IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキョーニシカワ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図1
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図2
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図3
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図4
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図5
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図6
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図7
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図8
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図9
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図10
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図11
  • 特許-自動車用リッドシール構造 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】自動車用リッドシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20230606BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230606BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20230606BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
F02M37/00 301Q
F16J15/10 N
F16J15/10 S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019177725
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054186
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】上本 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信嗣
(72)【発明者】
【氏名】小川 大夢
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0161462(US,A1)
【文献】特開2017-155449(JP,A)
【文献】実開昭62-166135(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101686(US,A1)
【文献】実開昭57-027121(JP,U)
【文献】特開2006-206042(JP,A)
【文献】実開昭62-080721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
B60K 1/04
F02M 37/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に設けられ、給油口または給電口が配置される凹状の収容部(11)を有するハウジング(10)と、
前記収容部(11)の開口を開閉するリッド(20)と、
前記リッド(20)を支持するとともに、基端側が前記ハウジング(10)に対して回動可能に取り付けられたアーム(30)と、
前記リッド(20)と前記ハウジング(10)との間をシールするシール材(4)とを備え
前記シール材(40)が前記ハウジング(10)の周縁部に環状をなすように設けられた自動車用リッドシール構造において、
前記ハウジング(10)の周縁部には、前記リッド(20)の裏面と対向するように配置されるフランジ部(12)が設けられ、
前記フランジ部(12)における前記リッド(20)の裏面と対向する面には、当該フランジ部(12)の幅方向中間部に、前記シール材(40)の基部(41)が配置される基部形成用凹部(12a)が周方向に長く形成され、
前記シール材(40)の基部(41)は、前記基部形成用凹部(12a)の内面に固着され、
前記シール材(40)は、前記フランジ部(12)から前記リッド(20)へ向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向外方に位置するように形成されていることを特徴とする自動車用リッドシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用リッドシール構造において、
