(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】風管式環境試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2021081894
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】若原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高信 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 知由
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-148038(JP,A)
【文献】特開2008-286467(JP,A)
【文献】特開2020-101350(JP,A)
【文献】特開2002-021264(JP,A)
【文献】特開昭63-213285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00 - 17/04
G01M 9/00 - 9/08
G01M 17/00 - 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器で生成された冷気を管路内で循環させるとともに、前記冷気の循環流路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、
前記管路は、
押さえコンクリートで形成された断面略矩形状の外装体と前記外装体の内壁面に取り付けられた断熱材とで送風ダクトを形成しているとともに、
前記冷却器の下流に設けられる
とともに前記送風ダクトの底面を構成する前記断熱材の
上面を覆って押さえコンクリートを施工してなる、
ことを特徴とする風管式環境試験装置。
【請求項2】
前記押さえコンクリートで覆われる前記断熱材の底面に、押し出し発泡ポリスチレンを使用し、前記送風ダクトの上面及び左右の側面を形成する前記断熱材に、板状のビーズ法発泡ポリスチレンを使用した、
ことを特徴とする請求項1に記載の風管式環境試験装置。
【請求項3】
前記冷却器の上流に設けられる前記送風ダクトの、上面と左右の側面と底面に各々設けられた前記断熱材に、板状のビーズ法発泡ポリスチレンを使用するとともに、前記断熱材の底面と前記外装体との間に桟木を介在してなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の風管式環境試験装置。
【請求項4】
前記断熱材の天井面と前記外装体との間に、耐圧補強材を設けた、ことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の風管式環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風管式環境試験装置に関し、特に高温からマイナス温度域(例えば、+60℃~-50℃)まで、広い温度範囲で各種の試験を行うのを可能にするための風管式環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、完成モデルの車両を室内等に置き、さまざまな自然環境・気象条件を設定し、車両への負荷をデータとして収集し、分析するための環境試験装置が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、一般に、管式環境試験装置では、マイナス温度域、特に-50℃程度まで下げた厳寒での環境試験は行わないため、風管は建屋の躯体、壁、床、天井にて施工をしている。そのため、マイナス温度域での試験をした場合の結露、凍結対策が取られていない。
【0004】
また、車両を被検体とした風管式環境試験装置では、風管内に降雨・降雪装置を設置し、降雨・降雪状態を再現することも少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の管式環境試験装置では、マイナス温度域、特に-50℃程度の温度域まで下げた厳寒での環境試験は行わないため、結露、凍結対策が取られていなかった。
【0007】
また、車両を被検体とした風管式環境試験装置では、風管内に降雨・降雪装置を設置し、降雨・降雪状態を再現する装置として使用されることもある。しかし、降雨・降雪状態を再現可能な風管式環境試験装置とした場合は、降雨・降雪状態の再現試験中に、特に冷却器等が配置された下流側にドレンが発生する。そのため、冷却器の下流側となる送風ダクトの床面を断熱パネルで施工した場合、断熱パネル同志を繋いでいる目地のコーキングが切れると、断熱パネルと断熱パネルを外側から支えている外装体との間の隙間にドレンが漏れ、漏れたドレンが隙間を伝わって環境試験室内に流れ込み、環境試験室内を汚したりする問題があった。また、漏れたドレンは特に流れ先が定まらずに、処理に苦慮し、さらに残留したドレンが送風ダクト内にカビを発生させる問題点があった。
