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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】生体情報検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20230607BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20230607BHJP
【FI】
A61B5/1455
G01N21/359
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022568396
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2022030509
【審査請求日】2022-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390012737
【氏名又は名称】株式会社フジタ医科器械
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前多 宏信
(72)【発明者】
【氏名】山口 芳裕
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-126995(JP,A)
【文献】特開2010-125147(JP,A)
【文献】特開2021-180796(JP,A)
【文献】特開2002-168862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
G01N 21/359
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光を発振するレーザ発振器と、前記測定対象物質が内部に存在する液状生体物に前記パルスレーザ光を照射する照射機構と、前記液状生体物から出力される検出レーザ光を受光する受光センサと、各構成要素の動作を制御する制御ユニットと、を含む生体情報検出装置であって、
前記測定対象物質は乳酸又は乳酸塩であって、前記適正波長は1480nmであり、
前記制御ユニットは、一定周期で前記パルスレーザ光を発振するように前記レーザ発振器に対して発振指令を出力し、前記受光センサからの検出信号のうち、前記パルスレーザ光が照射されていた区間に相当する部分を、前記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、前記区間データに基づいて前記液状生体物中の前記測定対象物質の分量を演算する
生体情報検出装置。
【請求項2】
前記パルスレーザ光は、流動中の前記液状生体物に向けて照射される
請求項に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記受光センサは、前記パルスレーザ光の反射光を受光するように構成されている
請求項に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記測定対象物質は複数であって、
前記レーザ発振器を前記複数の測定対象物質ごとに複数含み、
前記複数の測定対象物質の一つは乳酸又は乳酸塩である
請求項に記載の生体情報検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報検出装置及び生体情報検出方法に関し、特に、液状生体物の内部に存在する測定対象物質の分量を取得する生体情報検出装置及び生体情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の血液中に含まれる乳酸は、例えば激しい運動中等、血液中の糖を無酸素状態で代謝した際に多く生成される。この血液中の乳酸の濃度は、血液の循環の度合いを示す値として、例えばショック状態や循環不全の指標に適用される。
【0003】
その一例として、血液中に細菌等が混入して全身の臓器に障害を与える敗血症は、血液中の乳酸濃度をモニタリングすることにより、手術を受けた患者の術後管理を行う場合や、ショック症状を示す救急患者を搬送する際に、患者が重症化に至るかどうかを判断することができる。このような血液中の乳酸濃度の測定は、一般的に、患者から採血した血液を分析することにより行われるが、簡易的かつ連続的な測定が難しく、また採血に伴う感染症に対するリスク管理が必須となる。
【0004】
この点を改善する方策の一つとして、例えば特許文献1には、患者における血中分析物の濃度レベルを推定する方法であって、入力変数の第1セットが侵襲的に測定した変数を含まず、入力変数の第1セットの少なくとも1つの第1変数が、患者の血中分析物の濃度レベルによって影響され、及び入力変数の第1セットの少なくとも1つの第2変数が、患者の血中分析物の濃度レベルによって影響されない入力変数の第1セットを受信すること、入力変数の第1セットの少なくとも1つを前処理して、変数の第2セット生成すること、及び線形分離法を変数の第2セットに適用して、変数の第3セットを生成すること、を含む方法が開示されている。この方法によれば、完全に非侵襲的な測定が可能になり、変動する患者及び環境条件に対して比較的に非感受性であるため、生理学的パラメータをより正確に特徴づけられ、より幅広い範囲の応用において確実な特徴決定が可能になるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、被験体の血液成分レベルをリアルタイムモニタリングする方法であって、波長可変ハイブリッドIII-V/IVレーザセンサを備えたシステムオンチップを提供すること;光ファイバインターフェースに掃引レーザ信号を送信することにより、システムオンチップに被験体の血液成分レベルをモニタリングするよう指示すること;光ファイバインターフェースにて被験体の血液に上記信号を導くこと;上記信号が血液と相互作用した後、血液からの反射信号を光ファイバインターフェースで収集すること;上記反射信号を反射光フォトダイオードに導くこと、のステップを含む方法が開示されている。このとき、反射信号は光信号であり;反射信号を光信号から電気信号に変換すること;ならびにマイクロコントローラで電気信号を処理して、当該電気信号を較正された血液成分レベルに変換すること、が実行され、これにより、一定期間にわたって複数のデータポイントを連続的に収集することができ、治療の有効性を評価する上で重要となり得る履歴トレンドの重要な情報を提供することを可能にするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2010-526646号公報
