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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】メタサーフェス反射板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020034911
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141359
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173658
【氏名又は名称】公益財団法人国際科学振興財団
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】松野 宏己
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森下 久
(72)【発明者】
【氏名】道下 尚文
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-093811(JP,A)
【文献】特開2014-150463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0146907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00-11/00
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の電波と、前記第1波長よりも短い第2波長の電波とのそれぞれを、入射角とは異なる反射角で反射させるメタサーフェス反射板であって、
グランド板と、
前記グランド板に周期的に配置された異なる種類の反射素子であって、各反射素子に入射する電波の位相と各反射素子から反射する電波の位相との差がそれぞれ異なる反射素子と、を備え、
前記反射素子の種類の数は、1より大きい整数である第1因数と、前記第1因数よりも小さな整数である第2因数との少なくとも2つの因数の積で表され、
前記第1波長と前記第2因数との積と、前記第2波長と前記第1因数との積との差が、前記第1波長と前記第2因数との積と前記第2波長と前記第1因数との積とのいずれか小さい方の5%未満である、
メタサーフェス反射板。
【請求項2】
前記グランド板において前記反射素子は等間隔に配置されている、
請求項1に記載のメタサーフェス反射板。
【請求項3】
前記グランド板において互いに隣接する反射素子間の間隔である素子間隔と前記第1波長を前記第1因数で除算した値との差は、前記第1波長を前記第1因数で除算した値の3%未満であり、かつ、前記素子間隔と前記第2波長を前記第2因数で除算した値との差は、前記第2波長を前記第2因数で除算した値との差の3%未満である、
請求項1又は2に記載のメタサーフェス反射板。
【請求項4】
前記反射素子はそれぞれ、前記第1波長の電波を反射するための第1部材と、前記第2波長の電波を反射するための第2部材との、少なくとも二つの部材が積層されて構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のメタサーフェス反射板。
【請求項5】
前記反射素子はそれぞれ、前記グランド板と前記第1部材との間に前記第2部材が位置するように前記グランド板に配置されている、
請求項4に記載のメタサーフェス反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタサーフェス反射板に関し、特に、通信に用いる電波を反射させるメタサーフェス反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システムで使われる28GHz帯等の高い周波数帯の電波は直進性が高いため、遮蔽によりカバレッジホール(通信ができないエリアの穴)が頻繁に発生することが知られている。反射板を用いて基地局から放射された電波を反射させることによって電波をカバレッジホールに到達させることができれば、カバレッジホールを低減することができる。
【0003】
しかしながら、反射板として通常の金属板を採用すると、基地局の位置とカバレッジホールの位置とに合わせて反射板の位置と角度とを最適にする必要が生じるため、反射板の設置条件が厳しくなる。このため、反射板に対する電波の入射角と反射角とを異ならせることができるメタサーフェス反射板が注目を集めている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-46821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、メタサーフェス反射板は特定の周波数の電波について入射角と反射角とを変更させる技術であり、他の周波数の電波については効果がない。一方で、将来的に、例えば39GHz帯の電波等の新しい周波数帯の電波が移動通信システムに使われた場合、基地局の設置コスト等を鑑みると、新しい基地局は現在の周波数帯の基地局と同じ場所に置局される蓋然性が高い。このため、複数の周波数帯の電波について入射角と反射角とを異ならせることができるマルチバンドメタサーフェス反射板が望まれている。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数の周波数帯の電波について入射角と反射角とを異ならせることができるマルチバンドメタサーフェス反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、第1波長の電波と、前記第1波長よりも短い第2波長の電波とのそれぞれを、入射角とは異なる反射角で反射させるメタサーフェス反射板である。この反射板は、グランド板と、前記グランド板に周期的に配置された異なる種類の反射素子であって、各反射素子に入射する電波の位相と各反射素子から反射する電波の位相との差がそれぞれ異なる反射素子と、を備え、前記反射素子の種類の数は、1より大きい整数である第1因数と、前記第1因数よりも小さな整数である第2因数との少なくとも2つの因数の積で表され、前記第1波長と前記第2因数との積と、前記第2波長と前記第1因数との積との差が所定の閾値以下である。
