(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】メチルメルカプタンの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 319/02 20060101AFI20230606BHJP
B01J 23/28 20060101ALI20230606BHJP
C07C 321/04 20060101ALI20230606BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C07C319/02
B01J23/28 Z ZAB
C07C321/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020554580
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2018086086
(87)【国際公開番号】W WO2019122072
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-21
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】520222874
【氏名又は名称】ユニベルシテ・リール・1-サイエンシズ・エ・テクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレミ,ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】サロンビエ,エロリ
(72)【発明者】
【氏名】ラモニエ,カロル
(72)【発明者】
【氏名】ブランシャール,パスカル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502440(JP,A)
【文献】特表2007-508256(JP,A)
【文献】特表2016-515935(JP,A)
【文献】米国特許第04618723(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 319/
C07C 321/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメルカプタンの調製方法であって、
a)酸化炭素、硫化水素及び水素が、ジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒の存在下で反応を受けるステップであって、前記触媒が促進剤を含まないステップと、
b)ステップa)で得られた硫化カルボニルが、前記水素(H
2)の存在下で水素化反応を受け、メチルメルカプタン(CH
3SH)及び硫化水素(H
2S)を形成するステップと、
c)任意選択的に、ステップb)で形成された前記硫化水素(H
2S)が、ステップa)にリサイクルされるステップと、
d)前記メチルメルカプタンが回収されるステップと
を少なくとも含む方法。
【請求項2】
ステップa)で使用される触媒が、同じ成分内にモリブデン及びカリウムをベースとする活性成
分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)で使用される触媒が、モリブデン、酸素及びカリウム(Mo-O-K)をベースとする活性成分を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)で使用される触媒が、ジルコニア(ZrO
2)担持カリウムテトラオキソモリブデートである、請求項1
~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
触媒対ジルコニアの重量比K
2MoO
4/ZrO
2が、1%~50
%である、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
触媒対ジルコニアの重量比K
2
MoO
4
/ZrO
2
が、1~30%である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
触媒担体が、30m
2/gより大き
い比表面積を有する、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記酸化炭素が、一酸化炭素(CO)である、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップb)で形成された硫化水素が、ステップa)でリサイクルされる、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップa)の反応温度が、100℃~500
℃である、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
