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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 41/36 20060101AFI20230606BHJP
   B29C 41/38 20060101ALI20230606BHJP
   B29C 41/04 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B29C41/36
B29C41/38
B29C41/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021194063
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392026073
【氏名又は名称】ハシダ技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391017296
【氏名又は名称】ダイライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】森 康之
(72)【発明者】
【氏名】金子 広貴
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0071969(US,A1)
【文献】特開2005-022358(JP,A)
【文献】特開2000-272669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 41/00-41/52
B09B 3/40
B29B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の樹脂成形品を原料材料として樹脂成形品を新たに製造する樹脂成形品の製造方法において、
前記既存の樹脂成形品を細断して、前記原料材料として多数の樹脂断片を用意し、
前記多数の樹脂断片を型内に入れて該型を加熱しつつ回転させ、
前記型の加熱下での回転により、前記多数の各樹脂断片同士の接触部分を溶融結合させつつ、該多数の樹脂断片をガイド面としての前記型の内壁面に付着させて、該型の内壁面形状に相応し且つ前記樹脂断片間に隙間を有する中空の樹脂断片結合体を形成し、
その後、前記中空の樹脂断片結合体を中空樹脂成形品として取り出す、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記中空の樹脂断片結合体の内壁面、外壁面の少なくとも一方を、樹脂によって被覆処理する、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記被覆処理を、前記型内における前記中空の樹脂断片結合体内に粉末状の熱可塑性樹脂を入れて、該型を加熱しつつ回転させることにより行い、
前記型内への前記熱可塑性樹脂の投入量を、前記中空の樹脂断片結合体における樹脂断片同士の結合力又は樹脂断片間の隙間の大きさに応じて調整する、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片として、前記樹脂断片結合体における樹脂断片間の隙間を増大させるときほど、粉状サイズを超えた領域で該粉状サイズから遠のく方向に増大されたサイズのものを用いる、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片は、最大長さが12mm~14mmにとどめられた略平板状に形成されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片が、樹脂が異なる複数種類の樹脂断片を混合したものであり、
前記複数種類の樹脂断片として、各種類の樹脂断片の溶融温度差が所定温度差よりも小さいものが選択されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
前記型内に入れる多数の樹脂断片が、表面の属性として色彩又は模様が異なる複数種類の樹脂断片を混合したものである、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片を、形成されるべき前記樹脂断片結合体の種類に応じて、色彩が異なるものにする、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
