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  • 特許-ゴム補強用スチールコード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ゴム補強用スチールコード
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20230606BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20230606BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20230606BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 L
B60C9/20 E
B60C15/04 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020527052
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018078999
(87)【国際公開番号】W WO2019096548
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/111742
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユピン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ ミン
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-031876(JP,A)
【文献】特開2000-008281(JP,A)
【文献】特開2003-155676(JP,A)
【文献】特開平11-081168(JP,A)
【文献】特開2009-234332(JP,A)
【文献】特開平11-124782(JP,A)
【文献】特開平02-306801(JP,A)
【文献】特表2017-515008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00-9/00
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層及びシース層を含むスチールコードであり、前記コア層は、本数nの複数のコアワイヤを含み、前記シース層は本数mの複数のシースワイヤを含み、前記スチールコードは長軸と短軸を有するフラットな断面を有し、前記フラットな断面は前記長軸の長さと前記短軸の長さの比であるフラット比を有し、前記フラット比は1.2を超え、前記スチールコードはBLコードである破断荷重を有し、前記コアワイヤと前記シースワイヤは、前記コアワイヤと前記シースワイヤが前記スチールコードから解撚されている場合、合計BLワイヤである合計破断荷重を有する、スチールコードであって
前記nが3であり、前記mが6から12の範囲であり、
記BLコード及び前記合計BLワイヤが次式:
BLコード/合計BLワイヤ>96%
を満たすことを特徴とするスチールコード。
【請求項2】
前記BLコード及び前記合計BLワイヤが次式:
BLコード/合計BLワイヤ>97%
を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記スチールコードの前記フラット比が1.8未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記スチールコードの前記フラット比が1.25~1.50の範囲であることを特徴とする、請求項3に記載のスチールコード。
【請求項5】
前記複数のコアワイヤが300mmを超える撚りピッチを有し、前記複数のシースワイヤが30mm未満の撚りピッチを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項6】
前記複数のコアワイヤと前記複数のシースワイヤが同じ撚りピッチ及び同じ撚り方向を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のスチールコードを作製する方法であって、
a.コアワイヤとシースワイヤを提供するステップ;
b.前記コアワイヤの周りに前記シースワイヤを撚り、それにより実質的に丸い断面のスチールストランドを形成するステップ;
c.前記コア層と前記シース層の長さの一致を改善するために、2つのリバースプーリを次々に使用するステップ;
d.ローラストレートナによって前記スチールストランドをフラット化して、フラットな断面の前記スチールコードを形成するステップ
を含む方法。
【請求項8】
ゴム物品を補強するための請求項1~のいずれか一項に記載のスチールコードの使用。
【請求項9】
