(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】床下地材、床形成部材、床構造及び床構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20230607BHJP
【FI】
E04F15/024 601D
E04F15/024 602F
E04F15/024 606A
(21)【出願番号】P 2018237408
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】598030858
【氏名又は名称】株式会社井村木工場
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井村 元昭
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-145114(JP,A)
【文献】特開2001-207625(JP,A)
【文献】特開平07-189466(JP,A)
【文献】特開昭56-131743(JP,A)
【文献】特許第6562578(JP,B1)
【文献】特開平07-279380(JP,A)
【文献】特開2003-003648(JP,A)
【文献】特開2002-004552(JP,A)
【文献】特開2003-3648(JP,A)
【文献】特開2017-203262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床基盤上に配置される床構造に用いられる、平面視で複数の矩形状部材がずれて重なった外形を有する床下地材であって、
上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材の3つの前記矩形状部材が積層して構成され、
第1短手端面と、前記第1短手端面と対向する第2短手端面と、前記第1短手端面に隣接する長手端面のうちの一方の第1長手端面と、前記第1長手端面に対向する第2長手端面とを有し、
前記下側矩形状部材に、支持脚の調製ボルトの上端が挿入される貫通孔を有し、
前記第1短手端面及び前記第1長手端面には、凸状の雄実部が形成され、
前記第2短手端面及び前記第2長手端面には、凹状の雌実部が形成され
、
前記床下地材の厚さが、40mm~100mmであり、
前記雌実部の前記下側矩形状部材の厚さは、前記床下地材の厚さの30%~60%である床下地材。
【請求項2】
前記床下地材は、
前記上側矩形状部材、
前記中央矩形状部材、及び
前記下側矩形状部材の3つの前記矩形状部材
が長手方向及び短手方向にずれて重なった外形を有する請求項1に記載の床下地材。
【請求項3】
前記雄実部及び前記雌実部は、前記中央矩形状部材と、前記上側矩形状部材及び下側矩形状部材とにより形成される請求項2に記載の床下地材。
【請求項4】
前記雄実部を形成する前記下側矩形状部材の端面は、平面視において、他の前記矩形状部材の端面よりも内側に位置し、
前記雌実部を形成する前記下側矩形状部材の端面は、平面視において、他の前記矩形状部材の端面よりも外側に位置する請求項3に記載の床下地材。
【請求項5】
前記雌実部を形成する前記中央矩形状部材の端面から前記上側矩形状部材の端面までの長さL1は、前記雄実部を形成する前記上側矩形状部材の端面から前記中央矩形状部材の端面までの長さL2以上である請求項4に記載の床下地材。
【請求項6】
前記雄実部を形成する前記下側矩形状部材の端面から前記中央矩形状部材の端面までの長さL3は、前記雌実部を形成する前記中央矩形状部材の端面から前記下側矩形状部材の端面までの長さL4以上である請求項4又は5に記載の床下地材。
【請求項7】
床基盤上に配置される床構造に用いられる床形成部材であって、
請求項1~
6の何れか一つの床下地材と、
前記床下地材を支持する支持脚と、
前記床下地材の上面に設けられる、当該上面と同じ大きさの床仕上げ材と、
を有する床形成部材。
【請求項8】
前記支持脚は、平面視において、前記第2短手端面及び前記第2長手端面の前記床下地材に、少なくとも1つ設けられる請求項
7に記載の床形成部材。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載の床形成部材を複数備え、
一の床形成部材の第1短手端面側の前記雄実部を他の床形成部材の第2短手端面側の前記雌実部に嵌合させ、及び/又は、前記一の床形成部材の第1長手端面側の前記雄実部を前記他の床形成部材と異なる他の床形成部材の第2長手端面側の前記雌実部に嵌合させて、連結された床構造。
【請求項10】
床基盤上に配置される床構造に用いられる、平面視で複数の矩形状部材がずれて重なった外形を有する床下地材であって、
上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材の3つの前記矩形状部材が積層して構成され、
第1短手端面と、前記第1短手端面と対向する第2短手端面と、前記第1短手端面に隣接する長手端面のうちの一方の第1長手端面と、前記第1長手端面に対向する第2長手端面とを有し、
前記下側矩形状部材に、支持脚の調製ボルトの上端が挿入される貫通孔を有し、
前記第1短手端面及び前記第2短手端面のうちの一方には、凸状の雄実部又は凹状の雌実部が形成され、他方には、前記凸状の雄実部若しくは前記凹状の雌実部が形成される、又は前記凸状の雄実部及び前記凹状の雌実部のいずれも形成されず、
前記第1長手端面及び前記第2長手端面のうちの一方には、前記凸状の雄実部又は前記凹状の雌実部が形成され、他方には前記凸状の雄実部及び前記凹状の雌実部のいずれも形成され
ず、
前記床下地材の厚さが、40mm~100mmであり、
前記雌実部の前記下側矩形状部材の厚さは、前記床下地材の厚さの30%~60%である床下地材。
【請求項11】
床基盤上に配置される床構造に用いられる床形成部材であって、
請求項
10に記載の床下地材と、
前記床下地材を支持する支持脚と、
前記床下地材の上面に設けられる、当該上面と同じ大きさの床仕上げ材と、
を有する床形成部材。
【請求項12】
前記床構造の端部に、請求項
11に記載の床形成部材が連結された請求項
9に記載の床構造。
【請求項13】
室内競技施設用である請求項
9又は
12に記載の床構造。
【請求項14】
床下地材に支持脚が固定された床形成部材を床基盤上に複数配置する床構造の施工方法であって、
前記床下地材は、
上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材の3つの前記矩形状部材が積層して構成され、平面視で複数の矩形状部材がずれて重なった外形を有し、
前記床下地材は、第1短手端面と、前記第1短手端面と対向する第2短手端面と、前記第1短手端面に隣接する長手端面のうちの一方の第1長手端面と、前記第1長手端面に対向する第2長手端面とを備え、
前記下側矩形状部材に、支持脚の調製ボルトの上端が挿入される貫通孔を有し、
前記第1短手端面及び前記第1長手端面には、凸状の雄実部が形成され、
前記第2短手端面及び前記第2長手端面には、凹状の雌実部が形成され
ず、
前記床下地材の厚さが、40mm~100mmであり、