前記中空樹脂成形品を、中空のインテリア類、回収ボックス、コンテナ、コンポストのいずれかに用いる、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、
前記中空樹脂成形品が、切断分離されるべき複数の構成部分が結合された中間製品である、
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品を製造するに当たっては、一般に、樹脂材料を加熱して溶かしたものを、金型などを使って所定形状にし、それを、冷やし固めた後、取り出すことが行われる。具体的には、成形に当たり、溶融樹脂を金型内に射出して所定形状の成形品を形成する射出成形や、金型内における溶融樹脂の内側から空気を吹き込んで中空成形品を形成するブロー成形等が用いられる。
【0003】
ところで、樹脂成形品は、種々の製品として社会に多く出まわる一方で、その使命を終えると、比較的安易に廃棄される傾向にある。このようなことは、SDGs、ESGの観点からすれば好ましくなく、廃棄された樹脂成形品について再利用を図れるようにすることが重要と言える。このため、廃棄された樹脂成形品の再利用として、特許文献1に示すように、廃棄樹脂成形品を細かく粉砕した後、それを混練り処理、溶融、押出処理等を経て射出成形用原料ペレットを形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-6521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記原料ペレットを用いて樹脂成形品を製造する場合、結局、原料ペレットを射出成形に用いる関係上、当然のことながら、その原料ペレットを完全に溶融させるための加熱処理、その溶融樹脂を金型内に射出するための押出処理等を、これまで同様、行わなければならない。しかも、廃棄樹脂成形品を原料ペレットにする作業として、粉砕、混練り、押出し等の特有の処理を行わなければならず、廃棄樹脂成形品を原料ペレットにする作業として、多種多様の処理、作業が増える。このため、廃棄樹脂成形品から再生された原料ペレットを用いて樹脂成形品を製造する場合には、製造負担及びエネルギー消費を従前よりも軽減することができない。
【0006】
このような状況下、仮に、廃棄樹脂成形品を原料ペレットに再生する処理を行わず、さらには、そのような原料ペレットを用いて射出成形での処理(原料ペレットを溶融させるための加熱処理、その原料ペレットを溶融樹脂として金型内に押し出す押出処理(加圧処理))を行わなくてもよくなれば、再生成形の負担が大きく改善される。本発明者は、このような認識の下、金型を用いた加熱下での回転成形に着目し、それを利用すれば、成形品が中空樹脂成形品に限られるものの、上記成形負担における改善要件の大部分が満たされるとの考えに至り、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造するに当たり、極力、製造負担を軽減することにある。
【0008】
前記目的を達成するため本発明にあっては、次の(1)~(10)の構成とされている。
【0009】
(1)既存の樹脂成形品を原料材料として樹脂成形品を新たに製造する樹脂成形品の製造方法において、
前記既存の樹脂成形品を細断して、前記原料材料として多数の樹脂断片を用意し、
前記多数の樹脂断片を型内に入れて該型を加熱しつつ回転させ、
前記型の加熱下での回転により、前記多数の各樹脂断片同士の接触部分を溶融結合させつつ、該多数の樹脂断片をガイド面としての前記型の内壁面に付着させて、該型の内壁面形状に相応し且つ前記樹脂断片間に隙間を有する中空の樹脂断片結合体を形成し、
その後、前記中空の樹脂断片結合体を中空樹脂成形品として取り出す構成とされている。
【0010】
