(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート
(51)【国際特許分類】
B29C 33/42 20060101AFI20230606BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20230606BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20230606BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20230606BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20230606BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C33/02
B29C35/02
B29D30/06
B60C13/00 A
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019159505
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172360(JP,A)
【文献】特開2007-038528(JP,A)
【文献】特開2006-007251(JP,A)
【文献】特公昭47-047514(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
35/00-35/18
B29D 30/00-30/72
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの識別標識を刻印した板状体であり、タイヤ加硫用モールドのタイヤ成形面に取り付けられ、加硫成形時にグリーンタイヤに押し付けられて前記グリーンタイヤに前記識別標識を転写して刻印するための空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートであって、
前記板状体の表面全体に
隙間なく、折り曲げを抑制するための凹凸形状を付与した折り曲げ抑制構造を備え
、
前記折り曲げ抑制構造の凹凸形状は、前記識別標識のものとは異なっている、空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート。
【請求項2】
前記折り曲げ抑制構造は、複数の四角錐部からなる、請求項1に記載の空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート。
【請求項3】
前記折り曲げ抑制構造は、前記板状体の長手方向に直線状の凹部および凸部からなる、請求項1に記載の空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート。
【請求項4】
前記板状体は、平面視において湾曲した対向する縁部を有し、
前記折り曲げ抑制構造は、前記湾曲した対向する縁部と同じ曲率で湾曲した曲線状の凹部および凸部からなる、請求項1に記載の空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート。
【請求項5】
前記折り曲げ抑制構造は、前記板状体の長手方向の中央部分の凹凸密度が他の部分よりも高い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイド部には、例えば製品番号、製造年月日、およびメーカ名等の文字、数字、記号、および図形等からなる識別標識が付されることがある。この識別標識の刻印手段の1つとして、板状体の表面に識別標識が刻印されたステンシルプレート(セリアルプレート)が使用される。
【0003】
ステンシルプレートは、タイヤ加硫用モールドに取り付けられ、加硫成形時にグリーンタイヤの表面に押し付けて使用される。このようにして、識別標識をタイヤに転写して刻印するためのステンシルプレートが特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-154281号公報
【文献】特開2007-38528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの加硫用モールドは高温で使用されるため、タイヤ加硫用モールドに取り付けられたステンシルプレートは熱変形を受けることがある。また、熱変形以外にも様々に外力を受けて変形することがある。ステンシルプレートが変形すると、タイヤ加硫用モールドから浮き上がり、タイヤ加硫用モールドに正しく取り付けることができない。結果として、識別標識が正しく刻印されないおそれがある。