前記ハウジング(10)の周縁部には、外方へ突出して環状に延び、車体パネルに接触する外周側弾性材(50)が設けられ、
前記シール材(40)と前記外周側弾性材(50)とは前記ハウジング(10)の周縁部に一体成形されていることを特徴とする自動車用リッドシール構造。
【請求項3】
請求項に記載の自動車用リッドシール構造において、
前記リッド(20)を閉状態で保持するロック装置(60)を備え、
前記リッド(20)が閉状態にあるとき、前記リッド(20)における前記アーム(30)により支持された側とは反対側と、前記フランジ部(12)との間には、撓み変形した前記シール材(40)が収容可能な収容空間(S)が形成されることを特徴とする自動車用リッドシール構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の自動車用リッドシール構造において、
前記ハウジング(10)の周縁は、前記シール材(4)の内周側に環状をなすように設けられるとともに、当該ハウジング(10)から前記リッド(20)向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向内方に位置するように形成された補助シール材(45)を備えていることを特徴とする自動車用リッドシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフューエルリッドや給電口リッドに設けられる自動車用リッドシール構造に関し、特に弾性変形可能なシール材を有する構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車には、燃料を給油するための給油口が配置される凹部を有するハウジングと、そのハウジングの開口を開閉するリッドとが設けられており、リッドはアームによって車体に対して回動自在に支持されている。アームの開閉動作によってリッドがハウジングの開口を閉じた状態と、開口を開いた状態とに切り替えられるようになっている。
【0003】
また、例えばプラグインハイブリッド自動車や電気自動車には、充電ケーブルのコネクタを接続するための給電口が車体に設けられている。この場合も給油口と同様に、給電口が配置される凹部を有するハウジングと、そのハウジングの開口を開閉するリッドとが設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、給油口のリッドシール構造として、ハウジングの周縁部に段差部を設ける一方、リッドの裏面の周縁部にシール材を全周に亘って設ける構造が開示されている。リッドが閉状態にあるときに、シール材がハウジングの段差部に接触することにより、シール性が発揮されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第2605601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のシール材は、リッドを閉状態にしたときのシール材からの反力が大きくなり易いものであると想定される。すなわち、シール性を高めるためには、シール材をハウジングに対して密着させるとともに、走行中におけるリッドとハウジングとの多少の相対変位も吸収できるようにシール材を全周に亘って圧縮変形させた状態にしておくのが好ましい。しかし、特許文献1のシール材は中実であるとともに、リッドとハウジングとの間で厚み方向に押圧されるものであることから、所定以上の弾性変形量を得ようとすると、必然的にシール材からの反発力が大きくなってしまう。
【0007】
シール材からの反発力はリッドの周縁部に対して主に作用することになる。このリッドは車体に対してアーム及びロック装置による極部的な保持がなされているだけなので、リッドの周縁部に対するシール材からの反発力が大きくなると、リッドの周縁部が外に変位するようにリッドが全体として反るように変形してしまうおそれがある。特にリッドを樹脂製にするとこの問題が顕著になる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シール材からの反力を小さくしながら、リッドとハウジングとの間のシール性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、第1の発明は、自動車の車体に設けられ、給油口または給電口が配置される凹状の収容部(11)を有するハウジング(10)と、前記収容部(11)の開口を開閉するリッド(20)と、前記リッド(20)を支持するとともに、基端側が前記ハウジング(10)に対して回動可能に取り付けられたアーム(30)と、前記リッド(20)と前記ハウジング(10)との間をシールするシール材(4)とを備え、前記シール材(40)が前記ハウジング(10)の周縁部に環状をなすように設けられた自動車用リッドシール構造において、前記ハウジング(10)の周縁部には、前記リッド(20)の裏面と対向するように配置