、本実施形態において円環状に形成され、釣糸が挿通される糸挿通孔を有している。もっとも、ガイドリング23の外形形状は特に限定されるものではなく、前記糸挿通孔が設けられていれば、外形形状は楕円形や長円形等であってもよい。ガイドリング23は耐摩耗性に優れた、種々の硬質材料からなり、典型的にはSiC(シリコンカーバイト)に代表されるセラミックや、各種の金属材料が使用される。金属材料としては、たとえばチタン合金が好適である。
【0037】
ガイドフレーム22は既知の構成であり、樹脂あるいは金属により構成されている。この樹脂は、典型的にはカーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維含浸樹脂が採用され、金属としては、チタン合金やステンレス合金、アルミニウム合金等が採用され得る。ガイドフレーム22は、本実施形態ではL字状に形成されており、リング装着部24及び脚25を備えている。脚25は、釣竿本体11の外周面上の前記所定部位に配置され、後述の要領で固定される。
【0038】
図中の一点鎖線30は、釣竿本体11の中心軸を示している。リング装着部24は、脚25に対して屈曲され、釣竿本体11の中心軸30から径方向に沿って遠ざかる向き(同図において上向き)に延びている。ガイドリング23は、リング装着部24に支持されている。具体的には、リング装着部24は円環状に形成されており(不図示)、ガイドリング23は、リング装着部24の内側に嵌め込まれている。ガイドリング23は、接着剤によりリング装着部24に接着されていてもよい。
【0039】
ガイドフレーム22の脚25は、釣竿本体11の前記所定部位に当接され、脚固定部26によって釣竿本体11に固定されている。脚固定部26は円環状を呈し、前記脚25を釣竿本体11と共に囲繞している。脚固定部26は、熱可塑性樹脂からなる。加熱され溶融した熱可塑性樹脂が、前記脚25及び釣竿本体11の周囲を囲繞し、その状態で冷却され硬化することによって脚25を釣竿本体11に固定する。脚固定部26を構成する樹脂は、典型的には、ポリアミド(PA)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレンアクリレール(ASA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂などが採用され得る。
【0040】
脚固定部26の外周面31は、同図が示すように軸方向(中心軸30の方向)に沿って連続する波形を形成している。すなわち、脚固定部26の外周面31に、釣竿本体11の周方向に延びる畝32が、軸方向30に沿って並設されている。換言すれば、脚固定部26の外周面31に、軸方向30に沿って螺旋状に延びる凸条(畝32)が形成されている。この畝32が形成されることによる作用効果については後述される。
【0041】
本実施形態では、脚固定部26は、同図が示すように内側層33(特許請求の範囲に記載された「第3囲繞部」に相当)及び外側層34(特許請求の範囲に記載された「第4囲繞部」に相当)を備えている。上記畝32は、外側層34の外面に形成されている。内側層33及び外側層34は、釣竿本体11の径方向に隣り合って積層されており、同図において、両者の境界に境界線35が現れている。もっとも、脚固定部26が単一の層から構成されていてもよい。
【0042】
脚固定部26の肉厚寸法27は、本実施形態では0.4mmに設定されるが、0.1mm~2.0mmの範囲で適宜設計変更され得る。脚固定部26の前後方向29の寸法28は、本実施形態では0.4mmに設定されるが、脚25の全体を覆う寸法であれば、特に限定されるものではない。
【0043】
脚固定部26は、たとえばFDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層方式)を採用する3Dプリンタにより形成される。もっとも、脚固定部26は既知の方法により形成されてもよい。本実施形態では、熱溶解された熱可塑性樹脂がたとえばグルーガンにより糸状に射出され、これが前記脚25及び釣竿本体11に螺旋状に巻回される。このようにして前記脚25及び釣竿本体11を囲繞した熱可塑性樹脂は、冷却硬化されることにより釣竿本体11に前記脚25を固定する脚固定部26となる。
【0044】
なお、本実施形態では、釣糸ガイド15を例示してその構造及び釣竿本体11への取付要領が説明されたが、かかる取付要領については釣糸ガイド13~20に共通する。
【0045】
このように本実施形態に係る釣竿10では、釣糸ガイド13~20の脚25は、溶融された熱可塑性樹脂により釣竿本体11と共に囲繞されるだけで、きわめて簡単且つ迅速に釣竿本体11の所定部位に強固に固定される。したがって、釣竿10の製造コストが従来と比較して大幅に低減される。
【0046】
本実施形態では、脚固定部26の外周面に畝32が形成されている。この畝32は、前記FDMにより形成され得るし、グルーガンから射出される糸状の熱可塑性樹脂が前記脚25及び釣竿本体11を囲繞するように螺旋状に巻回されることによっても形成される。この畝32が形成されることにより脚固定部26の剛性が向上する。したがって、前記脚25がより強固に釣竿本体11に固定される。本実施形態では、グルーガンから単一の糸状の熱可塑性樹脂が射出される。これにより、脚固定部26の成形作業が簡単になるし、前記畝32の形成も容易である。もっとも、複数の糸状の熱可塑性樹脂がグルーガンから射出されてもよい。また、前記畝32が形成されなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、脚固定部26は、内側層33及び外側層34を備え、その断面構造において、前記境界線35が現れている。つまり、本実施形態では、前記熱可塑性樹脂によりまず内側層33が形成された後、この内側層33に重ね合わせて外側層34が形成されている。内側層33及び外側層34は、前述のように簡単な作業で形成され、両者は互いに融合しつつ冷却硬化される。なお、内側層33が硬化した後に外側層34が形成されてもよい。このように、熱可塑性樹脂が径方向に重ね合わされるように配置されるので、前記脚25が一層強固に釣竿本体11に固定される。
