(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】浸水防止装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20230607BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
(21)【出願番号】P 2022033994
(22)【出願日】2022-03-05
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】522088885
【氏名又は名称】有限会社平野建設
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】小俵 讓
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第4542421(JP,B2)
【文献】特開2005-042389(JP,A)
【文献】特開2003-321980(JP,A)
【文献】特開2006-207177(JP,A)
【文献】特開2008-285841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータパックを複数段連設してなる蛇腹式水槽を、各ウォータパックへの作動液導入前に浸水防止を必要とする構造物の開口に臨む部位に設定した基準面より退避した部位に配した本体枠に格納して開口を開放し、各ウォータパックに作動液を導入した際に膨張させて基準面より迫り出させ、壁面状をなして開口を封鎖するように構成してなる浸水防止装置であって、
前記本体枠は、左右方向に延びてなる底壁を有したものであり、
最下段に位置するウォータパックの底部に食い込むように構成された第一の膨出部が、当該底壁における左右方向の略全域に亘って設けられたものであり、
各ウォータパックの両端を、開口の側縁に臨む部位に形成した内方に開放されたガイド部材のレール溝に移動可能に挿入しておき、膨張した際に前記レール溝の内面に密着させて開口を封鎖するように構成してなり、
前記レール溝は、上下方向に延びてなる奥レール壁を有したものであり、
膨張した各ウォータパックの両端部に食い込むように構成された第二の膨出部が、前記奥レール壁における上下方向の略全域に亘って設けられたものであり、
最下段に位置するウォータパックの上方に順次隣接する各々のウォータパック間に隔壁を備え、これら隔壁に下段側のウォータパックから上段側のウォータパックに順次均等に作動液が送り込まれるように作動液流通口が設けられている
ものであり、
前記蛇腹式水槽が、上下方向に複数段連設された前記ウォータパックと、最上部に位置する前記ウォータパックの上に設けられた蓋部材とを具備してなるものであり、
前記蓋部材の両側端部には、前記第二の膨出部との干渉を回避するための切欠部が形成されている浸水防止装置。
【請求項2】
前記第一の膨出部が、前記底壁の内面における前後方向中央部に形成されたものである請求項1記載の浸水防止装置。
【請求項3】
前記第二の膨出部が、前記奥レール壁の内面における前後方向中央部に形成されたものである請求項1又は2記載の浸水防止装置。
【請求項4】
前記本体枠が、前記底壁と、この底壁の前端縁に立設された前壁と、前記底壁の後端縁に立設された後壁とを有している請求項1、2又は3記載の浸水防止装置。
【請求項5】
前記レール溝が、前記奥レール壁と、この奥レール壁の前端縁から当該奥レール壁に対して直交する方向に延びてなる前レール壁と、前記奥レール壁の後端縁から当該奥レール壁に対して直交する方向に延びてなる後レール壁とを備えたものである請求項1、2、3又は4記載の浸水防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水防止装置に関する。
【0002】
より詳細に説明すれば、本発明の浸水防止装置は、床下・床上浸水・道路冠水等の水害発生時において、ビル等の通常の出入口・地下駐車場出入口開口部・地下道路出入口開口部等からの水の浸入を遮断し得るものであり、通常地下に設置されている電気設備・コンピュータ設備等の破壊を防止し得るものであり、また、人命をも無事に生還させることに寄与し得るものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、天災に位置付けられる水害に対しては、その発生時、殆どが人力により土のうを積み上げることにより、水の浸入を防止するようにしていた。