されるフランジ部(12)が設けられ、前記フランジ部(12)における前記リッド(20)の裏面と対向する面には、当該フランジ部(12)の幅方向中間部に、前記シール材(40)の基部(41)が配置される基部形成用凹部(12a)が周方向に長く形成され、前記シール材(40)の基部(41)は、前記基部形成用凹部(12a)の内面に固着され、前記シール材(40)は、前記フランジ部(12)から前記リッド(20)へ向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向外方に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、シール材がハウジングの周縁部からリッドの周縁部へ向けて突出することになり、このシール材が突出方向先端へ行くほど径方向外方に位置するように形成された板状をなしているので、リッドを閉状態にしてシール材がリッドの周縁部に接触したとき、シール材がリッドの周縁部の形状に沿って撓むように小さな力で弾性変形し、リッドの周縁部に密着するようになる
【0011】
また、シール材の基部をフランジ部の基部形成用凹部の内面に固着することで、シール材の基部とフランジ部との固着面積が広くなり、シール材のフランジ部に対する接合強度が高まる。
【0012】
第2の発明は、前記ハウジング(10)の周縁部には、外方へ突出して環状に延び、車体パネルに接触する外周側弾性材(50)が設けられ、前記シール材(40)と前記外周側弾性材(50)とは前記ハウジング(10)の周縁部に一体成形されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ハウジングと車体パネルとの間を外周側弾性材によってシールすることが可能になる。この場合に、外周側弾性材とシール材とをハウジングに一体成形することで、外周側弾性材及びシール材が容易に得られる
【0014】
の発明は、前記リッド(20)を閉状態で保持するロック装置(60)を備え、前記リッド(20)が閉状態にあるとき、前記リッド(20)における前記アーム(30)により支持された側とは反対側と、前記フランジ部(12)との間には、撓み変形した前記シール材(40)が収容可能な収容空間(S)が形成されることを特徴とする。
【0015】
すなわち、リッドを閉じるときには、アームにより支持された側とは反対側が閉方向に押されることになるが、ロック装置によるロックを確実なものとするために、強く押されることが考えられる。このことでシール材が大きく撓み変形することになるが、撓み変形したシール材は、リッドとフランジ部との間の収容空間に収容されるので、ロック装置によるロックをシール材が阻害することはない。
【0016】
また、収容空間を設けたことにより、シール材が過度に押されることが無くなりシール材へのダメージを軽減できる
【0017】
の発明は、前記ハウジング(10)の周縁は、前記シール材(4)の内周側に環状をなすように設けられるとともに、当該ハウジング(10)から前記リッド(20)向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向内方に位置するように形成された補助シール材(45)を備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、シール材及び補助シール材により、リッドとハウジングとの間に二重のシール構造が得られる。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、シール材がハウジングの周縁に環状をなすように設けられるとともに、突出方向先端へ行くほど径方向外方に位置する板状をなしているので、リッドを閉状態にしたときにシール材を小さな力で撓ませて相手側に密着させることができ、これにより、シール材からの反力を小さくしながら、リッドとハウジングとの間のシール性を高めることができる。
【0020】
また、ハウジングのフランジ部に形成した基部形成用凹部の内面にシール材の基部を固着したので、シール材がフランジ部から外れにくくなる。
【0021】
第2の発明によれば、ハウジングと車体パネルとの間をシールする外周側弾性材と、ハウジングとリッドとの間をシールするシール材とをハウジングに一体成形することができ、外周側弾性材及びシール材を容易に得ることができる
【0022】
の発明によれば、リッドを押してロックする際に大きく撓んだシール材を収容空間に収容することができるので、ロック装置によるロックを確実に行うことができる。
【0023】
の発明によれば、突出方向先端部へ行くほど径方向内方に位置する補助シール材を備えているので、リッドとハウジングとの間に二重のシール構造を得ることができ、シール性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る自動車用リッドシール構造が適用されたリッド装置の斜視図である。
図2図1におけるII-II線断面図である。
図3】シール材と外周側弾性材が一体成形されたハウジングの斜視図である。
