(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230606BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
(21)【出願番号】P 2022508649
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011688
(87)【国際公開番号】W WO2021186540
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】500091520
【氏名又は名称】株式会社アイケイエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 王雅
(72)【発明者】
【氏名】平岡 貢一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一仁
(72)【発明者】
【氏名】宮田 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 尊史
(72)【発明者】
【氏名】鐙 英明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆雄
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-317567(JP,A)
【文献】特開2007-151227(JP,A)
【文献】特開2010-142085(JP,A)
【文献】国際公開第2019/016991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換して系統に出力するパワーコンディショナを制御する制御装置において、
前記系統の各相の系統電圧をそれぞれ降圧する降圧部と、
前記降圧部により降圧された各前記相の系統電圧のパルス信号である電圧パルス信号を生成する電圧パルス信号生成部と、
前記系統の各前記相の系統電流のパルス信号である電流パルス信号を生成する電流パルス信号生成部と、
前記系統の各前記相の前記電圧パルス信号及び前記電流パルス信号に基づいて各前記相の系統電圧及び系統電流のゼロクロス点の時間情報を出力するゼロクロス点検出部と、
前記ゼロクロス点検出部から与えられる前記系統の各前記相の前記系統電圧及び前記系統電流の前記ゼロクロス点の時間情報に基づいて、前記パワーコンディショナが前記系統に出力する前記交流電力の有効電力の値及び無効電力の値をそれぞれ算出し、前記パワーコンディショナが前記系統に出力する前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の各値がそれぞれ算出した前記値となるように前記パワーコンディショナを制御する演算部と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記ゼロクロス点検出部から与えられる前記系統の各前記相の前記電圧パルス信号及び前記電流パルス信号と、予め系統連系規程で定められた前記パワーコンディショナから出力される前記交流電力の力率に基づき算出される当該交流電力の皮相電力とに基づいて、前記パワーコンディショナが前記系統の各前記相にそれぞれ出力すべき前記交流電力の有効電力及び無効電力の値をそれぞれ算出し、
算出した前記有効電力及び前記無効電力の各前記値を、前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の目標値として前記パワーコンディショナに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記系統の前記系統電圧及び前記交流電力をそれぞれ計測し、前記パワーコンディショナから出力される前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の各値が当該パワーコンディショナに与えた前記目標値となっておらず、かつ当該有効電力及び当該無効電力の値が規格範囲内である場合に、算出した前記有効電力及び前記無効電力の各前記値を、前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の目標値として前記パワーコンディショナに送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記系統の前記系統電圧及び前記交流電力をそれぞれ計測し、前記パワーコンディショナから出力される前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の各前記値が当該パワーコンディショナに与えた前記目標値となっておらず、かつ当該有効電力及び当該無効電力の値が規格範囲内である場合には、前記パワーコンディショナに動作を停止させる
ことを特徴とする請求項3に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置に関し、例えば、パワーコンディショナの出力電力の力率を制御する制御装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムにより得られた直流の発電電力をパワーコンディショナによりR相、S相及びT相の3相の交流電力に変換し、これを電力系統に出力するようにして売電する電力取引が広く行われている。
