(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
B65D51/22 110
(21)【出願番号】P 2019188366
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【氏名又は名称】木村 浩幸
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【氏名又は名称】竹内 裕
(72)【発明者】
【氏名】木下 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊史
(72)【発明者】
【氏名】石井 潤
(72)【発明者】
【氏名】名越 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 貴子
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-230960(JP,A)
【文献】特開2013-71751(JP,A)
【文献】特開2012-51650(JP,A)
【文献】特許第3978224(JP,B1)
【文献】特開2017-165706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムで閉塞された容器本体の口部に螺合するとともに、前記フィルムを貫通し内容物を注出する略円筒形状の注出筒を天板部下面から垂下した注出キャップであって、前記注出筒の先端略円周上に螺合する回転方向と反対側の側面に切り欠き部を設けた左右非対称形状のカッターを設けたことを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
前記注出筒の先端略円周上に先端の高さ位置が異なる複数のカッターを設けたことを特徴とする請求項1記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記注出筒の先端略円周上のカッターが、基準となるカッターと円の中心角θ(度)をなす位置に配置されるとき、配置されるカッターの先端の高さ位置は、基準のカッターの先端の高さ位置より下記式で定義されるΔHだけ上方に位置するように形成することを特徴とする請求項2記載の注出キャップ。
0<ΔH ≦ L×θ/360
L:容器本体の口部に螺合する注出キャップの螺旋のリード長さ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口部に螺合するとともに、口部を閉塞するフィルムを突き破り、容器中の内容物を注出するための注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤や化粧料等が収容されるボトルあるいはチューブ等の容器には、口部にフィルムを付設して内容物を密封し、使用を開始する際には、キャップを容器本体の口部に螺合することにより、キャップの天板部下面から延び出した注出筒の先端でフィルムを突き破り、内容物を注出する注出キャップが知られている(特許文献1)。そして、このような注出キャップは、容器本体と螺合した際の密閉性や量産性に適することから、合成樹脂を用いて金型で成型されることが多い。
【0003】
一方、近年では、内容物に含有される成分の酸化等による劣化を防止するため、様々な薄膜が積層されたフィルムが用いられており、フィルムによっては、樹脂製の注出筒の先端では、突き破ることは困難な場合がある。また、このようなフィルムを突き破るために、注出筒の先端円周上にカッターを設けたとしても、カッターの形状によっては、フィルムへの貫通や、フィルムの切断が容易に進まず、内容物の注出が困難となる場合もある。
【0004】
このため、容器本体の口部を閉塞するフィルムを円滑かつ確実に突き破り、容器中の内容物を容易に注出することができる注出キャップの開発が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器本体の口部を閉塞するフィルムを円滑かつ確実に突き破り、容器中の内容物を容易に注出することができる注出キャップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、キャップの天板部下面から延び出す注出筒の先端に、キャップが螺合する回転方向と反対側の側面に切り欠き部を設けたカッターを備えることにより、フィルムを円滑かつ確実に突き破ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、フィルムで閉塞された容器本体の口部に螺合するとともに、前記フィルムを貫通し内容物を注出する略円筒形状の注出筒を天板部下面から垂下した注出キャップであって、前記注出筒の先端略円周上に螺合する回転方向と反対側の側面に切り欠き部を設けた左右非対称形状のカッターを設けたことを特徴とする注出キャップである。
【0009】
さらに本発明は、前記注出筒の先端略円周上に先端の高さ位置が異なる複数のカッターを設けたことを特徴とする注出キャップである。
【0010】
さらに本発明は、前記注出筒の先端略円周上のカッターが、基準となるカッターと円の中心角θ(度)をなす位置に配置されるとき、配置されるカッターの先端の高さ位置は、基準のカッターの先端の高さ位置より下記式で定義されるΔHだけ上方に位置するように形成することを特徴とする注出キャップである。
0<ΔH ≦ L×θ/360
L:容器本体の口部に螺合する注出キャップの螺旋のリード長さ
【発明の効果】
【0011】
本発明の注出キャップによれば、容器本体の口部を閉塞するフィルムを円滑かつ確実に突き破り、容器中の内容物を容易に注出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】注出キャップの構造を示す図((a)注出キャップの断面図、(b)注出筒の外観図)
【
図5】カッターがフィルムを突き破る状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の注出キャップを以下に詳細に説明する。尚、本発明における構成部材の連結あるいは取り付けは、直接的な連結等だけでなく、他の部材を介した間接的な連結等も含むもので、対象となる2つの部材の取り付け部位の相対的な位置関係を略一定に保持するものであれば、特に断りがない限り、全てがこれに含まれる。
【0014】