図4】ハウジング単体の斜視図である。
図5図2におけるA部拡大図である。
図6図2におけるB部拡大図である。
図7】リッドを強く押した状態を示す図6相当図である。
図8】実施形態1の変形例1に係る図6相当図である。
図9】実施形態1の変形例2に係る図6相当図である。
図10】実施形態2に係る図6相当図である。
図11】実施形態2の変形例1に係る図6相当図である。
図12】実施形態2の変形例2に係る図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る自動車用リッドシール構造が適用されたリッド装置1の斜視図である。リッド装置1は、自動車の右側部の後側付近に設けられるものである。自動車は、走行用モーター及び当該走行用モーターに電力を供給する走行用バッテリを備えたプラグインハイブリッド自動車または電気自動車である。図示しないが、リッド装置1の内部には、走行用バッテリを外部電源によって充電するための充電ケーブルのコネクタ部が着脱自在に接続される給電口が設けられている。したがって、リッド装置1は、給電口の不使用時に給電口を覆っておくことが可能な給電口用リッド装置である。
【0027】
尚、本発明は、給電口用リッド装置以外にも、燃料を給油するための給油口が内部に設けられるフューエルリッド装置にも適用することができる。この実施形態の説明では、リッド装置1の前側が車両前側であり、リッド装置1の後側が車両後側であり、リッド装置1の左側が車両左側であり、リッド装置1の右側が車両右側である。また、リッド装置1の上下方向は、車両の上下方向と一致している。尚、リッド装置1は、自動車の左側に設けることもできるし、前側に設けることもでき、設置場所は特に限定されない。
【0028】
(リッド装置1の全体構成)
図1及び図2に示すように、リッド装置1は、ハウジング10と、開閉体としてのリッド20と、アーム30と、ロック装置60(図6に示す)とを備えている。ハウジング10は自動車の車体パネルP(図5及び図6のその一部を示す)に取り付けられるようになっており、ハウジング10の内部には自動車の給電口が設けられるようになっている。リッド20はアーム30によって支持されていて、給電時にはハウジング10を開放する一方、走行時等の非給電時にはハウジング10を閉塞して外部からの異物の侵入や水の浸入等を阻止する。ロック装置60は、リッド20をロック状態と非ロック状態(アンロック状態)とに切り替えるためのものである。
【0029】
(ハウジング10の構成)
図2図3等に示すハウジング10は、樹脂材を射出成形してなるものである。このハウジング10は、車体の右側に設けられるものなので、車体の左側へ向かって窪むように形成された凹状の給電口収容部11を有している。この給電口収容部11は全体が右側に開口している。給電口収容部11内に給電口が配置されている。フューエルリッド装置の場合、収容部11内に給油口が配置されることになるので、給油口収容部になる。ハウジング10における給電口収容部11の周縁部には、フランジ部12が設けられている。フランジ部12は、給電口収容部11の開口の周方向に連続して設けられている。
【0030】
図4に示すように、フランジ部12の後側であるロック装置60が配設される側には、シール材40の基部41が配置される基部形成用凹部12aが周方向に長く形成されている。基部形成用凹部12aは、フランジ部12の上部から当該フランジ部12の後側へ向けて延びた後、当該フランジ部12の下部まで連続して細長く延びている。また、フランジ部12の後側には、基部形成用凹部12aで囲まれた部分に、ロック装置取付板部12dが設けられている。ロック装置取付板部12dは窪むように形成されており、該ロック装置取付板部12dに開口孔12fが形成されている。図6に示すようにロック装置60のロックピン61がロック装置取付板部12dの開口孔12fに対して取り付けられるようになっている。
【0031】
また、図4に示すように、フランジ部12には、複数の凸部12bが形成されている。凸部12bは、フランジ部12における基部形成用凹部12a以外の部分に断続するように形成されている。具体的には、フランジ部12の上部及び下部においてそれぞれ前後方向に長く延びるように形成されるとともに、フランジ部12の前側において上下方向に長く延びるように形成されている。一方、フランジ部12の前側には、上下方向中央部に中央窪み部12cが形成されている。
【0032】
ハウジング10の前壁部には、前側へ膨出するように形成されたアーム収容部13が一体成形されている。アーム収容部13の内部は給電口凹部11と連通している。図2に示すように、リッド20が閉状態にあるときに、アーム30の基端側がアーム収容部13に収容されるようになっている。
【0033】
(リッド20の構成)
図1に示すリッド20は、ハウジング10の給電口収容部11の開口を開閉するための部材であり、たとえば樹脂製の板材で構成することができる。リッド20の外形状は、ハウジング10の周縁部の外形状と略同じにすることができる。
【0034】
(アーム30の構成)
