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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】プーリユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20230606BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   F16B 41/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
F16H55/36 A
F16B35/00 X
F16B41/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019209658
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021081011
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慎介
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-337383(JP,A)
【文献】特開2015-194175(JP,A)
【文献】特開2002-310247(JP,A)
【文献】特開2011-241944(JP,A)
【文献】特開2015-224722(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222771(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16B 35/00
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に当接させられて回転するプーリを備えるプーリユニットであって、
ボルト軸部及びヘッド部を有する取付ボルトと、
前記ボルト軸部に通された環状のベアリングと、
環状を呈し、内側に前記ベアリングが嵌め込まれる前記プーリと、
前記ボルト軸部が通される貫通孔を有すると共に、前記ヘッド部との間で前記ベアリングを挟み込む脱落防止部と、
を備え、
前記ボルト軸部の外周面には、周方向に沿って延在する溝部が設けられ、
前記脱落防止部の前記貫通孔の内周面には、前記ボルト軸部の前記溝部内に入り込む凸部が設けられ、
前記ボルト軸部は、前記脱落防止部に対して相対回転可能である、プーリユニット。
【請求項2】
前記脱落防止部は、前記ベアリングの内周面を支持する第1ベアリング支持部を備えると共に、前記ボルト軸部に対する前記ベアリングの位置決めを行う、請求項1に記載のプーリユニット。
【請求項3】
前記ボルト軸部が通されると共に、前記ヘッド部と前記ベアリングとの間に配置された支持部を更に備え、
前記支持部は、前記ベアリングの内周面を支持する第2ベアリング支持部を備えると共に、前記ボルト軸部に対する前記ベアリングの位置決めを行う、請求項1又は2に記載のプーリユニット。
【請求項4】
前記支持部は、前記ベアリングにおける前記ヘッド部側の側面を覆うカバー部を更に備える、請求項3に記載のプーリユニット。
【請求項5】
前記ベアリングにおける前記ヘッド部側に対して反対側の側面を覆うダストカバーを更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のプーリユニット。
【請求項6】
前記ボルト軸部における前記溝部の底部の位置での直径は、前記ボルト軸部に設けられるネジ山の底部の位置での直径以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプーリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両においては、プーリ間に架け渡されたベルトに対してテンションを付与するプーリユニットが設けられている。このようなプーリユニットが、例えば、特許文献1に記載されている。このようなプーリユニットは、ベルトに当接されるプーリと、プーリを支持するベアリングと、プーリ及びベアリングをエンジンブロック等のプーリ固定部に固定するための取付ボルトとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-310247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなプーリユニットは、ベアリング等の部品が予め取付ボルトに組付けられた状態とされている。そして、ベアリング等の部品が取付ボルトから脱落しないように、例えば、脱落防止用のキャップが取付ボルトの先端部に取り付けられている。しかしながら、プーリユニットの取り付け時には、脱落防止用のキャップ等を取り外す必要があり、プーリユニットの取り付けの作業性が悪い。
【0005】