前記雌実部の前記下側矩形状部材の厚さは、前記床下地材の厚さの30%~60%であり、
一の床形成部材の第1短手端面側の雄実部を他の床形成部材の第2短手端面側の雌実部に嵌合させ、前記一の床形成部材の第1長手端面側の雄実部を前記他の床形成部材と異なる他の床形成部材の第2長手端面側の雌実部に嵌合させて、連結させることで、床面を形成する床構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地材、床形成部材、床構造及び床構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅又は体育館や多目的ホール等の室内競技施設等の建築設備では、床スラブ上に所定間隔で配置した複数の支持脚の上に床下地材を設置し、床下地材の上に打付けや張り付け等により床仕上げ材を施工する二重床構造が採用されている。二重床構造は、建築設備の配管及び配線スペースの形成及び確保等に優れることから、建築設備の設計及び施工に積極的に採用されている。
【0003】
このような二重床構造として、例えば、特許文献1には、床大梁に設けられたスペーサの上面及び床大梁の両端に取り付けられた床小梁の上面に床下地材を敷設し、その床下地材の上に床仕上材を敷設した床構造が開示されている。この床構造では、床仕上材の幅方向の一方の端縁部には、全長に亘って溝状の凹部が形成され、その反対側の端縁部には凹部に嵌り合う凸部が全長に亘って形成されている。床仕上材を敷設する際には、隣り合って配置される2枚の床仕上材のうちの一方の床仕上材の凹部に、もう一方の床仕上材の凸部を挿入して両者を嵌合させた後、床仕上材を床下地材に接着又は釘打ち等により固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の床構造では、床下地材の施工後、床下地材の上に床仕上げ材を敷設する前に、床仕上げ材の目地や高さ等がずれないように、床下地材が所定の箇所にビスが刺されていることや床下地材の高さが略同じであること等、多くの確認作業が必要であり、煩雑である。そのため、施工現場で床下地材に床仕上げ材の取り付け作業を行う際、床仕上げ材の設置作業の手間が多く、時間がかかる。また、床下地材又は床仕上げ材を施工する作業員によっては、床仕上げ材の施工後の床面にばらつきが生じたり、床構造の施工時間が異なる場合がある。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、施工性に優れると共に、平坦な床面を形成した床構造を容易に施工できる床下地材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る床下地材の一態様は、床基盤上に配置される床構造に用いられる、平面視で複数の矩形状部材がずれて重なった外形を有する床下地材であって、第1短手端面と、前記第1短手端面と対向する第2短手端面と、前記第1短手端面に隣接する長手端面のうちの一方の第1長手端面と、前記第1長手端面に対向する第2長手端面とを有し、前記第1短手端面及び前記第1長手端面には、凸状の雄実部が形成され、前記第2短手端面及び前記第2長手端面には、凹状の雌実部が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、施工性に優れると共に、平坦な床面を形成した床構造を容易に施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る床下地材が適用された二重床構造の構成を簡略に示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る床形成部材の構成を簡略に示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係る床形成部材の構成を簡略に示す他の斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る床下地材の構成を簡略に示す斜視図である。
【
図5】一実施形態に係る床下地材の構成を簡略に示す他の斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る床形成部材の平面図である。
【
図11】一実施形態に係る床形成部材の分解斜視図である。
【
図12】一実施形態に係る床下地材の他の構成を示す図である。
【
図13】一実施形態に係る床下地材の他の構成を示す図である。
【
図14】床の施工方法の一工程を説明する図である。
【
図15】床の施工方法の一工程を説明する図である。
【
図16】床の施工方法の一工程を説明する図である。
【
図17】床形成部材の構成の他の一例を示す平面図である。
【
図18】複数の床形成部材を配置した一例を示す平面図である。
【
図19】床形成部材の構成の他の一例を示す平面図である。
【
図20】複数の床形成部材を配置した一例を示す平面図である。
【
図21】床形成部材の構成の他の一例を示す平面図である。
【
図22】複数の床形成部材を配置した一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。
【0011】
本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、床材の、短手方向をX軸方向、長手方向をY軸方向とし、高さ方向(厚さ方向)をZ軸方向とする。床材の下から上に向かう方向を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、-Z軸方向を下という場合がある。床材の端面を表す際、床材の短手方向は、-X軸方向から+X軸方向にかけてX1、X2と表し、床材の長手方向は、-Y軸方向から+Y軸方向にかけてY1、Y2と表し、床材の厚さ方向は、-Z軸方向から+Z軸方向をZ1、Z2、及びZ3と表す。
【0012】
<二重床構造>
一実施形態に係る床下地材が適用された二重床構造について説明する。
図1は、一実施形態に係る床下地材が適用された二重床構造の構成を簡略に示す斜視図である。
図1に示すように、二重床構造(以下、単に「床構造」という)1は、複数の床形成部材10を有し、隣接する床形成部材10同士の長手端面及び短手端面同士が連結して複数の床形成部材10の主面同士が隣接するように配置されることにより、床面を形成する。隣接する床形成部材10の短手端面同士は一致するように配置され、隣接する床形成部材10の長手端面同士は床形成部材10の長手方向の長さの約1/2だけずらして配置されている。床構造1は、基礎面である床スラブ(床基盤)11上に立設し、床スラブ11と床形成部材10との間に床下空間を有する。以下、床形成部材10の構成について説明する。
【0013】
[床形成部材]
図2は、一実施形態に係る床形成部材10の構成を簡略に示す斜視図であり、
図3は、一実施形態に係る床形成部材10の構成を簡略に示す他の斜視図である。
図2及び
図3に示すように、床形成部材10は、床材20、及び床材20を床スラブ11上に支持する支持脚30を有する。床形成部材10を構成する床材20、及び支持脚30について説明する。
【0014】
[床材]
図2及び
