(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】イヌ抗体ライブラリ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230606BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230606BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/13
C40B40/10 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2019570116
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2018066563
(87)【国際公開番号】W WO2018234438
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-28
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティラー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】バルトフーバー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ストローナー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラデツキ-バエー,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】プラッスラー,ヨゼフ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/092313(WO,A1)
【文献】OLIVIA RAY,UNIQUE MONOCLONAL CANINE (DOG) ANTIBODY PRODUCTION BY CREATIVE BIOLABS,[ONLINE],2016年02月02日,P1-2,https://articles.abilogic.com/134652/unique-monoclonal-canine-dog-antibody.html
【文献】TILLER, T. et al.,A fully synthetic human Fab antibody library based on fixed VH/VL framework pairings with favorable biophysical properties,mAbs,Volume 5, Issue 3,P. 445-470
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C40B
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成イヌ抗体ライブラリにおいて、前記ライブラリが、
以下の生殖細胞系列VH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも1種のメンバーを含み、かつ
以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項2】
請求項1に記載のライブラリにおいて、翻訳後修飾(PTM)部位が、前記生殖細胞系列VH
1領域又は前記生殖細胞系列VL領域のうちの1種以上から除去されることを特徴とするライブラリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のライブラリにおいて、前記ライブラリが前記VH
1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、及びVs365(λ)(配列番号13)を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のライブラリにおいて、前記ライブラリが前記VH
1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のライブラリにおいて、前記ライブラリが以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のライブラリにおいて、前記ライブラリの本質的に全てのVH/VL組合せが、1ファージ当たり少なくとも0.5Fabのディスプレイ比で、効率的にディスプレイされることを特徴とするライブラリ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される場合に、少なくとも85%のモノマー含有量を有することを特徴とするライブラリ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で発現される場合に、少なくとも90%のモノマー含有量を有することを特徴とするライブラリ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のライブラリにおいて、全てのVH/VL組合せが熱的に安定であることを特徴とするライブラリ。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のライブラリメンバーをコードすることを特徴とする核酸分子のコレクション。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子をコードすることを特徴とするベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸分子又は請求項11に記載のベクターを含むことを特徴とする組換え宿主細胞。
【請求項13】
抗原に特異的な抗体を単離するための方法において、上記方法が:
(a)請求項1乃至9の何れか1項に記載のライブラリを抗原と接触させるステップと;
(b)前記抗原に結合しない前記ライブラリのメンバーを除去するステップと、
(c)前記抗原に結合している前記ライブラリのメンバーを回収するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全イヌ抗体の選択に好適な、イヌライブラリ、例えば、合成抗体ライブラリなどに関する。本発明はまた、イヌ抗体の個々又はコレクションをコードする合成核酸配列、すなわちイヌ抗体ライブラリをコードする核酸配列に関する。このようなライブラリを生成及び使用する方法が提供される。特に、本発明は、特定の生物物理学的特性を有する完全イヌ抗体のライブラリを生成するための、合成生殖細胞系列配列の使用による完全イヌ抗体のライブラリの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリン、例えば抗体などは、製薬産業にとって関心が継続し、高まっている。2000年以来、モノクローナル抗体に関する治療市場は指数関数的に成長しており、2007年には、米国で最も売れている20のバイオテクノロジー薬のうちの8つが治療用モノクローナル抗体であり、その各々の治療薬の世界年間売上高は、50億米ドルを超えている。治療用抗体は、多くの疾患の治療を向上させ、最も重篤で困難な疾患であっても、患者の生活の質をますます向上させる。
【0003】
犬などのコンパニオンアニマルは、ヒトに内在する類似又は更には同じ生物学的メカニズム及び障害と同様の疾患を発症する。一例として、リンパ腫は、イヌ血液リンパ系の最も一般的な腫瘍である。これは、全てのイヌの腫瘍のおよそ4.5%及び全ての悪性腫瘍の15%に相当する。イヌリンパ腫(CL)は、通常、急速に致命的であり、診断後1~3か月以内に死に至る(Squire et al,1973;Steven E.Crow, 2008)。更に、米国では成犬の5匹に1匹が関節炎を患っており、犬がヒトの関節疾患、例えば変形性関節症、前十字靭帯の破壊及び半月板の損傷のモデルとして使用されていると推定される。
【0004】
したがって、治療用モノクローナル抗体は、ヒトの治療のためだけでなく、犬の治療のためにも非常に有望な薬物クラスを提供する。
【0005】
犬の治療に抗体を使用する試みはすでに存在している。米国食品医薬品局(FDA)がヒトのがんの治療のための最初のモノクローナル抗体を承認する前でも、1992年に米国農務省(USDA)はモノクローナル抗体MAb 231をリンパ腫を有する犬に使用することを承認した。MAb 231は、1975年にKohler及びMilsteinによって開発されたハイブリドーマ技術を使用して生成され、イヌリンパ腫細胞株17-71に特異的に結合するマウス由来のモノクローナル抗体である(例えば:米国特許第5169775A号明細書参照)。MAb 231は、正常細胞ではなく腫瘍細胞に結合することが実証されており、細胞毒性を媒介する治療上望ましいマウスアイソタイプIgG2aのものであった。
【0006】
一方、抗体を「イヌ化」する方法、したがってイヌ抗体を模倣する方法が使用されている。例えば、Gearing et al.(BMC Veterinary Research 2013,9:226)は、発現されたイヌ免疫グロブリン配列に基づくアルゴリズムを使用して、既存のラット抗NGFモノクローナル抗体を組換えイヌ化抗NGF mAbに変換することによる「完全イヌ化」抗NGFモノクローナル抗体の生成を開示している。
【0007】
本発明者らの知る限り、完全合成イヌ抗体ライブラリも、事前定義された多様なVH/VL組成を有する他の信頼できるイヌ抗体ライブラリも以前に開示されていない。本発明において、天然のイヌ抗体配列の合理的な分析及びライブラリの洗練された設計により、生物医学研究に広く有用な最初の完全合成イヌ抗体ライブラリがもたらされた。ライブラリのメンバーも、高いモノマー含有量及び高い熱安定性などの有利な特性のために選択された。
【0008】
合成イヌ抗体ライブラリをスクリーニングする方法に関しては、ファージ、大腸菌(E.coli)、酵母などでのディスプレイを使用することができる。好ましいファージディスプレイでは、例えば、抗体は、バクテリオファージ表面タンパク質上の融合ポリペプチドとして提示される。抗体ディスプレイされたファージ粒子を対象となる標的分子(例えば、固相(例えば、マイクロタイタープレート、磁気ビーズなど)又は溶液中に固定化)と接触させて、それにより親和性選択を行う。標的分子と親和性を有する抗体を発現するファージが選択され、標的分子に結合しない抗体を有するファージは、選択ラウンド中に洗い流され、一般に「(バイオ)パニング」と呼ばれる。ファージディスプレイでは、選択されたファージ上で提示された抗体は、それをコードする遺伝子と1対1で対応するため、対象となる抗体を簡単に特定することができる。更に、抗体をコードする遺伝子は、容易に増幅できるため、ファージディスプレイは、大きなライブラリから抗体をスクリーニング及び単離する方法として広く使用されている。
【発明の概要】
【0009】
イヌ生殖細胞系列配列によってコードされる免疫グロブリン配列は、犬では免疫原性がないと予想されるため、本発明者らは最も豊富なイヌ抗体のクラスを表す生殖細胞系列免疫グロブリン配列を探索した。
【0010】
Bao et al.(Veterinary Immunology and Immunopathology 137 (2010) 64-75)によれば、イヌ抗体VH遺伝子レパートリは、80種のVHセグメント(その中の41種は機能性であり、39種は偽遺伝子である)、6種のDHセグメント、及び3種のJHセグメントを含む。VH遺伝子は、上記VH遺伝子レパートリからの異なるV、D、及びJ遺伝子セグメントの組合せにより形成され、VD及びVJジョイントにて短いコード配列の付加又は欠失により結合されて抗体の多様性を高める。胚中心エントリーに先立って生じるVDJ組換えは完全にランダムではないが、特定のVH遺伝子は他の遺伝子よりも頻繁に使用される。
【0011】
イヌでは、1-VH62(Vs624)及び1-VH44(Vs635)が、脾臓B細胞で最も頻繁に使用されるVHセグメントであることが確認され、1-VH62で27%、1-VH44で23.4%が生じる(Bao et al.2010)。残りの全てのVHは、11%未満の頻度で使用された。イヌでは、3種のVHファミリー(VH1、VH2、及びVH3)が存在し、その大半はVH1ファミリーに属し、2-VH51、2-VH64、及び2-VH66はVH2ファミリーに属し、3-VH80のみがVH3ファミリーメンバーを表す。
【0012】
イヌの抗体軽鎖はまた、V及びJ遺伝子セグメントによってコードされた可変領域並びにκ及びλ遺伝子によってコードされた定常領域に基づいている。カニス・ファミリアス(Canis familiaris)の免疫グロブリンλ配列は、4つのVLλ鎖ファミリー[V-I(GenBankアクセッション番号XM845300)、V-II(GenBankアクセッション番号XM543519)、V-III(GenBankアクセッション番号XM844188)、及びV-IV (GenBankアクセッション番号XM844237)]にグループ化できる。C.ファミリアス(C.familiaris)の免疫グロブリンκ配列もまた、4つのVLκ鎖ファミリーV-I(Gen Bankアクセッション番号XM849621)、V-II(Gen Bankアクセッション番号XM844874)、V-III(Gen Bankアクセッション番号XM849629)、及びV-IV(Gen Bankアクセッション番号XM849668)配列にグループ化できる(Braganza et al.,Veterinary Immunology and Immunopathology 139 (2011) 27-40)。犬は90%のλ軽鎖及びわずか10%のκ軽鎖を発現することがわかった(Braganza et al.,Veterinary Immunology and Immunopathology 139 (2011) 27-40)。しかし、これまでのところ、イヌの特定の軽鎖の分布及び配置、並びにイヌで発生するVH/VL組合せはほとんど特徴付けられていない。
【0013】
文献及び配列類似性分析に記載されているVH遺伝子の分布に基づいて、特定のVH遺伝子が合成イヌ抗体ライブラリ用に選択された。VL遺伝子については、Braganza et al.,2011で提供される情報、並びにhttp://vgenerepertoire.orgで入手可能な86種のλ軽鎖生殖細胞系列配列及び29種のκ軽鎖生殖細胞系列配列に基づく共通配列を使用して、合成イヌ抗体ライブラリ用の特定の軽鎖生殖細胞系列配列を選択した。
【0014】
5種の代表的なイヌVH生殖細胞系列配列及び6種の代表的なイヌVL生殖細胞系列配列を試験した(4種のλVL、2種のκVL)。30の可能なVH/VLの組合せから、本発明者らは、次の有利な特性を示す6種の組み合わせを特定した:(i)それらは、Fabフォーマットの糸状ファージの先端で高いディスプレイ率を示し、(ii)それらは、Fabフォーマットで高いモノマー含有量を有する可溶性形態で発現し、(iii)IgGフォーマットで高いモノマー含有量で表される。
【0015】
フレームワークの選択は、好ましい生物物理学的特性を有し、in-vivoでの成熟を受けていない合成ライブラリに由来する抗体の不足がない抗体を得る機会を最適化するために選択された。このような好ましくて所望の生物物理学的特性には、例えば、本明細書に例示されるように、より高い安定性及び凝集傾向の低さが含まれる。
【0016】
6種の最も好ましいVH/VL組合せに関して、L-CDR3及びH-CDR3領域は、それぞれ非常に多様化されたL-CDR3及びH-CDR3ライブラリカセットに置き換えられ、それにより、5×109超のメンバーの全体的なライブラリサイズを実現する。それぞれの制限部位が導入され、L-CDR3及びH-CDR3ライブラリカセット挿入が可能になった。
【0017】
加えて、望ましくない翻訳後修飾(PTM)部位を、特定の生殖細胞系列配列から除去し、それぞれのVH又はVL遺伝子及び対応するタンパク質の発現及び生物物理学的特性を更に最適化した。
【0018】
治療用途の抗体製剤で生じる翻訳後修飾に注意することが重要である。PTMは、最初のin vitroでの特性評価のために作成された抗体サンプルでは必ずしも発生しないが、PTMは、高濃度の抗体サンプル及び長期保存条件下で発生する可能性があり、in vivoでも発生する場合がある。それにより、PTMは抗体の安定性及び/又は均一性を妨げる可能性があり、抗体機能の喪失につながり得る。PTMの例としては、酸化(Met、Trp、His)、脱アミド化(Asn、Gln)、異性化(Asp)、又はN-結合型グリコシル化(Asn)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本開示は、合成イヌ抗体ライブラリ、好ましくは、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含むライブラリを提供する。
【0020】
一態様では、本明細書で提供される上記ライブラリは、少なくとも2種の生殖細胞系列VH1領域及び少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む。
【0021】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下の生殖細胞系列VH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも1種のメンバーを含むライブラリが本明細書で提供される。
【0022】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下の生殖細胞系列VH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2種のメンバーを含むライブラリが本明細書で提供される。別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを更に含むライブラリが本明細書で提供される。
【0023】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)のうちの少なくとも1種を含むライブラリが本明細書で提供される。本開示の一実施形態では、上記生殖細胞系列VL領域は、以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)から選択される。
【0024】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)のうちの少なくとも2種を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0025】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0026】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも1種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)のうちの少なくとも1種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0027】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)のうちの少なくとも2種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0028】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323(λ)(配列番号16)、及びVs365(λ)(配列番号13)からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0029】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、翻訳後修飾(PTM)部位が、生殖細胞系列VH領域又は生殖細胞系列VL領域のうちの1種以上から除去されるライブラリが本明細書で提供される。