【0006】
特許文献1,2のステンシルプレートには、部分的に凹凸形状が付与されている。そのため、部分的に剛性が向上しており、部分的に変形を抑制している。しかし、凹凸形状が付与されていない部分の剛性が低く、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートにおいて、変形を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤの識別標識を刻印した板状体であり、タイヤ加硫用モールドのタイヤ成形面に取り付けられ、加硫成形時にグリーンタイヤに押し付けられて前記グリーンタイヤに前記識別標識を転写して刻印するための空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートであって、前記板状体の表面全体に隙間なく、折り曲げを抑制するための凹凸形状を付与した折り曲げ抑制構造を備え、前記折り曲げ抑制構造の凹凸形状は、前記識別標識のものとは異なっている、空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートを提供する。
【0009】
この構成によれば、ステンシルプレートが折り曲げ抑制構造を備えるため、変形を抑制できる。特に、凹凸形状を付与された折り曲げ抑制構造が板状体の表面全体に設けられているため、剛性の低い部分が存在せず、変形を好適に抑制できる。
【0010】
前記折り曲げ抑制構造は、複数の四角錐部からなってもよい。また、前記折り曲げ抑制構造は、前記板状体の長手方向に直線状の凹部および凸部からなってもよい。また、前記板状体は、平面視において湾曲した対向する縁部を有し、前記折り曲げ抑制構造は、前記湾曲した対向する縁部と同じ曲率で湾曲した曲線状の凹部および凸部からなってもよい。
【0011】
これらの構成によれば、様々な形状によってステンシルプレートの剛性を向上させることができ、ステンシルプレートの変形を好適に抑制できる。
【0012】
前記折り曲げ抑制構造は、前記板状体の長手方向の中央部分の凹凸密度が他の部分よりも高くてもよい。ここで、凹凸密度とは、単位面積当たりの凹凸の数をいう。
【0013】
この構成によれば、ステンシルプレートにおいて最も変形しやすい部分である板状体の長手方向の中央部分の剛性を向上できるため、ステンシルプレートの変形を一層抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空気入りタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレートにおいて、折り曲げ抑制構造によって変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】タイヤ加硫用モールドを装着した加硫成形機の部分断面図。
【
図2】
図1のタイヤ加硫用モールドの型締め動作を示す部分断面図。
【
図3】
図1のタイヤ加硫用モールドとタイヤの子午線半断面図。
【
図5】
図4の空気入りタイヤの識別標識表示部の拡大図。
【
図6】第1実施形態に係るステンシルプレートの斜視図。
【
図7】第2実施形態に係るステンシルプレートの斜視図。
【
図8】第3実施形態に係るステンシルプレートの斜視図。
【
図9】第1実施形態に係るステンシルプレートの変形例の斜視図。
【
図10】第2実施形態に係るステンシルプレートの変形例の斜視図。
【
図11】第3実施形態に係るステンシルプレートの変形例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
【0018】
図1は、加硫成形機1に本実施形態に係るタイヤ加硫用モールド2を装着した状態を示す。加硫成形機1の上プラテン4と、下プラテン5との間に、コンテナ6を介してタイヤ加硫用モールド2が取り付けられている。
【0019】
上プラテン4は昇降シリンダ7の下端部に固定されている。上プラテン4の下端部には上プレート3が固定されている。昇降シリンダ7の中心には昇降ロッド8が配置されている。昇降ロッド8の下端部には上コンテナプレート16が固定されている。昇降シリンダ7と昇降ロッド8は図示しない駆動装置によって昇降される。上コンテナプレート16と上プラテン4は、独立して昇降可能に構成されている。上プラテン4の内部には、流路4aが形成されている。流路4a内を熱交換媒体(例えば、オイル)が流動することによりタイヤ加硫用モールド2を温度調整できる。
