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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20230606BHJP
   H04B 10/073 20130101ALI20230606BHJP
   H04B 10/071 20130101ALI20230606BHJP
【FI】
G01M11/00 Q
G01M11/00 R
H04B10/073
H04B10/071
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020523614
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2019020319
(87)【国際公開番号】W WO2019235224
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2018106912
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】増田 一也
(72)【発明者】
【氏名】上田 知彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒有
(72)【発明者】
【氏名】津崎 哲文
(72)【発明者】
【氏名】菱川 善文
(72)【発明者】
【氏名】畑山 均
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-506099(JP,A)
【文献】特開2005-326223(JP,A)
【文献】特開昭59-074509(JP,A)
【文献】特開平06-160197(JP,A)
【文献】特開2006-139195(JP,A)
【文献】特開2008-232849(JP,A)
【文献】特開2003-222573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356805(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0153544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/08
G02B 1/00 - G02B 30/60
H04B 10/00 - H04B 10/90
H04J 14/00 - H04J 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光線路を含む光伝送路を検査する検査システムであって、
試験光を出力する光源と、光の強度を測定する第1パワーメータと、を有する検査装置と、
それぞれが前記複数の光線路のうちの1対の光線路を光学的に接続する1又は複数の接続部材と、
を備え、
前記1対の光線路のうちの第1光線路は、第1端と、前記第1端と反対側の第2端と、を有し、
前記1対の光線路のうちの第2光線路は、第3端と、前記第3端と反対側の第4端と、を有し、
前記1又は複数の接続部材は、前記第2端と前記第4端とを光学的に接続し、
前記光源は、前記第1端に前記試験光を入射し、
前記第1パワーメータは、前記試験光が前記1対の光線路を伝搬することで前記第3端から出力される第1出力光の強度である第1強度を測定し、
前記1又は複数の接続部材のそれぞれは、2入力2出力のカプラを有し、
前記カプラの2つの出力は、互いに光学的に接続され、
前記第2端及び前記第4端は、前記カプラの2つの入力にそれぞれ光学的に接続され、
前記検査装置は、前記第1端から出力される第2出力光の強度である第2強度を測定する第2パワーメータをさらに備え、
前記第2出力光は、前記試験光が前記カプラによって分波されることで得られる、検査システム。
【請求項2】
前記検査装置は、前記第1強度に基づいて、前記第1光線路における第1光損失及び前記第2光線路における第2光損失の合計である合計損失を算出し、前記合計損失に基づいて、前記第1光線路及び前記第2光線路の異常の有無を判定する、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記検査装置は、前記第1強度及び前記第2強度に基づいて、前記第1光線路における第1光損失と前記第2光線路における第2光損失とをそれぞれ算出し、前記第1光損失に基づいて前記第1光線路の異常の有無を判定するとともに、前記第2光損失に基づいて前記第2光線路の異常の有無を判定する、請求項1又は請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記検査装置は、前記第1端から出力される戻り光の強度の時間変化を測定する試験機をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記検査装置は、
前記第1光線路を含む第1光線路群から、前記光源と光学的に接続される光線路を選択的に切り替える第1光スイッチと、
前記第2光線路を含む第2光線路群から、前記第1パワーメータと光学的に接続される光線路を選択的に切り替える第2光スイッチと、
をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査システムに関する。本出願は、2018年6月4日出願の日本国特許出願第2018-106912号に基づく優先権を主張し、その日本国特許出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2つの地点間に敷設された光ケーブルを検査するシステムが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、光ファイバの一端に光パルスを入射し、後方散乱及び反射によって一端に戻る光を測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法によって、光ファイバの検査を行う測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-336106号公報
