(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-05
(45)【発行日】2023-06-13
(54)【発明の名称】2本針環縫いミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 55/14 20060101AFI20230606BHJP
D05B 55/10 20060101ALI20230606BHJP
D05B 57/02 20060101ALI20230606BHJP
D05B 1/08 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
D05B55/14 A
D05B55/10
D05B57/02
D05B1/08
(21)【出願番号】P 2022560960
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 CN2022085595
(87)【国際公開番号】W WO2022222762
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】202110866206.2
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522391291
【氏名又は名称】河北奔発制衣有限公司
【氏名又は名称原語表記】HEBEI BENFA GARMENT CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.113 Gongye Street, Ningjin County, Xingtai, Hebei 055550, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】李 娟
(72)【発明者】
【氏名】徐 建林
(72)【発明者】
【氏名】劉 瑞寧
(72)【発明者】
【氏名】張 蕾
(72)【発明者】
【氏名】張 素輝
(72)【発明者】
【氏名】杜 雨潔
(72)【発明者】
【氏名】柳 志超
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104005188(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104005189(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0082720(KR,A)
【文献】特開2000-037579(JP,A)
【文献】特開2002-346267(JP,A)
【文献】中国実用新案第206873070(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105862262(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107574590(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104195757(CN,A)
【文献】中国実用新案第209144402(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 55/14
D05B 55/10
D05B 57/02
D05B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転釜と、メス付き押さえ金とを有するミシン本体と、
前記ミシン本体のヘッドに垂直に接続され、動力入力端が前記ミシン本体の動力軸棒に接続される針組立体であって、前記ミシン本体の前後方向に間隔を置いて配置された2本の針棒を有する針組立体と、を含み、
そのうち、前記水平回転釜の回転による糸掛けの頻度は、前記動力軸棒の上下昇降の頻度の2倍であり、2本の前記針棒は、前記メス付き押さえ金の上方で共に停止した針止め状態を有し、さらに上下に交替で動く縫合状態を有し、前記縫合状態では、前記水平回転釜は2本の前記針棒の上糸を順次引っ掛け、
前記針組立体は、
底端から上方に垂直に延びるスライド孔が設けられた接続ベースであって、頂端が前記ヘッドに固定して接続される接続ベースと、
それぞれ垂直方向に沿って前記スライド孔内にスライド可能に接続され、底端にそれぞれ前記針棒が取り外し可能に接続された2本のスライド棒であって、そのうちの1本の前記スライド棒の頂端に接続軸が設けられ、前記接続軸の一端が垂直に上方に向かって前記接続ベースの頂壁を貫通し、前記動力軸棒に接続される2本のスライド棒と、