【0020】
下プラテン5の内部には、上プラテン4と同様に熱交換媒体が流動する流路5aが形成されている。そして、熱交換媒体の温度を調整することにより、上プラテン4及び下プラテン5を介してタイヤ加硫用モールド2を所望の加硫温度にすることができる。下プラテン5のタイヤ径方向中心にはブラダユニット9が配置されている。
【0021】
ブラダユニット9は、昇降可能な支軸10に固定した上クランプ11及び下クランプ12にブラダ13を取り付けたものである。上クランプ11、下クランプ12、及びブラダ13によって囲まれた空間内には、図示しない給排気装置によって空気が供給及び排出される。ブラダ13は、空気が供給されて外周側に膨らみ、グリーンタイヤGTを内側から支持する。ここで、グリーンタイヤGTは、加硫成形前の生タイヤのことを示す。
【0022】
コンテナ6は、セグメント14、ジャケットリング15、上コンテナプレート16、及び下コンテナプレート17等で構成されている。
【0023】
セグメント14は、後述するタイヤ加硫用モールド2の各セクターモールド20にそれぞれねじ止めされている。本実施形態では、セグメント14は9個で構成されており、セグメント14に対応してセクターモールド20も9個で構成されている。各セグメント14の内面はセクターモールド20の外面に沿っており、外面は下方に向かうに従って徐々に外径側に膨らむ傾斜面(外周側円錐面)で構成されている。各セグメント14は上スライド18によって径方向に往復移動可能に支持されている。
【0024】
ジャケットリング15は中空円筒状である。ジャケットリング15の上端面は上プレート3に固定されており、ジャケットリング15は昇降シリンダ7の昇降動作に従って昇降する。ジャケットリング15の内面は、下端側に向かうに従って徐々に外径側に傾斜する内周側円錐面で構成されている。ジャケットリング15の内周側円錐面と各セグメント14の外周側円錐面とは、その円錐面に沿ってスライドし、(例えば、ほぞと蟻溝のような構成により)互いに離れないようになっている。これにより、ジャケットリング15が降下すれば、その内周側円錐面で各セグメント14の外周側円錐面を押圧し、外径側に広がった状態のセグメント14を、内径側で環状に連なった状態へと移動させることができる。
【0025】
上コンテナプレート16には、外周側下面に上スライド18が固定され、内周側下面に後述する上モールド21が固定されている。上コンテナプレート16自体は昇降ロッド8の下端に固定されている。これにより、昇降ロッド8が昇降すれば、上コンテナプレート16と共に、上モールド21及びセグメント14(セグメント14に固定されたセクターモールド20を含む)が昇降することになる。
【0026】
下コンテナプレート17には、外周側上面に下スライド19が固定され、内周側上面には後述する下モールド22が固定されている。下スライド19には、型締め時にセグメント14が載置され、径方向にスライド可能に支持する。下コンテナプレート17自体は下プラテン5の上面に固定されている。
【0027】
タイヤ加硫用モールド2は、セクターモールド20、上モールド(サイドモールド)21、及び下モールド(サイドモールド)22から構成されている。
【0028】
セクターモールド20は、グリーンタイヤGTのトレッド部を所定形状に加硫成形するための金型である。セクターモールド20はアルミ合金からなり、タイヤ周方向に複数に分割され(ここでは、9分割)、内径側に移動した状態で環状に連なる。
【0029】
上モールド21および下モールド22は、グリーンタイヤGTのサイド部を所定形状に加硫成形するための金型である。
【0030】
上モールド21は環状に形成されており、内周部には上ビードリング23が固定されている。上モールド21は上コンテナプレート16に固定されており、昇降ロッド8の昇降動作に伴って昇降する。降下する際、上ビードリング23でグリーンタイヤGTのビード部を押さえることができるようになっている。これにより、上モールド21の下内面と、上ビードリング23の下面とで、タイヤのサイド部とビード部とが形成される。
【0031】
下モールド22は、上モールド21と同様に環状に形成されており、内周部には下ビードリング24が固定されている。下モールド22の詳細な形状は、成形される空気入りタイヤATの構造を含めて後述する。
【0032】
図2(a)~
