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特許7290658内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システム及び内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システム及び内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射する方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/025 20060101AFI20230606BHJP
   F02D 19/12 20060101ALI20230606BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20230606BHJP
   F02B 47/02 20060101ALI20230606BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230606BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
F02M25/025
F02D19/12 A
F01N3/04 Z
F02B47/02
H05B3/10 C
H05B3/12 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020549795
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056823
(87)【国際公開番号】W WO2019180010
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】18162607.8
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・デューズ
(72)【発明者】
【氏名】アルチュール・ルラーヴ-ノワレ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・レオナール
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・デ・カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ベアトリス・モンジュ-ボニーニ
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/092887(WO,A1)
【文献】特表2010-526740(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01946638(EP,A2)
【文献】特開2003-048808(JP,A)
【文献】特開2010-248124(JP,A)
【文献】特開2000-328440(JP,A)
【文献】実開昭63-095032(JP,U)
【文献】特開2009-199808(JP,A)
【文献】特表2016-501334(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177556(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/048638(WO,A1)
【文献】国際公開第02/087339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/025
F02D 19/12
F01N 3/04
F02B 47/02
H05B 3/10
H05B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室の上流にある吸気ラインに、又は内燃機関の燃焼室に、水溶液を噴射するための車両システム用のヒーターであって、前記ヒーターが、絶縁材に埋め込まれた少なくとも1つの金属製抵抗路を備える少なくとも1つの可撓性部分を備え、前記絶縁材が、少なくとも1つの抗菌性化合物を含み、且つ/又は少なくとも1つの抗菌性化合物を含有する少なくとも1つの層により部分的若しくは全体的に被覆されている、ヒーター。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属製抵抗路が、銅、アルミニウム又はステンレス鋼で作製され、好ましくは前記少なくとも1つの金属製抵抗路が、ステンレス鋼で作製されている、請求項1に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項3】
前記絶縁材が、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリイミドで作製され、好ましくは前記絶縁材がシリコーン樹脂、ポリエチレン、又はポリプロピレンで作製され、最も好ましくはシリコーン樹脂又は高密度ポリエチレンで作製されている、請求項1又は2に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抵抗路が、前記絶縁材の2枚のフィルムの間に挟まれているか、又は前記絶縁材中にオーバーモールドされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項5】
