IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルオヤン セイウェイ バイオテクノロジーズ コーポレーション リミテッドの特許一覧

特許7290728免疫アジュバント組成物及びその調製方法並びに応用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】免疫アジュバント組成物及びその調製方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20230606BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 39/187 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/00 J
A61P31/04 171
A61K39/12
A61K39/187
A61K39/245
A61P37/04
A61P31/12 171
A61P31/14
A61P31/20
A61K47/24
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021535104
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2019083106
(87)【国際公開番号】W WO2020133817
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】201811583863.0
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521264361
【氏名又は名称】ルオヤン セイウェイ バイオテクノロジーズ コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ケゴン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ヨンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン スーケー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104524563(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1367022(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/39
A61K 39/00
A61P 31/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジュバント組成物であって、
前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.5%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有する、アジュバント組成物。
【請求項2】
前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.4%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有し、好ましくは、前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.2%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有し、より好ましくは、前記アジュバント組成物は、0.4%w/vのカルボマーと、0.1%w/vのレシチンと、0.05%w/vのジンセノサイドとを含有する、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記アジュバント組成物は、0.05%~0.2%w/vのポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体を更に含有する、請求項1又は2に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
第1のワクチン組成物であって、
前記第1のワクチン組成物は、30%~70%w/wの請求項1から3のいずれか一項に記載のアジュバント組成物と、免疫量の不活化抗原又はサブユニット抗原とを含有し、好ましくは、前記第1のワクチン組成物中のアジュバント組成物の含有量は、50%w/wである、第1のワクチン組成物。
【請求項5】
前記不活化抗原は、豚サーコウイルス抗原、マイコプラズマ・ハイオニューモニ抗原又は豚偽狂犬病ウイルス抗原である、請求項4に記載の第1のワクチン組成物。
【請求項6】
前記第1のワクチン組成物は、0.2%w/vのカルボマーと、0.05%w/vのレシチンと、0.015%~0.05%w/vのジンセノサイドと、100μg/mlのPCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原とを含有する、請求項4に記載の第1のワクチン組成物。