【0030】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがVH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、及びVs365(λ)(配列番号13)を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0031】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがVH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せを含むライブラリが本明細書で提供される。
【0032】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下の生殖細胞系列VH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2つのメンバーを含むライブラリが本明細書で提供される。別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが少なくとも2つの生殖細胞系列VL領域のメンバーを更に含むライブラリが本明細書で提供される。
【0033】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも1種を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0034】
本開示の一実施形態では、上記生殖細胞系列VL領域は、以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0035】
一態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも2種を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0036】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0037】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも1種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも1種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0038】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも2種、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも2種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0039】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが生殖細胞系列VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)、並びに以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0040】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、翻訳後修飾(PTM)部位が、生殖細胞系列VH領域又は生殖細胞系列VL領域のうちの1種以上から除去されるライブラリが本明細書で提供される。
【0041】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがVH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0042】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0043】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、本明細書で開示されるVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0044】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0045】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せのうちの1種以上からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0046】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、本明細書で開示されるVH/VL組合せのうちの1種以上からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0047】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0048】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0049】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、本明細書で開示されるVH/VL組合せのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0050】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0051】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0052】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも8種、少なくとも10種、少なくとも12種、少なくとも14種、少なくとも16種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0053】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも8種、少なくとも10種、少なくとも12種、少なくとも14種、少なくとも16種からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0054】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも80%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリが本明細書で提供される。
【0055】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも50%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0056】
別の態様では、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも80%の抗体又は機能性断片が、可変重鎖及び可変軽鎖の組合せを含み、上記可変重鎖及び可変軽鎖の組合せのフレームワーク領域が、以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)、VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上からなるライブラリが本明細書で提供される。
【0057】
一態様では、好ましくは少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び/又は少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域を含むライブラリのような、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリの本質的に全てのVH/VL組合せが、効率的にFabフォーマットでディスプレイされるライブラリが本明細書で提供される。
【0058】
一態様では、上記ライブラリの上記VH/VL組合せはFabフォーマットでディスプレイされ、1ファージ当たり少なくとも0.5Fabのディスプレイ比を有する。
【0059】
一態様では、好ましくは少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び/又は少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域を含むライブラリのような、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現されるライブラリが本明細書で提供される。一実施形態では、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される上記VH/VL組合せは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のモノマー含有量を有する。
【0060】
一態様では、好ましくは少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び/又は少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域を含むライブラリのような、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で発現されるライブラリが本明細書で提供される。一実施形態では、IgGフォーマットの哺乳類系で発現される上記VH/VL組合せは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のモノマー含有量を有する。
【0061】
一態様では、好ましくは少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び/又は少なくとも2種の生殖細胞系列VL領域を含むライブラリのような、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、熱的に安定であるライブラリが本明細書で提供される。
【0062】
本開示はまた、上記合成イヌ抗体ライブラリの抗体をコードする核酸分子のコレクションを提供する。
【0063】
本開示はまた、上記核酸分子をコードするベクターを提供する。
【0064】
本開示はまた、上記核酸分子又はベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。
【0065】
本開示はまた、抗原に特異的な抗体を単離するための方法において、上記方法が:
(a)本開示の合成イヌ抗体ライブラリを抗原と接触させるステップと、
(b)抗原に結合しない(又は抗原に特異的ではない)ライブラリのメンバーを除去するステップと、
(c)抗原に結合している(又は抗原に特異的な)ライブラリのメンバーを回収するステップと、
を含む方法を提供する。
【0066】
本開示はまた、上述のライブラリ又は上述の方法から単離される抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、41種のイヌVH遺伝子の同一性表分析が、アライメントに含まれる配列に関する全ての可能な配列対の距離値を示す。配列対間の距離スコア(すなわち、100から同一性スコアを差し引いたもの)が示される。配列対間の同一性スコアは、対間の全てのアンギャップド(ungapped)位置間の同一残基の割合である。
【
図2】
図2は、29種のイヌVκ遺伝子の同一性表分析が、アライメントに含まれる配列に関する全ての可能な配列対の距離値を示す。配列対間の距離スコア(すなわち、100から同一性スコアを差し引いたもの)が示される。配列対間の同一性スコアは、対間の全てのアンギャップド位置間の同一残基の割合である。
【
図3】
図3は、86種のイヌVλ遺伝子の同一性表分析が、アライメントに含まれる配列に関する全ての可能な配列対の距離値を示す。配列対間の距離スコア(すなわち、100から同一性スコアを差し引いたもの)が示される。配列対間の同一性スコアは、対間の全てのアンギャップド位置間の同一残基の割合である。
【
図4】
図4は、Fab-ディスプレイ比を評価するためのVH/VLコンストラクトのサブセットのウェスタンブロット分析である。
【
図5】
図5は、効率的なファージディスプレイに好適なディスプレイ比(典型的には、0.5~2Fab/ファージ)を示す、
図4に示されるブロットの密度測定分析である。
【
図6】
図6は、30種のVH/VL組合せを、ELISAにより細菌細胞溶解物における相対的Fab発現について分析し、各VH/VL対の発現レベルを参照Fab対照の発現と比較して決定した。本質的に、全ての試験されたFab VH/VL対は、対照の少なくとも0.5の相対発現を示した。λクローンは、平均して、最高の相対的なFab発現レベルを有した。サンプル番号は表3に体系化されている。
【
図7】
図7は、30種のVH/VL組合せのFab発現収量(棒として示される;左軸)及びモノマー含有量(点として示される;右軸)である。サンプル番号は表3に体系化されている。
【
図8】
図8は、30種のVH/VL組合せの研究規模のIgG発現収量(棒として示される;左軸)及びモノマー含有量(点として示される;右軸)である。サンプル番号は表3に体系化されている。
【
図9】
図9は、関連する固有の制限部位を含むファージディスプレイベクターpCaDisの必須部分を示す。
【
図10】
図10は、関連する固有の制限部位を含む細菌Fab発現ベクターpCaBxの必須部分を示す。
【
図11】
図11は、ライブラリの組成ごとに予想されるVHマスター遺伝子の分布が示すとおりの、イヌ抗体ライブラリの高品質及び正確性である。
【
図12】
図12は、例示的な軽鎖CDRに関するライブラリの対応する位置で得られたアミノ酸(右側の棒)と比較した設計されたアミノ酸分布(左側の棒)が、合成ライブラリの正確且つ正しい組成を確認する。
【
図13】
図13は、約790万配列のMiSeq NGS品質管理後に得られたCDR-H3の長さ分布(暗い棒)と比較したCDR-H3の設計の長さ分布(白い棒)である。
【
図14】
図14は、Fabスクリーニング結果のドットブロットの可視化である。eGFPへの特異的結合のバックグラウンド値を超えるシグナルをx軸に示し(直接ELISA)、Fab発現の結果をy軸に示す(Fab捕捉ELISAのバックグラウンドを超えるシグナル)。ドットの形は、それぞれのパニングサブコードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0069】
数値及び範囲の文脈における用語「約」又は「およそ」は、当業者であれば本明細書に含まれている教示から明らかなように、所望の数又は割合の配列相同性を有することなど、本発明を意図されているとおりに実施することができるような、提示されている値又は範囲に近似するか又はそれに近い数値又は範囲を指す。これは、少なくとも部分的には、培養条件の変動及び生物系の変異性による。したがって、これらの用語は、系統誤差から生じる誤差を超える値を包含する。これらの用語は、暗示的なものを明示的にする。
【0070】
本明細書において本発明の概要及び説明に示されている全ての範囲は、範囲の数値の付近にある又はその間にある全ての数又は値を含む。本発明の範囲は、その範囲にある全ての整数値、小数値、及び分数値を明示的に表記及び表示する。用語「約」は、範囲を記述するために使用することができる。
【0071】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、抗体全体及び抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部部分」)又それらの単鎖を含む。天然「抗体」は、ジスルフィド結合により相互に結合された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域で構成されている。IgG、IgA、又はIgD抗体の重鎖定常領域は、3種のドメインCH1、CH2及びCH3で構成されているが、IgM及びIgE抗体の重鎖は、4種のドメインCH1、CH2、CH3、CH4で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域で構成されている。軽鎖定常領域は1種のドメインCLで構成されている。VH領域及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分化することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が点在している。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクタ細胞)及び古典的な補体系の第1成分(Clq)等の宿主組織又は宿主因子への免疫グロブリン結合を媒介し得る。フレームワーク領域及びCDRの長さは、正確に定義されている(Kabat,1991,J.Immunol.,147,915-920.;Chothia & Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883;Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.273:927-948を参照されたい)。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成する軽鎖及び重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、主に抗原への結合に関与するCDRの配置及び整列に役立つ。
【0072】
抗体の「抗原結合部分」又は「断片」という用語は、本出願において、同じ意味で用いられる。これらの用語は、所与の抗原に特異的に結合する能力を保持するインタクト抗体の1種以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、インタクト抗体の断片により実施することができる。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例としては、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);並びに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。好ましい抗体の抗原結合部分又は断片は、Fab断片である。
【0073】