本体、及び前記少なくとも1つの抵抗路の少なくとも一部を備えた少なくとも1つの突起部又は触手部を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項6】
固定手段を備え、前記固定手段が、好ましくはクリップ、リベット、ボルト及び貫通孔からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項7】
前記抗菌性化合物が、抗菌性金属化合物である、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項8】
前記絶縁材が、最大で5質量%の少なくとも1つの抗菌性金属化合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項9】
前記絶縁材が、少なくとも0.0002質量%の少なくとも1つの抗菌性金属化合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項10】
前記少なくとも1つの抗菌性金属化合物が、金属、合金、金属溶液、金属塩、金属酸化物及び金属錯体からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項11】
前記可撓性部分が、少なくとも1つの可撓性の金属製抵抗路を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項12】
前記金属製抵抗路が、可撓性の絶縁材に埋め込まれている、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抗菌性金属化合物が、亜鉛ピリチオン又は銀塩若しくは銀のナノ粒子又はこれらの組み合わせである、請求項12に記載の車両システム用のヒーター。
【請求項14】
内燃機関の燃焼室の上流にある吸気ラインに、又は内燃機関の燃焼室に、水溶液を噴射するための車両システムであって、請求項1から13のいずれか一項に記載のヒーターを備える、車両システム。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のヒーターが、水溶液タンクの内部に位置し、前記タンクの底部に位置する、請求項14に記載の車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システムに使用される水タンク用の、抗菌特性を有するヒーターに関する。本発明の更なる態様は、抗菌特性を有するヒーターを備える水タンク、及び前記タンクを備える内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量の低減に対する要求が増加しているため、内燃機関は、燃料消費に関してますます最適化されてきている。しかしながら、燃料の早期着火及び高排ガス温度により、この最適化には制限がある。排ガス温度及び早期着火を低下させる1つの可能な手段は、燃焼室における水の噴射である。内燃機関では、水噴射システムは、流入空気若しくは燃料-空気混合物内に、又は「ホットポイント」が早期着火を引き起こし得る燃焼室の特定の部分を冷却するために燃焼室内に直接に、水を噴霧することができる。多くの水噴射システムは、水及びアルコール又は他の添加剤の混合物を使用する。水は、その大きい密度及び高い熱吸収の特性に起因して、主要な冷却効果をもたらす。アルコールは可燃性であり、且つ水に対する不凍剤としても役立つ。本特許出願の範囲では、これらの混合物は用語「水溶液」により表される。この目的達成のため、水噴射を可能にするための別個の水噴射システムを提供することができる。例えば、国際公開第2014/080266号は、内燃機関の燃焼室に水を噴射するための車両システムを開示している。
【0003】
水噴射システムについての公知の問題は、水が不純物を含有し、続いて細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖を促進しうるということである。そのような汚染は、車両を長期間動かさなかった時に、特に水タンク中で起きる。これによりシステムが正しく作動せず、水噴射システム中に配置されているフィルターの目詰まりと同様に故障にまで至りうる。そのような汚染を防ぐか又は既に存在する汚染を除去するために、化学製品の使用を考えることができる。しかしながら、そのような化学物質の燃焼室への噴射は、他の問題を引き起こしうる。
【0004】
国際公開第2016/177556号は、水噴射システム用に水タンク中に入れられている水を、UV照射にその水を曝露することにより除染することを提案している。この解決策は、いくつかの理由から最適ではない。UV照射器には、除染効果をもたらすためにエネルギーを与えなければならない。結果として、車両を長期間動かさず且つUV照射器にエネルギーが与えられない時に、細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖は阻害されない。これに関し、水を汚染している微生物が、イオン種を放出することにより、水の化学的特性を変化させる影響を及ぼすことに留意することが特に重要である。たとえ水が後で除染されるとしても(例えば化学物質又はUV照射で)、水の化学的特性はその初期状態まで戻らない。