【請求項7】
前記第1のワクチン組成物は、0.2%w/vのカルボマーと、0.05%w/vのレシチンと、0.025%w/vのジンセノサイドと、0.025%~0.1%w/vのポリイノシン酸:ポリシチジル酸又はその誘導体と、100μg/mlのPCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原とを含有する、請求項4に記載の第1のワクチン組成物。
【請求項8】
第2のワクチン組成物であって、
前記第2のワクチン組成物は、請求項4から7のいずれか一項に記載の第1のワクチン組成物と、免疫量の生ウイルスワクチンとを含む、第2のワクチン組成物。
【請求項9】
前記生ウイルスワクチンは、豚繁殖・呼吸障害症候群生ワクチン、豚コレラ生ワクチン又は仮性狂犬病生ワクチンであり、好ましくは、前記豚繁殖・呼吸障害症候群生ワクチンは、JXA1-R株であり、前記豚コレラ生ワクチンは、家兎化豚コレラウイルス弱毒株であり、前記仮性狂犬病生ワクチンは、Bartha-K61株である、請求項8に記載の第2のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用調剤の分野に属し、免疫アジュバント組成物及びその調製方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
「アジュバント」とは、抗原に対する体液性又は細胞性免疫応答を高める物質を意味する。アジュバントは、通常、注射部位からの抗原の放出制御と、免疫系の刺激との2つの目標を達成するために用いられる。注射用の鉱物油を含有する動物用のアジュバントは強い副反応を有するため、Seppicの商品GEL01アジュバントを含む、例えば商品名がカルボマーで、型番が934であるものを代表とするポリアクリル酸アジュバントといった水性アジュバントが開発されている。然しながら、この種の水性アジュバントは、一部の抗原に対してのみ有効であり、他の抗原に対しては効果が比較的低く、なお、ポリアクリル酸溶液は、等張液に長時間置かれると、粒子が大きくなりやすく、分層及び沈殿が形成されて、アジュバント効果に影響を及ぼす。
【0003】
例えば、「ジンセン茎葉サポニンによる口蹄疫及びニューカッスル病のオイルアジュバントワクチン免疫効果の改善に関する研究」(Li Yutao等、2012)を参照し得るように、ジンセノサイドは獣医用アジュバントとしても使用されるが、ジンセノサイドがアジュバントの作用を発揮するには、オイルアジュバントと一緒に使用されて初めて作用が具現され得る。
【0004】
動物ストレスを軽減するために、不活化ワクチンを生ワクチンの希釈剤として使用することで、「生ワクチン+不活化ワクチン」の方式を実現するが、これは、不活化ワクチンのアジュバント自体にウイルスを死滅させる活性がないことを必要とするが、通常、サポニンには溶血特性がある。例えば、常用的なクイルQuil Aは、コレステロールとレシチンとを加えてISCOMに調製された後、ウイルスを死滅させる活性は低下するが、実験により、当該複合物が依然として一定のウイルスを死滅させる活性を持ち、生ワクチンの希釈剤として使用できないことが発見された。
【0005】
免疫は複雑性を有し、同じ抗原と異なるアジュバントとが互いに聯合されると、相乗作用を持つものもあれば、拮抗作用を持つものもある。なお、異なる抗原はその免疫メカニズムが異なるため、選択されるアジュバントも異なる。したがって、本技術分野では、不活化ワクチンとワクチン組成物に組成された後に生ワクチンを希釈し、有効期間内で安定さを維持しながらも常用的な抗原に対していずれも著しい増強作用を持つとともに、容易に調製され得る免疫アジュバントを必要とする。先行技術で開示されているアジュバントが多いが、如何にこれらの3つの面の問題を同時に解決するかは当業者にとって依然として難題である。
【発明の内容】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、アジュバント組成物を提供する。前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.5%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有する。
【0007】
本発明者は、カルボマー及びレシチンの溶液にジンセノサイドを加えると、アジュバントが清らかになり、アジュバントの安定性が改善され、且つ、この濃度下でジンセノサイド単独では免疫増強作用がないが、安定剤の役割を果たし得ることを予期せず発見した。ジンセノサイドの添加は、一定量の範囲(0.03%~0.2%w/v)で安定化の役割を果たすが、この量の範囲は、カルボマー及びレシチンの濃度とはあまり関係がなく、そして、ジンセノサイドがいかなる免疫増強作用のある化学組成物の成分でもないことが発見された。
【0008】
本発明に係るアジュバント組成物と抗原とは、30~70:50の体積比で配合され得、4℃で最大12ヶ月間のワクチンの澄清さ及び安定さを保証し、25℃で最大6ヶ月間のワクチンの安定さを保証し、37℃で3ヶ月間のワクチンの安定さを保証できるだけでなく、その中の不活化抗原及びサブユニット抗原が高力価抗体を産生して免疫保護を行うように刺激することができる。
