(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】サツマイモ抽出物、α-グルコシダーゼ阻害剤、及び抗酸化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/39 20060101AFI20230607BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230607BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
A23L 19/10 20160101ALN20230607BHJP
A61P 3/04 20060101ALN20230607BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20230607BHJP
A61P 17/18 20060101ALN20230607BHJP
【FI】
A61K36/39
A23L33/105
A61P43/00 111
A23L19/10
A61P3/04
A61P35/00
A61P17/18
(21)【出願番号】P 2021151601
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】508234800
【氏名又は名称】伊豆食文化公園株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 隆
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0145897(KR,A)
【文献】特表2007-505607(JP,A)
【文献】特開2002-027909(JP,A)
【文献】特開2018-035146(JP,A)
【文献】特開2007-070271(JP,A)
【文献】特開2011-231068(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0087233(KR,A)
【文献】特開平9-154530(JP,A)
【文献】Food Chemistry,2016年10月19日,vol. 221,p. 447-456
【文献】International Journal of Food Properties,2016年,vol. 19,p. 2817-2831
【文献】Society of Chemical Industry,2019年09月12日,vol. 99,p. 6833-6840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L 33/
A23L 19/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サツマイモの塊根部を、55~75℃で7~60日間熱処理した熱処理物を、水溶性溶媒で抽出して得られたものであることを特徴とするサツマイモ抽出物。
【請求項2】
サツマイモの塊根部を、55~75℃で7~60日間熱処理し、乾燥させて粉砕した後、水で抽出したものである、請求項1記載のサツマイモ抽出物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のサツマイモ抽出物を有効成分として含有することを特徴とするα-グルコシダーゼ阻害剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載のサツマイモ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理されたサツマイモの抽出物、該抽出物を有効成分とするα-グルコシダーゼ阻害剤、及び抗酸化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サツマイモの抽出物について様々な機能性があることが知られている。例えば、特許文献1には、キュアリング又はコルク化したサツマイモの抽出物を有用成分とする抗酸化物質について記載されている。特許文献2には、サツマイモ葉茎抽出物が抗酸化活性、チロシナーゼ活性、肝保護作用、糖や中性脂肪の吸収抑制作用を有することについて記載されている。特許文献3には、サツマイモ外皮の水溶性組成物にチロシナーゼ活性を抑制する効果があることについて記載されている。特許文献4にはサツマイモ茎葉ポリフェノール抽出物を有用成分とするノイラミニダーゼ阻害作用(具体的にはA型およびB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ阻害作用)を有する薬剤について記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6793953号公報
【文献】特願2004-231365号公報