アーム30は樹脂材からなるものであり、リッド20を支持するとともに、ハウジング10に対して回動可能に取り付けられている。図2に示すように、アーム30の基端側部分31は、上下方向に延びる支軸31aによってハウジング10のアーム収容部13に支持されている。支軸31aは、アーム収容部1の前部において右端部に配置されている。一方、アーム30の先端側部分32は、前後方向かつ上下方向に延びる板状に形成されている。このアーム30の先端側部分32には、リッド20の裏面が取り付けられるようになっている。アーム30が支軸31a周りに回動することによってリッド20が給電口収容部11の開口を開いた状態(図示せず)と閉じた状態(図1及び図2に示す状態)とに切り替えられる。
【0035】
アーム30の先端側部分32には、後述するロックピン61が収容されるロックピン収容部32aが形成されている。ロックピン収容部32aはリッド20の裏面に沿うように該リッド20の前後方向に長い形状とされていて、内部の中空部分にロックピン61が収容される。
【0036】
図2に示すように、アーム30における基端側部分31と先端側部分32との間の中間部分33は、基端側部分31から左側へ延びた後、後側へ延び、その後、右側へ延びるように湾曲している。リッド20が給電口収容部11の開口を閉じた状態にあるときには、アーム30の中間部分33がハウジング10のアーム収容部13に収容される一方、リッド20が給電口収容部11の開口を開いた状態にあるときには、アーム30の中間部分33における先端側がアーム収容部13から出てハウジング10の外部に位置付けられる。
【0037】
(ロック装置60の構成)
ロック装置60は、図6に示すようにリッド20が閉状態にあるときに、該リッド20をロックして開方向に移動しないようにするための装置である。ロック装置60は、アーム30のロックピン収容部32aに収容されて係合するロックピン61を有しており、このロックピン61の位置ないし姿勢を変更することによってロックピン収容部32aに係合した状態と、ロックピン収容部32aから離脱した状態とに切り替えられるようになっている。このようなロック装置60の構成は従来から周知である。
【0038】
(シール材40の構成)
ハウジング10には、リッド20とハウジング10との間をシールするためのシール材40が設けられている。シール材40の材料は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等の水不透過性の弾性材であり、ハウジング10のフランジ部12に対して固着する材料である。シール材40は、フランジ部12の全周に亘って環状をなすように設けられている。シール材40のフランジ部12への固定部分はシール材40の基部41とされており、この基部41はフランジ部12に沿って延びる板状をなしている。基部41は、全周に亘ってフランジ部12に固着されている。図5に示すように、フランジ部12の中央窪み部12cが形成された部分では、基部41が中央窪み部12c内に配置されるとともに、中央窪み部12cの内面に固着されている。また、図6に示すように、フランジ部12の基部形成用凹部12aが形成された部分では、基部41が基部形成用凹部12a内に配置されるとともに、基部形成用凹部12aの内面に固着されている。このように、中央窪み部12cの内面及び基部形成用凹部12aの内面に基部41を固着することでシール材40とフランジ部12との固着面積が広くなり、シール材40のフランジ部12に対する接合強度が高まる。尚、中央窪み部12cは省略してもよい。
【0039】
また、図3に示すように、フランジ部12の凸部12bはシール材40の基部41を厚み方向に貫通しており、凸部12bの突出方向先端面がシール材40の基部41の表面から露出している。凸部12bが基部41を貫通していることで、シール材40とフランジ部12との固着面積が広くなり、シール材40のフランジ部12に対する接合強度が高まる。尚、凸部12bは基部41を貫通していなくてもよい。
【0040】
シール材40は、基部41、即ちフランジ部12からリッド20側へ向けて突出するとともに、基部41と同様に環状に延びる板状のリップ部42を備えている。基部41とリップ部42とは一体成形されている。図5及び図6に示すように、リップ部42は、当該リップ部42の突出方向先端部へ行くほど径方向外方に位置するように形成されている。リップ部42の厚みは、突出方向先端部が最も薄くなるように設定されている。リップ部42の厚みは基部41に近づくほど厚くなるように設定してもよい。また、リップ部42の厚みを突出方向の中途部で変化させるようにしてもよい。また、リップ部42の厚みは基部41の厚みよりも厚く設定することができる。
【0041】