酸化炭素、硫化水素及び水素からメチルメルカプタンを生成するための、請求項1~
10のいずれかに記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化炭素、硫化水素及び水素からメチルメルカプタンを調製するための方法に関し、前記方法は、特定のモリブデン及びカリウムをベースとする触媒を用いる。
【背景技術】
【0002】
メチルメルカプタンは、特に動物の飼料に広く使用されている必須アミノ酸であるメチオニンを合成するための原料として、産業にとって非常に興味深いものである。メチルメルカプタンは、他の多くの分子の原料でもあり、特に、二硫化ジメチル(DMDS)は、他の用途の中でも石油留分用の水素化処理触媒の硫化添加剤である。
【0003】
メチルメルカプタンは通常、メタノール及びH2Sから工業規模で高トン数で生成されるが、次の反応に従って一酸化炭素、水素及び硫化水素から直接メチルメルカプタンを生成することが経済的に興味深い。
【0004】
CO+2H2+H2S→CH3SH+H2O(1)
この反応の主な副生成物は、二酸化炭素(CO2)である。より具体的には、硫化カルボニル(COS)は、次の反応に従って水素化後にメチルメルカプタンを生成する反応中間体であると見なされる。
【0005】
CO+H2S→COS+H2(2)
COS+3H2→CH3SH+H2O(3)
CO2は、次のような複数の寄生反応の結果である。
【0006】
CO+H2O→CO2+H2(4)
COS+H2O→CO2+H2S(5)
2COS→CO2+CS2(6)
主原材料である一酸化炭素、及び反応中間体である硫化カルボニルを消費するこれらの寄生反応は、メチルメルカプタンの合成中に同時生成される水の存在によって引き起こされる。
【0007】
欧州特許出願第0171312号及び米国特許出願第2008/262270号に記載されているように、二酸化炭素は潜在的に次の反応に従ってメチルメルカプタンを生成するためにリサイクルされ得る。
【0008】
CO2+3H2+H2S→CH3SH+2H2O(7)
しかしながら、この反応は一酸化炭素を使用する場合よりも遅いことが知られている。したがって、メチルメルカプタンの合成中に二酸化炭素の生成をできるだけ低く保つことが注目されている。
【0009】
したがって、メチルメルカプタンの最高生成能力は、反応(1)による合成ガスのアプローチを使用して、つまり一酸化炭素、水素、硫化水素から得られることが推測される。
【0010】
米国特許出願第20070213564号は、一酸化炭素、水素及び硫化水素を使用してメチルメルカプタンを製造するための連続的方法を記載しており、前記反応は、シリカ担持K2MoO4ベース触媒ファミリーによって触媒される。この方法によれば、一酸化炭素の70%が、メチルメルカプタン、二酸化炭素及び硫化カルボニルにそれぞれ49%、43%及び8%に等しい選択性をもって変換される。
【0011】
国際特許出願第WO2005/040082号は、複数の触媒、特に、Mo-O-Kベースの活性成分、活性促進剤及び任意選択的に担体を含む触媒を記載している。例として使用されている触媒は、K2MoO4/Fe2O3/NiO又はK2MoO4/CoO/CeO2/SiO2等、様々な化学的性質を有し、それぞれシリカに担持されている。CO2/MeSH選択比は、0.88である。
【0012】
米国特許出願第20100094059号は、SiO2、Al2O3、TiO2、Al2O3-SiO2、ZrO2、ゼオライト、炭素質材料、及び酸化テルル(TeO2)のみで特徴付けられる促進剤から選択される多孔質担体に担持されたTeO2/K2MoO4ベース触媒ファミリーに言及している。55%に等しいメチルメルカプタンへの選択性に対して、一酸化炭素の変換は59%であることが示されている。
【0013】
米国特許出願第20100286448号は、SiO2、TiO2、シリコアルミナ、ゼオライト及びカーボンナノチューブ等の多孔質支持体によって形成され、金属が電解堆積された別の触媒ファミリーを開示している。促進剤として機能する別の金属酸化物に加えて、K2MoO4がこの担体に含浸される。この触媒は、65%~66%である一酸化炭素の変換率及び、46%~47%であるメチルメルカプタン生成能力をもたらす。手順条件及びメチルメルカプタンの生成能力に関するデータは明記されていない。
【0014】
これらの文書の教示は、特定の構造の触媒、促進剤、及び担体をそれぞれ注意深く選択して組み合わせると、既知の工程と比較して選択性及び収量が向上する一方で、できるだけ費用効果の高い方法であることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許出願公開第0171312号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/262270号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0213564号明細書
