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特許7290582バラスト混入フロキュレーション及び沈降が統合された水処理プラント及び対応する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】バラスト混入フロキュレーション及び沈降が統合された水処理プラント及び対応する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/08 20060101AFI20230606BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230606BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20230606BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20230606BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20230606BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230606BHJP
【FI】
B01D21/08 D
B01D21/01 D
B01D21/02 E
B01D21/02 J
B01D21/00 G
B01D21/00 Z
B01D21/24 H
B01D21/24 Q
B01D21/24 R
B01D21/24 T
C02F1/52 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019572659
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018066988
(87)【国際公開番号】W WO2019007745
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】1756399
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503289595
【氏名又は名称】ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】ゲド,アブデルカデル
(72)【発明者】
【氏名】パイヤール,エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ソーヴィニエ,フィリップ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05800717(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0158025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210613(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036618(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0048030(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/24、52-56
B01D21/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め凝集された被処理水を移送するための手段(1)と、
少なくとも一種のフロック形成剤を分配するための手段(5)と、少なくとも一種のバラストを分配するための手段(6)と、沈降スラッジを取り除くための手段(14)と、を備えるフロキュレーション-沈降装置(11)と、
処理された水を取り出すための手段(9)と、
バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための手段と
このように浄化された前記バラストを前記フロキュレーション-沈降装置(11)に再循環させるための手段(8)と、
を備える水処理装置であって、
前記フロキュレーション―沈降装置(11)は、単一タンク(12)を備え、前記単一タンク(12)の下部分内に撹拌機(13)が配置されており、前記撹拌機(13)は、垂直軸(19)に取り付けられたブレード(16)と、前記ブレード(16)の周りに配置された円筒状の流れガイド(17)とを備え、
前記単一タンク(12)は、その上部分に層板(10)を備え、
前記層板(10)は、距離「d」だけ前記撹拌機(13)から分離され、前記層板(10)と前記撹拌機(13)との間には、他の層板が介在せず、かつ、前記撹拌機(13)によって前記被処理水が撹拌されないか殆ど撹拌されない非撹拌区域が形成されており、前記距離「d」は、前記層板(10)の下端を含む水平面と前記流れガイド(17)の上部分を含む水平面との間の距離であり、前記距離「d」が0.5mから3mの間であり、
前記単一タンク(12)は、前記単一タンク(12)の外部から前記流れガイド(17)の上方まで延びて前記ブレード(16)に向けて開口するチューブ(2)を備え、前記チューブ(2)を介して、前記単一タンク(12)の下部分内へ前記被処理水が移送されるとともに前記少なくとも一種のフロック形成剤及び前記少なくとも一種のバラストが分配されることを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
