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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】減圧式濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/30 20060101AFI20230606BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20230606BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B01D35/30
B01D29/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019177098
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053548
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232885
【氏名又は名称】株式会社ロキテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆司
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142709(JP,A)
【文献】中国実用新案第203816312(CN,U)
【文献】実開昭57-59343(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 35/30
B01D 24/00
B01D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングとそのポンプハウジングの内部にポンプを有するポンプユニットと、
内部に濾過を行う液体である濾過前液の貯蔵が可能な濾過前液リザーバと、
内部に前記濾過前液を濾過した濾過後液の貯蔵が可能な濾過後液リザーバであって、前記ポンプハウジングの上側に前記ポンプハウジングと接続し、前記濾過前液リザーバの下側に接続可能な濾過後液リザーバとを備える濾過装置であって、
前記濾過後液リザーバは、前記濾過後液リザーバの内部を、前記濾過後液の前記貯蔵を行う貯蔵部と、前記ポンプの吸気口と連通する排気部と、に画定する隔絶部材を有し、
前記濾過後液リザーバは、前記貯蔵部と外部とを連通させる貯蔵部脱気口を前記貯蔵部の側面に、前記排気部と外部とを連通させる排気口を前記濾過後液リザーバの前記排気部の側面に、それぞれ有し、
前記濾過後液リザーバは、前記濾過後液リザーバを保持可能であって、内部に排気管路を有する取手を備え、
前記取手は、第一位置において、前記排気管路の一端が前記貯蔵部脱気口と、前記排気管路の他端が前記排気口と、の接続を行って、前記ポンプにより前記貯蔵部の減圧が可能である濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載した濾過装置であって、
前記取手は、前記第一位置から第二位置に移動可能であって、前記第二位置において、前記排気管路の一端の前記貯蔵部脱気口との前記接続と、前記排気管路の他端の前記排気口との前記接続と、の少なくとも一方を解除して、前記ポンプによる前記貯蔵部の前記減圧を停止する濾過装置。
【請求項3】
請求項2に記載した濾過装置であって、
前記取手の前記第二位置は、前記貯蔵部脱気口を大気開放する位置である濾過装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載した濾過装置であって、
前記取手の前記第二位置は、前記排気口を大気開放する位置である濾過装置。
【請求項5】
請求項2に記載した濾過装置であって、
前記取手の前記第一位置と前記第二位置との間の移動は、前記濾過後液リザーバの深さ方向に沿った移動である濾過装置。
【請求項6】
請求項2に記載した濾過装置であって、
前記取手の前記第一位置と前記第二位置との間の移動は、前記濾過後液リザーバの側面に垂直な軸周りの回転移動である濾過装置。
