(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20230606BHJP
B60R 21/261 20110101ALI20230606BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/261
(21)【出願番号】P 2022505839
(86)(22)【出願日】2021-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2021004469
(87)【国際公開番号】W WO2021181970
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020042631
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】野上 光男
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058433(JP,A)
【文献】特開平11-091488(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035619(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのサイドサポート部に収容されるサイドエアバッグ装置であって、
前記サイドサポート部から前方に向かって膨張展開可能なエアバッグ(33)と;
前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータ(10)と;
圧縮状態の前記エアバッグを保持するブラケットと(100);を備え、
前記インフレータは、前記車両用シートのサイドフレームの内側(乗員側)に固定され、
前記ブラケットは、圧縮状態の前記エアバッグの後方をカバーする後方領域(100a)と、前記エアバッグの内側とシートパッドとの間で前記後方領域から前方に連続的に延びる内側領域(100b)とを有し、
前記ブラケットは、更に、前記後方領域(100a)から前記エアバッグと前記サイドフレームとの間に延びる外側領域(100d)を含み、
前記ブラケットの前記外側領域(100d)は、前記サイドフレームの前縁部(10a)において、前方(車両進行方向)に面する第1の部分(110)を含むことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記エアバッグの前方に開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、前記サイドフレームの外側に設けられることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、当該エアバッグの前縁全域に渡って設けられることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、当該エアバッグの前縁の一部に設けられることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ブラケットの内側領域の前端部(100c)は、圧縮状態の前記エアバッグの前端の近傍まで延びることを特徴とする請求項2,3又は5に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記ブラケットの内側領域の前端部(100c)は、前記サイドフレームの前端の近傍まで延びることを特徴とする請求項4に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記ブラケットの前記後方領域(100a)と前記内側領域(100b)は、圧縮状態の前記エアバッグの外形形状に倣う形に形成されていることを特徴とする請求項1乃至
7の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記ブラケットの前記後方領域(100a)と前記内側領域(100b)は、圧縮状態の前記エアバッグの外形形状に密着するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至
8の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記ブラケットは、前記エアバッグを構成する基布材よりも高剛性の素材によって成形されることを特徴とする請求項1乃至
9の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項11】
前記ブラケットは、圧縮状態の前記エアバッグを保持するのに十分な強度を有するとともに、前記エアバッグの展開によって変形可能であることを特徴とする請求項
10に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項12】
前記ブラケットの後方領域(100b)は、前記インフレータのスタッドボルト(32)に係止されることを特徴とする請求項1乃至
11の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項13】
前記ブラケットの上下方向の幅は、前記インフレータの上下方向の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至
12の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに搭載されるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグとしては、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、サイドエアバッグ装置に関するものである。
【0003】
サイドエアバッグ装置は、シートのサイドサポート部の内部に収容されるため、形状及び大きさの制約が多く、エアバッグを確実に前方に向かって安定した挙動で展開させることが容易ではない。特に、シートのサイドフレームの内側(乗員側)にインフレータ及びエアバッグを収容・配置する場合には、シートの後方又は斜め後方に向かって展開しやすい状況となり、エアバッグの展開挙動(展開方向、展開姿勢)を制御するのが更に困難となる。