【文献】特表2020-520768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記例示した従来技術において、例えば特許文献1で開示された方法では、血液中の入力変数の第1セットを非侵襲的に取得するものの(「侵襲的に測定した変数を含まず」との記載参照)、血中分析物の濃度レベルに「影響される」第1変数と「影響されない」第2変数との少なくとも2つの変数を受信する必要がある。このため、患者の状態を連続的にモニタリングしてデータ処理を行う際のデータ量が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2で開示された方法では、出力ビームを皮膚内の血管を流れる血液に照射してその反射光をフォトダイオードで受信することで、非侵襲的に対象の血液中の成分データを取得することが可能である。しかしながら、人体の体外から非侵襲的にデータを取得する場合は、レーザセンサと対象の人体とが非接触となるため、反射光に出力ビームの反射成分以外の測定環境に基づく光成分(例えば自然光や照明光等)をノイズとして含むこととなり、血液成分の演算精度が低下する要因の一つとなる。
【0009】
このような経緯から、本願は、液状生体物に含まれる測定対象物質の測定データを、低ノイズで非侵襲的に取得できる生体情報検出装置及び生体情報検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による、測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光を発振するレーザ発振器と、測定対象物質が内部に存在する液状生体物にパルスレーザ光を照射する照射機構と、液状生体物から出力される検出レーザ光を受光する受光センサと、各構成要素の動作を制御する制御ユニットと、を含む生体情報検出装置は、制御ユニットが、一定周期でパルスレーザ光を発振するようにレーザ発振器に対して発振指令を出力し、受光センサからの検出信号を上記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、当該区間データに基づいて液状生体物中の測定対象物質の分量を演算するように構成されている。
【0011】
また、本発明の別の一態様による、測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光を上記測定対象物質が内部に存在する液状生体物に照射し、液状生体物から出力される検出レーザ光を受光して測定対象物質の液状生体物中の分量を取得する生体情報検出方法は、パルスレーザ光が一定周期で発振され、受光センサからの検出信号を上記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、当該区間データに基づいて測定対象物質の分量を演算するように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、一定周期でパルスレーザ光を発振するようにレーザ発振器に対して発振指令を出力し、受光センサからの検出信号を上記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、当該区間データに基づいて液状生体物中の測定対象物質の分量を演算するように構成したため、液状生体物に含まれる測定対象物質の測定データを、低ノイズで非侵襲的に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の代表的な一例である第1の実施形態による生体情報検出装置の構成を示す概略図である。
図2図1で示した生体情報検出装置に含まれるレーザ発振器の構成の一例を示すブロック図である。
図3図1で示した生体情報検出装置に含まれる制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態による生体情報検出方法の概要を示すフローチャートである。
図5A】第1の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。
図5B】第1の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図5C】第1の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図6】各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。
図7A】第2の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。
図7B】第2の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図7C】第2の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図8】第2の実施形態による生体情報検出方法の概要を示すフローチャートである。
図9A】第3の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。
図9B】第3の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図9C】第3の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。
図10】各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。
