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7290911逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230607BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20230607BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20230607BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230607BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20230607BHJP
   C02F 1/20 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20230607BHJP
   C02F 9/00 20230101ALI20230607BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D61/02 500
B01D61/44 520
B01D61/58
B01D71/56
C02F1/20 A
C02F1/32
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/461 Z
C02F1/469
C02F1/72 101
C02F9/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017230063
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019098229
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 明広
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】金 公彦
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105948337(CN,A)
【文献】中国実用新案第202022803(CN,U)
【文献】特開2009-95821(JP,A)
【文献】特開平7-323279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離二酸化炭素を3mg/L以上10mg/L以下含有する被処理水を第1逆浸透膜に通水して第1透過水および第1濃縮水を得る第1の逆浸透膜処理工程と、
前記第1透過水を第2逆浸透膜に通水して第2透過水および第2濃縮水を得る第2の逆浸透膜処理工程と、
を含み、
少なくとも前記第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上5%以下であり、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.0%以上99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする逆浸透膜処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の逆浸透膜処理方法であって、
前記第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が、前記第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束より高いことを特徴とする逆浸透膜処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の逆浸透膜処理方法であって、
前記第2透過水について、脱気処理、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことを特徴とする逆浸透膜処理方法。
【請求項4】
遊離二酸化炭素を3mg/L以上10mg/L以下含有する被処理水を第1逆浸透膜に通水して第1透過水および第1濃縮水を得る第1の逆浸透膜処理装置と、
前記第1透過水を第2逆浸透膜に通水して第2透過水および第2濃縮水を得る第2の逆浸透膜処理装置と、
を備え、
少なくとも前記第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上5%以下であり、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.0%以上99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜であることを特徴とする逆浸透膜処理システム。
【請求項5】
請求項に記載の逆浸透膜処理システムであって、
前記第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が、前記第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束より高いことを特徴とする逆浸透膜処理システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の逆浸透膜処理システムであって、
前記第2透過水について、脱気処理を行う脱気処理システム、イオン交換処理を行うイオン交換処理システム、電気式脱塩処理を行う電気式脱塩処理システム、UV殺菌処理を行うUV殺菌処理システム、UV酸化処理を行うUV酸化処理システム、微粒子除去処理を行う微粒子除去処理システムのうちの少なくとも1つの処理システムを有することを特徴とする逆浸透膜処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜処理方法、逆浸透膜処理システム、ナトリウム除去装置、およびナトリウム除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、井水、市水、その他の水から純水を製造する方法として、これらの水について除濁や脱塩素等の前処理を行った後、逆浸透膜を用いて透過水(処理水)と濃縮水とを得る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムが知られている。
【0003】
このような逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムにおいて、水質向上目的で、脱炭酸塔等による脱炭酸処理と2段以上の逆浸透膜処理とを組み合わせた処理方法が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、酸添加した原水を脱炭酸塔で脱炭酸処理した後、2段以上の逆浸透膜処理装置で逆浸透膜処理する方法が記載されている。また、特許文献2には、コストダウン、サイズダウンのため、逆浸透膜処理の最終段後に脱炭酸処理を設ける方法が記載されている。しかしながら、脱炭酸処理を行うための設備コストや設置面積、酸添加による薬品コストが増大するという問題がある。