図3に示すように、床材20は、支持脚30上に設けられている。床材20は、
図1に示すように、隣接する床材20の短手端面同士がそれぞれ一致するように配置され、隣接する床材20の長手端面同士はずらして配置されている。
【0015】
床材20は、
図2及び
図3に示すように、床下地材(下地パネル)21、及び床仕上げ材(フローリング材)22を備え、支持脚30側から床面側に向かって、床下地材21、及び床仕上げ材22の順に積層されている。
【0016】
(床下地材)
図4は、一実施形態に係る床下地材21の構成を簡略に示す斜視図であり、
図5は、一実施形態に係る床下地材21の構成を簡略に示す他の斜視図であり、
図6は、
図4のI-I断面図であり、
図7は、
図4のII-II断面図である。
図4~
図7に示すように、床下地材21は、3つの矩形状部材(上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材)が積層して構成され、これらの矩形状部材が短手方向(X軸方向)及び長手方向(Y軸方向)にずれて重なった外形を有するような板状部材である。
【0017】
床下地材21は、3つの矩形状部材を一枚の板状部材を加工した板状部材(すなわち、3つの矩形状部材が全体で一体となっている)でもよい。床下地材21は、3つの矩形状部材をこれらの短手方向(X軸方向)及び長手方向(Y軸方向)にずらして重ねた状態で、それぞれの矩形状部材同士が重なる面を接着剤等の固定手段で接合して構成した板状部材でもよい。なお、床下地材21が、一枚の板状部材を加工した板状部材の場合、3つの矩形状部材をずらして重ねた状態で接合した場合と同様に、対応する部材を、それぞれ、上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材と称する。また、以下の説明において、床下地材21が、一枚の板状部材を加工した板状部材の場合について説明する。
【0018】
床下地材21は、平板状の板材を、上記のように加工した板材であり、木質系材料やこれらの複合材等で形成される。床下地材21を形成する材料としては、針葉樹材又は広葉樹材の単板、針葉樹材又は広葉樹材の合板、針葉樹材の単板及び広葉樹材の単板が共に使用された合板、繊維板、配向性ストランドボード(Oriented Strand Board:OSB)、パーティクルボード、ケイカル板、スレート板等が用いられる。繊維板としては、例えば、高密度繊維板(High Density fiberboard:HDF)中密度繊維板(Medium Density fiberboard:MDF)等を使用できる。また、床下地材21は、平板状の板材を、上記のように所定の形状に加工可能であればよく、合成樹脂、金属、又はセラミックス等で形成されていてもよい。
【0019】
図4及び
図5に示すように、床下地材21は、+Y軸方向側の第1短手端面21aと、第1短手端面21a側とは反対方向(-Y軸方向)の第2短手端面21bと、-X軸方向側の第1長手端面21cと、第1長手端面21c側とは反対方向(+Y軸方向)の第2長手端面21dとを有する。これらの端面は、平面視において、それぞれ、位置の異なる3つの端面を有する。
【0020】
図6及び
図7に示すように、第1短手端面21aは、支持脚30側から床面側に向かって、21a
Y2Z1、21a
Y2Z2、及び21a
Y2Z3を有する。第2短手端面21bは、支持脚30側から床面側に向かって、21b
Y1Z1、21b
Y1Z2、及び21b
Y1Z3を有する。第1長手端面21cは、支持脚30側から床面側に向かって、21c
X1Z1、21c
X1Z2、及び21c
X1Z3を有する。第2長手端面21dは、支持脚30側から床面側に向かって、21d
X2Z1、21d
X2Z2、及び21d
X2Z3を有する。
【0021】
床下地材21は、第1短手端面21a及び第1長手端面21cに、凸状の雄実部211を有し、第2短手端面21b及び第2長手端面21dに、凹状の雌実部212を有する。
【0022】
雄実部211は、床下地材21が3つの矩形状部材(上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材)が積層して構成されているとする。この時、雄実部211は、平面視において、中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2が、上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3及び下側矩形状部材の端面21aY2Z1、21cX1Z1よりも外側となるように配置することで形成される。
【0023】
すなわち、雄実部211は、
図5~
図7に示すように、床下地材21の第1短手端面21a及び第1長手端面21cに突条に形成され、第1短手端面21a及び第1長手端面21cの全長に亘って形成されている。雄実部211は、第1短手端面21aに床下地材21の短手方向(X軸方向)に沿って形成され、第1長手端面21cに床下地材21の長手方向(Y軸方向)に沿って形成されている。
【0024】
雌実部212は、床下地材21が3つの矩形状部材(上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材)が積層して構成されているとする。この時、雌実部212は、平面視において、中央矩形状部材の端面21bY1Z2、21dX2Z2が、上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3及び下側矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1よりも内側となるように配置することで形成される。
【0025】
すなわち、
雌実部21
2は、
図4、
図6及び
図7に示すように、床下地材21の第2短手端面21b及び第2長手端面21dとに溝状に形成され、第2短手端面21b及び第2長手端面21dの全長に亘って形成されている。雌実部212は、第2短手端面21bに床下地材21の短手方向(X軸方向)に沿って形成され、第2長手端面21dに床下地材21の長手方向(Y軸方向)に沿って形成されている。
【0026】
雄実部211は、雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21aY2Z1、21cX1Z1が、上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3よりも内側に位置するように形成されている。
【0027】
すなわち、端面21aY2Z1は、平面視において、第1短手端面21aに、端面21aY2Z3よりも内側に位置するように、床下地材21の短手方向(X軸方向)に沿って形成されている。端面21cX1Z1は、平面視において、第1長手端面21cに、端面21cX1Z3よりも内側に位置するように、床下地材21の長手方向(Y軸方向)に沿って形成されている。
【0028】
雌実部212は、雌実部212を形成する下側矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1が、上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3よりも外側に位置するように形成されている。