更に、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、これらVL及びVHを、VL領域及びVH領域が対形成して一価の分子(一本鎖Fv(scFV)として既知である)を形成する単一タンパク質鎖として作製することが可能な人工ペプチドリンカーにより、これらVL及びVHを組換え法を使用して連結することができる(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)。そのような単鎖抗体は、抗体の1つ以上の「抗原結合部分」を含む。これらの抗体断片は当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、断片は、インタクト抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。また、抗原結合部分を単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR及びbis-scFvに組み込むことができる(例えばHollinger and Hudson,(2005)Nature Biotechnology 23,9,1126-1136を参照されたい)。抗体の抗原結合部分は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドをベースとするスキャホールドに移植することができる(米国特許第6,703,199号明細書を参照、この明細書は、フィブロネクチンポリペプチドモノボディについて記載する)。抗体結合部分は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む単鎖分子中に組み込むことができる(Zapata et al.,(1995)Protein Eng.8:1057-1062;及び米国特許第5,641,870号明細書)。
【0074】
用語「イヌ抗体」は、本明細書で使用する場合、フレームワーク領域及びCDR領域の両方が、イヌ起源の配列から誘導される可変領域を有する抗体を指す。例えば、フレームワーク領域及びCDR領域は両方とも、イヌ起源の配列から誘導されてもよい。更に、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域はまた、このようなイヌ配列、例えばイヌ生殖細胞系列配列又はイヌ生殖細胞系列配列の変異型から誘導される。本発明のイヌ抗体は、イヌ配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発、又はin vivoでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含んでもよい。
【0075】
用語「ナイーブイヌ免疫レパートリ」は、犬の免疫系に由来する抗原未経験B細胞から単離された核酸のレパートリを意味し、ここで、これらの機能性断片の抗体をコードする核酸は、体細胞超突然変異を受けていないため、生殖細胞系遺伝子の核酸を含み、V(D)J遺伝子セグメント再編成が発生していると考えられる。レパートリは、個体のもの又は集団のものであってもよい。好ましくは、免疫レパートリは、サンプルバイアスを回避するために複数の個体から入手される。
【0076】
用語「イヌ免疫レパートリ」は、イヌの免疫系からのB細胞から単離される核酸のレパートリを意味する。レパートリは、個体のもの又は集団のものであってもよく、ナイーブB細胞及び/又は抗原経験済B細胞由来のものであってもよい。好ましくは、免疫レパートリは、サンプルバイアスを回避するために複数の個体から入手される。
【0077】
用語「単離された抗体」は、異なる抗原結合特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。しかしながら、抗原と特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原と交差反応し得る。更に、単離された抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0078】
用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子により提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgA、IgG、例えばIgG1又はIgG4)を指す。イヌにおいては、4つのIgGサブクラス:IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-D(L.M. Bergeron et al. Veterinary Immunology and Immunopathology 157 (2014) 31-41)が存在する。アイソタイプはまた、これらクラスのうちの1つの修飾型を含み、修飾は、Fc機能を変更して、例えばエフェクター機能又はFc受容体に対する結合を増強又は低減するようになされる。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定エピトープの単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0080】
用語「ライブラリ」は、典型的には、103超、104超、105超、106超、107超、108超、109超、又は更には1010超のメンバーを含む、異なる分子のコレクションを指す。本発明の文脈におけるライブラリは、異種ポリペプチド又は核酸の混合物である。ライブラリは、各々が単一ポリペプチド又は核酸配列を有するメンバーで構成される。ライブラリメンバー間の配列の違いは、ライブラリに存在する多様性を担う。ライブラリは、ポリペプチド又は核酸の単純な混合物の形態をとってもよいか、又は核酸のライブラリで形質転換された生物若しくは細胞、例えば細菌、ウイルス、ファージ、動物若しくは植物細胞の形態であってもよい。好ましくは、各個々の生物又は細胞には、1種又は限られた数のライブラリメンバーが含まれる。有利には、核酸によってコードされるポリペプチドの発現を可能にするために、核酸は発現ベクター中に組み込まれる。特定の態様では、ライブラリは、宿主生物の集団の形態をとってもよく、各生物は、発現してその対応するポリペプチドメンバーを生成することができる核酸形態のライブラリの単一メンバーを含有する発現ベクターの1つ以上のコピーを含有する。そのため、宿主生物の集団は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の大きなレパートリをコードする可能性を有する。用語「コレクション」は、本質的に、用語「ライブラリ」と同じ意味で用いられる。
【0081】
抗体ライブラリは、免疫動物又は自然免疫若しくは感染したヒトに存在する特定の特異性に偏っている、免疫グロブリン又はこれらの断片から誘導することができる。或いは、抗体ライブラリは、ナイーブ免疫グロブリン又はこれらの断片、すなわち、免疫系で見られる特異性に偏りがない免疫グロブリンから誘導することができる。このようなライブラリは、「偏りがない(unbiased)」ライブラリと称される。好ましい実施形態では、本開示は、偏りがない抗体ライブラリ、すなわち、対象となる抗原に事前にさらされていないライブラリを提供する。バイアスがないため、このようなライブラリは、対象となる任意の潜在的な標的抗原に結合する抗体を含む。
【0082】
典型的には、免疫抗体ライブラリは、PCR系(又は関連する)クローニング技術によりソースB細胞からクローニングされるVH及びVL遺伝子プールで構築される。同じ方法で、偏りがないナイーブ抗体ライブラリを生成することも可能である。しかしながら、偏りがないナイーブ抗体ライブラリは、ライブラリ全体が完全にin vitroで構築される合成方法で生成することもできる。天然抗体レパートリの自然な偏り及び冗長性を模倣するために、組換えDNA技術が用いられ、使用される場合がある。このような抗体ライブラリは、「合成」抗体ライブラリと称される。用語「完全合成」ライブラリは、DNA合成、例えば、全遺伝子合成、PCR系の方法、又は関連するDNA技術により完璧に、すなわち完全に、de novoに構築される抗体ライブラリを指す。このようなライブラリでは、DNA全体、すなわち、CDRをコードする部分、並びにライブラリの抗体のCDR周辺部分をコードする部分(例えば、フレームワーク領域)が、de novoに構築される。したがって、用語「合成」及び「完全合成」は、DNAのde novoな起源を指す。対照的に、「半合成」抗体ライブラリでは、ライブラリの抗体の一部のみがde novoに構築されるが、他の部分、例えば特定のCDR領域は、自然源に由来する(この問題に関する多数のレビューが存在し、例えばSidhu et al.;Nat Chem Biol (2006),2,682-8を参照のこと)。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリを提供する。好ましい態様では、本開示は、完全合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0083】
用語「完全生殖細胞系列」は、生殖細胞を介して親から子孫に受け継がれる、抗体遺伝子及び遺伝子セグメントの核酸配列を指す。生殖細胞系列配列は、B細胞成熟の過程で組換え及び超突然変異事象により変化した成熟B細胞の抗体をコードするヌクレオチド配列とは区別される。用語「生殖細胞系列」は、完全生殖細胞系列配列、加えて例えば、望ましくない翻訳後修飾(PTM)部位の除去、望ましくないシステインの除去、抗体の最適化(例えば、親和性、半減期)若しくは所望の制限部位の導入、又は合成、増幅若しくはクローニングのエラーから生じる修飾の目的などで、アミノ酸配列にわずかな変異を加えて修飾又は操作された生殖細胞系列配列を指す。
【0084】
用語「翻訳後修飾」又は「PTM」は、タンパク質生合成中又はタンパク質生合成後のタンパク質の一般的な酵素的修飾を指す。翻訳後修飾は、アミノ酸側鎖又はタンパク質のC若しくはN末端で起こる。これらは、リン酸、酢酸、アミド基、又はメチル基などの新しい官能基を導入することにより、20種類の標準アミノ酸の化学的レパートリを延長することができる。多くの真核生物タンパク質にはまた、グリコシル化と呼ばれるプロセスでそれらに炭水化物分子が付着しているため、タンパク質フォールディングを促進し、安定性を高めることに加えて、調節機能を果たすことができる。修飾は、具体的には、N-結合型グリコシル化部位(NxS又はNxT)又は化学修飾、例えばAsp開裂(多くの場合にDPにおける)、Asp異性化(DS、DG)、アミド分解(NS、NG)を含む、いわゆる翻訳後修飾部位(すなわち既定のアミノ酸モチーフ)の部位で起こる。メチオニンは、溶媒にさらされると酸化され得る。修飾は、in vivo(血清中)又は製剤バッファー中での保存時に起こり、抗体結合の減少につながり得る。
【0085】
用語「生殖細胞系列可変領域」は:
a)生殖細胞系列遺伝子によりコードされた抗体若しくはその機能的断片の可変領域の核酸配列若しくはアミノ酸配列、
b)生殖細胞系列遺伝子によりコードされた抗体若しくはその機能的断片の可変領域の核酸配列若しくはアミノ酸配列であって、核酸配列が、例えばコドン最適化、所望の制限部位の付加、GC含有量の最適化、望ましくない翻訳後修飾(PTM)部位の除去、望ましくないmRNAスプライス部位の除去、若しくはmRNA不安定化モチーフの除去により修飾されている核酸配列若しくはアミノ酸配列、又は
c)生殖細胞系列遺伝子によりコードされた抗体若しくはその機能的断片の可変領域の核酸配列若しくはアミノ酸配列であるが、望ましくない翻訳後修飾(PTM)部位の除去、望ましくないシステインの除去、若しくは所望の制限部位の導入、若しくは合成、増幅若しくはクローニングのエラーから生じる修飾の目的などでアミノ酸配列にわずかな変異が加えられた核酸配列若しくはアミノ酸配列を意味する。
【0086】
本開示の意味では、「生殖細胞系列可変領域」は、「生殖細胞系列VH領域」又は「生殖細胞系列VL領域」である。イヌ「生殖細胞系列可変領域」の例を、表1に示す。
【0087】
用語「可変重鎖及び可変軽鎖組合せ」又は「VH/VL組合せ」は、1つの可変重鎖及び1つの可変軽鎖の組合せ(対)を意味する。抗体及び機能的断片、例えばFabは、可変軽鎖に結合した少なくとも1つの可変重鎖を含み、これが抗原結合領域を形成する。
【0088】
本明細書において用語「核酸」は、用語「ポリヌクレオチド」と同じ意味で用いられ、一本鎖形態又は二本鎖形態のいずれかにおけるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。この用語は、公知のヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基又は結合を含有する核酸であって、参照核酸と同様の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される合成、天然及び非天然の核酸を包含する。このような類似体の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
特に指示がない限り、特定の核酸配列は、保存的に修飾されたその変型(例えば、縮重コドン置換物)及び相補的配列、並びに明白に指示された配列も暗に包含する。特に、下記のように、縮重コドンの置換は、1種以上の選択された(又は全ての)コドンのうちの第三位を混合塩基残基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081,1991;Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608,1985; and Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98,1994)。
【0090】
本明細書で使用する場合、用語「最適化」は、ヌクレオチド配列を変更して、産生細胞又は生物、一般に、真核細胞、例えば、ピキア属(Pichia)の細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はヒト細胞中で優先されるコドンを使用してアミノ酸配列をコードすることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としてもまた公知である出発ヌクレオチド配列により元々コードされていたアミノ酸配列を完全に又は可能な限り保持するように操作されている。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞で好ましいコドンを有するように操作されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現も、本明細書で想定される。最適化されたヌクレオチド配列によりコードされたアミノ酸配列も、最適化されているという。
【0091】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸ミメティック(模倣物質)を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によりコードされたもの、並びに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)又は修飾変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造を保持する。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学的化合物を指す。
【0092】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では同じ意味で用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1種以上のアミノ酸残基が、対応する、天然に存在するアミノ酸の人工化学的ミメティックであるアミノ酸ポリマー、並びに、天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーであるアミノ酸ポリマーに適用される。特に指示がない限り、特定のポリペプチド配列は、その保存的に修飾された変異体も暗に包含する。
【0093】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における用語「同一の」又はパーセント「同一性」は、同じである2つ以上の配列又は部分配列を指す。以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、又は手作業によるアラインメント及び目視検査により測定して、比較窓又は指定領域にわたって対応が最大になるように比較及びアラインした際に、2つの配列が、同一(すなわち、具体化された領域にわたって、又は具体化されていない場合は配列全体にわたって60%の同一性、任意選択的に、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性)である具体化された割合のアミノ酸残基又はヌクレオチドを有する場合、2つの配列は「実質的に同一」である。任意選択的に、同一性は、長さが少なくとも約50個のヌクレオチド(又は10個のアミノ酸)である領域にわたって、又はより好ましくは長さが100~500個の若しくは1000個以上のヌクレオチド(又は20、50、200個以上アミノ酸)である領域にわたって存在する。
【0094】
配列比較の場合、典型的には、1つの配列が基準配列としての役割を果たし、それが試験配列と比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用してもよく、又は代替的パラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0095】
用語「組換え抗体」は、本明細書で使用する場合、組換え手段によって調製、発現、生成、又は単離される全ての抗体、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入若しくは染色体導入された動物(例えばマウス)又はそれから調製されたハイブリドーマから単離される抗体、げっ歯類、ヒト又はイヌ抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)から単離される抗体、組換え体から単離される抗体、組合せイヌ抗体ライブラリ、及び全て又は一部のヒト免疫グロブリン遺伝子配列の、他のDNA配列へのスプライジングを伴う他のあらゆる手段によって調製、発現、生成、又は単離される抗体を含む。このような組換えイヌ抗体は、フレームワーク領域及びCDR領域がイヌ生殖細胞系列免疫グロブリン配列から誘導される可変領域を有する。しかし、特定の実施形態において、このような組換えイヌ抗体は、in vitro突然変異誘発(又は、イヌIg配列について遺伝子導入した動物が用いられる場合、in vivo体細胞突然変異誘発)を受けてよいので、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、イヌ生殖細胞系列VH及びVL配列から誘導され、これに関連する一方で、生殖細胞系列イヌ抗体レパートリ内にin vivoで本来存在し得ない配列である。
【0096】
用語「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指す。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も指すことが意図されていることを理解すべきである。変異又は環境の影響のいずれかにより、特定の修飾は後の世代に起こり得るため、このような後代は事実上親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用する場合の用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0097】