図2(f)は、本実施形態のタイヤ加硫用モールド2の型締め動作を示す部分断面図である。本実施形態では、前述の構成からなるタイヤ加硫用モールド2を装着された加硫成形機1にグリーンタイヤGTをセットし、金型を閉じた後、型締めしてグリーンタイヤGTの加硫成形を行う。なお、
図2(a)~
図2(f)では、図示を明瞭にするためタイヤ加硫用モールド2の詳細形状については省略している場合がある。
【0033】
図2(a)に示す型開き状態では、グリーンタイヤGTをその軸心方向が上下に向かうようにして下モールド22上に載置する。このとき、下方側に位置するビード部を下ビードリング24に対して位置合わせする。
【0034】
図2(b)に示すように、続いて、ブラダ13内に空気を供給して膨張させ、その外面でグリーンタイヤGTの内側面を保持する。これにより、グリーンタイヤGTは、下ビードリング24とブラダ13によって支持され、下モールド22とは非接触状態となる。
【0035】
図2(c)に示すように、続いて、昇降ロッド8及び昇降シリンダ7によって上モールド21及びセクターモールド20を降下させる。そして、上ビードリング23がグリーンタイヤGTの上方側に位置するビード部に当接する。
【0036】
図2(d)および
図2(e)に示すように、続いて、ビード部を介してグリーンタイヤGTが押圧されて変形した後、上モールド21がグリーンタイヤGTに当接する。上モールド21が型締め完了位置まで降下すると、グリーンタイヤGTは上モールド21と下モールド22とによって挟持された状態となる。
【0037】
図2(f)に示すように、上モールド21が型締め完了位置まで降下した後も昇降シリンダ7による降下を続行し、上プレート3と共にジャケットリング15を下方側へと移動させる。これにより、ジャケットリング15の内周側円錐面がセグメント14の外周側円錐面を押圧する。そして、セグメント14に固定されたセクターモールド20が内径側へと移動する。
【0038】
図2(a)から
図2(f)に示すようにして、型締めが完了した後、加硫成形が実行され、成形完了後にこれらの逆の動きによってタイヤ加硫用モールド2が開かれると、グリーンタイヤGTが製品である空気入りタイヤAT(
図3,4参照)となっている。
【0039】
図3は、
図1のタイヤ加硫用モールド2によって成形された空気入りタイヤATおよび成形に使用されたセクターモールド20及び下モールド22のタイヤ子午線方向における半断面図であり、タイヤ赤道線CLに対して一方側のみを示している。
図3では、タイヤ幅方向が符合TWで示され、タイヤ径方向が符合TRで示されている。
【0040】
空気入りタイヤATは、トレッド面102aを有するトレッド部102と、トレッド部102のタイヤ幅方向外側の両外端部102bに連なってタイヤ径方向内側に延びる一対のサイド部103と、各サイド部103の内径端に位置する一対のビード部104とを備えている。トレッド部102及びサイド部103の内側には、一対のビード部104の間に架け渡されるようにカーカスプライ105が配設されている。
【0041】
トレッド部102のカーカスプライ105のタイヤ径方向外側には、ベルト層106とベルト補強層107とが順に配設されており、この更に外側にトレッドゴム110が配設されている。カーカスプライ105の内側には、空気圧を保持するためのインナープライ108が配設されている。
【0042】
ビード部104は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア104aと、ビードコア104aに連設されてタイヤ径方向外側に延びる断面三角形状の環状のビードフィラー104bとを有する。
【0043】
サイド部103の外表面には、タイヤ最大幅位置Wよりもタイヤ径方向内径側に、環状のプロテクタ部114が形成されている。プロテクタ部114は、不図示のホイールに装着された状態でリムフランジを保護するように、タイヤ幅方向外側へ突出している。
【0044】
サイド部103のカーカスプライ105のタイヤ幅方向外側には、サイドゴム120が配設されている。本実施形態の空気入りタイヤATは、サイドゴム120の外径端部120aの上側にトレッド部102の外端部102bが配設された、いわゆるトレッドオーバーサイドウォール(TOS)構造とされている。
【0045】
プロテクタ部114の近傍において、サイド部103には、後述する識別標識表示部130が形成されている。また、タイヤ加硫用モールド2には、識別標識表示部130を形成するためのタイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート30(以降、単にステンシルプレート30ともいう。)が取り付けられている。本実施形態では、ステンシルプレート30は、下モールド22のタイヤ成形面22aに取り付けられている。なお、ステンシルプレート30は、セリアルプレートとも称される部品である。