前記スライド孔内に設けられ、2本の前記スライド棒にそれぞれ接続され、2本の前記スライド棒の間で逆駆動力を伝達するための伝動部材と、を含む、
ことを特徴とする2本針環縫いミシン。
【請求項2】
2本の前記スライド棒が互いに対向して設置され、2本の前記スライド棒の互いに近接する側壁がスライド可能に抵抗し、他の側壁が前記スライド孔の孔壁とスライド可能に抵抗し、2本の前記スライド棒の互いに近接する側壁には、いずれも収容溝が設けられ、2つの前記収容溝の溝壁には、いずれも垂直方向に延びるラック構造が設けられ、前記伝動部材は、2つの前記収容溝の間に水平に穿設され、且つ両端がそれぞれ前記スライド孔の両側の孔壁に回転可能に接続され、前記伝動部材には、それぞれ2つの前記ラック構造に噛み合うギア構造が備えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項3】
2つの前記ラック構造が水平方向に沿って千鳥に配置され、前記
伝動部材は、
前記接続ベースに回転可能に接続され、一端が前記スライド孔に挿通され、2つの前記収容溝の間まで水平に延びて延び端が形成され、前記延び端にそのうちの1つの前記ラック構造に噛み合う第1のギアが嵌設される第1の回転軸と、
前記接続ベースに回転可能に接続され、一端が前記第1の回転軸の軸方向に沿って前記スライド孔内に挿通されて挿通端が形成され、前記挿通端が前記第1の回転軸の延び端に回転可能に接続され、前記挿通端に他方の前記ラック構造に噛み合う第2のギアが嵌設される第2の回転軸と、を含み、
そのうち、前記第1の回転軸の延び端には、その軸方向に沿って延びる第1の多角形孔が設けられ、前記第2の回転軸の挿通端には、その軸方向に沿って延びる第2の多角形孔が設けられ、前記第2の多角形孔内には、多角形スライドピンが設けられ、前記多角形スライドピンは、全体が前記第2の多角形孔の内部に引っ込んだ分離状態を有し、さらに一端が前記第1の多角形孔内に延在した嵌合状態を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項4】
前記第1の回転軸の延び端に軸孔が設けられ、前記軸孔の孔底に前記第1の多角形孔が設けられ、前記第1の回転軸には、その軸方向に沿って前記第1の多角形孔と連通する第1の貫通孔が設けられ、前記第2の回転軸の挿通端に軸スリーブが設けられ、前記軸スリーブの中心に前記第2の多角形孔が設けられ、前記軸スリーブは、前記軸孔内に延在し、前記軸孔に回転可能に接続され、前記第2の回転軸には、その軸方向に沿って前記第2の多角形孔と連通する第2の貫通孔が設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項5】
前記第1の貫通孔内には第1の押し棒が螺着され、前記第1の押し棒の一端が前記多角形スライドピンの一端に当接し、前記第2の貫通孔内には第2の押し棒が螺着され、前記第2の押し棒の一端が前記多角形スライドピンの他端に当接する、
ことを特徴とする請求項4に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項6】
前記ミシン本体には、前記メス付き押さえ金の方向に伸縮する糸引きフックを有する鳥の巣防止機構がさらに設けられ、前記針止め状態で、前記糸引きフックは前記メス付き押さえ金の上方に延出し、そのうちの1本の前記針棒の直下から他方の前記針棒の直下に揺動することで、2本の前記針棒の上糸を共に引っ掛ける、
ことを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項7】
前記鳥の巣防止機構は、
前記ミシン本体に固定して接続され、前記メス付き押さえ金から離れた一端に電磁伸縮棒が設けられた固定ベースと、
前記固定ベースにスライド可能に接続され、前記電磁伸縮棒の出力端に接続され、その上に前記糸引きフックが設けられる糸引き装置と、
一端が前記固定ベースに接続され、他端が前記糸引きフックの側壁に弾性的に抵抗し、前記糸引きフックが引っ込められる時に前記上糸を挟着するための糸挟着用の弾性板と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項8】
前記固定ベースにシュートが設けられ、前記メス付き押さえ金に向かう前記シュートの一端に案内溝が設けられ、前記糸引き装置は、前記シュートにスライド可能に接続されたスライドベースと、前記スライドベースにヒンジで接続された前記糸引きフックと、一端が前記スライドベースに接続され、他端が前記糸引きフックに接続された弾性部材と、を含み、