【請求項7】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載した濾過装置であって、
前記排気管路には液溜り部と前記液溜り部の内に配置される浮遊部材とを有し、前記排気管路に前記濾過後液が混入した際には前記濾過後液が前記液溜り部に溜まって前記浮遊部材が前記液溜り部の前記液体により浮上して前記吸気口に至る前記排気管路を閉止する濾過装置。
【請求項8】
請求項7に記載した濾過装置であって、
前記取手の前記排気管路は、前記第一位置において、鉛直方向に延在する鉛直方向管路を含み、前記液溜り部は前記鉛直方向管路の下部に配置されている濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、減圧と減圧の停止とを切り替えが可能な減圧式濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の濾過では、加圧手段により、その液体の背圧を高めて流動させ、フィルタを通過させて濾過を行う加圧式の濾過装置が一般的である。このような濾過装置では、一般に、液体が流れる流れ回路を管路で構成される。これに対し、たとえば特許文献1に開示されるように、その液体の濾過後の濾過液を貯蔵する容器の内圧を減圧して、その容器内に液体を吸引する際にフィルタを通過させて濾過を行う減圧式の濾過装置がある。このような装置では、一般に、濾過すべき液体を入れる容器と、濾過後の濾過液を貯蔵する容器と、その濾過液を貯蔵する容器を減圧する手段と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、試料容器と濾過液貯蔵瓶との間に配置される試料フィルタを介して濾過を行い、濾過された濾過液は濾過液貯蔵瓶の中に導入される濾過システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2008/144083号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減圧式の濾過装置では簡易な構成で減圧部の密閉度を上げる必要がある。また、濾過液が集められる箇所を減圧手段により減圧する必要があるため、濾過液が減圧手段に入り込んでしまう問題がある。この状態において、簡易な構造で、減圧と減圧の停止とを切り替える構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポンプハウジングとそのポンプハウジング内部にポンプを有するポンプユニットと、内部に濾過を行う液体である濾過前液の貯蔵が可能な濾過前液リザーバと、内部に前記濾過前液を濾過した濾過後液の貯蔵が可能な濾過後液リザーバであって、前記ポンプハウジングの上側に前記ポンプハウジングと接続し、前記濾過前液リザーバの下側に接続可能な濾過後液リザーバとを備える濾過装置であって、前記濾過後液リザーバは、前記濾過後液リザーバの内部を、前記濾過後液の前記貯蔵を行う貯蔵部と、前記ポンプの吸気口と連通する排気部と、に画定する隔絶部材を有し、前記濾過後液リザーバは、前記貯蔵部と外部とを連通させる貯蔵部脱気口を前記貯蔵部の側面に、前記排気部と外部とを連通させる排気口を前記濾過後液リザーバの前記排気部の側面に、それぞれ有し、前記濾過後液リザーバは、前記濾過後液リザーバを保持可能であって、内部に排気管路を有する取手を備え、前記取手は、第一位置において、前記排気管路の一端が前記貯蔵部脱気口と、前記排気管路の他端が前記排気口と、の接続を行って、前記ポンプにより前記貯蔵部の減圧が可能である濾過装置により解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、簡易な構造で、減圧状態と、減圧停止状態との切り替えが可能な減圧吸引式の濾過装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の濾過装置の実施の形態の斜視図を示している。
図2図1の断面2-2を示した図であって、本発明の濾過装置の断面であって、取手が第一位置(減圧状態)にある状態を示している。