【0046】
図4を参照して、空気入りタイヤATのサイド部103の表面には、識別標識表示部130が形成されている。
図4において、斜線を付された部分が識別標識表示部130であり、識別標識表示部130には、ステンシルプレート30によって刻印された識別標識が表示されている。従って、当該識別標識は、ステンシルプレート30と相補的な形状を有している。
【0047】
図5は、
図4に示す空気入りタイヤATの識別標識表示部130を拡大して示している。識別標識表示部130には、製品番号、製造年月日、およびメーカ名等の文字、数字、記号、および図形等からなる識別標識が刻印されている。本実施形態では、識別標識表示部130において、識別標識として、「AA74777」の文字および数字が刻印されている。当該識別標識により、例えば製造年月日を識別することができる。当該識別標識は、空気入りタイヤATの表面において凹状または凸状のいずれに形成されてもよい。また、当該識別標識の内容は、特に限定されない。
【0048】
図6は、
図3のステンシルプレート30の斜視図である。
図6では、識別標識に対応する文字および数字等を省略しているが、実際には図示の形状に加えて識別標識に対応する文字および数字等がステンシルプレート30の表面に付されている。
【0049】
ステンシルプレート30は、金属製の薄い板状体からなる。ステンシルプレート30の厚みは、例えば、0.4mm程度である。好ましくは、ステンシルプレート30の厚みは、0.2~2.0mm程度である。
【0050】
ステンシルプレート30は、平面視において概ね扇形状である。詳細には、ステンシルプレート30は、平面視において湾曲した対向する縁部31を有している。縁部31は、半円状の円弧部32によって接続されている。円弧部32には、ねじ止め用の円形孔33がそれぞれ設けられている。換言すると、円形孔33は、ステンシルプレート30の長手方向の両端部に設けられている。ステンシルプレート30は、円形孔33を介してタイヤ加硫用モールド2のタイヤ成形面22aにねじ止めされる。
【0051】
ステンシルプレート30は、板状体の全体に、折り曲げを抑制するための凹凸形状を付与した折り曲げ抑制構造34を備える。本実施形態では、折り曲げ抑制構造34は、複数の四角錐部34aからなる。
【0052】
複数の四角錐部34aは、全て均一形状であり、隙間なく形成されている。
図6では、ステンシルプレート30の一方の面(上面)のみが示されているが、ステンシルプレート30の厚みは一定であり、図示の面(上面)における凸部は、図示の反対面(下面)においては凹部となっている。なお、複数の四角錐部34aの数は特に限定されず、折り曲げを抑制できる数であればよい。また、複数の四角錐部34aに代えて、複数の三角錐部などの他の多角錐部を設けてもよい。
【0053】
このようなステンシルプレート30は、以下の工程で製造できる。
【0054】
まず、ステンシルプレート(板状体)30と同材質の金属板からステンシルプレート30の外形(本実施形態では概ね扇形)が型抜きされる。このとき同時に、ステンシルプレート30の長手方向両端部の円形孔33も型抜きされる。次に、折り曲げ抑制構造34に対応する形状(本実施形態では複数の四角錐部34a)がプレス加工によって形成される。そして、最後に識別標識に対応する文字や数字等がプレス加工によって形成される。
【0055】
本実施形態によれば、ステンシルプレート30が折り曲げ抑制構造34を備えるため、変形を抑制できる。特に、凹凸形状を付与された折り曲げ抑制構造34が板状体の全体に設けられているため、剛性の低い部分が存在せず、変形を好適に抑制できる。
【0056】
(第2実施形態)
図7に示す本実施形態のステンシルプレート30は、第1実施形態とは異なる折り曲げ抑制構造34を有している。折り曲げ抑制構造34に関する構成以外は、
図6の第1実施形態のステンシルプレート30の構成と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0057】
本実施形態のステンシルプレート30は、板状体の長手方向に直線状の凹部および凸部からなる折り曲げ抑制構造34を備える。図示の例では、実線で示す直線状の凸部34bと破線で示す直線状の凹部34cが交互に波状に形成されている。凸部34b及び凹部34cの数は特に限定されないが、それぞれ3~4個程度であってもよい。