そのうち、前記糸引きフックが前記弾性部材から離れる側壁に凹状案内面が設けられ、前記糸引きフックが引き出される時、前記凹状案内面が前記弾性部材から離れる前記案内溝の溝壁に弾性的に抵抗し、前記糸引きフックが引っ込められる時、前記凹状案内面が前記案内溝から滑り出すことで、前記糸引きフックを搖動させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の2本針環縫いミシン。
【請求項9】
前記メス付き押さえ金に向かう前記固定ベースの一端に吸着ヘッドがさらに設けられ、前記吸着ヘッドに負圧風穴が設けられ、前記糸引き装置が伸縮して糸を引く時、前記糸引きフックが前記負圧風穴の口部を通過する、
ことを特徴とする請求項7に記載の2本針環縫いミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年07月29日に提出された、中国特許出願番号「CN202110866206.2」の優先権を主張する。先行出願の開示内容のすべては引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、ミシンの技術分野に属し、具体的には、2本針環縫いミシンに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、2本針ミシンは、服装の加工を行う際に使用頻度が高まっている。2本針ミシンは、並設された2本の針棒が同時に縫合作業を行うことにより、平行で、又は重ね合った2本の縫合糸構造を一度に加工することができる。顧客のニーズがますます多様化することに伴い、服飾製品には、縫合の確実性を高めるために、2本の縫合糸を重ね合わせて縫製することが要求されるものがある。ところで、従来の2本針ミシンには、2本針単釜による縫製形式、即ち、2本針の同期動作により1回の運針で形成される縫合糸を、2本の上糸が同時に1本の下糸と鎖状に結んでなるものとする形式が多く採用される。この方式は、良好な装飾効果のある2本の縫合糸を形成できるが、2回の縫合による確実な効果を果たすことができないので、縫合の強さを高めることを目的とする重ね合わせ縫製プロセスには適していない。現在、1本針ミシンで縫合作業を2回繰り返す方式しか採用できない。しかし、このように、2回の縫合糸の位置が完全に重なり合うことを保証できないため、縫合の外観品質が不良となり、また、2回の縫合を必要とするため、作業効率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、2本針ミシンによる重ね合わせ縫い加工の縫合の確実性を向上させ、2回の重ね合わせ縫合プロセスを用いた服飾の加工効率を向上させることを目的とする2本針環縫いミシンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願にて採用される技術的解決手段は、
水平回転釜又は半回転釜と、メス付き押さえ金とを有するミシン本体と、
ミシン本体のヘッドに垂直に接続され、動力入力端がミシン本体の動力軸棒に接続される針組立体であって、ミシン本体の前後方向に間隔を置いて配置された2本の針棒を有する針組立体と、を含み、
そのうち、水平回転釜の回転による糸掛けの頻度は、動力軸棒の上下昇降の頻度の2倍であり、2本の針棒は、メス付き押さえ金の上方で共に停止した針止め状態を有し、さらに上下に交替で動く縫合状態を有し、縫合状態では、水平回転釜は2本の針棒の上糸を順次引っ掛ける、2本針環縫いミシンを提供することである。
【0006】
1つの可能な実現形態において、針組立体は、
底端から上方に垂直に延びるスライド孔が設けられた接続ベースであって、頂端がヘッドに固定して接続される接続ベースと、
それぞれ垂直方向に沿ってスライド孔内にスライド可能に接続され、且つ底端にそれぞれ針棒が取り外し可能に接続された2本のスライド棒であって、そのうちの1本のスライド棒の頂端に接続軸が設けられ、接続軸の一端が垂直に上方に向かって接続ベースの頂壁を貫通し、動力軸棒に接続される2本のスライド棒と、
スライド孔内に設けられ、且つ2本のスライド棒にそれぞれ接続され、2本のスライド棒の間で逆駆動力を伝達するための伝動部材と、を含む。
【0007】
いくつかの実施例において、2本のスライド棒が互いに対向して設置され、且つ2本のスライド棒の互いに近接する側壁がスライド可能に抵抗し、他の側壁がスライド孔の孔壁とスライド可能に抵抗し、2本のスライド棒の互いに近接する側壁には、いずれも収容溝が設けられ、2つの収容溝の溝壁には、いずれも垂直方向に延びるラック構造が設けられ、伝動部材は、2つの収容溝の間に水平に穿設され、且つ両端がそれぞれスライド孔の両側の孔壁に回転可能に接続され、伝動部材には、それぞれ2つのラック構造に噛み合うギア構造が備えられる。
【0008】
例示的には、2つのラック構造が水平方向に沿って千鳥に配置され、伝動部材は、
