(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20230606BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 104
(21)【出願番号】P 2021008568
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297799(JP,A)
【文献】実開昭60-004625(JP,U)
【文献】特開平10-088560(JP,A)
【文献】特開2000-345528(JP,A)
【文献】特開平03-199521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中にケーシングパイプが回転しながら貫入され、引き抜く際に杭材料を排出し、打ち戻しと前記杭材料の排出とを繰り返すことで無振動にて材料杭を造成する地盤改良装置であって、
前記ケーシングパイプ内に、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根を該ケーシングパイプとは逆方向に回転自在に設けたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良装置であって、
前記ケーシングパイプを回転させる1基の駆動モータで、前記中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根を前記ケーシングパイプとは逆方向に回転させるようにしたことを特徴とする地盤改良装置。
【請求項3】
請求項2記載の地盤改良装置であって、
前記中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根の固定端側は、前記1基の駆動モータに逆回転駆動板を介して連結され、かつ、前記中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根の自由端側は、前記ケーシングパイプの内周面の先端の周りから離れて配置され、
前記ケーシングパイプの引き抜き時に前記中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根を逆回転させて前記地盤中に前記杭材料を排出させるようにしたことを特徴とする地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制昇降装置を用いた回転圧入によって、無振動にて砂杭等の材料杭を造成する地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良装置として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載の地盤改良装置を
図2に示す。この地盤改良装置1は、ベースマシンの前部に立設したリーダ(いずれも図示省略)と、このリーダに機枠2aを介して取り付けられ、外筒管6及び内筒管7を回転させると共に、リーダに沿って上下動させる昇降装置2と、内筒管7の上端部を構成する非回転部7aにスイベル部7bを介して取り付けられ、内筒管7内に砂Sを供給するホッパー3と、を備えている。
【0003】
図2に示すように、外筒管6は、機枠2aに固定された一対の回転モータ4,4を介して回転するようになっている。また、内筒管7は、外筒管6の内部に挿入されており、昇降装置2の上部に設けられた回転モータ5により、外筒管6とは独立して回転するようになっている。さらに、内筒管7の外周面には、延長方向に沿って螺旋状の掘削土砂搬出路としての螺旋羽根8が取り付けられており、外筒管6に挿入された状態において、螺旋羽根8の外周部が延長方向に沿って外筒管6の内面と近接している。
【0004】
そして、回転モータ4により外筒管6を所定方向に回転させると共に、回転モータ5により、内筒管7を外筒管6とは逆方向に回転させることにより、外筒管6及び内筒管7を地盤9中に貫入する。この貫入作業中において、内筒管7の内部に予め砂Sが供給され、外筒管6及び内筒管7を引き抜く際に内筒管7から砂Sを排出し、外筒管6及び内筒管7の貫入と引き抜きを繰り返すことで砂Sを締め固めて砂杭を造成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の地盤改良装置1では、外筒管6の中に内筒管7が通っているため、外筒管6及び内筒管7を地盤9中から引き抜く際の1回転当たりの砂Sの圧送量が少なく、余分な回転を必要としていた。また、内筒管7の上部から砂Sを押し出すために多量の圧縮空気が必要としていた。さらに、外筒管6を回転させる回転モータ4と内筒管7を回転させる回転モータ5の2基のモータが必要なため、その分コスト高であった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、地盤中からケーシングパイプを引き抜く際の1回転当たりの杭材料の圧送量が多く、少量の圧縮空気でも杭材料をスムーズかつ確実に地盤中に排出させることができる安価で小型の地盤改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地盤中にケーシングパイプが回転しながら貫入され、引き抜く際に杭材料を排出し、打ち戻しと前記杭材料の排出とを繰り返すことで無振動にて材料杭を造成する地盤改良装置であって、前記ケーシングパイプ内に、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根を該ケーシングパイプとは逆方向に回転自在に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーシングパイプ内に、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根を該ケーシングパイプとは逆方向に回転自在に設けたことにより、地盤中からケーシングパイプを引き抜く際の1回転当たりの杭材料の圧送量が多く、少量の圧縮空気でも杭材料をスムーズかつ確実に地盤中に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の地盤改良装置の地盤貫入状態を示す一部断面図である。