図3】本発明の濾過装置の断面であって、取手が第二位置(減圧停止状態)にある状態を示している。
図4図2の断面4-4を示した図である。
図5A】本発明の濾過装置の実施の形態の管路遮断装置の図であって管路を遮断していない状態を示している。
図5B】本発明の濾過装置の実施の形態の管路遮断装置の図であって管路を遮断した状態を示している。
図5C】本発明の濾過装置の実施の形態の他の形状の管路遮断装置の図である。
図6】本発明の濾過装置の実施の形態であって、取手が第二位置にある状態における他の実施の形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、図1から図4を参照して、本発明の実施の形態の濾過装置1について説明する。図1は本発明の濾過装置1の断面を示した図である。図2は、図1の断面2-2を示した図であって、減圧状態の濾過装置1の断面を示した図である。図3は、減圧停止状態の濾過装置1の断面を示した図である。図4は、図1の断面4-4を示した図である。図5Aから図5Cは、本発明の濾過装置1において、濾過後の液体がポンプ内に流れ込まないように排気経路を遮断する仕組みを示した図である。
【0010】
まず、図1に示すように、濾過装置1は、ポンプユニット11と、濾過後液リザーバ12と、濾過前液リザーバ13とを備えている。ここで、本明細書では、濾過を行う液体を「濾過前液」とよび、その濾過前液を濾過した液体を「濾過後液」とよぶ。濾過前液リザーバ13は濾過後液リザーバ12の上側に位置するように濾過後液リザーバ12と密閉接続が可能であって、濾過後液リザーバ12はポンプユニット11の上側に位置するようにポンプユニット11と密閉接続が可能である。ポンプユニット11と、濾過後液リザーバ12と、濾過前液リザーバ13とのそれぞれは、下からポンプユニット11、濾過後液リザーバ12、濾過前液リザーバ13の順に鉛直方向に積み上げ可能な、断面が同一形状の柱状体である。ポンプユニット11と、濾過後液リザーバ12と、濾過前液リザーバ13とのそれぞれの断面は、四角形を代表とする多角形であってもよい。これらを鉛直方向に積み上げると、多角柱形状となる。特に、代表的で好ましい例では、断面は円形であり、この場合では、ポンプユニット11と、濾過後液リザーバ12と、濾過前液リザーバ13とのそれぞれは同心の円柱状であり、これらを鉛直方向に積み上げると、濾過装置1の全体的形態も円柱状となる。この明細書では、これを例として、以下説明を行う。また、ここで、ポンプユニット11、濾過後液リザーバ12、濾過前液リザーバ13の順に鉛直方向に積み上げられた状態におけるこれらの円柱形状の中心を濾過装置1の中心軸CLとする。中心軸CLが延在する方向は、濾過後液リザーバ12、濾過前液リザーバ13の深さ方向となる。
【0011】
ポンプユニット11は、断面が所定の半径を有する円形である外形を有し、内部が中空の円筒形状のポンプハウジング111からなる。ポンプハウジング111の内部には、真空ポンプなどの脱気用のポンプ112が内蔵されている。ポンプハウジング111の上側にはポンプハウジング111の上面から隆起するように形成される突起113を備えていて、突起113の頂上部にはポンプ112の吸気ラインへと連通する吸気口113aを備えていて、ポンプ112により、吸気口113aから空気を吸い込んで外部環境に排出する。ポンプハウジング111の外周はポンプハウジング111の上面から円筒状に壁面21aが立ち上がっており、この壁面21aによりポンプハウジング111の上面には一定の容積の空間が形成されている。ポンプハウジング111の上面には、例えばほぼ中央部に、隆起するように形成される突起113を有しているので、その空間は突起113の根本の周りに形成され、その空間は、ポンプハウジング111の上面を底部とする液溜りとしてのトラップ114として機能する。すなわち、排気部121bに導かれた気体に含まれるミスト状に細かい液滴などの液体成分は、その気体が吸気口113aに引き込まれるとともに、突起113に衝突して液化する。液体となって突起113から流れだした液体は液溜りであるトラップ114に流れ込むようにして、脱気用のポンプ112内に液体成分が侵入することを防いでいる。ポンプハウジング111の壁面111aの端部にはフランジ1153を有している。