【文献】国際公開第2005/040082号
【文献】米国特許出願公開第2010/0094059号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0286448号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これらすべての研究作業にもかかわらず、調製が容易であり、非常に優れた選択性をもたらす触媒が依然として必要とされている。本発明の目的の1つは、特定の触媒のおかげで、その配合が従来技術で知られているものよりも単純であり、CO変換が改善され、またCO、H2及びH2Sを含む合成ガスからのそれらの合成中に改善されたメチルメルカプタンの選択性及び生成能力を得ることができることを示すことである。
【0017】
したがって、本発明は、少なくとも1種の酸化炭素、水素及び硫化水素を封入するガス状混合物からのメチルメルカプタン(「CH3SH」又はより単純には「MeSH」)の生成の完全化に関する。
【0018】
今回、驚くべき方法で、ジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒である本発明による触媒のおかげで、この完全化を得ることができることが発見された。
【0019】
本発明による触媒は、特に促進剤の存在が必須ではないため、調製がより容易である。さらに、本発明による触媒はまた、先行技術で知られているものよりも安価である。最後に、本発明による触媒は、炭素酸化物、特に一酸化炭素の改善された変換、及びメチルメルカプタンへの改善された選択性をもたらす。
【0020】
好ましい一実施形態によれば、本発明による触媒は、促進剤を含まない、ジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒である。一実施形態によれば、本発明による触媒は、ジルコニア担持酸化カリウム及び酸化モリブデンを含み、促進剤を含まない。別の実施形態によれば、本発明による触媒は、ジルコニア担持酸化カリウム及び酸化モリブデンによって構成される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、第1の目的によれば、本発明は、メチルメルカプタンを調製するための方法に関し、前記方法は、
a)酸化炭素、硫化水素(H2S)及び水素(H2)が、ジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒の存在下で反応を受けるステップと、
b)ステップa)で得られた硫化カルボニルが、前記水素(H2)の存在下で水素化反応を受け、メチルメルカプタン(CH3SH)及び硫化水素(H2S)を形成するステップと、
c)任意選択的に、ステップb)で形成された前記硫化水素(H2S)が、ステップa)にリサイクルされるステップと、
d)メチルメルカプタンが回収されるステップと
を少なくとも含む。
【0022】
したがって、より具体的には、本発明は、メチルメルカプタンを調製するための方法に関し、前記方法は、
a)酸化炭素、硫化水素(H2S)及び水素(H2)が、ジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒の存在下で反応を受け、硫化カルボニルを形成するステップであって、前記触媒は促進剤を含まないステップと、
b)ステップa)で得られた硫化カルボニルが、前記水素(H2)の存在下で水素化反応を受け、メチルメルカプタン(CH3SH)及び硫化水素(H2S)を形成するステップであって、前記硫化水素は、硫化カルボニルの加水分解に由来し、この加水分解は、硫化カルボニルの水素化中に形成された水により行われるステップと、
c)任意選択的に、ステップb)で形成された前記硫化水素(H2S)が、ステップa)にリサイクルされるステップと、
d)メチルメルカプタンが回収されるステップと
を少なくとも含む。
【0023】
したがって、本発明によるメチルメルカプタンを調製するための方法は、一酸化炭素、硫化水素(H2S)及び水素(H2)試薬をジルコニア担持モリブデン及びカリウムをベースとする触媒の存在下で接触させるステップであって、前記触媒は促進剤を含まないステップと、任意選択的に前記硫化水素(H2S)をリサイクルするステップと、メチルメルカプタンを回収するステップとを含む。前記触媒の存在下で前記試薬を接触させることにより、硫化カルボニルを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の方法は、酸化炭素、水素及び硫化水素を使用して行われる。酸化炭素は、一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)から選択される。好ましくは一酸化炭素、水素及び硫化水素の混合物を使用して本発明の方法が行われるように、酸化炭素は一酸化炭素(CO)であることが好ましい。