【0008】
前記グランド板において前記反射素子は等間隔に配置されていてもよい。
【0009】
前記グランド板において互いに隣接する反射素子間の間隔である素子間隔と前記第1波長を前記第1因数で除算した値との差は所定の第2閾値以下であり、かつ、前記素子間隔と前記第2波長を前記第2因数で除算した値との差は前記第2閾値以下であってもよい。
【0010】
前記反射素子はそれぞれ、前記第1波長の電波を反射するための第1部材と、前記第2波長の電波を反射するための第2部材との、少なくとも二つの部材が積層されて構成されていてもよい。
【0011】
前記反射素子はそれぞれ、前記グランド板と前記第1部材との間に前記第2部材が位置するように前記グランド板に配置されていてもよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の周波数帯の電波について入射角と反射角とを異ならせることができるマルチバンドメタサーフェス反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】メタサーフェス反射板を説明するための模式図である。
図2】2種類の波長に関するメタサーフェス反射板における反射素子の反射位相の一例を表形式に示す図である。
図3】実施の形態に係るメタサーフェス反射板の一部を模式的に示す図である。
図4】実施の形態に係るメタサーフェス反射板のレーダー反射断面積を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係るメタサーフェス反射板の利用シーンを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<前提となる技術>
実施の形態に係るメタサーフェス反射板を説明する前に、その前提となる技術について説明する。
【0016】
図1は、メタサーフェス反射板1を説明するための模式図である。一般に、入射角がθである入射波iが金属等の物質で反射されるとき、反射波rの反射角θは入射角θと等しくなる。これに対し、メタサーフェス反射板1は、入射角θとは異なる反射角θで電波を反射させる。煩雑となることを防ぐために全てには符号を付していないが、図1において、符号iを付した実線の矢印は入射波iを表し、符号rを付した破線の矢印は反射波rを表している。
【0017】
図1に示すように、メタサーフェス反射板1はグランド板2と、グランド板2に周期的に配置された異なる種類の反射素子3(第1反射素子3a~第9反射素子3iの9種類)を含んでいる。なお、図1はメタサーフェス反射板1の一部を示しており、メタサーフェス反射板1は一般に9よりも多くの反射素子3を含む。限定はしないが、一例として、グランド板2において互いに隣接する反射素子3間の間隔である素子間隔dが5ミリメートルであり、メタサーフェス反射板1が一辺1メートルの正方形であるとする。この場合、反射素子3は、メタサーフェス反射板1の表面に2次元の格子状に配置されることになる。このとき、メタサーフェス反射板1に配置される素子の数はおよそ200×200=4万個となる。
【0018】
既知の技術のため詳細な説明は省略するが、メタサーフェス反射板において、異なる反射素子3で反射された反射波rの位相がそれぞれ異なるように反射素子3が設計され、グランド板2上に配置される。ここで、第1反射素子3a~第8反射素子3hにおける反射波rの位相をφ(n=1,・・・,8)としたとき、図1に示す例ではφ=Δφ(n-1)となるように設計されている。
【0019】
入射波の波長をλとすると、入射波iが入射角θでメタサーフェス反射板1に入射し、反射角θで反射波rが反射されるためのΔφの条件は、以下の式(1)となることが知られている。
【0020】
【数1】
【0021】
図1に示す例では、第1反射素子3aと第9反射素子3iとは同一の素子であり、反射波rの位相も同一である。すなわち、図1に示す例では、素子の種類の数Nは、N=8となる。素子間隔dをd=λ/Nとし、n番目の反射素子3における反射波rの位相をφ=Δφ(n-1)とすることにより、入射角θでメタサーフェス反射板1に入射した入射波iを、反射角θがとなる反射波rで反射させるメタサーフェス反射板1を構成することができる。この8個の素子を一単位として2次元の格子状に並べることにより、より大きなメタサーフェス反射板を生成できる。
【0022】
以上をまとめると、波長λの電波に関するメタサーフェス反射板は以下のステップで設計することができる。
ステップ1:素子数Nを決める。このとき、素子間隔dは、d=λ/Nとなる。
ステップ2:入射角θと反射角θとから式(1)に基づいてΔφを決める。
これにより、1波長分の長さで反射波の位相は360度回転することになる。また、Δφは360度以下となるためフレーディングも抑制することができる。
【0023】