【0008】
そこで、低温環境下での各種の試験を行っても、外装体の外側に発生する結露、凍結等を防ぐことができるとともに、降雨・降雪状態を再現する装置として使用し、冷却器等が設置された下流側に例えドレンが発生しても、そのドレンを簡単に処理することができる構造にした風管式環境試験装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、冷却器で生成された冷気を管路内で循環させるとともに、前記冷気の循環通路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、前記管路は、押さえコンクリートで形成された断面略矩形状の外装体と前記外装体の内壁面に取り付けられた断熱材とで送風ダクトを形成しているとともに、記冷却器の下流に設けられるとともに前記送風ダクトの底面を構成する前記断熱材の上面を覆って押さえコンクリートを施工してなる、風管式環境試験装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、管路は、押さえコンクリートで形成された断面略矩形状の外装体と外装体の内側に取り付けられた断熱材とで、2重管構造をした送風ダクトを形成している。したがって、送風ダクト内を流れる冷気と管路の外側との外気は、互いに断熱材で断熱され、管路の外周面における凍結・結露を防ぐことができる。
また、送風ダクト部の底面には、断熱材の底面を覆って押さえコンクリートを施工している。したがって、断熱材の底面で、断熱材同志を連結している目地のコーキングが切れ、そして冷却器の下流側にドレン等が発生したとしても、発生したドレンは押さえコンクリートの上を予め決められた場所に向かって流れ、目地の切れ目を通って断熱材と外装体との間の隙間に流れ込むことがなくなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記押さえコンクリートで覆われる前記断熱材の底面に、押し出し発泡ポリスチレンを使用し、前記送風ダクトの上面及び左右の側面を形成する前記断熱材に、板状のビーズ法発泡ポリスチレンを使用した、風管式環境試験装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、外装体の底面の上に押し出し発泡ポリスチレンを配置し、その押し出し発泡ポリスチレンの上に押さえコンクリートを施工し、更に送風ダクトを形成する断熱材の上面及び左右の側面に板状のビーズ法発泡ポリスチレンを各々設けることにより、2重構造をした管体を簡単に形成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記冷却器の上流に設けられる前記送風ダクトの、上面と左右の側面と底面に各々設けられた前記断熱材に、板状のビーズ法発泡ポリスチレンを使用するとともに、前記断熱材の底面と前記外装体との間に桟木を介在してなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の風管式環境試験装置。
【0014】
この構成によれば、冷却器の上流に設けられるダクト部にはドレンが発生しないので、ダクト部の上面と左右の側面と底面には、それぞれ安価に作ることができる板状のビーズ法発泡ポリスチレンを使用するとともに、断熱材の底面と前記外装体との間に桟木を介在して、断熱材と外装体との間の密着を避けるようにしているので、乾燥に寄与する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に請求項1又は2に記載の構成において、前記断熱材の天井面と前記外装体との間に、耐圧補強材を設けた、風管式環境試験装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、送風ダクト内の圧力が、外装体と送風ダクトとの間における圧力よりも大きくなった場合、送風ダクトが上面側に膨らむのを耐圧補強材で押さえることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管路を、押さえコンクリートで形成された断面矩形状の外装体と外装体の内壁面に取り付けられた断熱材とで、2重管構造をした送風ダクトを形成しているので、送風ダクト内を流れる冷気と管路の外側との外気は断熱材で断熱され、管路の外周面における凍結・結露を防ぐことができる。
また、送風ダクト部の底面には、断熱材の底面を覆って押さえコンクリートを施工しているので、例え、断熱材の底面で、断熱材同志を連結している目地のコーキングが切れ、そして空調機の下流側にドレン等が発生したとしても、発生したドレンは、押さえコンクリートの上を予め決められた場所に向かって流れ、目地の切れ目を通って断熱材と外装体との間の隙間に流れ込むことがなくなる。また、断熱材の底面の上だけに押さえコンクリートを施工し、天面及び左右の側面の上は施工しないので、安価に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る風管式環境試験装置の機器配置構成を示す水平断面図である。