【0005】
一方、処理水水質を向上させるために、複数の逆浸透膜処理を多段に行う方法が知られており、動力コストや設備コスト等の低減を目的として、第2逆浸透膜を第1逆浸透膜より透過流束が高い逆浸透膜にする方法が知られている(特許文献3参照)。
【0006】
ポリアミド系の逆浸透膜は一般的に負荷電膜であるため、正イオンであるナトリウム(Na)イオンを選択的に通し易く、透過流束が高い逆浸透膜ほどナトリウムイオンを通し易い傾向にあるため、特許文献3のような方法では第2透過水において、十分な水質が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-167423号公報
【文献】特開2003-080036号公報
【文献】特許第5812563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する被処理水の2段以上の逆浸透膜処理において、処理水水質を向上することができる逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムを提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、遊離二酸化炭素およびナトリウムイオンを含有する被処理水のナトリウムを除去することができるナトリウム除去装置およびナトリウム除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、遊離二酸化炭素を3mg/L以上10mg/L以下含有する被処理水を第1逆浸透膜に通水して第1透過水および第1濃縮水を得る第1の逆浸透膜処理工程と、前記第1透過水を第2逆浸透膜に通水して第2透過水および第2濃縮水を得る第2の逆浸透膜処理工程と、を含み、少なくとも前記第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上5%以下であり、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.0%以上99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜である、逆浸透膜処理方法である。
【0013】
前記逆浸透膜処理方法において、前記第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が、前記第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束より高いことが好ましい。
【0014】
前記逆浸透膜処理方法において、前記第2透過水について、脱気処理、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。
【0015】
また、本発明は、遊離二酸化炭素を3mg/L以上10mg/L以下含有する被処理水を第1逆浸透膜に通水して第1透過水および第1濃縮水を得る第1の逆浸透膜処理装置と、前記第1透過水を第2逆浸透膜に通水して第2透過水および第2濃縮水を得る第2の逆浸透膜処理装置と、を備え、少なくとも前記第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上5%以下であり、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.0%以上99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜である、逆浸透膜処理システムである。
【0018】
前記逆浸透膜処理システムにおいて、前記第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が、前記第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束より高いことが好ましい。
【0019】
前記逆浸透膜処理システムにおいて、前記第2透過水について、脱気処理を行う脱気処理システム、イオン交換処理を行うイオン交換処理システム、電気式脱塩処理を行う電気式脱塩処理システム、UV殺菌処理を行うUV殺菌処理システム、UV酸化処理を行うUV酸化処理システム、微粒子除去処理を行う微粒子除去処理システムのうちの少なくとも1つの処理システムを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の逆浸透膜処理方法、逆浸透膜処理システムにより、遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する被処理水の2段以上の逆浸透膜処理において、処理水水質を向上することができる。
【0023】
また、本発明のナトリウム除去装置およびナトリウム除去方法により、遊離二酸化炭素およびナトリウムイオンを含有する被処理水のナトリウムを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るナトリウム除去装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
<逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム>
本発明の実施形態に係る逆浸透膜処理システムの一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0027】
逆浸透膜処理システム1は、被処理水を第1逆浸透膜に通水して第1透過水および第1濃縮水を得る第1逆浸透膜装置10と、第1透過水を第2逆浸透膜に通水して第2透過水および第2濃縮水を得る第2逆浸透膜装置12とを備える。
【0028】
図1の逆浸透膜処理システム1において、第1逆浸透膜装置10の入口に被処理水配管14が接続されている。第1逆浸透膜装置10の第1透過水出口と第2逆浸透膜装置12の入口とは第1透過水配管16により接続されている。第1逆浸透膜装置10の第1濃縮水出口には第1濃縮水配管18が接続されている。第2逆浸透膜装置12の第2透過水出口には第2透過水配管20が接続され、第2逆浸透膜装置12の第2濃縮水出口には第2濃縮水配管22が接続されている。第1濃縮水配管18は第2濃縮水配管22に接続されていてもよい。
【0029】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システム1の動作について説明する。
【0030】
遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する被処理水は、被処理水配管14を通して第1逆浸透膜装置10に通水される。第1逆浸透膜装置10において、第1逆浸透膜を用いて逆浸透膜処理が行われ、第1透過水および第1濃縮水が得られる(第1逆浸透膜処理工程)。第1透過水は、第1透過水配管16を通して第2逆浸透膜装置12に通水される。第1濃縮水は、第1濃縮水配管18を通して排出される。第2逆浸透膜装置12において、第2逆浸透膜を用いて逆浸透膜処理が行われ、第2透過水および第2濃縮水が得られる(第2逆浸透膜処理工程)。第2透過水は、処理水として第2透過水配管20を通して排出される。第2濃縮水は、第2濃縮水配管22を通して第1濃縮水とともに濃縮水として排出される。
【0031】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムでは、少なくとも第2逆浸透膜として、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜を用いる。
【0032】
本発明者らは、炭酸を遊離二酸化炭素として3mg/L以上含有する被処理水の2段以上の逆浸透膜処理において、少なくとも2段目の逆浸透膜の使用膜種を最適なものにすることにより、処理水水質を向上することができることを見出した。これにより逆浸透膜処理の前段において脱炭酸装置等による脱炭酸処理を設けなくてもよい。よって、動力コストや設備コスト等を低減することができる。
【0033】
水中に含まれる炭酸には、イオン化していない遊離二酸化炭素(CO)、イオン化している炭酸水素イオン(HCO )、炭酸イオン(CO 2-)の形態がある。これらのうち遊離二酸化炭素は、荷電を有していないため逆浸透膜を透過しやすいが、本発明者らは、被処理水中に遊離二酸化炭素が多く含まれるほど(例えば、3mg/L以上)、被処理水中に含まれるナトリウムイオン(Na)が逆浸透膜を透過しやすくなり、処理水水質が低下する現象を見出した。そして、少なくとも第2逆浸透膜としてpH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜、すなわちpH5~7の範囲でナトリウムイオンの阻止率が1%以上変化する膜を用いると、被処理水中に遊離二酸化炭素が多く含まれていても、第2逆浸透膜でのナトリウムイオンの透過を抑制することができることを見出した。このような膜を少なくとも2段目の逆浸透膜装置に用いることにより、処理水(例えば第2透過水)中のナトリウムイオンの量が抑制され、処理水水質が向上する。
【0034】
少なくとも第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜であるが、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差は3%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。第2逆浸透膜が、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%未満のポリアミド系逆浸透膜であると、被処理水中に遊離二酸化炭素が多く含まれているとナトリウムイオンが逆浸透膜を透過しやすくなり、処理水水質が低下する。「ナトリウムイオン阻止率」は、NaCl濃度50ppmのNaCl水溶液に対する25℃、透過流束0.65m/d、回収率15%での阻止率であり、pHによって変化する。「pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上」とは、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの阻止率の最大値と最小値を求めて、その差が1%以上であることをいう。
【0035】
pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜としては、例えば、ダウケミカル社製「XLE-440」、「BW30XFR-400/34i」等が挙げられる。
【0036】
被処理水としては、遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する水であればよく、特に制限はないが、例えば、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。被処理水中のナトリウムイオンの濃度は、例えば、1mg/L~100mg/Lの範囲である。
【0037】
逆浸透膜処理システムの用途としては、例えば、純水製造、海水淡水化、排水回収等が挙げられる。
【0038】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムにおいて、第2逆浸透膜が、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜であることが好ましい。2段目の逆浸透膜の使用膜種をより最適化することにより、処理水水質の向上とともに動力コスト等の低減を実現することができる。第2逆浸透膜のpH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.3%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.4m/d以上のポリアミド系逆浸透膜であることがより好ましく、第2逆浸透膜のpH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.2%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.5m/d以上のポリアミド系逆浸透膜であることがさらに好ましい。ここで、有効圧力とは、一次側平均圧力から浸透圧と二次側圧力とを差し引いた、膜に働く有効な圧力のことをいう(膜面有効圧力ともいう)。
【0039】
pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上であり、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.4%未満であり、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.3m/d以上のポリアミド系逆浸透膜としては、例えば、ダウケミカル社製「XLE-440」、「HRLE-440i」等が挙げられる。
【0040】
また、第2逆浸透膜が、第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が0.7m/d以上1.3m/d未満のポリアミド系逆浸透膜であってもよい。これにより、処理水水質をより向上することができる。