【0012】
濾過後液リザーバ12は、代表的には、断面がポンプユニット11の断面の径と同一の径である円形である外形を有し、内部が中空の円筒形状である濾過後液リザーバハウジング121で形成される。濾過後液リザーバハウジング121の両端にはそれぞれは開口を有していて、濾過前液リザーバ13と接続する側の一端にはフランジ1253を、反対の端部であるポンプユニット11と接続する側の端部にはフランジ1251を有している。濾過後液リザーバ12は、ポンプハウジング111の上側に位置するように、濾過後液リザーバ12のフランジ1251とポンプハウジング111のフランジ1153とが突きあって接触可能である。また、濾過後液リザーバ12のフランジ1251とポンプハウジング111のフランジ1153の断面は、少なくとも外径寸法が同じであり、さらには共通の形状である。濾過後液リザーバ12のフランジ1251とポンプハウジング111のフランジ1153は、それぞれの本体からフランジの径分だけ外側に突出している形状である。そして、ここで、この径を内径としてフランジ1251とフランジ1153との両方を包み込むような袋状の環状のシール部材5を用意する。シール部材5が、濾過後液リザーバ12とポンプハウジング111との両方のフランジを包み込むように挟んで、濾過後液リザーバハウジング121がポンプハウジング111の上側に位置するように、ポンプハウジング111と濾過後液リザーバハウジング121との間で密閉した接続が可能である。シール部材5の材料は、たとえばゴムなどの樹脂である。すなわち、ポンプユニット11のポンプハウジング111と濾過後液リザーバ12との密閉接続は、ポンプユニット11のポンプハウジング111の端面と濾過後液リザーバ12との端面とを包み込むことが可能な環状のシール部材5により行われる。
【0013】
濾過後液リザーバ12は、その内部の中空の部分に隔絶部材122が配置されている。隔絶部材122は、濾過後液リザーバ12の内面の円周の全面と接続して、液体の貯蔵を行う貯蔵部121aと、ポンプハウジング111の吸気口113aと連通する排気部121bとを、濾過後液リザーバ12の底部に画定している。排気部121bにおいて隔絶部材122と反対側は開口を形成してポンプユニット11の上面側が排気部121b内に露出するようになっている。貯蔵部121aと排気部121bとは連通しない。隔絶部材122は、濾過後液リザーバ12の円筒形状の中心軸に対して垂直でもよいし、図1に示すように傾いていてもよい。濾過後液リザーバ12とポンプハウジング111とがシール部材5により密閉接続した際には、隔絶部材122とポンプハウジング111(ポンプハウジング111の上面(トラップ114))と濾過後液リザーバ12の濾過後液リザーバハウジング121の内面とポンプハウジング111の内面によって囲まれる空間が排気のための容積をもった空間として排気部121bが形成される。
【0014】
濾過前液リザーバ13は、断面が濾過後液リザーバ12の断面の径と同一の径である円形である外形を有し、内部が中空の円筒形状である濾過前液リザーバハウジング131で形成される。濾過前液リザーバハウジング131の底部131aには濾過前の液体を濾過するフィルタ134と、フィルタ134を通過した濾過液を濾過後液リザーバ12へと吐出する吐出口132とを有している。吐出口132がある側の濾過前液リザーバ13の端部が濾過後液リザーバハウジング121の端部と対向する。濾過前液リザーバ13の濾過前液リザーバハウジング131の端部の少なくとも一方はフランジ1351を有している。これに対応する濾過後液リザーバ12の濾過後液リザーバハウジング121の端部31a側にもフランジ1253を有している。濾過前液リザーバ13の濾過前液リザーバハウジング131のフランジ1351と、濾過後液リザーバ12の濾過後液リザーバハウジング121のフランジ1253とは、少なくとも外径寸法が同じであり、さらには共通の形状である。