【0048】
本実施形態では、脚固定部26は二層構造であるが、前記外側層34にさらに樹脂層が重ねられて多層構造が形成されてもよい。この場合、前記脚25が熱可塑性樹脂によって幾重にも巻き付けられた状態となり、脚固定部26の機械的強度がなお一層向上する。
【0049】
本実施形態では、グルーガンから射出される熱可塑性樹脂の線径は一定であって、たとえば0.1mm~2.0mmに設定される。ただし、前記内側層33を形成するために射出される熱可塑性樹脂の線径と、前記外側層34を形成するために射出される熱可塑性樹脂の線径とが異なっていても良い。この場合、内側層33及び外側層34の機械的強度が調整される。したがって、実釣において想定される脚25への負荷に応じて脚固定部26の適切な強度設計が可能となる。
【0050】
本実施形態では、前記内側層33を形成する熱可塑性樹脂と前記外側層34を形成する熱可塑性樹脂とが同一であるが、これらが相互に異なっていても良い。たとえば、内側層33にPAが採用され、外側層34にABSが採用されてもよいし、その逆であってもよい。この場合、内側層33及び外側層34の融合の度合いが調整され、機械的強度設計の自由度がより大きくなる。したがって、脚固定部26への外力の負荷態様に応じて、緻密な強度設計が可能となる。
【0051】
図3は、この実施形態の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【0052】
本変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造が前記実施形態に係る釣糸ガイド15の取付構造と異なるところは、(ア)前記実施形態では脚固定部26が二層構造であるのに対し、本件変形例では単一層構造である点、並びに(イ)脚固定部45が前囲繞部43(特許請求の範囲に記載された「第1囲繞部」に相当)及び後囲繞部44(特許請求の範囲に記載された「第2囲繞部」に相当)を備えている点である。なお、その他の構成については、前記実施形態と同様である。
【0053】
脚固定部45は、前記実施形態と同様の方法で形成され、たとえば、グルーガンから溶融された糸状の熱可塑性樹脂が射出され、この糸状樹脂が前記脚25及び釣竿本体11を囲繞するように螺旋状に巻回される。この変形例では、グルーガンから射出される糸状の樹脂によって、前述のように単一層構造の脚固定部45が成形される。
【0054】
前記前囲繞部43は、前記後囲繞部44と融合し、釣竿10の長手方向(前記前後方向29)に沿って隣り合って連続している。前囲繞部43の前後方向29の寸法46は、本変形例では1mm~20mmに設定され、後囲繞部44の前後方向の寸法47は、1mm~25mmに設定される。前記糸状の樹脂が脚25の後端側あるいは前端側から巻回される。この糸状の樹脂が脚25の後端側から巻回されるときは、先に後囲繞部44が形成され、続いてこれに連続して前囲繞部43が形成される。前記糸状の樹脂が脚25の前端側から巻回されるときは、先に前囲繞部43が形成され、続いてこれに連続して後囲繞部44が形成される。この場合、単一の糸状の樹脂によって連続的に前囲繞部43及び後囲繞部44が形成される。
【0055】
この変形例では、脚固定部45が単一層構造であるから、より構造が簡素化され、その結果、釣竿10の製造コストはさらに低減される。しかも、脚固定部45が前後方向29に隣り合う二つの部位(前囲繞部43及び後囲繞部44)を備えているから、脚25に加わることが予想される外力や曲げモーメントの大きさに応じて、脚固定部45の最適な強度設計がなされる。たとえば、実釣においては、一般的に脚25の前側部分(前記寸法46に対応する部分)に大きな外力が作用する。したがって、前囲繞部43の機械的強度を上げる設計、つまり前記寸法46を大きくする設計が容易になる。
【0056】
特に、脚固定部45の前囲繞部43の機械的強度を上げるために、この前囲繞部43が形成される際に、射出される樹脂の線径が変更されてもよい。つまり、脚25の前側部分に太径の糸状樹脂が巻回され、これに続いて、脚25後側部分に細径の糸状樹脂が巻回されてもよい。これにより、大きな外力が作用する脚25の前側部分は、強度的に優れる前囲繞部43により固定され、比較的小さな外力が作用する脚25の後側部分は、構造的に簡素化された後囲繞部44により固定される。その結果、脚固定部45の強度設計の自由度が向上し、無駄のない最適設計が可能となる。
【0057】
また、脚固定部45の前囲繞部43の機械的強度を上げるために、この前囲繞部43が形成される際に、射出される樹脂の種類が変更されてもよい。つまり、脚25の前側部分に強度的に優れる熱可塑性樹脂が巻回され、これに続いて、脚25後側部分に他の熱可塑性樹脂が巻回されてもよい。この場合にも、大きな外力が作用する脚25の前側部分は、前囲繞部43により強固に固定される。その結果、脚固定部45の強度設計の自由度が向上し、無駄のない最適設計が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
13・・・釣糸ガイド
14・・・釣糸ガイド
15・・・釣糸ガイド
16・・・釣糸ガイド
17・・・釣糸ガイド
18・・・釣糸ガイド
19・・・釣糸ガイド
20・・・釣糸ガイド
22・・・ガイドフレーム
23・・・ガイドリング
25・・・脚
26・・・脚固定部
31・・・外周面
32・・・畝
33・・・内側層
34・・・外側層
35・・・境界線
43・・・前囲繞部
44・・・後囲繞部
45・・・脚固定部