【
図2】同上風管式環境試験装置の外装体を取り除くと共に、一部を破断して内部機器の配置構成を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、
図1のA-A線に相当する箇所の概略断面図であり、(b)は、
図1のB-B線に相当する箇所の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、低温環境下での各種の試験を行っても、外装体の外側に発生する結露、凍結等を防ぐことができるとともに、降雨・降雪状態を再現する装置として使用し、冷却器等が設置された下流側に例えドレンが発生しても、そのドレンを簡単に処理することができる構造にした風管式環境試験装置を提供するという目的を達成するために、冷却器で生成された冷気を管路により循環させるとともに、前記冷気の循環路中に置かれた被検体に前記冷気を吹きかけ、前記被検体の低温環境下における試験を行う風管式環境試験装置であって、前記管路は、押さえコンクリートで形成された断面略矩形状の外装体と前記外装体の内壁面に取り付けられた断熱材とで送風ダクトを形成しているとともに、前記冷却器の下流に設けられる前記断熱材の底面を覆って押さえコンクリートを施工してなる、構成としたことにより実現した。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0021】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0022】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0023】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の風管式環境試験装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0024】
図1及び
図2は本発明に係る風管式環境試験装置10の機器配置構成の一例を示すものであり、
図1はその水平断面図、
図2はその風管式環境試験装置10の外装体16を取り除き、かつ、一部を破断して内部機器の配置構成を示す斜視図である。
【0025】
図1及び
図2において、風管式環境試験装置10(以下、単に「環境試験装置10」という)は、高温からマイナス温度域(例えば、+60℃~-50℃)まで、広い温度範囲の環境下で、被検体としての自動車Mの風切り音の測定、自動車Mのエンジンに供給されるガソリンの気化状態や空調装置の性能等を建屋内において試験をするための環境試験装置である。その環境試験装置10は、被試験車両である自動車Mの性能試験等を行う環境試験室11と、環境試験室11内の空気を循環させるための風管である風胴12とを備えている。
【0026】
環境試験室11には、低温での環境試験を行う場合に、被試験車両の全体を予め低温に冷やしておくソーク室(図示せず)等から環境試験室11の試験位置13(
図1中の自動車Mが配置されている位置)に、自動車Mを出し入れするための出入口11Aと、冷風(空気)を取り入れるための、前面壁11aに形成した風送入口11Bと、風送入口11Bから環境試験室11内に流入された冷風を順次排出するための後面壁11bに形成した風排出口11Cが設けられている。また、環境試験室11の出入口11Aには、開閉ドア14が設けられている。
【0027】
風胴12は、断面略矩形状をした筒状の送風ダクト15と、送風ダクト15の外側を覆った、同じく断面略矩形状をした筒状の外装体16と、を有して、断面多重筒構造を成している。
【0028】
送風ダクト15の一端側の開口15aは、環境試験室11の前面壁11aに設けられている風送入口11Bから環境試験室11内に差し込まれて、環境試験室11内の試験位置13に向けて開放されている。一方、送風ダクト15の他端側の開口15bは、環境試験室11の後面壁11bに設けられている風排出口11Cから環境試験室11内に差し込まれて、試験位置13に向けて開放されている。すなわち、送風ダクト15は、環境試験室11を前後端に挟んで、平面視概略矩形のループ状に形成されており、送風ダクト15の開口15aから環境試験室11内に吹き込まれた低温(又は高温)の大気を、送風ダクト15の開口15bから再び送風ダクト15内に取り込み、更に送風ダクト15内を開口15a側に流し、再び送風ダクト15の開口15aから環境試験室11内に送り込む、冷気の循環流路を形成する。
【0029】
また、送風ダクト15の風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aまでの間のダクト部151は、風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aに向かうに従い、開口断面積が徐々に大きくなる拡散胴21(以下、これを「第1拡散胴21」と言う)で形成されている。第2コーナー箇所15Bと第3コーナー箇所15Cとの間のダクト部153には、ダクト部154側に向けて冷気を送る強制循環用の送風機22が設けられ、第3コーナー箇所15Cと第4コーナー箇所15Dとの間のダクト部154には、送風ダクト15内を流れる-50度の厳寒大気流を形成可能な図示しない冷却器が設けられている。