濾過前液リザーバ13は、濾過後液リザーバハウジング121の上側に位置するように、濾過後液リザーバ12のフランジ1253と濾過前液リザーバハウジング131のフランジ1351とが突き合うように接触可能である。濾過後液リザーバハウジング121のフランジ1253と濾過前液リザーバハウジング131のフランジ1351の断面は、径が同一で同心の環状形状である。濾過後液リザーバハウジング121の端部側のフランジ1253と濾過前液リザーバハウジング131のフランジ1351は、それぞれの本体からそれぞれのフランジの幅の分だけ外側に突出している形状である。そして、ここで、この径を内径としてフランジ1253とフランジ1351とを包み込むような袋状の環状のシール部材5を用意する。シール部材5が、濾過後液リザーバハウジング121と濾過前液リザーバハウジング131との両方のフランジを包み込むように挟んで、濾過前液リザーバハウジング131が濾過後液リザーバハウジング121の上側に位置するように、濾過後液リザーバハウジング121と濾過前液リザーバハウジング131との間で密閉した接続が可能である。濾過後液リザーバ12の隔絶部材122と濾過後液リザーバ12の内面と濾過前液リザーバ13の底部131aとにより画定される貯蔵部121aが、その内部に濾過後の液体の貯蔵が可能である。濾過液を濾過後液リザーバ12へと吐出する吐出口132は、濾過後液リザーバ12の内部である濾過液の貯蔵部121aに位置するように濾過前液リザーバ13の底部131aから突出している。吐出口132には、濾過後液リザーバ12の圧力を減圧して、所定の圧力以下になったときに濾過された濾過後液を吐出する吐出バルブ133を備えている。以下、濾過前液リザーバ13が濾過後液リザーバ12と密閉接続している状態、かつ濾過後液リザーバ12とポンプユニット11とが密閉接続している状態で説明する。シール部材5の材料は、たとえばゴムなどの樹脂である。すなわち、濾過後液リザーバ12と濾過前液リザーバ13との密閉接続は、濾過後液リザーバ12の端面と濾過前液リザーバ13の端面とを包み込むことが可能な環状のシール部材5により行われる。
【0015】
濾過後液リザーバ12は、貯蔵部121aの壁面に、貯蔵部121aから外部に貫通する連通孔である貯蔵部脱気口12aを、また排気部121bの壁面に、排気部121bから外部に貫通する連通孔である排気口12bと、を有している。貯蔵部脱気口12aは濾過前液リザーバ13に近い側の濾過後液リザーバ12の端部近傍に配置され、排気口12bは、濾過前液リザーバ13から遠い側(ポンプユニット11に近い側)の濾過後液リザーバ12の端部の側に配置される。貯蔵部脱気口12aと、排気口12bとを、排気管路7により接続することで、貯蔵部121aから排気部121bとを経由してポンプ112に至る貯蔵部121a内の空気を排気する経路が画定される。この状態で、ポンプ112が稼動すると吸気口113aから排気部121bがまず減圧され、排気管路7を経由して濾過後液リザーバ12の貯蔵部121aが続いて減圧されると、大気開放される濾過前液リザーバ13の濾過前液が減圧された濾過後液リザーバ12に向かって差圧により引き込まれて、フィルタ134を通過して濾過されて濾過後液リザーバ12の貯蔵部121aに至る。
【0016】
濾過後液リザーバ12は取手6を配置して、排気管路7はこの取手6の内部に穿設される。取手6は、ユーザが、濾過後液リザーバ12を容易に運搬できるように配置される取手である。濾過のプロセスの実行および停止はポンプ112の動作およびその停止により管理することができるが、たとえば、貯蔵部121aと排気部121bとを隔絶することにより濾過のプロセスの実行および停止を行うこともできる。たとえば、図2および図3のように、濾過後液リザーバ12の深さ方向である中心軸方向に沿って取手6を摺動可能に(移動可能に)取り付ける。このとき、図2の状態(第一状態)では、排気管路7と貯蔵部脱気口12aとが接続することにより、貯蔵部121aと排気管路7とが連通する。この位置において、排気管路7と排気口12bとが合致するように設定され、排気管路7と排気口12bとが接続して、排気管路7と排気部121bとが連通するようになっている。この第一状態では、まず排気部121bが減圧され、その減圧により貯蔵部脱気口12aと連通する排気管路7が続いて減圧されて、最終的に貯蔵部121aの内部が減圧される減圧状態である。貯蔵部121a内の空気は、貯蔵部121aから排気管路7を通って排気部121bを介してポンプ112により排気される。