図11】第3の実施形態による生体情報検出装置の変形例による測定ユニットの概要を示す部分断面図である。
図12】第4の実施形態による生体情報検出装置の構成を示す概略図である。
図13】各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。
図14図12で示した生体情報検出装置に含まれるレーザ発振器の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な一例による生体情報検出装置及び生体情報検出方法の実施形態を図面と共に説明する。
【0015】
なお、本明細書において、「液状生体物」とは、例えば血液や汗、リンパ液等の人体で生成される液状の物体や分泌物を意味する。また、「測定対象物質」としては、上記液状生体物に含まれる水分以外の分子化合物等が例示できる。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の代表的な一例である第1の実施形態による生体情報検出装置の構成を示す概略図である。また、図2は、図1で示した生体情報検出装置に含まれるレーザ発振器の構成の一例を示すブロック図である。また、図3は、図1で示した生体情報検出装置に含まれる制御ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態による生体情報検出装置100は、その一例として、測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光LBを発振するレーザ発振器110と、測定対象物質が内部に存在する液状生体物LOにパルスレーザ光LBを照射する照射機構120と、照射機構120のXYZ方向の位置を移動させる搬送機構130と、液状生体物LOを収容した容器142のXYZ方向の位置を移動させるサンプル保持機構140と、液状生体物LOから出力される検出レーザ光を受光する受光センサ150と、各構成要素の動作を制御する制御ユニット160と、を含む。
【0018】
レーザ発振器110は、液状生体物LOに含まれる測定対象物質(後述する図5Cの符号MM等を参照)を検出する上で適正な波長(例えば吸収効率が高い波長等)を出力する光源が適用される。その一例として、図2に示すように、レーザ発振器110は、制御ユニット160からの発振信号に基づいてパルスレーザ光LBを一定周期Tで発振する制御を行う発振制御部112と、発振制御部112からのオンオフ信号に応じて複数のレーザ光源115a、115bへの駆動電力を供給する駆動電源113と、レーザ光源115a、115bを取り付けた支持部114と、複数のレーザ光源115a、115bから出射されたパルスレーザ光LBを集光させる集光レンズ116と、出射されたパルスレーザ光LBの波長を調整する波長調整部117と、集光されたパルスレーザ光LBを照射機構120に伝送する伝送路118(例えば光ファイバ)と、を含む。
【0019】
第1の実施形態による生体情報検出装置100は、液状生体物LOとしては「血液」が例示でき、これに含まれる代表的な測定対象物質として「乳酸」又は「乳酸塩」が例示できる。このとき、乳酸又は乳酸塩を検出する際の適正なパルスレーザ光LBの波長は、例えば1480nmが採用される。
【0020】
上記した乳酸又は乳酸塩を検出するのに適正な波長(1480nm)を選択的に液状生体物LOに照射するために、複数のレーザ光源115a、115bとしては、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)をアレイ状に配置したものや、ミリ波、サブミリ波、マイクロ波で発振されるレーザ、あるいは自由電子レーザ等を採用できる。そして、これらを同軸に集光して高出力化したパルスレーザ光LBを波長調整部117に透過させることにより、所定の適正波長の範囲に選択されたパルスレーザ光LBが伝送路118に出射される。ここで、波長調整部117としては、所定の上限値及び下限値の範囲外の光を選択的に除去するバンドパスフィルタ等が例示できる。
【0021】
なお、図2に示す構成においては、複数のレーザ光源115a、115bとして2つの光源を配置した場合を例示したが、さらに多数(3個以上)のレーザ光源をアレイ状あるいは円周上に配置するように構成してもよい。また、複数のレーザ光源115a、115bに駆動電源113から駆動電力を直接供給する場合を示したが、例えば支持部114に増幅回路(図示せず)を設けて、駆動電源113からの駆動電力を増幅してレーザ光源115a、115bに供給するように構成してもよい。
【0022】
照射機構120は、その一例として、伝送路118を介して一端(上端)側からパルスレーザ光LBが導入され、内部に配置された集光レンズ(図示せず)により所定のビーム直径及びビーム断面形状等のビームプロファイルに成形された後、他端(下端)側から容器142に収容された液状生体物LOに向けて照射される。なお、第1の実施形態においては、パルスレーザ光LBはビームスポットが円形断面となるように成形される場合を例示しているが、集光レンズを適宜選択することにより、ビームプロファイルを多角形あるいはライン状等の任意の形状に成形することも可能である。
【0023】
搬送機構130は、その一例として、互いに直交するXYZの3軸方向に相対移動するリニア駆動体として構成され、その一端に照射機構120が取り付けられる。なお、搬送機構130は、一端に照射機構120を取り付けたロボットアームを備えた6軸又は7軸タイプの産業用ロボットとして構成されてもよい。
【0024】
サンプル保持機構140は、その一例として、測定対象物質を含む液状生体物LOを収容した容器142を上面に載置しつつ図示上のXYZの3軸方向に移動自在なテーブルとして構成されている。また、サンプル保持機構140の上面と容器142の下面との間には液状生体物LOからの透過光を検出する受光センサ150が配置される。
【0025】
なお、液状生体物LOを収容する容器142としては、上記したパルスレーザ光LBの波長に対して透明な(すなわち、照射されたパルスレーザ光LBが透過する)材料によって構成される。これにより、容器142に収容された液状生体物LOに照射されたパルスレーザ光は、測定対象物質の存在しない領域ではそのまま容器142の底面を透過して受光センサ150まで到達するため、受光センサ150によって照射されたことが検出される。
