(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】脱着治具
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20230606BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B01D53/94 400
B01D53/94 ZAB
(21)【出願番号】P 2020033119
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116920
【氏名又は名称】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029845(JP,A)
【文献】特開2019-074038(JP,A)
【文献】特開2018-123792(JP,A)
【文献】特開2017-180277(JP,A)
【文献】特開2015-068177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに取り付けられるポンプの脱着に用いられる脱着治具であって、
前記ポンプは、前記タンクから下部を突出させた状態で前記タンクに取り付けられ、
前記タンクは、回転することにより前記ポンプの脱着を行うロックリングプレートを有し、
前記ロックリングプレートは、前記タンクから突出する前記ポンプの下部に設けられ、その一部を切り欠いた切欠き部を形成し、
前記ポンプの下部を挿通可能な開口を形成した本体と、
前記本体に設けられ、前記ポンプの脱着時に前記切欠き部に対し下側から挿通され前記本体を前記ロックリングプレートに掛け止める掛止部と、を備え、
前記掛止部の上部の幅が下部の幅より大きく形成されている、
脱着治具。
【請求項2】
前記ロックリングプレートは、外縁を中心側へ窪ませて前記切欠き部を形成し、
前記掛止部は、前記切欠き部に対し挿通可能に形成されている、
請求項1に記載の脱着治具。
【請求項3】
前記タンクは、車両に搭載され、尿素水を収容する尿素水タンクである、
請求項1又は2に記載の脱着治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに対するポンプの脱着に用いられる脱着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプを備えたタンクに関し、例えば、特開2019-027364号公報に記載されるように、尿素水タンクの内部にポンプを設けたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなタンクにおいては、ポンプがタンク内に収容されており、ポンプの脱着が行えない。これに対し、メンテナンスのため、タンクに対しポンプを脱着可能にしたものが考えられる。この場合、できるだけポンプの脱着が安全かつ容易に行えることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、タンクに対しポンプの脱着を安全かつ容易に行うことを可能とする脱着治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る脱着治具は、タンクに取り付けられるポンプの脱着に用いられる脱着治具であって、ポンプはタンクから下部を突出させた状態でタンクに取り付けられ、タンクは回転することによりポンプの脱着を行うロックリングプレートを有し、ロックリングプレートはタンクから突出するポンプの下部に設けられその一部を切り欠いた切欠き部を形成し、ポンプの下部を挿通可能な開口を形成した本体と、本体に設けられポンプの脱着時に切欠き部に対し下側から挿通され本体をロックリングプレートに掛け止める掛止部とを備え、掛止部の上部の幅が下部の幅より大きく形成されている。この脱着治具によれば、掛止部の上部の幅が下部の幅より大きく形成されている。このため、脱着治具の掛止部をロックリングプレートの切欠き部に挿入したときに、掛止部を切欠き部に掛け止めることができる。従って、脱着治具からロックリングプレートに大きなトルクを作用させたときに脱着治具がロックリングプレートから脱落することを防止できる。これにより、脱着治具を支えることなく脱着治具を回転させることができ、ポンプの脱着が安全かつ容易に行える。
【0007】
また、本発明に係る脱着治具において、ロックリングプレートは、外縁を中心側へ窪ませて切欠き部を形成し、掛止部は、切欠き部に対し挿通可能に形成されていてもよい。
【0008】
また、本発明に係る脱着治具において、タンクは、車両に搭載され、尿素水を収容する尿素水タンクであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンクに対しポンプの脱着を安全かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る脱着治具及びタンクの構成を示す概要図である。
【
図5】
図1の脱着治具を用いた脱着の説明図である。
【
図6】本実施形態に係る脱着治具の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る脱着治具及びタンクの概要を示す図である。
図2は、
図1のII-IIに示すように、タンクを下から見た底面図である。
図3は、
図1のIII-IIIに示すように、脱着治具を上から見た平面図である。
【0013】