接続ベースに回転可能に接続され、一端がスライド孔に挿通され、2つの収容溝の間まで水平に延びて延び端が形成され、且つ延び端にそのうち一方のラック構造に噛み合う第1のギアが嵌設される第1の回転軸と、
接続ベースに回転可能に接続され、一端が第1の回転軸の軸方向に沿ってスライド孔内に挿通されて挿通端が形成され、前記挿通端が第1の回転軸の延び端に回転可能に接続され、且つ挿通端に他方のラック構造に噛み合う第2のギアが嵌設される第2の回転軸と、を含み、
そのうち、第1の回転軸の延び端には、その軸方向に沿って延びる第1の多角形孔が設けられ、第2の回転軸の挿通端には、その軸方向に沿って延びる第2の多角形孔が設けられ、第2の多角形孔内には、多角形スライドピンが設けられ、多角形スライドピンは、全体が第2の多角形孔の内部に引っ込んだ分離状態を有し、さらに一端が第1の多角形孔内に延在した嵌合状態を有する。
【0009】
例を挙げて説明すると、第1の回転軸の延び端に軸孔が設けられ、軸孔の孔底に第1の多角形孔が設けられ、第1の回転軸には、その軸方向に沿って第1の多角形孔と連通する第1の貫通孔が設けられ、第2の回転軸の挿通端に軸スリーブが設けられ、軸スリーブの中心に第2の多角形孔が設けられ、軸スリーブは、軸孔内に延在し、軸孔に回転可能に接続され、第2の回転軸には、その軸方向に沿って第2の多角形孔と連通する第2の貫通孔が設けられる。
【0010】
さらに、第1の貫通孔内には第1の押し棒が螺着され、第1の押し棒の一端が多角形スライドピンの一端に当接し、第2の貫通孔内には第2の押し棒が螺着され、第2の押し棒の一端が多角形スライドピンの他端に当接する。
【0011】
1つの可能な実現形態において、ミシン本体には、メス付き押さえ金の方向に伸縮する糸引きフックを有する鳥の巣防止機構がさらに設けられ、針止め状態で、糸引きフックはメス付き押さえ金の上方に延出し、そのうちの1本の針棒の直下から他方の針棒の直下に揺動することで、2本の針棒の上糸を共に引っ掛ける。
【0012】
いくつかの実施例において、鳥の巣防止機構は、
ミシン本体に固定して接続され、メス付き押さえ金から離れた一端に電磁伸縮棒が設けられた固定ベースと、
固定ベースにスライド可能に接続され、電磁伸縮棒の出力端に接続され、その上に糸引きフックが設けられる糸引き装置と、
一端が固定ベースに接続され、他端が糸引きフックの側壁に弾性的に抵抗し、糸引きフックが引っ込められる時に上糸を挟着するための糸挟着用の弾性板と、を含む。
【0013】
例示的に、固定ベースにシュートが設けられ、メス付き押さえ金に向かうシュートの一端に案内溝が設けられ、糸引き装置は、シュートにスライド可能に接続されたスライドベースと、スライドベースにヒンジで接続された糸引きフックと、一端がスライドベースに接続され、他端が糸引きフックに接続された弾性部材と、を含む。
【0014】
そのうち、糸引きフックが弾性部材から離れる側壁に凹状案内面が設けられ、糸引きフックが引き出される時、凹状案内面が弾性部材から離れる案内溝の溝壁に弾性的に抵抗し、糸引きフックが引っ込められる時、凹状案内面が案内溝から滑り出すことで、糸引きフックを搖動させる。
【0015】
いくつかの実施例において、メス付き押さえ金に向かう固定ベースの一端に吸着ヘッドがさらに設けられ、吸着ヘッドに負圧風穴が設けられ、糸引き装置が伸縮して糸を引く時、糸引きフックが負圧風穴の口部を通過する。
【発明の効果】
【0016】
従来技術に比べ、本願の2本針環縫いミシンは、針組立体が針止め状態の場合に、2本の針棒が全てメス付き押さえ金の上方に位置するため、布片の入れ置きと交換を容易にし、縫合作業の場合に、動力軸棒の上下昇降により、針組立体の2本の針棒を上下に交替で移動させ、水平回転釜の回転による糸掛けの頻度は、動力軸棒の昇降の頻度の2倍であるため、水平回転釜が一周り回転する毎に、そのうちの1本の下降する針棒の上糸を引っ掛けて縫合鎖状環を形成することで、2本の針棒はそれぞれ水平回転釜に合わせて、独立して鎖状をなす2本の重ね合わせた縫合糸を形成することができ、2本の針棒が同期して動作してすると共に下糸を同時に掛ける方式に比べ、本願は、2回の反復縫合による重ね合わせた縫い目により接近し、縫合強度が高く、縫合がしっかりして確実であり、且つ2本の針棒の前後した設置方式により、2本の縫合糸の確実な重ね合わせを確保することができるため、縫合の外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願の実施例にて提供される2本針環縫いミシンの正面構造の概略図である。
【
図2】本願の実施例にて提供される2本針環縫いミシンの縫合状態の場合に2本の針棒が交替で水平回転釜に合わせる構造概略図である。
【