リップ部42の長さ(突出方向の寸法)は、基部41の表面と閉状態にあるリッド20の裏面との離間寸法よりも長く設定されている。具体的には、リッド20が閉状態にあるときに、リップ部42の突出方向先端部が当該リッド20の裏面に対して全周に亘って接触し、かつ、リッド20の裏面によって押されてリップ部42が弾性変形して撓むように、リップ部42の長さが十分に長く設定されている。リップ部42がその先端部へ行くほど径方向外方に位置するように形成されているので、リップ部42がリッド20の裏面によって押されると、リップ部42の先端部が径方向外方へ変位するように、リップ部42が全体的に撓むことになる。リップ部42の先端部が径方向外方へ変位すると、リップ部42の先端部の径が拡大することになるので、リップ部42の先端部が周方向に伸びるように弾性変形する。この変形によりリップの先端が元に戻ろうとする力が働くのでよりシール性が向上する。同様に、リップ部42の先端部だけでなく、突出方向中間部も周方向に伸びるように弾性変形するが、先端部に比べて弾性変形量は少なくなる。フランジ部12には、リップ部42が複数形成されることによって、多重シール構造としてもよい。
【0042】
図6に示すように、リッド20が閉状態にあるとき、リッド20におけるアーム30により支持された側とは反対側と、フランジ部12との間には、撓み変形したシール材40のリップ部42が収容可能な収容空間Sが形成されるようになっている。リッド20のアーム30により支持された側が本実施形態では前側になるので、リッド20におけるアーム30により支持された側とは反対側は、本実施形態ではリッド20の後側になる。閉状態にあるリッド20の裏面の後側と、フランジ部12とは所定寸法以上離間しており、この離間寸法の設定により、リッド20の裏面の後側と、フランジ部12との間に収容空間Sが形成されることになる。
【0043】
すなわち、リッド20を閉じるときには、アーム30により支持された側とは反対側(リッド20の後側)が閉方向に押されることになるが、ロック装置60によるロックを確実なものとするために、閉方向に強く押されることが考えられる。このことで、図6に示す通常の閉状態に比べて図7に示すようにリッド20がフランジ部12に接近し、シール材40のリップ部42がリッド20の裏面によって強く押されて大きく撓み変形し、倒れるようになる。大きく撓み変形したリップ部42は、リッド20の裏面とフランジ部12との間の収容空間Sに収容されるので、ロック装置60によるロックをシール材40が阻害することはない。
【0044】
(外周側弾性材50の構成)
ハウジング10のフランジ部12の周縁部には、外方へ突出して環状に延び、車体パネルPに接触する外周側弾性材50が設けられており、シール材40と外周側弾性材50とはハウジング10の周縁部に一体成形されている。したがって、シール材40と外周側弾性材50とは同じ材料で構成されている。尚、シール材40と外周側弾性材50とは別々に成形されたものであってもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0045】
例えば図6に示すように、外周側弾性材50は、フランジ部12の表面側に固着する表側固着部51と、フランジ部12の裏面側に固着する裏側固着部52と、これら固着部51、52から突出する板状部53とを有している。表側固着部51は、盛り上がるように形成されている。板状部53の先端部が車体パネルPに接触して弾性変形するようになっている。
【0046】
(シール材40及び外周側弾性材50の成形方法)
次に、シール材40及び外周側弾性材50の成形方法について説明する。まず、ハウジング10を射出成形法等によって得ておく。このハウジング10のフランジ部12を、シール材40及び外周側弾性材50を成形する型(図示せず)内に配置し、固定しておく。その後、型のキャビティ内にシール材40及び外周側弾性材50の材料を射出する。射出された材料はキャビティ内を流動してフランジ部12に接触するとともに所定の形状に成形されて固化する。射出された材料がフランジ部12に接触して固化することで、シール材40及び外周側弾性材50がフランジ部12に固着する。尚、シール材40及び外周側弾性材50の成形方法は上述した方法に限られるものではなく、例えば、シール材40及び外周側弾性材50を予め成形した後、ハウジング10のフランジ部12に固着するようにしてもよい。
【0047】
(実施形態1の変形例)
図8は実施形態1の変形例1を示すものである。この変形例1では、リッド20の裏面に突条部20aが形成されている。突条部20aは、シール材40のリップ部42の突出方向先端部が接触する部分よりも外側に位置しており、リップ部42の先端部に沿うように周方向に連続して延びている。突条部20aは、リップ部42の突出方向先端部に接触するように配置することができる。突条部20aとリップ部42とが接触することにより、シール性がより一層向上する。
【0048】
図9は実施形態1の変形例2を示すものである。この変形例2のハウジング10は、シール材40の内周側に環状をなすように設けられる補助シール材45を備えている。補助シール材45は、フランジ部12からリッド20側へ向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向内方に位置するように形成されている。補助シール材45の長さは、リッド20が閉状態にあるときに、補助シール材45の突出方向先端部が当該リッド20の裏面に対して全周に亘って接触し、かつ、リッド20の裏面によって押されて補助シール材45が弾性変形して内方へ撓むように設定されている。変形例2の場合、シール材40及び補助シール材45により、リッド20とハウジング10との間に二重のシール構造が得られるので、シール性がより一層向上する。また、シール材40及び補助シール材45は、互いに別部材からなるものであってもよい。