【0004】
一部の海抜ゼロ地域では、鋼板による油圧式水門を設置する場合もあるが、このものでは、大規模な設置工事を伴う上、停電時には対応することができない。また、費用面においても高価なものにならざるを得ない。
【0005】
上記の事情等により、水害に対しては、通常は防犯上の浸入者を防止するシャッター設備を設置するにとどまっているのが現状である。
【0006】
しかしながら、土のうや防水板やシャッター設備では、外部からの水流の浸入を完全に防止することは不可能である。
【0007】
そこで、浸水の予知可能な地域におけるビル等の通常の出入口・地下駐車場出入口開口部・地下通路出入口開口部等に簡単な装置を設置するだけで、水の浸入を完全に遮断するような方策が考えられている。
【0008】
例えば、各開口部に、通常消防用ホース等に汎用される「耐圧防水繊維」で形成された蛇腹式水槽を埋め込み、水害発生時に給水することにより開口部を遮断するようにしたものが考えられている(例えば、「特許文献1」を参照)。
【0009】
これによると、蛇腹式水槽に消火水栓・消防水栓等の高圧水流を給水することで、水槽が膨張し上方に伸展するため任意の高さを確保することができる。かかる水槽は、柔軟性のある耐圧防水繊維で形成されているため、水圧により開口部を塞ぐことが可能なものとされている。
【0010】
しかしながら、このものは、全体が1つの水槽をなし、これをコンパクトに折り畳んだ状態から膨縮できるように蛇腹状に成形しているだけであって、内空が大きな空間になっている。
【0011】
このため、高圧水流を導入した際に水槽が上方のみならず横方向にも膨張し易く、上方への伸展率が悪いばかりか、形崩れし易く浸水に対する強度も十分ではないといった課題が残る。
【0012】
また、従来のものでは、開口部と蛇腹式水槽との間の隙間が十分に閉塞されるものとはならないため、閉塞が不十分な隙間部分を通じて内部に水が流入してしまうことが懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、開口部と蛇腹式水槽との間の隙間が形成され難く、隙間部分を通じて内部に水が流入し難い好適な構成を備えた浸水防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0016】
請求項1に記載の発明は、ウォータパックを複数段連設してなる蛇腹式水槽を、各ウォータパックへの作動液導入前に浸水防止を必要とする構造物の開口に臨む部位に設定した基準面より退避した部位に配した本体枠に格納して開口を開放し、各ウォータパックに作動液を導入した際に膨張させて基準面より迫り出させ、壁面状をなして開口を封鎖するように構成してなる浸水防止装置であって、前記本体枠は、左右方向に延びてなる底壁を有したものであり、最下段に位置するウォータパックの底部に食い込むように構成された第一の膨出部が、当該底壁における左右方向の略全域に亘って設けられたものであり、各ウォータパックの両端を、開口の側縁に臨む部位に形成した内方に開放されたガイド部材のレール溝に移動可能に挿入しておき、膨張した際に前記レール溝の内面に密着させて開口を封鎖するように構成してなり、前記レール溝は、上下方向に延びてなる奥レール壁を有したものであり、膨張した各ウォータパックの両端部に食い込むように構成された第二の膨出部が、前記奥レール壁における上下方向の略全域に亘って設けられたものであり、最下段に位置するウォータパックの上方に順次隣接する各々のウォータパック間に隔壁を備え、これら隔壁に下段側のウォータパックから上段側のウォータパックに順次均等に作動液が送り込まれるように作動液流通口が設けられているものであり、前記蛇腹式水槽が、上下方向に複数段連設された前記ウォータパックと、最上部に位置する前記ウォータパックの上に設けられた蓋部材とを具備してなるものであり、前記蓋部材の両側端部には、前記第二の膨出部との干渉を回避するための切欠部が形成されている浸水防止装置である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記第一の膨出部が、前記底壁の内面における前後方向中央部に形成されたものである請求項1記載の浸水防止装置である。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記第二の膨出部が、前記奥レール壁の内面における前後方向中央部に形成されたものである請求項1又は2記載の浸水防止装置である。