<実施の形態>
以上をふまえ、実施の形態を説明する。実施の形態に係るメタサーフェス反射板1は、第1波長λの電波と、第1波長λよりも短い第2波長λの電波とのそれぞれを、入射角θとは異なる反射角θで反射させるマルチバンドのメタサーフェス反射板である。
【0024】
前提となる技術で説明した方法を用いて第1波長λ及び第2波長λに関するメタサーフェス反射板1を設計することを考える。仮に素子数をNとすると、第1波長λに関する反射素子3の素子間隔である第1素子間隔dは、d=λ/Nとなる。同様に、第2波長λに関する反射素子3の素子間隔である第2素子間隔d2は、d=λ/Nとなる。λ≠λであるからd≠dとなる。すなわち、第1波長λに関する反射素子3と第2波長λに関する反射素子3とが異なる間隔で配置されることになり、波長毎に反射素子3を用意する必要がある。反射素子3の数が増加するため、メタサーフェス反射板1の製造コストも増加しかねない。
【0025】
そこで、素子間隔dを固定することを考える。すなわち、第1素子間隔d=第2素子間隔d=dとする。例えば、素子間隔dを5ミリメートルとし、第1波長λを10.7ミリメートル(周波数は28GHz)、第2波長λを7.7ミリメートル(周波数は39GHz)とする。また、入射角θ=0度、反射角θ=45度とする。このとき、式(1)より、第1波長λに関するΔφであるΔφはおよそ119度となる。また、第2波長λに関するΔφであるΔφはおよそ165度となる。
【0026】
図2は、2種類の波長に関するメタサーフェス反射板1における反射素子3の反射位相の一例を表形式に示す図であり、素子間隔d=5ミリメートル、第1波長λ=10.7ミリメートル、第2波長λ=7.7ミリメートル。入射角θ=0度、反射角θ=45度の場合の反射素子3の反射位相を示す図である。図2に示す15種類の反射素子3は、いずれも第1波長λに関する反射位相と第2波長λに関する反射位相との組み合わせが異なる。このように、設計すべき反射素子3の種類が多くなり、コストが増加しかねない。
【0027】
実施の形態に係るメタサーフェス反射板1は、比較的少ない種類の反射素子3で、2種類の波長に関するメタサーフェス反射板1を実現する。具体的には、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1は、1より大きい二つの異なる整数α及びβであって、βλ≒αλとなるαとβを設定することにより、反射素子3の種類をα×β種類に抑えることができる。説明の便宜上、α及びβをそれぞれ第1因数α、第2因数βと記載し、以下具体的に説明する。
【0028】
第1波長λを10.7ミリメートル(周波数は28GHz)、第2波長λを7.7ミリメートル(周波数は39GHz)とすると、第1因数α=4、第2因数β=3とすることにより、βλ≒αλとなる。実際、βλ=32.1、αλ=30.8となり、βλとαλとの差eは、e=|βλ-αλ|=1.3である。これは因数と波長との積の5%未満の値である。
【0029】
反射素子3の素子間隔dは、λ/α又はλ/βで与えられる。λ/α=2.68、λ/β=2.57となるため、素子間隔dはおよそ2.63ミリメートルとすればよい。第1波長λの電波に関するΔφであるΔφと、第2波長λの電波に関するΔφであるΔφと、は、それぞれ以下の式(2)及び式(3)で表される。
【0030】
【数2】
【0031】
式(2)より、第1波長λの電波はα波長分の長さで位相が360度回転することが分かる。同様に、式(3)より、第2波長λの電波はβ波長分の長さで位相が360度回転することが分かる。したがって、αとβとの最小公倍数であるαβ波長分の長さで、第1波長λの電波の位相と第2波長λの電波の位相は同時に0度に戻る。ゆえに、αβ種類(上記の例では12種類)の反射素子3を設計することで、異なる2つの波長の電波に関するメタサーフェス反射板1を実現することができる。
【0032】
図3(a)-(b)は、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1の一部を模式的に示す図である。具体的には、図3(a)は、第1波長λを10.7ミリメートル、第2波長λを7.7ミリメートル、第1因数α=4、第2因数β=3、入射角θ=0度、反射角θ=45度とした場合の、12種類の反射素子3を示している。第1反射素子3a~第12反射素子3lは、図3(a)におけるE1~E12に対応する。図3(a)は、第4反射素子3dに対応する素子E4の拡大図も示している。また、図3(b)は、図3(a)に示す12種類の反射素子3それぞれの、各波長の電波に関する反射位相を示している。
【0033】
各反射素子3は、グランド板2に周期的に配置された異なる種類の反射素子である。図3(a)に示すように、グランド板2において反射素子3は等間隔に配置されている。又、図3(b)に示すように、各反射素子3に入射する電波の位相と各反射素子3から反射される電波の位相との差がそれぞれ異なる。反射素子3の種類は12種類であり、この数は、第1因数α=4と、第1因数よりも小さな整数である第2因数β=3との少なくとも2つの因数の積で表される。
【0034】
上述したように、第1波長λと第2因数βとの積であるβλと、第2波長λと第1因数αとの積とであるαλとは、厳密に等しくなるとは限らない。実施の形態に係るメタサーフェス反射板1において、βλとαλとの差が所定の閾値以下となるように第1因数αと第2因数βとが設定されている。ここで「所定の閾値」は反射素子3の種類数と各反射素子3における反射位相の精度とを勘案して実験により定めればよいが、例えば、βλとαλとのいずれか小さい方の5%程度である。目安としては、目標とする反射位相の誤差が10%以内となるように第1因数αと第2因数βとを設定する。