【0005】
その上、UV照射器は高価であり且つ複雑である。UV照射器はまた相対的に壊れやすく、そのため定期的に交換しなければならない。水タンク中のUV照射器の位置により、交換作業は困難且つ費用を要するものとなる。最終的に、細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖は、タンクのいくつかのホットスポットにおける高温作用により促進され、前記ホットスポットは、UV照射が到達しえない点に位置する場合がある。
【0006】
国際公開第2012/048638号は、貯水電気給湯機又は食器洗浄機の水を加熱する外装抵抗を提案している。ここで加熱される水と接触する金属表面は、抗細菌特性を有するガラスエナメルで被覆されている。しかしながら、車両は給湯機又は食器洗浄機の状態ではなく熱的制約(例えば、凍結)下で作動しなければならないので、この文書で開示されるヒーターは自動車用途に好適ではない。その上、ガラスエナメルで被覆された表面は変形可能ではないはずであり、変形可能でなければエナメルガラスにひびが入り、その表面保護効果は失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/080266号
【文献】国際公開第2016/177556号
【文献】国際公開第2012/048638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を示さない、内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための改善された車両システムを提供することを目標とする。より詳細には、本発明は、内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システムのタンクのホットスポットにおける、細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖を処理する解決策を提供する。
【0009】
特に、内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システムのタンクのホットスポットにおける、細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖を処理する解決策を提供することが本発明の第1の目的である。
【0010】
第2の目的は、車両の長期間駐車の場合でさえも、汚染の問題が起こらないように、運転可能とするために、エネルギーを与える必要がない水溶液噴射システムを提供することである。
【0011】
本発明の第3の目的は、より安価であり、大規模で高価且つ頻繁な保守作業を必要としない水溶液噴射システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の実施形態に基づいて、これらの目的は、内燃機関の燃焼室の上流にある吸気ラインに、又は内燃機関の燃焼室に、水溶液を噴射するための車両システムの水溶液タンク用のヒーターであって、絶縁材に埋め込まれた少なくとも1つの金属製抵抗路を備え、前記絶縁材は、少なくとも1つの抗菌性化合物を含み、且つ/又は少なくとも1つの抗菌性化合物を含有する少なくとも1つの層により、部分的若しくは全体的に、好ましくは全体的に被覆されている、ヒーターによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に基づいて、少なくとも1つの抗菌性化合物を含み、且つ/又は少なくとも1つの抗菌性化合物を含有する少なくとも1つの層により被覆されている絶縁材で作製されたヒーターは、より詳細には、内燃機関の燃焼室の上流にある吸気ラインに、又は内燃機関の燃焼室に、水溶液を噴射するための車両システムの水溶液タンクのホットスポットにおいて、微生物の増殖の減少をもたらし;前記ヒーターは、タンク内のいくつかのホットスポット源である。
【0014】
「絶縁材」という表現により、電気を通さない材料を意味することを意図し;前記絶縁材は、少なくとも1012オームメートルの抵抗率、好ましくは少なくとも1013オームメートルの抵抗率及びより好ましくは少なくとも1019オームメートルの抵抗率を有し;前記抵抗率は、25℃の温度で測定される。
【0015】
「抗菌性化合物」という表現により、該化合物が細菌、藻類及び/又は菌類等の微生物種の発達を妨げることを意味することを意図する。抗菌性化合物の抗菌効果は、微生物種の性質に応じて、規格IS022196:2011又は規格ISO 16869:2008に準拠して測定される。抗菌性化合物は、絶縁材中に有効量で存在する。本発明の意味において、有効量は、微生物種の性質に応じて、規格IS022196:2011又は規格ISO 16869:2008に準拠して測定して、微生物種の細菌の増殖を少なくとも80%阻害する効果を生み出す量である。
【0016】
「水溶液タンク」という表現により、水溶液、好ましくは脱塩水が入れてあるタンクを意味することを意図する。脱塩水という表現により、50pS/cmより低く、且つ好ましくは5pS/cmより小さい伝導率を有する水溶液を意味することを意図する。