【0026】
図3に示すように、制御ユニット160は、その一例として、生体情報検出装置100の各構成要素に動作指令を出力する主制御部162と、受光センサからの検出値を用いて液状生体物LOに含まれる測定対象物質の分量を演算する分量演算部164と、上記演算された測定対象物質の分量やその他の各種パラメータ等を表示する表示部166と、測定条件等の各種パラメータの修正を行う情報を手入力可能な入力インターフェース168と、を含む。そして、制御ユニット160は、主制御部162がレーザ発振器110、搬送機構130及びサンプル保持機構140と有線あるいは無線で接続されており、これらの周辺機器と信号のやり取りを行って生体情報検出装置100全体の動作を制御する。
【0027】
主制御部162は、その一例として、ユーザから入力インターフェース168により測定開始に対応する開始信号Ssが入力されると、所定の測定プログラムからレーザ発振器110への発振や、搬送機構130及びサンプル保持機構140への相対移動等の動作情報を抽出して、これらの動作を実行するための発振信号Soや相対移動信号Smを生成して各構成要素に出力する機能を有する。また、主制御部162は、レーザ発振器110への出力と同期して後述する分量演算部164に発振信号Soを出力するとともに、当該分量演算部164からの演算結果を受けて、分量の演算結果や現在の生体情報検出装置100の各種パラメータを表示部166に送ってこれらを表示させる機能も有する。
【0028】
分量演算部164は、上記した開始信号を受けた主制御部162から演算開始に対応する演算信号Seを受信すると、受光センサ150から時刻tにおける検出値に対応する検出信号Sdを連続的に受信して蓄積する機能を備える。また、分量演算部164は、主制御部162から発振信号Soを受信して、受光センサ150で検出した検出信号Sdの時系列データからレーザ発振器110の発振タイミングに合わせた区間データDを切り出し、当該区間データDに基づいて液状生体物LO中に含まれる測定対象物質の分量を演算する機能をも備える。そして、演算された測定対象物質の分量は、主制御部162に送られる。
【0029】
次に、図4図6を用いて、第1の実施形態による生体情報検出装置において実行される生体情報検出方法の具体的な動作態様を説明する。
【0030】
図4は、第1の実施形態による生体情報検出方法の概要を示すフローチャートである。また、図5Aは、第1の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。また、図5B及び図5Cは、第1の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。さらに、図6は、各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。
【0031】
第1の実施形態による生体情報検出装置100によって実行される生体情報検出方法は、図4に示すように、ユーザから入力インターフェース168により測定開始に対応する開始信号Ssが入力されると、まず制御ユニット160の主制御部162が、分量演算部164に対して、受光センサ150からの検出信号Sdの受信開始を指令する(ステップS101)。これにより、分量演算部164では、フローチャートに示す動作の終了まで連続的に受光センサ150からの検出信号Sdを時系列データとして連続的に受信して一時記憶する。
【0032】
続いて、主制御部162は、所定の測定プログラムに基づいて、搬送機構130及びサンプル保持機構140に対して相対移動信号Smを出力する(ステップS102)。これにより、液状生体物LOに対してパルスレーザ光LBが照射される位置及び焦点距離が位置決めされる。
【0033】
次に、主制御部162は、レーザ発振器110に対して、既定の照射時間Tonだけパルスレーザ光LBを出射する発振信号Soを出力する(ステップS103)。当該発振信号Soを受けたレーザ発振器110では、発振制御部112が駆動電源113に対して上記の照射時間Tonの間だけオン指令信号Sonを出力し、所定の波長に調整されたパルスレーザ光LBが出射される。
【0034】
続いて、主制御部162は、上記測定プログラムに基づいて、容器142内の液状生体物LOに規定されるすべての測定範囲でのパルスレーザ光LBの照射が終了したかどうかを判別する(ステップS104)。すなわち、ステップS104において、すべての測定範囲での照射が終了したと判別された場合、主制御部162は液状生体物LOに対する測定が終了したとして分量演算部164に演算信号Seを出力し、以後のステップS105に進む。
【0035】
一方、ステップS104において、すべての測定範囲での照射が終了していないと判別された場合、ステップS102に戻って、測定プログラムに従う未終了の測定範囲に対するパルスレーザ光LBの位置決め及び照射が繰り返し実行される。これにより、容器142に収容された液状生体物LOの測定すべきすべての範囲(領域)における測定対象物質の検出が実行される。
【0036】
図5A図5Cを参照すると、上記のステップS102からステップS104までの動作手順について、その具体的な一例が示されている。すなわち、図5Aに示すように、上面にセンシング面を有する受光センサ150に載置された容器142には液状生体物LOが収容されており、当該液状生体物LOにおいて、パルスレーザ光LBの集光点FPの集光径(スポット径)に対応する長さを縦横の長さとする矩形領域Cを複数個定義する。
【0037】
そして、上記のように定義された複数個の矩形領域について、測定プログラムでパルスレーザ光LBの照射開始位置Psと照射終了位置Peをさらに定義するとともに、これら照射開始位置Psと照射終了位置Peとの間をXY方向で走査する走査経路を規定する。なお、図4で示したフローチャートのステップS104の判別では、現在の照射位置(集光点FP)が走査経路上の照射終了位置Peと一致したかどうかで判断される。