前記バラストは、2.3トン/mよりも大きい実密度を有し、砂、イルメナイト、及びガーネットから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記バラスト混入スラッジ内に含まれる前記バラストを分離するための前記手段は、ポンプ及び分離するための装置(20)を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための前記手段は、空気を前記バラスト混入スラッジ内に注入する手段(15)と分離するための装置(20)とを備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
分離するための前記装置(20)は、沈降器(20b)に付随して設けられたブレードミキサー(20a)を備えていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記撹拌機は、前記撹拌機の延長部において前記軸を略中心として配置された静止障害物(18)を更に備え、前記静止障害物(18)は、前記軸を貫通する面内において前記軸(19)と平行に前記ブレード(16)から離れるにつれて大きくなる外側横断寸法を有する外面を有し、その傾斜が前記軸に対して一定又は増大していることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記層板は、0.3mから1.4mの間の高さHを有する層板パックとして構造化されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の装置を用いて水を処理するための方法であって、予め凝集された水を移送するステップと、バラスト混入フロキュレーションを行うステップと、沈降を行うステップと、分離を行うステップと、バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップにバラストを再循環させるステップと、を含む方法において、
バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップ及び沈降を行う前記ステップは、前記装置のフロキュレーション-沈降装置の単一タンク内において行われることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記単一タンク内において前記予め凝集された水にフロック形成剤及びバラストを添加するステップと、
前記凝集された水、前記バラスト、及び前記フロック形成剤を撹拌機を備える前記単一タンクの下部分において混合するステップと、
攪拌されない安定した区域を前記単一タンクの上部分における前記撹拌機と層板パックとの間にもたらすステップであって、前記区域は、形成されたフロックの沈降に好適である、ステップと、
処理された水を、前記層板を通過させた後、前記タンクの上部分に設けられた処理水を取り出す手段によって取り出すステップと、
バラスト混入スラッジを取り出すための手段によってバラスト混入スラッジを取り出すステップと、
液体遠心分離を行うことなく、前記バラスト混入スラッジからバラストを取り除くと共に前記バラストを浄化するために、空気を前記バラスト混入スラッジ内に注入するステップと、
浄化されたバラストを前記単一タンクに再循環させ、沈降スラッジを取り除くステップと、
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記単一タンク内の水の滞留期間は、2分から30分の間であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の物理的-化学的処理の分野に関する。
【0002】
更に詳細には、本発明は、汚染水、例えば、飲料用に処理されるべき水、都市廃水及び工業廃水、雨水、又は海水を処理し、このような水の懸濁物質の含量、及び該当する場合、濁り、藻類の濃度、及び有機物質の含量及びその色を低減させることを意図する技術に関する。
【0003】
本発明は、特に、水を飲料可能とするために処理する作業環境のみならず、都市廃水又は工業廃水を浄化するために処理する作業環境に適用される。
【背景技術】
【0004】
当業者に知られている水の物理的-化学的処理の技術の内、凝集(coagulation)を行うステップ、フロキュレーション(flocculation)を行うステップ、及びフロックの沈降(decantation)を行うステップを行う技術は、極めて広範囲に用いられている。
【0005】
このような技術の能力を向上させるために、フロキュレーションを行うステップは、バラスト材料の添加によって促進される。具体的には、バラスト混入フロックの沈降は、フロックの密度を高めて沈降速度を加速させるために、フロキュレーションのステップ中にバラスト、例えば、微細砂を添加することから成っている。バラストは、一般的に、沈降スラッジから分離された後、再循環される。
【0006】
凝集を行うステップと、バラスト混入フロキュレーションを行うステップと、沈降によってフロックを分離するステップとを含む水処理方法は、特許文献1からも知られている。この技術は、スラッジを液体遠心分離することによってバラストを再循環させることを含んでいる。
【0007】
このような方法は、水に含まれる有機物質を低下させることを可能にするが、凝集反応器、フロキュレーション反応器、及び沈降器を設ける必要がある。従って、対応する装置の床スペースが大きくなるが、これらの装置は、多くの場合、流出液の近傍、すなわち、流出液から遠く離れていない箇所に配置される必要があり、都市環境では、この種の装置に利用可能なスペースが制限され、且つ費用が掛かる。
【0008】
その結果、当業界において、これらの水処理装置の床スペースを縮小することが必要とされている。
【0009】
更に、特許文献1に記載される形式の装置では、沈降したスラッジを取り除くために、沈降したスラッジを連続的に掻き集め、場合によっては、掻き集めたスラッジをホッパー内に押し込む必要がある。スクレーパー及び(該当する場合)ホッパーを用いることによって、このような装置の実施を複雑にし、そのコストを高騰させる。