【0035】
このように、比較的少ない種類の反射素子3で、2種類の周波数帯の電波について入射角θと反射角θとを異ならせることができるマルチバンドのメタサーフェス反射板1を提供することができる。
【0036】
図3(a)に示すように、反射素子3はそれぞれ、第1波長λの電波を反射するための第1部材30と、第2波長λの電波を反射するための第2部材31との、少なくとも二つの部材が積層されて構成されている。より具体的には、図3(a)に示す例では、反射素子3はそれぞれ、グランド板2と第1部材30との間に第2部材31が位置するようにグランド板2に配置されている。すなわち、メタサーフェス反射板1は、グランド板2、第2部材31、及び第1部材30の順に積層されて構成されている。
【0037】
ここで、上述したように、反射素子3の素子間隔dは、λ/α又はλ/βで与えられるが、第1波長λと第2因数βとの積であるβλと、第2波長λと第1因数αとの積とであるαλとは、厳密に等しくなるとは限らないため、λ/αとλ/βとも厳密には等しくならない場合がある。実施の形態に係るメタサーフェス反射板1において、素子間隔dと第1波長λを第1因数αで除算した値であるλ/αとの差は所定の第2閾値以下であり、かつ、素子間隔dと第2波長λを第2因数βで除算した値であるλ/βとの差も第2閾値以下となるように設計されている。所定の第2閾値の具体的な値は、上述した所定の閾値と同様に、目安として目標とする反射位相の誤差が10%以内となるように設定すればよい。
【0038】
<実験結果>
図4(a)-(b)は、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1のレーダー反射断面積(Radar Cross-Section;RCS)を模式的に示す図である。具体的には、図4(a)は、第1波長λ=10.7ミリメートル(周波数が28GHz)の電波のRCSを示す図である。図4(a)に示すように、第1波長λ=10.7ミリメートルの電波では47度の方向に反射が発生しており、設計目標の45度と概ね一致している。
【0039】
また、図4(b)は、第2長λ=7.7ミリメートル(周波数が39GHz)の電波のRCSを示す図である。図4(b)に示すように、第2長λ=7.7ミリメートルの電波では44度の方向に反射が発生しており、設計目標の45度と概ね一致している。
【0040】
<実施の形態に係るメタサーフェス反射板1の利用シーン>
図5は、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1の利用シーンを説明するための模式図である。28GHz帯等の高い周波数の電波は直進性が高いため、ビル等の遮蔽物Oが存在すると、遮蔽物Oに対して基地局Bの反対側はカバレッジホールHとなる。図5に示す例では、第1遮蔽物Oaによって第1カバレッジホールHaが誕生し、第2遮蔽Obによって第2カバレッジホールHbが誕生している。
【0041】
そこで、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1である第1メタサーフェス反射板1aを設置することにより、基地局Bから放射された第1入射波iaを第1メタサーフェス反射板1aで反射させ、第1反射波raを第1カバレッジホールHaに向かわせる。同様に、第2メタサーフェス反射板1bを設置することにより、基地局Bから放射された第2入射波ibを第2メタサーフェス反射板1bで反射させ、第2反射波rbを第2カバレッジホールHbに向かわせる。これにより、メタサーフェス反射板1の設置条件を緩和でき、カバレッジホールHを効果的に縮小させることができる。
【0042】
<第1の変形例>
以上、第1波長λと第2波長λとの2種類の波長の電波に関するメタサーフェス反射板1について説明したが、波長の種類は2種類に限られず、3種類以上であってもよい。具体例として、第1波長λ、第2波長λ、及び第3波長λの3種類の波長(ただし、λ>λ>λ)の電波に関するメタサーフェス反射板1について考える。このとき、βγλ≒αγλ≒αβλとなるような1より大きい三つの整数α、β、及びγ(α>β>γ)を設定する。素子間隔dは、d≒λ/α≒λ/β=λ/γとする。このとき、反射素子3の種類はαβγ種類となる。4種類以上の波長についても同様に考えることができる。
【0043】
<第2の変形例>
上記では、第1波長λの電波の反射角θと、第2波長λの電波の角θとが等しい場合について主に説明した。しかしながら、第1波長λの電波の反射角θと、第2波長λの電波の角θとは異なっていてもよい。これにより、第1波長λの電波と第2波長λの電波とのカバレッジホールHの方向が異なる場合であっても対応することができる。
【0044】
<実施の形態に係るメタサーフェス反射板1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係るメタサーフェス反射板1によれば、複数の周波数帯の電波について入射角θと反射角θとを異ならせることができるマルチバンドのメタサーフェス反射板1を提供することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【符号の説明】
【0046】
1・・・メタサーフェス反射板
2・・・グランド板
3・・・反射素子
30・・・第1部材
31・・・第2部材
図1
図2
図3
図4
図5