【0025】
より好ましくは、方法のステップa)で使用される触媒は、ジルコニア担持カリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)である。特に好ましい実施形態によれば、方法のステップa)で使用される触媒は、ジルコニア担持カリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)であり、促進剤を含まない。一実施形態によれば、方法のステップa)で使用される触媒は、ジルコニア担持カリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)によって構成される。この触媒を使用すると、より具体的には、メチルメルカプタンへの高収量及び高選択性に加えて、酸化炭素、特に一酸化炭素の高い変換率を得ることができる。
【0026】
さらに、本発明による方法は実施が簡単であり、生態毒性が低く、費用効果が高い。
【0027】
したがって、本発明による触媒中に存在する活性成分は、同じ成分内にモリブデン及びカリウムを含む。
【0028】
活性成分は、K2MoO4又は(NH4)2MoO4前駆体を、担体上に個別に含浸させたK2CO3を添加して堆積及びか焼することにより得ることができる。アンモニウムヘプタモリブデートは、例えば硝酸カリウム、炭酸カリウム又はカリ等のカリウム塩の存在下で試薬として使用することもできる。
【0029】
これらの化合物は、モリブデン、酸素、及びカリウムを(Mo-O-K)ベースとする活性相の前駆体であり、前記活性相は、前駆体をin situで前処理した後、例えば、窒素乾燥の第1のステップ、続いて硫化水素による硫化、次いでH2/H2Sの混合物による還元/硫化ステップからなる手順により得られる。
【0030】
本発明による触媒担体は、式ZrO2のジルコニアである。好ましくは、ジルコニアに対する触媒の重量比K2MoO4/ZrO2は、1%~50%、好ましくは1~30%、より好ましくは5~35%、例えば5%~25%である。
【0031】
本発明の方法に使用される触媒の触媒活性は、触媒の担体が30m2/gより大きい比表面積を有する場合、さらに改善され得る。好ましくは、担体材料は、少なくとも50m2/gの比表面積を有する。
【0032】
担体の構造は、球形若しくは円筒形状、リング形状、星形状、又はペレットの形態の三次元構造、あるいは他の任意の三次元形状、あるいは三次元形状にプレス、押し出し、又はペレット化され得る粉末の形態であってもよい。
【0033】
一実施形態によれば、本発明による方法は、2つの連続する反応ステップ(上記のステップa)及びb))を含む方法であり、2つのステップ間で中間精製を行う必要がない:
ステップa):CO+H2S→COS+H2(2)
ステップb):COS+3H2→CH3SH+H2S(3’)
ステップb)は、次の2つの反応の結果に対応する:
COS+3H2→CH3SH+H2O(3)
COS+H2O→CO2+H2S(5)
より具体的には、前記水素(H2)の存在下でのステップa)で得られた硫化カルボニルの水素化反応は、メチルメルカプタン(CH3SH)及び硫化水素(H2S)を形成し、前記硫化水素は、H2S及びCO2を生成する硫化カルボニルの加水分解に由来し、この加水分解は、硫化カルボニルの水素化の間に形成された水により行われる(したがってCH3SH及び水を生成する)。
【0034】
一実施形態によれば、触媒は、本発明による方法のステップa)及びb)で使用される。
【0035】
本発明による方法は、2つの連続する反応ステップ(上記のステップa)及びb))を含む方法であり、2つのステップ間で中間精製を行う必要がない。図式的には、酸化炭素が一酸化炭素である場合、方法の最初のステップ(ステップa))は、上記の反応(2)に従う一酸化炭素と硫化水素(H2S)との間の、好ましくは高温で行われる反応である:
CO+H2S→COS+H2(2)
第2のステップ(ステップb))では、ステップa)で形成された硫化カルボニルが、上記の反応(3)に従って、ステップa)でも形成された水素と部分的に接触水素化を受ける。
【0036】
COS+3H2→CH3SH+H2O(3)
本発明の特に有利な一実施形態において、ステップb)で形成された硫化水素は、ステップa)でリサイクルされる。この実施形態において、形成された硫化水素の全体をこのようにステップa)で再利用することができ、形成された前記硫化水素を貯蔵する必要性が防止されことがわかる。
【0037】
酸化炭素、硫化水素及び水素は、特に方法が連続的に実施されるか「バッチ式」で実施されるかに応じて、本発明による方法が実施される1つ以上の反応器に連続的又は不連続的に有利に供給される。有利には、酸化炭素、硫化水素及び水素は、液体又は固体又は気体の形態、好ましくは気体の形態である。