図1に示すように、本発明の注出キャップ(1)は、フィルム(2)で閉塞された容器本体(3)の口部(3a)に螺合するとともに、前記フィルムを貫通し内容物を注出する略円筒形状の注出筒(4)を天板部(5)の下面から垂下し、前記注出筒の先端略円周上に螺合する回転方向と反対側の側面に切り欠き部(7)を設けた左右非対称形状のカッター(6)を設けることを特徴とする。
【0015】
フィルム(2)は、製品の完成から使用者が使用を開始するまでの期間、容器内の内容物に含有される成分の酸化等の劣化を防止するため、内容物を密封した状態に置くためのものであり、このような機能を備えるものであれば、フィルムの材質、形状、取り付け位置等は特に限定されるものではない。
図1には、容器本体の口部内部にフィルムを付設した例を示すが、例えば、容器本体の口部先端を加熱して樹脂を融着して薄膜を形成し、内容物を密封することもできる。したがって、フィルムとは、注出キャップの注出筒の先端を突き刺し貫通できる程度の厚さを備えた膜体を意味するものであり、このような膜体であれば、すべてを本発明の注出キャップが貫通するフィルムとして用いることができる。
【0016】
注出キャップ(1)の側壁内面(1a)と、容器本体(3)の口部(3a)には螺旋が設けられており、注出キャップを水平方向に回転させながら、互いの螺旋を螺合して注出キャップを容器本体に取り付ける。
【0017】
注出キャップの天板部(5)の下面から外部と連通する略円筒形状の注出筒(4)が下方に延び出しており、容器本体の口部への注出キャップの螺合が進むと、注出筒が下降し、フィルムを貫通する。
【0018】
注出筒は、注出キャップの水平回転により円滑にフィルムを貫通できるものであれば足りるため、厳密な円筒形状に限定されるものではなく、例えば、楕円筒形状や多角筒形状等の軸心周りに回転対称な筒形状であればすべて用いることができる。
【0019】
注出筒(4)の先端略円周上には、螺合する回転方向と反対側の側面に切り欠き部(7)を設けた左右非対称形状のカッターを設ける。
図1には、螺合する際の注出キャップの水平方向の回転が、上方から見て時計回りの態様例を示すが、この態様例では螺合する回転方向と反対側の側面に相当するカッターの右側面に、切り欠き部を設けている。
【0020】
このように切り欠き部を設けることにより、カッターの先端は角度を小さくすることができるため、フィルムを突き刺し、貫通しやすくなる。また、切り欠き部は、回転方向と反対側の側面に設けるが、仮に、回転方向の側面に設けるとすると、切り欠いた部分の垂直断面が抵抗となり、カッターがフィルムを切り裂きながら進むことが困難となり、開栓作業を円滑に行うことができない。
【0021】
図2は、カッターの数や形状が異なる注出キャップについて評価した結果を示すが、切り欠き部を回転方向と反対側の側面に設けたカッターについては、いずれの評価項目においても良好な結果を得ることができた。尚、評価項目のフィルムの開孔性とは、フィルムを突き刺し、切り裂いて注出筒がフィルムを貫通する容易性を評価したものであり、評価の結果を◎:非常にすぐれる、〇:すぐれる、×:劣る、として表記する。また、回転トルクとは、注出キャップを回転させるために必要な力の程度を評価したものであり、評価の結果を◎:回転トルクは一定、〇:回転トルクはほぼ一定、×:回転トルクにムラがある、として表記している。
【0022】
注出筒の先端略円周上には、先端の高さ位置が異なる複数のカッターを設けることができる。カッターを複数設けることにより、あらゆるフィルムを確実に突き刺し、貫通することが可能となる。また、高さが異なる複数のカッターを設けることにより、それぞれのカッターがフィルムを突き刺す位置を調整することができる。これにより、切断されず、周囲と連結した箇所をフィルムに残すことが可能となり、全周を切断されたフィルム片が内容物中に落下し、落下したフィルム片が使用中に注出筒の連通孔に入り込み、内容物の注出が不可能となる事態を防止することができる。
【0023】
図3は、複数のカッターを取り付けた態様例を示す。メインカッターとサブカッターの先端の高さ位置が異なる試験例1、試験例3及び試験例4においては、フィルムの一部が切断されず、周囲と連結した箇所を残すことができ、内容物中へのフィルム片の落下が防止できることを確認した。
【0024】
サブカッターが、基準となるメインカッターと円の中心角θ(度)をなす位置に配置されるとき、サブカッターの先端の高さ位置は、メインカッターの先端の高さ位置より下記式で定義されるΔHだけ上方に位置するように形成することが好ましい。
0<ΔH ≦ L×θ/360
L:容器本体の口部に螺合する注出キャップの螺旋のリード長さ
【0025】
基準となるメインカッターに対するサブカッターの相対位置は、円の中心角θ(度)により特定することができるが(
図3)、かかる中心角θ(度)と容器本体の口部に螺合する注出キャップの螺旋のリード長さL(螺旋が一回転することにより回転軸方向に進む距離)を用いることにより、サブカッターの先端の高さ位置を基準のメインカッターの先端の高さ位置から、どの程度上方に位置するよう配置すべきかを模式的に示すことができる(
図4)。
図4に示すように、例えば、配置するサブカッターの位置を基準のメインカッターに対して中心角180度とする場合(試験例1)は、サブカッターの先端の高さ位置と、メインカッターの先端の高さ位置との差(ΔH)は、螺旋のリード長さ(L)の1/2以下とすることが好ましい。サブカッターの先端の高さをこのように配置することにより、注出キャップが回転すると、メインカッターがフィルムを突き刺し切り裂いた軌道より深い位置でサブカッターが進むため、フィルムを確実に切断することが可能となる。
【0026】
一方、試験例2のように、サブカッターの先端の高さ位置を、メインカッターの先端の高さ位置と同じにすると(ΔH=0)、
図5に示すように、サブカッターはメインカッターと回転対称の位置をメインカッターと同じように、フィルムを切断して進むため、メインカッターが180度回転すると、サブカッターも同じように180度回転し、フィルムは全周に亘り切断され、フィルム片が内容物中に落下することとなる。
【0027】
図6は、試験例1による貫通後のフィルムの開口部の状態を示す。周囲と連結した箇所を残しながら、カッターがフィルムを確実に切断していることを確認することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 注出キャップ
1a 側壁内面
2 フィルム
3 容器本体
3a 口部
4 注出筒
5 天板部
6 カッター
6a メインカッター
6b サブカッター
6c サブカッター
7 切り欠き部
7a 切り欠き部
7b 切り欠き部
7c 切り欠き部