【0029】
すなわち、端面21bY1Z1は、平面視において、第2短手端面21bに、端面21bY1Z3よりも外側に位置するように、床下地材21の短手方向に沿って形成されている。端面21dX2Z1は、第2長手端面21dに、端面21dX2Z3よりも外側に位置するように、床下地材21の長手方向に沿って形成されている。
【0030】
床下地材21は、
図4及び
図6に示すように、その下側矩形状部材に、支持脚30の調製ボルト32の上端が挿入される貫通孔23を有する。貫通孔23は、平面視において、第2短手端面の目地の位置である端面21b
Y1Z3の位置に設けられている。貫通孔23は、床下地材21の下側矩形状部材を貫通しており、貫通孔23の内径は、支持脚30の調製ボルト32の外径より大きめに形成されている。調製ボルト32の上端が床下地材21の貫通孔23(
図6参照)に挿入されることで、床下地材21は支持脚30に固定される。
【0031】
床下地材21の、各端面(第1短手端面21a、第2短手端面21b、第1長手端面21c及び第2長手端面21d)は、それぞれ、任意の角部で面取加工を施されたり、R形状加工を施されていてもよい。
【0032】
図6及び
図7に示すように、雌実部212を形成する中央矩形状部材の端面21b
Y1Z2、21d
X2Z2から上側矩形状部材の端面21b
Y1Z3、21d
X2Z3までの長さL1は、雄実部211を形成する上側矩形状部材の端面21a
Y2Z3、21c
X1Z3から中央矩形状部材の端面21a
Y2Z2、21c
X1Z2までの長さL2以上であることが好ましい。長さL1は、雌実部212の奥行きを表し、長さL2は、雄実部211の突出量を表す。雌実部212の奥行きが雄実部211の突出量以上であれば、一方の床材20の雄実部211の中央矩形状部材の端面21a
Y2Z2、21c
X1Z2が他方の床材20の雌実部212の中央矩形状部材の端面21b
Y1Z2、21d
X2Z2と接触する前に、一方の床材20の雄実部211の上側矩形状部材の端面21b
Y1Z3、21d
X2Z3が他方の床材20の雌実部212の上側矩形状部材の端面21a
Y2Z3、21c
X1Z3と接触する。このとき、一方の床材20の雌実部212の中央矩形状部材の端面21b
Y1Z2、21d
X2Z2と隣り合う床材20の雄実部211の中央矩形状部材の端面21a
Y2Z2、21c
X1Z2との間には隙間空間S1が形成される。よって、長さL1が長さL2以上であれば、複数の床材20が隣り合うように配置しても、床材20の短手端面同士及び長手端面同士の目地に隙間(目隙)が生じにくい。
【0033】
図6及び
図7に示すように、雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21a
Y2Z1、21c
X1Z1から中央矩形状部材の端面21a
Y2Z2、21c
X1Z2までの長さL3は、雌実部212を形成する中央矩形状部材の端面21b
Y1Z1、21d
X2Z1から下側矩形状部材の端面21b
Y1Z1、21d
X2Z1までの長さL4以上であることが好ましい。長さL3が長さL4以上であれば、一方の床材20の雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21a
Y2Z1、21c
X1Z1に他方の床材20の雌実部212を形成する下側矩形状部材の端面21b
Y1Z1、21d
X2Z1が接触する前に、一方の床材20の雄実部211を形成する上側矩形状部材の端面21a
Y2Z3、21c
X1Z3が他方の床材20の雌実部212を形成する上側矩形状部材の端面21b
Y1Z3、21d
X2Z3と接触する。このとき、一方の床材20の雌実部212を形成する下側矩形状部材の端面21b
Y1Z1、21d
X2Z1と、隣り合う床材20の雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21a
Y2Z1、21c
X1Z1との間には、隙間空間S2が形成される。そのため、複数の床材20が隣り合うように配置しても、床材20の短手端面同士及び長手端面同士の間に目隙が生じにくい。
【0034】
図6及び
図7に示すように、雌実部212の下側矩形状部材の厚さH2は、床下地材21の厚さH1の30%~60%であることが好ましく、40%~50%であることがより好ましい。厚さH2が上記範囲内であれば、床下地材21の下側矩形状部材は衝撃に耐えるのに十分な強度を備えると共に、支持脚30の調製ボルト32の上端の高さ調整の自由度が高くなる。
【0035】
床下地材21の厚さH1は、適宜設計可能であり、床下地材21の厚さH1の下限値は、例えば、30mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましく、50mm以上がさらに好ましい。床下地材21の厚さH1が30mm以上であれば、雄実部211、及び雌実部212は、各端面で、それぞれ十分な厚さを確保でき、床下地材21の強度は十分であるため、衝撃を受けた際に床下地材21に破損や撓みを生じ難くできる。また、床下地材21の厚さH1の上限値は、100mm以下であればよい。床下地材21の厚さH1が100mmであれば、床下地材21の衝撃吸収性能が損なわれることを抑制できる。
【0036】
床下地材21の主面213の大きさは、特に限定されるものではなく、設置場所等、設置状況に応じて適宜変更することができる。例えば、床下地材21は、その主面213の短辺が200mm~400mm、長辺が900mm~3600mmの板材を用いることができる。床下地材21の短辺及び長辺は、施工のし易さ及び基材の寸法の取り易さ等に基づいて適宜設計される。
【0037】
床下地材21は、支持脚30の台座34(
図11参照)に対して着脱可能とするため、床下地材21の下面からビス止めにて台座34(
図11参照)に固定される。
【0038】
(床仕上げ材)
図2及び
図3に示すように、床仕上げ材22は、床下地材21の主面213に敷設されている。
図8は、一実施形態に係る床形成部材10の平面図である。
図2、
図3及び
図8に示すように、床仕上げ材22の短手端面22a、22b及び長手端面22c、22dの長さは、床下地材21の第1短手端面21a、第2短手端面21b、第1長手端面21c、及び第2長手端面21dの長さとそれぞれ等しい長さを有する。床仕上げ材22は、その平面視において、床下地材21の主面213と略同一の大きさに形成されている。
【0039】
床仕上げ材22は、床下地材21の主面213(
図4参照)と接着剤や粘着材等により貼り付けられ、一体化されている。
【0040】
接着剤としては、床仕上げ材等の施工に用いられる一般的な接着剤等を用いることができ、変性シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、又はエポキシ系接着剤等を用いることができる。
【0041】