このような構成によれば、型を加熱しつつ回転させることにより、多数の各樹脂断片同士の接触部分を溶融結合させつつ、その多数の樹脂断片をガイド面としての型の内壁面に付着させることから、成形品として、樹脂断片にて形成される中空樹脂成形品を、残留応力を抑制した状態で製造できる。その一方で、型内に入れるべき原料材料が多数の樹脂断片で済むことから、その原料材料(多数の樹脂断片)を得るに当たり、廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を細断することだけにとどめることができ、多種多様な処理、作業を行う原料ペレット化作業を不要にすることができる。また、前記した通り、型を加熱しつつ回転させることにより、多数の各樹脂断片同士の接触部分を溶融結合させつつ、その多数の樹脂断片をガイド面としての型の内壁面に付着させることから、成形品が中空樹脂成形品となるものの、原料材料の溶融を、その原料材料としての樹脂断片同士の接触部分にとどめることができ、原料材料全体を溶融樹脂になるまで加熱する加熱処理を不要にできると共に、溶融樹脂を型内に押出す押出処理(加圧処理)自体を不要にできる。このため、廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造するに当たって、当該製造方法を用いれば、極力、製造負担を軽減することができる。
【0011】
また、樹脂断片結合体の成形に当たり、樹脂断片間に形成される隙間を、中空樹脂成形品の孔として利用できることになり、中空樹脂成形品が複数の孔を有するようにするために、孔あけ作業を特別に行うことをなくすことができる。
【0012】
(2)前記(1)の構成の下で、
前記中空の樹脂断片結合体の内壁面、外壁面の少なくとも一方を、樹脂によって被覆処理する構成とされている。
【0013】
この構成によれば、被覆処理に基づく被覆層(被覆樹脂)が、樹脂断片同士の結合強度を補強することになり、当該中空樹脂成形品の強度(樹脂断片同士の結合強度)を向上させることができる。また、被覆処理に基づく被覆樹脂を、樹脂断片結合体における樹脂断片間の隙間に入り込ませることができ、その入り込んだ被覆樹脂により樹脂断片間の隙間の大きさを調整することができる。これにより、当該中空樹脂成形品における孔の大きさを所望のものにすることができる。
【0014】
(3)前記(2)の構成の下で、
前記被覆処理を、前記型内における前記中空の樹脂断片結合体内に粉末状の熱可塑性樹脂を入れて、該型を加熱しつつ回転させることにより行い、
前記型内への前記熱可塑性樹脂の投入量を、前記中空の樹脂断片結合体における樹脂断片同士の結合力又は樹脂断片間の隙間の大きさに応じて調整する構成とされている。
【0015】
この構成によれば、中空の樹脂断片結合体の内壁面に対して圧力をかけることなく具体的且つ簡単に熱可塑性樹脂を被覆することができる。また、その熱可塑性樹脂の型内への投入量により、中空の樹脂断片結合体における樹脂断片同士の結合力を熱可塑性樹脂被膜によって補強調整できると共に、樹脂断片間の隙間への熱可塑性樹脂の進入量を調整して、その隙間の大きさを調整し、中空樹脂成形品の各孔の大きさを的確なものに調整できる。
【0016】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの構成の下で、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片として、前記樹脂断片結合体における樹脂断片間の隙間を増大させるときほど、粉状サイズを超えた領域で該粉状サイズから遠のく方向に増大されたサイズのものを用いる構成とされている。
【0017】
この構成によれば、樹脂断片のサイズが大きくなるほど、樹脂断片結合体における樹脂断片間の隙間が大きくなるという本発明者の知見を利用して、中空樹脂成形品が有する孔の大きさを適宜調整することができる。
【0018】
(5)前記(1)~(4)のいずれかの構成の下で、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片は、最大長さが12mm~14mmにとどめられた略平板状に形成されている構成されている。
【0019】
この構成によれば、本発明者の知見に基づき、型を加熱しつつ回転させる状況の下で、樹脂断片同士の接触部分の溶融結合を的確に行わせることができ、中空樹脂成形品(樹脂断片結合体)を確実に成形することができる。
【0020】
(6)前記(1)~(5)のいずれかの構成の下で、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片が、樹脂が異なる複数種類の樹脂断片を混合したものであり、
前記複数種類の樹脂断片として、各種類の樹脂断片の溶融温度差が所定温度差よりも小さいものが選択されている構成とされている。
【0021】
この構成によれば、型を加熱しつつ回転させる状況の下で、結合されるべき樹脂断片同士において、その結合されるべき両部分の溶融を促進し、その樹脂断片同士の溶融結合を的確に行わせることができる(成形強度の確保)。