ベルト層と、カーカス層と、トレッド層と、一対のビード部分とを含むタイヤであって、請求項1~のいずれか一項に記載のスチールコードが前記ベルト層に埋め込まれることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用のスチールコードに関する。本発明はまた、スチールコードを含むゴム物品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量タイヤが普及しているが、その理由は、エネルギーを節約し、それにより環境汚染を低減するためである。軽量タイヤを実現するにはいくつかの方法があり、例えば、高強度コードを使用してタイヤ中のスチールコードの総量を減らし、その後タイヤの重量を軽減する方法、又は、フラットコードを使用してベルト層の厚さを低減し、その後タイヤの重量を軽減する方法である。
【0003】
タイヤ内でフラットコードを使用するために、フラットコードを得る多くの解決策がある。
【0004】
欧州特許第2689939号明細書は、2+nの構造を有するスチールコードを開示し、ここで2本のコアワイヤは互いに接触し、n本のシースワイヤは2本のコアワイヤと一緒に撚られ、コアワイヤはシースワイヤよりも大きな直径を有する。
【0005】
特開2007063706号公報は、2+nの構造を有するスチールコードを開示し、nは1~3であり、2本のコアワイヤは互いに接触し、n本のシースワイヤは2本のコアワイヤと一緒に撚られている。
【0006】
米国特許第6748731号明細書は、m+nの構造を有するスチールコードを開示し、ここで、コアワイヤは並列構成で配置され、コアワイヤ間に空隙は形成されない。
【0007】
上記のスチールコードについて、それらは2つのステップによって作られる。コアワイヤを平行に配置し、外側ワイヤをコアワイヤと撚り合わせる。これはフラットコードの一種である。
【0008】
或いは、別のタイプのフラットコードは、コンパクトなフラットコードであり得る。
【0009】
米国特許第5609014号明細書は、3本のコアワイヤと6本の外側ワイヤとを含む1×9構造を有するスチールコードを開示している。コアワイヤと外側ワイヤを同じ方向に同じ撚りピッチで撚る。50Nの荷重下での伸び(PLE)は0.09~0.125%であり、長径対短径の比で定義されるコードの平面度は1.05~1.20である。低PLEのため、スチールコードのゴム侵入は不十分である。また、フラット比が小さいため、ベルトの厚みの低減が制限されている。
【0010】
より優れた性能を備えた新しいフラットコードが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、より優れた性能を有する新しいスチールコードを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、より優れた性能を有するスチールコードを製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、より優れた性能を有するスチールコードにより補強されたゴム物品を提供することである。
【0014】
本発明の1つの目的によれば、スチールコードが提供され、このスチールコードはコア層及びシース層を含み、コア層は本数nの複数のコアワイヤを含み、シース層は本数mの複数のシースワイヤを含み、スチールコードは長軸と短軸を有するフラットな断面を有し、フラットな断面は長軸の長さと短軸の長さの比率であるフラット比を有し、フラット比は1.2を超え、スチールコードはBLコードである破断荷重(breaking load)を有し、コアワイヤとシースワイヤは、コアワイヤとシースワイヤがスチールコードから解撚されている場合、合計BLワイヤである合計破断荷重を有し、BLコード及び合計BLワイヤは次式を満たす:BLコード/合計BLワイヤ>96%。
【0015】
スチールコードの長軸の長さ及び短軸の長さは、マイクロキャリパーにより測定される。
【0016】
本発明のスチールコードは、改善された破断荷重を有する。「BLコード/合計BLワイヤ>96%」とは、コア層とシース層がより良い長さの一致を有することを意味し、その結果、外力を受けたとき、外力はコア層とシース層の間でより均一に分散され、したがって、スチールコードは改善された破断荷重を有する。これが発明者の発見である。
【0017】
フラットなスチールコードが丸いスチールコードをフラット化することによって作られる場合、丸いスチールコードはフラット化される前にコア層とシース層の良好な長さの一致を有する、すなわち、BLコード/合計BLワイヤは約100%である。しかしながら、フラット化プロセスのため、フラットなスチールコードは、コア層とシース層のより悪い長さの一致を有し、そのBLコード/合計BLワイヤは大幅に減少する。これは、フラットなスチールコードのコア層とシース層が長さの一致において悪い性能を有することを意味し、外部から力が加えられると、外力はコア層とシース層の間で均一に分散されず、これにより、コア層又はシース層のいずれか1つの層がもう1つの層よりも早く破断し得る危険性がもたらされ、これによりスチールコードが予想よりも低い破断荷重を有することが引き起こされる。コア層とシース層が同時に破断する場合、これは理想的な長さの一致である。長さの一致の改善は、コア層の破断時間とシース層の破断時間の差を減らすことである。本発明は、この問題を解決し、コア層とシース層の長さの一致に関してより優れた性能を有し且つ改善された破断荷重を有するフラットなスチールコードを提供する。