図3】本願の実施例にて提供される2本針環縫いミシンの縫合状態の場合に2本の針棒が交替で水平回転釜に合わせる構造概略図である。
【
図4】本願の実施例にて用いられる針組立体の針止め状態の構造概略図である。
【
図5】本願の実施例にて用いられる2本のスライド棒の立体構造の概略図である。
【
図6】本願の実施例にて用いられる伝動部材の分解構造の概略図である。
【
図7】本願の実施例にて用いられる伝動部材の断面構造の概略図である。
【
図8】本願の実施例にて用いられる鳥の巣防止機構の立体構造の概略図である。
【
図9】本願の実施例にて用いられる鳥の巣防止機構の底面構造(一部)の概略図である。
【
図10】本願の実施例にて用いられる鳥の巣防止機構の糸引きフックが引き出される時の平面構造(一部)の概略図である。
【
図11】本願の実施例にて用いられるメス付き押さえ金の立体構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願が解決しようとする技術的問題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、図面及び実施例に合わせて、本願をさらに詳細に説明する。理解すべきものとして、ここで説明した具体的な実施例は、本願を解釈するためのみに用いられ、本願を限定するものではない。
【0019】
なお、回転釜は、ミシンの中核部材であり、剣先で上糸の糸ループを引っ掛けると共に糸ループを広げ、ボビンを回るように糸ループを案内して環縫いを構成する。水平に回転する回転釜は水平回転釜と呼ばれ、垂直に回転する回転釜は垂直回転釜と呼ばれ、メス付き押さえ金12には、ミシンの押さえ金のフォークの位置にメス121(
図11参照)が設けられる。縫合において糸を移動させる時に前回の縫合の針止め際に生じた糸の端がメス121で切断されることで、縫合位置の起点に糸の端や糸絡みが生じることを回避することができる。これらは鳥の巣(糸絡み)防止機能を有するミシンにおいてよく備えられる構造であり、ここでは詳述しない。
【0020】
以下、
図1乃至
図4及び
図11を共に参照し、本願にて提供される2本針環縫いミシンを説明する。前記2本針環縫いミシンは、ミシン本体1と、針組立体2と、を含む。ミシン本体1は、水平回転釜11又は半回転釜と、メス付き押さえ金12とを有する。針組立体2は、ミシン本体1のヘッドに垂直に接続され、その動力入力端がミシン本体1の動力軸棒13に接続される。針組立体2は、ミシン本体1の前後方向に間隔を置いて配置された2本の針棒20を有する。そのうち、水平回転釜11の回転による糸掛けの頻度は、動力軸棒13の上下昇降の頻度の2倍である。2本の針棒20は、メス付き押さえ金12の上方で共に停止した針止め状態を有し、さらに上下に交替で動く縫合状態を有する。縫合状態では、水平回転釜11は2本の針棒20の上糸を順次引っ掛ける。
【0021】
なお、針組立体2の動力入力端は、そのうちの1本の針棒20に直接接続し、また、逆伝動機能を有する部材(ギアの噛み合うによる逆動力、中心がヒンジで接続された揺動棒の両端に生じる逆運動)を介して他方の針棒20に間接的に接続することで、2本の針棒20が上下に交替で動くことを実現することができる。
【0022】
本実施例にて提供される2本針環縫いミシンの動作原理は、以下のとおりであり、まず、2本の針棒20の位置が異なるため、本明細書において、水平回転釜11を選択し、回転釜の回転中心軸を2本の針棒20の垂直二等分線上に設置することで、2本の針棒20の上糸(糸ループ)がいずれも水平回転釜11の剣先で引っ掛けられることを確保することができることを理解すべきである。1本の針棒20が低い位置に下降する時、水平回転釜11の剣先が当該針棒20と揃える位置まで回転することで、当該針棒20の上糸を引っ掛け、水平回転釜11が半周り以上回転する時に上糸を解放して縫合鎖状ループを形成する。他方の針棒20が低い位置に下降する時、水平回転釜11の剣先が再び当該他方の針棒20と揃える位置まで回転し、当該他方の針棒20の上糸を引っ掛けて次の縫合鎖状環を形成し、このように繰り返す。同一の下糸(水平回転釜11のボビンに巻き付く糸)を用いるが、2本の針棒20の上糸をそれぞれ独立した2本の縫合糸(鎖状)に形成できることで、1本針ミシンで同一の経路に従って2回繰り返し縫合することと同様の効果を奏する重ね合わせ縫い目を形成する。
【0023】