【文献】特開2007-210976号公報
【文献】特開2011-105611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱処理されたサツマイモの塊根部の抽出物については、これまで報告されていなかった。
【0005】
また、近年、安全性について関心が高まっており、長い食経験のある天然素材を利用した食品添加物、医薬品、化粧料の需要が高まっている。
【0006】
本発明の目的は、サツマイモを原料として、有用な生理活性効果を有する新たな組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けた結果、熱処理されたサツマイモの塊根部の抽出物にα-グルコシターゼ阻害作用、抗酸化作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、サツマイモ塊根分を55~75℃で7~60日間熱処理した熱処理物を、水溶性溶媒で抽出して得られたものであることを特徴とするサツマイモ抽出物を提供するものである。
上記サツマイモ抽出物においては、サツマイモの塊根部を、55~75℃で7~60日間熱処理し、乾燥させて粉砕した後、水で抽出したものであることが好ましい。
本発明の第2は、上記サツマイモ抽出物を有効成分として含有することを特徴とするα-グルコシダーゼ阻害剤を提供するものである。
本発明の第3は、上記サツマイモ抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤を提供するものである。
なお、上記熱処理されたサツマイモの塊根部の抽出物には、様々な成分が含まれているが、その成分の全てを分析して明らかにするには、多大な労力と時間がかかり、凡そ現実的でないことから、物の発明について方法的記載が認められるべきである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サツマイモを原料として、α-グルコシターゼ阻害作用、抗酸化作用などの生理活性効果を有する新たな組成物を提供できる。この組成物は、長い食経験のあるサツマイモを抽出原料として利用しているため、食品や医薬品、化粧料などの原料として、安全に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「サツマイモ」とは、ヒルガオ科サツマイモ属に属する植物の塊根部をいい、この属であればどんなものでも用いることができる。例えば、シロユタカ、ダイチノユメ、コナホマレ、紅まさり、ひめあやか、コガネセンガン、クイックスイート、紅あずま、紅さつま、紅はるか、高系14号、めんげ芋、紅こがね、紅こまち、パープルスイートロード、アヤムラサキ、ムラサキマサリ、アメリカ芋、アケムラサキ、アヤコマチ、ジェイレッド、すいおう、エレガントサマー、五郎島金時、鳴門金時、とみつ金時、サツマヒカリ、タマユタカ、 護国、シモン1号、 S912-98、九州1号、九系7114-39、シルクスイート、種子島紫、安納芋などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、上記記載の一種のみを用いてもよく、或いは2種以上を併用してもよく、特に限定されるものではない。
塊根部とは、植物の根や地下茎が肥大化して養分を蓄えた器官であり、サツマイモにおいては一般に食用されている部分である。
本発明においては、サツマイモを熱処理された後、抽出物を精製し、それを有効成分として用いて、上記の機能性の関与成分として用いるものである。
本発明においては、サツマイモの塊根部を熱処理し、熱処理物に水溶性溶媒を添加して抽出物を得る。この抽出物は、抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用を有しているため、例えば抗酸化剤、α-グルコシダーゼ阻害剤などの有効成分として利用できるものである。
サツマイモの熱処理方法は、特に限定されない。例えば、保温器、炊飯器、恒温器などを用いて加熱又は保温する方法が挙げられる。また、熱処理の温度条件は、55℃~75℃が好ましく、55℃~70℃がより好ましく、60℃~65℃が更に好ましい。55℃未満ではサツマイモ表面などに生息する細菌が増殖してしまう恐れがあり、75℃より高い温度ではサツマイモ中の生体内酵素が失活する可能性がある。サツマイモの熱処理の期間は7~60日が好ましく、14日~45日が更に好ましく、14日~30日が更に好ましい。
サツマイモを、好ましくは55℃~75℃で熱処理することにより、サツマイモに含有される酵素が反応して、何らかの変化が生じ、それによって抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用等が付与されたのではないかと推測される。