【文献】特開2000-295185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、通信量の増大に伴い、2つの地点間に敷設される光ファイバの本数が増加し、多心光ケーブルの導入が進んでいる。このような光ケーブルの検査を特許文献1及び特許文献2に記載の装置を用いて行う場合には、光ケーブルに含まれる光ファイバを1本ずつ検査する必要があり、検査に多大な時間を要する。
【0005】
本開示では、光伝送路の検査効率を向上可能な検査システムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る検査システムは、複数の光線路を含む光伝送路を検査するシステムである。検査システムは、試験光を出力する光源と、光の強度を測定する第1パワーメータと、を有する検査装置と、それぞれが複数の光線路のうちの1対の光線路を光学的に接続する1又は複数の接続部材と、を備える。1対の光線路のうちの第1光線路は、第1端と、第1端と反対側の第2端と、を有する。1対の光線路のうちの第2光線路は、第3端と、第3端と反対側の第4端と、を有する。1又は複数の接続部材は、第2端と第4端とを光学的に接続する。光源は、第1端に試験光を入射する。第1パワーメータは、試験光が1対の光線路を伝搬することで第3端から出力される第1出力光の強度である第1強度を測定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光伝送路の検査効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る検査システムの検査対象である光伝送システムの概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る検査システムの概略構成図である。
図3図3は、図2に示される検査システムが行う検査方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、光損失の測定方法を説明するための図である。
図5図5は、光損失の測定方法を説明するための図である。
図6図6は、戻り光の強度の時間変化を測定する方法を説明するための図である。
図7図7は、戻り光の強度の時間変化の測定結果の一例を示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る検査システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本開示の一側面に係る検査システムは、複数の光線路を含む光伝送路を検査するシステムである。検査システムは、試験光を出力する光源と、光の強度を測定する第1パワーメータと、を有する検査装置と、それぞれが複数の光線路のうちの1対の光線路を光学的に接続する1又は複数の接続部材と、を備える。1対の光線路のうちの第1光線路は、第1端と、第1端と反対側の第2端と、を有する。1対の光線路のうちの第2光線路は、第3端と、第3端と反対側の第4端と、を有する。1又は複数の接続部材は、第2端と第4端とを光学的に接続する。光源は、第1端に試験光を入射する。第1パワーメータは、試験光が1対の光線路を伝搬することで第3端から出力される第1出力光の強度である第1強度を測定する。
【0011】
この検査システムでは、第1光線路の第2端と第2光線路の第4端とが接続部材によって光学的に接続され、第1光線路の第1端に試験光が入射される。このため、試験光は、第1光線路、接続部材、及び第2光線路を順に通って第2光線路の第3端から第1出力光として出力され、第1出力光の第1強度が測定される。これにより、1対の光線路を一括して検査することができる。その結果、光伝送路に含まれる複数の光線路を1つずつ検査する構成と比較して、光伝送路の検査効率を向上させることが可能となる。
【0012】
検査装置は、第1強度に基づいて、第1光線路における第1光損失及び第2光線路における第2光損失の合計である合計損失を算出してもよく、合計損失に基づいて、第1光線路及び第2光線路の異常の有無を判定してもよい。この場合、合計損失が正常であれば、第1光線路及び第2光線路には異常が無いとみなすことができる。また、合計損失が異常であれば、第1光線路及び第2光線路には異常が生じているとみなすことができる。これにより、第1光線路及び第2光線路の異常の有無を一括して判定することができるので、光伝送路の検査効率を向上させることが可能となる。
【0013】
1又は複数の接続部材のそれぞれは、第2端と第4端とを光学的に接続する光ケーブルであってもよい。この場合、第2端と第4端とを光ケーブルで接続するだけの簡単な構成で、光伝送路の検査効率を向上させることが可能となる。
【0014】
1又は複数の接続部材のそれぞれは、2入力2出力のカプラを有してもよい。カプラの2つの出力は、互いに光学的に接続されてもよい。第2端及び第4端は、カプラの2つの入力にそれぞれ光学的に接続されてもよい。この場合、第1光線路の第1端に入射された試験光は、第1光線路を通って接続部材に出力される。接続部材において、試験光はカプラによって分波され、分波された試験光は、第2光線路を通って第3端から出力される。このため、上記構成においても、試験光は、第1光線路、接続部材、及び第2光線路を順に通って第2光線路から第1出力光として出力されるので、1対の光線路を一括して検査することができ、光伝送路の検査効率を向上させることが可能となる。
【0015】
検査装置は、第1端から出力される第2出力光の強度である第2強度を測定する第2パワーメータをさらに備えてもよい。第2出力光は、試験光がカプラによって分波されることで得られてもよい。接続部材において、試験光はカプラによって2つの分波光に分波され、一方の分波光は第1光線路に出力され、他方の分波光は第2光線路に出力される。そして、一方の分波光は、第1光線路の第1端から第2出力光として出力される。このため、第2強度は、第1光線路を往復した後の試験光の強度に応じた値を示すので、第1光線路を個別に検査することが可能となる。