粘着材としては、床仕上げ材等の施工に用いられる一般的な粘着剤や両面テープ等を用いることができ、例えばゴム系、ラテックス樹脂系、ゴムラテックス樹脂系、アクリル樹脂系又はアクリル樹脂系エマルションタイプ等の粘着材が用いられる。
【0042】
床仕上げ材22としては、例えば、合成樹脂等で形成されたシート材等の軟質系仕上げ材、フローリング材、木質フロア、床タイル、コルク材、畳、じゅうたん等が挙げられる。床仕上げ材22を床下地材21の主面213(
図3等参照)上に設けることにより、床表面が仕上げられる。
【0043】
図8に示すように、床仕上げ材22の短手端面22a、22b及び長手端面22c、22dは、床下地材21の第1短手端面21a、第2短手端面21b、第1長手端面21c、及び第2長手端面21dの長さとそれぞれ等しい長さとする。なお、短手端面22a、22b及び長手端面22c、22dの長さは、床下地材21の第1短手端面21a、第2短手端面21b、第1長手端面21c、及び第2長手端面21dの長さとそれぞれ略等しい長さであればよい。
【0044】
図9は、
図2のIII-III断面図であり、
図10は、
図2のIV-IV断面図である。
図9及び
図10に示すように、床仕上げ材22の厚さH3は、床下地材21の厚さH1等に応じて適宜設計可能であり、床下地材21の厚さH1の5%~30%であることが好ましく、10%~20%であることがより好ましい。床仕上げ材22の厚さH3が、床下地材21の厚さH1の5%~30%の範囲内であれば、床仕上げ材22は、硬くなりすぎず、衝撃吸収性能を十分発揮できるため、歩行者の膝への負担を軽減できる。床仕上げ材22の厚さH3は、具体的には、例えば、3mm~6mmであることが好ましい。
【0045】
[支持脚]
図2に示すように、支持脚30は、床スラブ11上に立設されている。支持脚30は、
図8及び
図9に示すように、床材20の平面視において、床下地材21の、雌実部212が形成された第2短手端面21b側に形成された下側矩形状部材に固定されている。支持脚30は、床下地材21の第2短手端面21bの目地の略中心に位置するように設けられている。
【0046】
図11は、一実施形態に係る床形成部材10の分解斜視図である。
図11に示すように、支持脚30は、床スラブ11上に設置されるクッションゴム(防振ゴム)31と、防振ゴム31に回転自在に立設した支持ボルト(調製ボルト)32と、調製ボルト32の上端に螺合した調整ナット33と、調製ボルト32の上端部(室内側)に調整ナット33に固定して調製ボルト32で支持する矩形状の台座34とを備える。
【0047】
防振ゴム31は、円筒状に形成された部材であり、上端に金具の雌ねじ部31aを有する。防振ゴム31は、例えば、ゴム、合成樹脂等の弾性材料で形成される。
【0048】
調製ボルト32は、その両端の外周面に雄ネジが形成された金属製のネジ部材であり、下端に雄ねじ部32aを有し、上端に雄ねじ部32bを有する。調製ボルト32は、
図11に示すように、下端の雄ねじ部32aが防振ゴム31の上端に設けた雌ねじ部31aに螺合され、上端の雄ねじ部32bが台座34に設けられた調整ナット33の雌ねじ部33aに螺合される。調製ボルト32の雄ねじ部32aを防振ゴム31の雌ねじ部31aに螺合させることで、調製ボルト32は、防振ゴム31に回転自在に立設される。
【0049】
調製ボルト32は、その上端面にマイナス溝32cを有する。マイナス溝32cにドライバ等の回転用工具の先端を嵌め込んで回転させることで、調製ボルト32は回転し、昇降する。
【0050】
調整ナット33は、雌ねじ部33aと、その下方周縁に設けられる環状鍔部33bとを備え、金属製の部材で形成される。雌ねじ部33aは、円筒状に形成されており、その内側に雌ねじが形成されている。調整ナット33は、雌ねじ部33aが台座34の下面側から挿通穴34aに嵌合した状態で、調製ボルト32と螺合して設けられている。
【0051】
台座34は、矩形状に形成された板状部材であり、金属で形成される。台座34は、その中央部分に挿通穴34aを有する。調製ボルト32の上端の雄ねじ部32bが台座34に設けられた調整ナット33の雌ねじ部33aに螺合される。上端側の雄ねじ部32bを台座34の貫通孔の内周面に設けられた調整ナット33の雌ねじ部33aに螺合させることで、台座34は、調製ボルト32の上部に取り付けられる。調製ボルト32の上部に台座34を設けることで、調製ボルト32の上端面(支持面)の受け面積を広くした状態で床材20は調製ボルト32に取付けられる。
【0052】
支持脚30の組み立て方法の一例を説明する。まず、防振ゴム31の雌ねじ部31aに調製ボルト32の下端の雄ねじ部32aを螺合させ、防振ゴム31上に調製ボルト32を取り付ける。調製ボルト32の上端面のマイナス溝32cに、ドライバ等の回転用工具の先端を嵌め込んで調製ボルト32を回転させ、調製ボルト32を昇降させることで、調製ボルト32の防振ゴム31への固定位置を調整できる。次に、調整ナット33の雌ねじ部33aを台座34の挿通穴34aに嵌合させ、挿通穴34aの穴周縁に環状鍔部33bを接触させることで、調整ナット33に台座34が設置される。次に、調製ボルト32の上端の雄ねじ部32bに、台座34に取り付けた調整ナット33の雌ねじ部33aを螺合させる。これにより、支持脚30が組み立てられる。なお、調製ボルト32を回転して調製ボルト32を昇降させ、調製ボルト32の雌ねじ部33aとの螺合位置を調整することにより、台座34の高さが調整される。
【0053】
<床形成部材の壁際構造>
床形成部材10は、建築設備の壁際に設けられる場合、壁面に接触する短手端面又は長手端面には、雄実部211又は雌実部212を形成しなくてもよい。すなわち、床形成部材10は、第1短手端面21a及び第2短手端面21bのうちの一方には、雄実部211又は雌実部212が形成され、他方には雄実部211若しくは雌実部212が形成される、又は雄実部211及び雌実部212のいずれも形成されない。第1長手端面21c及び第2長手端面21dのうちの一方には、雄実部211又は雌実部212が形成され、他方には雄実部211及び雌実部212のいずれも形成されない。
【0054】
床形成部材10が建築設備の壁際に設けられる場合、建築設備の壁際に設けられる床形成部材10は、第1短手端面21a又は第2長手端面21dには、雄実部211及び雌実部212のいずれも有しない。例えば、
図12に示すように、建築設備の壁際の角部に設けられる床形成部材10は、第1短手端面21aには雄実部211及び雌実部212のいずれも形成されず、第2短手端面21bには雌実部212を形成する。そして、床形成部材10は、第1長手端面21c及び第2長手端面21dには、雄実部211又は雌実部212を形成する。
【0055】
建築設備の壁際に他方の設けられる床形成部材10は、
図13に示すように、第1短手端面21aには雄実部211を形成し、第2短手端面21bには雄実部211及び雌実部212のいずれも形成しない。そして、床形成部材10は、第1長手端面21c及び第2長手端面21dには、雄実部211又は雌実部212を形成する。
【0056】