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記本体枠が、前記底壁と、この底壁の前端縁に立設された前壁と、前記底壁の後端縁に立設された後壁とを有している請求項1、2又は3記載の浸水防止装置である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記レール溝が、前記奥レール壁と、この奥レール壁の前端縁から当該奥レール壁に対して直交する方向に延びてなる前レール壁と、前記奥レール壁の後端縁から当該奥レール壁に対して直交する方向に延びてなる後レール壁とを備えたものである請求項1、2、3又は4記載の浸水防止装置である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、開口部と蛇腹式水槽との間の隙間が形成され難く、隙間部分を通じて内部に水が流入し難い好適な構成を備えた浸水防止装置を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態である蛇腹式水槽を説明する概略正面図。
【
図4】同実施形態における通常状態を示す概略的な斜視図。
【
図5】同実施形態における作動状態を示す概略的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~10を参照して説明する。
【0025】
この実施形態の浸水防止装置は、ウォータパック1を複数段連設してなる蛇腹式水槽2を、各ウォータパック1への作動液導入前に、浸水防止を必要とする構造物3の開口31(
図4を参照)に臨む部位に設定した床面や地表面等の基準面32より退避した部位に格納して開口31を開放し、各ウォータパック1に作動液を導入した際に、
図5に示すように膨張させて基準面32よりも上方に迫り出させ、壁面状をなして開口31を封鎖するように構成したものである。
【0026】
構造物3は、例えば、ビルや地下駐車場、地下道路、地下鉄等で、その出入口に位置する開口31に臨む基準面32を掘り下げて、
図6に示すような格納空間33を形成している。
【0027】
格納空間33は、蛇腹式水槽2を格納するための本体枠4を設置する主格納部33aと、給排水路を確保し且つ蛇腹式水槽のメンテナンス等に便ならしめるための補助格納部33bとから構成されている。
【0028】
本体枠4は、収縮状態にある蛇腹式水槽2を略完全に格納する内空を有した略長尺直方体状のものである。
【0029】
詳述すれば、本体枠4は、左右方向に延びた矩形板状をなし内面が上方すなわち蛇腹式水槽2側を向く底壁41と、底壁41の前端縁に立設された前壁42と、底壁41の後端縁に立設された後壁43、前壁42の側端部と後壁43側端部との間を繋ぐ左右の側壁44とを有している。
【0030】
この実施形態では、本体枠4の底壁41における左右方向の略全域に亘って、最下段に位置するウォータパック1Lの底部に食い込むように、すなわち、最下段に位置するウォータパック1Lの底部を局所的に上方に押圧して凹ませ得るように構成された第一の膨出部B1が形成されている。
【0031】
第一の膨出部B1は、部分円柱状すなわち略二分の一円柱状をなしており底壁41における前後方向中央部に形成されたものである。
【0032】
なお、第一の膨出部B1の形状は、ウォータパック1Lの底部に食い込むように構成された上方への突出形状をなしたものをなしたものであればよく、その形状は種々の形状を採り得るものである。
【0033】
また、第一の膨出部B1は、種々の方法で設けることが可能である。例えば、第一の膨出部B1は、図示例のように略フラットな底壁41に対して部分円柱状の別部材を取り付けることにより構成したものであってもよいし、底壁41の一部をプレス等により変形させることにより構成したものであってもよい。
【0034】
本体枠4は、上面が開放され、前壁42及び後壁43の各上端部に短辺方向外方に向けて延びた鍔tbが設けられている。そして、鍔tbは、主格納部33a及び補助格納部33bの上縁の対応部位に形成した段部33cに係止している。
【0035】
補助格納部33bは、主格納部32aに連続する部位にあって本体枠4の一側面4a及び底面4bを解放する状態で設けられたもので、上端に蓋34を開閉可能に取り付けるようにしている。
【0036】