【0016】
検査装置は、第1強度及び第2強度に基づいて、第1光線路における第1光損失と第2光線路における第2光損失とをそれぞれ算出してもよく、第1光損失に基づいて第1光線路の異常の有無を判定するとともに、第2光損失に基づいて第2光線路の異常の有無を判定してもよい。この場合、第1光損失と第2光損失とがそれぞれ算出されるので、第1光線路における異常の有無と第2光線路における異常の有無とを個別に判定することができる。
【0017】
検査装置は、第1端から出力される戻り光の強度の時間変化を測定する試験機をさらに備えてもよい。この場合、戻り光の強度の時間変化によって、1対の光線路における異常箇所を推定することができる。
【0018】
検査装置は、第1光線路を含む第1光線路群から、光源と光学的に接続される光線路を選択的に切り替える第1光スイッチと、第2光線路を含む第2光線路群から、第1パワーメータと光学的に接続される光線路を選択的に切り替える第2光スイッチと、をさらに備えてもよい。この場合、光源と光学的に接続される光線路と、第1パワーメータに光学的に接続される光線路とを切り替えることで、接続部材によって光学的に接続されている1対の光線路を順番に検査することが可能となる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る検査システムの具体例を、図面を参照しつつ以下に説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る検査システムの検査対象である光伝送システムの概略構成図である。図1に示される光伝送システム1は、互いに異なる2つの地点間で光信号を伝送するためのシステムである。本実施形態では、光伝送システム1は、局100Aと局100Bとの間で光信号を伝送する。局100Aと局100Bとの間は複数本の光ケーブル5によって接続されている。
【0021】
局100Aは、複数のパッチパネル2Aと、スプライスキャビネット3Aと、を備える。パッチパネル2Aは、局100A内のサーバ等の機器を外部の装置と通信可能に接続するための装置であり、局100Aに設けられた光配線架(ラック)の各段に収納される。なお、光配線架の寸法は標準化されており、光配線架の幅及び奥行きは一定であり、高さは44mmを「1U」としてその整数倍である。パッチパネル2Aは、複数のアダプタを有する。各アダプタには、光ケーブルの一端に設けられた光コネクタが挿入される。パッチパネル2Aのアダプタには、複数本(例えば、24本)の光ケーブル4Aが接続される外部アダプタと、局100A内の機器に接続された複数本の光ケーブルが接続される内部アダプタと、が含まれる。
【0022】
複数本の光ケーブル4Aのそれぞれは、複数本(N本)の光ファイバを含む。Nは、2以上の整数であり、例えば12である。本実施形態では、光ケーブル4Aは、N本の光ファイバ心線が一方向に配列されたテープファイバ(テープ心線ともいう。)である。以下の説明において、光ケーブル4Aに含まれるN本の光ファイバ心線を一方向の一方の端から順に1番心線、2番心線、・・・、N番心線と称する場合がある。光ケーブル4Aの一端は、パッチパネル2Aの外部アダプタに接続される。光ケーブル4Aの他端は、スプライスキャビネット3Aにおいて光ケーブル5の一端に接続される。光ケーブル4Aに含まれるN本の光ファイバのそれぞれは、光ケーブル5に含まれるN本の光ファイバのいずれかと一対一で接続(融着接続)される。
【0023】
光ケーブル5は、N本の光ファイバを含む。本実施形態では、光ケーブル5は、N本の光ファイバ心線が一方向に配列されたテープファイバである。以下の説明において、光ケーブル5に含まれるN本の光ファイバ心線を一方向の一方の端から順に1番心線、2番心線、・・・、N番心線と称する場合がある。
【0024】
局100Bは、複数のパッチパネル2Bと、スプライスキャビネット3Bと、を備える。パッチパネル2Bは、局100B内のサーバ等の機器を外部の装置と通信可能に接続するための装置であり、局100Bに設けられた光配線架(ラック)の各段に収納される。パッチパネル2Bは、複数のアダプタを有する。各アダプタには、光ケーブルの一端に設けられた光コネクタが挿入される。パッチパネル2Bのアダプタには、複数本(例えば、24本)の光ケーブル4Bが接続される外部アダプタと、局100B内の機器に接続された複数本の光ケーブルが接続される内部アダプタと、が含まれる。
【0025】
複数本の光ケーブル4Bのそれぞれは、N本の光ファイバを含む。本実施形態では、光ケーブル4Bは、N本の光ファイバ心線が一方向に配列されたテープファイバである。以下の説明において、光ケーブル4Bに含まれるN本の光ファイバ心線を一方向の一方の端から順に1番心線、2番心線、・・・、N番心線と称する場合がある。光ケーブル4Bの一端は、スプライスキャビネット3Bにおいて光ケーブル5の他端に接続される。光ケーブル4Bに含まれるN本の光ファイバのそれぞれは、光ケーブル5に含まれるN本の光ファイバのいずれかと一対一で融着接続される。光ケーブル4Bの他端は、パッチパネル2Bの外部アダプタに接続される。なお、上記の例ではスプライスキャビネット3A,3Bを用いたが、必ずしもキャビネットの形態を有する必要は無い。
【0026】
このように、パッチパネル2Aに接続された光ケーブル4Aと、光ケーブル5と、パッチパネル2Bに接続された光ケーブル4Bと、がその順に接続されることによって、光伝送路Rが構成される。光ケーブル4Aは、光伝送路Rの一端側に位置し、光ケーブル4Bは、光伝送路Rの他端側に位置する。光伝送路Rは、複数の光線路frを含む。光線路frは、光ケーブル4Aに含まれる光ファイバと、光ケーブル5に含まれる光ファイバと、光ケーブル4Bに含まれる光ファイバとがその順に接続されることによって構成される。つまり、各光線路frは、パッチパネル2Aの内部アダプタからパッチパネル2Bの内部アダプタまで延びている。以下の説明において、光ケーブル4Aのk番心線と光ケーブル4Bのk番心線とが光ケーブル5を介して光学的に接続されることによって構成される光線路を、「k番目の光線路」と称する場合がある(kは1以上N以下の整数である。)。