熱処理されたサツマイモは、サツマイモの状態に応じて、乾燥しても良い。乾燥方法についても、特に限定はされないが、高温にしない乾燥方法を選択するのが好ましい。具体的には、天日干し、冷風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、このうち最も好ましいのは減圧乾燥である。
乾燥したサツマイモはそのまま抽出しても良いし、抽出効率を上げるために粉末状に粉砕しても良い。
抽出溶媒としては、水系溶媒が用いられる。水系溶媒としては、例えば、水、アルコール、含水アルコールなどを使用することができる。含水アルコールはアルコール濃度50%以下のものが好ましい。特に、滅菌水を使用することが好ましい。
【0010】
水系溶媒の添加量は、熱処理したサツマイモの乾燥質量に対して、1~50倍が好ましく、5~20倍がより好ましい。水系溶媒が1倍量よりも少ない量で行うと水系溶媒が全体に行きわたらない可能性があり、水系溶媒が50倍量よりも多い量で行うと後に濃縮する際に、溶媒を除去する負担が増えるなど抽出効率が悪化する可能性がある。
抽出温度は、特に制限はないが、5~90℃が好ましく、15~60℃がより好ましい。抽出時間は、10分~10時間が好ましく、20分~5時間がより好ましい。なお、抽出温度を下げるに従い、長時間かけて抽出することが好ましい。また、抽出の際に加圧して抽出しても良い。
抽出後は、必要に応じて冷却し、沈殿を除去して抽出物を得ることが出来る。(以下、この抽出物を熱処理サツマイモ抽出物とする。)得られた熱処理サツマイモ抽出物を更に濃縮して使用することも出来るし、乾燥させて水分を除去し、粉末状の熱処理サツマイモ抽出物として利用してもよい。
熱処理サツマイモ抽出物はそのままで使用してよいが、通常使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、安定剤、界面活性剤、溶解補助剤、還元剤、緩衝材、吸着剤、流動化剤、帯電防止剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、遮光剤、着工剤、香料、芳香剤、コーティング剤、可塑剤などの製剤添加物の1種または2種以上を適宜選択して、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤等の形態にして、製剤化をしてもよい。
そのような製剤添加物としては、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロース ナトリウム、マルトデキストリン、エチルセルロース、乳糖、ソルビトール、無水ケイ酸 、ケイ酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸、オレイン酸、流 動パラフィン、第二リン酸カルシウム、セバチン酸ジブチル、マクロゴール、プロピレン グリコール、コーンスターチ、デンプン、アルファー化デンプン、ゼラチン、ポピドン、 クロスポピドン、グリセリン、ポリソルベート80、クエン酸、アセスルファムカリウム 、アスパルテーム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸 カルシウム等を挙げることができる。
【0011】
本発明のサツマイモ抽出物は、後述する実施例に示されるように、α-グルコシダーゼ阻害活性を有している。このため、このサツマイモ抽出物を飲食品と共に摂取することにより、体内における糖質の吸収率を低減する効果が期待でき、ダイエット用の食品などに好適に用いることができる。
【0012】
また、本発明のサツマイモ抽出物は、後述する実施例に示されるように、DPPHラジカル消去活性を有している。このため、このサツマイモ抽出物を摂取することにより、体内において抗酸化作用が期待できる。すなわち、このサツマイモ抽出物を摂取することにより、体内における活性酸素による障害を軽減し、発ガン抑制、老化予防、紫外線による肌のシミ抑制などの効果が期待できる。
【0013】
本発明のサツマイモ抽出物をα-グルコシダーゼ阻害剤、及び抗酸化剤として用いる場合は、上記のようにして抽出した熱処理サツマイモ抽出物を、乾燥質量換算で、1~50質量%含むことが好ましく、2~20質量%含むことがより好ましい。
本発明のサツマイモ抽出物は、各種の製品に利用することができ、例えば、化粧品、医薬部外品、サプリメント、飲食品、医薬品などに添加して用いることができる。また、本発明のサツマイモ抽出物は、ヒト用だけに限られず、動物用の製品にも利用できる。例えば、動物用飼料、動物用医薬部外品、動物用サプリメント、動物用栄養補助食品、動物用医薬品などにも利用できる。