【0009】
本発明に係るアジュバント組成物において、カルボマーの含有量の範囲は、0.2%w/v、0.25%w/v、0.3%w/v、0.35%w/v、0.4%w/v、0.45%w/v、0.5%w/vから選択され得る。レシチン含有量の範囲は、0.1%w/v、0.15%w/v、0.2%w/v、0.25%w/v、0.3%w/v、0.35%w/v、0.4%w/v、0.45%w/v、0.5%w/vから選択され得る。ジンセノサイドの含有量の範囲は、0.03%w/v、0.04%w/v、0.05%w/v、0.06%w/v、0.07%w/v、0.08%w/v、0.09%w/v、0.1%w/v、0.11%w/v、0.12%w/v、0.13%w/v、0.14%w/v、0.15%w/v、0.16%w/v、0.17%w/v、0.18%w/v、0.19%w/v、0.2%w/vから選択され得る。
【0010】
本発明の一実施形態として、本発明に係るアジュバント組成物において、前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.4%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態として、本発明に係るアジュバント組成物において、前記アジュバント組成物は、0.2%~0.5%w/vのカルボマーと、0.1%~0.2%w/vのレシチンと、0.03%~0.2%w/vのジンセノサイドとを含有する。
【0012】
本発明のより好ましい実施形態として、本発明に係るアジュバント組成物において、前記アジュバント組成物は、0.4%w/vのカルボマーと、0.1%w/vのレシチンと、0.05%w/vのジンセノサイドとを含有する。
【0013】
本発明の一実施形態として、本発明に係るアジュバント組成物において、前記アジュバント組成物は、0.05%~0.2%w/vのポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体を更に含有する。
【0014】
本発明に係るアジュバント組成物において、本発明に係るポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体の含有量の範囲は、0.05%w/v、0.06%w/v、0.07%w/v、0.08%w/v、0.09%w/v、0.10%w/v、0.11%w/v、0.12%w/v、0.13%w/v、0.14%w/v、0.15%w/v、0.16%w/v、0.17%w/v、0.19%w/v、0.2%w/vから選択され得る。
【0015】
本発明に係るアジュバント組成物は、ポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体を添加した後、その中の不活化抗原及びサブユニット抗原が高力価抗体を産生するようにさらに刺激することができ、免疫効果が著しい。
【0016】
本発明は、第1のワクチン組成物を更に提供する。前記第1のワクチン組成物は、30~70%w/wの前記アジュバント組成物と、免疫量の不活化抗原又はサブユニット抗原とを含有する。
【0017】
本発明の一実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記アジュバント組成物の含有量は、50%w/wである。
【0018】
本発明に係るアジュバント組成物において、前記アジュバント組成物の含有量は、30%w/w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、55%w/w、60%w/w、65%w/w、70%w/wから選択され得る。
【0019】
本発明に係る第1のワクチン組成物は、1回の免疫を経ることで保護を産生することができる。
【0020】
本発明の一実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記不活化抗原は、豚サーコウイルス抗原、マイコプラズマ・ハイオニューモニ抗原又は豚偽狂犬病ウイルス抗原である。
【0021】
本発明に係るアジュバント組成物は、多様な不活化抗原又はサブユニット抗原と組み合わせて使用され得、これらの抗原の免疫効果を効果的に増強できる。これらの抗原は、豚サーコウイルス抗原、マイコプラズマ・ハイオニューモニ抗原、豚偽狂犬病ウイルス抗原、ヘモフィルス・パラスイス抗原、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス抗原、豚パルボウイルス抗原、パスツレラ・ムルトシダ抗原、豚レンサ球菌抗原、豚ブドウ球菌抗原、気管支敗血症菌抗原、サルモネラ コレラエスイス抗原、腸炎サルモネラ菌抗原、豚呼吸器コロナウイルス抗原、豚流行性下痢ウイルス抗原、豚ロタウイルス抗原、豚伝染性胃腸炎ウイルス抗原、豚トルクテノ・スス・ウイルス抗原、豚サイトメガロウイルス抗原、脳心筋炎ウイルス抗原、豚インフルエンザウイルス抗原、豚コレラウイルス抗原又はその聯合であり得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記不活化抗原は、豚サーコウイルス2型SH株不活化全粒子ウィルス抗原であり、前記豚サーコウイルス2型SH株の保存番号は、CGMCC No.2389である。