【0027】
次に、図2を参照して、第1実施形態に係る検査システムについて説明する。図2は、第1実施形態に係る検査システムの概略構成図である。図2に示される検査システム10は、局100Aと局100Bとの間の光伝送路Rを検査するためのシステムである。より具体的には、検査システム10は、パッチパネル2Aとパッチパネル2Bとの間の光伝送路Rを検査する。検査システム10は、検査装置20と、複数の接続部材50と、を備える。検査装置20は、光伝送路Rに含まれる複数の光線路frを検査する。
【0028】
検査装置20は、局100Aに配置されている。つまり、検査装置20は、光伝送路Rの一端に配置されている。検査装置20は、ラック21と、光スイッチ部22と、AC/DCコンバータ23と、測定器24と、スイッチングハブ26と、制御装置30と、を備える。
【0029】
ラック21は、光スイッチ部22、AC/DCコンバータ23、測定器24、スイッチングハブ26、及び制御装置30を収納する。ラック21としては、例えば、検査装置20を容易に移動可能とするためにキャスター付きのラックが用いられる。
【0030】
光スイッチ部22は、光の伝送経路を切り替える装置である。光スイッチ部22は、例えば、1728個のポートを有する。光スイッチ部22は、光スイッチSW1と、光スイッチSW2と、を備える。光スイッチSW1,SW2は、AC/DCコンバータ23から供給された直流電圧によって駆動する。光スイッチSW1,SW2は、例えば、同じ基板上に設けられている。
【0031】
光スイッチSW1のポートには、後述の光パルス試験機41(光源)、パワーメータ42、及び複数のパッチパネル2Aの内部アダプタの一部が光ケーブルを介して接続されている。ここでは、複数のパッチパネル2Aの内部アダプタのうちの奇数番目の光線路fr(光線路群G1)に対応する内部アダプタが光スイッチSW1のポートに接続されている。光線路群G1は、奇数番目の光線路frの集合である。光スイッチSW1のポートと複数のパッチパネル2Aの内部アダプタとは、光ケーブル27によって個別に接続されている。
【0032】
光スイッチSW1は、例えば、光線路群G1(第1光線路群)に対応するパッチパネル2Aのいずれかの内部アダプタ又はパワーメータ42を光パルス試験機41に選択的に接続するよう伝送経路を切り替え、光パルス試験機41から出力された試験光をパッチパネル2Aのいずれかのアダプタ又はパワーメータ42に選択的に供給する。つまり、光スイッチSW1は、光線路群G1のうちから光パルス試験機41と光学的に接続される光線路frを選択的に切り替える。光スイッチSW1は、制御装置30から出力される切替指示に基づいて、伝送経路を切り替える。
【0033】
光スイッチSW2のポートには、後述のパワーメータ43(第1パワーメータ)、及び複数のパッチパネル2Aの内部アダプタの一部が光ケーブルを介して接続されている。ここでは、複数のパッチパネル2Aの内部アダプタのうちの偶数番目の光線路fr(光線路群G2)に対応する内部アダプタが光スイッチSW2のポートに接続されている。光線路群G2は、偶数番目の光線路frの集合である。光スイッチSW2のポートと複数のパッチパネル2Aの内部アダプタとは、光ケーブル27によって個別に接続されている。
【0034】
光スイッチSW2は、例えば、光線路群G2(第2光線路群)に対応するパッチパネル2Aのいずれかの内部アダプタをパワーメータ43に選択的に接続するよう伝送経路を切り替える。つまり、光スイッチSW2は、光線路群G2のうちからパワーメータ43と光学的に接続される光線路frを選択的に切り替える。光スイッチSW2は、制御装置30から出力される切替指示に基づいて、伝送経路を切り替える。光スイッチSW1,SW2の切り替えは、同期して行われる。
【0035】
AC/DCコンバータ23は、商用電源から供給された交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧を光スイッチ部22に供給する。なお、光スイッチ部22が商用電源で直接駆動できる場合には、AC/DCコンバータ23は設けられなくてもよい。また、商用電源から供給された交流電圧を電圧変換した交流電圧が使用される場合には、電圧変換器が設けられてもよい。
【0036】
測定器24は、光パルス試験機41と、パワーメータ42と、パワーメータ43と、を備える。光パルス試験機41は、試験光を出力する光源を有し、光源から出力された試験光に対する戻り光を受信して、その戻り光の強度の時間変化を測定する。戻り光は、試験光の後方散乱光及びフレネル反射光を含む。以下の説明において、戻り光の強度の時間変化の測定を「OTDR測定」と称する場合がある。光源が出力する試験光の波長は、例えば、1310nm、又は1550nmである。光源は、波長が異なる複数の試験光を出力可能であってもよい。例えば、光源は、1310nmの波長を有する試験光と、1550nmの波長を有する試験光と、を出力する。光パルス試験機41は、制御装置30から出力される光出力指示に基づいて、試験光を出力する。光パルス試験機41は、制御装置30から出力される測定指示に基づいて、OTDR測定を行う。
【0037】
パワーメータ42は、光のパワー(強度)を測定する機器である。パワーメータ42は、光スイッチSW1を介して入力された試験光の強度を測定する。パワーメータ42は、制御装置30から出力される測定指示に基づいて、試験光の強度を測定する。
【0038】
パワーメータ43は、光のパワー(強度)を測定する機器である。パワーメータ43は、光スイッチSW2を介して入力された試験光の強度を測定する。パワーメータ43は、制御装置30から出力される測定指示に基づいて、試験光の強度を測定する。
【0039】