用語「ベクター」は、ポリヌクレオチド分子において、このポリヌクレオチド分子が連結されている別のポリヌクレオチドの輸送が可能なポリヌクレオチド分子を指す。ベクターの1つのタイプである「プラスミド」は、環状二本鎖DNAループを指し、追加のDNAセグメントがこれに連結され得る。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、このウイルスベクターでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。特定のベクターは、このベクターが導入された宿主細胞中での自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時にこの宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより宿主のゲノムと一緒に複製される。更に、特定のベクターは、それらが作用可能に連結されている遺伝子の発現を指図することができる。このようなベクターは、本明細書においては、「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称される。一般的に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態をしていることが多い。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられている形態であるため、同じ意味で用いられてもよい。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクターなどの(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)、発現ベクターのそのような他の形態を含むことが意図されている。
【0098】
「ディスプレイベクター」は、このディスプレイベクターで形質転換された宿主細胞(例えば細菌宿主細胞)中において染色体外で組換えDNA分子の複製及び維持を指示する能力を有するDNA配列を含む。このようなDNA配列は当分野で公知である。ディスプレイベクターは、例えば、fd、M13又はfl繊維状バクテリオファージのクラスに由来するファージベクター又はファージミドベクターであり得る。このようなベクターは、タンパク質(例えば結合タンパク質又はその断片)の繊維状バクテリオファージの表面上でのディスプレイを容易にすることができる。ファージ上での、リボソーム上での、DNA上での、細菌細胞上での、又は真核細胞(例えば酵母細胞若しくは哺乳動物細胞)上でのディスプレイに好適なディスプレイベクターも当該分野で公知であり、例えばウイルスベクター又はキメラタンパク質をコードするベクターである。
【0099】
「固有」の制限部位とは、所与の核酸分子に1つだけ存在するか又は1回だけ出現する制限部位である。典型的には、そのような核酸分子は、本発明のライブラリメンバーをコードするベクターである。
【0100】
用語「位置依存性アミノ酸使用頻度」は、ポリペプチドの所与の位置における特定のアミノ酸配列の出現可能性を指す。本発明では、位置依存性アミノ酸使用頻度は、個々の生殖細胞系遺伝子により分類された再編成アミノ酸配列について決定した。これにより、その天然生殖細胞系の状況内でCDRを個々に正確に設計することが可能になる。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「本質的に全て」は、参照する構成要素が多かれ少なかれ純粋であることを意味する。少量又は他の異なる構成要素のみが、構成要素の有利な特性を制限又は影響しない出口をもたらす。構成要素の性質に応じて、本質的に全てが、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の構成要素を指してもよい。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「PTM-低」は、潜在的な翻訳後修飾(PTM)部位を除去するために、KabatのH-CDR1及び/又はH-CDR2内で修飾されている、抗体生殖細胞系列VH及び/又はVLアミノ酸配列を指す。好ましくは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4の潜在的なPTMモチーフは、修飾されない。
【0103】
重鎖の、κ軽鎖の、及びλ軽鎖のFR4についてのJ領域アミノ酸配列は、それぞれ、表2で示されるように、WGQGTLVTVSS(配列番号37)、FGAGTKVELK(配列番号38)、及びFGGGTQLTVL(配列番号39)である。
【0104】
発明の実施形態
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、上記ライブラリは、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VH1領域のメンバーを含む。
【0105】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択される。
【0106】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)の最適化変異体から選択される。
【0107】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択される生殖細胞系列VH1領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である。
【0108】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。
【0109】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618-PTM-低(配列番号9)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)から選択される。
【0110】
特定の態様では、本明細書で開示される合成イヌ抗体ライブラリは、偏りがない。特定の態様では、本明細書で開示される合成イヌ抗体ライブラリは、完全合成イヌ抗体ライブラリである。
【0111】
特定の態様では、本開示は、50%超の天然イヌVHレパートリを含む、合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、上記ライブラリは、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超の天然イヌVHレパートリを含む。
【0112】
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む合成イヌ抗体を提供する。
【0113】
他の態様では、上記ライブラリは、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種又は少なくとも5種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む。
【0114】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(配列番号15)から選択される。
【0115】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(配列番号15)の最適化変異体から選択される。
【0116】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(配列番号15)から選択される生殖細胞系列VL領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である。
【0117】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(配列番号15)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。
【0118】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、Vs843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0119】
特定の態様では、本開示は、50%超の天然イヌVLレパートリを含む、合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、上記ライブラリは、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超の天然イヌVLレパートリを含む。
【0120】
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域及び少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0121】
他の態様では、上記ライブラリは、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種又は少なくとも5種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む。
【0122】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域及び生殖細胞系列VL領域のうちの1種以上は、最適化変異体生殖細胞系列VH1領域又は生殖細胞系列VL領域である。
【0123】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0124】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。
【0125】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択される生殖細胞系列VH1領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一であり、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択される生殖細胞系列VL領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である。
【0126】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618-PTM-低(配列番号9)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVS843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0127】
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0128】
他の態様では、上記ライブラリは、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種又は少なくとも5種の生殖細胞系列VL領域のVH/VL組合せを含む。
【0129】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5) 及びVs635(配列番号2)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、Vs843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0130】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。
【0131】
特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618(配列番号4)、Vs628(配列番号5)、Vs624(配列番号1)、及びVs635(配列番号2)から選択される生殖細胞系列VH1領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一であり、上記生殖細胞系列VL領域は、Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14),Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択される生殖細胞系列VL領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である。特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域は、Vs618-PTM-低(配列番号9)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)から、並びにVs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)から選択される。
【0132】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号16)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せから選択される1種以上のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0133】
本開示の特定の態様では、上記VH/VL組合せは、配列番号4、配列番号1、配列番号2、配列番号12、配列番号16、配列番号14、配列番号15、及び配列番号13による生殖細胞系列VH1領域及び/又は生殖細胞系列VL領域と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である生殖細胞系列VH1又は生殖細胞系列VL領域を含む。
【0134】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号16)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せから選択される少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、又は少なくとも9種のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0135】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号16)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せから選択される少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、又は少なくとも9種のVH/VL組合せからなる合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0136】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号16)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号1)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号2)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せからなる合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0137】
特定の実施形態では、本開示は、イヌH-CDR3レパートリの天然のH-CDR3の50%超をカバーするH-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、上記ライブラリは、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超の天然H-CDR3長のイヌH-CDR3レパートリを含む。
【0138】
特定の実施形態では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ライブラリの本質的に全てのメンバーのH-CDR3領域が、固有の制限部位に隣接しているライブラリを提供する。
【0139】
特定の態様では、本開示は、Kabat長5~16のアミノ酸のH-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、本開示は、Kabat長5のアミノ酸、及び/又は6のアミノ酸、及び/又は7のアミノ酸、及び/又は8のアミノ酸、及び/又は9のアミノ酸、及び/又は10のアミノ酸、及び/又は11のアミノ酸、及び/又は12のアミノ酸、及び/又は13のアミノ酸、及び/又は14のアミノ酸、及び/又は15のアミノ酸、及び/又は16のアミノ酸のH-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0140】
特定の態様では、本開示は、表4~15にて示すようなH-CDR3設計を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0141】
特定の態様では、本開示は、H-CDR3領域が少なくとも1.0*109の多様性を有する合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、本開示は、H-CDR3領域が少なくとも1.0*1010、少なくとも1.0*1011、少なくとも1.0*1012、又は少なくとも1.0*1013の多様性を有する合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0142】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ライブラリの本質的に全てのメンバーのL-CDR3領域が、固有の制限部位に隣接しているライブラリを提供する。
【0143】
特定の態様では、本開示は、イヌL-CDR3レパートリの天然のL-CDR3の80%超をカバーするL-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、上記ライブラリは、85%超、90%超、又は95%超の天然L-CDR3長のイヌL-CDR3レパートリを含む。
【0144】
特定の態様では、本開示は、長さ9のアミノ酸のVκについてのKabat L-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。特定の態様では、本発明は、ライブラリの本質的に全てのVκメンバーのL-CDR3が、Kabat長9のアミノ酸のものである合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0145】
特定の態様では、本開示は、Kabat長10及び/又は11のアミノ酸のVλについてのL-CDR3を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。特定の態様では、本発明は、ライブラリの本質的に全てのVλメンバーのL-CDR3が、長さ10及び/又は11のアミノ酸のものである合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0146】