【0038】
次に、パルスレーザ光LBの照射位置(集光点FP)において、測定対象物質MMの有無と受光センサ150からの検出信号との関係について以下に説明する。例えば図5Bに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在しない場合、パルスレーザ光LBは液状生体物LO及び容器142を透過するため、照射されたパルスレーザ光LBの出力に相当する透過光TBが受光センサ150の受光点DPで検出される。
【0039】
一方、図5Cに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在する場合には、パルスレーザ光LBは測定対象物質MMで吸収あるいは反射されるため、照射されたパルスレーザ光LBの出力より低出力を有する透過光TBが受光センサ150の受光点DPで検出される。なお、図5Cにおいては、測定対象物質MMがパルスレーザ光LBの集光点FPの集光径より大きい場合を例示しているが、集光径より小さい場合であっても同様の傾向を示す。
【0040】
続いて、主制御部162から演算信号を受けた分量演算部164は、図6に示すように、主制御部162からの発振信号Soを受信していた区間に対応する受光センサ150からの検出信号Sdの区間を切り出すことにより、区間データDを抽出する(ステップS105)。これにより、検出信号Sdにおけるパルスレーザ光LBが照射されていた照射時間Tonに対応する区間のデータのみを絞り込むことができる(すなわち検出時のノイズを低減できる)。ここで、発振信号Soの照射時間Tonと非照射時間Toffとを併せて1周期Tと定義する。
【0041】
次に、分量演算部164は、抽出された区間データDに基づいて測定対象物質MMの液状生体物LOに対する分量を演算する。具体的には、ステップS105で抽出された区間データDは、その一例として、測定対象物質MMが検出されていない場合(非検出区間Tn)の基準データDs(図5Bで示した状態)と、測定対象物質MMが検出された場合(検出区間Td)の検出データDd(図5Cで示した状態)と、の2つのレベルによる出力値を含んでいる。
【0042】
このとき、基準データDsと検出データDdとの差分ΔDの絶対値が大きいほど測定対象物質MMの検出量が多いと判断できる。そこで、分量演算部164は、対象となるすべての測定範囲を測定後に、区間データDの全体における検出データDdの数を積算し、測定対象物質MMの「分量」として主制御部162に出力して動作を終了する(ステップS106)。
【0043】
なお、測定対象物質MMの分量は積算数ではなく全体に対する比率として演算されてもよい。また、基準データDsと検出データDdとの差分ΔDに閾値を設けて、所定の閾値を超えたものを「検出した」と判断するようにしてもよい。
【0044】
上記のような構成を備えることにより、第1の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法は、一定周期でパルスレーザ光を発振するようにレーザ発振器に対して発振指令を出力し、受光センサからの検出信号を上記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、当該区間データに基づいて液状生体物中の測定対象物質の分量を演算するように構成したため、液状生体物に含まれる測定対象物質の測定データを、低ノイズで非侵襲的に取得できる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、図7A図8を用いて、本発明の別の一例である第2の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法の実施態様について説明する。なお、第2の実施形態においては、図1図6に示した概略図等において、第1の実施形態と同一あるいは共通の構成を採用し得るものについては、同一の符号を付してこれらの繰り返しの説明は省略する。
【0046】
図7Aは、第2の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。また、図7B及び図7Cは、第2の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す部分正面図である。さらに、図8は、第2の実施形態による生体情報検出方法の概要を示すフローチャートである。
【0047】
第2の実施形態による生体情報検出装置100においては、第1の実施形態における液状生体物LOを収容する容器142を用いた測定手法に対して、例えば液状生体物LOの代表的な一例である血液が人間等の生物内部を流れている間に、直接測定用のパルスレーザ光LBを血管等に照射して測定する手法を用いる。すなわち、図7Aに示すように、人体において照射されるパルスレーザ光LBが比較的透過しやすい末端部(例えば指240)を上面にセンシング面を有する受光センサ150上に載せた状態で、パルスレーザ光LBを当該指240に向けて照射する。
【0048】
このとき、パルスレーザ光LBの照射位置(集光点FP)において、例えば図7Bに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在しない場合、パルスレーザ光LBは血管242を含む指240を透過するため、照射されたパルスレーザ光LBの出力に相当する透過光TBが受光センサ150の受光点DPで検出される。
【0049】
一方、図7Cに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在する場合には、パルスレーザ光LBは測定対象物質MMで吸収あるいは反射されるため、照射されたパルスレーザ光LBの出力より低出力を有する透過光TBが受光センサ150の受光点DPで検出される。なお、図7Cにおいても、第1の実施形態の場合と同様に、測定対象物質MMがパルスレーザ光LBの集光点FPの集光径より小さい場合であっても同様の傾向を示す。
【0050】