【0017】
「金属製抵抗路」という表現により、それを通して電流を流した時に、ジュール熱による熱を放散する金属路を意味することを意図する。金属製抵抗路の断面形状は、ワイヤの場合は円形であってよく、好ましくは該抵抗路の断面形状は長方形である。
【0018】
一実施形態に基づいて、ヒーターの少なくとも1つの金属製抵抗路は、銅、アルミニウム又はステンレス鋼で作製され、好ましくは少なくとも1つの金属製抵抗路はステンレス鋼で作製されている。
【0019】
一実施形態に基づいて、絶縁材は、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリイミドで作製され、好ましくは、前記絶縁材はシリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンで作製され、最も好ましくはシリコーン樹脂又は高密度ポリエチレンで作製されている。
【0020】
好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1つの抵抗路は、前記絶縁材の2枚のフィルムの間に挟まれているか、又は前記絶縁材中にオーバーモールドされている。
【0021】
「少なくとも1つの抵抗路が前記絶縁材の2枚のフィルムの間に挟まれている」という表現により、少なくとも1つの抵抗路が、溶着された前記絶縁材の2枚のフィルムの間に挿入されていることを意味することを意図する。
【0022】
好ましい実施形態に基づいて、ヒーターは、本体、及び少なくとも1つの抵抗路の少なくとも一部を備えた少なくとも1つの突起部又は触手部を備える。
【0023】
少なくとも1つの抵抗路の少なくとも一部を備えた、前記少なくとも1つの突起部又は触手部は、本体で到達できないタンクの部分の加熱を改善することを可能にする。
【0024】
好ましい実施形態に基づいて、ヒーターは固定手段を備え、前記固定手段は、好ましくはクリップ、リベット、ボルト及び貫通孔からなる群から選択される。
【0025】
ヒーター上の固定手段の存在により、内燃機関の燃焼室に水溶液を噴射するための車両システムに使用される水タンクの少なくとも壁へのヒーターの機械的固定が可能となり、好ましくは、ヒーターは水タンクの底壁に固定される。
【0026】
「水タンクの底壁」という表現により、底壁は、道路の最も近くに位置する水タンクの壁であることを意味することを意図する。
【0027】
好ましい実施形態に基づいて、ヒーターは、少なくとも1つの金属製抵抗路を備える少なくとも1つの可撓性部分を備え、少なくとも1つの金属製抵抗路を埋め込んでいる絶縁材も同様に可撓性である。修飾語「可撓性」とは、容易に変形可能であることを意味し、これは一般に逆の手段である。一般に、可撓性は、4000N.m未満の曲げ剛性((Eh)/(12(1-v))に等しいと定義され、式中、EはASTM D790-03規格に準拠して測定された可撓性部分のヤング率であり、hは可撓性部分の厚さであり、且つvは可撓性部分の構成材料のポアソン比である)に相当し、好ましくは、本発明の文脈では、可撓性部分の剛性は、1000N.m以下、より好ましくは100N.m以下、最も好ましくは10N.m以下である。特に好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1つの可撓性部分の曲げ剛性は、1N.m以下である。好ましくはこの可撓性部分は加熱部分であり、すなわち、1つ又は複数の金属製抵抗路を備える可撓性部分である。
【0028】
シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、ポリエステル又はポリイミドで作製された絶縁材は、絶縁材が可撓性材料ではないエナメルガラスである現況技術における場合のように、亀裂を受けることがない。実際、試験法ISO 527に準拠して、ポリエチレンの破断点伸びは150%を越え、且つエラストマーは100%を越え、一方、エナメルガラスの破断点伸びは、室温で12%未満である(ガラスの化学組成に依存する)。本発明の文脈では、絶縁材の曲げ弾性率は、エナメルガラスの曲げ弾性率の10~100分の1である。実際、試験法ISO 178に準拠して、シリコーン樹脂の曲げ弾性率は3.5GPa未満であり、ポリエチレンは1.3GPa未満であり、熱可塑性エラストマーは0.7GPa未満であり、ポリエステルは10GPa未満であり、且つポリイミドは2.5GPa未満であり、一方、厚さ5mmのエナメルガラスの曲げ弾性率は、室温、50%の相対湿度、1分当たり0.5mmの変位速度において70GPaを越える。
【0029】
好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1つの抗菌性化合物は、有機抗菌性化合物及び金属抗菌性化合物からなる群から選択される。
【0030】