【0003】
このような電力取引では、パワーコンディショナから電力系統に出力される交流電力の力率を系統連系規程で定められた所定範囲内に収め又は一定の値に収束させる必要があり、そのためにはパワーコンディショナが交流電力を出力する電力系統の交流波形の電圧及び電流のゼロクロス点を精度良く検出することが必要となる。
【0004】
従来、交流波形のゼロクロス点を検出する検出方式としては、回路などのハードウェアでセロクロス点を検出するハードウェア方式と、電流/電圧の交流波形をコンピュータに入力し、ソフトウェアによりゼロクロス点を検出するソフトウェア方式とがある。
【0005】
この場合、ハードウェア方式はソフトウェア方式よりも精度が高く、例えば、ハードウェア方式では交流波形のゼロクロス点を10〔μsec〕以下の誤差範囲で検出できるのに対して、ソフトウェア方式ではデータの取込み周期が20〔kHz〕の場合には誤差範囲が500〔μsec〕となる。つまりソフトウェア方式の場合、電力系統の周波数が例えば50〔Hz〕の場合には、2.5〔%〕の誤差が発生することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パワーコンディショナに許容されるゼロクロス点の検出方式は国ごとに異なる。このため、例えば、パワーコンディショナのゼロクロス点の検出方式としてソフトウェア方式が認められた国に合わせて製造されたパワーコンディショナ(つまりソフトウェア方式でゼロクロス点を検出するパワーコンディショナ)を、かかる検出方式としてハードウェア方式が要求される国では利用できないという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、ゼロクロス点をソフトウェア方式で検出するパワーコンディショナであっても、ハードウェア方式でのゼロクロス点の検出を要求する国の系統連系規程に対応させ得る制御装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、直流電力を交流電力に変換して系統に出力するパワーコンディショナを制御する制御装置において、前記系統の各相の系統電圧をそれぞれ降圧する降圧部と、前記降圧部により降圧された各前記相の系統電圧のパルス信号である電圧パルス信号を生成する電圧パルス信号生成部と、前記系統の各前記相の系統電流のパルス信号である電流パルス信号を生成する電流パルス信号生成部と、前記系統の各前記相の前記電圧パルス信号及び前記電流パルス信号に基づいて各前記相の系統電圧及び系統電流のゼロクロス点の時間情報を出力するゼロクロス点検出部と、前記ゼロクロス点検出部から与えられる前記系統の各前記相の前記系統電圧及び前記系統電流の前記ゼロクロス点の時間情報に基づいて、前記パワーコンディショナが前記系統に出力する前記交流電力の有効電力の値及び無効電力の値をそれぞれ算出し、前記パワーコンディショナが前記系統に出力する前記交流電力の前記有効電力及び前記無効電力の各値がそれぞれ算出した前記値となるように前記パワーコンディショナを制御する演算部とを設けるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パワーコンディショナがソフトウェア方式で系統電力のゼロクロス点を検出するタイプのものであっても系統電力のゼロクロス点の検出方式としてハードウェア方式を要求する国の系統連系規程に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態によるパワーコンディショナシステムの構成を一部回路構成で示すブロック図である。
【
図3】パワーコンディショナ制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)本実施の形態によるパワーコンディショナシステムの構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるパワーコンディショナシステムを示す。このパワーコンディショナシステム1は、電力系統のゼロクロス点をソフトウェア方式で検出する汎用のパワーコンディショナ2にゼロクロス検出ボード3が接続されて構成される。
【0014】
パワーコンディショナ2は、太陽光発電システムや蓄電池などの電源デバイス4から出力される直流電力をR相、S相及びT相の交流電力にそれぞれ変換し、かかる変換により得られたR相、S相及びT相の各交流電力をそれぞれパワーコンディショナ2及び分電盤5間を接続するR相、S相又はT相の各電力線6R,6S,6T(電力系統)に出力する。
【0015】
ゼロクロス検出ボード3は、第1~第3のパルストランス10R,10S,10T、第1~第3の差動アンプ11R,11S,11T、第1~第3の電圧用コンパレータ12RV,12SV,12TV及び第1~第3の電流用コンパレータ12RA,12SA,12TAと、第1~第3の電圧用オペアンプ13RV,13SV,13TV及び第1~第3の電流用オペアンプ13RA,13SA,13TAと、FPGA(Field-Programmable Gate Array)回路14及びCPU(Central Processing Unit)15とを備えて構成される。