本実施例にて提供される2本針環縫いミシンは、従来技術に比べ、針組立体2が針止め状態の場合に、2本の針棒20が全てメス付き押さえ金12の上方に位置するため、布片の入れ置きと交換を容易にすることができる。縫合作業の場合に、動力軸棒13の上下昇降により、針組立体2の2本の針棒20を上下に交替で移動させる。水平回転釜11の回転による糸掛けの頻度は、動力軸棒13の昇降の頻度の2倍であるため、水平回転釜11が一周り回転する毎に、そのうちの1本の下降する針棒20の上糸を引っ掛けて縫合鎖状環を形成することで、2本の針棒20はそれぞれ水平回転釜11に合わせて、独立して鎖状をなす2本の重ね合わせた縫合糸を形成することができる。2本の針棒20が同期して動作すると共に下糸を同時に掛ける方式に比べ、本願は、2回の反復縫合による重ね合わせた縫い目により接近し、縫合強度が高く、縫合がしっかりして確実である。2本の針棒20の前後した設置方式により、2本の縫合糸の確実な重ね合わせを確保することができるため、縫合の外観品質を向上させることができる。
【0024】
いくつかの実施例において、
図4を参照し、針組立体2は、接続ベース21と、2本のスライド棒22と、伝動部材23と、を含む。そのうち、接続ベース21に底端から上方に垂直に延びるスライド孔210が設けられ、接続ベース21の頂端がヘッドに固定して接続される。2本のスライド棒22は、それぞれ垂直方向に沿ってスライド孔内にスライド可能に接続され、底端にそれぞれ針棒20が取り外し可能に接続される。そのうちの1本のスライド棒22の頂端に接続軸221が設けられ、接続軸221の一端が垂直に上方に向かって接続ベース21の頂壁を貫通し、動力軸棒13に接続される。伝動部材23は、スライド孔210内に設けられ、且つ2本のスライド棒22にそれぞれ接続され、2本のスライド棒22の間で逆駆動力を伝達するために用いられる。
【0025】
ここで、2本のスライド棒22が互いに対向して設置され、且つ2本のスライド棒22の互いに近接する側壁がスライド可能に抵抗し、他の側壁がスライド孔210の孔壁とスライド可能に抵抗する。2本のスライド棒22の互いに近接する側壁には、いずれも収容溝220が設けられ、2つの収容溝220の溝壁には、いずれも垂直方向に延びるラック構造2201が設けられる。伝動部材23は、2つの収容溝220の間に水平に穿設され、両端がそれぞれスライド孔210の両側の孔壁に回転可能に接続される。伝動部材23には、それぞれ2つのラック構造2201に噛み合うギア構造230が備えられる。
【0026】
スライド孔210は、矩形孔、丸孔、楕円孔であってもよく、2本のスライド棒22は、互いに貼り合わせてスライド孔210の断面形状と同一の外形を形成することで、2本のスライド棒22が同時にスライド孔210内にスライド可能に接続されることを実現し、その貼り合わせ面の相対的なスライドにより、2本のスライド棒22の相対的なスライドを実現する。動力軸棒13が接続軸221を駆動して下降させる時、対応するスライド棒22が共に下降し、当該スライド棒22のラック構造2201によりギア構造230を回転させることで、他方のラック構造2201により他方のスライド棒22を共に上昇させ、2本の針棒20が上下に交替で動くことを実現し、伝動が円滑で確実である。
【0027】
本実施例において、
図4乃至7を参照し、2つのラック構造2201は、水平方向に沿って千鳥に配置される。
伝動部材23は、接続ベース21に回転可能に接続される第1の回転軸231と第2の回転軸232とを含む。第1の回転軸231の一端がスライド孔219に挿通され、2つの収容溝220の間まで水平に延びて延び端が形成され。当該延び端にそのうちの1つのラック構造2201に噛み合う第1のギア2311が嵌設される。第2の回転軸232の一端が第1の回転軸231の軸方向に沿ってスライド孔210内に挿通されて挿通端が形成される。当該挿通端が第1の回転軸231の延び端に回転可能に接続され、挿通端に他方のラック構造2201に噛み合う第2のギア2321が嵌設される。そのうち、第1の回転軸231の延び端には、その軸方向に沿って延びる第1の多角形孔2312が設けられ、第2の回転軸232の挿通端には、その軸方向に沿って延びる第2の多角形孔2322が設けられる。第2の多角形孔2322内には、多角形スライドピン233が設けられ、多角形スライドピン233は、全体が第2の多角形孔2322の内部に引っ込んだ分離状態を有し、さらに一端が第1の多角形孔2312内に延在した嵌合状態を有する。
【0028】