特定の態様では、本開示は、表16にて示すようなVκL-CDR3設計を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0147】
特定の態様では、本開示は、表17~18にて示すようなVλL-CDR3設計を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0148】
特定の態様では、本開示は、L-CDR3領域が少なくとも1.0*104の多様性を有する合成イヌ抗体ライブラリを提供する。他の態様では、本発明は、L-CDR3領域が少なくとも1.0*105、少なくとも1.0*106、少なくとも1.0*107、又は少なくとも1.0*108の多様性を有する合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0149】
特定の態様では、本開示は、表4~15にて示すようなH-CDR3設計並びに表16及び表17~18にて示すようなL-CDR3設計を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0150】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、ファージ粒子上に効率的にディスプレイされるライブラリを提供する。
【0151】
更なる他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリ中に含まれるVH/VL組合せの各々が、効率的にディスプレイされるライブラリを提供する。ディスプレイの効率は、本明細書の実施例2.6で記載されるとおり、サンドイッチファージELISAによって測定することができる。他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリ中に含まれるVH/VL組合せの各々が効率的にディスプレイされ、1ファージ当たり少なくとも0.5Fabのディスプレイ比を有するライブラリを提供する。更なる実施形態では、ディスプレイ比は、1ファージ当たり少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、少なくとも3.0、少なくとも3.1、少なくとも3.2、少なくとも3.3、少なくとも3.4、少なくとも3.5、少なくとも3.6、少なくとも3.7、少なくとも3.8、少なくとも3.9、又は少なくとも4Fabである。
【0152】
更なる他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される本質的に全てのVH/VL組合せが、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。更なる他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される上記ライブラリ中に含まれるVH/VL組合せの各々が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。
【0153】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現されるライブラリを提供する。更なる他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリ中に含まれるVH/VL組合せの各々が、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)でよく発現されるライブラリを提供する。Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)での発現は、定量化することができる。
【0154】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、細菌培養において1mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。
【0155】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、細菌培養において5mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。
【0156】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ほとんどのVH/VL組合せが、細菌培養において10mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。
【0157】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種のVH/VL組合せが、細菌培養において1mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。
【0158】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系でよく発現されるライブラリを提供する。更なる他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域を含む合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリ中に含まれるVH/VL組合せの各々が、IgGフォーマットの哺乳類系でよく発現されるライブラリを提供する。IgGフォーマットの哺乳類系での発現は、定量化することができる。特定の態様では、上記哺乳類系は、哺乳類懸濁培養物である。他の態様では、上記哺乳類系は、哺乳類接着性細胞培養物である。特定の態様では、上記IgGフォーマットは、イヌIgG-Bフォーマットである。他の態様では、上記IgGフォーマットは、イヌIgG-A、IgG-C、又はIgG-Dフォーマットである。特定の態様では、上記哺乳類系は、HKB11細胞を含む。他の態様では、上記哺乳類系は、PERC.6細胞を含む。更に他の態様では、上記哺乳類系は、CHO細胞を含む。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で5mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で10mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ほとんどのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で15mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、又は少なくとも6種のVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で20mg/L超のレベルで発現されるライブラリを提供する。
【0159】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリのメンバーの全て又は実質的に全てが、30%(v/v)の濃度のイソプロアノール(isoproanol)で安定であるライブラリを提供する。安定したフレームワークの全てのCDR誘導体は、試験されたVH/VL対のように動作することを前提としている。
【0160】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、全て又は実質的に全てのVH/VL組合せが、熱的に安定であるライブラリを提供する。熱安定性は、本出願にて記載したように測定され得る。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、62℃超のTmを有するライブラリを提供する。他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、64℃超のTmを有するライブラリを提供する。更に他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、66℃超のTmを有するライブラリを提供する。更に他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ほとんどのVH/VL組合せが、68℃超のTmを有するライブラリを提供する。更に他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、多くのVH/VL組合せが、70℃超のTmを有するライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、全て又は実質的に全てのVH1-組合せが、70℃超のTmを有するライブラリを提供する。
【0161】
特定の態様では、本開示は、本明細書にて開示したようなライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。
【0162】
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションにおいて、上記ライブラリが、少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含むコレクションを提供する。他の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションにおいて、上記ライブラリが、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VL領域のメンバーを含み、上記生殖細胞系列VH1領域をコードする上記核酸分子が、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、Vs628(配列番号23)、及びVs635(配列番号20)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域をコードする上記核酸分子が、Vs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323(λ)(配列番号34)、Vs365(λ)(配列番号31)、及びVs834(λ)(配列番号33)から選択されるコレクションを提供する。特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域をコードする上記核酸分子は、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、Vs628(配列番号23)、及びVs635(配列番号20)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域をコードする上記核酸分子は、Vs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323(λ)(配列番号34)、Vs365(λ)(配列番号31)、及びVs834(λ)(配列番号33)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。特定の態様では、上記核酸分子は、Vs618-PTM-低(配列番号22)、Vs624-PTM-低(配列番号24)、Vs628-PTM-低(配列番号28)、及びVs635-PTM-低(配列番号25)から、並びにVs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号36)、VS843(λ)(配列番号33)、及びVs365(λ)(配列番号31)から選択される。
【0163】
特定の態様では、本開示は、少なくとも1種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも1種の生殖細胞系列VL領域のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。他の態様では、本開示は、少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種の生殖細胞系列VH1領域、及び少なくとも2種又は少なくとも3種又は少なくとも4種又は少なくとも5種の生殖細胞系列VL領域のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域をコードする上記核酸分子は、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、及びVs635(配列番号20)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域をコードする上記核酸分子は、Vs236(κ)(配列番号30)、Vs323(λ)(配列番号34)、及びVs365(λ)(配列番号31)から選択される。特定の態様では、上記生殖細胞系列VH1領域をコードする上記核酸分子は、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、Vs628(配列番号23)、及びVs635(配列番号20)から選択され、上記生殖細胞系列VL領域をコードする上記核酸分子は、Vs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323(λ)(配列番号34)、Vs365(λ)(配列番号31)、及びVs843(λ)(配列番号33)から選択され、ここで翻訳後修飾(PTM)部位は除去されている。特定の態様では、上記核酸分子は、Vs618-PTM-低(配列番号22)、Vs624-PTM-低(配列番号24)、及びVs635-PTM-低(配列番号25)から、並びにVs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号36)、Vs365(λ)(配列番号31)、及びVs843(λ)(配列番号33)から選択される。
【0164】
特定の態様では、本開示は、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、Vs628(配列番号23)、及びVs635(配列番号20)から選択される生殖細胞系列VH1領域をコードする核酸分子、並びにVs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323(λ)(配列番号34)、Vs365(λ)(配列番号31)、及びVs843(λ)(配列番号33)から選択される生殖細胞系列VL領域をコードする核酸分子によってコードされるVH/VL組合せから選択されるVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。本開示の特定の態様では、合成イヌ抗体ライブラリをコードする上記核酸分子は、Vs618(配列番号22)、Vs624(配列番号19)、Vs628(配列番号23)、及びVs635(配列番号20)、Vs236(κ)(配列番号30)、Vs321(λ)(配列番号32)、Vs323(λ)(配列番号34)、Vs365(λ)(配列番号31)、及び/又はVs843(λ)(配列番号33)から選択される核酸分子と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性で同一である。
【0165】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)及び生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号34)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸分子、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31))をコードする核酸分子によってコードされる、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、又は少なくとも9種のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。特定の態様では、核酸は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)、生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)、生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)、生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号34)、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)、生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)、生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)、及び/又は生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸のうちの1種以上の最適化変異体である。特定の態様では、核酸は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)、生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)、生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)、生殖細胞系列VL領域Vs323(λ)(配列番号34)、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)、生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)、生殖細胞系列VH1領域Vs624(配列番号19)、生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)、生殖細胞系列VH1領域Vs635(配列番号20)、及び/又は生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸のうちの1種以上のPTM-低の変異体である。
【0166】