【0022】
(7)前記(1)~(6)のいずれかの構成の下で、
前記型内に入れる多数の樹脂断片が、表面の属性として色彩又は模様が異なる複数種類の樹脂断片を混合したものである構成とされている。
【0023】
この構成によれば、成形に当たり、多数の各樹脂断片同士の接触部分を溶融結合させつつ、その多数の樹脂断片をガイド面としての型の内壁面に付着させることから、各既存の樹脂成形品表面の元々の色彩、模様等の属性を残すことができ、それらを新たな樹脂成形品の模様等として活用することができる。これに対して、複数種類の既存の樹脂成形品により原料ペレットを再生し、その原料ペレットを、射出成形を行うために溶融させた場合には、各既存の樹脂成形品における元々の多様な色彩、模様等が単一色となって、もはや、その多様な色彩、模様等を再生樹脂成形品において有効に利用できなくなる。
【0024】
(8)前記(1)~(7)のいずれかの構成の下で、
前記型内に入れる多数の各樹脂断片を、形成されるべき前記樹脂断片結合体の種類に応じて、色彩が異なるものにする構成とされている。
【0025】
この構成によれば、型内に入れる多数の各樹脂断片の色彩を異ならせるだけで、形成されるべき前記樹脂断片結合体(中空樹脂成形品)の種類(機能、グレード等)に応じて、簡単に色分けすることができる。
【0026】
(9)前記(1)~(8)のいずれかの構成の下で、
前記中空樹脂成形品を、中空のインテリア類、回収ボックス、コンテナ、コンポストのいずれかに用いる構成とされている。
【0027】
この構成によれば、中空樹脂成形品を、具体的に好ましいものに用いることができる。
【0028】
(10)前記(1)~(9)のいずれかの構成の下で、
前記中空樹脂成形品が、切断分離されるべき複数の構成部分が結合された中間製品である構成とされている。
【0029】
この構成によれば、中空樹脂成形品の自由度、使い勝手を高めることができる。
【0030】
【0031】
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造するに当たり、極力、製造負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る中空樹脂成形品を示す写真図。
図2図1の部分拡大図。
図3】実施形態に係る製造工程を示す製造工程図。
図4】実施形態に係る樹脂断片を示す写真図。
図5】金型による加熱下での回転成形を説明する説明図。
図6】実施形態に係る中空樹脂成形品が中間樹脂製品である場合の利用例を説明する説明図。
図7】実施形態に係る中空樹脂成形品が中間樹脂製品である場合の他の利用例を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1において、符号1は、金型による加熱下での回転成形により製造された実施形態に係る中空樹脂成形品である。この中空樹脂成形品1は、一例として、ランプシェード(中空のインテリア類)となるもの(中間製品)が示されており、このランプシェードとなるものは、図1の状態では、金型から取出された後、加工途中の状態にある。この中空樹脂成形品1は、壺状(略有底円筒形状)に形成され、その軸線方向一方側(下方側)が閉塞されている一方、その軸線方向他方側(上方側)に、絞られた状態の開口2が形成されている(開口2については、その周縁部処理が完全に施されていない状態)。
【0035】
この中空樹脂成形品1は、図1図2に示すように、多数の樹脂断片3同士を互いに結合することにより形成されている。多数の各樹脂断片3は、それらが互いに結合されて断片結合壁4を形成しており、その断片結合壁4により、内部空間を有する中空の外形形状が形成されている。この中空樹脂成形品1の断片結合壁4には、その断片結合壁4が各樹脂断片3同士の接触部分を結合して形成される関係上、樹脂断片3間に隙間5が形成されており、その隙間5に基づき中空樹脂成形品1は、断片結合壁4において、内外を連通する複数の孔5Aを有することになっている。このため、中空樹脂成形品1をランプシェードとして利用する場合には、開口2から内部空間にライトを入れて点灯させることにより、そのライトの光を、各樹脂断片3を介して外部に透過させることができるだけでなく、複数の各孔5Aから外部に導くこともでき、複数の孔5Aをランプシェードにおいて有効に利用できる。また、この中空樹脂成形品1においては、多数の樹脂断片3として、種々の色彩等が施されたものが用いられており、それが、中空樹脂成形品1の少なくとも表面に模様として反映されている。