【0030】
また、送風ダクト15の風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aまでの間のダクト部151は、風排出口11Cから第1コーナー箇所15Aに向かうに従い、開口断面積が徐々に大きくなる拡散胴21(以下、これを「第1拡散胴21」と言う)で形成されている。第2コーナー箇所15Bと第3コーナー箇所15Cとの間のダクト部153には、冷却器28に向けて冷気を送る強制循環用の送風機22が設けられ、第3コーナー箇所15Cと第4コーナー箇所15Dとの間のダクト部154には、送風ダクト15内を流れる-50℃の厳寒大気流を形成可能な冷却器28が設けられている他に、降雨・降雪状態を再現する装置として、降雨・降雪装置50が冷却器28の下流側、すなわち冷却器28と第4コーナーベーン20との間に設けられている。
【0031】
第2コーナー箇所15Bと第3コーナー箇所15Cとの間のダクト部153は、送風機22を設けた第1ダクト部153aが第2コーナー箇所15Bから第3コーナー箇所15Cへ向かうに従い、開口断面積が徐々に小さくなる縮流胴23(以下、これを「第1縮流胴23」という)と、第1縮流胴23の下流端から第3コーナー箇所15Cに向かうに従い、開口断面積が徐々に大きくなる拡散胴24(以下、これを「第2拡散胴24」という)とで形成されている。そして、送風機22は、第1縮流胴23内に配設されている。
【0032】
第4コーナー箇所15Dとから風送入口11Bまでの間のダクト部155は、整流胴25と、整流胴25の下流端から風送入口11Bへ向かうに従い、開口断面積が徐々に小さくなる縮流胴26(以下、これを「第2縮流胴26」という)とで形成されている。そして、縮流胴26の先端は、送風ダクト15の開口15aとして、環境試験室11内に開口している。
【0033】
送風ダクト15の外側面を覆った筒状の外装体16は、ダクト部151、ダクト部152、ダクト部153、ダクト部154、ダクト部155の外周面を連続的に覆い、断面二重構造をした風胴12を形成し、送風ダクト15内の冷気が風胴12の外側における環境温度の影響を受けないように、熱を遮断する役目をなしている。
【0034】
次に、このように構成された環境試験装置10の動作を説明する。この環境試験装置10では、環境試験室11内に、例えば、+60℃~-50℃の環境を再現して試験を行うことができる。そして、例えば-50℃程度の極寒の環境を再現して低温環境試験を行う場合は、試験に先立ち、ソーク室内で予め低温に冷やされた被検体としての自動車Mを、環境試験室11内の試験位置13まで運び込む。
【0035】
そして、試験が開始されると、ダクト部153内の送風機22とダクト部154内の冷却器とが駆動される。送風機22が駆動されると、送風機22の後側(第2コーナーベーン18側)が負圧で、送風機22の前側(第2拡散胴24側)が正圧となる。これにより、送風機22は、環境試験室11内の空気を風排出口11C側の開口15bから送風ダクト15内に取り込み、ダクト部154内の図示しない冷却器側へ強制的に送る。なお、
図1中において、送風ダクト15内に示す矢印は、空気が流れる方向を示している。また、ダクト部154内の図示しない冷却器では、送風ダクト15内を流れる気流を厳寒(例えば、-50℃)の大気流まで冷し、冷やされた厳寒大気流を風送入口11B側の開口15aから環境試験室11内に吹き出し供給する。吹き出された厳寒大気流の一部は、自動車Mに当たり、また自動車Mの後側に廻った風が、風排出口11C側の開口15bから送風ダクト15内に吸い込まれて、再び送風ダクト15内に戻される。さらに、送風ダクト15内に戻された厳寒大気流は、ダクト部151、ダクト部152、ダクト部153,ダクト部154、ダクト部155を順に通り、途中でダクト部154内の冷却器により再び厳寒大気流の温度まで冷やされ、風送入口11B側の開口15aから自動車Mに向けて吹き出される。このようにして、厳寒大気流を循環させることにより、環境試験室11内には厳寒の環境が再現され、厳寒環境下での試験を行うことができる。
そして、試験が開始されると、送風機22と冷却器28とが駆動される。送風機22が駆動されると、送風機22の後側(第2コーナーベーン18側)が負圧で、送風機22の前側(第2拡散胴24側)が正圧となる。これにより、送風機22は、環境試験室11内の空気を風排出口11Cから送風ダクト15内に取り込み、冷却器28側へ強制的に送る。なお、