特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618-PTM-低(配列番号27)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号24)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号30)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号25)及び生殖細胞系列VL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号36)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs618-PTM-低(配列番号27)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号24)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸分子、並びに生殖細胞系列VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号25)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号31)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)及び生殖細胞系列VL領域Vs843(λ)(配列番号33)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号24)及び生殖細胞系列VL領域Vs843(λ)(配列番号33)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号25)及び生殖細胞系列VL領域Vs843(λ)(配列番号33)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)及び生殖細胞系列VL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号36)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号24)及び生殖細胞系列VL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号36)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号22)及び生殖細胞系列VL領域Vs321(λ)(配列番号32)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号24)及び生殖細胞系列VL領域Vs321(λ)(配列番号32)をコードする核酸分子、生殖細胞系列VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号25)及び生殖細胞系列VL領域Vs321(λ)(配列番号32)をコードする核酸分子によってコードされる、少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、又は少なくとも9種のVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリをコードする核酸分子のコレクションを提供する。
【0167】
特定の態様では、本開示は、本開示の実施形態で開示される核酸分子をコードするベクターを提供する。
【0168】
特定の態様では、本開示は、本開示の実施形態で開示される核酸分子を含む組換え宿主細胞を提供する。
【0169】
一態様では、本開示は、抗原に特異的な抗体を単離するための方法において、上記方法が:
(a)本明細書で開示される実施形態の何れか1つに記載のライブラリを抗原と接触させるステップと、
(b)抗原に結合しないライブラリのメンバーを除去するステップと、
(c)抗原に結合しているライブラリのメンバーを回収するステップと、
を含む方法を提供する。
【0170】
特定の態様では、本開示は、好ましい生物物理学的特性を有するイヌ抗体を提供する。このような抗体は、in-vivoでの成熟を受けていない合成ライブラリに由来する抗体の不足がない。このような好ましい所望の生物物理学的特性には、より高い安定性、より高い発現レベル、及び凝集傾向の低さが含まれる。
【0171】
特定の態様では、本開示は、本開示によって検討されるイヌライブラリから単離される抗体を提供する。特定の態様では、上記抗体は、本開示によって検討されるイヌライブラリから単離される抗体の修飾又は、変異抗体であってもよい。
【0172】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0173】
特定の態様では、本開示は、以下の生殖細胞系列VH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624(配列番号1)、Vs628(配列番号5)、及びVs635(配列番号2)のうちの少なくとも1種のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0174】
特定の態様では、本開示は、以下の生殖細胞系列VL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323(λ)(配列番号16)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs834(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも1種を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0175】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、翻訳後修飾(PTM)部位が、生殖細胞系列VH領域又は生殖細胞系列VL領域のうちの1種以上から除去されるライブラリを提供する。
【0176】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがVH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs834(λ)(配列番号15)を含むライブラリを提供する。
【0177】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが以下のVH/VL組合せ:VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及び VL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せのうちの1種以上を含むライブラリを提供する。
【0178】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリの本質的に全てのVH/VL組合せが、1ファージ当たり少なくとも0.5Fabのディスプレイ比で、効率的にディスプレイされるライブラリを提供する。
【0179】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される場合に、少なくとも85%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。
【0180】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で発現される場合に、少なくとも90%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。
【0181】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、全てのVH/VL組合せが、熱的に安定であるライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、上述のライブラリのメンバーをコードする核酸分子のコレクションを提供する。
【0182】
特定の態様では、本開示は、上述の核酸分子をコードするベクターを提供する。
【0183】
特定の態様では、本開示は、上述の核酸分子又は上述のベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。
【0184】
特定の態様では、本開示は、抗原に特異的な抗体を単離するための方法において、上記方法が:
(a)上述のライブラリを抗原と接触させるステップと、
(b)抗原に結合しないライブラリのメンバーを除去するステップと、
(c)抗原に結合しているライブラリのメンバーを回収するステップと、
を含む方法を提供する。
【0185】
特定の態様では、本開示は、上述のライブラリから単離されるか、又は上述の方法により単離される抗体を提供する。
【0186】
特定の態様では、本開示は、VH1から選択される生殖細胞系列VH領域のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0187】
特定の態様では、本開示は、以下のVH1領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)のうちの少なくとも1種のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0188】
特定の態様では、本開示は、κV-III、λV-I、及びλV-IIIから選択される生殖細胞系列VL領域のメンバーを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0189】
特定の態様では、本開示は、以下のVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)のうちの少なくとも1種を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0190】
特定の態様では、本開示は、VH領域:Vs618(配列番号4)、Vs624-PTM-低(配列番号6)、Vs628-PTM-低(配列番号10)、及びVs635-PTM-低(配列番号7)、並びにVL領域:Vs236(κ)(配列番号12)、Vs321(λ)(配列番号14)、Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)、Vs365(λ)(配列番号13)、及びVs843(λ)(配列番号15)を含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。特定の態様では、本開示は、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及び生殖細胞系列VL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及び VL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、生殖細胞系列VH1領域Vs618(配列番号4)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及び生殖細胞系列VL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs323-PTM-低(λ)(配列番号18)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs618(配列番号4)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs624-PTM-低(配列番号6)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs321(λ)(配列番号14)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs635-PTM-低(配列番号7)及びVL領域Vs236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域VS236(κ)(配列番号12)のVH/VL組合せ、VH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs365(λ)(配列番号13)のVH/VL組合せ、並びにVH1領域Vs628-PTM-低(配列番号10)及びVL領域Vs843(λ)(配列番号15)のVH/VL組合せから選択されるVH/VL組合せを含む合成イヌ抗体ライブラリを提供する。
【0191】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがイヌH-CDR3レパートリの天然のH-CDR3長の50%超をカバーするH-CDR3を含むライブラリを提供する。
【0192】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがKabat長5~16のアミノ酸のH-CDR3を含むライブラリを提供する。
【0193】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが表4~表15にて示すようなH-CDR3設計を有するライブラリを提供する。
【0194】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがH-CDR3領域において、少なくとも5E+09の多様性を有するライブラリを提供する。
【0195】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ライブラリのL-CDR3がKabat長8のアミノ酸(κ)並びにKabat長10及び11のアミノ酸(λ)のものであるライブラリを提供する。
【0196】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが表16及び表17~表18にて示すようなL-CDR3設計を有するライブラリを提供する。
【0197】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリがL-CDR3領域において、少なくとも1E+04の多様性を有するライブラリを提供する。
【0198】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリの本質的に全てのVH/VL組合せが、効率的にディスプレイされるライブラリを提供する。
【0199】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリの本質的に全てのVH/VL組合せが、効率的にディスプレイされ、1ファージ当たり少なくとも0.5Fabのディスプレイ比を有するライブラリを提供する。
【0200】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現されるライブラリを提供する。
【0201】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、Fabフォーマットの大腸菌(E.coli)で発現される本質的に全てのVH/VL組合せが、少なくとも85%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。
【0202】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、本質的に全てのVH/VL組合せが、IgGフォーマットの哺乳類系で発現されるライブラリを提供する。
【0203】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、IgGフォーマットの哺乳類系で発現される本質的に全てのVH/VL組合せが、少なくとも90%のモノマー含有量を有するライブラリを提供する。
【0204】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、全てのVH/VL組合せが、熱的に安定であるライブラリを提供する。
【0205】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ライブラリの本質的に全てのメンバーのH-CDR3領域が、固有の制限部位に隣接しているライブラリを提供する。
【0206】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、ライブラリの本質的に全てのメンバーのL-CDR3領域が、固有の制限部位に隣接しているライブラリを提供する。
【0207】
特定の態様では、本開示は、合成イヌ抗体ライブラリにおいて、上記ライブラリが偏りがないライブラリであるライブラリを提供する。
【実施例】
【0208】
実施例1:合成イヌ抗体ライブラリの生成
本開示は、イヌ免疫レパートリ中に存在するイヌVH及びVL遺伝子対を含む抗体候補のコレクション又はライブラリにおいて、望ましくない翻訳後修飾(PTM)部位を除去して、抗体発現及び生物物理学的特性を更に最適化するために、各メンバーが生殖細胞系列遺伝子配列又は修飾された生殖細胞系列配列(PTM-低と称される)を含むコレクション又はライブラリを提供する。ライブラリに組み込むために選択されたVH及びVL対は、ライブラリから選択された抗体の各々が都合よく開発可能である可能性を高める有利な生物物理学的特性を含む。ライブラリの組成を決定するために、複数の基準を評価する必要があった。以下の実施例は、評価された基準、評価方法、及び結果について記載する。
【0209】
実施例1.1:候補となるVL-及びVH-生殖細胞系列配列の選択
第1ステップでは、イヌ免疫レパートリからの優勢VH及びVL生殖細胞系列遺伝子を、文献(Bao et al.Vet Immunol Immunopathol.2010 Sep 15;137 (1-2):64-75;Steiniger et al.Mol Immunol.2014 May;59(1):71-8)から、及びBao et al.(Vet Immunol Immunopathol.2010 Sep;137(1-2):64-75)、Braganza et al.(Vet Immunol Immunopathol.2011 Jan;139(1):27-40)、Vgenerepertoire.org and AbYsis (http://www.bioinf.org.uk/abysis2.7/index.html)から入手可能な再配列されたイヌ抗体配列の分析により同定した。全体で、300超の再配列されたイヌVH、100Vκより大きい、及び150より大きいVλ配列を分析した。効率的な抗原-抗体相互作用のために、広いコンフォメーション-空間が有益である可能性があることが認識されているため、最終選択に構造的に異なる配列を含めるように注意した。したがって、第2ステップでは、イヌ生殖細胞系列レパートリからの構造的に多様なVH及びVL(Vκ及びVλ)遺伝子を、距離分析により同定した。結果を
図1、
図2、及び
図3に示す。
【0210】
制限酵素についてフランキング部位を有するV領域は、hu4D5-8抗体のCDR-H3(WGGDGFYAMDY)(配列番号43)、及びκCDR-L3(QQHYTTPPT)(配列番号44)、並びにλ様CDR-L3(QSYDSSLSGVV)(配列番号45)配列、並びにイヌJH、Jκ、及びJλ生殖細胞系列タンパク質配列(表2参照)をそれぞれ用いてGeneArtによって合成した。大腸菌(E.coli)発現に関するコドン使用最適化(まれなヒトコドンの回避)、非常に高い(>80%)又は非常に低い(<30%)GC含有量の領域の回避、並びにRNA不安定化モチーフなどの潜在的なシス作用配列モチーフ、並びに潜在的なスプライスドナー部位及び受容体部位の除去を、GeneArtにより実施した。合成されたIgV領域重鎖遺伝子は、VからC領域の境界に位置するXhoIの固有の3’制限部位に対するMfeIの固有の5’制限部位を含有する第1アミノ酸からの完全配列(EVQL)(配列番号46)をカバーした。CDR-H3の上流に、BssHIIのための制限部位を組み込み、後続のCDR-H3ライブラリ挿入を可能にした。IgVκ及びVλ領域軽鎖遺伝子配列は、修飾ompAリーダー配列に位置するNdeIの第1の固有の5’制限部位から、フレームワーク領域(FR4)のAcc65I/KpnIの3’制限部位までの範囲であった。CDR-L3の上流に、BbsIの制限部位を組み込み、後続のCDR-L3ライブラリ挿入を可能にした。次いで、5種の選択されたVH、4種のVλ、及び2種のVκ遺伝子からVH/VL遺伝子対を組み合わせて、30種のVH/VL組合せを作製した。標準的な分子生物学の技術を使用して、5種のVH領域コンストラクト(コンストラクトA~E)を、2種のVκ領域コンストラクト(#1~#2)又は4のVλ領域コンストラクト(#3~#6)と共に、ファージディスプレイベクターpCaDis18(gIII-Fab遺伝子融合)(