【0018】
好ましくは、BLコード及び合計BLワイヤは次式を満たす:BLコード/合計BLワイヤ>97%。これによりスチールコードの破断荷重はより高くなる。
【0019】
本発明によれば、スチールコードの破断荷重は、標準GBT33159-2016において言及された方法に従って測定され、単一のスチールワイヤの破断荷重は、標準ISO6892-1:2009において言及された原理に従って測定され、ここではクランプの長さは250mmであり、試験速度は100mm/分であるような特定の設定がある。
【0020】
好ましくは、スチールコードのフラット比は1.8未満である。より好ましくは、スチールコードのフラット比は、1.25~1.50の範囲である。スチールコードは、高いフラット比を実現するためにフラット化プロセスにかけられている。
【0021】
スチールコード自体は、フラットな断面を有するフラットなコードである。コアワイヤの本数が2本を超える、例えば3本の場合、スチールコードのコアワイヤは長軸と短軸を有するフラットな形状を形成しており、長軸と短軸の比率は光学顕微鏡で測定した場合、1.2よりも大きく、長軸と短軸は、シースワイヤをスチールコードから解撚することなくスチールコードのコア層上で測定され、コア層又はコアワイヤの長軸はフラットなコードのフラットな断面の長軸と平行であり、コア層又はコアワイヤの短軸はフラットなコードのフラットな断面の短軸と平行である。コア層のこのフラットな比率を有するフラットな形状は、コアワイヤ内部の完全なゴム侵入を保証し、その結果、コアワイヤの腐食に起因するスチールコードの不具合が大幅に低減され、さらに、コア層のフラット比はスチールコードの安定したフラット形状を保証する。
【0022】
コアワイヤの本数が2本であり、且つコアワイヤの並びがスチールコードの断面を検出することによるスチールコードの長軸に垂直である場合、少なくとも1本のコアワイヤがシースワイヤの1つと接触している現象は、スチールコードの長さに沿って常に存在するわけではない。
【0023】
好ましくは、nは2から3の範囲であり、mは6から12の範囲である。可能な構造は2+6、2+7、2+8、3+6、3+7、3+8、3+9、3+10、3+11、3+12、2+6、2/7、2/8、3/6、3/7、3/8、3/9、3/10、3/11、3/12である。「n+m」はコアワイヤが300mmを超える撚りピッチを有することを意味し、n/mはコアワイヤの撚りピッチと撚り方向がシースワイヤと同じであることを意味する。
【0024】
好ましくは、コアワイヤは、30mm未満の撚りピッチを有するか、又は300mmを超える撚りピッチを有する。
【0025】
好ましい解決策では、コアワイヤは30mm未満の撚りピッチを有し、シースワイヤはコアワイヤと同じ撚りピッチ及び同じ撚り方向を有する。コアワイヤとシースワイヤの撚りピッチは同じである。これはスチールコードが1ステップの撚りで作られることを意味し、これによりスチールコードはコンパクトになる。通常、既存のコンパクトなスチールコードの場合、そのPLEは低すぎるため、コンパクトな構成により完全なゴム侵入特性を実現できない。本発明のコンパクトなスチールコードは高いPLEを有し、これにより、長さの一致の調整のために完全なゴム侵入特性を有するコンパクトなスチールコードが保証される。好ましくは、そのようなスチールコードは、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.125%を超える伸びを有する。より好ましくは、そのようなスチールコードは、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.15%から0.3%の範囲の伸びを有する。これにより、スチールコードの完全なゴム侵入が保証され、それによりスチールコードの耐食性と寿命が向上する。
【0026】
代替の好ましい解決策として、コアワイヤは300mmを超える撚りピッチを有し、シースワイヤは30mm未満の撚りピッチを有する。好ましくは、そのようなスチールコードは、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.03%~0.1%の範囲の伸びを有する。
【0027】
本発明によれば、「2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下での伸び」は、ねじ作用ジョータイプを使用することによって測定され、パーセントで表され、2.5Nと50Nの間の伸張÷標本ゲージ長さ×100である。
【0028】
本発明の第2の目的によれば、スチールコードを作製する方法が提供され、この方法は以下のステップを含む:
a.コアワイヤとシースワイヤを提供するステップ;
b.コアワイヤの周りにシースワイヤを撚り、それにより実質的に丸い断面のスチールストランドを形成するステップ;
c.コア層とシース層の長さの一致を改善するために、2つのリバースプーリを次々に使用するステップ;