【0010】
先行技術の装置の他の欠点は、バラストを再循環させるために設けられる液体サイクロン(hydrocyclone)の使用が著しいエネルギーを消耗するという事実にある。加えて、液体サイクロンの有効性は、分離されるべき粒子の直径と共に減少し、これによって、かなりの量のバラストの損失をもたらす可能性がある、それ故、当業界において、この種の方法においてバラストを再循環させる能力の改良が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】仏国特許第267704B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、バラスト混入フロックのフロキュレーション及び沈降によって水を処理するための装置であって、前述の先行技術の欠点の少なくともいくつかを解消する、水を処理する装置を提案することにある。
【0013】
特に、本発明の目的は、等価の処理能力を基準とした場合に先行技術よりも小さい床スペースを有することができる、このような装置を提案することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、その使用が液体-固体分離性能の改良を伴う、このような装置を提案することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、処理されるべき水の種々の処理流量及び/又は種々の品質に適合することができる、このような装置を提案することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、バラストの再循環中に生じるバラストの逸失に対処することができる、このような装置を記載することにある。
【0017】
本発明の更に他の目的は、このような水処理装置を用いる方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的の全て又は一部は、
予め凝集された被処理水を移送するための手段と、
少なくとも一種のフロック形成剤を分配するための手段と、少なくとも一種のバラストを分配するための手段と、沈降スラッジを取り除くための手段と、を備えるフロキュレーション-沈降装置と、
処理された水を取り出すための手段と、
バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための手段と、
このように浄化された前記バラストを前記フロキュレーション-沈降装置に再循環させるための手段と、
を備える水処理装置であって、
前記フロキュレーション―沈降装置は、単一タンクを備え、前記単一タンクの下部分内に撹拌機が配置されており、
前記単一タンクは、その上部分に層板を備え、
前記層板は、約0.5mから約3mの間の距離「d」だけ前記撹拌機から分離されている
ことを特徴とする、水処理装置に関する本発明によって達成される。
【0019】
被処理水は、水供給ライン内への凝集剤の注入又は装置の上流に設けられた反応器内への凝集剤の注入によって予め凝集された水である。
【0020】
このような装置の稼働中、水のフロキュレーション及び沈降は、それらが同一区画内、すなわち、撹拌機を備える単一タンク内において行われるという点において、統合されている。
【0021】
それ故、フロキュレーションが1つのタンク内におぃて行われ、沈降が他のタンク内において行われる先行技術の装置に対して、本発明による装置の床スペースが小さくなる。従って、本発明によるフロキュレーション-沈降装置は、その稼働中、バラスト混入フロキュレーションのステップ及び沈降のステップを一緒にし、これによって、この稼働に必要な装置の大きさを著しく縮小することができる、
【0022】
このような装置の使用中、撹拌機を備えるタンクの下部分において、フロキュレーションが生じる。この部分において、撹拌機は、バラスト、ポリマー、及び凝集された水と密に接触して位置し、これによって、バラストによって重量が大きくなる凝集体(フロック)の形成がもたらされることになる。
【0023】
このフロックと水との分離は、撹拌機のブレードと層板との間の区域内において生じる。本発明によるこれらの2つの成分を分離する約0.5mから約3mの間の距離「d」は、装置の稼働中に撹拌機によって水が攪拌されないか又は殆ど攪拌されない区域をもたらすように設計されている。この安定した区域は、バラスト及びスラッジによって形成された固体物質を水の残りから分離させるのに好適である。距離「d」は、ここでは、層板の下縁を含む水平面と(垂直シャフト及びモーターの外側の)撹拌機の上部分を含む水平面との間の距離として理解されたい。
【0024】
更に、本発明によれば、タンクは、その上部分に多数の層板を備えている。これらの層板は、互いに平行に固定して又は回転可能に取り付けられている。好ましくは、これらの層板は、水平面に対して15°から60°の間の角度で傾斜している。これらの層板によって、フロック形成されなかった微細粒子に対する物理的なバリアを作ることが可能になると共に、層板パックの開口間の均等な分配によって負荷を低減させることが可能になる。好ましくは、これらの層板は、0.3mから1.4mの間の高さHを有する層板パックとして構成されるとよい。
【0025】
本発明による装置は、タンクの下部分にスラッジスクレーパを必要としないことに留意されたい。
【0026】
実際面では、バラストは、2.3トン/mよりも大きい実密度を有する砂、微細砂、ガーネット、イルメナイト、及び他の粒状材料から選択される。このようなバラストの添加によって、フロックの密度を増大させることが可能になると共に、その沈降速度を加速させることが可能になる。「バラスト混入スラッジ「(ballasted sludge)」という用語は、バラストと混合された沈降スラッジを意味している。