図1中において、送風ダクト15内に示す矢印は、空気が流れる方向を示している。また、冷却器28では、送風ダクト15内を流れる気流を厳寒(例えば、-50℃)の大気流まで冷し、冷やされた厳寒大気流が風送入口11Bから環境試験室11内に吹き出される。吹き出された厳寒大気流の一部は自動車Mに当たり、また自動車Mの後側に廻った風が、風排出口11Cから送風ダクト15内に吸い込まれて、再び送風ダクト15内に戻される。さらに、送風ダクト15内に戻された厳寒大気流は、ダクト部151、ダクト部152、ダクト部153,ダクト部154、ダクト部155を順に通り、途中で冷却器28により再び厳寒大気流の温度まで冷やされ、風送入口11Bから自動車Mに向けて吹き出される。このようにして、厳寒大気流を循環させることにより、環境試験室11内には厳寒の環境が再現され、厳寒環境下での試験を行うことができる。
【0036】
以上は、降雨・降雪のない状態での厳寒環境試験である。次に、同じ装置を使用して降雨・降雪を伴う環境試験を行う場合は、空調機器である冷却器28で温度の調整を行い、降雨の場合は、降雨・降雪装置50で生成された降雨を気流に混ぜて風送入口11Bから自動車Mに向けて吹き出す。一方、降雪の場合は、降雨・降雪装置50で生成され雪を気流に混ぜて風送入口11Bから自動車Mに向けて吹き出す、ことにより降雨と降雪の環境下での試験を行うことができる。
【0037】
ところで、このように厳寒大気流を流す送風ダクト15では、降雨・降雪装置50を駆動させて降雨・降雪状態を生成した場合、冷却器28の上流側ではドレンは発生しないが、冷却器28の下流側、特に降雨・降雪装置50の下流側では、ドレンが発生する。そこで、本実施例の送風ダクト15を形成している管路100では、冷却器28及び降雨・降雪装置50を設けているダクト部154の下流側における管路100(ダクト部155)の構造は、例えば
図3の(a)に示すドレン対策を施した構造とし、冷却器28及び降雨・降雪装置50を設けているダクト部154の上流側における管路100の構造は、
図3の(b)に示すようにドレン対策を施さずに、安価に施工できる構造にしている。そのダクト部154の上流側における管路100の構造を
図3の(a)を用いて、また下流側における管路100の構造を
図3の(b)を用いて、次に説明する。
【0038】
図3の(a)は、
図1のA-A線に相当する箇所の概略断面図、すなわちダクト部154の下流側における管路100とダクト部155の管路100の構造である。
図3の(a)示す下流側の箇所では、ドレンが発生する。そこで、
図3の(a)に示す管路100は、建屋等の床面201上に設けられた土台202と桟203とにより支えられて、床面201上に設置されている。
【0039】
図3の(a)に示す、ダクト部154の下流側における管路100とダクト部155における管路100の組立順序としては、まず土台202上に、底面16aと左右の側面16bと天井面16cとを有する、断面略矩形状をした筒状の外装体16を形成する。この外装体16は、押さえコンクリートによる施工を採用する。また、外装体16は、図示しない前後の開口の他に、天井面16cに、作業用扉161で開閉される作業用開口16dが設けられる。作業用開口16dは、後述する断熱材31の形成、及び、断熱材31の底面31aの上を覆う押さえコンクリート34の施工作業等に使用される。
【0040】
外装体16における組立作業の次には、外装体16の内側の底面16a上に、予め板状に成形された押し出し発泡ポリスチレン、例えば「スタイロフォーム」(商標)を固定して配置し、断熱材31の底面31aを形成する、次いで、断熱材31の底面31aの上を覆って、押さえコンクリート34を施工する。
【0041】
続いて、断熱材31の左右の側面31bの部分と天井面31cの部分を形成する。ここでは、断熱材31として、例えば板状のビーズ法発泡ポリスチレン等が使用される。また、ここでの断熱材31の左右の側面31bを形成する部分は、外装体16の左右の側面16bに密着し、天井面31cの部分と外装体16の天井面16cとの間には、作業用空間40が形成される。そして、作業用空間40内には、ダクト部155内の圧力が大きくなって、このダクト部155が外側に膨らもうとしたとき、外側から支えて膨らみを阻止する耐圧補強材41が、断熱材31の天井面31cの部分と外装体16の天井面16cとの間に設けられている。
【0042】
図3の(a)のように形成した管路100では、押さえコンクリートで形成された断面矩形状の外装体16と外装体16の内側に取り付けられた断熱材31とで、2重管構造をしたダクト部154及びダクト部155を形成している。これにより、ダクト部154及びダクト部155内を流れる冷気と管路100の外側との外気は断熱材31で断熱され、管路100の外周面における凍結・結露を防ぐことができる。
【0043】
また、外装体16の底面には断熱材31の底面31aの部分を貼り付け、更に、断熱材31の底面31aを覆って押さえコンクリート34を施工している。これにより、例えば断熱材31の底面31aの部分において、断熱材31同志を連結している目地のコーキングが切れ、そして空調機を構成している冷却器28の下流側にドレン等が発生したとしても、発生したドレンは押さえコンクリート34の上を予め決められた場所に向かって流れ、目地の切れ目を通って断熱材31と外装体16との間の隙間に流れ込むことがなくなる。