図9参照)及び細菌Fab発現ベクターpCaBx_FH(
図10参照)中にクローニングした。保持された全ての組合せを、配列検証した。最後に、これらの30種のVH/VL対を実験的に比較して、好ましい生物物理学的特性を有するVH/VL遺伝子対のサブセットを同定した。少なくとも以下の特性を評価した:1)in silico分析:a)CDR1+CDR2の長さ;b)翻訳後修飾(PTM)モチーフ;c)CDR中のメチオニンの存在;d)システインの存在;2)Fabディスプレイ比;3)Fab及びIgG発現比及び収率;4)Fab及びIgGモノマー含有量。
【0211】
実施例1.2:イヌH-CDR3の設計
抗体と抗原の最も近い接触部位は、抗体の相補性決定領域(CDR)である。H-CDR3及びL-CDR3は、抗原結合に主要な役割を果たしているため、これら2つのCDRに主に変動性が導入された。全ての他のCDRについて、生殖細胞系列配列又はPTMモチーフが除去された修飾生殖細胞系列配列を使用した。
【0212】
システイン残基は、バインダをパニング標的と共有結合させるジスルフィド結合の形成、又は抗体ホモダイマーの形成に関与する可能性があるため、一般に、CDR3の設計においては、システイン残基を回避した。このようなバインダは、標的選択的である可能性は低い。
【0213】
イヌCDR3の設計のために、再配列された抗体-配列をコンパイルし、H-CDR3及びL-CDR3を分析した。H-CDR3はDセグメント及びJセグメントによってVHに依存せずにコードされるため、H-CDR3の分析は、VH生殖細胞系列ファミリーに関係なく、全ての再配列された配列に対して行われた。
【0214】
記述されているとおり、本発明のアミノ酸分布分析により、イヌVH CDR3における最も頻繁なアミノ酸モチーフが、IMGT位置104~106(Chothia位置92~94)でのCAR/CAKであり、IMGT位置115~117(Chothia位置100x~94)についてはFDYモチーフ(Steiniger Molecular Immunology 59 (2014) 71-78)であることを確認した。
【0215】
例えば、システインの完全な回避、トリプトファン使用量の削減、及びグリコシル化部位(NxS、NxT)の回避によって、観察されたアミノ酸分布をわずかに修飾し、ライブラリ中のH-CDR3の長さが5~16のアミノ酸の設計を完成させた(表4~表15参照)。
【0216】
実施例1.3.:L-CDR3の設計
L-CDR3はJセグメントによって生殖細胞系列に依存せずに部分的にコードされるため、L-CDR3の分析は、VL生殖細胞系列ファミリーに関係なく、全ての再配列された配列に対して行われた。イヌの再配列されたVκ配列の分析に基づき、Kabat L-CDR3の長さが9のアミノ酸が、全てのVκ配列の約85%中に発生する。したがって、ライブラリ中のVκ領域についてのKabat L-CDR3の長さは、長さ9のアミノ酸に設定した(表16参照)。Vλ配列について、最も頻繁なKabat L-CDR3の長さは、11aa(60%)、続いて10aa(30%)である。したがって、ライブラリ中のVλ領域についてのKabat L-CDR3の長さは、長さ10及び11のアミノ酸に設定した(表17及び表18参照)。例えば、システインの完全な回避、及びグリコシル化部位(NxS、NxT)の回避によって、観察されたアミノ酸分布をわずかに修飾し、ライブラリ中のL-CDR3の設計を完成させた。
【0217】
実施例1.4:イヌライブラリの多様化
本実験で生成されたイヌ抗体ライブラリは、多様化したL-CDR3及びH-CDR3領域を含む。システイン及び停止コドンの導入を防ぐCDR3-カセットへの望ましいコドンのみの制御された組み込みを可能にするSlonomics技術によって、CDR3ライブラリカセットを生成した(Van den Brulle et al.Biotechniques.2008 Sep;45(3):340-3)。ライブラリ生成後の非選択クローンのシーケンシングにより、L-CDR3及びH-CDR3カセットの望ましくないDNA変異、欠失、挿入、及びフレームシフトの全体的な発生率が低いことが示された。
【0218】
本発明者らは、VH及びVLドメインの生化学的及び生物物理学的特性は、それぞれH-CDR3及びL-CDR3配列にも依存すると推論したため、VH/VL比較の目的で、特定のH-CDR3、κL-CDR3、及びλL-CDR3配列をそれぞれ選択されたイヌVH、Vκ、及びVλ遺伝子に導入することを決定した。H-CDR3(WGGDGFYAMDY)(配列番号43)及びκL-CDR3配列(QQHYTTPPT)(配列番号44)は、抗体hu4D5-8から誘導され(Carter et al.Proc Natl Acad Sci USA 1992;89:4285-9;)、全てがヒトのマスター遺伝子の評価に以前に適用されたλ様L-CDR-3(QSYDSSLSGVV)(配列番号45)が使用された(Knappik et al.,2000,J Mol Biol 296,57-86,Ewert et al.,J Mol Biol 2003;325:531-53)。
【0219】
実施例1.5 ディスプレイ及び発現ベクター
pMORPH18(Rauchenberger et al.J Biol Chem.2003 Oct 3;278 (40):38194-205)及びpMORPHx30(Prassler et al.J Mol Biol.2011 Oct 14;413(1):261-78)ベクターを、それぞれ、新しいFabディスプレイpCaDis18及びFab発現ベクターpCaBxを生成するためのテンプレートとして、以下の修飾を加えて使用した。両ベクターについて、Ig軽鎖コード配列の上流のompAリーダー配列を、C末端で修飾し、それぞれ制限部位NdeIを導入して、VL及びVHタンパク質配列の本物のN末端を確保し、pCaMx IgGベクターへのFab断片の好都合なサブクローニングを可能にした。加えて、哺乳類IgG発現ベクターセットを構築した。GeneArt(H.サピエンスコドン最適化)により、イヌIgG CH1及びCλ及びCκ配列を合成した。CHコンストラクトを、Kan stuffer (pCaMx_Stuffer)を含有するpM4_ベクター中にクローニングした。2つのコドン最適化Cλ及びCκ配列を、一般的なGeneartベクター中にクローニングした(pMA-T_CaMin κ pMA-T_CaMin λ)。最先端の分子生物学の方法を使用して、IgG変換を実施した。
【0220】
実施例2.イヌVH/VL対の生物物理学的特性評価
以下の実施例は、イヌVH/VL対の生物物理学的特性評価の方法及び結果を記載する。
【0221】
実施例2.1 ファージの調製
実施例1.1で合成された抗体組合せを、機能性試験用にFabディスプレイベクターpCaDis中にクローニングした。ベクターには5種のVH及び6種のVLマスター遺伝子の組合せが含まれ、30種の可能な組合せを得た。2xYT/Cam/1%グルコース培地でウェルの各々を満たし、それらを30種の生成された抗体コンストラクトからのシングルクローンとともに接種することによりマスタープレートを生成した。プレートを振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。翌日、マスタープレートを最終濃度15%グリセロールで保存し、-80℃で凍結した。ファージ調製物について、2xYT/Cam/1%グルコースに、マスタープレート由来のグリセロストック(glycerostocks)を接種し、OD600nmが0.5に達するまで、400rpmにて振盪しながらインキュベートした。次いで、細胞にVCSM 13ヘルパーファージを感染させ、振盪することなく37℃で30分間、次いで、400rpmにて振盪しながら更に30分間インキュベートした。細菌を遠心分離にかけ、34μg/mlのクロラムフェニコール、50μg/mlのカナマイシン及び0.25mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを含む2xYT培地(2xYT/Cam/Kan/IPTG)中に再懸濁させ、ファージ生成のために更に22℃で18~20時間インキュベートした。Fab提示ファージを含有する上清を新しいチューブに移し、上清量の1/5のPEG/NaCl(20%のPEG6000、ddH2O中2.5MのNaCl)を使用してファージを沈殿させた。遠心分離及び上清の除去後、ファージペレットを滅菌PBS中に再懸濁させた。OD268nmでの吸光度測定(Nanodrop,peqlab)により、ファージ力価を決定し、LB/Cam/Glucプレート上の感染大腸菌(E.Coli)TG1F+細胞の限界希釈プレーティングによって確認した。
【0222】
実施例2.2 ウェスタンブロットによるFabファージディスプレイ比
実施例2.1のように調製したファージ上清を使用して、ウェスタンブロット技術を用いて、ファージ粒子上のファージディスプレイ比を決定した。
【0223】
総容量10μlの約1E+09ファージを4×LDSローディング色素と混合し、80℃で10分間加熱した。ゲル(NUPAGE 4~12%のBis-Tris-ゲル、1.0mm×12ウェル、Novex、カタログNP0322Box)を、ランニングチャンバに入れ、チャンバに1×MESランニングバッファー(NUPAGE MES SDSランニングバッファー、20×、Invitrogenから調製した)を充填した。サンプル及びマーカーをゲル上にロードし、電気泳動を200Vで35分間実施した。ゲルを除去し、ddH20で洗浄し、タンパク質のウェスタンブロットメンブレンへの転写を、iBlotの開口で実施した。その後、メンブレンを室温で1.5時間、TBS-T中の10%粉乳でブロックした。メンブレンを素早くTBS-Tで洗浄し、抗-pIII抗体(マウス抗-pIII、MoBiTec、カタログ:PSKAN3;TBS-T中1:1000 3%MP)とともに室温で1時間インキュベートした。3×5分の洗浄ステップ後、メンブレンを抗-マウスIgG-HRP(抗-マウスIgG-HRP(P9)、Jackson Immuno Research、コード115-036-062;TBS-T中1:10’000、3%MP)とともに室温で1時間インキュベートした。メンブレンをTBS-Tで3×5分洗浄し、HRP基質(イモビロンウェスタンHRP気質、Millipore,カタログWBKLS0500)の添加後に、Biorad Imager(プログラム:タンパク質マーカーを示すための「ブロット比色分析」、及びHRP検出を示すための「ブロット化学」)で化学発光を記録した。抗-pIIIウェスタンブロットで、pIII(fl)及びpIII(ct)-Fdの相対量を決定した。結果を
図4に示す。
【0224】
ファージ粒子上のライブラリメンバーの効率的なディスプレイは、ファージディスプレイの選択を成功させるための必要条件である。本発明者らは、FabフォーマットのイヌVH/VL組合せのディスプレイ効率を決定するために、ウェスタンブロットを使用した。それらのデータは、本質的に全ての試験されたイヌVH/VL組合せがファージ上にディスプレイされることを示した。結果を
図5に示す。
【0225】
実施例2.3 相対的なFab発現 ELISA
pCaBx中にクローニングされた30種のVH/VL組合せのクローンを、成長培地(2xYT/Cam/IPTG/0.1%グルコース)に接種し、培地がわずかに濁るまで400rpmで約3時間振盪しながら37℃でインキュベートした。続いて、培養物を22℃で振盪しながら一晩インキュベートした後、BELバッファー(24.7mg/mlのホウ酸、18.7mg/mlのNaCl、1.48mg/mlのEDTA、2.5 mg/mlのリゾチーム、10MのNaOHでpH8.0に調整されている)を使用して細胞を溶解し、PBS中の10%粉乳でブロックした。抗-イヌF(ab’)2断片特異的捕捉抗体(ウサギ抗-犬IgG Fab’2抗体 非コンジュゲート;LifeSpan BioSciences, LS-C69729)、及びAP-コンジュゲート抗-犬IgG F(ab’)2断片検出抗体(ヤギ抗-犬IgG(H+L)-アルカリホスファターゼ抗体、Sigma SAB3700097)を AttoPhos(Roche)とともに使用して、ELISAによりFab発現を決定した。相対的なFab発現レベルは、それぞれのFab VH/VL対のシグナルから参照ヒト/イヌキメラ抗体のシグナルを除算することにより計算された。85%超の試験されたFab VH/VL対は、対照の少なくとも0.5の相対発現を示した。λクローンは、平均して、最も高い相対的Fab発現レベルを有した。結果を
図6に示す。
【0226】
実施例2.4 His-タグ付きFab断片の実験的スケールでの生成
大腸菌(E.coli)TG-1 F細胞における細菌発現ベクターによってコードされたFab断片の発現を、0.1%グルコース及び34μg/mLのクロラムフェニコールを追加した500mlの2xYT培地を使用して振盪フラスコ培養で実施した。OD600が0.5の値に達するまで、培養物を振盪させた。IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を添加して、更に20時間培養することにより、Fab発現を誘導した。細胞を回収し、リゾチームを使用して破壊した。His6タグ付き(配列番号47)Fab断片をIMAC(Bio-Rad,Munich,Germany)により単離し、イミダゾールを使用して溶離した。「PD10」カラム(GE Healthcare)を使用して、1×ダルベッコPBS(pH7.2)とのバッファー交換を実施した。サンプルを無菌濾過した(0.2μm)。タンパク質濃度を、UV分光測定法により決定した。サンプルの純度を、変性、非還元15%SDS-PAGEで分析した。30種のイヌVH/VL対の各々を表す精製Fab断片の%モノマーを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した。SECを、AeKTA精製システム(GE Healthcare Europe GmbH,Freiburg,Germany)で実施した。分離には、Superdex75 HR 10/30カラム(GE Healthcare Europe GmbH,Freiburg,Germany)を使用した。各サンプルについて、10μlのタンパク質をカラムにロードし、0.05mL/分の流量で分離を実施し、260及び280nmでのUV吸収を記録、分析した。ランニングバッファーは、Gibco D-PBS、pH7.4(Invitrogen,Paisley,USA)で構成された。結果を
図7に示す。
【0227】
図6及び
図7にて示すように、全ての試験されたイヌVH/VL組合せは、大腸菌(E.coli)で発現され、精製されたFabの発現率は、0.2mg/L~8mg/Lの細菌培養物(棒、左のy軸)の範囲であった。更に、単離された材料の特性評価により、精製されたイヌFabVH/VLの大部分が85%超のモノマー形態であることが明らかとなった。これは、ライブラリを使用したイヌ抗体の開発に対する有用性を示している。
【0228】
実施例2.5 IgGの探索的スケールの生成及びモノマー含有量の決定
真核生物HKB11細胞に、IgGの重鎖及び軽鎖の両方をコードするpCaMx哺乳類発現ベクターDNAをトランスフェクトした。トランスフェクション後3又は6日目に細胞培養上清を回収し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(MabSelect SURE,GE Healthcare,Munich,Germany)に供した。1×ダルベッコPBS(pH7.2)でバッファー交換を実施し、サンプルを無菌濾過した(0.2μm孔径)。
【0229】
タンパク質濃度を、UV分光測定法により測定し、IgGの純度をCE-SDS(LabChip GXII、Perkin Elmer)を使用して、変性、還元、及び非還元条件下で分析した。30種のイヌVH/VL対の各々を表す精製IgG1の%モノマーを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定した。Wyatt miniDAWN Treos及びWyatt Optilab rEX(Wyatt Technology Europe,Dernbach,Germany)と組み合わせたDionex UltiMate 3000チタンHPLCシステム(Dionex Corporation,Germering,Germany)で、HP-SECを実施した。分離には、Tosoh TSK-Gel G3000SWxlカラム(Tosoh Bioscience,Stuttgart,Germany)を使用した。各サンプルについて、15μgのタンパク質をカラムにロードし、0.5ml/分の流量で分離を実施し、280nmでのUV吸収を記録分析した。ランニングバッファーは、Gibco D-PBS、pH7.4(Invitrogen,Paisley,USA)で構成された。結果を
図8に示す(点、右のY軸)。十分な発現率を有するコンストラクトは、>95%の優れたモノマー含有量を示した。ライブラリクローニング及びCDR3多様化のスキャホールドとして使用されるVH/VL組合せの選択について、Fabに加えてIgG生産データの両方が考慮された。
【0230】
実施例2.6 相対Fabファージディスプレイ比 ELISA
主要コートタンパク質pVIIIを介したファージを捕捉するために、抗-M13抗体(Amersham)を使用して、及びディスプレイされたFabと結合する抗-Fd抗体(The Binding Site)を使用して、ELISAによりM13ファージ上のFabディスプレイを測定した。ファージ上清及び参照サンプルの適切な希釈物が、抗-M13ペルオキシダーゼコンジュゲート(Amersham)及びQuanta Blu(商標)(Pierce)を用いて検出された。抗-Fdの力価を抗-M13の力価で除算することにより、各サンプルについての相対ディスプレイ比の計算を実施した。参照ファージ調製物の検量線から力価を入手した。
【0231】
実施例2.7 Fab温度安定性 ELISA
細菌溶解物の適切な希釈物を、異なる温度(0℃、60℃、70℃、及び80℃)に45分間さらした。抗-6×His(配列番号47)捕捉抗体(R&D Systems)及びAP標識抗-イヌIg検出抗体をAttoPhos(Roche)とともに使用して、ELISAによりインタクトFab分子を検出した。
【0232】
実施例2.8.精製したIgGの熱安定性測定
IgGの熱安定性を、示差走査型蛍光定量法(DSF)によって測定する。DSFは、対象とするタンパク質の熱的なアンフォールディング(融点)を観察する蛍光色素系技法である。アンフォールディングタンパク質の疎水性アミノ酸側鎖と相互作用する疎水性色素の蛍光の温度勾配に伴う変化が観察される。以下の材料を使用する:Syproオレンジ蛍光色素(Sigma,#S5692);iCycler iQ PCRプレート、96ウェル(Biorad,#2239441);Microseal B接着シーラー(Biorad #MSB-1001);96ウェル光学パッド(Biorad,#ADR3296);及びiCycler iQ5サーマルサイクラー(Biorad)。希釈したSyproオレンジを96ウェルiCycler iQ PCRプレートの各ウェルに添加し、少なくとも0.1mg/mlの終濃度でサンプルを試験する。温度を60℃/時の加熱速度で20℃から95℃まで走査し、蛍光遷移の中点を分析することによりアンフォールディングの温度を計算する。