【
図2】従来の地盤改良装置の地盤貫入状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態の地盤改良装置の地盤貫入状態を示す一部断面図である。
【0013】
図1に示すように、地盤改良装置10は、図示しない施工機本体の前部に立設したリーダ11と、図示しないチェーンまたはラックによりリーダ11に沿って昇降動する強制昇降装置12と、この強制昇降装置12によりリーダ11に沿って昇降動すると共に、回転駆動装置13により回転自在に支持されたケーシングパイプ17と、このケーシングパイプ17の内部に挿入され、回転駆動装置13によりケーシングパイプ17とは逆方向に回転自在に設けられた中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18と、強制昇降装置12の一側部に取り付けられ、ケーシングパイプ17内に砂(杭材料)Sを供給するホッパー19と、を備えている。杭材料としては、砂Sの他に、スラグや再生コンクリート或いは産業廃棄物の盛り上がり土等でも良い。
【0014】
図1に示すように、ケーシングパイプ17は、円筒状の外管であり、その基端部17aは、回転駆動装置13に1基設けられた駆動モータ14により正回転する正回転駆動板15に連結されている。また、ホッパー19よりケーシングパイプ17内に供給された砂Sは、地盤9中からケーシングパイプ17を引き抜く際にその先端の開口17bから排出されるようになっている。
【0015】
図1に示すように、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18の固定端18aは、駆動モータ14により逆回転する逆回転駆動板16に連結されていて、ケーシングパイプ17とは逆方向に回転するようになっている。また、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18の自由端18b側は、ケーシングパイプ17の内周面17cの先端の周りから離れて配置されている。さらに、ケーシングパイプ17挿入された状態において、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18の外周部18cは軸方向に沿ってケーシングパイプ17の内周面17cと近接している。そして、地盤9中から正回転しながらケーシングパイプ17が引き抜かれる際に、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18が逆回転して、ケーシングパイプ17に供給された砂Sが地盤9中に強制的に排出されるようになっている。
【0016】
以上実施形態の地盤改良装置10によれば、地盤9中に砂杭Kを造成する際に、まず、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18を内蔵したケーシングパイプ17を所定位置に据え、ホッパー19からケーシングパイプ17内に一定量の砂Sを投入する。
【0017】
次に、ケーシングパイプ17を正回転させ、かつ、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18を逆回転させながら、地盤9中に所定深度まで貫入する。
【0018】
次に、ケーシングパイプ17を正回転させ、かつ、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18を逆回転させながら、ケーシングパイプ17を規定の高さに引き上げながら、ケーシングパイプ17内の砂Sを中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18により地盤9中に強制的に排出する。
【0019】
そして、ケーシングパイプ17の貫入と引き抜きを順次繰り返して、ケーシングパイプ17の打ち戻しと砂Sの排出とを繰り返すことで無振動・無騒音にて砂杭Kを造成することができる。
【0020】
このように、ケーシングパイプ17内に、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18を該ケーシングパイプ17とは逆方向に回転自在に設けたことにより、地盤9中からケーシングパイプ17を引き抜く際の1回転当たりの砂Sの圧送量が多く、少量の圧縮空気でも砂Sをスムーズかつ確実に地盤9中に排出させることができる。
【0021】
また、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18は、砂面の高さを管理できるので、杭材料の管理が簡単にできる。さらに、中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18による砂Sの強制排出なので、圧縮空気の量も少なくて済み、周辺影響が少ない施工となる。
【0022】
さらに、1基の駆動モータ14によりケーシングパイプ17と中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根18をそれぞれ回転させることができるため、その分、地盤改良装置10の低コスト化及び小型化を図ることができる。これにより、施工機本体と砂を供給できる機械とで施工ができるため、狭隘地の施工ができる。
【符号の説明】
【0023】
9 地盤
10 地盤改良装置
14 1基の駆動モータ
16 逆回転駆動板
17 ケーシングパイプ
17c 内周面
18 中央が中空でスパイラル状の無軸スクリュー羽根
18a 固定端
18b 自由端
S 砂(杭材料)
K 砂杭(材料杭)