【0017】
続いて、図3の状態(第二状態)のように、取手6を濾過後液リザーバ12の中心軸方向である深さ方向に沿って、摺動により移動させる。第一状態では、貯蔵部脱気口12aと排気管路7とが合致していたところ、この移動により、第二状態においては、貯蔵部脱気口12aと排気管路7との位置と、排気管路7と排気部121bとの位置との、少なくとも一方が合致しないように設定される。図3では、第二状態としては、貯蔵部脱気口12aと排気管路7との位置と、または排気管路7と排気部121bとの位置との両方が合致しないように示しているが、少なくとも一方が合致しない状態としておく。このように、濾過後液リザーバ12の取手6を濾過後液リザーバ12に対して移動可能とすることで、簡易に、貯蔵部脱気口12aと排気口12bとが排気管路7を介して連通しないで第一状態を解除する非連通状態を作り出すことができる。この際には、濾過後液リザーバ12の貯蔵部121aは、ポンプ112によっては減圧されない減圧停止状態すなわち非減圧状態(第二状態)となる。このように、本願発明においては、取手6を濾過後液リザーバ12の運搬のみならず、濾過装置1の減圧と減圧停止との間を切り替えるスイッチとして機能させることもできる。連通状態においては、排気管路7と貯蔵部脱気口12aとの間に、また排気管路7と排気口12bとの間に、シール部材を配置して、密閉することが可能なようにしておくことが好ましい。
【0018】
取手6の上記移動は、この実施例のように、たとえば、ポンプユニット11のポンプハウジング111と、濾過後液リザーバ12の濾過後液リザーバハウジング121と、濾過前液リザーバ13の濾過前液リザーバハウジング131とが組み合った際の中心軸CLの方向にそって摺動するような形態(図1図3)とすることが可能である。ただし、この移動の形態には限られず、たとえば、上記中心軸CLと直交する軸周りに回転するような形態でもよい。排気管路7と貯蔵部脱気口12a,3bとが連通する連通状態、すなわち排気状態(第一状態)と、連通しない非連通状態、すなわち非排気状態(第二状態)とが、取手6の移動により喚起される限り、取手6の移動の方向、移動の形態は限定されない。
【0019】
また、運用上、汚染を防止するために、濾過後液が吐出口132の下側になるように、濾過前液リザーバ13の中の液体を管理する。たとえば、濾過後液が吐出口132に至った段階で、ポンプ112を自動停止するような形態が考えられる。この前提で、排気管路7と貯蔵部121aとが連通する貯蔵部脱気口12aを吐出口132よりも上側に配置することにより、貯蔵部脱気口12aに濾過液が入り込むことを防止することができる。また、貯蔵部脱気口12aへの濾過後液の浸入を防ぎつつ、より多くの濾過液を回収するためには、極力、貯蔵部脱気口12aは濾過装置1の中心軸に沿って鉛直方向の上側に設置されることが望ましい。
【0020】
さらに、上記のように、濾過後液リザーバ12の取手6を濾過後液リザーバ12に対して移動させて、貯蔵部脱気口12aと排気口12bとの少なくとも一方と排気管路7とが合致しない非連通状態とした際に、排気管路7と貯蔵部121aとが連通する貯蔵部脱気口12aおよび/または排気口12bとを大気開放となるように連通部を配置することができる。すなわち、排気管路7と貯蔵部脱気口12aが連通していないときには、貯蔵部脱気口12aが外部に対して露出されて貯蔵部121aが大気開放状態となる。排気管路7と排気口12bとが連通していないときには、排気口12bが外部に対して露出されて排気部121bが大気開放状態となる。また、排気管路7と貯蔵部脱気口12aと排気口12bとの位置関係を、貯蔵部脱気口12aが外部に対して露出されて貯蔵部121aが大気開放状態となる状態と、排気口12bが外部に対して露出されて排気部121bが大気開放状態となる状態とが同時に起こるように設定してもよい。