【0036】
このような中空樹脂成形品1は、図3に示す製造工程に従って製造される。以下、具体的に説明する。
【0037】
先ず、図3に示すように、多数の樹脂断片3が用意(準備)される。この多数の各樹脂断片3は、図4に示すように、最大長さLmaxが12mm~14mm、より好ましくは12mmにとどめられた略平板状として形成されており、その各平板形状は、区々なものとなっている。各樹脂断片3のサイズを上記のようにしているのは、本発明者の知見に基づき、後述の金型による加熱下での回転成形により的確に、樹脂断片3同士を結合させて断片結合壁4を形成し、その断片結合壁4により金型の内壁面形状に相当する中空の樹脂断片結合体6に保つことができるようにするためである。また、樹脂断片3のサイズは、上記最大長さLmaxを踏まえつつ、中空の樹脂断片結合体6における樹脂断片3間の隙間5の大きさを調整するものとして考慮されている。樹脂断片3の長さが長くなるほど樹脂断片3間の隙間5が大きくなるという本発明者が見出した知見を活かして、それを製品の用途に反映させるためである。
【0038】
この多数の樹脂断片3の原料には、廃棄樹脂成形品であるペットボトルキャップが用いられる。この多数の樹脂断片3を形成するに当たっては、ペットボトルキャップの収集後、それらを、洗浄し、破砕機を用いて、上述のように細断することが行われる。この場合、多数の樹脂断片3は、製品が異なる複数種類のペットボトルキャップを細断して混合されたものとなることから、多数の各樹脂断片3は、元の各ペットボトルキャップに応じて、その元々の表面属性である色彩、文字(印字)等の模様が残された状態となっている。図4において、濃淡の違いが色彩の違いを示し、樹脂断片3に表れる文字等の模様は、元の樹脂製品の文字等の模様を示している(図2も参照)。
【0039】
この多数の各樹脂断片3としては、ペットボトルキャップの樹脂材料が種々のものからなっていることを考慮し、異なる樹脂材料(熱可塑性樹脂)からなるものを混合して用いることができる。この場合、ペットボトルキャップの収集の段階で、樹脂材料の溶融温度ができるだけ近い種類のものを選択し、その選択されたペットボトルキャップから形成された樹脂断片3を用いることが好ましい。具体的には、各樹脂材料の溶融温度差が所定温度差40℃よりも小さいものが好ましい。後述の金型での加熱下での回転成形において、樹脂断片3同士の溶融結合に関し、樹脂断片3同士の両接触部分が溶融して結合する方が、片方の樹脂断片3の溶融だけの場合よりも的確に行われるからである。本実施形態においては、ペットボトルキャップの多くが、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)であり、しかも、PE(低密度)の溶融温度とPPの溶融温度とが比較的近いことから(PEの融点120-140℃、PPの融点140-160℃)、その両者の混合物が用いられている。勿論、樹脂断片3の原料となるペットボトルキャップとしては、同一の樹脂材料(PE又はPPのいずれか単一の樹脂材料)を選択することがより好ましい。
【0040】
次に、図3図5に示すように、前記多数の樹脂断片3が金型7内に投入され、その金型7を加熱下で回転させることにより回転成形が行われる。多数の樹脂断片3を材料として、金型7の内壁面形状に応じた中空樹脂成形品1を成形するためである。
【0041】
上記回転成形は、基本的には、投入原料を金型7内に仕込む仕込み工程と、その投入原料が仕込まれた金型7を加熱環境の下で回転させながらその投入原料をガイド面である金型7の内壁面に沿う均等な層とする加熱・回転工程と、その金型7の内壁面形状に応じた層を冷却固化する冷却工程と、その冷却固化したものを金型7内から中空樹脂成形品1として取り出す取出し工程とからなる(図3図5参照)。以下、各工程毎に具体的に説明する。
【0042】
前記仕込み工程においては、通常の回転成形であれば、粉末樹脂材料(0.5mm程度)が投入原料として金型7内に仕込まれるが、本実施形態においては、投入原料として、前述の多数の樹脂断片3が用いられる。投入原料を多数の樹脂断片3として、後述の加熱・回転成形を行っても、金型7の内壁面形状に応じた樹脂断片結合体6(中空樹脂成形品1)を成形できることを見出し、これにより、製造負担を軽減できると考えたからである。この多数の樹脂断片3の投入量は、成形すべき樹脂断片結合体6に応じて基本的に決まるが、その樹脂断片結合体6の厚みを変更して強度を高めたい場合には、その多数の樹脂断片3の投入量を増大させることになる。