なお、浸水防止装置は、遮蔽高が約70cmに設定されており、人間が容易に脱出できるように設計されているが、例えば、蓋34の裏面に階段をあらかじめ組み付けておき、必要時において、蓋34を開いて階段を使えるようにすれば、より簡単かつ安全な脱出に供するものとなる。
【0037】
そして、開口31の側縁31aに臨む部位、すなわち本体枠4の長手方向の両端部内面4cに、奥レール壁51a、前レール壁51b、後レール壁51c、上レール壁51d、及び、下レール壁51eにより構成され、内方に開放された略箱形をなすガイド部材5を起立状態で取り付けてレール溝51を形成している。
【0038】
レール溝51は、上下方向に延びてなり内面が内方すなわち蛇腹式水槽2側を向く奥レール壁51aと、奥レール壁51aの前端縁及び後端縁から当該奥壁51aに対して直交する方向に延びてなる前後一対の前レール壁51b及び後レール壁51cとを主体に構成されている。
【0039】
下レール壁51eには、第二の膨出部B1との干渉を回避するための切欠部51fが形成されている。
【0040】
レール溝51には、奥レール壁51aにおける上下方向の略全域に亘って、膨張した各ウォータパック1の両端部に食い込むように、すなわち、ウォータパック1の両側端部を局所的に内方に押圧して凹ませ得るように構成された第二の膨出部B2が形成されている。第二の膨出部B2は、部分円柱状をなしており奥レール壁51aにおける前後方向中央部(幅方向中央部)に形成されたものである。
【0041】
なお、第二の膨出部B2の形状は、ウォータパック1の両端部に食い込むように構成された内方への突出形状をなしたものであればよく、その形状は種々の形状を採り得るものである。
【0042】
また、第二の膨出部B2は、種々の方法で設けることが可能である。例えば、第二の膨出部B2は、図示例のように略フラットな奥レール壁51aに対して部分円柱状の別部材を取り付けることにより構成したものであってもよいし、奥レール壁51aの一部をプレス等により変形させることにより構成したものであってもよい。
【0043】
ところで、第一の膨出部B1の両端部と第二の膨出部B2の下端部との接合部は、必要に応じて、第一、第二の膨出部B1、B2における端部を適宜の形状に成形したり、凹み部分に埋込材を埋め込んだりして、処理されるものとなっている。
【0044】
なお、第一の膨出部B1と第二の膨出部B2は、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば、前後方向の位置が合致しないように配設されたものであっても構わない。
【0045】
各ウォータパック1は、消防用ホース等に汎用される「耐圧防水繊維」や、ゴムボート等に汎用されるゴムを始めとして、柔軟性がありかつ耐圧防水機能を有する適宜の素材で形成されたものである。
【0046】
各ウォータパック1は、概略直方体状に縫製されている。基端すなわち最下段に位置するウォータパック1Lの下面には、作動液注入口として機能する作動液給排口11が設けられている。なお、作動液給排口11は、ウォータパック1Lの前面又は背面に設けられたものとしてもよい。
【0047】
最下段のウォータパック1Lの上方に順次隣接する各々のウォータパック1、1間に位置する隔壁1Mには、両ウォータパック1、1の内空を連通させる作動液流通口12が設けられており、作動液給排口11から注入された作動液をこれらの作動液流通口12を介して上段側のウォータパック1に順次均等に送り込むようにしている。隔壁1Mとしては、例えば、変形し難い薄いボード材をサンドイッチ状に挟んでなるものが適用される。
【0048】
作動液流通口12は、ウォータパック1の中央部分に上に向かって千鳥状に設けられている。また、作動液流通口12は、ウォータパック1の両端1aを膨出させた部位に上に向かって直線状に設けてある。
【0049】
ただし、作動液流通口12は、下段側のウォータパック1から上段側のウォータパック1に順次均等に作動液が送り込まれるのであれば、どのような態様で設けてもよい。ウォータパック1、1間は、隔壁1Mを共有し、或いは当該隔壁1Mにおいて適宜の手段により接続されている。
【0050】
各ウォータパック1は、両端1aがレール溝51内において移動可能に挿入されている。各ウォータパック1は、膨縮時において、レール溝51に沿って上下方向にガイドされつつ移動するようになっている。そして、各ウォータパック1は、外部から水圧を受けるとレール溝51の内面に密着して開口31を密封するように構成されている。
【0051】