【0016】
この場合、第1のパルストランス10Rには、R相及びS相の各電力線6R,6SからR相及びS相の電力系統の交流電圧(以下、電力系統の交流電圧を系統電圧呼ぶ)がコネクタ16を介して印加される。そして第1のパルストランス10Rは、これらR相及びS相の電力系統の系統電圧をそれぞれ例えば2〔V〕程度にまで降圧して第1の差動アンプ11Rに出力する。
【0017】
第1の差動アンプ11Rは、降圧されたR相及びS相の各系統電圧の差分を増幅し、これをR-S系統電圧として第1の電圧用コンパレータ12RVに出力する。また第1の電圧用コンパレータ12RVは、R-S系統電圧及びアース電圧(0〔V〕)を比較することにより、R-S系統電圧が0〔V〕よりも高い期間だけ論理「1」レベルに立ち上がるR-Sパルス信号を生成し、生成したR-Sパルス信号をFPGA回路14に出力する。
【0018】
同様に、第2のパルストランス10Sには、S相及びT相の各電力線6S,6TからS相及びT相の系統電圧がコネクタ16を介して印加される。そして第2のパルストランス10Sは、これらS相及びT相の系統電圧をそれぞれ例えば2〔V〕程度にまで降圧して第2の差動アンプ11Sに出力する。
【0019】
第2の差動アンプ11Sは、降圧されたS相及びT相の各系統電圧の差分を増幅し、これをS-T系統電圧として第2の電圧用コンパレータ12SVに出力する。また第2の電圧用コンパレータ12SVは、S-T系統電圧及びアース電圧を比較することにより、S-T系統電圧が0〔V〕よりも高い期間だけ論理「1」レベルに立ち上がるS-Tパルス信号を生成し、生成したS-Tパルス信号をFPGA回路14に出力する。
【0020】
さらに第3のパルストランス10Tには、T相及びR相の各電力線6T,6RからT相及びR相の系統電圧がコネクタ16を介して印加される。そして第3のパルストランス10Tは、これらT相及びR相の系統電圧をそれぞれ例えば2〔V〕程度にまで降圧して第3の差動アンプ11Tに出力する。
【0021】
第3の差動アンプ11Tは、降圧されたT相及びR相の各系統電圧の差分を増幅し、これをT-R系統電圧として第3の電圧用コンパレータ12TVに出力する。また第3の電圧用コンパレータ12TVは、T-R系統電圧及びアース電圧を比較することにより、T-R系統電圧が0〔V〕よりも高い期間だけ論理「1」レベルに立ち上がるT-Rパルス信号を生成し、生成したT-Rパルス信号をFPGA回路14に出力する。
【0022】
このとき第1~第3の電流用コンパレータ12RA,12SA,12TAには、パワーコンディショナ2及び分電盤5間のR相、S相及びT相の各電力線6R,6S,6Tにそれぞれ設けられた各計器用変成器(CT:Current Transformer)17R,17S,17Tにより低電圧・小電流に変換された、これら各電力線6R,6S,6Tを流れる電力系統の交流電流(以下、これらを系統電流と呼ぶ)がコネクタ18を介してR相変成電流、S相変成電流又はT相変成電流としてそれぞれ与えられる。
【0023】
そして第1~第3の電流用コンパレータ12RA,12SA,12TAは、与えられたR相変成電流、S相変成電流又はT相変成電流を0〔A〕と比較することにより、そのR相変成電流、S相変成電流又はT相変成電流が0〔A〕よりも高い期間に論理「1」レベルに立ち上がるR相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号又はT相系統電流パルス信号をそれぞれ生成し、生成したR相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号又はT相系統電流パルス信号をFPGA回路14に出力する。
【0024】
FPGA回路14は、入力されたR-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びT-Rパルス信号と、R相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号及びT相系統電流パルス信号とをそれぞれ時間情報に変換し、これら時間情報をそれぞれR-S時間信号、S-T時間信号及びT-R時間信号、並びに、R相系統電流時間信号、S相系統電流時間信号及びT相系統電流時間信号としてアドレスバス19を介してCPU15に出力する。
【0025】
実際上、FPGA回路14は、R-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びT-Rパルス信号、並びに、R相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号及びT相系統電流パルス信号をそれぞれ時間情報に変換するための手段として1~数10〔MHz〕の周期でカウントアップするカウンタ回路14Aを備えている。
【0026】