そこで、本発明は、取り付けの作業性の悪化を抑制しつつ、各部品の取付ボルトからの脱落を防止できるプーリユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動体に当接させられて回転するプーリを備えるプーリユニットであって、ボルト軸部及びヘッド部を有する取付ボルトと、ボルト軸部に通された環状のベアリングと、環状を呈し、内側にベアリングが嵌め込まれるプーリと、ボルト軸部が通される貫通孔を有すると共に、ヘッド部との間でベアリングを挟み込む脱落防止部と、を備え、ボルト軸部の外周面には、周方向に沿って延在する溝部が設けられ、脱落防止部の貫通孔の内周面には、ボルト軸部の溝部内に入り込む凸部が設けられ、ボルト軸部は、脱落防止部に対して相対回転可能である。
【0007】
このプーリユニットでは、ボルト軸部に設けられた溝部内に脱落防止部の凸部が入り込んでいるため、脱落防止部がボルト軸部から脱落しない。また、ベアリングがヘッド部と脱落防止部とによって挟み込まれているため、ベアリング及びプーリもボルト軸部から脱落しない。また、ボルト軸部は、脱落防止部に対して相対回転可能である。このため、プーリ固定部に取付ボルトを締め込んだときにプーリ固定部に脱落防止部が当接しても、所望の位置まで更に取付ボルトを締め込むことができる。すなわち、ベアリング等の脱落を防止する脱落防止部を取り外すことなくプーリユニットをプーリ取り付け部に取り付けることができる。このように、プーリユニットでは、取り付けの作業性の悪化を抑制しつつ、各部品の取付ボルトからの脱落を防止できる。
【0008】
プーリユニットにおいて、脱落防止部は、ベアリングの内周面を支持する第1ベアリング支持部を備えると共に、ボルト軸部に対するベアリングの位置決めを行ってもよい。この場合、脱落防止部は、ベアリング等の脱落を防止する機能と、ベアリングの位置決めを行う機能とを兼ねることができる。これにより、プーリユニットは、ボルト軸部に対するベアリングのがたつきを抑制しつつ、構成を簡素化できる。
【0009】
プーリユニットは、ボルト軸部が通されると共に、ヘッド部とベアリングとの間に配置された支持部を更に備え、支持部は、ベアリングの内周面を支持する第2ベアリング支持部を備えると共に、ボルト軸部に対するベアリングの位置決めを行ってもよい。この場合、プーリユニットは、ヘッド部側に設けられた支持部によってベアリングの位置決めを行うことができ、ボルト軸部に対するベアリングのがたつきを抑制できる。
【0010】
プーリユニットにおいて、支持部は、ベアリングにおけるヘッド部側の側面を覆うカバー部を更に備えていてもよい。この場合、支持部は、ベアリングの位置決めを行いつつ、ヘッド部側からベアリング内部へ異物が入り込むことを抑制できる。
【0011】
プーリユニットは、ベアリングにおけるヘッド部側に対して反対側の側面を覆うダストカバーを更に備えていてもよい。この場合、プーリユニットは、脱落防止部側からベアリング内部へ異物が入り込むことを抑制できる。
【0012】
プーリユニットにおいて、ボルト軸部における溝部の底部の位置での直径は、ボルト軸部に設けられるネジ山の底部の位置での直径以上であってもよい。この場合、プーリユニットは、ボルト軸部に設けられた溝部がボルト軸部の屈曲の起点となることを抑制できる。すなわち、プーリユニットは、ボルト軸部に溝部を設けた場合であっても、ボルト軸部の強度の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取り付けの作業性の悪化を抑制しつつ、各部品の取付ボルトからの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るプーリユニットが取り付けられたエンジン回りの概略構成を示す図である。
図2図2は、図1のプーリユニットの分解斜視図である。
図3図3は、図1のプーリユニットの断面図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態におけるプーリユニット10は、例えば、図1に示されるように、環状のベルト(移動体)6を備えるエンジン1に設けられる。ベルト6は、エンジン1のクランクシャフトに連結されたプーリ2並びにオルタネータ等の種々の補器に連結されたプーリ3~5に架け渡されている。また、ベルト6は、テンショナー7により押付力が付与されている。テンショナー7は、例えば、テンショナー用のプーリユニットと、ばねと、を備えるアッセンブリ(いわゆるオートテンショナー)である。プーリユニット10は、ベルト6に当接させられて回転するプーリ14を備え、ベルト6によって押圧されている。
【0017】
図2及び図3に示されるように、プーリユニット10は、取付ボルト11、支持部12、ベアリング13、プーリ14、ダストカバー15、及び脱落防止部16を備えている。取付ボルト11は、ヘッド部11a、及びボルト軸部11bを有している。支持部12~脱落防止部16は、ボルト軸部11bに通されている。