【0027】
本発明の装置の代替例によれば、前記バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための前記手段は、ポンプ及び分離するための装置を備え、前記ポンプは、前記バラスト混入スラッジを前記分離するための装置内に移送することを可能にするものである。
【0028】
他の代替例によれば、これらの手段は、空気を前記バラスト混入スラッジ及び分離するための装置に注入するための手段を備えている。
【0029】
空気を注入するためのこのような手段は、バラスト混入スラッジを取り出すための垂直ライン内に気泡を注入することによって、空気浮上を達成する。このような空気浮上によって、気泡によるバラストの移動を促進させることを可能にすると共に、気泡によって生じる運動によってバラストを洗浄することが可能になる。気泡は、バラストの周りに形成された凝集体の剥離をもたし、これによって、バラストをスラッジから分離させることが可能である。
【0030】
好ましくは、スラッジとバラストとを分離するための前記装置は、小形の沈降器に付随して高速回転するブレードミキサー又は同様の部材を備えている。高速ミキサーによって、(バラスト混入スラッジを空気浮上によって分離装置に移送する間にすでに始まっている)スラッジの残りからのバラストの分離を行うことが可能になる。小型の沈降器によって、バラストを沈降器の下部分に収集し、浮遊するスラッジを沈降器の上部分に収集することができる。スラッジの浮遊は、空気のような流体の注入によって改良することができる。バラストから分離されたこのスラッジは、特定の処理部に取り出されるようになっている。
【0031】
単一タンク内に設けられた撹拌機は、種々の形態に構成されてもよい。例えば、撹拌機は、有利には、垂直軸に回転可能に取り付けられたブレードを備えている。特に興味深い実施形態によれば、前記撹拌機は、前記ブレードの周りに配置された円筒状の流れガイドを更に備えている。
【0032】
従って、このような撹拌機が作動されると、水は、流れガイドチューブの内側において上から下に循環し、流れガイドの外側において下から上に循環する。これによって、水とフロック形成剤及びバラストとの混合を最適化させることができる。
【0033】
本発明の他の興味深い代替例によれば、前記撹拌機は、撹拌機の延長部において前記軸を略中心としてタンクの底に配置された静止障害物を更に備えている。前記静止障害物は、軸を貫通する面において前記軸と平行にブレードから離れるにつれて大きくなる外側横断寸法を備える外面を有している。この軸に対する傾斜は、一定であってもよいし又は大きくなってもよい。混合物は、この軸に沿って静止障害物に向かって移動する。静止障害物は、混合物に対して略U字状の軌道をもたらし、これによって、水を攪拌のない区域に上昇させることが可能になる。また、この静止障害物によって、沈降するバラスト混入フロックは、傾斜して沈殿することが可能になる。
【0034】
本発明は、前述の装置を用いる水を処理するための方法であって、凝集を行うステップと、バラスト混入フロキュレーションを行うステップと、沈降を行うステップと、分離を行うステップと、バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップにバラストを再循環させるステップと、を含む方法において、バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップ及び沈降を行う前記ステップは、単一タンク内において行われることを特徴とする、方法にも関する。
【0035】
好ましくは、この方法は、
単一タンク内において予め凝集された水にフロック形成剤及びバラストを添加するステップと、
凝集された水、バラスト、及びフロック形成剤を撹拌機を備える単一タンクの下部分において混合するステップと、
攪拌されない安定した区域を単一タンクの上部分における撹拌機と層板パックとの間にもたらすステップであって、該区域は、形成されたフロックの沈降に好適である、ステップと、
処理された水を、前記層板を通過させた後、前記タンクの上部分に設けられた処理水を取り出す手段によって取り出すステップと、
バラスト混入スラッジを取り出すための手段によってバラスト混入スラッジを取り出すステップと、
液体遠心分離を行うことなく、前記バラスト混入スラッジからバラストを取り除くと共にバラストを浄化するために、空気を前記バラスト混入スラッジ内に注入するステップと、
浄化されたバラストを単一タンクに再循環させ、沈降スラッジを取り除くステップと、
含んでいる。
【0036】
それ故、本発明による方法は、液体遠心分離のステップを含んでいない。これによって、分離に必要なエネルギー消費を節減することを可能にすると共に、バラストに関する材料の逸損を低減することが可能である。
【0037】
好ましくは、前記内部タンク内の水の滞留時間は、2分から30分の間である。この滞留時間は、被処理水の性質に依存するのみならず、用いられるバラストの性質にも依存する。
【0038】
本発明の他の特性および特徴は、簡単な非制限的例示にすぎない好ましい実施形態の以下の説明を添付の図面と併せて読むことによって、更に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による装置の実施形態を図式的に示す図である。