スイッチングハブ26は、光スイッチ部22と、測定器24と、制御装置30とを電気信号を用いて通信可能に接続する機器である。光スイッチ部22、測定器24、及び制御装置30は、例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル等によってスイッチングハブ26に接続されている。なお、スイッチングハブ26に代えて、通常のハブ(OSI(Open System Interconnect)参照モデルにおけるレイヤ1のハブ)が使用されてもよい。
【0040】
制御装置30は、検査システム10を統括制御するコントローラである。制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリと、マウス及びキーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置と、ネットワークカード等の通信装置と、を含むコンピュータシステムとして構成される。制御装置30としては、例えば、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、及びタブレット端末が用いられ得る。制御装置30は、メモリに記憶されているコンピュータプログラム(検査プログラム)に基づいて、検査システム10を制御することによって光伝送路Rの検査を行う。
【0041】
複数の接続部材50のそれぞれは、複数の光線路frのうちの1対の光線路frを光学的に接続する部材である。接続部材50は、例えば、単心の光ファイバ心線を有する光ケーブルである。具体的には、接続部材50は、1対の光線路frに対応するパッチパネル2Bの2つの内部アダプタ同士を光学的に接続する。本実施形態では、接続部材50は、互いに隣り合う2つの光線路frを光学的に接続する。つまり、接続部材50は、奇数番目の光線路frと偶数番目の光線路frとを光学的に接続する。
【0042】
次に、図3図7を参照して、検査システム10が行う検査方法について説明する。図3は、図2に示される検査システムが行う検査方法の一例を示すフローチャートである。図4及び図5は、光損失の測定方法を説明するための図である。図6は、戻り光の強度の時間変化を測定する方法を説明するための図である。図7は、戻り光の強度の時間変化の測定結果の一例を示す図である。
【0043】
検査を行う前に、検査を行うための準備が行われる。局100Bにおいて、複数のパッチパネル2Bの内部アダプタに対して、1対の内部アダプタごとに1対の内部アダプタ同士を接続部材50で接続する。接続部材50で接続される2つの内部アダプタの組み合わせは、1対の光線路frに対応し、予め定められている。例えば、1番目の光線路frの他端に位置するパッチパネル2Bの内部アダプタ2b(第2端)と、2番目の光線路frの他端に位置するパッチパネル2Bの内部アダプタ2b(第4端)とが接続部材50によって光学的に接続される。
【0044】
図3に示される検査方法は、例えば、制御装置30において、検査プログラムが実行されることによって開始される。まず、検査装置20が電力Prefを測定する(ステップS11)。具体的には、図4に示されるように、制御装置30は、光スイッチSW1において、光パルス試験機41が接続されているポートとパワーメータ42が接続されているポートとが光学的に接続されるように、光スイッチSW1に切替指示を送信する。そして、制御装置30は、光パルス試験機41に試験光を出力させ、パワーメータ42に電力Prefを測定させる。そして、制御装置30は、パワーメータ42によって測定された電力Prefを受け取り、電力Prefを不図示のメモリに記憶する。
【0045】
続いて、検査装置20は、検査対象の1対の光線路frを選択する(ステップS12)。例えば、検査装置20は、1番目の光線路fr(第1光線路)と2番目の光線路fr(第2光線路)との組を選択する。この場合、図5に示されるように、制御装置30は、光スイッチSW1において、光パルス試験機41が接続されているポートと、光ケーブル4Aの1番心線に接続されているポートとが光学的に接続されるように、光スイッチSW1に切替指示を送信する。さらに、制御装置30は、光スイッチSW2において、パワーメータ43が接続されているポートと光ケーブル4Aの2番心線に接続されているポートとが光学的に接続されるように、光スイッチSW2に切替指示を送信する。これにより、光パルス試験機41と1番目の光線路frの一端に位置するパッチパネル2Aの内部アダプタ2a(第1端)とが光学的に接続され、パワーメータ43と2番目の光線路frの一端に位置するパッチパネル2Aの内部アダプタ2a(第3端)とが光学的に接続される。
【0046】
なお、光スイッチSW1には、光ケーブル4Aが直接接続されていないので、光ケーブル4Aの1番心線に接続されているポートとは、光ケーブル27及びパッチパネル2Aを介して1番心線に光学的に接続されるポートを意味する。同様に、光スイッチSW2には、光ケーブル4Aが直接接続されていないので、光ケーブル4Aの2番心線に接続されているポートとは、光ケーブル27及びパッチパネル2Aを介して2番心線に光学的に接続されるポートを意味する。以下の説明においても同様の表現が用いられる。
【0047】
続いて、検査装置20は、電力P1を測定する(ステップS13)。具体的には、制御装置30は、光パルス試験機41に試験光を出力させ、パワーメータ43に電力P1を測定させる。1番目の光線路frと2番目の光線路frとの組を選択している場合、光パルス試験機41は、光スイッチSW1及び光ケーブル27を介して内部アダプタ2aに試験光を入射する。内部アダプタ2aに入射された試験光は、1番目の光線路fr、接続部材50、及び2番目の光線路frを順に通って内部アダプタ2aから出力される。パワーメータ43は、内部アダプタ2aから出力された試験光(第1出力光)を光ケーブル27及び光スイッチSW2を介して受信し、当該試験光の強度(第1強度)を電力P1として測定する。そして、制御装置30は、パワーメータ43によって測定された電力P1を受け取る。
【0048】