このような配置による状態で、一定周期Tのオンオフ制御によるパルスレーザ光LBを所定時間だけ照射しつつ、受光センサ150からの検出信号Sdを受信する。これにより、第1の実施形態において容器142内の液状生体物LOの測定領域を走査して測定する代わりに、連続的に流れる血液としての液状生体物LOの時系列データを測定することができる。
【0051】
第2の実施形態による生体情報検出方法は、図8に示すように、ユーザから入力インターフェース168により測定開始に対応する開始信号Ssが入力されると、まず制御ユニット160の主制御部162が、分量演算部164に対して、受光センサ150からの検出信号Sdの受信開始を指令する(ステップS201)。これにより、分量演算部164では、フローチャートに示す動作の終了まで連続的に受光センサ150からの検出信号Sdを時系列データとして連続的に受信して一時記憶する。
【0052】
続いて、主制御部162は、所定の測定プログラムに基づいて、レーザ発振器110に対して既定の照射時間Tonだけパルスレーザ光LBを出射する発振信号Soを出力する(ステップS202)。当該発振信号Soを受けたレーザ発振器110では、第1の実施形態と同様に、発振制御部112が駆動電源113に対して上記の照射時間Tonの間だけオン指令信号Sonを出力し、所定の波長に調整されたパルスレーザ光LBが出射される。
【0053】
続いて、主制御部162は、上記測定プログラムに基づいて、一定周期Tによるパルスレーザ光LBの照射が所定周期終了したかどうかを判別する(ステップS203)。すなわち、ステップS203において、所定の周期数の照射が終了したと判別された場合、主制御部162は液状生体物LOに対する測定が終了したとして分量演算部164に演算信号Seを出力し、以後のステップS204に進む。
【0054】
一方、ステップS203において、所定の周期数の照射が終了していないと判別された場合、ステップS202に戻って1周期分のパルスレーザ光LBの照射を繰り返す。これにより、指240の血管242を連続的に流れる液状生体物(血液)LOの所定時間における測定対象物質に対する検出動作が実行される。
【0055】
続いて、主制御部162から演算信号を受けた分量演算部164は、第1の実施形態と同様に、主制御部162からの発振信号Soを受信していた区間に対応する受光センサ150からの検出信号Sdの区間を切り出すことにより、区間データDを抽出する(ステップS204)。これにより、検出信号Sdにおけるパルスレーザ光LBが照射されていた照射時間Tonに対応する区間のデータのみを絞り込むことができる。
【0056】
次に、分量演算部164は、第1の実施形態の場合と同様に、抽出された区間データDに基づいて測定対象物質MMの液状生体物LOに対する分量を演算する。これにより、分量演算部164は、所定の周期数における時系列データの測定後に、区間データDの全体における検出データDdの数を積算し、測定対象物質MMの「分量」として主制御部162に出力して動作を終了する(ステップS205)。
【0057】
上記のような構成を備えることにより、第2の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法は、第1の実施形態で説明した効果に加えて、例えば液状生体物の代表的な一例である血液が人間等の生物内部を流れている間に、直接測定用のパルスレーザ光を指等の血管に照射して測定する手法を用いるため、人体等から予め測定対象物質を含む液状生体物を取得する必要がなく、測定時の負担を軽減できる。また、測定する液状生体物LOを収容した容器に対してパルスレーザ光を相対移動させるステップが不要となるため、全体の測定時間を短縮することもできる。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、図9A図11を用いて、本発明のさらに別の一例である第3の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法の実施態様について説明する。なお、第3の実施形態においては、図1図8に示した概略図等において、第1の実施形態及び第2の実施形態と同一あるいは共通の構成を採用し得るものについては、同一の符号を付してこれらの繰り返しの説明は省略する。
【0059】
図9Aは、第3の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図である。また、図9B及び図9Cは、第3の実施形態による生体情報検出装置においてパルスレーザ光が液状生体物に照射される動作手順の概要を示す平面図及び部分正面図である。また、図10は、各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。さらに、図11は、第3の実施形態による生体情報検出装置の変形例による測定ユニットの概要を示す部分断面図である。
【0060】
第3の実施形態による生体情報検出装置100においては、第1の実施形態における液状生体物LOからの透過光を受光センサ150で検出する測定手法に対して、液状生体物LOに含まれる測定対象物質MMの反射光を測定する手法を用いる。すなわち、図9Aに示すように、サンプル保持機構140に載置された容器142に液状生体物LOが収容されており、第1の実施形態の場合と同様に、液状生体物LOの所定の測定範囲に対してパルスレーザ光LBを照射する。
【0061】
このとき、第3の実施形態による生体情報検出装置100においては、液状生体物LOに含まれる測定対象物質MMで反射した反射光RBを、照射機構120に取り付けた受光センサ350によって検出する。すなわち、例えば図9Bに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在しない場合、パルスレーザ光LBは液状生体物LO及び容器142を透過するため、受光センサ350では装置周囲の光量に基づく検出値のみが検出される。
【0062】
一方、図9Cに示すように、照射されたパルスレーザ光LBの集光点FPあるいはその延長上に測定対象物質MMが存在する場合には、パルスレーザ光LBは測定対象物質MMで吸収あるいは反射されるため、照射されたパルスレーザ光LBの出力の一部が反射された反射光RBが受光センサ350の受光点DPで検出される。なお、図9Cにおいては、第1の実施形態の場合と同様に、測定対象物質MMがパルスレーザ光LBの集光点FPの集光径より小さい場合であっても同様の傾向を示す。