【0004】
そこで、サイドエアバッグ装置を硬質なハウジング内に完全に収容した状態でシート中に配置することも考えられる。しかしながら、ハウジングを用いた場合には、モジュール全体として大きくなってしまう他に、エアバッグの展開を阻害しないように、精密に調整された開放部(ドア、窓)を設ける必要があり、構造が複雑になると共に、コストの上昇は避けられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、簡素な構成でありながらエアバッグの展開挙動の安定化を図り得るサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両用シートのサイドサポート部に収容されるサイドエアバッグ装置であって、前記サイドサポート部から前方に向かって膨張展開可能なエアバッグと;前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータと;圧縮状態の前記エアバッグを保持するブラケットと;を備える。前記インフレータは、前記車両用シートのサイドフレームの内側(乗員側)に固定される。そして、前記ブラケットは、圧縮状態の前記エアバッグの後方をカバーする後方領域と、前記エアバッグの内側とシートパッドとの間で前記後方領域から前方に連続的に延びる内側領域とを有する。
【0007】
ここで、「前方に向かって膨張展開可能」とあるが、部分的にシートの内側(乗員側)に向かって展開することを排除するものではない。
【0008】
「圧縮状態」とは、収容時の状態を意味するものであり、折り畳みやロールなどの種々の形態を含む趣旨である。
【0009】
「保持する」とは、圧縮されたエアバッグが広がらないように保持する意味であり、必ずしもエアバッグを圧迫するような力が作用するものではない。
【0010】
「シートパッド」とは、例えば、シートにクッション性を付与するためのウレタン発泡材等からなるクッション材である。また、「エアバッグの内側とシートパッドとの間」とは、両者の間に密着している場合の他、若干の隙間が空いている状態も許容するものである。
【0011】
上記のように、本発明においては、圧縮状態のエアバッグの後方をカバーする後方領域と、エアバッグの内側とシートパッドとの間で後方領域から前方に連続的に延びる内側領域とを有するブラケットを備えているため、エアバッグが展開を開始すると、ブラケットの後方領域を反力面として当該エアバッグが前方に向かって確実且つ効率的に展開することになる。また、ブラケットの内側領域の存在により、エアバッグが当該内側領域に沿って前方に展開しやすくなる。すなわち、エアバッグが展開を開始したときに、エアバッグの後方部分が後方又は斜め後方に向かって展開することを防止することができる。その結果、エアバッグの展開形状、展開姿勢が良好な状態となり、更に、エアバッグの展開速度が向上するというメリットがある。
【0012】
前記ブラケットは、前記エアバッグの前方に開口部を有する構造とすることができる。
【0013】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、前記サイドフレームの外側に設けることができる。
【0014】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、当該エアバッグの前縁全域に渡って設けることができる。
【0015】
前記開口部は、圧縮状態の前記エアバッグの水平断面を上方から見た時に、当該エアバッグの前縁の一部に設けることができる。
【0016】
前記ブラケットの前記後方領域と前記内側領域は、圧縮状態の前記エアバッグの外形形状に倣う形に形成することができる。また、前記ブラケットの前記後方領域と前記内側領域は、圧縮状態の前記エアバッグの外形形状に密着するように形成することができる。このように、ブラケットを圧縮状態のエアバッグの形状に倣うようにし、又は密着させることにより、確実にエアバッグを保持できると共に、エアバッグ装置(モジュール)をコンパクトに収めることが可能となる。
【0017】
前記ブラケットは、前記エアバッグを構成する基布材よりも高剛性の素材によって成形されることが好ましい。
【0018】
ここで、ブラケットを成形する素材の「高剛性」とは、ブラケットが圧縮状態のエアバッグを保持するのに十分な強度を有するとともに、エアバッグの展開によって変形可能な程度の剛性を意味するものである。例えば、不織布等の柔軟な素材からなるカバーは、本発明のブラケットには含まれない。また、エアバッグ全体を完全に収容するハウジングのようなカバーについても、本発明のブラケットには含まれない。
【0019】
前記ブラケットは、樹脂、金属又は樹脂と金属との混合材料によって成形することができる。なお、本発明における新規なブラケットが本来の機能を発揮するものであれば、上記材料以外の材料を使用することも可能である。
【0020】
前記ブラケットの後方領域は、前記インフレータのスタッドボルトに係止される構造とすることができる。例えば、ブラケットの後端部に孔を形成し、その孔にインフレータのスタッドボルトを挿通させることで、部品点数を増加させることなく、簡素な構造でブラケットを固定することができる。
【0021】
前記ブラケットの内側領域の前端部は、圧縮状態の前記エアバッグの前端近傍まで延びるように構成することができる。このような構造とすれば、エアバッグが内側領域に沿って前方に向かって、より確実に展開することになる。
【0022】
前記ブラケットの内側領域の前端部は、前記サイドフレームの前端近傍まで延びる構造とすることができる。このような構成とすれば、ブラケットによって必要最小限の範囲でエアバッグを保持し、更に、エアバッグの展開をガイドすることができる。仮に、ブラケットの内側領域の前端部がサイドフレームの前端まで達していないと、シートの内側に向かって展開しやすくなってしまう。
【0023】
前記ブラケットは、更に、前記後方領域から前記エアバッグと前記サイドフレームとの間に延びる外側領域を含むことができる。ブラケットの外側領域を設けることにより、エアバッグはブラケットの内側領域と外側領域の両方にガイドされつつ前方に展開するため、エアバッグの前方への展開制御(ガイド)がより確実なものとなる。