【0023】
豚サーコウイルス2型SH株は、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物学センターに保存されており、保存日は2008年3月4日であり、保存番号はCGMCC No.2389であり、CN101240264Aに開示されている。
【0024】
豚サーコウイルス2型SH株不活化全粒子ウィルス抗原を含有する本発明に係る第1のワクチン組成物は、1回の接種で免疫保護を獲得することができる。
【0025】
本発明の一実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記第1のワクチン組成物は、0.2%w/vのカルボマーと、0.05%w/vのレシチンと、0.015%~0.05%w/vのジンセノサイドと、100μg/mlのPCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原とを含有する。
【0026】
PCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原を含有する本発明に係る第1のワクチン組成物は、1回の接種で免疫保護を獲得することができ、免疫期間は20週間にも達し得る。
【0027】
本発明の好ましい実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記第1のワクチン組成物は、0.2%w/vのカルボマーと、0.05%w/vのレシチンと、0.025%w/vのジンセノサイドと、0.025%~0.1%w/vのポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体と、100μg/mlのPCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原とを含有する。
【0028】
本発明の一実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記第1のワクチン組成物は、0.2%w/vのカルボマーと、0.05%w/vのレシチンと、0.025%w/vのジンセノサイドと、0.025%~0.1%w/vのポリイノシン酸‐ポリシチジル酸又はその誘導体と、不活化前の菌体の含有量が1.5×10CCU/mlであるHN0613株不活化全菌体抗原とを含有し、前記マイコプラズマ・ハイオニューモニHN0613株の保存番号は、CCTCC M2012230である。
【0029】
HN0613株不活化全菌体抗原を含有する本発明に係る第1のワクチン組成物は、副反応なしに、1回の接種で免疫保護を産生することができる。本発明によって調製された不活化ワクチンは、注射中に豚の注射部位に炎症及び赤い腫れを引き起こさず、比較的良い安定性を有し、ワクチンと共に使用されると比較的良い免疫効力を得ることができ、大規模生産及び使用を実現し得る。
【0030】
本発明の幾つかの実施例において、第1のワクチン組成物は、例えば界面活性剤、緩衝剤及び安定化化合物といった1つ又は複数の他の組成成分を含み得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態として、本発明に係る第1のワクチン組成物において、前記ワクチン組成物は、界面活性剤、緩衝剤及び安定化化合物を更に含む。
【0032】
本発明は、第2のワクチン組成物を更に提供する。前記第2のワクチン組成物は、前記第1のワクチン組成物と、免疫量の生ウイルスワクチンとを含む。
【0033】
本発明に係るアジュバント組成物は、ウイルスを死滅させる活性がなく、豚コレラ、豚偽狂犬病ウイルス生ワクチンの希釈に使用され得る。本発明に係るアジュバント組成物と、不活化抗原又はサブユニット抗原と組み合わされたワクチン複合物は、生ワクチンを希釈するために使用され得るが、参照希釈液と比較することによって、本発明に係るアジュバント組成物のウイルス活性に対する影響を評価したところ、差分値がいずれも0.7log10(ヨーロッパ獣医用ワクチン標準)以下である。
【0034】
本発明の一実施形態として、本発明に係る第2のワクチン組成物において、前記生ウイルスワクチンは、豚繁殖・呼吸障害症候群生ワクチン、豚コレラ生ワクチン又は仮性狂犬病生ワクチンである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態として、本発明に係る第2のワクチン組成物において、前記豚繁殖・呼吸障害症候群生ワクチンは、JXA1-R株であり、前記豚コレラ生ワクチンは、家兎化豚コレラウイルス弱毒株であり、前記仮性狂犬病生ワクチンは、Bartha-K61株である。
【0036】
本発明は、前記アジュバント組成物の調製方法を更に提供する。前記調製方法は、
a)アクリル重合体を水に溶解してアクリル重合体溶液を調製し、アクリル重合体水溶液に調製するステップと、
b)レシチンをエタノールに溶解して、レシチンエタノール溶液に調製するステップと、
c)ジンセノサイドを水に溶解して、ジンセノサイド水溶液に調製するステップと、