建築設備の壁際の角部に設けられる床形成部材10は、第1短手端面21a及び第2短手端面21bの一方には雄実部211又は雌実部212が形成され、他方には雄実部211及び雌実部212のいずれも形成されない。そして、床形成部材10は、第1長手端面21c及び第2長手端面21dの一方には雄実部211又は雌実部212を形成し、他方には雄実部211及び雌実部212の何れも形成しない。
【0057】
建築設備の壁面に沿って設けられる床形成部材10は、第1短手端面21a及び第2短手端面21bの一方には雄実部211又は雌実部212が形成され、他方には雄実部211又は雌実部212が形成される。そして、床形成部材10は、第1長手端面21c及び第2長手端面21dの一方には雄実部211又は雌実部212を形成し、他方には雄実部211及び雌実部212の何れも形成しない。
【0058】
<床の施工方法>
次に、床構造1の施工方法について説明する。床構造1の施工に際しては、まず、床下地材21の主面213(
図4等参照)側に接着剤等で床仕上げ材22と一体化した床材20を複数準備する。一方、調製ボルト32の下端の雄ねじ部32aを防振ゴム31の雌ねじ部31aに螺合して取り付け、防振ゴム31に調製ボルト32が立設した状態とする。
【0059】
次に、床材20の床下地材21に台座34を挟んだ状態で嵌合して取り付けた調整ナット33に、調製ボルト32の上端の雄ねじ部32bを螺合して組み立てる。調製ボルト32の上端が床下地材21の貫通孔23に挿入されることで、床下地材21は支持脚30に固定される。
【0060】
これにより、支持脚30が床材20の床下地材21に取り付けられた床形成部材10が作製される。
【0061】
その後、防振ゴム31側を下にして、床スラブ11の基礎面に、床下地材21が連結された支持脚30を立脚させ、
図14に示すように、一方の床材20の床下地材21の第1短手端面21aと隣り合う他の床材20の床下地材21の第2短手端面21bとを連結する。これにより、複数の床材20の床下地材21の短手端面同士を連結して固定する。
【0062】
床形成部材10は、支持脚30が床下地材21の一方の第1短手端面21aにのみ設けられているため、床形成部材10は、単独では、床スラブ11上に自立できない。隣接する床形成部材10の短手端面同士を嵌合させることで、一方の床形成部材10は、第2短手端面21b側の下側矩形状部材の下方に固定した支持脚30と、第1短手端面21a側の中央矩形状部材の下面に設置された他方の床形成部材10の支持脚30とにより支持されることで、床スラブ11上に立設する。
【0063】
複数の床下地材21の短手端面同士の固定は、床下地材21の第1短手端面21a、第2短手端面21b側の雄実部211に接着剤を塗布する方法、又は床下地材21の第1短手端面21a、第2短手端面21b側の雄実部211に両面テープ等の粘着材を貼り付ける方法等により行うことができる。
【0064】
図15に示すように、複数の床形成部材10の短手端面同士で連結されることで、複数の床形成部材10で構成された床形成部材連続体2が、床スラブ11上に立設する。
【0065】
次いで、
図16に示すように、一方の床形成部材連続体2を構成する床材20の床下地材21の長手端面を、隣接する他方の床形成部材連続体2を構成する床材20の床下地材21の長手端面と連結する。他方の床形成部材連続体2は、その床材20の床下地材21の長手方向の長さの約1/2だけずらして、一方の床形成部材連続体2に連結される。複数の床下地材21の長手端面同士の連結は、上述の複数の床下地材21の短手端面同士の連結方法と同様に行うことができる。
【0066】
複数の床材20の床下地材21の短手端面同士及び長手端面同士を連結する際、雄実部211を他の床下地材21の雌実部212に嵌合させることで、隣り合う床材20の表面は互いに面一となる。なお、各調製ボルト32を回して台座34を昇降させることにより、各床材20の高さの微調整を行い、床材20の上面の高さを調整してもよい。
【0067】
以上説明した通り、一の床形成部材10の床下地材21の第1短手端面21a側の雄実部211を他の床形成部材10の床下地材21の第2短手端面21b側の雌実部212に嵌合させる。そして、一の床形成部材10の床下地材21の第1長手端面21c側の雄実部211を他の床形成部材10と異なる他の床形成部材10の床下地材21の第2長手端面21d側の雌実部212に嵌合させて、連結させる。複数の床形成部材10が、その短手端面同士及び長手端面倒が連結されて組み合わされることで、床構造1が施工される。
【0068】
このように、床構造1は床形成部材10を有し、床形成部材10は床下地材21を備えている。床下地材21は、雄実部211、雌実部212を有する。そして、雄実部211は、床下地材21が3つの矩形状部材(上側矩形状部材、中央矩形状部材、及び下側矩形状部材)が積層して構成されているとする。この時、中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2を、上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3及び下側矩形状部材の端面21aY2Z1、21cX1Z1よりも外側となるように形成している。雌実部212は、中央矩形状部材の端面21bY1Z2、21dX2Z2を、上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3及び下側矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1よりも内側となるように形成している。
【0069】
複数の床形成部材10が組み合わる際には、一方の床形成部材10の第1短手端面21aに形成された雄実部211を他の床形成部材10の第2短手端面21bに形成された雌実部212に挟み込むように嵌合させる。また、一方の床形成部材10の第1短手端面21aの中央矩形状部材の下面を、他の床形成部材10の第2短手端面21bの下側矩形状部材の上面に載せて固定する。これにより、複数の床形成部材10をその短手端面同士が連結された状態で床スラブ11上に敷設できる。また、複数の床形成部材10の短手端面同士を連結させることで、複数の床形成部材10を床スラブ11上に自立させることができる。そして、複数の床形成部材10の短手端面同士が連結された床形成部材連続体2(
図15参照)を複数準備する。その後、一方の床形成部材連続体2(
図15参照)の床形成部材10の第1長手端面21cの雄実部311を、他の床形成部材連続体2(
図15参照)の床形成部材10の第2長手端面21dに形成された雌実部312に嵌合させる。また、一方の床形成部材10の第1長手端面21cの中央矩形状部材の下面を、他の床形成部材10の第2長手端面21dの下側矩形状部材の上面に載せて連結する。
【0070】
床形成部材10は、隣接する床形成部材10同士を効率良く簡単に組み合わせることができると共に、隣り合う床仕上げ材10同士の表面を容易に面一とすることができる。よって、床形成部材10は、施工性に優れると共に、平坦な床面を形成した床構造1を容易に施工できる。
【0071】
したがって、床構造1は、複数の床形成部材10で構成することにより、より短時間で安定して平坦な床面を有することができる。また、床構造1は、既存の建造物等においても使用可能であり、床構造の改修等の際にも適用することができるため、床を改修する際の費用の低減を図ることができる。