【0058】
本実施形態によれば、折り曲げ抑制構造34がステンシルプレート30の長手方向に直線状の凹部および凸部からなるため、特にステンシルプレート30の長手方向の剛性を高めることができる。ステンシルプレート30にとって長手方向は折り曲げを受けやすい方向であるため、当該方向の剛性を高めることができることは有効である。
【0059】
(第3実施形態)
図8に示す本実施形態のステンシルプレート30は、第1,2実施形態とは異なる折り曲げ抑制構造34を有している。折り曲げ抑制構造34に関する構成以外は、
図6,7の第1,2実施形態のステンシルプレート30の構成と実質的に同じである。従って、第1,2実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0060】
本実施形態のステンシルプレート30は、湾曲した対向する縁部31と同じ曲率で湾曲した曲線状の凹部34dおよび凸部34eからなる折り曲げ抑制構造34を備える。図示の例では、実線で示す曲線状の凸部34eと破線で示す曲線状の凹部34dが交互に波状に形成されている。凸部34e及び凹部34dの数は特に限定されないが、それぞれ3~4個程度であってもよい。
【0061】
本実施形態によれば、折り曲げ抑制構造34がステンシルプレート30の概ね長手方向に延びる凹部34dおよび凸部34eからなるため、特にステンシルプレート30の長手方向の剛性を高めることができる。ステンシルプレート30にとって長手方向は折り曲げを受けやすい方向であるため、当該方向の剛性を高めることができることは有効である。
【0062】
上記各実施形態のように、様々な形状の折り曲げ抑制構造34によってステンシルプレート30の剛性を向上させることができ、ステンシルプレート30の変形を好適に抑制できる。
【0063】
(各実施形態の変形例)
図9~11を参照して、第1~第3実施形態のステンシルプレート30の変形例について説明する。
【0064】
上記第1~第3実施形態では、折り曲げ抑制構造34の凹凸密度が均一に形成されているが、折り曲げ抑制構造34の凹凸密度は均一でなくてもよい。好ましくは、折り曲げ抑制構造34は、ステンシルプレート(板状体)30の長手方向の中央部分の凹凸密度が他の部分よりも高い。ここで、凹凸密度とは、単位面積当たりの凹凸の数をいう。
【0065】
図9~11の例では、ステンシルプレート(板状体)30の長手方向の中央部分として長手方向全体の1/3程度の部分の凹凸密度が他の部分の約2倍となっている。ただし、凹凸密度の変化は、2倍でなくてもよく、1倍以上の任意の値をとり得る。
【0066】
図9~11の変形例によれば、ステンシルプレート30において最も変形しやすい部分である板状体の長手方向の中央部分の剛性を向上できるため、ステンシルプレート30の変形を一層抑制できる。
【0067】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えばステンシルプレート30の形状は特に限定されず、任意の形状であり得る。ステンシルプレート30の形状は、例えば平面視において矩形状であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…加硫成形機
2…タイヤ加硫用モールド
3…上プレート
4…上プラテン
5…下プラテン
6…コンテナ
7…昇降シリンダ
8…昇降ロッド
9…ブラダユニット
10…支軸
11…上クランプ
12…下クランプ
13…ブラダ
14…セグメント
15…ジャケットリング
16…上コンテナプレート
17…下コンテナプレート
18…上スライド
19…下スライド
20…セクターモールド
21…上モールド(サイドモールド)
22…下モールド(サイドモールド)
22a…タイヤ成形面
23…上ビードリング
24…下ビードリング
30…ステンシルプレート(タイヤの識別標識刻印用ステンシルプレート)
31…縁部
32…円弧部
33…円形孔
34…折り曲げ抑制構造
34a…四角錐部
34b,34e…凸部
34c,34d…凹部
102…トレッド部
103…サイド部
104…ビード部
104a…ビードコア
104b…ビードフィラー
105…カーカスプライ
106…ベルト層
107…ベルト補強層
108…インナープライ
110…トレッドゴム
114…プロテクタ部
120…サイドゴム
120a…外径端部
130…識別標識表示部
GT…グリーンタイヤ
AT…空気入りタイヤ