そしてFPGA回路14は、第1~第3の電圧用コンパレータ12RV,12SV,12TVからそれぞれ与えられるR-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びT-Rパルス信号の信号波形をそれぞれ監視し、これらR-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びT-Rパルス信号の立上りエッジ及び立下りエッジ(それぞれ系統電圧のR相、S相又はT相のゼロクロス点に相当)を検出するごとに、そのときのカウンタ回路14Aのカウンタ値を取得する。またFPGA回路14は、取得したこれらのカウント値をアドレスバス19を介して上述のR-S時間信号、S-T時間信号又はT-R時間信号としてCPU15に出力する。
【0027】
同様に、FPGA回路14は、第1~第3の電流用コンパレータ12RA,12SA,12TAからそれぞれ与えられるR相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号及びT相系統電流パルス信号の信号波形をそれぞれ監視し、これらR相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号及びT相系統電流パルス信号の立上りエッジ及び立下りエッジ(それぞれ系統電流のR相、S相又はT相のゼロクロス点に相当)を検出するごとに、そのときのカウンタ回路14Aのカウンタ値を取得する。またFPGA回路14は、取得したこれらのカウント値をそれぞれアドレスバス19を介して上述のR相系統電流時間信号、S相系統電流時間信号又はT相系統電流時間信号としてCPU15に出力する。
【0028】
CPU15は、FPGA回路14からR-S時間信号として順次与えられるR相及びS相の系統電圧の差分電圧がゼロクロスするタイミングで順次取得されたカウンタ回路14Aのカウンタ値(以下、これを電圧ゼロクロスカウント値と呼ぶ)と、FPGA回路14からR相系統電流時間信号として順次与えられるR相の系統電流がゼロクロスするタイミングで順次取得されたカウンタ回路14Aのカウント値(以下、これを電流ゼロクロスカウント値と呼ぶ)とに基づいて、
図2に示すように、R相の系統電圧及び系統電流の誤差時間ΔTを算出し、算出した誤差時間ΔTに基づいてR相の系統電圧及び系統電流間の位相差を算出する。
【0029】
具体的に、CPU15は、上述の電圧ゼロクロスカウント値と、これに対応する上述の電流ゼロクロスカウント値との差分にかかるカウンタ回路14Aのカウントアップ周期を乗算するようにしてR相の系統電圧及び系統電流間の誤差時間ΔTを算出する。またCPU15は、算出した誤差時間ΔTを利用して、次式
【数1】
によりR相の系統電圧及び系統電流間の位相差θ
Rを算出する。従って、例えば電力系統の周波数が50(Hz)、誤差時間が1〔ms〕であった場合、このときのR相の系統電圧及び系統電流間の位相差θ
Rは、次式
【数2】
のように18〔°〕と算出される。
【0030】
またCPU15は、これと同様にして、S相の系統電圧及び系統電流間の位相差θSと、T相の系統電圧及び系統電流間の位相差θTとをそれぞれ算出する。
【0031】
さらにCPU15は、上述のようにして計測したR相、S相及びT相の系統電圧及び系統電流の各計測値と、上述のようにして算出したR相、S相及びT相の系統電圧及び系統電流の位相差θR,θS及びθTと、予め系統連系規程で定められた皮相電力の設定値(以下、これを設定皮相電力と呼ぶ)とに基づいて、パワーコンディショナ2が電力系統(電力線6R,6S,6T)それぞれに出力すべきR相、S相及びT相の有効電力及び無効電力をそれぞれ算出する。
【0032】
具体的に、CPU15は、R相、S相及びT相ごとに、かかる有効電力を次式
【数3】
によりそれぞれ算出し、かかる無効電力を次式
【数4】
によりそれぞれ算出する。なお(3)式及び(4)式において、「設定皮相電力」は、系統連系規定により定められたパワーコンディショナ2が出力する交流電力の力率から算出される皮相電力の値であり「θ」は、R相の有効電力を求める場合にはθ
R、S相の有効電力を求める場合にはθ
S、T相の有効電力を求める場合にはθ
Tである。
【0033】
従って、例えば、設定皮相電力が6000〔VA〕で、ある相(R相、S相又はT相)の電圧及び電流間の位相差が18〔°〕であった場合、その相の有効電力は次式
【数5】
のように5706〔W〕と算出され、無効電力は次式
【数6】
のように1854〔Var〕と算出されることになる。
【0034】
一方、CPU15には、第1~第3の差動アンプ11R,11S,11Tからそれぞれ出力されたR-S系統電圧、S-T系統電圧及びT-R系統電圧がそれぞれ第1~第3の電圧用オペアンプ13RV,13SV,13TVを介して与えられ、各計器用変成器17R,17S,17Tからそれぞれ出力された上述のR相変成電流、S相変成電流及びT相変成電流がそれぞれ第1~第3の電流用オペアンプ13RA,13SA,13TAを介して与えられる。
【0035】
そしてCPU15は、第1~第3の電圧用オペアンプ13RV,13SV,13TVを介して与えられたR-S系統電圧、S-T系統電圧及びT-R系統電圧に基づいてR相、S相及びT相の各系統電圧の電圧値をそれぞれ計測すると共に、第1~第3の電流用オペアンプ13RA,13SA,13TAを介して与えられたR相変成電流、S相変成電流及びT相変成電流に基づいてR相、S相及びT相の各系統電流の電流値をそれぞれ計測する。