d)アクリル重合体水溶液と、レシチンエタノール溶液と、ジンセノサイド水溶液とを併合するステップとを含む。
【0037】
本発明に係るアジュバントは、鉱物油及び代謝可能な油を含有せず、配合製造の面で乳化設備が要らなく、配合製造過程が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
定義
用語「アジュバント」とは、抗原と共に投与される時、この抗原に対する被験者の免疫応答を増強させる化合物を指す。アジュバント媒介の免疫反応増強は、以下の(i)から(iv)のうちの1つ以上の方法を含む(これらに限定されない)、当技術分野で知られている任意の方法によって評価され得る:(i)単独的な抗原で免疫反応により産生される抗体の数に比べ、アジュバントと抗原の組み合わせで免疫反応により産生される抗体の数が増加、(ii)抗原又はアジュバントを識別するT細胞の数が増加、(iii)1つ又は複数のI型サイトカインの含有量が増加、(iv)刺激後、体内(in vivo)の保護役割。単独的な抗原により刺激された被験者に比べ、被験者が抗原とアジュバントとにより刺激される場合、抗原特異的免疫反応性の任意の測定可能パラメーター、例えば抗体価やT細胞産生が少なくとも10%増加すると、免疫反応が増強されたと見なされる。本発明の幾つかの実施例において、抗原特異的免疫反応性の任意の測定可能パラメーターが少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも350%、少なくとも400%、少なくとも450%、少なくとも500%又は少なくとも1000%増加すると、免疫反応が増強される。
【0039】
「アクリル系重合体」とは、アクリル系部分を含有する任意の重合体又は共重合体を指す。例示的なアクリル系重合体は、例えば、ポリアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリレート、アクリロニトリル及びポリアクリル酸のアルキルエステルを含む。アクリル酸系共重合体の例は、例えば、ポリアクリルアミドとメタクリル酸ブチルとの共重合体、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体及びポリメタクリル酸エステルを含む。市販のアクリル酸系重合体の例は、ポリアリルスクロースと架橋されたアクリル酸の水溶性重合体として当技術分野で一般的に指されかつ知られているカルボマーを含む。その使用量は、通常、約0.0001%体積比(v/v)乃至約75%v/vである。他の実施方案において、その使用量は、約0.001%v/v乃乃至約50%v/v、約0.005%v/v乃至約25%v/v、約0.01%v/v乃至約10%v/v、約0.05%v/v乃至約2%v/v、及び約0.1%v/v乃至約0.75%v/vから選択される。別の実施方案において、その使用量は、約0.02%v/v乃至約0.4%v/vである。
【0040】
用語「レシチン」とは、例えば大豆又は卵黄からのレシチンといったホスファチジルコリンとも称される。粗植物油を水洗してから得られた水和ゲルを分離乾燥することによって、リン脂質とトリグリセリドとの混合物であるレシチンを得ることができる。アセトン洗浄によりトリグリセリド及び植物油を除去した後、残りのアセトン不溶性リン脂質とグリセリドとの混合物を分別することで、精製された産物を得ることができる。或いは、異なる商品ソースからレシチンを取得し得る。レシチンの使用量は、通常、約0.001%v/v乃至約50%v/v、約0.005%v/v乃至約25%v/v、約0.01%v/v乃至約10%v/v、約0.05%v/v乃至約2%v/v及約0.1%v/v乃至約0.75%v/vから選択される。別の実施方案において、その使用量は、約0.02%v/v乃至約0.4%v/vである。
【0041】
用語「ジンセノサイド」(Ginsenoside)とは、ステロイド化合物であるトリテルペンサポニンであって、主に人参茎葉サポニンと人参根サポニンとを含む人参属の薬材に存在する。商品化された人参茎葉総サポニン及び人参総サポニンの品質標準は中華人民共和国薬典に収録されている。ジンセノサイドの使用量は、通常、約0.03%v/v乃至約0.2%v/v、約0.01%v/v乃至約0.05%v/v、約0.05%v/v乃至約0.1%v/v、約0.03%v/v乃至約0.2%v/vから選択される。
【0042】
本明細書に記載されるように、「ポリイノシン酸-ポリシチジル酸又はその誘導体」は、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸、「PICKCa」、ポリイノシン酸ポリシチジル酸ナトリウム塩(CAS 42424-50-0、キトサンオリゴ糖-カナマイシン-ポリイノシン酸-ポリシチジル酸ナトリウム塩複合物)を含むが、これらに限定されず、ここで、PICKCaという用語は、一般的に、PICと、カナマイシンと塩化カルシウムとから構成される複合物を指す。「ポリI:C」又は「PIC」等の用語は、ポリリボイノシンとポリリボシチジル酸とを含有する組成物を指し、それぞれポリイノシン酸-ポリシチジル酸とも称される。使用量は、通常、単位用量あたり約1マイクログラム乃至約5000マイクログラムである。