【0018】
ベアリング13は、環状を呈し、取付ボルト11のボルト軸部11bが通されている。ベアリング13は、インナーレース13a、アウターレース13b、及び複数のボール13cを有している。アウターレース13bは、インナーレース13aの外側に配置されている。ボール13cは、インナーレース13aとアウターレース13bとの間に配置されている。インナーレース13aの内径は、ボルト軸部11bの外径よりも大径となっている。
【0019】
プーリ14は、環状を呈し、内側にベアリング13のアウターレース13bが嵌め込まれる。プーリ14は、例えば圧入によって、ベアリング13のアウターレース13bに嵌め込まれている。プーリ14は、ベアリング13によって支持されることによって回転可能となっている。プーリ14は、ベルト6に当接させられて、ベルト6の移動に伴って回転する。
【0020】
支持部12及び脱落防止部16には、それぞれ取付ボルト11のボルト軸部11bが通されている。支持部12及び脱落防止部16は、取付ボルト11の軸方向の両側からベアリング13を挟み込む。支持部12は、脱落防止部16よりも取付ボルト11のヘッド部11a側に位置している。すなわち、支持部12は、取付ボルト11のヘッド部11aとベアリング13との間に配置されている。
【0021】
支持部12には、ボルト軸部11bが通される支持部貫通孔12aが設けられている。支持部貫通孔12aの内径は、ボルト軸部11bの外径よりも大きい。これにより、支持部12は、取付ボルト11に対して回転可能であり、ボルト軸部11bに沿って摺動可能となっている。なお、支持部貫通孔12aの内径とボルト軸部11bの外径との差はわずかとなっており、ボルト軸部11bの径方向における支持部12のがたつきが抑制されている。
【0022】
支持部12は、ベアリング13の内周面(インナーレース13aの内側面)を支持する第2ベアリング支持部12bを備える。第2ベアリング支持部12bは、ボルト軸部11bに対するベアリング13の位置決めを行う。ここでの第2ベアリング支持部12bによる位置決めとは、ボルト軸部11bの径方向に沿ったベアリング13の移動を制限することである。
【0023】
また、支持部12は、ベアリング13におけるヘッド部11a側の側面を覆うカバー部12cを備えている。カバー部12cは、環状のベアリング13の側面形状に対応するように環状を呈している。例えば、カバー部12cは、インナーレース13aとアウターレース13bとの隙間に対向するように配置されている。
【0024】
脱落防止部16には、ボルト軸部11bが通される脱落防止部貫通孔(貫通孔)16aが設けられている。脱落防止部貫通孔16aの内径は、ボルト軸部11bの外径よりも大きい。これにより、脱落防止部16は、取付ボルト11に対して回転可能であり、ボルト軸部11bに沿って摺動可能となっている。なお、脱落防止部貫通孔16aの内径とボルト軸部11bの外径との差はわずかとなっており、ボルト軸部11bの径方向における脱落防止部16のがたつきが抑制されている。また、後述するように、脱落防止部16には凸部16cが設けられている。このため脱落防止部16は、ボルト軸部11bに沿った移動幅が制限されている。
【0025】
脱落防止部16は、ベアリング13の内周面(インナーレース13aの内側面)を支持する第1ベアリング支持部16bを備える。第1ベアリング支持部16bは、ボルト軸部11bに対するベアリング13の位置決めを行う。ここでの第1ベアリング支持部16bによる位置決めとは、ボルト軸部11bの径方向に沿ったベアリング13の移動を制限することである。脱落防止部16は、支持部12との間でベアリング13を挟み込む。
【0026】
このように、ベアリング13は、取付ボルト11のヘッド部11a側が支持部12の第2ベアリング支持部12bによって位置決めされ、取付ボルト11のボルト先端部11s側(ヘッド部11aが設けられている側に対して反対側の端部)が脱落防止部16の第1ベアリング支持部16bによって位置決めされる。すなわち、第2ベアリング支持部12b及び第1ベアリング支持部16bは、ベアリング13の内周面とボルト軸部11bの外周面との間の隙間を埋めるスペーサとして機能する。
【0027】
ダストカバー15は、ベアリング13におけるヘッド部11a側に対して反対側の側面(ボルト先端部11s側の側面)を覆う。ダストカバー15は、環状のベアリング13の側面形状に対応するように環状を呈している。例えば、ダストカバー15は、インナーレース13aとアウターレース13bとの隙間に対向するように配置されている。ダストカバー15は、ベアリング13と脱落防止部16とによって挟み込まれて保持される。
【0028】