【0036】
そして、CPU15は、かかる計測により得られたR相、S相及びT相の各系統電圧の電圧値と、R相、S相及びT相の各系統電流の電流値とに基づいて、パワーコンディショナ2から電力系統に出力された交流電力の現在の有効電力及び無効電力の値がパワーコンディショナ2に指示した値となっていないものの、これら有効電力及び無効電力の値が系統連結規定により定められた範囲内にある場合に、上述のようにして算出したR相、S相及びT相ごとの有効電力及び無効電力の各値を、それぞれその相の新たな有効電力及び無効電力の目標値として通信路20を介してパワーコンディショナ2に送信する。
【0037】
かくして、このときパワーコンディショナ2は、ゼロクロス検出ボード3から有効電力指令値及び無効電力指令値が与えられた場合には、出力電力の有効電力及び無効電力の値が指定された値となるように電源デバイス4の出力電力をR相、S相及びT相の交流電力に変換してこれらをそれぞれR相、S相及びT相の電力線6R,6S,6Tに出力する。
【0038】
(2)パワーコンディショナ制御処理
図3は、上述のようなゼロクロス検出ボード3によるパワーコンディショナ2の制御処理(以下、これをパワーコンディショナ制御処理と呼ぶ)の流れを示すフローチャートである。ゼロクロス検出ボード3では、電源が投入されると、この
図3に示すパワーコンディショナ制御処理が開始される。
【0039】
そして、まず、FPGA回路14がR-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びT-Rパルス信号の波形と、R相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号及びT相系統電流パルス信号の波形とをそれぞれ監視し、いずれかの波形で立上りエッジ及び立下りエッジ(つまり系統電圧や系統電流のゼロクロス点)を検出するのを待ち受ける(S1)。
【0040】
そして、やがてFPGA回路14がいずれかの波形で立上りエッジ又は立下りエッジを検出すると、これが時間情報に変換されてCPU15に通知され、CPU15がこの通知に基づいてパワーコンディショナ2から出力すべき交流電力の有効電力及び無効電力の目標値を、上述の(1)式、(3)式及び(4)式を利用して上述のように算出する(S2)。
【0041】
続いて、CPU15が、第1~第3の電圧用オペアンプ13RV,13SV,13TVを介して与えられるR-S系統電圧、S-T系統電圧及びT-R系統電圧に基づいてR相、S相及びT相の各系統電圧の電圧値をそれぞれ計測すると共に、第1~第3の電流用オペアンプ13RA,13SA,13TAを介して与えられたR相変成電流、S相変成電流及びT相変成電流に基づいてR相、S相及びT相の各系統電流の電流値をそれぞれ計測し、計測結果に基づいて、R相、S相及びT相の系統電力の有効電力及び無効電力がそれぞれパワーコンディショナ2に通知した目標値となっているか否かを判断する(S3)。
【0042】
そして、この判断で肯定結果が得られた場合、CPU15は、ステップS2で算出した有効電力及び無効電力の値をパワーコンディショナ2に送信することなく、破棄する。これにより、この場合には、パワーコンディショナ2による電源デバイス4から出力される直流電力のR相、S相及びT相の交流電力への変換及びこれら交流電力の電力系統への出力が現状を維持したまま継続される。
【0043】
これに対して、ステップS3の判断で否定結果が得られた場合、CPU15は、上述のR-S系統電圧、S-T系統電圧及びT-R系統電圧と、上述のR相変成電流、S相変成電流及びT相変成電流とに基づいて、パワーコンディショナ2から電力系統に出力された交流電力の有効電力及び無効電力の値が系統連系規定により定められた範囲内にあるか否かを判断する(S4)。
【0044】
そしてCPU15は、この判断で肯定結果が得られた場合、ステップS2で算出した有効電力及び無効電力の各値をそれぞれ通信路20を介してパワーコンディショナ2に通知する(S5)。これによりパワーコンディショナ2において、電力系統に出力するR相、S相及びT相の交流電力の有効電力値及び無効電力値がそれぞれゼロクロス検出ボード3から通知されたかかる有効電力及び無効電力の各値となるように制御が行われる。
【0045】
これに対して、ステップS4の判断で否定結果が得られた場合、CPU15は、動作(電力系統への交流電力の出力)を直ちに停止すべき旨の系統異常停止指令フラグと、直ちに動作を停止すべき理由を表す異常検知詳細情報とをパワーコンディショナ2に送信する(S6)。これによりパワーコンディショナ2の動作が停止され、異常検知詳細情報が図示しない上位のコントローラに送信される。そして、この場合には、このパワーコンディショナ制御処理が終了する。
【0046】
(3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のパワーコンディショナシステムでは、ゼロクロス検出ボードによりハードウェア方式で系統電力(系統電圧及び系統電流)のゼロクロス点を検出するため、例えばパワーコンディショナがソフトウェア方式で系統電力のゼロクロス点を検出するタイプのものであっても、系統電力のゼロクロス点の検出方式としてハードウェア方式を要求する国の系統連系規程に対応させることができる。