図1に示すように、脱着治具1は、タンク7に取り付けられるポンプ8の脱着に用いられる治具である。脱着治具1の説明に先立ち、タンク7について説明する。タンク7は、車両に搭載されるタンクであって、例えば尿素水を収容する尿素水タンクである。タンク7には、タンク7の底部から下部を突出させた状態でポンプ8が取り付けられている。ポンプ8は、タンク7内の液体を外部へ送り出すためのポンプである。ポンプ8は、例えば円柱形に形成されている。
【0014】
タンク7には、ロックリングプレート9が設けられている。ロックリングプレート9は、リング状の板材であって、ポンプ8の脱着に用いられる。すなわち、ロックリングプレート9は、タンク7から突出するポンプ8を下方から支持し、タンク7のフック71に掛け止められることでポンプ8を取り付けている。例えば、ポンプ8の周面には径方向へ突出するフランジ81が形成されている。フランジ81とタンク7の底面73の間にはOリング72が配置されている。タンク7の底面73には、フック71が突設されている。フック71は、ロックリングプレート9を掛け止める部位である。例えば、樹脂製のタンク7に金属製のフック71が鋳込まれている。フック71は、底面73から下方へ突出し、ポンプ8側へ屈曲して形成されている。ロックリングプレート9は、ポンプ8の下部を挿通させて、フランジ81に当接するように配置される。そして、ロックリングプレート9は、中心軸線Cを中心として回転させられることにより、フック71に掛止される。これにより、タンク7に対しポンプ8が取り付けられる。ロックリングプレート9を直接回転させるのは困難であるため、ロックリングプレート9を回転させるために脱着治具1が用いられる。なお、タンク7に対するポンプ8の取付構造は、上述したものに限られず、ロックリングプレート9を回転させてポンプ8の脱着が行えるものであれば、その他の取付構造であってもよい。
【0015】
図2に示すように、ロックリングプレート9には、切欠き部91が形成されている。切欠き部91は、ロックリングプレート9の一部を切り欠いて形成され、複数形成されている。例えば、切欠き部91は、ロックリングプレート9の外縁を内側へ窪ませて形成され、周方向に沿って7つ形成されている。切欠き部91は、脱着治具1を掛け止めるための部位である。切欠き部91は、脱着治具1の掛止部3が嵌め込まれ、脱着治具1から回転力が伝達される。
【0016】
ロックリングプレート9の外縁には、フック71が掛止されている。フック71は、例えば、切欠き部91と同数形成される。ロックリングプレート9の外縁には、凹部92が形成されている。凹部92は、フック71に当接させずにロックリングプレート9をフランジ81に接近させるための部位である。つまり、凹部92をフック71の位置に合わせてロックリングプレート9をフランジ81に近づけることにより、ロックリングプレート9をフランジ81の位置に配置することができる。この位置でロックリングプレート9を回転させることにより、フック71がロックリングプレート9の外縁に掛かる。これにより、ロックリングプレート9を介して、ポンプ8がタンク7に取り付けられる。
【0017】
図3に示すように、脱着治具1は、本体2及び掛止部3を備えている。本体2は、ポンプ8の下部を挿通可能な開口21を形成した部材である。本体2として、例えばリング状の部材が用いられる。
図3において、本体2は、真円の外形を呈するリング状の部材であるが、ポンプ8の下部を挿通可能な開口21を形成していれば、真円以外の外形であってもよい。また、
図3において、開口21も真円の形状で形成されているが、必ずしも真円の形状でなくてもよい。本体2は、ロックリングプレート9より大きい径で形成される。本体2の上面には、掛止部3が設けられている。掛止部3は、ロックリングプレート9の切欠き部91に挿入される部位である。つまり、掛止部3は、ポンプ8の脱着時に切欠き部91に対し下側から挿入され、本体2をロックリングプレート9に掛け止める部位である。掛止部3は、切欠き部91に挿入できるように本体2の中心側に向けて突出するように設けられている。この掛止部3は、本体2の周方向に沿って複数設けられる。掛止部3は、例えば切欠き部91と同数設けられる。なお、掛止部3は、切欠き部91の形成数より少なく設けられていてもよい。また、脱着治具1において、上面は、脱着治具1の使用時に上面となる面である。
【0018】
本体2には、架設部4が設けられている。架設部4は、
図1に示すように、本体2の下部に設けられ、本体2の中央を通るように架設されている。架設部4の中央には、締結具5が取り付けられている。締結具5を用いてスパナやレンチなどの工具6により脱着治具1を回転させることができる。
【0019】
図4は、
図3のIV-IVに示すように、掛止部3をその先端側から見た図である。掛止部3は、上部の幅W1が下部の幅W2より大きくなるように形成されている。例えば、掛止部3の側面31は、掛止部3の幅が上方ほど太くなるようにテーパ状の傾斜面とされる。なお、脱着治具1において、上部とは脱着治具1の使用時に上部となる部位であり、下部とは脱着治具1の使用時に下部となる部位である。
【0020】
次に本実施形態に係る脱着治具1の使用方法について説明する。
【0021】
脱着治具1を用いて、タンク7からポンプ8を外す場合について説明する。
図1に示すように、まず、ポンプ8の下方の位置に脱着治具1が配置される。そして、ポンプ8の掛止部3を切欠き部91の位置に合わせて脱着治具1を上方へ移動させる。そして、掛止部3が切欠き部91に挿入される。この状態で脱着治具1を軽く回すことにより、