「有機抗菌性化合物」という表現により、炭素、水素、酸素、又は窒素の原子と共有結合した炭素原子からなる化合物を意味することを意図する。有機抗菌性化合物は、N-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BBIT)、4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリノン-3-オン(DCOIT)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート(IPBC)、10,10-オキシビスフェノキシアルシン(OBPA)、n-オクチルイソチアゾリノン(OIT)、及び3-(トリ-メトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドからなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
「金属抗菌性化合物」という表現により、金属原子を含む抗菌性化合物を意味することを意図する。抗菌性金属化合物は、金属、合金、金属溶液、金属塩、金属酸化物及び金属錯体からなる群から選択されることが好ましい。少なくとも1つの抗菌性金属化合物は、好ましくはナノ材料である。ナノ材料という用語により、非結合状態又は凝集体として又は集塊としての粒子形態における抗菌性金属化合物を意味することを意図し、個数粒度分布における50%以上の粒子に関して、1つ又は複数の外形寸法は1~100nmの粒度範囲にある。抗菌性金属化合物は、1~10nmの範囲の直径を有するナノ粒子の形態であることが好ましい。抗菌性金属化合物のナノ材料は、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子又はゼオライト上に支持されるか又は分散されてよい。
【0032】
可撓性部分は、少なくとも1つの可撓性の金属製抵抗路を備えることがより好ましい。
【0033】
金属製抵抗路は、可撓性の絶縁材に埋め込まれることがより好ましい。
【0034】
好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1つの抗菌性金属化合物の金属部分は、銅、銀、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、金、バリウム、スズ、ボア(bore)、タリウム、アンチモン、コバルト、ジルコニウム及びモリブデンからなる群から選択され、好ましくは少なくとも1つの抗菌性金属化合物の金属部分は、銅、亜鉛及び銀からなる群から選択される。
【0035】
一実施形態に基づいて、少なくとも1つの抗菌性金属化合物は、銅、黄銅、青銅、キュプロニッケル合金、銅-ニッケル-亜鉛合金、硫酸銅(I、II)、酸化銅(I、II)、水酸化銅(I、II)、銅ピリチオン(I)からなる群から選択される銅の抗菌性金属化合物である。
【0036】
好ましい実施形態に基づいて、少なくとも1つの抗菌性金属化合物は、亜鉛の抗菌性金属化合物及び/又は銀の抗菌性金属化合物である。亜鉛の抗菌性金属化合物は、亜鉛、酸化亜鉛及び亜鉛ピリチオンからなる群から選択されることが好ましい。銀の抗菌性金属化合物は、好ましくは銀、酸化銀、硝酸銀、塩化銀及び炭酸銀からなる群から選択される。
【0037】
少なくとも1つの抗菌性金属化合物は、亜鉛ピリチオン又は銀塩若しくは銀のナノ粒子又はこれらの組み合わせであることがより好ましい。本発明者らは、ピリチオンは例えばポリオレフィンのようなポリマーにほとんど混和しないけれども、亜鉛ピリチオン又は銀塩がポリオレフィンマトリックスに良好に封入されるように見えることを驚いたことに観察した。
【0038】
好ましい実施形態に基づいて、絶縁材は、最大で5質量%、好ましくは最大で0.5質量%、より好ましくは最大で0.2質量%、最も好ましくは最大で0.05質量%の少なくとも1つの抗菌性金属化合物を含む。
【0039】
好ましい実施形態に基づいて、絶縁材は、少なくとも0.0002質量%、好ましくは少なくとも0.0015質量%、より好ましくは少なくとも0.01質量%、最も好ましくは0.05質量%の少なくとも1つの抗菌性金属化合物を含む。
【0040】
好ましい実施形態に基づいて、絶縁材は、少なくとも1つの抗菌性金属化合物を含み、前記少なくとも1つの抗菌性金属化合物は、0.0002質量%~5質量%、好ましくは0.0015質量%~0.4質量%、より好ましくは0.005質量%~0.1質量%、最も好ましくは0.01質量%~0.05%の範囲からなる量である。
【0041】
本発明の別の態様はまた、細菌、藻類、菌類又は他の微生物の増殖を減少させる車両システムも提供する。
【0042】
本発明に基づく車両システムは、以下の構成要素
- 水溶液を保存するタンク;
- ポンプユニット;
- 内燃機関の燃焼室の上流にある吸気ライン;
- 水溶液を、吸気ライン中、燃焼室中、又は両方に噴射するように構成された1つ又は複数の噴射器;
- ポンプユニットによりポンプで送られた水溶液を、前記噴射器に供給する供給ライン、及び
- 本発明に基づくヒーター
を備える。
【実施例
【0043】
以下の実施例は、本発明を例示する目的で与えられる。異なる量の抗菌性化合物を含有するシリコーンベースの絶縁材に埋め込まれた少なくとも1つの金属製抵抗路を備える、本発明に基づくヒーターの試験を行った。Table I(表1)は、ISO 22196に基づき、ヒーターの絶縁材内部に埋め込まれた殺生物剤化合物の比に基づいた、ヒーターの除染効率を要約している。
【0044】
【表1】
【0045】
Table II(表2)は、水タンク中で使用される水溶液の特性の例を要約している。
【0046】
【表2】