d.ローラストレートナによってスチールストランドをフラット化して、フラットな断面のスチールコードを形成するステップ。
【0029】
上述の方法により、特にステップcで2つのリバースプーリを使用することにより作製されたスチールコードは、コア層とシース層との間のより良い長さの一致を有し、これによりスチールコードの破断荷重が高くなる。リバースプーリは、そのラウンド側の表面に溝が付いたプーリであり、溝はU字形である。スチールストランドは、プーリを通過するときに溝の内側で回転し、これにより、スチールストランドがプーリを離れるときに、スチールストランドのねじり込み及びねじり取り操作が行われる。これを行うことにより、コア層とシース層の長さの一致が大幅に改善され、スチールコードの破断荷重が著しく改善される。プーリのU字形の溝は、スチールストランドが誘導されてプーリを通過するときにスチールストランドの回転を許容し、それによりコア層とシース層の長さの一致を向上させる。確かに、溝は、スチールストランドの回転を許容する同じ機能を備えた他の形状を有することができる。
【0030】
好ましくは、スチールコードは、1ステップの撚りによって作製され、例えば、コードは、1ステップの束ねプロセスにおいてコアワイヤシースワイヤの周りにシースワイヤを撚ることによって作製され、その結果、コアワイヤとシースワイヤは同じ撚りピッチ及び同じ撚り方向を有する。代わりとして、スチールコードは、最初にコアワイヤを撚り、次にコアワイヤの周りにシースワイヤを撚り、同時にコアワイヤを解撚することによって作製され、その結果、コアワイヤの撚りピッチは300mmを超える。
【0031】
スチールコードは、ゴムタイヤ、ゴムベルト又はホースを含むゴム物品を補強するために使用される。
【0032】
本発明の第3の目的によれば、タイヤが提供され、このタイヤはベルト層と、カーカス層と、トレッド層と、一対のビード部分とを含み、ベルト層にはスチールコードが埋め込まれ、スチールコードはコア層とシース層を含み、コア層は本数nの複数のコアワイヤを含み、シース層は本数mの複数のシースワイヤを含み、スチールコードは長軸と短軸を有するフラットな断面を有し、フラットな断面は長軸の長さと短軸の長さの比であるフラット比を有し、フラット比は1.2を超え、スチールコードはBLコードである破断荷重を有し、コアワイヤとシースワイヤは、コアワイヤとシースワイヤがスチールコードから解撚されている場合、合計BLワイヤである合計破断荷重を有し、BLコードと合計BLワイヤは次式を満たす:BLコード/合計BLワイヤ>96%。
【0033】
本発明によるタイヤは、より長い寿命を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】3/7コンパクトコードの構造を有する本発明のスチールコードを示す。
図2】3/6コンパクトコードの構造を有する本発明のスチールコードを示す。
図3】3+7コードの構造を有する本発明のスチールコードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
スチールコードのコアワイヤ及びシースワイヤは、線材から作られる。
【0036】
線材は、最初に、表面に存在する酸化物を除去するために、機械的脱スケール及び/又はHSO又はHCl溶液中での化学的酸洗いによって浄化される。次に、線材を水ですすぎ、乾燥させる。次に、乾燥した線材は、第1の中間直径まで直径を縮小させるために、第1の一連の乾式引き伸ばし操作にかけられる。
【0037】
例えば約3.0~3.5mmのこの第1の中間直径d1で、乾式伸線スチールワイヤは、パテンティングと呼ばれる最初の中間熱処理にかけられる。パテンティングとは、最初に約1000℃の温度までオーステナイト化し、続いて約600~650℃の温度でオーステナイトからパーライトに相変態することを意味する。これでスチールワイヤは、さらなる機械的変形の準備が整う。
【0038】
その後、スチールワイヤは、第2の直径縮小ステップにおいて、第1の中間直径d1から第2の中間直径d2までさらに乾式に引き伸ばされる。第2の直径d2は、通常、1.0mmから2.5mmの範囲である。
【0039】
この第2の中間直径d2で、スチールワイヤは、第2のパテンティング処理にかけられ、すなわち、約1000℃の温度で再びオーステナイト化され、その後、パーライトへの変態を可能にするために600~650℃の温度で急冷される。
【0040】
第1及び第2の乾式引き伸ばしステップにおける全体の縮小が大きすぎない場合、線材から直径d2まで直接引き伸ばし操作を行うことができる。
【0041】
この第2のパテンティング処理の後、スチールワイヤに、通常、真鍮コーティングが施される、すなわち、銅がスチールワイヤ上にめっきされ、亜鉛が銅上にめっきされる。真鍮コーティングを形成するために、熱拡散処理が適用される。或いは、スチールワイヤに、銅、亜鉛及びコブラト、チタン、ニッケル、鉄又は他の既知の金属の第3の合金を含む3元合金コーティングを施すことができる。
【0042】