図5に示すように、掛止部3が切欠き部91に掛止される。すなわち、掛止部3の側面31が切欠き部91に引っ掛かり、脱着治具1がロックリングプレート9に支持される。このため、脱着治具1を支えなくても、脱着治具1がロックリングプレート9から脱落しない。そして、工具6を用いて脱着治具1に回転力が与えられる。これにより、掛止部3を介してロックリングプレート9に回転力が伝達され、ロックリングプレート9が回転する。このため、ロックリングプレート9に対するフック71の掛止が解除され、ポンプ8をタンク7から外すことができる。
【0022】
このように、掛止部3を切欠き部91に掛止させて脱着治具1をロックリングプレート9に掛け止めるができるため、作業員一人で安全にポンプ8の取り外しが行え、ポンプ8の取り外しが安全かつ容易に行える。例えば、タンク7とポンプ8はロックリングプレート9により固定される構造であり、ロックリングプレート9とタンク7との隙間が少ない状態とされる。つまり、脱着治具1の掛止部3の高さに制約があり、ロックリングプレート9の掛かり代が少ない(浅い)状態とされる。メンテナンスの際には、ポンプ8をタンク7に固定し保持するロックリングプレート9に脱着治具1を装着した状態で大きな回転トルクを作用させる必要がある。このとき、例えば、掛止部3の側面31が垂直な面となっていると、脱着治具1をロックリングプレート9に掛け止めることができず、脱着治具1を支えるための作業員が必要となる。つまり、ポンプ8を取り外すために、脱着治具1を支える作業員と脱着治具1を回転させる作業員の二人が必要となる。この場合であっても、脱着治具1がロックリングプレート9から外れてしまうおそれがあり、ポンプ8の脱着作業が安全とは言えない状態である。これに対し、本実施形態に係る脱着治具1では、掛止部3を切欠き部91に掛止させて脱着治具1をロックリングプレート9に掛け止めるができるため、作業員一人でポンプ8の取り外しが行え、ポンプ8の取り外しが安全かつ容易となるのである。
【0023】
次に、
図1を参照して、タンク7にポンプ8を取り付ける場合について説明する。まず、タンク7にポンプ8を挿入し、ロックリングプレート9をフランジ81に当接させてフック71に軽く掛止させる。この状態で、ポンプ8の下方の位置に脱着治具1を配置する。そして、ポンプ8の掛止部3を切欠き部91の位置に合わせて脱着治具1を上方へ移動させる。そして、掛止部3を切欠き部91に挿入して、脱着治具1を回転させる。このとき、
図5に示すように、掛止部3が切欠き部91に掛止されるため、脱着治具1を回転させている時に脱着治具1がロックリングプレート9から脱落することが抑制される。このため、ポンプ8の取付作業が安全に行える。ロックリングプレート9をしっかりと回したら、ロックリングプレート9に対しフック71が掛け止められる。これにより、ポンプ8をタンク7に取り付けることができる。
【0024】
以上の説明したように、本実施形態に係る脱着治具1によれば、掛止部3の上部の幅W1が下部の幅W1より大きく形成されている。このため、掛止部3を切欠き部91に挿入したときに、掛止部3を切欠き部91に掛け止めることができる。従って、脱着治具1からロックリングプレート9に大きなトルクを作用させたときに脱着治具1がロックリングプレート9から脱落することを防止できる。これにより、脱着治具1を支えることなく脱着治具1を回転させることができ、ポンプ8の脱着を安全かつ容易に行うことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明に係る脱着治具の一実施形態を説明したものであり、本発明に係る脱着治具は上記実施形態に記載されたものに限定されない。本発明に係る脱着治具は、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で上記実施形態に係る脱着治具を変形し、又は他のものに適用したものなどであってもよい。
【0026】
例えば、上述した実施形態では、掛止部3の側面31が傾斜面となっている場合について説明したが、掛止部3の上部の幅W1が下部の幅W1より大きく形成されていれば、側面31は、傾斜面でなくてもよい。例えば、
図6に示すように、側面31を段付き形状としてもよい。つまり、側面31の下部を垂直に立ち上げて上部で側方へ突出させた形状としてもよい。この場合であっても、掛止部3を切欠き部91に掛止させることができ、上述した実施形態に係る脱着治具1と同様な作用効果を得ることができる。
【0027】
また、上述した実施形態では、切欠き部91がロックリングプレート9の外縁を内側へ窪ませて形成されているが、これ以外の形状であってもよい。例えば、切欠き部91がロックリングプレート9の内縁を外側へ窪ませて形成してもよいし、切欠き部91がロックリングプレート9を貫通する孔であってもよい。この場合であっても、切欠き部91に対応して掛止部3を設けることにより、掛止部3を切欠き部91に掛止させることができ、上述した実施形態に係る脱着治具1と同様な作用効果を得ることができる。
【0028】
また、上述した実施形態では、タンク7が尿素水タンクである場合について説明したが、タンク7は尿素水タンク以外のタンクであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…脱着治具、2…本体、3…掛止部、4…架設部、5…締結具、6…工具、7…タンク、8…ポンプ、9…ロックリングプレート、71…フック、81…フランジ、W1…幅、W2…幅。