【0063】
第3の実施形態による生体情報検出装置100においては、図10に示すように、受光センサ350が反射光RBを検出した区間で検出値が大となる検出信号Sdが受信される。そして、分量演算部164は、主制御部162からの発振信号Soを受信していた区間に対応する受光センサ150からの検出信号Sdの区間を切り出すことにより、区間データDを抽出する。これにより、第1の実施形態の場合と同様に、検出信号Sdにおけるパルスレーザ光LBが照射されていた照射時間Tonに対応する区間のデータのみを絞り込むことができる。
【0064】
次に、分量演算部164は、抽出された区間データDに基づいて測定対象物質MMの液状生体物LOに対する分量を演算する。具体的には、抽出された区間データDは、その一例として、測定対象物質MMが検出されていない場合(非検出区間Tn)の基準データDsと、測定対象物質MMが検出された場合(検出区間Td)の検出データDdと、の2つのレベルによる出力値を含んでいる。
【0065】
このとき、第1の実施形態の場合と同様に、基準データDsと検出データDdとの差分ΔDの絶対値が大きいほど測定対象物質MMの検出量が多いと判断できる。そこで、分量演算部164は、対象となるすべての測定範囲を測定後に、区間データDの全体における検出データDdの数を積算し、測定対象物質MMの「分量」として主制御部162に演算結果を出力する。
【0066】
上記とおり、第3の実施形態による生体情報検出装置100では、測定対象物質MMに対するパルスレーザ光LBの反射光RBを検出することにより、当該測定対象物質MMの分量を演算する。このため、第3の実施形態の変形例として、よりコンパクトなサイズの測定ユニットの構成を採用することができる。
【0067】
すなわち、図11に示すように、測定ユニット360として、例えば指240等の液状生体物LOが流れる生物の一部を収容する筒状の収容部362と、当該収容部362の内部空間Sに向けてパルスレーザ光LBを照射する照射機構120と、パルスレーザ光LBの反射光を検出する受光センサ350と、を含む構成が例示できる。これにより、測定ユニット360の周囲環境に伴う光量の検出を最小限に留めることができるため、測定精度をさらに高めることが可能となる。
【0068】
上記のような構成を備えることにより、第3の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法は、第1の実施形態で説明した効果に加えて、液状生体物に含まれる測定対象物質の反射光を測定する手法を用いることにより、周囲環境に伴う光量の検出を最小限に留めることができるため、測定精度をさらに高めることが可能となる。
【0069】
<第4の実施形態>
次に、図12図14を用いて、本発明のさらに別の一例である第4の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法の実施態様について説明する。なお、第4の実施形態においては、図1図11に示した概略図等において、第1~第3の実施形態と同一あるいは共通の構成を採用し得るものについては、同一の符号を付してこれらの繰り返しの説明は省略する。
【0070】
図12は、第4の実施形態による生体情報検出装置の構成を示す概略図である。また、図13は、各種指令信号と測定データとの関係を示す時系列グラフである。また、図14は、図12で示した生体情報検出装置に含まれるレーザ発振器の構成の一例を示すブロック図である。
【0071】
第4の実施形態による生体情報検出装置400においては、異なる測定対象物質に対応した異なる適正波長に設定されたパルスレーザ光LBa、LBbを出力する複数のレーザ発振器410a、410bを備える点で、第1の実施形態と異なる。これにより、第4の実施形態による生体情報検出装置400は、単一の液状生体物LOから複数の測定対象物質MM1、MM2に対する分量を得ることが可能となる。
【0072】
具体的には、図12に示すように、第4の実施形態による生体情報検出装置400は、第1の測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光LBaを発振するレーザ発振器410aと、第2の測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光LBbを発振するレーザ発振器410bと、第1の測定対象物質及び第2の測定対象物質が内部に存在する液状生体物LOにパルスレーザ光LBa、LBbを照射する照射機構120と、照射機構120のXYZ方向の位置を移動させる搬送機構130と、液状生体物LOを収容した容器142のXYZ方向の位置を移動させるサンプル保持機構140と、液状生体物LOから出力される検出レーザ光を受光する受光センサ150と、各構成要素の動作を制御する制御ユニット160と、を含む。
【0073】
第4の実施形態による生体情報検出装置400において、液状生体物LOに含まれる第1の測定対象物質MM1としては「乳酸」又は「乳酸塩」が例示できる。このとき、当該乳酸又は乳酸塩を検出する際の適正なパルスレーザ光LBaの波長は、第1の実施形態の場合と同様に、例えば1480nmが採用される。
【0074】
一方、液状生体物LOに含まれる第2の測定対象物質MM2としては「ピルビン酸」が例示できる。このとき、当該ピルビン酸を検出する際の適正なパルスレーザ光LBbの波長は、例えば1462nmが採用される。
【0075】
レーザ発振器410a、410bから出力されたパルスレーザ光LBa、LBbは、それぞれ伝送路418a、418bを介して照射機構120の一端(上端)側から導入される。そして、パルスレーザ光LBa、LBbは、照射機構120の内部に配置された集光光学系(図示せず)により同軸のビームプロファイルに成形された後、他端(下端)側から容器142に収容された液状生体物LOに向けて照射される。なお、第4の実施形態においても、パルスレーザ光LBa、LBbのビームスポットを多角形あるいはライン状等の任意の形状としたビームプロファイルに成形することが可能である。