プーリユニット10をエンジン1のプーリ固定部1aに取り付ける際には、図3に示されるように、プーリ固定部1aに設けられたボルト孔1bに取付ボルト11のボルト先端部11sをねじ込む。これにより、支持部12、ベアリング13、ダストカバー15、及び脱落防止部16が、取付ボルト11のヘッド部11aとプーリ固定部1aとによって挟み込まれる。なお、支持部12は、インナーレース13aに当接する。ダストカバー15は、インナーレース13aに当接する。これにより、取付ボルト11がボルト孔1bにねじ込まれたときに、ヘッド部11aによって、支持部12、ベアリング13のインナーレース13a、ダストカバー15、及び脱落防止部16がプーリ固定部1aに押し付けられて固定される。
【0029】
ここで、本実施形態におけるプーリユニット10は、取付ボルト11から支持部12~脱落防止部16が脱落する(抜け出る)ことを防止する構成を備えている。以下、この構成の詳細について説明する。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ボルト軸部11bの外周面には、周方向に沿って延在する溝部B2が設けられている。図3に示されるように、脱落防止部16によってダストカバー15、ベアリング13(インナーレース13a)、及び支持部12がヘッド部11aに押し付けられている状態において、溝部B2は、脱落防止部16の脱落防止部貫通孔16aの内周面の少なくとも一部に対向している。溝部B2は、ボルト軸部11bの周方向の全周にわたって設けられている。
【0031】
なお、ボルト軸部11bにおいて、溝部B2よりもヘッド部11a側は、円柱状を呈する円柱部B1となっている。ボルト軸部11bにおいて、溝部B2よりも取付ボルト11のボルト先端部11s側は、ネジ山が設けられたネジ山部B3となっている。また、ボルト軸部11bにおける溝部B2の底部の位置での直径は、ネジ山部B3に設けられたネジ山の底部の位置での直径以上となっている。
【0032】
脱落防止部16の脱落防止部貫通孔16aの内周面には、ボルト軸部11bの溝部B2内に入り込む凸部16cが設けられている。すなわち、凸部16cの突出方向の先端部は、ネジ山部B3のネジ山の頂部の位置よりも、ボルト軸部11bの中心側に位置している。同様に、凸部16cの突出方向の先端部は、円柱部B1の外周面の位置よりも、ボルト軸部11bの中心側に位置している。本実施形態においては、一例として、凸部16cが4つ設けられいている(図4参照)。また、凸部16cは、溝部B2の内面(底面)に当接していない。これにより、取付ボルト11は、脱落防止部16に対して相対回転可能となっている。
【0033】
上述したように、凸部16cが溝部B2内に入り込んでいることにより、ボルト軸部11bに沿った脱落防止部16の移動幅が制限される。ボルト軸部11bに沿った脱落防止部16の移動幅は、溝部B2の溝幅に依存する。一方、溝部B2がボルト軸部11bの周方向の全周にわたって設けられていることにより、取付ボルト11は、制約を受けることなく脱落防止部16に対して相対回転可能となっている。
【0034】
なお、溝部B2の溝幅は、プーリユニット10がプーリ固定部1aに取り付けられた状態(脱落防止部16が最もヘッド部11a側に近づいた状態)において、凸部16cが溝部B2に当接しない幅となっている。換言すると、溝部B2の位置は、プーリユニット10がプーリ固定部1aに取り付けられた状態(脱落防止部16が最もヘッド部11a側に近づいた状態)において、凸部16cが溝部B2に当接しない位置となっていてもよい。これにより、プーリユニット10がプーリ固定部1aに取り付けられたときに、凸部16cによって阻害されることなく、ヘッド部11aによって支持部12等をプーリ固定部1aに押し付けて固定することができる。すなわち、取付ボルト11の取り付けの軸力を支持部12、ベアリング13、ダストカバー15、及び脱落防止部16に適切に作用させることができ、プーリユニット10を適切にプーリ固定部1aに固定できる。
【0035】
凸部16cは、溝部B2内に入り込む構成であれば、種々の方法によって形成され得る。一例として、凸部16cは、脱落防止部貫通孔16aの内周面を変形させることによって形成されてもよい。ここで、脱落防止部16におけるプーリ固定部1aに当接される面を、当接面16eとする。当接面16eには、窪み部16dが設けられている。脱落防止部貫通孔16aは、窪み部16dに開口している。この場合、図4に示されるように、窪み部16dにおける脱落防止部貫通孔16aの周囲の押圧位置Dを、外周側から脱落防止部貫通孔16a側に向って押圧(打撃)することによって脱落防止部貫通孔16aの内周面を変形させ、この変形によって凸部16cが形成されてもよい。この場合、押圧によって窪み部16dに歪み(凹凸)が生じることがある。しかしながら、プーリ固定部1aには窪み部16dが当接しない構成であるため、窪み部16dに歪みが生じていたとしても、脱落防止部16をプーリ固定部1aに適切に当接させて固定できる。
【0036】
また、他の形成方法の例として、脱落防止部貫通孔16aの内周面に別途、凸部16cを付加する構成であってもよい。このように、凸部16cは、溝部B2内に入り込んでいれば、種々の方法によって形成できる。