次に、真鍮被覆スチールワイヤは、湿式引き伸ばし機を用いて、最後の一連の断面縮小にかけられる。最終製品は、炭素含有量が0.60重量パーセントを超え、例えば0.70重量パーセントを超え、又は0.80重量パーセントを超え、又はさらには0.90重量パーセントを超え、引張強度が通常2000MPaを超え、例えば3800~2000dMpaを超え、又は4100~2000dMPaを超え、又は4400~2000dMPaを超え(dは最終的なスチールワイヤの直径である)、エラストマー製品の補強に適合されたスチールワイヤである。
【0043】
タイヤの補強向けに適合されたスチールワイヤは、典型的には、0.05mmから0.60mmまで、例えば0.10mmから0.40mmまでの範囲の最終直径を有する。ワイヤ径の例は、0.10mm、0.12mm、0.15mm、0.175mm、0.18mm、0.20mm、0.22mm、0.245mm、0.28mm、0.30mm、0.32mm、0.35mm、0.38mm、0.40mmである。
【0044】
コアワイヤとシースワイヤを準備した後、コアワイヤとシースワイヤに撚り線処理を施し、コアワイヤの周囲でシースワイヤを撚り合わせて断面が略円形のスチールストランドを形成する。n+m構造の場合、コアワイヤが最初に撚られ、次に、300mmを超える撚りピッチを有するように解撚される。n/m構造の場合、コアワイヤは、30mm未満の撚りピッチを有するように、シースワイヤと同じ撚り方向に、及び同じ撚りピッチで、1ステップにおいて撚られる。
【0045】
その後、コア層とシース層の長さをより良く一致させるために、2つのリバースプーリが次々に使用される。
【0046】
最後に、スチールストランドは、フラットな断面を有するスチールコードを形成するようにローラストレートナによってフラットにされる。
【0047】
図1は、本発明の第1の実施形態を示している。スチールコード100は、3/7の構造を有する。スチールコード100は、3本のコアワイヤ105及び7本のシースワイヤ110を有する。コアワイヤ105は、0.20mmの直径を有し、一方、シースワイヤ110は、0.32mmの直径を有する。スチールコード100は、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.361%である伸びを有する。スチールコード100のフラット比は1.52であり、BLコード/合計BLワイヤは100.6%であり、合計BLワイヤは、コードから解撚されたコアワイヤとシースワイヤで測定される。コアワイヤ105とシースワイヤ110は、16mmの同じ撚りピッチを有する。
【0048】
第2の実施形態も同じく3/7コードである。コアワイヤの直径は0.20mmであり、シースワイヤの直径は0.32mmである。このスチールコードは、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.236%である伸びを有する。スチールコード100のフラット比は1.53であり、BLコード/合計BLワイヤは101.7%であり、合計BLワイヤは、スチールコードから解撚されたコアワイヤとシースワイヤで測定される。コアワイヤ105とシースワイヤ110は、18mmの同じ撚りピッチを有する。
【0049】
図3は、本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態は3+7である。スチールコード300は、3本のコアワイヤ305及び7本のシースワイヤ310を有する。コアワイヤ305は0.20mmの直径を有し、シースワイヤ310は0.32mmの直径を有する。スチールコード300は、2.5Nの予荷重を伴う50Nの荷重下で0.06%である伸びを有する。スチールコード300のフラット比は1.37であり、BLコード/合計BLワイヤは98.3%であり、BLコードは2256Nである。コアワイヤ305は、300mmを超える撚りピッチを有し、シースワイヤ310は、16mmの撚りピッチを有する。
【0050】
比較試験が行われる。表1に試験結果を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表から、コアワイヤ及びシースワイヤの合計BLは、本発明のスチールコードと参照コードとの間で同様の値を有するが、本発明のスチールコードの破断荷重は、参照コードの破断荷重よりもはるかに高い。これは、コア層とシース層の間の改善された長さの一致が、フラットなコードの破断荷重を改善する上で重要な役割を果たすことを証明している。
【0053】
図2は、本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態は3/6である。スチールコード200は、3本のコアワイヤ205及び6本のシースワイヤ210を有する。コアワイヤ205は0.20mmの直径を有し、シースワイヤ210は0.30mmの直径を有する。スチールコード200は、50Nの荷重下で0.220%である伸びを有する。スチールコード200のフラット比は1.44であり、BLコード/合計BLワイヤは99.9%であり、BLコードは1921Nである。コアワイヤ205とシースワイヤ210は、16mmの同じ撚りピッチを有する。
図1
図2
図3