【0233】
実施例2.9.等電点(pI)の計算
各IgGの等電点を計算する。タンパク質のpIの決定方法は、当業者に公知である。例えば、以下のツールを使用することができる:http://www.expasy.org/tools/pi_tool.html;Vector NTI(Invitrogen, Carlsbad, California)。
【0234】
実施例3.抗体選択及び特性評価
ライブラリ設計の有効性を確認するために、ライブラリは様々な抗原に対して試験される。次いで選択された抗体は、開発可能特性、例えば:a)Fabディスプレイ比;b)Fab発現収率、c)Fab熱安定性;d)Fab血清安定性;e)Fab SEC%モノマー;f)IgG発現収率;g)IgG熱安定性;h)IgG血清安定性;i)IgG SEC%モノマー;j)IgG等電点(pI);k)示差走査蛍光分析を使用した酸への暴露前後のFab若しくはIgGフォーマットでの熱安定性;l)酸への暴露前後のFab若しくはIgGフォーマットでの吸収;m)動的光散乱によって測定された場合の、酸への暴露前後の分子半径及び%多分散度;並びに/又はn)Fab若しくはIgGフォーマットでの粒子染色などについて、Fab及びIgGフォーマットの両方で試験される。加えて、Fabフォーマットでの抗原に対する親和性を決定した。
【0235】
実施例3.1 ファージの調製
FabフォーマットでのそれぞれのVH/VL対をディスプレイするファージを、以下のとおり調製した。各ライブラリファージ調製物につき80mlの2xYT/Cam/Glc培地に、対応するライブラリグリセロールストック由来の細菌を、OD600nmが0.2~0.3となるように接種した。培養物を、OD600nmが0.45~0.55に達するまで、120rpm及び37℃にて、30~90分間振盪した。次いでヘルパーファージを感染多重度10で細菌培養物に添加し、続いて振盪することなく37℃にて45分間、次いで120rpmで振盪しながら37℃にて45分間インキュベートした。細菌をスピンダウンし、ヘルパーファージ含有上清を廃棄した。ファージ感染細菌を400mLの2xYT/CAM/KAN/IPTG培地中に再懸濁させ、120rpmで振盪しながら22℃にて一晩インキュベートした。翌日、一晩培養物からの細菌をペレット状にし、Fab提示ファージを含有する上清を回収した。ファージ含有上清に、合計量の1/5の予冷されたPEG/NaClを添加することにより、ファージ沈殿を実施した。沈殿するファージの濁りが見えるようになるまで、サンプルを氷上で少なくとも30分間インキュベートした。沈殿したファージをスピンダウンし、20mLのPBS中に再懸濁させた。サンプルをゆっくり回転させて均質な懸濁液を得て、残留細菌デブリをペレット状にして廃棄した。PEG/NaClを使用して、ファージ含有上清から再びファージを沈殿させた。最後に、ファージペレットをPBS中に再懸濁させ、滅菌チューブに移し、ゆっくりと振盪して均質な懸濁液を得た。スポットタイトレーション及びELISAにより、ファージ力価を決定した。ディスプレイベクターpCaDis(
図9に示される)により発現させ、ファージ上に提示させたFab断片のファージ力価及びディスプレイレベルを、各個々のファージ調製物ごとにELISA及び/又はウェスタンブロット(実施例2.6参照)により評価した。ELISAに関して、捕捉には2つの異なる抗体を使用した:(1)抗-M13抗体(Amersham #27-9420-01)を使用した。これは主要コートタンパク質g8pによりファージ粒子を捕捉する;したがって、ファージ力価を決定することができる。(2)抗-イヌ-Fab’2(LS Bio,#LS-C69729)を使用した。これはディスプレイされたFabに結合する;したがって、ファージディスプレイFabのみが捕捉された。(1)及び(2)に対し、別個の基準曲線が用いられた。HRPとコンジュゲートしたモノクローナル抗-M13(M13ファージの主要コートタンパク質g8pに対する)を、検出抗体として使用した。ELISAデータの評価は、以下のとおり完了した:検量線を作成し、ファージ上清及び対照の力価を計算した。各サンプルについて、抗-Fdに関する力価を抗-M13(抗-pVIII)に関する力価で除算し、得られた割合が相対ディスプレイ比である。
【0236】
実施例3.2.抗体選択
以下に記載されるように又は当業者に公知の別の方法により、ファージディスプレイ選択を行ってもよい。例えば、並行パニング方法(例えば、溶液パニング、Fc捕捉パニング、直接固相パニング)を実施して、所望の生物物理学的特性を有する多様な結合抗体を同定する可能性を最大化する。様々な可溶性タンパク質を、ライブラリ検証用のモデル抗原として選択することができる(例えば、リゾチーム)。以下に記載されるカルボン酸基へのアミド結合形成による磁気Dynabeads(Dynal/Invitrogen 製品番号143.06)と共有結合した抗原を用いたビーズ系溶液パニングにおいて、モデル抗原に対するコレクションスクリーニングを実施する。以下に記載のFc捕捉パニング方法を用いて、モデル抗原に対する選択もまた実施することができる。
【0237】
実施例3.2.1.ビーズ系溶液パニング
モデル抗原及び対照BSAでコーティングしたカルボキシルビーズ(Dynal)を、室温(RT)にて2時間、PBS中5%粉乳+0.1%Tween20でブロックした後、予め吸収させたファージと共に室温にて2時間インキュベートする。数回の洗浄ステップの後、結合したファージを溶離し、次の選択ラウンドのため、TG1F+細胞を感染させることにより増幅する。3ラウンドの選択の後、pCaDis(
図9に示される)ファージミドDNAを単離し、Fabコード断片をXbaI及びEcoRIによる制限消化により切り出し、発現ベクターpCaBx(
図10に示される)に結合して、大腸菌(E.coli)TG1F-に形質転換する。次いで、感染培養物を大型LB/Cam/Glucプレート上にプレーティングし、34℃で成長させた。シングルクローンを単離し、Fab発現収率及び抗原結合性についてELISAにより試験する。ウサギ抗-犬IgG F(ab)’2抗体(LifeSpan BioSciences,LS-C69729)でコーティングしたELISAプレートでFab含有細胞抽出物をインキュベートし、続いて、ヤギ抗-犬IgG(H+L)アルカリホスファターゼ抗体(Sigma,SAB37000097)を用いて検出することにより、Fab発現を検出する。例えば、ビーズ系アッセイ(Applied Biosystems 8200細胞検出システム/PE Biosystems)用の蛍光定量的なマイクロボリュームアッセイ技術(FMAT(登録商標))によってモデル抗原結合カルボキシルビーズ及びBSA結合カルボキシルビーズ(Dynal)でFab含有細胞抽出物をスクリーニングすることにより、抗原特異性を試験する。一次ヒットは、200の値に設定されたバックグラウンドを少なくとも5倍上回るFMAT平均蛍光シグナルをもたらすFabとして定義する。モデル抗原に対する特異性を、同種抗原としてモデル抗原及び陰性対照抗原として無関連抗原を用いた二次ELISAで確認する。各試験されたサブライブラリ、サブライブラリミックス、又は全ライブラリについての約50~100個のクローンを、重鎖及び軽鎖CDR3領域のシーケンシング用に選択し、モデル抗原結合抗体の配列多様性を推定する。シーケンシング結果は、構築されたライブラリがモデル抗原バインダの多様なレパートリを含むことを示す。ELISAによる結合特性評価は、単離された抗体が、対象とする同種のモデル抗原に非常に特異的であり、無関連対照抗原と交差反応しないため、生物医学研究及び高度に特異的な治療抗体の生成のためのライブラリの有用性を証明することを示す。
【0238】
実施例3.2.2.Fc-捕捉パニング
MaxiSorpプレート(Nunc)上のヤギ抗ヒト-IgG Fc特異的(Jackson;カタログ109-005-098)又はマウス抗-ヒト-IgG Fc特異的(Jackson;カタログ209-005-098)を用いて捕捉することにより固定化した組換えヒトFcタグ付きモデルタンパク質を用いて、3ラウンドの固相Fc捕捉パニングを実施する。各選択ラウンドの前に、ファージを0.1mg/mlのPBS/5%ミルク、/5%BSA/0.1%Tween中ヒト、ヤギ及びマウス免疫グロブリンで、室温にて2時間ブロックする。数回の洗浄ステップの後、結合したファージを溶離し、次の選択ラウンドのため、TG1F+細胞を感染させることにより増幅する。選択を3ラウンド行った後、pCaDis(
図9に示される)ファージミドDNAを単離し、Fabコード断片をXbaI及びEcoRIによる制限消化により切り出し、発現ベクターpCaBx(
図10に示される)に結合して、TG1F-に形質転換する。次いで、感染培養物を大型LB/Cam/Glucプレート上にプレーティングし、34℃で成長させた。シングルクローンを単離し、Fab発現収率及び抗原結合性についてELISAにより試験する。Fab発現は、上記のように検出する。MaxiSorpプレートにコーティングしたヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson;カタログ109-005-098)により捕捉されたモデルタンパク質_Fc抗原でのFab含有細胞抽出物によるELISAスクリーニングによって、抗原特異性を試験する。一次ヒットは、バックグラウンドを少なくとも5倍上回るELISAシグナルをもたらすFabとして定義する。モデルタンパク質_Fcに対する特異性を、同種抗原としてモデル抗原_Fc及び陰性対照抗原として無関連タンパク質_Fcを用いた二次Fc捕捉ELISAで確認する。
【0239】
約50~100個のクローンを、重鎖及び軽鎖CDR3領域のシーケンシング用に選択し、モデル抗原_Fc結合抗体の配列多様性を推定する。シーケンシング結果は、構築されたライブラリがバインダの多様なレパートリを含むことを確認する。ELISAによる結合特性評価は、単離された抗体が、対象とする同種のモデル抗原に非常に特異的であり、無関連対照抗原と交差反応しないため、生物医学研究及び高度に特異的な治療抗体の生成のためのライブラリの有用性を証明することを示す。
【0240】
実施例3.3.開発可能性試験
開発可能特性、例えば、Fabフォーマットでの熱安定性、Fabフォーマットでの親和性、IgGフォーマットでのpI、IgGフォーマットでの発現収率、IgGフォーマットでの熱安定性、及びSECにより測定する場合のIgGフォーマットでの%モノマーについて、本明細書で開示される方法により又は当業者に公知の他の方法により、抗原に特異的な抗体又は断片をFab及びIgG1の両フォーマットで試験する。Fab及びIgGフォーマットでの熱安定性試験は、実施例2.7及び2.8に記載されるとおり完了する。IgGフォーマットでのpIの決定は、実施例2.9に記載されるとおり完了する。IgGフォーマットでの発現収率は、実施例2.5に記載されるとおり完了する。SECにより決定する場合のIgGフォーマットでの%モノマーは、実施例2.5に記載されるとおり完了する。
【0241】
実施例3.4.Fabフォーマットでの抗原捕捉セットアップによるBiacore KD(親和性)測定
モノマーFab画分の結合(分析的SECにより分析;Superdex75,Amersham Pharmacia)の抗原の捕捉を、以下のとおり分析する:CM5チップ(Biacore/GE Healthcare)上で、適切な抗-抗原タグ捕捉抗体を、EDC/NHSケミストリーを用いて共有結合的に固定化する。抗原を捕捉し、続いて6つの異なるFab濃度(2n段階希釈)を注入することにより、動態計測を行う。各サイクル終了後に、センサーチップを再生する。二重参照のため、ランニングバッファーのブランク注入を用いる。全てのセンサグラムを、BIA評価ソフトウェア3.2(Biacore/GE Healthcare)を用いてフィッティングして、kon及びkoff速度定数を決定し、これを用いてKDを計算する。
【0242】
親和性はまた、Haenel et al(2005) Analytical Biochemistry 339(1):182-184に記載されているような溶液平衡滴定によって測定してもよい。
【0243】
単離された抗体は、サブナノモルから1桁のナノモルKDまでの親和性値を示し、対象となるモデル抗原に対する強力な結合抗体をライブラリから簡単に単離できることを確認する。
【0244】
実施例4.NGSによるライブラリ冗長性分析及びQC
製造元が提供するマニュアルに従って、MiSeq機器(Illumina 1つのVL/VHサンプルあたり約100万配列)を使用した高い処理量のアンプリコンシーケンシングによって、ライブラリの品質を評価した。
【0245】
実施例4.1.アンプリコン生成
簡潔には、個々のサンプルのVL又はVHアンプリコン(例えば:クローンライブラリ由来のプラスミドDNA)を、PCR(1分間98℃、15秒間98℃の15サイクル、15秒間60℃及び15秒間72℃、5分間72℃、15ngのテンプレートDNA、0.4μMの各プライマー、200μMのdNTP、及び1UのPhusionポリメラーゼ(NEB))により生成した。
【0246】
実施例4.2.修飾されたTruSeq/Nextera XT プロトコルを使用したNGS
ユニバーサルNexteraアダプタを含有するアンプリコンを上記のようにPCR増幅し(第1ステップ-アダプタPCR)、アガロースゲルを精製して定量した。第2PCRステップ(インデックスPCR)では、固有のインデックスの組み合わせ(i5/i7インデックス)を、各サンプルの5’末端及び3’末端に並行して添加した(1分間98℃、15秒間98℃の10サイクル、15秒間60℃及び60秒間72℃、5分間72℃、1ngのテンプレート、0.4μMのプライマー、200μMのdNTP、及び0.5UのPhusionポリメラーゼ)。
【0247】
AMPure XPビーズ(Beckman Coulter)を使用してPCR産物を精製し、SequalPrep Normalization Plate Kit(Invitrogen)を使用して標準化し、等モルプール化した。プールされたDNAを0.2NのNaOHで変性させ、最終的に8~10pMの濃度まで希釈した。対照ライブラリ(PhiX)をサンプルプール(5~10%)に追加的にスパイクし、シーケンシングのためにプールをフローセル上にロードした。MiSeqシステムユーザーガイド及びMiSeq試薬キットv3(600サイクル)用シーケンシングマニュアルに従って、対になった末端シーケンシングランを実施した。
【0248】
提供されたMiSeqソフトウェアパッケージ(SAV1.8,MiSeq Reporter)を使用して、シーケンシング結果を直接処理し、多重分離化(demultiplexed)し、スティッチ(stiched)して、fastqファイルを作成した。
【0249】
実施例4.3.配列分析
大規模なシーケンシングデータセットの処理及び分析用に社内で開発されたソフトウェアを使用して、品質フィルタリングされた配列を更に分析した。配列を多重分離化し、ライブラリ固有の配列機能、例えば、V遺伝子型、HCDR3の長さ及びアミノ酸分布を評価した。簡潔には、VH及びVL分布は、それぞれ、予想どおりであり、設計と所望の位置で得られたアミノ酸との間に非常に良好な相関関係がある(
図11、
図12、及び
図13)。
【0250】
実施例5.ファージディスプレイ抗体選択
eGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)を、ライブラリ検証用のモデル抗原として選択した。固相パニング、続いて直接コーティングELISAにおけるスクリーニングを実施して、ライブラリからeGFP特異的バインダを単離した。マイクロタイタープレート上に直接固定化されたeGFPを使用して、固相パニングを実施した。各選択ラウンドの前に、ファージをPBS中10%スキムミルク粉末でブロックした。ファージのインキュベーションに続いて、PBSTで数回の洗浄ステップを実施して、非常に弱い/非特異的なバインダを除去した。結合したファージを低-pH溶離バッファーで溶離し、次の選択ラウンドのため、TG1F+細胞を感染させることにより増幅した。最終選択ラウンド後に、pCaDisファージミドDNAを単離し、Fabコード断片をXbaI及びEcoRIによる制限消化により切り出し、発現ベクターpCaBx(
図10)に結合させ、TG1F-大腸菌(E.coli)に形質転換した。次いで、感染培養物をLB/Cam/Glucプレート上にプレーティングし、一晩成長させた。シングルクローンを単離し、Fab発現収率及び抗原結合性についてELISAにより試験した。ウサギ-抗-犬-IgG F(ab)2 (LSBio,カタログLS-C69729)でコーティングしたELISAプレートでFab含有細胞抽出物をインキュベートし、続いて、アルカリホスファターゼ(AP)(Sigma,SAB37000097)とコンジュゲートしたウサギ抗-犬IgG IgG F(ab)2特異的抗体を用いて検出することにより、Fab発現を検出した。MaxiSorpプレート上にコーティングされたeGFP上のFab含有細胞抽出物を用いたELISAスクリーニングにより、抗原特異性を試験した。一次ヒットは、バックグラウンドを少なくとも5倍上回るELISAシグナルをもたらすFabとして定義した。eGFPに対する特異性を、陰性対照抗原(乳タンパク質のみでコーティングされたプレート)上の二次ELISAで確認した。
【0251】
2A/2D、3A/3D、及び3B/6Bサブライブラリについて、それぞれ、29個、8個、及び58個のクローンの重鎖及び軽鎖CDR3領域をシーケンシングし、eGFP結合抗体の配列多様性を推定した。スクリーニング及びシーケンシングデータを表19にまとめる。
図13は、スクリーニング結果のドットブロット視覚化を示す。
【0252】
実施例6.Fab ELISA
パニング選択後に得られた個々のクローンの結合を比較するために、アルカリホスファターゼ(AP)(Sigma,SAB37000097)とコンジュゲートしたウサギ抗-犬IgG F(ab)2-特異的検出抗体を用いて、Maxisorpプレート上にコーティングされたeGFPでFabフォーマットの精製抗体を滴定して、試験した。予めHuCALライブラリから単離された抗-GFP抗体(MOR06391)を、参照として含んだ。
図15に示すように、ライブラリから直接単離された抗体は、6/9の候補が参照抗体と同様又はより良好な結合特性を示す多様な結合強度を示す。
【0253】
実施例7.IgG ELISA
実施例5に記載されているように、モデル抗原としてのeGFPに対するパニングを実施した。抗体選択後に得られた特異的Fabヒットは、最先端の分子生物学的方法を使用してIgGフォーマットに変換され、IgGタンパク質は実施例2.5に記載のように産生された。標準固相ELISAによりeGFPに対するIgG反応性を確認した(
図16)。アルカリホスファターゼ(AP)(Sigma,SAB37000097)とコンジュゲートしたウサギ抗-犬IgG F(ab)2-特異的検出抗体を用いて、Maxisorpプレート上にコーティングされたeGFPに結合するIgGの検出を実施した。予めHuCALライブラリから単離された抗-GFP抗体(MOR06391)を、参照として含んだ。
【配列表】