【0024】
前記ブラケットの前記外側領域は、前記サイドフレームの前縁部において、前方(車両進行方向)に面する第1の部分を含むことができる。このような第1の部分を設けることにより、サイドフレームよりも前方に位置するエアバッグの部分が、当該第1の部分を反力面として前方に向かって速やか且つ確実に展開することとなる。
【0025】
前記ブラケットの上下方向の幅は、前記インフレータの上下方向の長さよりも大きくすることが好ましい。このような構成とすることにより、インフレータから噴出したガスの圧力をブラケットの後方領域で確実に支えることが可能となる。仮に、ブラケットの上下方向の幅がインフレータの上下方向の長さよりも小さい場合には、インフレータから噴出したガスの一部が直接エアバッグの内面に達するため、当該部分が後方に膨張し、エアバッグの展開姿勢を制御するのが困難となる。
【0026】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向(車両の進行方向)を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。左右方向において、シートのサイドフレームより乗員側の領域を「内」とし、サイドフレームから見て乗員とは反対の領域を「外」を示すものとする。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0027】
本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側(外側)に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプを含むものとする。シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。
【
図2】
図2は、
図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。
【
図3】
図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、サイドエアバッグ装置が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を概略的に示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、
図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。
【
図5】
図5(A)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の収容状態を示す断面図であり、
図4の一部を拡大して示すものである。また、
図5(B),(C)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の他の実施例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の収容状態を示す概略図であり、後方から観察した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20の図示は省略する。
図2は、
図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグ装置(エアバッグモジュール)20の図示は省略する。
図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、左側座席のドアに近い側面(ニアサイド)にエアバッグ装置(エアバッグモジュール)20が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
【0031】
本実施例に係る車両用シートは、部位として観たときには、
図1及び
図2に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と、シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とによって構成されている。
【0032】
図2に示すように、シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド16(
図4参照)が設けられ、当該パッド16の表面は皮革、ファブリック等の表皮14(
図4参照)によって覆われている。シートクッション2の底側には着座フレーム2fが配置され、シートバック1と同様に、その上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮14(
図4参照)によって覆われている。着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
【0033】
シートバックフレーム1fは、
図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト3が構成される。
【0034】
図4は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、
図3のA1-A1方向の断面の一部に対応する。
図5(A)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の収容状態を示す断面図であり、
図4の一部を拡大して示すものである。
【0035】
図4に示すように、シートバック1は、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部12を備える。サイドサポート部12の内部には、ウレタンパッド16が配置され、ウレタンパッド16の隙間にサイドエアバッグ装置20が収容される。サイドエアバッグ装置20は、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグ33と;エアバッグ33に対して膨張ガスを供給するインフレータ30とを備える。
【0036】
サイドフレーム10は、樹脂又は金属によって成形され、