【0044】
図3の(b)は、
図1のB-B線に相当する箇所の概略断面図、すなわちダクト部154の上流側の管路100の構造であり、この上流側の箇所では、ドレンは発生しない。そして、
図3の(b)に示す管路100も、下流側の管路100の構造の場合と同様に、建屋等の床面201上に敷設された土台202と桟203と、により支えられて、床面201上に設置されている。
【0045】
図3の(b)に示す、ダクト部154における上流側の管路100の組立順序としては、まず土台202上に、底面16aと左右の側面16bと天井面16cとを有する、断面略矩形状をした筒状の外装体16を形成する。この外装体16は、押さえコンクリートによる施工を採用する。また、外装体16は、図示しない前後の開口の他に、天井面16cに、作業用扉161で開閉される作業用開口16dが設けられている。作業用開口16dは、上流側の管路100の場合と同様に後述する断熱材31を形成する作業等に使用される。
【0046】
外装体16における組立作業の次には、外装体16の内側の底面16a上に、桟木43を設置する。桟木43は、桟木43の上に設置される断熱材31と外装体16の底面16aとの間に隙間44を確保するためのものである。
【0047】
続いて、桟木43の上に、断熱材31を形成する。ここでの断熱材31は、例えば板状のビーズ法発泡ポリスチレン等が使用され、底面31aと左右の側面31bと天井面31cとを設けて断面略矩形状に形成される。また、断熱材31の底面31aを形成する部分は桟木43上に載って横たわり、左右の側面31bを形成する部分は外装体16の左右の側面16bと面密着し、天井面31cを形成する部分と外装体16の天井面16cとの間には、作業用空間40が形成されている。そして、作業用空間40内には、ダクト部154内の圧力が大きくなって、このダクト部154が外側に膨らもうとしたとき、外側から支えて膨らみを阻止するための耐圧補強材41が、断熱材31の天井面31cの部分と外装体16の天井面16cとの間に設けられている。
【0048】
図3の(b)のように形成した管路100では、押さえコンクリートで形成された断面矩形状の外装体16と外装体16の内側に取り付けられた断熱材31とで、2重管構造をしたダクト部154を形成している。これにより、ダクト部154内を流れる冷気と管路100の外側との外気は断熱材31で断熱され、管路100の外周面における凍結・結露を防ぐことができる。
【0049】
したがって、本実施例の構造による風管式環境試験装置10によれば、送風ダクト15の冷却器28よりも下流側で、ドレンが発生する恐れのあるダクト部154とダクト部155の管路100は、外装体16の底面16a上に配設された断熱材31の底面31aを覆って押さえコンクリート34を施工しているので、断熱材31同志を連結している目地のコーキングが切れたとしても、空調機の下流側に発生したドレン等は、押さえコンクリート34の上を予め決められた場所に向かって流れ、目地の切れ目を通って断熱材31と外装体16との間の隙間に流れ込むことがない。
【0050】
一方、送風ダクト15の冷却器28よりも上流側で、ドレンが発生しないダクト部154の管路100は、外装体16の底面16a上に押さえコンクリート34を施工していない構造にしているので、安価に製作することができ、装置全体の製作コストを最小限に抑えることができる。
【0051】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0052】
10 :風管式環境試験装置
11 :環境試験室
11A :出入口
11B :風送入口
11C :風排出口
11a :前面壁
11b :後面壁
12 :風胴
13 :試験位置
14 :開閉ドア
15 :送風ダクト
15A :第1コーナー箇所
15B :第2コーナー箇所
15C :第3コーナー箇所
15D :第4コーナー箇所
15a :開口
15b :開口
16 :外装体
16a :底面
16b :側面
16c :天井面
16d :作業用開口
17 :第1コーナーベーン
18 :第2コーナーベーン
19 :第3コーナーベーン
20 :第4コーナーベーン
21 :第1拡散胴
22 :送風機
23 :第1縮流胴
24 :第2拡散胴
25 :整流胴
26 :第2縮流胴
31 :断熱材
31a :底面
31b :側面
31c :天井面
33 :断熱材31PC構造物
33c :天井面
34 :押さえコンクリート
40 :作業用空間
41 :耐圧補強材
43 :桟木
44 :隙間
50 :降雨・降雪装置
100 :管路
151 :ダクト部
152 :ダクト部
153 :ダクト部
153a :第1ダクト部
154 :ダクト部
155 :ダクト部
161 :作業用扉
201 :床面
202 :土台
203 :桟
M :自動車(被検体)