図2図1による装置の撹拌機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を参照すると、本発明による装置は、凝集剤の添加によって予め凝集された被処理水を移送する手段1を備えている。水の凝集は、凝集剤を分配するための手段及び垂直軸を中心として回転可能に取り付けられた攪拌ブレードから構成された攪拌手段を備える凝集反応器内において行われてもよい。この凝集は、被処理原水の供給ラインに凝集剤を注入することによって行われてもよい。
【0041】
具体的には、凝集剤は、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。凝集剤は、有利には、硫化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ポリアミン(エピクロルヒドリン又はPolydadmac(登録商標))、メラミン-ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、及びいくつかの陽イオン性植物ポリマーから選択される。
【0042】
装置は、撹拌機13が設けられた単一タンク12を備えるフロキュレーション-沈降装置11を更に備えている。このタンク12は、その中心部分にチューブ2を備えている。チューブ2は、(手段1によって移送された)凝集された水をタンク2の下部分の撹拌機13の上方に送るために、該水を収集するものである。
【0043】
この撹拌機13は、垂直軸19を中心として回転可能に取り付けられたブレード16を備えている。また、図2を参照すると、撹拌機13は、チューブの一部から形成された円筒状の流れガイド17と、軸19を中心とする静止障害物18とを備えている。この障害物18は、略ピラミッド形状を有している。流れガイドチューブは、4つの垂直仕切り3によってブレードの周りの適所に保持されている。4つの垂直仕切り3の内の2つが図1に示されている。これらの仕切り3は、流れガイドチューブをタンク12の側壁に固定し、流体流れを改良するのに用いられる。
【0044】
装置は、タンク12のチューブ2内にフロック形成剤を分配するための手段5を更に備えている。一例では、フロック形成剤は、植物又は動物に由来する水溶性高分子及び高分子量及び種々のイオン性を有する水溶性高分子電解質から選択される。
【0045】
装置は、タンク12のチューブ2内にバラストを分配するための手段6を更に備えている。本発明によれば、このバラストは、2.3トン/mよりも大きい実密度を有する粉状材料又は粒状材料から構成されている。これは、好ましくは、砂、ガーネット粉末、又はイルメナイト粉末である。
【0046】
タンク12の上部分は、傾斜した多数の層板から構成された層板パック10を更に備えている。この層板パックは、有利には、0.3mから1.4mの高さHを有することができる。このパックの下部分は、撹拌機から距離「d」を隔てて配置されており、距離「d」は、この実施形態によれば、使用例に応じて0.5mから3mの間で変更可能である。この距離「d」は、(軸19の外側における)撹拌機の上部分、ここでは、円筒状の流れガイド17の上部分を含む水平面と、薄板パック10のそれぞれの層板の下端を含む水平面との間の距離である。
【0047】
処理された水を取り出すための手段9であって、樋を備える手段9が、タンク12の上部分に設けられている。
【0048】
装置は、スラッジを取り出すための垂直ライン14を更に備えている。前記垂直ライン14は、タンク12の内側に設けられている。
【0049】
装置は、前記バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための手段と、この手段に続く前記洗浄されたバラストを前記フロキュレーションー沈降装置に再循環させる手段8を更に備えている。
【0050】
例を挙げると、前記分離するための手段は、気泡の形態にある空気をライン14内に注入し、空気浮上をもたらすことを可能にする手段15と、この空気浮上によって運ばれたスラッジ内に含まれるバラストを分離するための装置20とを備えている。分離するための装置20内にパイプ14が達するようになっている。この分離するための装置20は、高速回転するブレードミキサー20aと、これに続く小型の沈降器20bとを備えている。沈降器20bは、空気注入バー20cと、浮遊するスラッジを取り除くための樋20dとを備えている。
【0051】
空気浮上を用いることによって、スラッジを分離するための装置に移送することが可能になるのみならず、スラッジが含むバラストの分離を助長し、これによって、分離によって生じるバラストの逸損を軽減させることが可能になる。
【0052】
本発明によれば、分離するための手段は、液体サイクロンを備えていない。
【0053】
以下、このような装置の稼働について説明する。
【0054】
凝固された水が、手段1によって、チューブ12を通すことによってタンク12の下部分に移送される。フロック形成剤及びバラストが、それぞれ、手段5、6によってチューブ2を介してタンク12の下部分に送られる。この下部分において、ブレード16の回転によって、凝固された水、バラスト、及びフロック形成剤を密に混合させることが可能になる。この混合及びフロキュレーションは、円筒状の流れガイド17及び静止障害物18によって最適化される。この混合物は、図1の矢印によって示されるように、流れガイド17の内側における上から下への運動、次いで、流れガイド17の外側における下から上への運動を受ける。
【0055】
撹拌機13のブレード16の速度は、撹拌機と層板パックとの間において、水、バラスト、及びポリマーの混合物が、タンクの底へのフロックの沈降に好適な攪拌されない区域を呈するように、設計されている。このフロックの沈降は、フロックに含まれるバラストの存在によって加速される。
【0056】
次いで、フロックから分離された水は、層板パック10を通過し、これによって、水に含まれるフロック形成されなかった微細粒子を保持することが可能になる。次いで、処理された水は、タンク12の上部分における樋を備える手段9によって取り出される。