図4に示すようにコの字又はL字状の断面形状とすることができる。サイドフレーム10の内側(シート中心側)には、スタッドボルト32によってインフレータ30が固定される。
【0037】
シートバック1の表皮14の継ぎ目18,22,24は内側に織り込まれて縫製によって連結されている。前方の継ぎ目18は、エアバッグが展開した時に開裂するようになっている。
図4において、符号25はドアトリムを示すものとする。
【0038】
本発明に係るサイドエアバッグ装置20は、圧縮状態のエアバッグ33を保持するブラケット100を備えている。ブラケット100は、圧縮状態のエアバッグ33の後方をカバーする後方領域100aと、エアバッグ33の内側とシートパッド16との間で後方領域100aから前方に連続的に延びる内側領域100bとを有する。
【0039】
ブラケット100は、エアバッグ33を構成する基布材よりも高剛性の素材によってシート状に成形される。ここで、「高剛性」とは、ブラケット100が圧縮状態のエアバッグ33を保持するのに十分な強度を有するとともに、エアバッグ33の展開によって変形可能な程度の剛性である。ブラケット100は、樹脂、金属又は樹脂と金属との混合材料によって成形することができる。例えば、厚さ約0.5mmの電気亜鉛鍍金鋼板(SECC)や冷間圧延鋼板(SPCC)をブラケット100の素材として使用することができる。
【0040】
ブラケット100の後方領域100aは、インフレータ30のスタッドボルト32に係止される構造であり、ブラケット100の後端部に2つの孔を形成し、その孔にインフレータ30のスタッドボルト32を挿通させることで、ブラケット100を固定することができる。
【0041】
ブラケット100の後方領域100aと内側領域100bは、圧縮状態のエアバッグ33の外形形状に密着して倣う形に形成される。このように、ブラケット100を圧縮状態のエアバッグ33の形状に倣うように密着させることにより、確実にエアバッグ33を保持できると共に、エアバッグ装置(モジュール)をコンパクトに収めることが可能となる。
【0042】
図5(A)に示すように、ブラケット100の内側領域100bの前端部100cは、圧縮状態のエアバッグ33の前端33a近傍まで延びている。この場合、エアバッグ33が内側領域100bに沿って前方により確実に展開することが可能となる。なお、
図5(A),(B),(C)において、ブラケット100の各領域(100a,100b,100d)については、大まかな範囲を破線で囲んで示している。
【0043】
図5(B),(C)は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の他の実施例を示す断面図である。
図5(B)に示す実施例では、ブラケット100の内側領域100bの前端部100cが、サイドフレーム10の前端10a近傍まで延びる構造となっている。この場合、ブラケット100により、必要最小限の範囲でエアバッグ33を保持し、且つ当該エアバッグ33の展開をガイドすることができる。仮に、ブラケット100の内側領域100bの前端部100cがサイドフレーム10の前端10aまで達していないと、エアバッグ33がシートの内側への展開が過剰になりやすく、前方への展開が遅くなる恐れがある。
【0044】
図5(C)に示す実施例では、ブラケット100が、後方領域100aからエアバッグ33とサイドフレーム10との間に延びる外側領域100dを含む構成となっている。ブラケット100に外側領域100dを設けることにより、エアバッグ33はブラケット100の内側領域100bと外側領域100dの両方の間でガイドされつつ前方に展開するため、エアバッグ33の前方への展開制御(ガイド)がより確実なものとなる。
【0045】
ブラケット100の外側領域100dは、サイドフレーム10の前縁部10aにおいて、前方(車両進行方向)に面する第1の部分110を含んでいる。これにより、サイドフレーム10よりも前方に位置するエアバッグ33の部分が、当該第1の部分110を反力面として前方に確実に展開することとなる。
【0046】
図6は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の収容状態を示す概略図であり、後方から観察した様子を示す。
図6に示すように、ブラケット100の上下方向の幅(高さ)は、インフレータ30の上下方向の長さよりも大きくなっている。この場合、インフレータ30の外周部分からから噴出したガスの圧力が、ブラケット100の後方領域100aによって支えられる。仮に、ブラケット100の上下方向の幅がインフレータ30の上下方向の長さよりも小さい場合には、インフレータ30から噴出したガスの一部が直接エアバッグ33の内面に達するため、エアバッグ33の一部が後方に膨張し、エアバッグ33の全体の展開姿勢を制御するのが困難となる。
【0047】
以上説明したように、本発明においては、圧縮状態のエアバッグ33の後方をカバーする後方領域100aと、エアバッグ33の内側とシートパッド16との間で後方領域100aから前方に連続的に延びる内側領域100bとを有するブラケット100を備えているため、エアバッグ33が展開を開始すると、ブラケット100の後方領域100aを反力面として当該エアバッグ33が前方に向かって確実且つ効率的に展開することになる。
【0048】
また、ブラケット100の内側領域100bの存在により、エアバッグ33が当該内側領域100bに沿って前方に展開しやすくなる。すなわち、エアバッグ100が展開を開始したときに、エアバッグ33の後方部分が後方(又は斜め後方)に向かって展開することを防止することができる。その結果、エアバッグ33の展開形状、展開姿勢が良好な状態となり、更に、エアバッグ33の展開速度が向上するというメリットがある。
【0049】
本発明について実施例を参照して説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更可能なものである。例えば、上記実施例においては、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアから遠い側の面)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。