このとき、ウォータパック1の両端1aに、レール溝51に設けられた第二の膨出部B2がウォータパック1方向に食い込むことになり、ガイド部材5とウォータパック1の両端との間に、外部から内部に向かって水の流入が生じ得る隙間が形成され難いものとなっている。
【0052】
また、最下段に位置するウォータパック1Lの底部には、底壁41に設けられた第一の膨出部B1が上方に食い込むことになり、本体枠4における底壁41とウォータパック1との間に、外部から内部に向かって水Wの流入が生じ得る隙間が形成され難いものとなっている。
【0053】
蛇腹式水槽2は、ウォータパック1と、先端に位置するウォータパック1Hの更に先端側に設けた蓋部材21とを具備してなるものである。
【0054】
すなわち、蛇腹式水槽2は、上下方向に複数段連設されたウォータパック1と、最上部に位置するウォータパック1Hの上に設けられた蓋部材21とを備えている。蓋部材21の左右両側端部は、フォロア6を介してレール溝51における前後壁51bの端縁に係合するようになっている。なお、フォロア6は、レール溝51内に設けてもよいし、レール溝51外に設けてもよい。
【0055】
蓋部材21の左右両側端部における前後方向中央部には、レール溝51に設けられた第二の膨出部B2との干渉を回避するための切欠部21aが形成されている。蓋部材21の切欠部21aは、蛇腹式水槽2の膨縮動作時において、第二の膨出部B2と協働して、レール溝51に対する蓋部材21の位置決めを行うことができるものとなっている。そのため、かかる構成のものであれば、蛇腹式水槽2の安定的な上下動を確保することができるものとなっている。
【0056】
蛇腹式水槽2は、作動液給排口11に接続される給排水系13等と共に補助格納空間33bに埋め込まれている。
【0057】
なお、作動液給排口11や給排水系13は、最下段のウォータパック1Lの下面側に設ける態様のみならず、側面に設ける態様を妨げるものではない。
【0058】
蛇腹式水槽2には、全体が迫り出す方向(上方向)と直交する方向(横方向)すなわち長手方向に延びる補強線材(骨材)22が付帯させてある。
【0059】
補強線材22は、袋体22a内に収容されている。袋体22aは、襞(ひだ)22bを介して隔壁1Mに接続されていて、その両端は最下段の補強線材22を除きレール溝51内に収容されている。
【0060】
このように構成される本実施形態の浸水防止装置は、水害発生時に作動液給排口11を介して各ウォータパック1に消火水栓・消防水栓・屋内給水配管・水道水等の高圧水流を給水することで、或いは、貯水タンクの水をポンプ等で吸水、圧送することで、各ウォータパック1が、
図4等に示す収縮状態から、
図5等に示す作動状態(膨張状態)をなし、作動状態において各ウォータパック1が膨張して蛇腹式水槽2全体が上方に伸展し、給水量を制御することで任意の高さを確保することができる。
【0061】
ウォータパック1は、柔軟性のある耐圧防水繊維で形成されているため、水圧が浸水による周囲の水Wと拮抗し、また、水Wの圧力によりレール溝51の一方の内面に押し付けられる結果、シール効果を発揮する。
【0062】
このとき、増水による漂流物に先端部の鋭利なものや角のある金属等がウォータパック1を傷つけることが懸念されるため、例えば、伸張したウォータパック1の前面を頑丈な繊維で作られたシート材で覆うようにしてもよい。さらに、そのシート材に「シャッター作動中通行止め」等の文言を表示しておけば、周囲の人に対して浸水防止装置が稼働していることに関する注意を喚起することができるものとなる。
【0063】
これに加えて、最下段に位置するウォータパック1Lの底部は、その左右幅方向の略全域に亘って、第一の膨出部B1によって局所的に上方に圧接されている。また、各ウォータパック1の両側端部は、その上下方向の略全域に亘って、第二の膨出部B2によって局所的に内方に圧接されている。
【0064】
この結果、構造物3の開口31と蛇腹式水槽2との間に、外部から内部に向かって水Wが流入し得る隙間が形成され難く、開口3の外部側から内部側に向かって水Wが流入し難い好適な構成が実現されたものとなっている。
【0065】
また、収納時には作動液給排口11が作動液排水口として機能し、作動液流通口12を通して最下段に位置するウォータパック1Lに移動した作動液が作動液給排口11より排水され、蛇腹式水槽2は収縮する。
【0066】