その使用量は、単位用量あたり約1マイクログラム乃至約4000マイクログラム、単位用量あたり約1マイクログラム乃至約3000マイクログラム、単位用量あたり約1マイクログラム乃至約2000マイクログラム及び単位用量あたり約1マイクログラム乃至約1000マイクログラムから選択されても良い。その使用量は、単位用量あたり約5マイクログラム乃至約750マイクログラム、単位用量あたり約5マイクログラム乃至約500マイクログラム、単位用量あたり約5マイクログラム乃至約200マイクログラム、単位用量あたり約5マイクログラム乃至約100マイクログラム、単位用量あたり約15マイクログラム乃至約100マイクログラム、及び単位用量あたり約30マイクログラム乃至約75マイクログラムから選択されても良い。
【0043】
用語「ワクチン組成物」は、レシピエントにおいて保護性免疫を誘発するために使用可能な組成物である。したがって、被験者が抗原を接種した後、ワクチンは、同じ又は関連する抗原に露出された被験者の疾患進行の重症度を予防、遅延又は軽減することができる(ワクチンを接種していない被験者に対して)。ワクチンによって提供される保護性免疫は、体液(抗体媒介)免疫又は細胞免疫、或いはその両方ともから産生され得る。
【0044】
用語「抗原」とは、被験者に導入された時、宿主の免疫システムによって識別され得、免疫反応を誘発し且つ保護性免疫を産生可能な薬剤を指す。抗原は、病原体の表面又は感染された細胞の表面又は腫瘍細胞の表面で自然に発現される「表面抗原」を含むが、これらに限定されない。抗原は、保護性免疫の疾患病原体及び/又は病状を誘発し得、その非限定的な例は、豚サーコウイルス抗原、マイコプラズマ・ハイオニューモニ抗原、豚偽狂犬病ウイルス抗原、ヘモフィルス・パラスイス抗原、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス抗原、豚パルボウイルス抗原、パスツレラ・ムルトシダ抗原、豚レンサ球菌抗原、豚ブドウ球菌抗原、気管支敗血症菌抗原、サルモネラ コレラエスイス抗原、腸炎サルモネラ菌抗原、豚呼吸器コロナウイルス抗原、豚流行性下痢ウイルス抗原、豚ロタウイルス抗原、豚伝染性胃腸炎ウイルス抗原、豚トルクテノ・スス・ウイルスウイルス抗原、豚サイトメガロウイルス抗原、脳心筋炎ウイルス抗原、豚インフルエンザウイルス抗原、豚コレラウイルス抗原又はその聯合である。
【0045】
幾つかの実施例において、抗原は、豚サーコウイルス抗原である。
【0046】
幾つかの実施例において、抗原は、マイコプラズマ・ハイオニューモニ抗原である。
【0047】
幾つかの実施例において、抗原は、豚偽狂犬病ウイルス抗原である。
【0048】
以下、具体的な実施例と併せて本発明をさらに説明することにする。本発明の利点及び特徴は、説明とともにより明確になるであろう。但し、これらの実施例は単に例示的なものであり、本発明の範囲に対するいかなる制限も構成しない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の技術方案の詳細及び形態に対する修正又は置換を行えるが、これらの修正及び置換は全て本発明の保護範囲に収まることを理解すべきである。
【0049】
本発明の実施例で使用される化学試薬は、いずれも分析純であり、中国国家医薬集団(シノファームグループ)から購入されている。
【0050】
本発明をより理解しやすくするために、以下では、具体的な実施例と併せて本発明をさらに説明することにする。本発明に記載の実験方法は、別段の説明がない限り、いずれも従来の方法である。本発明に記載の生物材料は、別段の説明がない限り、いずれも商業的ルートから入手され得る。
【0051】
実施例1 カルボマー溶液の調製
1gのカルボマー934を50mlの水に加え、攪拌して溶解させてから、1.5gの塩化ナトリウム溶液を加え、水酸化ナトリウム溶液でpHを7.0に調整し、オートクレーブした後、必要に備えておき、含有量は2%w/vである。
【0052】
実施例2 レシチンエタノール溶液の調製
5gのレシチン(PC90、中国江蘇曼氏バイオテクノロジー株式会社製)を100mlのエタノールに加え、撹拌して溶解させ、0.22ミクロンの濾膜で濾過した後、必要に備えておき、含有量は5%w/vである。
【0053】
実施例3 ジンセノサイド溶液の調製
1gの人参茎葉サポニン(総サポニンの76.7%を含有、中国吉林省宏久バイオテクノロジー株式会社製)を100mlの水に加え、撹拌して溶解させ、0.22ミクロンの濾膜で濾過した後、必要に備えておき、含有量は1%w/vである。
【0054】
実施例4 ポリイノシン酸-ポリシチジル酸水溶液
1gのポリイノシン酸-ポリシチジル酸(中国杭州美亜製薬有限会社)を100mlの水に加え、撹拌して溶解させ、0.22ミクロンの濾膜で濾過した後、必要に備えておき、含有量は1%w/vである。
【0055】
実施例5 レバミゾール水溶液
1.8gの塩酸レバミゾールを80mlの水に加え、攪拌して溶解させ、0.5Mの水酸化ナトリウム溶液でpHを7.0に調整し、注射用水で100mlに定容し、0.22ミクロンの濾膜で濾過した後、必要に備えておき、含有量は1.8%w/vである。