【0037】
以上のように、このプーリユニット10では、ボルト軸部11bに設けられた溝部B2内に脱落防止部16の凸部16cが入り込んでいるため、脱落防止部16がボルト軸部11bから脱落しない。また、ベアリング13がヘッド部11aと脱落防止部16とによって挟み込まれているため、ベアリング13及びベアリング13に嵌め込まれたプーリ14もボルト軸部11bから脱落しない。また、ボルト軸部11bは、脱落防止部16に対して相対回転可能である。このため、プーリ固定部1aに取付ボルト11を締め込んだときにプーリ固定部1aに脱落防止部16が当接しても、所望の位置まで更に取付ボルト11を締め込むことができる。すなわち、ベアリング13等の脱落を防止する脱落防止部16を取り外すことなくプーリユニット10をプーリ固定部1aに取り付けることができる。このように、プーリユニット10では、取り付けの作業性の悪化を抑制しつつ、各部品の取付ボルト11からの脱落を防止できる。
【0038】
脱落防止部16は、第1ベアリング支持部16bによってボルト軸部11bに対するベアリング13の位置決めを行う。この場合、脱落防止部16は、ベアリング13等の脱落を防止する機能と、ベアリング13の位置決めを行う機能とを兼ねることができる。これにより、プーリユニット10は、ボルト軸部11bに対するベアリング13のがたつきを抑制しつつ、構成を簡素化できる。
【0039】
支持部12は、第2ベアリング支持部12bによって、ボルト軸部11bに対するベアリング13の位置決めを行う。この場合、プーリユニット10は、ヘッド部11a側に設けられた支持部12によってベアリング13の位置決めを行うことができ、ボルト軸部11bに対するベアリング13のがたつきを抑制できる。
【0040】
支持部12は、ベアリング13におけるヘッド部11a側の側面を覆うカバー部12cを更に備えている。この場合、支持部12は、ベアリング13の位置決めを行いつつ、ヘッド部11a側からベアリング13内部へ異物が入り込むことを抑制できる。
【0041】
プーリユニット10は、ダストカバー15を備えている。これにより、プーリユニット10は、脱落防止部16側からベアリング13内部へ異物が入り込むことを抑制できる。
【0042】
ボルト軸部11bにおける溝部B2の底部の位置での直径は、ネジ山部B3におけるネジ山の底部の位置での直径以上である。この場合、プーリユニット10は、ボルト軸部11bに設けられた溝部B2がボルト軸部11bの屈曲の起点となることを抑制できる。すなわち、プーリユニット10は、ボルト軸部11bに溝部B2を設けた場合であっても、ボルト軸部11bの強度の低下を抑制できる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、プーリユニット10は、支持部12を有していない構成であってもよい。
【0044】
脱落防止部16は、第1ベアリング支持部16bを有していない構成であってもよい。脱落防止部16とは別に、スペーサとして機能する第1ベアリング支持部が設けられていてもよい。同様に、支持部12は、第2ベアリング支持部12bを有していない構成であってもよい。支持部12とは別に、スペーサとして機能する第2ベアリング支持部が設けられていてもよい。また、ベアリング13のインナーレース13aの内径がボルト軸部11bの外径とほぼ同じである場合、第1ベアリング支持部16b及び第2ベアリング支持部12bが設けられていなくてもよい。
【0045】
プーリユニット10は、ダストカバー15を有していない構成であってもよい。同様に、支持部12は、カバー部12cを有していない構成であってもよい。また、ボルト軸部11bにおける溝部B2の底部の位置での直径は、ネジ山部B3に設けられたネジ山の底部の位置での直径以上でなくてもよい。
【0046】
上記では、本願発明に係るプーリユニットを、アイドルプーリ(アイドラー)として機能するプーリユニット10に適用した場合を例に説明した。これに限定されず、本願発明に係るプーリユニットは、テンショナー7が備えるプーリユニットに適用されてもよい。
【0047】
プーリユニット10のプーリ14は、エンジン1に設けられたベルト6に当接させられる構成に限定されない。プーリユニット10のプーリ14は、ベルト6以外の移動体に当接させられて回転する構成であってもよい。
【0048】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
6…ベルト(移動体)、10…プーリユニット、11…取付ボルト、11a…ヘッド部、11b…ボルト軸部、12…支持部、12b…第2ベアリング支持部、12c…カバー部、13…ベアリング、14…プーリ、15…ダストカバー、16…脱落防止部、16a…脱落防止部貫通孔(貫通孔)、16b…第1ベアリング支持部、16c…凸部、B2…溝部。
図1
図2
図3
図4