【0038】
ステップa)における反応温度は、有利には、500℃~1300℃、好ましくは700℃~1100℃、より好ましくは800℃~1000℃である。下限の変換のため、及び上限の材料安定性のために、700℃~1100℃である、好ましくは800℃~1000℃である温度範囲が好ましい。
【0039】
本発明による触媒を使用すると、ステップa)における反応温度は、有利には100℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは250℃~350℃である。
【0040】
ステップa)における反応は、大気圧で、正圧下又は負圧下で区別なく行うことができ、当業者は、反応圧力条件を、使用される試薬の性質、選択される反応温度、流動循環速度、並びに目標の変換率及び収量に適合させる方法を知っている。
【0041】
一般的に、ステップa)は、50mbar~100bar(5.103~1.107Pa)、より好ましくは大気圧~50bar(すなわち5.106Pa)、有利には大気圧~15bar(すなわち15.105Pa)である圧力で実行され得る。
【0042】
好ましくは、反応は、管状固定床反応器、多管状反応器、マイクロチャネル反応器、触媒壁反応器又は流動床反応器で実行され得る。
【0043】
本発明はまた、酸化炭素、硫化水素及び水素からメチルメルカプタンを生成するための上記で定義された触媒の使用に関する。
【0044】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の説明に付随する特許請求の範囲によって定義される範囲を限定するものではない。
【0045】
[実施例1]
ジルコニア担持K2MoO4触媒の調製
乾式含浸法を使用して触媒を調製した。この目的のために、ある量のカリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)を水に溶解し、次いでこの溶液をジルコニアに含浸させた。触媒中のMo含量は、K2MoO4の溶解度及び担体の細孔容積に依存する。
【0046】
[実施例2]
シリカ担持K2MoO4触媒の調製
乾式含浸法を使用して触媒を調製した。この目的のために、ある量のカリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)を水に溶解し、次いでこの溶液をシリカに含浸させた。触媒中のMo含量は、K2MoO4の溶解度及び担体の細孔容積に依存する。
【0047】
[実施例3]
二酸化チタン担持K2MoO4触媒の調製
乾式含浸法を使用して触媒を調製した。この目的のために、ある量のカリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)を水に溶解し、次いでこの溶液を二酸化チタンに含浸させた。触媒中のMo含量は、K2MoO4の溶解度及び担体の細孔容積に依存する。
【0048】
[実施例4]
アルミナ担持K2MoO4触媒の調製
乾式含浸法を使用して触媒を調製した。この目的のために、ある量のカリウムテトラオキソモリブデート(K2MoO4)を水に溶解し、次いでこの溶液をアルミナに含浸させた。触媒中のMo含量は、K2MoO4の溶解度及び担体の細孔容積に依存する。
【0049】
[実施例5]
触媒試験
試験の前に、250℃の窒素気流中で乾燥させる第1のステップ、続いて同じ温度で1時間のH2Sによる硫化、最後に350℃で1時間のH2/H2Sでの還元/硫化ステップからなる手順によって、触媒をin situで活性化した。
【0050】
次いで、メチルメルカプタン生成反応に関して、触媒の性能を、触媒容量3mL、温度320℃、圧力10bar(1Mpa)の固定床反応器内で評価するが、CO/H2/H2S供給ガスの体積組成は1/2/1に等しく、GHSV(Gas Hourly Space Velocity、ガス時間空間速度)は1333h-1に等しい。試薬及び生成物は、ガスクロマトグラフィーによってインラインで分析される。
【0051】
これらの4つの触媒で得られた結果を、表1にまとめる。これらの4つの試験では、担体上のモリブデン含量は8wt%、すなわちK2MoO4では19.9%である。
【0052】
【0053】
上記の表1に示す結果は、本発明による触媒(実施例1)が、一酸化炭素の変換を明らかに改善し、従来技術の担体(シリカ、チタン又はアルミナ、実施例2、3及び4)上の触媒と比較して、CH3SHの生成能力を明らかに改善することを示している。
【0054】
本発明の触媒は、COSの改善された変換と組み合わせて、改善されたCO変換、良好な選択性、及びMeSHの増加した収量を伴って、酸化炭素、水素及び硫化水素からメチルメルカプタンが合成されることを可能にする。これらの向上した性能レベルは、先行技術に記載されているように、酸化テルル、酸化ニッケル、酸化鉄及び他の促進剤等の促進剤を使用せずに、単純な触媒で得られる。