【0056】
実施例6 Quil A溶液
0.6gのQuil Aを100mlの水に加え、攪拌して溶解させ、0.22ミクロンの濾膜で濾過した後、必要に備えておき、含有量は0.6%w/vである。
【0057】
実施例7 アジュバントを配合製造し、アジュバントでワクチンを調製して安定性試験を実施
アジュバント組成物を調製する。調製方法としては、表1の量に従ってカルボマー溶液、レシチンエタノール溶液、ジンセノサイド溶液、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸水溶液、レバミゾール水溶液又はQuil A溶液を加え、pHが7であるPBS液を100mlに定容する。カルボマー溶液、レシチンエタノール溶液、ジンセノサイド溶液及びポリイノシン酸-ポリシチジル酸水溶液の添加順序は、厳密に制限されない。
【0058】
【表1】
安定性試験の影響
ワクチンを調製し、ワクチンの安定性試験を行う。豚サーコウイルス2型不活化ワクチン(SH株)抗原を使用し、表1のアジュバントを加え、抗原とアジュバントとの調合比率は、1:1(体積比)であり、混合した後均一に撹拌し、4℃、25℃及び37℃の条件下に置いてその性状の安定性を観察し、7日以内に日ごとに観察し、7日から1ヶ月間、週に1回観察し、その後、月に1回観察する。4℃で1年間、25℃で6ヶ月間、37℃で3ヶ月間観察する。表2を参照し得るように、安定性が不合格な時間を記録する。ここで、前記豚サーコウイルス2型SH株の保存番号は、CGMCC No.2389であり,豚サーコウイルス2型SH株は、中国微生物菌種保存管理委員会の普通微生物センターに保存されており、保存日は、2008年3月4日であり、保存番号は、CGMCC No.2389であり、CN101240264Aに開示されている。
【0059】
【表2】
安定性試験の結果、単にカルボマーで調製されたアジュバントは、安定性試験の4℃下でワクチンに明らかな分層が発生し、カルボマー及びレシチンアジュバントを使用する場合、ワクチンが澄まず、安定性試験で放置されると明らかな分層がある。カルボマーとレバミゾールと及びカルボマーとQuil Aとから構成されたアジュバントは、依然として沈殿が生じる。但し、カルボマーとジンセノサイドとが複方に組み合わされた後調製されたアジュバントで配合製造されたワクチンは澄清になる。ジンセノサイドを加える量は、一定の範囲内である必要があるが、添加量が小さい場合(1ml)、アジュバントで配合製造されたワクチンが依然として澄まず、添加量が大きい場合(30ml)、アジュバントで配合製造されたワクチンに沈殿が生じやすい。
【0060】
実施例8 マウスにおける豚サーコウイルスワクチンに対するアジュバントの免疫増強作用
農業部公告第2442号豚サーコウイルスワクチン、豚サーコウイルス2型不活化ワクチン(SH株、II)品質標準項目下のマウス免疫法に従って、同じ抗原を測定する。豚サーコウイルス2型不活化ワクチン(SH株)抗原を採用し、アジュバントとしては、表1のアジュバント及び表3における比較例6~14のアジュバントを採用し、抗原とアジュバントとの調合比率を1:1(体積比)とし、混合後に均一に撹拌して、試験を行う。
【0061】
【表3】
試験結果は、ジンセノサイド、Quil A、ポリイノシン酸―ポリシチジル酸、レバミゾール水溶液、レシチン溶液のみの使用では、アジュバントの相乗効果が産生されず、マウス抗体力価が著しく増強されておらず、且つジンセノサイド+アルミナゲル抗体力価でも僅かに1:800に達し、ジンセノサイドとカルボマーとの複方マウス抗体力価はカルボマーのみの使用と大差ないが、ジンセノサイド+カルボマー+レシチンの組合せでは、マウスの抗体力価が著しく向上され、ジンセノサイド+カルボマー+レシチン+ポリイノシン酸‐ポリシチジル酸の組み合わせでは、マウスの抗体力価が比較的大幅に向上されることを示している。
【0062】
実施例9 豚サーコウイルスに対する本発明に係るアジュバントによって調製されたワクチン組成物の予防治療役割
表4に従ってワクチンを調製し、豚サーコウイルス抗原としては、CN103173470Aを選んで使用してPCV2タンパク質ウイルス様粒子抗原を調製し、最終的完成品ワクチン1mlに100マイクログラムのPCV2タンパク質が含有される。表4に従ってアジュバントを加え、ワクチン配合製造用のpHが7.0であるPBS液を体積100mlの容量まで添加し、均一に撹拌することでワクチンが調製され得る。21日齢の抗体が陰性である子豚を選び、群あたり10匹として、表4のワクチンを注射し、免疫してから4週目と20週目に採血し、血清を分離してbiochekELISAテストキットで抗体検出を行い、検出結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
判定標準:S/P値≧0.5(力価1071)である場合、陽性と判定、S/P≦0.499(力価1070)である場合、陰性と判定
試験結果から、対照ワクチンA1~C1の3つの群のアジュバントはいずれも1回の免疫で4ヶ月間維持不可能であるのに対して、本発明に係る実験例2~3、6~7のアジュバント組成物で配合製造されたワクチンは20週間維持可能であり、抗体は依然として陽性を呈するが、ワクチンC群及びD群は抗体力価が明らかにより高いことがわかる。