なお、排水は人為的操作力のほか、ポンプ等を利用して行うこともできる。作動液給排口11は、対をなして設けてあり、供給時に両作動液給排口11から作動液を導入し排水時に両作動液供給口11から排水する態様の他、供給時に一方の作動液給排口11から作動液を導入し排水時に他方の作動液供給口11から排水する態様等によっても実施可能である。
【0067】
平常時において、浸水防止装置は、基準面32の内方に格納され、蓋部材21が基準面32と略面一となるため、通行の支障になることはない。
【0068】
また、ガイド部材5も開口31に臨む壁面に埋め込んで取り付けられるため、開口31が狭まって通行の妨げになるといったことはない。
【0069】
作動時には、消火栓水等を利用して作動液給排口11の一方ないし双方より給水するだけで蛇腹式水槽1が伸展して開口31を封鎖し、開口31の外部から内部への浸水を好適に遮断することができる。
【0070】
夜間等無人になる場合、危険が予知可能な場合は、バルブアクチュエータ等を用いてリモコン或いはマイコンによる無人給水も可能である。これらにより、例えば地下に設置された機械・電気・コンピュータ設備、車両等を浸水の被害から好適に防衛することが可能となる。
【0071】
そして、本実施形態は、従来のように内空の大きな1つの水槽を蛇腹状にしたのではない。すなわち、本実施形態は、内空の小さいウォータパック1を蛇腹状に複数連設して蛇腹式水槽3を構成している。そのため、隣設されたウォータパック1ごとに膨張がなされ、個々のウォータパック1ごとに適切な膨張状態を実現することができる。
【0072】
よって、従来の如く、内空全体が大きな空間をなすようなものと比べて、本実施形態のものであれば、迫り出す方向に確実に膨張させることができ、同時に横方向への型崩れを抑えて、強度のある適切な水壁面を形成することが可能となる。
【0073】
特に、各ウォータパック1の両端1aを、開口31の側縁31aに臨む部位に形成したレール溝51に移動可能に挿入しておき、膨張した際にレール溝51の内面に密着させて開口31を封鎖するようにしているため、膨張動作と密閉動作を適切に行わせることができる。
【0074】
具体的には、基端に位置するウォータパック1Lに作動液給排口11を設け、隣接するウォータパック1、1間にそれらの内空を連通させる作動液流通口12を設けているため、蛇腹式水槽2全体の液密性を損なわずに各ウォータパック1に作動液を好適に送り込むことができる。
【0075】
特に、蛇腹式水槽2に、それが迫り出す上方向に沿って間欠的に、これと直交する水平方向に延びる補強線材22を付帯させているため、横方向の変形をより的確に防止して、上方向への伸展動作と適正な壁面強度とをより有効に確保することができる。
【0076】
先端に位置するウォータパック1Hの更に先端側に蓋部材21を配置している。そして、蓋部材21の両端21aを、フォロア6を介してレール溝51に係合させている。このため、レール溝51に沿って蛇腹式水槽1全体の膨張動作をより適切に行わせることができる。
【0077】
なお、各部の具体的構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0078】
例えば、作動時には任意の間隔に予め設計されたアルミ製等軽量のH型補強ガイドを蛇腹式水槽の両側面に添接するように立設してもよい。アルミ製H型補強ガイドは人力で設置可能な重量とし、平常時にレール溝の中に格納しておくことが望ましい。
【0079】
また、作動液給排口は地表上部に設置してもよい。
【0080】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…ウォータパック
2…蛇腹式水槽
3…構造物
4…本体枠
5…ガイド部材
6…フォロア
11…作動液注入口(作動液給排口)
12…作動液流通口
21…蓋部材
22…補強線材
31…開口
32…基準面
51…レール溝
【要約】
【課題】開口部と蛇腹式水槽との間の隙間が好適に閉塞され、隙間部分を通じて内部に水が流入し難い構成を備えた浸水防止装置を提供する。
【解決手段】浸水防止装置は、蛇腹式水槽2に係わり合う本体枠4とガイド部材5を備えている。本体枠4の底壁41には、左右方向の略全域に亘って最下段に位置するウォータパック1Lの底部に食い込むように構成された第一の膨出部B1が形成されている。ガイド部材5のレール溝51には、上下方向に延びてなり内面が内方を向く奥レール壁51aを有し、当該奥レール壁51aにおける上下方向の略全域に亘って膨張した各ウォータパック1の両端部に食い込むように構成された第二の膨出部B2が形成されている。
【選択図】
図6