本発明のサツマイモ抽出物を添加する飲食品としては、例えば、固形状、粉末状、顆粒状のものとして、ビスケット、クッキー、ケーキ 、スナック、煎餅などの各種の菓子類、パン、粉末飲料(粉末コーヒー、粉末ココアなど )、飴、キャラメル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また 、液状、乳化状、ペースト状、ゼリー状のものとしては、ドリンク、ゼリー、ムースなどの各種製品や薬用酒等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明のサツマイモ抽出物を添加する化粧品としては、例えば、乳液、石鹸、洗顔料、入浴剤、クリーム、化粧水、ローション、パック、シャンプー、リンス、トリートメント、洗浄料、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、マスカラ、アイシャドー等が挙げられる。
【0014】
本発明のサツマイモ抽出物の飲食品、飼料、化粧品などへの添加量は、特に限定されないが、抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用を効果的にもたらす上で、熱処理サツマイモ抽出物の乾燥質量換算で、好ましくは0.2~5質量%、より好ましくは0.5~1質量%となるように添加することが好ましい。
【0015】
また、抗酸化作用、α-グルコシダーゼ阻害作用などを期待して摂取する場合の好ましい服用量は、熱処理サツマイモ抽出物の乾燥質量換算で、成人1人当たり10~1000mg/日が好ましく、50~500mg/日がより好ましい。
【実施例】
【0016】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0017】
<サツマイモ抽出物の作成>
市販のサツマイモを、それぞれ縦に半分に切り、各サツマイモの1片は冷凍庫に入れて保存し、他の1片は電気釜に入れて、55~70℃で4週間加熱した。加熱後に取出して、スライスして天日乾燥した。冷凍庫に保存したサツマイモは、取出して解凍し、スライスして、同様に天日乾燥した。
【0018】
これらのサツマイモを、粉砕機を使用して粉末化した。以下の説明では、冷凍して取出したサツマイモを粉末化した物を「サツマイモS粉末(検体1)」とし、熱処理したサツマイモを粉末化した物を「サツマイモT粉末(検体2)」とする。
【0019】
<α一グルコシダーゼ阻害試験>
上記サツマイモS粉末(検体1)、及びサツマイモT粉末(検体2)を用いて、α一グルコシダーゼ阻害試験を行った。
【0020】
すなわち、下記試験方法により、α一グルコシダーゼと基質p-nitrophenyl-α-D-glucopyranosideとの反応により生成するp-nitrophenolの吸光度からα一グルコシダーゼ活性を求め、検体がα-グルコシダーゼ活性に与える影響を調べた。
【0021】
試験方法
1)試験液の調製
各検体1gに50vol%エタノール20mlを加え、振とう機を用いて10分間振とうした後、10分間超音波処理した。超音波処理後、遠心分離(3000r/min,10分間)し、上清を分取した。得られた上清をロータリーエバボレーターを用いて減圧下で濃縮し、水を加えて100mg/mL試験液原液とした。この100mg/mL試験液原液をリン酸緩衝液で希釈して、試験液を調製した。
【0022】
2)試験操作
96ウェルマイクロプレートに1)で調製した試験液を20μL加えた後、リン酸緩衝液を40μL加えた。更に粗酵素液を20μL加え、37℃で5分間静置した。試験液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものを未処置対照、粗酵素液の代わりにリン酸緩衝液を加えたものをブランクとして同様に試験を行った。静置後、基質溶液を20μL加え、37℃で60分間反応させた。反応後、反応停止液を100μL加えて反応を停止した。主な試薬などは表1に示した。
【0023】
【0024】
3)測定方法
マイクロプレートリーダー(商品名「SpectraMax M2e」、Molecular Devices, LLC.製)を用い、α-グルコシダーゼと基質の反応により生じたρ-nitrophenolの吸光度を測定した(測定波長:405nm)。
【0025】
4)算出方法
未処理対照の吸光度に対す各試験液の吸光度から、下記式(1)によりα-グルコシターゼ活性及び阻害率を算出した。
【0026】
【0027】
【0028】
こうして測定したα-グルコシターゼ活性及びα-グルコシターゼ活性阻害率を、下記表2に示す。
【0029】
【0030】
表2に示すように熱処理されたサツマイモT粉末(検体2)の抽出物は、未処理のサツマイモS粉末(検体1)の抽出物に比べて、α-グルコシターゼ活性阻害率が高まることが明らかになった。
【0031】
<DPPHラジカル消去活性試験>
次に、前記サツマイモS粉末(検体1)、及びサツマイモT粉末(検体2)を用いて、以下の方法により、DPPHラジカル消去活性試験を行った。
【0032】
1)試験概要