多角形スライドピン233は、多角形孔(第1の多角形孔2312及び第2の多角形孔2322)に合わせて、第1の回転軸231及び第2の回転軸232を同期して回転させることができる。多角形スライドピン233が分離状態にある場合、多角形スライドピン233は、全体が第2の多角形孔2322内にあるため、第1の回転軸231と第2の回転軸232との間に相対的な回転の自由度への拘束が失われる。この時、接続軸221によりそのうちの1本のスライド棒22を昇降させる過程で、それに設けられたラック機構2201により第2のギア2321を駆動して、第2の回転軸232を回転させることができる。しかし、第2の回転軸232は第1の回転軸231を回転させないため、第1のギア2311は、他方のラック構造2201及び他方のスライド棒22を動かすことができない。つまり、分離状態では、1本の針棒20のみが昇降して縫合作業を行う。分離状態は、通常の1本針縫合作業に適する。そして、多角形スライドピン233の一端が第1の多角形孔2312に滑り込む場合、第2の回転軸232は第1の回転軸231を共に回転させることができ、したがって、2本の針棒20は上下に交替で動いて重ね合わせ縫い作業を行うことができる。本実施例にて提供される構造により、ミシンは通常の縫合と重ね合わせの縫合作業方式で柔軟に切り替えることができ、それにより機器の利用率を向上させ、実用性が高い。
【0029】
具体的には、
図6及び
図7を参照し、第1の回転軸231の延び端には軸孔2313が設けられ、軸孔2313の孔底に第1の多角形孔2312が設けられ、第1の回転軸231には、その軸方向に沿って第1の多角形孔2312と連通する第1の貫通孔2314が設けられる。第2の回転軸232の挿通端に軸スリーブ2323が設けられ、軸スリーブ2323の中心に第2の多角形孔2322が設けられ、軸スリーブ2323は、軸孔2313内に延在し、軸孔2313に回転可能に接続される。第2の回転軸232には、その軸方向に沿って第2の多角形孔2322と連通する第2の貫通孔2324が設けられる。軸スリーブ2323が軸孔2313内に挿通されることで回転接続関係が形成され、構造が簡単で確実である。多角形スライドピン233を分離状態と嵌合状態とで切り替える必要がある場合、棒状の工具が第1の貫通孔2314又は第2の貫通孔2324内に延在して多角形スライドピン233を移動させばよい。
【0030】
さらに、
図6及び
図7を参照し、第1の貫通孔2314内には第1の押し棒2315が螺着され、第1の押し棒2315の一端が多角形スライドピン233の一端に当接する。第2の貫通孔2324内には第2の押し棒2325が螺着され、第2の押し棒2325の一端が多角形スライドピン233の他端に当接する。2本針による作業を行う必要がある場合、第1の押し棒2315をねじ戻してから、第2の押し棒2325を内側にねじ込むことで、嵌合状態になるまで第1の多角形孔2312内に滑り込むように多角形スライドピン233を押す。逆に、1本針による作業を行う必要がある場合、第2の押し棒2325をねじ戻して第1の押し棒2315を内側にねじ込むことで、多角形スライドピン233全体を第2の多角形孔2322内に押し込んで第1の多角形孔2312から完全に分離させることで、1本針による縫合作業に適し、操作が簡単で便利である。
【0031】
また、
図7を参照し、第1の多角形孔2312の底壁には復帰孔2316が設けられ、復帰孔2316内には復帰ばね234が設けられ、復帰ばね234の一端は復帰孔2316から延出し、多角形スライドピン233の端壁に当接する。復帰ばね234により、多角形スライドピン233に第2の多角形孔2322内部に向かって後退する弾性力を付与することができ、それにより多角形スライドピン233を嵌合状態から分離状態に変換させ、操作が簡単で便利である。
【0032】
いくつかの可能な実現形態において、
図1、
図8乃至
図10を参照し、ミシン本体1には、メス付き押さえ金12の方向に伸縮する糸引きフック322を有する鳥の巣防止機構3がさらに設けられる。針止め状態では、糸引きフック322はメス付き押さえ金12の上方に延出し、そのうちの1本の針棒20の直下から他方の針棒20の直下に揺動することで、2本の針棒20の上糸を共に引っ掛ける。2本の針棒20は、前後に間隔を置いて配置されるが、ミシンの前側、後側、左側の位置は、いずれも縫合作業において占用する必要がある位置であるため、操作を邪魔しないように鳥の巣防止機構3をヘッドの右側位置に設置する必要がある。ミシンは針を止め、且つ糸引きフック322が前方にある針棒20の直下に延出して対応する上糸を引っ掛けてから、糸引きフック322が引っ込められながら水平に揺動して、他方の針棒20の直下に達し、他方の上糸を引っ掛けることで、2本の針棒20の上糸を共に引っ掛けることを実現し、今度縫い始めて縫合する際に縫合糸のスタート位置に鳥の巣の発生を回避し、それにより縫合の品質を向上させる。
【0033】
いくつかの実施例において、
図8及び