【0047】
また、本実施の形態のゼロクロス検出ボードを利用することによって、メーカはパワーコンディショナのタイプとして系統電力のゼロクロス点の検出方式がソフトウェア方式のものだけを製造すればよいため、パワーコンディショナの量産化によるシステム全体としてのコストダウンを図ることができる。
【0048】
さらに、パワーコンディショナがソフトウェア方式により系統電力のゼロクロス点を検出するタイプのものであっても、本実施の形態によるゼロクロス検出ボードを接続することによってハードウェア方式により系統電力のゼロクロス点を正確に検出できるため、系統波形に正確に追従させた制御が可能となり、パワーコンディショナ2から電力系統に出力される交流電力の力率を系統連系規程で規定された値に精度よく近づけることができる。
【0049】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、パワーコンディショナ2として電力系統のゼロクロス点をソフトウェア方式で検出する汎用のパワーコンディショナを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかるパワーコンディショナ2として電力系統のゼロクロス点をハードウェア方式で検出するパワーコンディショナを適用することもできる。
【0050】
また上述の実施の形態においては、系統の各相の系統電圧をそれぞれ降圧する降圧部としてパルストランス10R,10S,10Tを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の電子部品を広く適用することができる。
【0051】
さらに上述の実施の形態においては、パルストランス10R,10S,10Tにより降圧された各相の系統電圧のパルス信号である電圧パルス信号(R-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びR-Tパルス信号)を生成する電圧パルス信号生成部として第1~第3の電圧用コンパレータ12RV,12SV,12TVを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる電圧パルス信号を生成する電圧パルス信号生成部としては、この他種々の電子部品を広く適用することができる。
【0052】
さらに上述の実施の形態においては、系統の各相の系統電流のパルス信号である電流パルス信号(R相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号又はT相系統電流パルス信号)を生成する電流パルス信号生成部として第1~第3の電流用コンパレータ12RA,12SA,12TAを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかる電流パルス信号を生成する電流パルス信号生成部としては、この他種々の電子部品を広く適用することができる。
【0053】
さらに上述の実施の形態においては、系統の各相の電圧パルス信号(R-Sパルス信号、S-Tパルス信号及びR-Tパルス信号)及び電流パルス信号(R相系統電流パルス信号、S相系統電流パルス信号又はT相系統電流パルス信号)に基づいて各相の系統電圧及び系統電流のゼロクロス点の時間情報を出力するゼロクロス点検出部としてFPGA回路14を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、かかるゼロクロス点検出部としては、この他種々の電子部品を広く適用することができる。
【0054】
さらに上述の実施の形態においては、FPGA回路14から与えられる電力系統の各相の系統電圧及び系統電流のゼロクロス点の時間情報に基づいて、パワーコンディショナ2が電力系統に出力する交流電力の有効電力の値及び無効電力の値をそれぞれ算出し、パワーコンディショナ2が電力系統に出力する交流電力の有効電力及び無効電力の各記電力量がそれぞれ算出した値となるようにパワーコンディショナ2を制御する演算部としてCPU15を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CPU15以外の種々の演算回路を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明はパワーコンディショナを制御するための種々の構成の制御装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1……パワーコンディショナシステム、2……パワーコンディショナ、3……ゼロクロス検出ボード、4……電源デバイス、5……分電盤、6R,6S,6T……電力線、10R,10S,10T……パルストランス、11R,11S,11T……差動アンプ、12RA,12SA,12TA……電流用コンパレータ、12RV,12SV,12TV……電圧用コンパレータ、13RA,13SA,13TA……電流用オペアンプ、13RV,13SV,13TV……電圧用オペアンプ、14……FPGA回路、14A……カウンタ回路、15……CPU。