【0076】
このような構成によって得られた受光センサ150における検出信号Sdと各種信号の関係は、その一例として図13に示すように、2つの発振信号S1o、S2oに対応した第1の検出区間T1dと第2の検出区間T2dとを含む態様となる。そして、第1の実施形態と同様に、主制御部162から演算信号を受けた分量演算部164は、発振信号S1oを受信していた区間に対応する検出信号Sdの区間と発振信号S2oを受信していた区間に対応する検出信号Sdの区間とを切り出すことにより、第1区間データD1及び第2区間データD2を抽出する。これにより、第1のパルスレーザ光LB1が照射されていた照射時間T1onと第2のパルスレーザ光LB2が照射されていた照射時間T2onとに対応する区間のデータのみを絞り込むことができる。
【0077】
次に、分量演算部164は、抽出された第1区間データD1及び第2区間データD2に基づいて、測定対象物質MM1及びMM2の液状生体物LOに対する分量を演算する。具体的には、抽出された第1区間データD1、第2区間データD2は、その一例として、測定対象物質MM1、MM2が検出されていない場合(非検出区間Tn)の基準データDsと、測定対象物質MM1、MM2が検出された場合の検出データD1d、D2dと、の2つのレベルによる出力値を含んでいる。
【0078】
このとき、基準データDsと検出データD1dとの差分ΔD1及び基準データDsと検出データD2dとの差分ΔD2の絶対値が大きいほど、測定対象物質MM1、MM2の検出量が多いと判断できる。そこで、分量演算部164は、対象となるすべての測定範囲を測定後に、第1区間データD1及び第2区間データD2の全体における検出データD1d及びD2dの数を積算し、測定対象物質MM1、MM2のそれぞれの「分量」として主制御部162に出力する。
【0079】
なお、第1の実施形態の場合と同様に、測定対象物質MM1、MM2の分量は積算数ではなく全体に対する比率として演算されてもよい。また、差分ΔD1あるいはΔD2に閾値を設けて、所定の閾値を超えたものを「検出した」と判断するようにしてもよい。
【0080】
次に、図14を用いて、第4の実施形態の変形例について説明する。第4の実施形態の変形例による生体情報検出装置400は、その一例として、図12で示した2つのレーザ発振器410a、410bを単一のレーザ発振器410として構成したものを含む。
【0081】
すなわち、図14に示すように、レーザ発振器410は、発振制御部112と、駆動電源113と、複数のレーザ光源415a、415bを取り付けた支持部114と、レーザ光源415aから出射されたパルスレーザ光LBaを集光させる集光レンズ416aと、レーザ光源415bから出射されたパルスレーザ光LBbを集光させる集光レンズ416bと、出射されたパルスレーザ光LBa、LBbの波長を調整する波長調整部417a、417bと、集光されたパルスレーザ光LBa、LBbをそれぞれ照射機構120に伝送する伝送路418a、418b(例えば光ファイバ)と、を含む。
【0082】
なお、第1の実施形態の場合と同様に、複数のレーザ光源415a、415bとして、複数の発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)をアレイ状に配置して高出力化したものを採用できる。また、増幅回路(図示せず)を別途設けて、複数のレーザ光源415a、415bに駆動電源113からの駆動電力を増幅して供給するように構成してもよい。これらの構成により、生体情報検出装置400の全体の占有スペースを低減できる。
【0083】
さらに、第4の実施形態による生体情報検出装置400では、2つの測定対象物質MM1、MM2を検出するために2つの異なるパルスレーザ光LBa、LBbを用いた場合を例示したが、3つ以上の測定対象物質を検出するために、3つ以上の異なる波長によるパルスレーザ光を組合せて適用することも可能である。
【0084】
上記のような構成を備えることにより、第4の実施形態による生体情報検出装置及び生体情報検出方法は、第1の実施形態で説明した効果に加えて、複数の測定対象物質に対応した異なる適正波長に設定されたパルスレーザ光を出力する複数のレーザ発振器を用いて検出を行う態様としたため、単一の液状生体物から複数の測定対象物質に対する分量を同時に得ることが可能となる。
【0085】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。例えば、第1の実施形態から第4の実施形態で示した具体例は、それぞれの特徴を組合せて適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
100、400 生体情報検出装置
110、410、410a、410b レーザ発振器
112 発振制御部
113 駆動電源
114 支持部
115a、115b、415a、415b レーザ光源
116、416a、416b 集光レンズ
117、417a、417b 波長調整部
118、418a、418b 伝送路
120 照射機構
130 搬送機構
140 サンプル保持機構
142 容器
150、350 受光センサ
160 制御ユニット
162 主制御部
164 分量演算部
166 表示部
168 入力インターフェース
240 指
242 血管
360 測定ユニット
362 収容部
【要約】
本発明は、測定対象物質に対応した適正波長で発振されたパルスレーザ光を発振するレーザ発振器と、測定対象物質が内部に存在する液状生体物にパルスレーザ光を照射する照射機構と、液状生体物から出力される検出レーザ光を受光する受光センサと、各構成要素の動作を制御する制御ユニットと、を含む生体情報検出装置である。上記制御ユニットは、一定周期でパルスレーザ光を発振するようにレーザ発振器に対して発振指令を出力し、受光センサからの検出信号を上記一定周期に対応する時間での区間データとして切り出し、区間データに基づいて液状生体物中の測定対象物質の分量を演算する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14