【0043】
金型7としては、成形すべき中空樹脂成形品1(製品)に応じた内壁面構造のものが準備され、それが用いられる。金型7の準備については、射出成形、ブロー成形では、成形機の型締圧力に対応するため、金型7自体に機械的強度が必要となるが、回転成形では、金型7に機械的圧力がかからないため比較的容易に製作できる。
【0044】
前記加熱・回転工程においては、金型7の加熱下での回転により、金型7内に投入された多数の樹脂断片3同士の接触部分が互いに溶融結合され、それらがガイド面である金型7の内壁面に沿うように付着し(馴染んで)、金型7の内壁面形状に応じた樹脂断片結合体6が成形される。このとき、樹脂断片結合体6を構成する断片結合壁4においては、樹脂断片3間に隙間5が形成される(図2参照)。
【0045】
この金型7に対する加熱環境は、金型7を加熱炉内に配置する態様、金型7を直接、加熱する態様等、種々の態様をもって整えることができる。このときの加熱条件については、金型7内に投入される樹脂断片3同士の接触部分が溶融結合することが考慮され、具体的には、樹脂断片3の樹脂材料がPEとPPとの混合物である場合には、金型7温度は、220~260℃とされる。金型7の回転方式、回転速度については、樹脂断片3同士の接触の機会を高めてその両接触部分の結合機会を高めると共に、樹脂断片3が金型7の内壁面全体に沿った状態で付着することを考慮して設定される。金型7の回転方式には、既存の方式が適宜利用され、例えば、2つの回転軸により金型7に自転と公転とからなる惑星運動を行わせる2軸回転方式、振り子状に左右に揺れる台上で金型7を回転させるロックンロール方式等の一つが状況に応じて選択される。例えば、金型7の回転方式として2軸回転方式が利用される場合には、金型7の回転速度として、公転2.0~9.0rpm、自転1.0~15.0rpmの範囲が用いられる。金型7による加熱・回転時間については、樹脂断片3の投入量、成形すべき対象物(大きさ、形状等)を考慮し、投入された樹脂断片3のほとんど全てが結合されて、それらが樹脂断片結合体6の構成要素になるまでの時間が設定される。
【0046】
これにより、加熱・回転工程においては、上述の通り、金型7内の樹脂断片3同士の接触部分が互いに溶融結合されて断片結合壁4が形成され、その断片結合壁4がガイド面である金型7の内壁面に沿うように付着し(馴染み)、樹脂断片3間に隙間5を有する中空の樹脂断片結合体6が成形される。このとき、断片結合壁4における樹脂断片3間の隙間5は、樹脂断片3のサイズ(長さ、大きさ)に対応したものとなる。またこのとき、樹脂断片結合体6における断片結合壁4の表面(外周面)が、金型7の内壁面に沿う滑らかな面となる一方で、その表面の色彩、文字(印字)等の模様等は損なわれずにそのまま残る(図1図2参照)。この場合、特に、中空樹脂成形品1の成形、その成形品の表面状態等(元の色味、印字等の維持)を考慮する場合には、金型7温度、金型7の回転速度等が、製品となるべき中空樹脂成形品1(形状等)に応じて、適宜調整される。
【0047】
上記加熱・回転工程を終えると、通常の場合、金型7を冷却する冷却工程、金型7内から樹脂断片結合体6を中空樹脂成形品1として取り出す取出し工程へと順次、移行することになるが、この加熱・回転工程で成形された樹脂断片結合体6の成形強度(樹脂断片3同士の結合強度)を一層、向上させたい場合、或いは、樹脂断片結合体6における樹脂断片3間の隙間5を縮小(閉塞を含む)したい場合には、加熱・回転工程後又は後述の冷却工程前後に、熱可塑性樹脂(例えばPE又はPP)を用いて樹脂断片結合体6の内壁面に対して被覆処理が行われる。具体的には、粉状の熱可塑性樹脂が金型7内における樹脂断片結合体6の内側に投入され、その金型7が加熱下で回転される(再度の加熱下での回転成形)。この被覆処理により、熱可塑性樹脂の被覆層(被覆樹脂)が樹脂断片結合体6の内壁面を被覆することになり、その被覆層が樹脂断片3同士の結合を補強して、樹脂断片結合体6の強度を向上させる。また、この被覆処理により、被覆樹脂(熱可塑性樹脂)が樹脂断片3間の各隙間5に入り込むことになり、その入り込んだ被覆樹脂により樹脂断片3間の隙間5の大きさが縮小される。この樹脂断片結合体6の強度向上調整及び樹脂断片3間の隙間5の大きさ調整は、基本的には、上記熱可塑性樹脂の投入量により決定され、粉状の熱可塑性樹脂の投入量が多くなるほど、樹脂断片結合体6の強度が高まると共に樹脂断片3間の隙間5の大きさが縮小されることになる。他方で、このような被覆処理を行わない場合には、上記樹脂断片結合体6の強度向上調整及び樹脂断片3間の隙間5の大きさ調整(小さくすること)に当たり、樹脂断片3の大きさを小さくすること、金型7の温度条件を変更することが、その樹脂断片結合体6の強度向上及び樹脂断片3間の隙間5の大きさに影響を与えることから、それら調整を適宜行うことが好ましい。