【0064】
実施例10 豚マイコプラズマ肺炎に対する本発明に係るアジュバントによって調製されたワクチン組成物の予防治療役割
マイコプラズマ・ハイオニューモニHN0613株を抗原として選んで使用し(HN0613株の保存番号は、CCTCC M2012230であり、CN104450559Aに開示)、中国特許CN104450559Aの実施例2に係る方法に従って抗原液を調製し、最終的完成品ワクチン2mlに含有される不活化前菌体の含有量は3×10CCUである。表5に従ってアジュバントを加え、ワクチン配合製造用のpHが7.4であるPBS液を体積100mlの容量まで添加し、均一に撹拌することで、ワクチンが調製され得る。14日齢の子豚40匹を選んで、群あたり5匹として、8つの群に分ける。免疫群は7つの群である。対照群は、8番目の群であり、免疫せずに、チャレンジ対照群とされ、具体的な免疫実施形態を表5に示す。
【0065】
【表5】
免疫してから70日後、マイコプラズマ・ハイオニューモニのチャレンジ試験を行い、免疫群及び対照群の子豚に対してCVCC354株(中国獣医薬品監察所から購入)を5ml/匹の用量で気管内注射(100MID)し、チャレンジした後30日間観察してから、試験豚を剖殺し、豚マイコプラズマ肺炎肺病変指数スコアリング標準に従って試験豚の肺病変をスコアリングする。免疫群と対照群とに対して肺病変指数差異分析を行う。
【0066】
【表6】
試験結果によると、ワクチンE、ワクチンF、対照ワクチンE1、対照ワクチンG1はいずれもワンショットの免疫で比較的深刻な肺病変が起こるのに対して、ワクチンG群、ワクチンH群及び対照ワクチンF1群は、肺病変スコアが低く、免疫効果が比較的良いが、対照ワクチンF1群の5匹の豚のうち1匹は、副反応が発生し、発熱、食物摂取量の減少として現れた。これは、本発明の実験例6~7に係るアジュバント組成物により配合製造されたワクチンがマイコプラズマ・ハイオニューモニのチャレンジから保護でき、免疫後に副反応が起こらないことを示している。
【0067】
実施例11 本発明に係るアジュバント組成物のワクチン希釈試験への使用
1.対照アジュバントの調製
比較例Iとして、董▼るー▲により提出された修士論文「豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチン及び生ワクチンアジュバントに関する研究」におけるアジュバント5に従って、カルボマーとISCOMとが含有されるアジュバントを調製し、マイコプラズマ・ハイオニューモニHN0613株を抗原として用いる。
【0068】
比較例IIとして、中国特許CN1305524Cの実施例1に従って、スクアレンと、pluronicL121と、カルボマーとが含有されるアジュバントを調製し、マイコプラズマ・ハイオニューモニHN0613株を抗原として用いる。
【0069】
2.生ワクチン希釈試験
豚繁殖・呼吸障害症候群生ワクチン(JXA1-R株)、豚コレラ生ワクチン(家兎化豚コレラウイルス弱毒株)及び仮性狂犬病生ワクチン(Bartha-K61株)を取って、実施例9及び実施例10で調製されたワクチンA~H及び対照ワクチンA1、G1、I、IIで同時に上記の生ワクチンを希釈させるとともに、同体積の無菌注射用水で上記の生ワクチンを希釈して基準希釈液(無菌注射用水)を得て、使用説明に従って不活化ワクチン部分の1匹分/ボトル(2ml)を復原させる。20±3℃で3時間放置し、3種の生ワクチンのそれぞれの品質標準のウイルス含有量測定方法に従って、2種の希釈液の生ウイルス含有量を測定し、測定結果を表7に示す。
【0070】
【表7】
当技術分野では、基準希釈液と比較することによって、ウイルス活性に対する本発明に係るアジュバント組成物の影響を評価したところ、差分値がいずれも0.7log10(欧州獣医用ワクチン標準)を超えない場合、生ワクチンを希釈する不活化ワクチン又はサブユニットワクチンが合格であると判断することが規定されている。したがって、本発明に係るワクチンは、凍結乾燥された生ウイルス抗原の希釈剤として使用され得る。対照ワクチンI、対照ワクチンII及び対照ワクチンG1は、明らかなウイルスを死滅させる効果があり、生ワクチンを希釈可能な不活化ワクチン又はサブユニットワクチンのアジュバントとして使用されることができない。対照ワクチンA1は、一部の生ワクチンをのみ希釈でき、3種のワクチンを全て希釈することはできない。
【0071】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、いかなる形態においても本発明を限定するものではない。本発明が上記のように好ましい実施例により開示されているが、本発明が限定されることを意図するものではない。この技術分野を熟知している技術者であれば、本発明の技術方案の範囲から逸脱することなく、上記のように開示された技術内容を利用して同等の変更としての等価実施例に変更又は修飾することができるが、本発明の技術方案から逸脱することなしに本発明の技術的実質に基づいて上記の実施例に対して行われた任意の単純な修正、同等の変化及び修飾はすべて本発明の技術方案の範囲内に属する。