【0049】
また、この実施形態1ではシール材20をハウジング10に設けているが、これに限らず、シール材40をリッド20に設けてもよい。この場合、シール材40がリッド20の裏面からハウジング10のフランジ部12に向けて突出することになる。
【0050】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したように、この実施形態1に係る自動車用リッドシール構造によれば、シール材40のリップ部42が突出方向先端へ行くほど径方向外方に位置するように形成された板状をなしているので、リッド20を閉状態にしてリップ部42がリッド20の周縁部に接触したとき、シール材40がリッド20の周縁部の形状に沿って撓むように小さな力で弾性変形し、リッド20の周縁部に密着するようになる。これにより、シール材40からの反力を小さくしながら、リッド20とハウジング10との間のシール性を高めることができる。
【0051】
また、ハウジング10と車体パネルPとの間をシールする外周側弾性材50と、ハウジング10とリッド20との間をシールするシール材40とをハウジング10に一体成形することができるので、外周側弾性材50及びシール材40を容易に得ることができる。
【0052】
また、ハウジング10のフランジ部12に形成した基部形成用凹部12aの内面にシール材40の基部41を固着したので、シール材40がフランジ部12から外れにくくなる。
【0053】
また、図7に示すように、リッド20を押してロックする際に大きく撓んだシール材40のリップ部42を収容空間Sに収容することができるので、ロック装置60によるロックを確実に行うことができる。
【0054】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る自動車用リッドシール構造の要部を拡大して示す図である。この実施形態2では、シール材400がリッド20に設けられている点で実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0055】
実施形態2のリッド20の裏面の周縁部には、シール材400が環状をなすように設けられている。シール材400は、リッド20の裏面からハウジング10のフランジ部12へ向けて突出する板状をなし、突出方向先端部へ行くほど径方向外方に位置するように形成されている。リッド20が閉状態にあるときに、シール材400の突出方向先端部がフランジ部12の表面に対して全周に亘って接触し、かつ、フランジ部12の表面によって押されてシール材400が弾性変形して外方へ撓むようになっている。
【0056】
この実施形態2のものも実施形態1と同様に、シール材400からの反力を小さくしながら、リッド20とハウジング10との間のシール性を高めることができる。
【0057】
(実施形態2の変形例)
図11は実施形態2の変形例1を示すものである。この変形例1では、リッド20の裏面に突片部20bと窪み部20cとが形成されている。シール材400の基部401は、突片部20bに沿うように形成されるとともに、窪み部20c内に配置されており、突片部20b及び窪み部20cに固着されている。
【0058】
図12は実施形態2の変形例2を示すものである。この変形例2では、ハウジング10のフランジ部12の周縁部に、シール用凹部14が周方向に連続して形成されている。リッド20が閉状態にあるときにシール材400の突出方向先端部が弾性変形した状態でシール用凹部14の内周面14a及び底面14bに接触するようになっている。シール用凹部14の内周面14aは、シール材400の突出方向先端部に沿うように形成されている。これにより、シール材400をリッド20に設ける場合に、当該シール材400とハウジング10のシール用凹部14との接触面積を広くすることができるので、シール性をより一層高めることができる。
【0059】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る自動車用リッドシール構造は、例えば自動車のフューエルリッド装置や給電口のリッド装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 給電口リッド装置
10 ハウジング
12 フランジ部
12a 基部形成用凹部
14 シール用凹部
14a シール用凹部の内周面
14b シール用凹部の底面
20 リッド
30 アーム
40 シール材
41 基部
42 リップ部
45 補助シール材
50 外周側弾性材
400 シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12