これにより、第二状態において、貯蔵部121aを排気の停止と同時に大気開放にすることが可能となる。また、排気管路7と貯蔵部脱気口12aが連通しているときには排気管路7と排気口12bとも連通する第一状態が形成され、逆に排気管路7と貯蔵部脱気口12aが連通していないときには、排気管路7と排気口12bとも連通せずに大気開放になるような第二状態が形成される。ポンプ112が稼動状態においては、取手6を第一状態とすることで排気管路7と貯蔵部脱気口12aと排気口12bとを連通させれば貯蔵部121aと排気部121bとが連通して濾過プロセスが進行する。一方、取手6を排気管路7が、貯蔵部脱気口12aと排気口12bと連通しない位置に移動させれば貯蔵部121aと排気部121bとの連通が断たれ、貯蔵部脱気口12aおよび/または排気口12bとが大気開放となって濾過のプロセスの停止とともに、簡易に貯蔵部121aおよび/または排気部121bの内部を大気環境に戻すことが可能となる。排気管路7が貯蔵部脱気口12aと連通せずに大気開放になる第二状態となることで、濾過後液リザーバ12と濾過前液リザーバ13とが引き合う力が減少して、濾過後液リザーバ12と濾過前液リザーバ13とを容易に分離できる。また、排気管路7が排気口12bと連通せずに大気開放になる第二状態では、ポンプ112がたとえ動作していても、排気部121bが大気開放になっているため、ポンプユニット11と濾過後液リザーバ12とが引き合う力が減少して、ポンプユニット11と濾過後液リザーバ12とを容易に分離できる。
【0021】
排気管路7と貯蔵部121aとが連通する貯蔵部脱気口12aを吐出口132よりも上側に配置することになどで、貯蔵部脱気口12aに濾過液が入り込むことを原則防止することができるが、例えば、排気管路7内に濾過液が混入してしまうことが考えられる。濾過液は細かい液滴またはミストの状態で排気管路7に入るため、排気部121bに侵入する可能性がある。そのため、前記のとおり、排気部121bにおいて、突起113とトラップ114とで、ポンプ112への液体成分の侵入を防いでいる。これに加えて、本実施の形態では、さらに、排気管路7に一定量の液体が混入した際に、排気管路7を閉止して内部の気体の流れを遮断するような管路遮断装置8を配置している。以下、図5A図5Bを参照して、管路を閉止する管路遮断装置8について詳しく説明する。
【0022】
管路遮断装置8は排気管路7中に配置される。管路遮断装置8は、液溜り部8aと浮遊部材8bとからなる。排気管路7は、第一排気管路7aと、第一排気管路7aと連通する第二排気管路7bと、第二排気管路7bと連通する第三排気管路7cとからなる。上記の貯蔵部脱気口12aと接続する部分は第一排気管路7aであって、排気口12bと接続する部分は第三排気管路7cである。第一排気管路7aと第三排気管路7cとは水平方向に穿設され、第二排気管路7bは鉛直方向に延在する鉛直方向管路であって、その両端がそれぞれ、第一排気管路7aと第三排気管路7cと連通するようになっている。管路遮断装置8は、第二排気管路7bは鉛直方向の下方端部に、第二排気管路7bと第三排気管路7cとの間に配置される。すなわち、液溜り部8aは、排気管路7が直角に向きを変化させる位置に配置され、かつ液を受容可能な窪みである。第二排気管路7bと第三排気管路7cとの交点は鉛直方向に延在する第二排気管路7bの最下部にあたり、重力の効果と、第二排気管路7bで加速した気体が第三排気管路7cに衝突することで、液溜り部8a付近で気体中の液体成分が液化しやすくなり、排気管路7の液状の濾過液が液溜り部8aに溜まりやすくなる。
【0023】