活性酸素種として、フリーラジカルであるα,α-ジフェニル-β-ピクリルヒドラジル(以下DPPHとする)溶液と測定試薬とを一定時間反応させ、減少するDPPHの量を、分光光度計を用いて520nmにおける吸光度の減少量から測定し、抗酸化活性をトロロックス当量(Trolox)として算出した。
【0033】
2)測定試薬の調整
サツマイモS粉末(検体1)及びサツマイモT(検体2)を1gずつ採取し、それぞれに50%エタノール溶液20mlを添加して振とうし、10分間放置をして、検体1,2の抽出を行った。その後、10分間超音波処理を行ったのち、10分間3000r/分で遠心分離を行い、更にステンレス金網(目開き0.045mm)を用いて、濾過を行い、検体1の抽出液、検体2の抽出液を得た。
【0034】
3)分析方法
I)検量線の作成
50%エタノール溶液の2.0ml、1.9ml、1.8ml,1.7ml、1.6ml、1.5mlに対して、それぞれに0.2mol/L MES(2-(N―モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液(ph6.0)1mLと、400μmol/L DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリンヒドラジル)溶液(99.5%エタノール)1mLとを添加し、更に、それぞれの全量が4mlになるように、0.2mmol/LのTroloxを0ml、0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml混合した溶液を作成した。
【0035】
各々の溶液を20分室温で反応させて、それぞれの吸光度を測定し、Troloxの濃度と、吸光度との関係を示す検量線を作成した。
【0036】
II)試料溶液のDPPH消去反応後の吸光度測定
50%エタノール溶液の1.6ml、1.5mlに対して、それぞれに0.2mol/L MES(2-(N―モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液(ph6.0)1mLと、400μmol/L DPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリンヒドラジル)溶液(99.5%エタノール)1mLを添加し、更に、それぞれの全量が4mlになるように、試験溶液をそれぞれ0.4ml、0.5ml混合した溶液を作成した。
【0037】
各々の溶液を20分室温で反応させて、それぞれの吸光度を測定した。
【0038】
III)試料溶液のブランクの吸光度測定
50%エタノール溶液を1.6ml、1.5mlに対して、それぞれに0.2mol/L MES(2-(N―モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液(ph6.0)1mLと、99.5%エタノール1mLとを添加し、試験溶液をそれぞれ0.4ml、0.5m混合した溶液を作成した。
【0039】
各々の溶液を20分室温で反応させて、それぞれのブランクの吸光度を測定した。
【0040】
II)の試料溶液のDPPH消去反応後の吸光度を、III)の試料溶液のブランクの吸光度によって補正し、試料溶液のDPPH消去反応による吸光度の減少量を求めた。この吸光度の減少量をI)で作成した検量線と比較して、試料溶液による抗酸化活性をトロロックス当量(Trolox)として算出した。抗酸化活性は、試料1gあたりのトロロックス当量(Trolox)として算出した。
【0041】
4)測定結果
検体1(サツマイモS粉末)のDPPHラジカル消去活性は3μmol/gであったのに対して、検体2(サツマイモT粉末)のDPPHラジカル消去活性は11μmol/gであった。熱処理されたサツマイモT粉末の抽出物は抗酸化性が未処理のサツマイモS粉末の抽出物に比べて、ラジカル消去活性が高まることが明らかになった。
【0042】
<総アスコルビン酸量の測定>
抗酸化作用に影響を与える成分の検討のため、検体1(サツマイモS粉末)及び検体2(サツマイモT粉末)に含まれる総アスコルビン酸量を、高速液体クロマトグラフィーにより常法により測定した。
【0043】
高速液体クロマトグラフィーによる総アスコルビン酸の定量下限は1mg/100gであったが、検体1、検体2のいずれからもアスコルビン酸は検出されなかった。
【0044】
<ポリフェノール含量の測定法>
抗酸化作用に影響を与える成分の検討のため、検体1(サツマイモS粉末)及び検体2(サツマイモT粉末)に含まれる総ポリフェノール含量を、FOLIN-CIOCATEU法により測定した。
【0045】
その結果、検体1(サツマイモS粉末)からはポリフェノールが0.19g/100gしか検出されなかったが、検体2(サツマイモT粉末)からはポリフェノールが0.38g/100g検出された。すなわち、熱処理サツマイモの粉末Tの抽出物には未処理のサツマイモ粉末Sに比べて、ポリフェノールが多く含まれていたことが明らかになった。