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特許7290650ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法および治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法および治具
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/34 20060101AFI20230606BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20230606BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230606BHJP
【FI】
H01L23/34 B
H01L25/04 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020541446
(86)(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019050488
(87)【国際公開番号】W WO2019145154
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】102018201263.6
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】リャン シャオグアン
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-238644(JP,A)
【文献】特開2014-067771(JP,A)
【文献】特開2014-175336(JP,A)
【文献】特開2012-164763(JP,A)
【文献】特開2012-243941(JP,A)
【文献】特開2015-185835(JP,A)
【文献】特開2016-139709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法であって、
ピンフィン型パワーモジュールおよび治具を提供するステップであって、前記パワーモジュールは、ピンフィンのベースプレートと、前記ベースプレートを接続する絶縁材と、前記絶縁材の上に設けられたパワーチップと、を備え、前記ベースプレートは、第1面と、前記第1面に対向する第2面と、を備え、前記第1面は前記絶縁材に接続され、前記第2面は、前記第2面の上に複数のフィンを備え、前記治具は、平坦な上面および平坦な下面を有する本体と、前記本体の前記上面の上に設けられた孔と、を備え、前記孔の分布は前記フィンの配置と同一であり、前記孔の開口は前記フィンの寸法よりも大きく、前記孔の長さは、前記フィンの長さよりも短くないステップと、
各フィンが対応する孔の内側にくるように、前記ピンフィンを前記治具に挿入するステップと、
前記治具と組み合わされた前記パワーモジュールを、上型と下型との間のキャビティ内に配置するステップであって、同時に、前記治具の前記下面を、前記下型の上面の上に配置するステップと、
エポキシ樹脂を注入して成形プロセスを行うステップと、
前記ピンフィンから前記治具を取り外すステップと、を含み、
前記孔は貫通開口であり、
前記治具は炭素または金属製である、方法。
【請求項2】
前記孔の開口は、前記フィンの材料および/または前記治具の材料の熱膨張に依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィンの断面は円形、楕円形、または菱形である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記孔の断面は円形、楕円形、または菱形である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記絶縁材は、DBCまたはポリマーフィルムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ピンフィン型パワーモジュールを製造する治具であって、前記モジュールは面を備え、前記面の上に複数の突出するフィンを備え、前記治具は、
平坦な上面および平坦な下面を有する本体と、
前記本体の前記上面の上に設けられた孔と、を備え、
前記孔の分布は前記フィンの配置と同一であり、前記孔の開口は前記フィンの寸法よりも大きく、前記孔の長さは前記フィンの長さよりも短くなく、
前記孔は貫通孔であり、
前記治具は炭素または金属製である、治具。
【請求項7】
前記孔の開口は、前記フィンの材料および/または前記治具の材料の熱膨張に依存する、請求項に記載の治具。
【請求項8】
前記孔の断面は円形、楕円形、または菱形である、請求項に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法および治具に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、ピンフィンのベースプレート10は、一方の側(ピンフィン側)に複数のフィン12を備えるメタルプレート11を含む。ピンフィンのベースプレート10の他方の側(平坦な側)は、パワーモジュールに接続されている。フィンは液冷システムに直接接触する。そのため、パワーモジュールが過熱されることがない。したがって、パワーモジュールの熱サイクル能力が著しく改善され、パワーモジュールの寿命が延びる。
【0003】
従来のピンフィン型パワーモジュールは、封止剤としてシリコーンゲルを使用する。図1に示すように、ピンフィンのベースプレート10を除いて、パワーモジュールは、(ダイレクトボンド銅(DBC:Direct Bonded Copper)、ポリマーフィルムのような)絶縁材20、および絶縁材20の上に設けられた(IGBT、MOSFET、ダイオード等の)パワーチップ30をさらに備える。絶縁材20は、ピンフィンのベースプレート10の平坦な側に接続されている。絶縁材20およびパワーチップ30はハウジング50内に封入されている。ハウジング内部の空間はシリコーンゲル40で充填されている。従来のピンフィン型パワーモジュールは構造が複雑で、製造工程により多くのステップを必要とするため、製造効率が低く、コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピンフィン型パワーモジュールの構造および製造プロセスを簡略化するために、トランスファーモールドされたパワーモジュールを提示する。図2図3に示すように、このパワーモジュールでは、封止剤としてエポキシ樹脂60が使用されており、ハウジングは不要である。下型702と上型701は、パワーモジュールを製造するために使用される。パワーモジュールは、上型701と下型702との間のキャビティ700内に配置される。ピンフィン側は、下型702の上面7021の上に配置される。エポキシ樹脂は、上型701の上の開口部7011を通して、圧力によってキャビティ700内に注入される。