続いて、制御装置30は、電力P1に基づいて光損失ILを算出する(ステップS14)。光損失ILは、1対の光線路frのうちの一方の光線路frにおける光損失IL1と他方の光線路frにおける光損失IL2との合計損失である。具体的には、制御装置30は、電力Prefと電力P1とに基づいて、式(1)を用いて光損失ILを算出する。なお、光損失ILには、パッチパネル2A,2B及び接続部材50における損失(例えば、パッチパネル2Bと接続部材50との接続損失)が含まれている。光損失Lrefは、光スイッチSW1における損失である。光損失Lsw1は、光スイッチSW1及び光ケーブル27における損失である。光損失Lsw2は、光スイッチSW2及び光ケーブル27における損失である。光損失Lref、光損失Lsw1、及び光損失Lsw2は、予め測定され、制御装置30のメモリに記憶されている。
【数1】
【0049】
光パルス試験機41から出力された試験光は、光スイッチSW1、一方の光線路fr、接続部材50、他方の光線路fr、及び光スイッチSW2を順に伝搬する。このため、光パルス試験機41から出力される試験光の電力P0は、電力P1に光の伝送経路における各光損失を加えることで得られる電力と等しい。電力P0を直接測定することができないので、電力Prefに光損失Lrefを加えた値が電力P0として算出される。そして、電力P0から光損失Lsw1、光損失Lsw2、及び電力P1を除いた電力が、光損失ILとして算出される。そして、制御装置30は、光線路frの識別番号と、電力P1と、光損失ILと、を対応付けて不図示のメモリに記憶する。
【0050】
続いて、制御装置30は、メモリから光損失ILを読み出し、光損失ILが良好であるか否かを判定する(ステップS15)。つまり、制御装置30は、光損失ILに基づいて、1対の光線路frの異常の有無を判定する。具体的には、制御装置30は、光損失ILと予め定められた判定閾値とを比較する。光損失ILが判定閾値以下である場合には、制御装置30は、光損失ILが良好である、つまり、1対の光線路frが正常であると判定し(ステップS15;YES)、ステップS17を実施する。一方、光損失ILが判定閾値よりも大きい場合には、制御装置30は、光損失ILが異常であると判定し(ステップS15;NO)、検査装置20にOTDR測定(ステップS16)を行わせる。
【0051】
1番目の光線路frと2番目の光線路frとの組を選択している場合、図6に示されるように、制御装置30は、光スイッチSW1において、光パルス試験機41が接続されているポートと光ケーブル4Aの1番心線に接続されているポートとが光学的に接続されるように、光スイッチSW1に切替指示を送信する。さらに、制御装置30は、光スイッチSW2において、光ケーブル4Aの2番心線に接続されているポートが他のポートに光学的に接続されないように、光スイッチSW2に切替指示を送信する。これにより、光パルス試験機41と内部アダプタ2aとが光学的に接続され、パワーメータ43にはいずれの内部アダプタも光学的に接続されない。
【0052】
そして、制御装置30は、光パルス試験機41に試験光を出力させ、光パルス試験機41に戻り光の強度の時間変化を測定させる。つまり、光パルス試験機41は、光スイッチSW1及び光ケーブル27を介して内部アダプタ2aに試験光を入射する。内部アダプタ2aに入射された試験光が1番目の光線路fr、接続部材50、及び2番目の光線路frを順に伝搬する際に、後方散乱及び反射によって戻り光が内部アダプタ2aに戻る。そして、光パルス試験機41は、内部アダプタ2aから出力された戻り光を光ケーブル27及び光スイッチSW1を介して受信し、戻り光の強度の時間変化を測定する。そして、制御装置30は、光パルス試験機41によって測定された測定結果を受け取り、光線路frの識別番号とともに不図示のメモリに記憶する。そして、制御装置30は、ステップS17を実施する。
【0053】
図7に示される測定結果の一例を用いて、異常箇所の推定方法を説明する。図7の横軸は、光パルス試験機41からの距離を示し、図7の縦軸は、戻り光の強度を示す。この測定結果は、第1部分F1、凸部C、及び第2部分F2を含む。第1部分F1は、1番目の光線路frにおける戻り光(後方散乱光)の強度を示している。第1部分F1では、光パルス試験機41からの距離が大きくなるに従い、戻り光の強度が次第に低下している。凸部Cは、接続部材50における戻り光の強度を示している。接続部材50において反射が生じるので、接続部材50における戻り光の強度は、光線路frにおける戻り光の強度と比較して大きくなる。第2部分F2は、2番目の光線路frにおける戻り光(後方散乱光)の強度を示している。第2部分F2では、戻り光の強度が急落している。つまり、2番目の光線路frの途中において、断線等の異常が生じていると推定することができる。なお、図7に示される測定結果では、近端反射、パッチパネル2A,2Bで生じる反射、及び光スイッチSW1で生じる反射等の図示は省略されている。
【0054】
続いて、制御装置30は、すべての光線路frが検査されたか否かを判定する(ステップS17)。制御装置30は、すべての光線路frが検査されたわけではないと判定した場合(ステップS17;NO)、未検査の1対の光線路frを選択する(ステップS12)。そして、制御装置30は、ステップS13~ステップS17の処理を再び実施する。一方、ステップS17において、すべての光線路frが検査されたと制御装置30が判定した場合(ステップS17;YES)、検査システム10が行う検査方法の一連の処理が終了する。
【0055】
以上説明したように、検査システム10では、1対の光線路frの他端同士が接続部材50によって光学的に接続され、一方の光線路frの一端に試験光が入射される。このため、試験光は、一方の光線路fr、接続部材50、及び他方の光線路frを順に通って他方の光線路frの一端から出力され、電力P1が測定される。これにより、1対の光線路frを一括して検査することができる。その結果、光伝送路Rに含まれる複数の光線路frを1つずつ検査する構成と比較して、光伝送路Rの検査効率を向上させることが可能となる。
【0056】