【0057】
スラッジは、ライン14によってタンク12から引き出される。このライン14の足部に空気が手段15によって供給される。生じた空気浮上によって気泡が分離するための装置20に運ばれ、これによって、バラストをスラッジの残りから分離するのを助長することが可能になる。この分離は、装置20内において完了される。浄化されたバラストは、ライン8によって装置11のタンク12内に再導入され、スラッジは、樋20dによって、特別の処理部に取り出されることになる。
出願当初の各請求項に記載されていた発明は、以下の通りであった。
請求項1:
予め凝集された被処理水を移送するための手段(1)と、
少なくとも一種のフロック形成剤を分配するための手段(5)と、少なくとも一種のバラストを分配するための手段(6)と、沈降スラッジを取り除くための手段(20d)と、を備えるフロキュレーション-沈降装置(11)と、
処理された水を取り出すための手段(9)と、
バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための手段(14)と、
このように浄化された前記バラストを前記フロキュレーション-沈降装置(11)に再循環させるための手段(8)と、
を備える水処理装置であって、
前記フロキュレーション―沈降装置(11)は、単一タンク(12)を備え、前記単一タンクの下部分内に撹拌機(13)が配置されており、
前記単一タンク(12)は、その上部分に層板(10)を備え、
前記層板は、約0.5mから約3mの間の距離「d」だけ前記撹拌機(13)から分離されていることを特徴とする、水処理装置。
請求項2:
前記バラストは、2.3トン/m よりも大きい実密度を有し、好ましくは、砂、イルメナイト、及びガーネットから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
請求項3:
前記バラスト混入スラッジ内に含まれる前記バラストを分離するための前記手段は、ポンプ及び分離するための装置を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
請求項4:
前記バラスト混入スラッジに含まれる前記バラストを分離するための前記手段(14)は、空気を前記バラスト混入スラッジ内に注入する手段(15)と分離するための装置(20)とを備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
請求項5:
分離するための前記装置(20)は、沈降器(20b)に付随して設けられたブレードミキサー(20a)を備えていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の装置。
請求項6:
前記撹拌機(13)は、垂直軸(13)に取り付けられたブレード(16)と、前記ブレード(16)の周りに配置された円筒状の流れガイド(17)とを備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の装置。
請求項7:
前記撹拌機は、前記撹拌機の延長部において前記軸を略中心として配置された静止障害物(18)を更に備え、前記静止障害物(18)は、前記軸を貫通する面内において前記軸(13)と平行に前記ブレード(16)から離れるにつれて大きくなる外側横断寸法を有する外面を有し、その傾斜が前記軸に対して一定又は増大していることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
請求項8:
前記層板は、0.3mから1.4mの間の高さHを有する層板パックとして構造化されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の装置。
請求項9:
請求項1~8のいずれか1つに記載の装置を用いて水を処理するための方法であって、予め凝集された水を移送するステップと、バラスト混入フロキュレーションを行うステップと、沈降を行うステップと、分離を行うステップと、バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップにバラストを再循環させるステップと、を含む方法において、
バラスト混入フロキュレーションを行う前記ステップ及び沈降を行う前記ステップは、前記装置のフロキュレーション-沈降装置の単一タンク内において行われることを特徴とする、方法。
請求項10:
前記単一タンク内において前記予め凝集された水にフロック形成剤及びバラストを添加するステップと、
前記凝集された水、前記バラスト、及び前記フロック形成剤を撹拌機を備える前記単一タンクの下部分において混合するステップと、
攪拌されない安定した区域を前記単一タンクの上部分における前記撹拌機と層板パックとの間にもたらすステップであって、前記区域は、形成されたフロックの沈降に好適である、ステップと、
処理された水を、前記層板を通過させた後、前記タンクの前記上部分に設けられた処理水を取り出す手段によって取り出すステップと、
バラスト混入スラッジを取り出すための手段によってバラスト混入スラッジを取り出すステップと、
液体遠心分離を行うことなく、前記バラスト混入スラッジからバラストを取り除くと共に前記バラストを浄化するために、空気を前記バラスト混入スラッジ内に注入するステップと、
浄化されたバラストを前記単一タンクに再循環させ、沈降スラッジを取り除くステップと、
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
請求項11:
前記単一タンク内の水の滞留期間は、2分から30分の間であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
図1
図2