しかしながら、現在の製造プロセスには次の欠点がある。すなわち、1)現在のトランスファーモールドプロセスは、エポキシ樹脂が、下型とパワーモジュールの底面との間に浸透するのを防止するために、平坦な底部を必要とする。現在のプロセスでは、フィン12の間に間隙800があるため、エポキシ樹脂が下型とパワーモジュールの底面との間に浸透する。2)エポキシ樹脂が注入されているとき、絶縁材料にかかる圧力が均一でなく、各フィンに作用する力もまた不均一である。これにより、絶縁材料およびピンフィンのベースプレートの割れおよび/または曲げが発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ピンフィン型パワーモジュールを製造する方法を提供することである。この方法は、以下のステップを含む。すなわち、(1)ピンフィン型パワーモジュールおよび治具を提供するステップであって、パワーモジュールは、ピンフィンのベースプレートと、ベースプレートを接続する絶縁材と、絶縁材の上に設けられたパワーチップと、を備え、ベースプレートは、第1面と、第1面に対向する第2面と、を備え、第1面は絶縁材に接続され、第2面はその上に複数のフィンを備え、治具は、平坦な上面および平坦な下面を有する本体と、本体の上面の上に設けられた孔と、を備え、これらの孔の分布はフィンの配置と同一であり、孔の開口はフィンの寸法よりも大きく、孔の長さはフィンの長さよりも短くない、ステップ。(2)各フィンが対応する孔の内側にくるように、ピンフィンを治具に挿入するステップ。(3)治具と組み合わされたパワーモジュールを、上型と下型との間のキャビティ内に配置するステップであって、同時に、治具の下面を下型の上面の上に配置するステップ。(4)エポキシ樹脂を注入して成形プロセスを行うステップと、続いて(5)ピンフィンのベースプレートから治具を取り外すステップ。
【0006】
好適には、孔の開口はフィンの材料および/または治具の材料の熱膨張に依存する。治具は炭素、銅、または鋼製である。
【0007】
好適には、絶縁材はDBCまたはポリマーフィルムである。
【0008】
本発明の別の態様はピンフィン型パワーモジュールを製造する治具を提供することである。このモジュールは、その上に複数の突出するフィンを有する面を備える。治具は、平坦な上面および平坦な下面を有する本体と、本体の上面の上に設けられた孔と、を備える。これらの孔の分布はフィンの配置と同一である。孔の開口はフィンの寸法よりも大きい。また、孔の長さはフィンの長さよりも短くない。
【0009】
好適には、孔は貫通孔である。
【0010】
好適には、孔は非貫通孔である。
【0011】
好適には、孔の断面は、円形、楕円形、または菱形である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のゲル封止されたピンフィン型パワーモジュールの断面図である。
図2】トランスファーモールドされたピンフィン型パワーモジュールの断面図である。
図3】従来の方法によって、エポキシ樹脂を用いる上型と下型内でのピンフィン型パワーモジュールの成形を示す図である。
図4】成形プロセス前の未封止のピンフィン型パワーモジュールを示す図である。
図5】成形プロセス中にピンフィンを保護する治具を示す図である。
図6】貫通孔を備える治具へのピンフィンの挿入を示す図である。
図7】治具の保護下で、エポキシ樹脂を用いるピンフィン型パワーモジュールの成形を示す図である。
図8】治具を剥がした後の、エポキシ樹脂で封止されたピンフィン型パワーモジュールを示す図である。
図9】非貫通孔を備える治具への、矢印Aに従うピンフィンの挿入を示す図である。
図10】フィンが完全に非貫通孔に挿入された後の、ピンフィンと治具との組み合わせを示す図である。
図11】非貫通孔を備える別の代替的な治具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態1:図4図8を参照し、ピンフィン型パワーモジュールは、以下のステップによって製造される。
【0014】
まず、ピンフィン型パワーモジュールおよび治具9を提供する。パワーモジュールは、ピンフィンのベースプレート1と、ベースプレート1を接続する絶縁材(DBC)2と、DBC2の上に設けられたパワーチップ3と、を備える。ベースプレート1は、第1面11と、第1面11に対向する第2面12と、を備える。第1面11はDBC2に接続されている。また、第2面12はその上に複数のフィン121を備える。治具9は、平坦な上面および平坦な下面を有する炭素製本体と、本体の上面の上に設けられた複数の貫通孔91と、を備える。貫通孔の分布はフィンの配置と同一である。孔の開口はフィンの寸法よりも大きい。また、貫通孔の長さはフィンの長さと同一である。
【0015】
図6に示すように、ピンフィンを治具に挿入する。より具体的には、各フィン121を対応する貫通孔91に挿入する。このようにして、フィンが治具によって保護される。
【0016】
次に図7を参照すると、治具と組み合わされたパワーモジュールを、上型41と下型42との間のキャビティ400内に配置する。治具の下面が下型の上面の上に配置されており、すべてのフィンが保護されているため、パワーモジュールは安定している。次に、エポキシ樹脂5を注入して成形プロセスを行う。その後、図8に示すように、ピンフィンから治具を取り外し、エポキシ樹脂で封止されたピンフィンパワーモジュールを形成する。
【0017】
治具の助けで、平坦な面が下型に接触しているため、圧力がエポキシ樹脂成形中に均一に分布される。したがって、DBCの割れ又は曲がりを回避できる。一方、フィンは、成形プロセス中に治具の保護下にあり、割れにくい、または曲がりにくい。
【0018】
実施形態2:次に図9図10を参照すると、代替的な解決策において、非貫通孔91を備える鋼製治具9を使用する。非貫通孔の長さは、フィンの長さと同一である。成形前に、全てのフィン121を、矢印Aに従って対応する非貫通孔91に挿入する。その後、ピンフィンは治具によって安定して支持される。非貫通孔を備える治具は、パワーモジュールにかかる圧力が成形プロセス中に均一に分布されるよう、十分に安定している。
【0019】
実施形態3:次に図11を参照すると、別の代替的な治具には、非貫通孔91が備えられている。しかしながら、非貫通孔91の長さはフィン121の長さよりも長い。そのため、各フィンと対応する非貫通孔との間に、垂直の間隙800がある。垂直方向は、フィンの長さ方向と平行する。
【0020】
好適な実施形態について、いくつかの代替的な構造要素および処理ステップが提案されている。したがって、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、この説明は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、多様な変更および適用を想起する可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11