具体的には、検査システム10では、電力P1に基づいて、一方の光線路frにおける光損失IL1及び他方の光線路frにおける光損失IL2の合計である光損失ILが算出される。光損失ILが正常であれば、1対の光線路frには異常が無いとみなすことができる。また、光損失ILが異常であれば、1対の光線路frに異常が生じているとみなすことができる。これにより、1対の光線路frの異常の有無を一括して判定することができるので、光伝送路Rの検査効率を向上させることが可能となる。
【0057】
検査システム10では、一方の光線路frの他端と他方の光線路frの他端とを接続部材50(光ケーブル)で接続するだけの簡単な構成で、光伝送路Rの検査効率を向上させることが可能となる。
【0058】
光パルス試験機41は、一方の光線路frの一端から出力される戻り光の強度の時間変化を測定する。戻り光の強度の時間変化によって、1対の光線路における異常箇所を推定することができる。
【0059】
光スイッチSW1には、光パルス試験機41と、各対の光線路frのうちの一方の光線路frと、が接続され、光パルス試験機41と光学的に接続される光線路frが切り替えられる。光スイッチSW2には、パワーメータ43と、各対の光線路frのうちの他方の光線路frと、が接続され、パワーメータ43と光学的に接続される光線路frが切り替えられる。これにより、接続部材50によって光学的に接続されている1対の光線路frを順番に検査することが可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、第2実施形態に係る検査システムについて説明する。図8は、第2実施形態に係る検査システムの概略構成図である。図8に示される検査システム10Aは、検査装置20に代えて検査装置20Aを備える点、及び複数の接続部材50に代えて複数の接続部材50Aを備える点において検査システム10と主に相違する。検査装置20Aは、測定器24に代えて測定器24Aを備える点、及びカプラ28をさらに備える点において、検査装置20と主に相違する。
【0061】
測定器24Aは、パワーメータ44をさらに備える点において測定器24と主に相違する。パワーメータ44は、光のパワー(強度)を測定する機器である。パワーメータ44は、光スイッチSW1を介して入力された分波光の強度を測定する。パワーメータ44は、制御装置30から出力される測定指示に基づいて、分波光の強度を測定する。
【0062】
カプラ28は、光合分波器である。カプラ28としては、例えば、3dBカプラが用いられる。カプラ28は、光スイッチSW1と測定器24Aとの間に設けられる。光パルス試験機41及びパワーメータ44は、カプラ28を介して光スイッチSW1に接続される。カプラ28は、光パルス試験機41から出力された試験光を光スイッチSW1に出力する。カプラ28は、光スイッチSW1から出力された光を分波し、分波した光を光パルス試験機41及びパワーメータ44にそれぞれ出力する。
【0063】
接続部材50Aは、光ケーブルに代えてカプラ51を備える点において接続部材50と主に相違する。カプラ51は、2×2(2入力2出力)の光合分波器である。カプラ51としては、例えば、3dBカプラが用いられる。具体的には、カプラ51の2つの入力ポートには、1対の光線路frに対応するパッチパネル2Bの内部アダプタがそれぞれ光学的に接続される。本実施形態では、カプラ51には、互いに隣り合う2つの光線路frが光学的に接続される。
【0064】
カプラ51の一方の入力ポートには、奇数番目の光線路frが光学的に接続され、カプラ51の他方の入力ポートには、偶数番目の光線路frが光学的に接続される。例えば、1番目の光線路frの他端に位置するパッチパネル2Bの内部アダプタ2bが、光ケーブル等によってカプラ51の一方の入力ポートに光学的に接続され、2番目の光線路frの他端に位置するパッチパネル2Bの内部アダプタ2bが、光ケーブル等によってカプラ51の他方の入力ポートに光学的に接続される。カプラ51の2つの出力ポートは、光ケーブル等によって互いに光学的に接続されている。
【0065】
検査システム10Aが行う検査方法は、ステップS13~ステップS15において検査システム10と主に相違する。ステップS13では、検査装置20Aは、検査装置20と同様に電力P1を測定するとともに、電力P2を測定する。具体的には、制御装置30は、光パルス試験機41に試験光を出力させ、パワーメータ43に電力P1を測定させるとともに、パワーメータ44に電力P2を測定させる。1番目の光線路frと2番目の光線路frとの組を検査する場合には、光パルス試験機41は、カプラ28、光スイッチSW1、及び光ケーブル27を介して内部アダプタ2aに試験光を入射する。内部アダプタ2aに入射された試験光は、1番目の光線路frを通って接続部材50Aに出力される。
【0066】
接続部材50Aにおいて、試験光は、カプラ51によって分波され、一方の分波光は1番目の光線路frに出力され、他方の分波光は2番目の光線路frに出力される。そして、一方の分波光は、1番目の光線路frを通って、内部アダプタ2aから出力される。他方の分波光は、2番目の光線路frを通って、内部アダプタ2aから出力される。パワーメータ44は、内部アダプタ2aから出力された一方の分波光を光ケーブル27、光スイッチSW1、及びカプラ28を介して受信し、当該分波光の強度を電力P2として測定する。パワーメータ43は、内部アダプタ2aから出力された他方の分波光を光ケーブル27及び光スイッチSW2を介して受信し、当該分波光の強度を電力P1として測定する。そして、制御装置30は、パワーメータ43によって測定された電力P1、及びパワーメータ44によって測定された電力P2を受け取る。
【0067】
続いて、ステップS14において、制御装置30は、電力P1及び電力P2に基づいて、光損失IL1及び光損失IL2をそれぞれ算出する。具体的には、制御装置30は、電力Prefと電力P1とに基づいて、式(2)の関係式を得る。
【数2】
【0068】
制御装置30は、電力Prefと電力P2とに基づいて、式(3)を用いて光損失IL1を算出する。なお、カプラ28及びカプラ51は、3dBカプラであるとし、試験光の光パワーが各カプラにおいて1対1で分波されることとしている。また、電力Prefに光損失Lrefを加えた値は、光パルス試験機41から出力された試験光の電力P0の半分に相当する。