【0048】
前記冷却工程においては、中空の樹脂断片結合体6の内壁面に熱可塑性樹脂が被覆処理されていない場合には、加熱・回転工程後、直ちに、その中空の樹脂断片結合体6が、金型7を空冷ファン8等により冷却することにより冷却固化される。このとき、樹脂断片結合体6全体の冷却を促進するため、金型7は回転される。中空の樹脂断片結合体6の内壁面に熱可塑性樹脂が被覆処理されている場合には、上記と同様の方法により、その樹脂断片結合体6と被覆層とが冷却固化される。そして、次の取出し工程においては、その冷却固化したもの、すなわち、中空の樹脂断片結合体6の内面に熱可塑性樹脂が被覆処理されていない場合には、その中空の樹脂断片結合体6が中空樹脂成形品1として取り出され、中空の樹脂断片結合体6の内面に被覆処理が施されている場合には、内面に被覆層が設けられた中空の樹脂断片結合体6が中空樹脂成形品1として取り出される。
【0049】
上記中空樹脂成形品1は、これまでの説明から明らかなように、基本的に、多数の樹脂断片3が結合された樹脂断片結合体6の状態に維持されており、その中空樹脂成形品1の断片結合壁4には、樹脂断片3間の隙間5に基づき、内外を連通する複数の孔5Aが形成されている。勿論、加熱・回転工程の後の被覆処理により複数の孔5Aが閉塞されている場合には、中空樹脂成形品1の断片結合壁4には、孔5Aは存在しないことになる。また、この中空樹脂成形品1は、樹脂断片3同士の結合により構成されているものの、成形方法として加熱下での回転成形が用いられて、残留応力が生じにくくなっていることから、基本的に安定した成形状態を長期に亘って維持することができる。
【0050】
このような中空樹脂成形品1には、それがそのまま樹脂製品となるものの他、その中空樹脂成形品1に多少、加工を施したり、或いは切断分離によって複数の部品等とする中間樹脂製品が含まれる。例えば、中間樹脂製品としては、ランプシェード、コンテナ、回収ボックス、コンポスト等を製造するものが存在する。ランプシェード、コンテナについては、その相当中間樹脂製品に対して開口等の加工処理が行われ、回収ボックス、コンポストについては、その相当中間樹脂製品が切断分離され、これによって、2つの樹脂製品とされたり、1つの樹脂製品の下で複数の構成部品とされる。
【0051】
図6は、中空樹脂成形品1を、回収ボックス11を製造するための中間樹脂製品とし、それを半分に切断分離することにより、2つの回収ボックス11を得る場合の一例を示している。この場合、この回収ボックス11をリヤカーの本体として利用し、その回収ボックス11を海辺でのごみ回収に利用すれば、その回収ボックス11は、ごみ回収だけでなく、その樹脂断片3間の隙間5に基づく複数の孔5Aにより水切り機能をも発揮することになる。尚、図6において、符号Cは切断線を示す(後述の図7においても同じ)。
【0052】
図7は、中空樹脂成形品1を、コンポスト12を製造するための中間樹脂製品とし、それを切断することにより、本体12Aと蓋12Bとに分離する共に本体12Aの底部を開口させる場合の一例を示している。この場合、図7に示すように、中間樹脂製品において、蓋相当部分12bを本体相当部分12aよりも拡径状態にしておけば、その両者12a,12bの切断により、蓋12Bの内部に対して本体12Aを嵌合できる関係となる。また、樹脂断片3間の複数の孔5Aは、コンポスト12内の臭気を外部に放出する役割を果たす。尚、本体12Aの底部を開口させない場合には、その開口のための切断は行わない。
【0053】
したがって、上記製造方法を用いれば、多数の樹脂断片3によって形作られる中空樹脂成形品1を製造することができる。この場合、この中空樹脂成形品1は、多数の樹脂断片3により成形されるため、複数の孔5A(樹脂断片3間の隙間5)を有することになり、複数の孔5Aを有する中空樹脂成形品1を、孔5Aあけ作業を特別に行うことなく手軽に得ることができる。