液溜り部8aの内には浮遊部材8bを配置する。浮遊部材8bは濾過する液体よりも比重が小さい材料でできた部材である。形状は、代表的には、球体である。排気管路7に液体が入り込んでいないときには、液溜り部8aの大きさは、排気管路7の経路上において、浮遊部材8bが気体の流れの障害とならないような大きさに設定しておく(図5A)。すなわち、浮遊部材8bが気体の流れを阻害することなく、第二排気管路7bから第三排気管路7cへと気体が流れる流路から浮遊部材8bが外れるような大きさおよび形状としておく。そして、液体状態または気体に混じったミスト状態で気体に含まれる液が排気管路7、すなわち第二排気管路7bへと侵入した際には、それが液化して液溜り部8aに溜まる。液溜り部8aに液が溜まるにつれ、浮遊部材8bが液に浮いて、液面の上昇とともに浮上する。浮遊部材8bは液溜り部8aの液体の量にしたがって浮上高さが高くなる。液溜り部8aと浮遊部材8bとの大きさと形状は、液溜り部8aに所定の量の液体が溜まった際には吸気口113aに至る排気管路7を浮遊部材8bが完全に遮る状態(図5B)となるように設定する。これにより、所定の量の液体が液溜り部8aに溜まった段階で、浮遊部材8bは液溜り部8aの最上部に阻害位置に位置して、第二排気管路7bから第三排気管路7cへの流路をふさぐ。第三排気管路7cへ気体が流れないことにより、貯蔵部121aから排気部121bに至る排気管路7を遮断することができる。これにより、液体が吸気口113aからポンプ112内に至ることを防止することが可能となる。
【0024】
管路遮断装置8の浮遊部材8bの移動方向は液溜り部8aの内側の壁面形状によって定まる。たとえば、一の実施の形態では、図5Aおよび図5Bに示すように、浮遊部材8bの移動方向は第二排気管路7bと第三排気管路7cとがなす角を二分するように設定される。たとえば、第二排気管路7bと第三排気管路7cとが直角である場合には、図5Aおよび図5Bのように、浮遊部材8bの移動方向を水平方向に対して45度の角度に設定する。この場合、液溜り部8aの中心軸が第三排気管路7cに対して45度の角度となるように設定する。そして、この液溜り部8aの中心軸周りに浮遊部材8bのほぼ直径と等しい壁面を設ける。ただし、図5Cに示すように、浮遊部材8bの移動方向は第二排気管路7bと同じく鉛直方向に設定しても良い。図5Cはこの形態の管路遮断装置8である。図5Cでは、排気管路7を遮断していない状態の浮遊部材8bを実線で示し、排気管路7を遮断している状態の浮遊部材8bを破線で示している。この場合には、浮遊部材8bの移動方向を鉛直方向に設定する。そして、この液溜り部8aの中心軸周りに浮遊部材8bのほぼ直径と等しい壁面を設ければよい。この形態であっても、排気管路7に液体が入り込んでいないときには、液溜り部8aの大きさは、排気管路7の経路上において、浮遊部材8bが気体の流れの障害とならないような大きさに設定し(図5Cの実線)、液溜り部8aに所定の量の液体が溜まった際には排気管路7を浮遊部材8bが完全に遮る状態(図5Cの破線)となるように設定すればよい。
【0025】
上記説明した実施の形態では、取手6は、濾過後液リザーバ12の中心軸方向である深さ方向に沿って摺動する例を示した。しかし、取手6の移動方向はこれに限らず、減圧状態(第一状態)と非減圧状態(第二状態)との間の状態変更をできる限り取手6の移動方向は自由に設定できる。たとえば、図6に示すように、取手6を濾過後液リザーバ12の壁面に垂直な面の法線方向まわりに回転可能な枢軸部を配置して、濾過後液リザーバ12の壁面に垂直な面の法線方向まわりに回転移動させることにより減圧状態となる(第一状態)と非減圧状態(第二状態)とを実現するように設定することができる。たとえば、図6では、実線で示した取手6が第一状態であり、一点鎖線で示した取手6が第二状態となるように設定してもよい。さらに、図には示していないが、取手6を濾過後液リザーバ12の表面上に沿って摺動させる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 濾過装置
11 ポンプユニット
12 濾過後液リザーバ
13 濾過前液リザーバ
5 シール部材
111 ポンプハウジング
112 ポンプ
113 突起
113a 吸気口
121 濾過後液リザーバハウジング
122 隔絶部材
121a 貯蔵部
121b 排気部
6 取手
7 排気管路
7a 第一排気管路
7b 第二排気管路
7c 第三排気管路
8 管路遮断装置
8a 液溜り部
8b 浮遊部材
131 液体リザーバハウジング
132 吐出口
133 吐出バルブ
134 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6