【数3】
【0069】
そして、制御装置30は、式(2)及び式(3)から光損失IL2を算出する。そして、制御装置30は、光線路frの識別番号と、電力P1と、電力P2と、光損失IL1と、光損失IL2と、を対応付けて不図示のメモリに記憶する。
【0070】
続いて、ステップS15において、制御装置30は、メモリから光損失IL1及び光損失IL2を読み出し、光損失IL1及び光損失IL2が良好であるか否かを判定する。つまり、制御装置30は、光損失IL1に基づいて一方の光線路frの異常の有無を判定するとともに、光損失IL2に基づいて他方の光線路frの異常の有無を判定する。具体的には、制御装置30は、光損失IL1と判定閾値とを比較するとともに、光損失IL2と判定閾値とを比較する。光損失IL1が判定閾値以下である場合には、制御装置30は、光損失IL1が良好である、つまり、一方の光線路frが正常であると判定する。光損失IL1が判定閾値よりも大きい場合には、制御装置30は、光損失IL1が異常である、つまり、一方の光線路frが異常であると判定する。同様に、光損失IL2が判定閾値以下である場合には、制御装置30は、光損失IL2が良好である、つまり、他方の光線路frが正常であると判定する。光損失IL2が判定閾値よりも大きい場合には、制御装置30は、光損失IL2が異常である、つまり、他方の光線路frが異常であると判定する。
【0071】
そして、制御装置30は、光損失IL1及び光損失IL2がともに良好である場合に、ステップS17を実施する。一方、制御装置30は、光損失IL1及び光損失IL2の少なくともいずれかが異常である場合には、検査装置20にOTDR測定(ステップS16)を行わせる。
【0072】
以上のように、検査システム10Aにおいても、検査システム10と同様の効果が奏される。また、検査システム10Aでは、1対の光線路frのうちの一方の光線路frの一端に入射された試験光は、一方の光線路を通って接続部材50Aに出力される。接続部材50Aにおいて、試験光はカプラ51によって2つの分波光に分波され、一方の分波光は一方の光線路frに出力され、他方の分波光は他方の光線路frに出力される。他方の分波光は、他方の光線路frを通って他方の光線路frの一端から出力される。このため、検査システム10Aにおいても、試験光は、一方の光線路fr、接続部材50A、及び他方の光線路frを順に通って他方の光線路frから出力されるので、1対の光線路を一括して検査することができ、光伝送路の検査効率を向上させることが可能となる。そして、一方の分波光は、一方の光線路frの一端から出力される。このため、電力P2は、一方の光線路frを往復した後の試験光の強度に応じた値を示すので、一方の光線路frを個別に検査することが可能となる。
【0073】
具体的には、検査システム10Aでは、電力P1及び電力P2に基づいて、一方の光線路frにおける光損失IL1と他方の光線路frにおける光損失IL2とがそれぞれ算出される。光損失IL1に基づいて一方の光線路frの異常の有無が判定され、光損失IL2に基づいて他方の光線路frの異常の有無が判定される。このように、検査システム10Aでは、一方の光線路frにおける異常の有無と他方の光線路frにおける異常の有無とを個別に判定することができる。
【0074】
なお、本開示に係る検査システムは上記実施形態に限定されない。
【0075】
例えば、上記実施形態では、光伝送路Rでは、光ケーブル4Aと光ケーブル4Bとは、1本の光ケーブル5で光学的に接続されているが、直列に接続された複数本の光ケーブル5で光学的に接続されてもよい。
【0076】
光ケーブル4A,4B,5は、複数本(N本)の光ファイバを含むケーブルであればよく、テープファイバでなくてもよい。光ケーブル4A,4B,5は、光ファイバ心線に代えて、光ファイバ素線を含んでもよい。
【0077】
上記実施形態では、光パルス試験機41は、光源を含んでいるが、光パルス試験機41と光源とは別体であってもよい。或いは、測定器24は、電力測定用に、光パルス試験機41が備える光源とは別の光源を有していてもよい。
【0078】
上記実施形態では、検査システム10,10Aは、検査プログラムが実行されることにより、制御装置30の制御のもとで光伝送路Rの検査を自動的に行うが、作業者が制御装置30の入力装置を用いて検査対象の光線路frを指定することによって、検査システム10,10Aに検査を行わせてもよい。
【0079】
光損失ILの測定及びOTDR測定のそれぞれは、互いに異なる波長を有する複数の試験光を用いて行われてもよい。この場合、検査精度のさらなる向上が可能となる。
【0080】
ステップS16のOTDR測定は省略されてもよい。この場合、検査時間の短縮が可能となる。
【0081】
検査システム10,10Aでは、作業者が制御装置30の入力装置を用いて、上述の各閾値、試験光のパルス幅、OTDR測定条件、及び測定距離の範囲等を設定及び変更し得る。例えば、OTDR測定において、状況に応じてパルス幅を小さくすることで、分解能を向上させてもよい。これにより、検査精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…光伝送システム、2A…パッチパネル、2B…パッチパネル、2a…内部アダプタ(第1端)、2a…内部アダプタ(第3端)、2b…内部アダプタ(第2端)、2b…内部アダプタ(第4端)、10,10A…検査システム、20,20A…検査装置、24,24A…測定器、28…カプラ、30…制御装置、41…光パルス試験機(光源、試験機)、43…パワーメータ(第1パワーメータ)、44…パワーメータ(第2パワーメータ)、50,50A…接続部材、51…カプラ、fr…光線路、G1…光線路群(第1光線路群)、G2…光線路群(第2光線路群)、R…光伝送路、SW1…光スイッチ(第1光スイッチ)、SW2…光スイッチ(第2光スイッチ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8