【0072】
床形成部材10は、床下地材21及び床仕上げ材22を一体に形成している。そのため、床下地材21と床仕上げ材22とを別々に搬入して、床下地材21を組み立てた後、その床下地材21の上に床仕上げ材22を貼り合わせる場合に比べて、床構造の施工時の部材の数を減らせると共に、搬入及び保管等の費用を低減できる。また、床形成部材10は、床下地材21及び床仕上げ材22を一体に形成することで、同一の作業員によって床構造1の施工を同時にできるため、床構造1の施工の作業効率を向上させることができると共に、作業費用を低減できる。さらに、床形成部材10は、床下地材21及び床仕上げ材22を一体に形成することで、床構造1の組み立てが容易になるため、異なる作業員が床構造1を施工しても、施工される床構造1の品質のばらつきを抑えることができる。よって、例えば、作業員の経験の度合い等によって施工される床構造1の品質にばらつきが生じるのを抑えることができるので、品質の安定した床構造1を容易に施工できる。また、床形成部材10は、床下地材21及び床仕上げ材22を一体に形成することで、床下地材に床仕上材を接着剤で貼り合わせて取り付ける場合に比べて、床下地材に床仕上材を貼り合わせる際に用いた接着剤が固化するまでに要する時間を省略できる。よって、床構造1の施工の作業効率をさらに向上させることができる。
【0073】
床形成部材10は、雌実部212を形成する中央矩形状部材の端面21bY1Z2、21dX2Z2から上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3までの長さL1を、雄実部211を形成する上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3から中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2までの長さL2以上としている。長さL1は、雌実部212の奥行きを表し、長さL2は、雄実部211の突出量を表す。雌実部212の奥行きを雄実部211の突出量以上とすることにより、一方の床材20の雄実部211の中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2が他方の床材20の雌実部212の中央矩形状部材の端面21bY1Z2、21dX2Z2と接触する前に、一方の床材20の雄実部211の上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3を他方の床材20の雌実部212の上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3に接触させることができる。そのため、一方の床材20の雌実部212の中央矩形状部材の端面21bY1Z2、21dX2Z2と隣り合う床材20の雄実部211の中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2との間には隙間空間S1ができる。これにより、隣り合う床仕上げ材22同士の目地に目隙を生じさせることなく、面一に敷き詰めることができる。目隙は、例えば、床形成部材10の施工後に床仕上げ材22が乾燥して収縮することにより発生する場合が多い。雌実部212の奥行きを雄実部211の突出量以上とすることにより、目隙の目立ちを軽減でき、外観が悪くなることを抑制できる。
【0074】
また、一方の床形成部材10と隣接する他方の床形成部材10とを嵌合させる際、雄実部211又は雌実部212に塗布した接着剤は、雄実部211と雌実部212とが密接する部位の他、隙間空間S1にも行き渡る。そして、接着剤はこれらの部位に滞留し硬化して、隣接する床形成部材10同士を結合させる。よって、注入した接着剤のほとんどは床形成部材10同士の間に滞留できるので、床形成部材10同士の結合に寄与させることができる。
【0075】
床形成部材10は、雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21aY2Z1、21cX1Z1から中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2までの長さL3は、雌実部212を形成する中央矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1から下側矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1までの長さL4以上としている。これにより、一方の床材20の雄実部211を形成する下側矩形状部材の端面21aY2Z1、21cX1Z1に他方の床材20の雌実部212を形成する下側矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1が接触する前に、一方の床材20の雄実部211を形成する上側矩形状部材の端面21aY2Z3、21cX1Z3が他方の床材20の雌実部212を形成する上側矩形状部材の端面21bY1Z3、21dX2Z3と接触させることができる。そのため、一方の床材20の雌実部212を形成する中央矩形状部材の端面21bY1Z1、21dX2Z1と、隣り合う床材20の雄実部211を形成する中央矩形状部材の端面21aY2Z2、21cX1Z2との間に隙間空間S2ができる。これにより、隣り合う床仕上げ材22同士の目地に目隙を生じさせることなく、面一に敷き詰めることができる。床形成部材10の施工後に床仕上げ材22が乾燥して生じる目隙はわずかな隙間であるため、長さL3を長さL4以上とすることにより、目隙の目立ちを軽減でき、外観が悪くなることを抑制できる。
【0076】
床形成部材10は、床下地材21の雌実部212の下側矩形状部材の厚さH2を、床下地材21の厚さH1の30%~60%としている。雌実部212の厚さH2を所定の範囲内の大きさとすることにより、床下地材21の下側矩形状部材の強度を高めることができるので、床下地材21の下側矩形状部材の破損等を防止できる。また、床下地材21の下側矩形状部材には、支持脚30の高さが調製可能となるように、調製ボルト32が上下方向に移動可能な貫通孔23が形成されているため、貫通孔23の周辺は局所的に強度が低くなりやすく、耐久性も低下しやすい。特に、床下地材21の下側矩形状部材は床材20の短手端面の目地部分の位置に設けられているため、衝撃を受けると、撓み易く、変形し易い箇所であるため、床材20の中でも特に負担が大きくかかり易い。床形成部材10は、床下地材21の下側矩形状部材の厚さH2を所定の範囲内とすることで、床下地材21の下側矩形状部材の強度を高めると共に、床下地材21の下側矩形状部材に加わる衝撃荷重の吸収性能を高めることができる。そのため、床材20の床下地材21の下側矩形状部材の位置、すなわち床材20の短手端面の目地部分に衝撃が加わっても衝撃を安定して受けることができる。これにより、床材20の床下地材21の下側矩形状部材の位置に衝撃等が加わっても、床下地材21の下側矩形状部材の貫通孔23付近を起点に亀裂等の破損が生じるのを低減できる。さらに、床下地材21の下側矩形状部材の厚さH2を所定の範囲内の大きさとすることにより、貫通孔23の高さを大きくできるため、支持脚30の高さの調製の範囲を大きくできる。