図9を参照し、鳥の巣防止機構3は、固定ベース31と、糸引き装置32と、糸挟着用の弾性板33と、を含む。そのうち、固定ベース31は、ミシン本体1に固定して接続され、メス付き押さえ金12から離れた一端に電磁伸縮棒311が設けられる。糸引き装置32は、固定ベース31にスライド可能に接続され、且つ電磁伸縮棒311の出力端に接続され、糸引き装置32に糸引きフック322が設けられる。糸挟着用の弾性板33は一端が固定ベース31に接続され、他端が糸引きフック322の側壁に弾性的に抵抗し、糸引きフック322が引っ込められる時に上糸を挟着するために用いられる。糸引き装置32が2本の針棒20の上糸を引き戻すと、糸引きフック322と糸挟着用の弾性板33との間に弾性挟持力があるため、糸引きフック322が糸挟着用の弾性板33の弾圧端と揃えるまで引っ込められると、上糸が直ちに糸引きフック322と糸挟着用の弾性板33との間に挟持されることで、今度の縫合において糸を移動させる過程に上糸がメス付き押さえ金12により切断される時、上糸が縫合位置に落ちて糸絡みを形成して縫合の外観に影響を与えることを回避する。
【0034】
例示的に、
図10を参照すると、固定ベース31にシュート312が設けられ、メス付き押さえ金12に向かうシュート312の一端に案内溝313が設けられる。糸引き装置32は、シュート312にスライド可能に接続されたスライドベース321と、スライドベース321にヒンジで接続された糸引きフック322と、弾性部材323と、を含む。弾性部材323は一端がスライドベース321に接続され、他端が糸引きフック322に接続される。そのうち、糸引きフック322が弾性部材323から離れる側壁に凹状案内面3221が設けられる。糸引きフック322が延出する場合、凹状案内面3221は弾性部材323から離れる案内溝313の溝壁に弾性的に抵抗する。糸引きフック322が引っ込められる場合、凹状案内面3221は案内溝313から滑り出すことで、糸引きフック322を搖動させる。糸引きフック322の幅は案内溝313の幅よりも小さく、凹状案内面3221が設けられた位置の幅はより小さいことを理解すべきである。糸引きフック322が案内溝313の内部に位置するため、糸引きフック322が凹状案内面3221まで延出して案内溝313の溝壁と揃えるようになる場合、弾性部材323の弾性作用により、糸引きフック322が大きな揺動幅を有する。糸引きフック322が引っ込められる場合、凹状案内面3221が案内溝313から滑り出すので、糸引きフック322は凹状案内面3221の案内作用により徐々に振り返ることで、糸引きフック322の糸引き位置のそのうちの1本の針棒20の下方から他方の針棒20の下方への揺動を実現し、糸引き過程が安定して確実であり、糸引きの成功率が高い。
【0035】
いくつかの実施例において、
図8及び
図9を参照し、メス付き押さえ金12に向かう固定ベース31の一端に吸着ヘッド34がさらに設けられ、吸着ヘッド34に負圧風穴341が設けられる。糸引き装置32が伸縮して糸を引く場合、糸引きフック322は負圧風穴341の口部を通過する。糸挟着用の弾性板33と糸引きフック322とは合わせて、上糸を挟持し、今度の縫合において縫い始めて糸を移動させる時、メス付き押さえ金12は上糸を切断すると共に、今度針を止める時、糸引き装置32は延出して今度の糸引きを行う。この糸引き過程において、糸引きフック322が負圧風穴341の位置を通過する時、上糸(糸端)は、この時、糸挟着用の弾性板33の挟持力がなくなるので、負圧風穴341に吸引可能になり、それにより糸の端が自由に落ちることを回避する。
【0036】
以上の記載は、本願の好適な実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神と原則内で行われたいかなる修正、同等の置換及び改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1...ミシン本体、11...水平回転釜、12...メス付き押さえ金、121...メス、13...動力軸棒、2...針組立体、20...針棒、21...接続ベース、210...スライド孔、22...スライド棒、220...収容溝、2201...ラック構造、221...接続軸、23...伝動部材、230...ギア構造、231...第1の回転軸、2311...第1のギア、2312...第1の多角形孔、2313...軸孔、2314...第1の貫通孔、2315...第1の押し棒、2316...復帰孔、232...第2の回転軸、2321...第2のギア、2322...第2の多角形孔、2323...軸スリーブ、2324...第2の貫通孔、2325...第2の押し棒、233...多角形スライドピン、234...復帰ばね、3...鳥の巣防止機構、31...固定ベース、311...電磁伸縮棒、312...シュート、313...案内溝、32...糸引き装置、321...スライドベース、322...糸引きフック、3221...凹状案内面、323...弾性部材、33...糸挟着用の弾性板、34...吸着ヘッド、341...負圧風穴。