【0054】
また、この中空樹脂成形品1は、加熱下での回転成形において、原料材料を、色彩又は模様が異なる複数種類の樹脂断片3を混合したものとし、それらを結合して形作るものであることから、中空樹脂成形品1の表面に、各既存の樹脂成形品表面の元々の色彩、模様等の属性を残すことができ、それら色彩、模様等を新たな中空樹脂成形品の模様等として活用することができる。これに対して、複数種類の既存の樹脂成形品により原料ペレットを再生し、その原料ペレットを、射出成形を行うために溶融させた場合には、各既存の樹脂成形品における元々の多様な色彩、模様等が単一色となって、もはや、その多様な色彩、模様等を再生樹脂成形品において有効に利用できなくなる。
【0055】
その一方で、金型7内に投入すべき原料材料を多数の樹脂断片3で済むことから、その原料材料(多数の樹脂断片3)を得るに当たり、廃棄樹脂成形品(既存の樹脂成形品を含む)を細断することにとどめることができ、多種多様な処理、作業を行う原料ペレット化作業を不要にすることができる。また、金型7を加熱しつつ回転させることにより、多数の各樹脂断片3同士の接触部を溶融結合させつつ、その多数の樹脂断片3をガイド面としての型の内壁面に付着させることから、前述の通り、成形品が中空樹脂成形品1に限られるものの、原料材料の溶融に関し、その原料材料としての樹脂断片3同士の結合部分にとどめ、全体を溶融樹脂にするまで加熱する加熱処理を不要にできると共に、溶融樹脂を金型内に押出す押出処理(加圧処理)自体を不要にできる。このため、廃棄樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造する場合、当該製造方法を用いれば、従前以上に製造負担を軽減することができる。
【0056】
以上形態について説明したが本発明においては、次の態様を包含する。
(1)樹脂によって樹脂断片結合体6を被覆処理するに当たり、その被覆処理を樹脂断片結合体6の内壁面及び外壁面、又は樹脂断片結合体6の外壁面に対して行うこと。
(2)被覆処理を樹脂断片結合体6の外壁面に対して行う場合において、樹脂成形品をその種類(機能、グレード等)に応じて色分けするときには、各樹脂成形品に応じた色彩の被覆樹脂を用い、樹脂成形品を色分けしないときには、被覆樹脂として透明樹脂を用いること。
(3)被覆処理を樹脂断片結合体6の外壁面に対して行う場合において、被覆処理として、金型7による加熱下での回転成形を用いるときには、先ず、被覆樹脂を金型7内に入れて、金型7の内壁面に沿って被覆層を形成し、その後、多数の樹脂断片3を金型7内の被覆層内に投入して、前述の実施形態で述べたように、金型7による加熱下での回転成形を行うこと。さらに、樹脂断片結合体6の内壁面も樹脂により被覆するときには、その樹脂断片結合体6の成形後、その樹脂断片結合体6内に被覆樹脂を入れて金型7による加熱下での回転成形を行うことになる。
(4)樹脂断片結合体6に対する被覆処理として、吹き付け、塗布等、種々の方法を用いること。
(5)金型7に投入する多数の樹脂断片3の色彩を、製品となる樹脂成形品(樹脂断片結合体6)の種類(機能、グレード等)に応じて変えて、色分けを行うこと。
(6)樹脂断片3の形成に用いられる廃棄樹脂成形品として、ペットボトルキャップ以外の樹脂成型品を用いること。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造するに当たり、極力、製造負担を軽減することに利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 中空樹脂成形品
3 樹脂断片
5 隙間
5A 孔
6 中空の樹脂断片結合体
7 金型
【要約】
【課題】廃棄樹脂成形品を含む既存の樹脂成形品を原料材料として新たな樹脂成形品を製造するに当たり、極力、製造負担を軽減する。
【解決手段】既存の樹脂成形品を細断して、原料材料として多数の樹脂断片3を用意し、その多数の樹脂断片3を金型7内に入れて金型7を加熱しつつ回転させ、その金型7の加熱下での回転により、多数の各樹脂断片3同士の接触部分を溶融結合させつつ、多数の樹脂断片3を金型7の内壁面に付着させて、金型7の内壁面形状に相応し且つ樹脂断片3間に隙間5を有する中空の樹脂断片結合体6を形成し、その後、中空の樹脂断片結合体6を中空樹脂成形品1として取り出す。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7