【0077】
床形成部材10は、支持脚30を、平面視において、床下地材21の第2短手端面21b側に形成された床下地材21の下側矩形状部材の位置に設け、第2短手端面21bの略中心の位置に設けている。これにより、床材20の短手端面付近の剛性を高めると共に、床材20の短手端面付近の剛性のばらつきを低減できる。
【0078】
床形成部材10は、平面視において、支持脚30の一部が床下地材21の下側矩形状部材に跨がるように設けられている。これにより、支持脚30を床材20の短手端面の目地上の位置となるように設けることができるため、床材20の短手端面の目地上の撓みを抑えることができる。
【0079】
床形成部材10は、床下地材21の、各端面(第1短手端面21a、第2短手端面21b、第1長手端面21c及び第2長手端面21d)を、それぞれ、任意の角部で面取加工を施したり、R形状加工を施すことが好ましい。これにより、一方の床形成部材10の雄実部211を隣接する他方の床形成部材10の雌実部212に嵌合させる際、引っ掛かりが少なくなり、スムーズに嵌め合わせ易くなる。
【0080】
以上の通り、一実施形態に係る床形成部材10は、施工性に優れ、面一な床面を形成した床構造1を簡易に施工できることから、室内競技施設、老健施設、福祉施設、児童施設、病院等の二重床構造を使用している床構造に好適に用いることができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、支持脚30は、平面視において、床下地材21の第2短手端面21bの略中心の位置に設けられているが、床下地材21の大きさや形状等に適宜設計可能である。支持脚30は、例えば、支持脚30は、平面視において、第2短手端面21bの第1長手端面21c寄り又は第2長手端面21d寄りに設置されていてもよいし、複数の支持脚30が床下地材21の下側矩形状部材に設けられていてもよい。
【0082】
本実施形態においては、支持脚30は、
図17に示すように、平面視において、第2長手端面21dに設けられる床下地材21の下側矩形状部材に設けられていてもよい。支持脚30は、第2長手端面21dの略中心部分に設けられることが好ましい。この場合、
図18に示すように、一方の床形成部材10の床材20の第2長手端面21dと隣接する他の2つの床形成部材10の床材20の第1長手端面21cの角部との目地の下に支持脚30が位置することになる。そのため、1つの支持脚30でより効率良く床面を支持できると共に、施工効率をより向上させることができる。
【0083】
本実施形態においては、2つの支持脚30が、
図19に示すように、床材20の平面視において、第2短手端面21bの床下地材21の下側矩形状部材の両端付近に設けられていてもよい。これにより、
図20に示すように、一方の床形成部材10は、その床材20の第2短手端面21bが2点で支持されることになるため、複数の床形成部材10同士の短手端面側の強度をより高められると共に、複数の床形成部材10の敷設をより安定させることができる。そのため、床構造1の床形成部材10同士の短手端面の位置に衝撃が加わっても衝撃をより安定して受けることができる。
【0084】
本実施形態においては、支持脚30は、
図21に示すように、床下地材21の平面視において、床下地材21の第2短手端面21bの床下地材21の下側矩形状部材に設けると共に、さらに床下地材21の第2長手端面21dの床下地材21の下側矩形状部材に設けてもよい。この場合、
図22に示すように、2つ支持脚30は、いずれも、平面視において、床下地材21の第2短手端面21b及び第2長手端面21dの略中心部分であって、これらの目地の位置に設けられることが好ましい。これにより、複数の床形成部材10同士の短手端面側及び長手端面側の両方の強度をより高められると共に、敷設をより安定させることができる。さらに、一方の床形成部材10は、その床材20の第2短手端面21bがその中心部分と角部との2点で支持されることになるため、複数の床形成部材10同士の短手端面側の強度をより高められる。そのため、床構造1の床形成部材10同士の短手端面又は長手端面の位置に衝撃が加わっても衝撃をより安定して受けることができ、床構造1の床面の全体の硬さのばらつきを小さくできる。特に、床構造1の床形成部材10同士の短手端面の位置に衝撃が加わっても衝撃をより安定して受けることができる。
【0085】
本実施形態においては、床下地材21の下側矩形状部材の貫通孔23は、床下地材21の下側矩形状部材を貫通しているが、貫通していなくてもよい。
【0086】
本実施形態においては、床下地材21の主面213(
図4参照)の平面視における形状は矩形状であるが、例えば、施工場所の大きさや形状等に応じて正方形状等の他の形状でもよい。この場合、床仕上げ材22は床下地材21の主面213(
図4参照)の大きさに対応した形状としているため、床下地材21の主面213(
図4参照)の平面視における形状に合わせて床仕上げ材22の平面視における形状を設計する。なお、床下地材21の主面213(
図4参照)の平面視における形状が、正方形状である場合、第1短手端面21a及び第2短手端面21bと、第1長手端面21c及び第2長手端面21dとは、いずれかの対向する端面同士とする。
【0087】
本実施形態においては、床下地材21、及び床仕上げ材22は、それぞれ、1枚で構成されているが、2枚以上積層して構成されていてもよい。
【0088】
本実施形態においては、床材20は、床下地材21と床仕上げ材22との間に捨板が設けられてもよい。捨板は、床下地材21の上面に敷設されている。捨板は、下張板、捨て張り板ともいう。捨板は、矩形状の板であり、平面視において、床下地材21と床仕上げ材22とほぼ同じ形状に形成される。捨板としては、例えば、針葉樹材又は広葉樹材の合板、針葉樹材の単板及び広葉樹材の単板が共に使用される合板、繊維板、OSB、パーティクルボード等が用いられる。繊維板としては、HDF、MDF等が挙げられる。捨板は、床下地材21に、例えば、接着剤やビス等により固定される。なお、捨板は、1枚で構成されていてもよいし、2枚以上で構成されていてもよい。
【0089】
本実施形態においては、調整ナット33を介して調製ボルト32が台座34と連結するようにしているが、調製ボルト32は台座34の挿通穴34aに雌ねじ部を設け、調製ボルト32を台座34と直接連結して固定するようにしてもよい。
【0090】
以上の通り、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 二重床構造(床構造)
10 床形成部材
11 床スラブ(床基盤)
20 床材
21 床下地材(下地パネル)
21a 第1短手端面
21b 第2短手端面
21c 第1長手端面
21d 第2長手端面
22 床仕上げ材(フローリング材)
22a、22b 短手端面
22c、22d 長手端面
211 雄実部
212 雌実部
213 主面
30 支持脚
S1、S2 隙間空間