【0041】
pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上であり、第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が0.7m/d以上1.3m/d未満のポリアミド系逆浸透膜としては、例えば、ダウケミカル社製「BW30XFR-400/34i」、「BW30-400」等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムにおいて、第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束が、第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束より高いことが好ましい。これにより、処理水水質を向上するとともに処理水の水量を確保することができる。この場合、第2逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束は、第1逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束の2倍~10倍であることが好ましく、6倍~10倍であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムにおいて、逆浸透膜処理システム1の被処理水について処理を行う、脱気処理装置、イオン交換処理装置、UV殺菌処理装置のうちの少なくとも1つの装置を備え、逆浸透膜処理システム1の被処理水について、脱気処理、イオン交換処理、UV殺菌処理のうちの少なくとも1つの処理を行ってもよい。ただし、上記の通り、逆浸透膜処理システム1の被処理水について脱気処理(脱炭酸処理)を行う脱気処理装置(脱炭酸装置)は設けなくてもよい。
【0044】
本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムにおいて、処理水(例えば、第2透過水)について、脱気処理を行う脱気処理システム、イオン交換処理を行うイオン交換処理システム、電気式脱塩処理を行う電気式脱塩処理システム、UV殺菌処理を行うUV殺菌処理システム、UV酸化処理を行うUV酸化処理システム、微粒子除去処理を行う微粒子除去処理システムのうちの少なくとも1つの処理システムを有し、脱気処理、イオン交換処理、電気式脱塩処理、UV殺菌処理、UV酸化処理、微粒子除去処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。特に、第2透過水について、電気式脱塩処理を行う場合、電気式脱塩処理においてはナトリウムイオンができるだけ少ない方が望ましいため、第2透過水について電気式脱塩処理を行う場合に、本実施形態に係る逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムを好適に適用することができる。
【0045】
<ナトリウム除去装置およびナトリウム除去方法>
本発明の実施形態に係るナトリウム除去装置の一例の概略を図2に示す。図2に示すナトリウム除去装置3は、被処理水を逆浸透膜に通水して透過水および濃縮水を得る逆浸透膜装置30を備える。逆浸透膜装置30において用いられる逆浸透膜は、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜である。
【0046】
図2のナトリウム除去装置3において、逆浸透膜装置30の入口には被処理水配管32が接続されている。逆浸透膜装置30の透過水出口には透過水配管34が接続され、濃縮水出口には濃縮水配管36が接続されている。
【0047】
ナトリウム除去装置3において、遊離二酸化炭素およびナトリウムイオンを含有する被処理水は、被処理水配管32を通して逆浸透膜装置30に通水される。逆浸透膜装置30において、逆浸透膜を用いて逆浸透膜処理が行われ、ナトリウムが低減された透過水、および濃縮水が得られる(逆浸透膜処理工程)。透過水は、処理水として透過水配管34を通して排出される。濃縮水は、濃縮水配管36を通して濃縮水として排出される。
【0048】
本発明者らは、炭酸を遊離二酸化炭素として含有する被処理水を、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜で処理することにより、遊離二酸化炭素を含有する被処理水のナトリウムを除去することができることを見出した。
【0049】
pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜については、上記逆浸透膜処理方法および逆浸透膜処理システムと同様である。
【0050】
被処理水としては、遊離二酸化炭素およびナトリウムイオンを含有する水であればよく、特に制限はないが、遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する水であることが好ましく、例えば、水道水、地下水、工業用水等が挙げられる。被処理水中のナトリウムイオンの濃度は、例えば、1mg/L~100mg/Lの範囲である。
【実施例
【0051】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
図1に示す純水製造装置により、井水を被処理水として1m/hの処理量で純水の製造を行った。被処理水の遊離二酸化炭素濃度が3.0mg/Lになるように炭酸を添加した。また、被処理水のナトリウムイオン濃度は、20mg/Lであった。用いた各装置の仕様および処理条件は次の通りである。
[第1逆浸透膜処理]
第1逆浸透膜:日東電工社製「ES-20」(pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%未満、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.6%、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.2m/d)
被処理水2.2m/hを第1透過水1.1m/hと第1濃縮水1.1m/hとに分離した。第1濃縮水は全量ブローした。
[第2逆浸透膜処理]
第2逆浸透膜:ダウケミカル社製「XLE-440」(pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が5%、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.0%、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.9m/d)
第1透過水1.1m/hを第2透過水1m/hと第2濃縮水0.1m/hとに分離した。第2濃縮水は全量ブローした。このような処理を10日間継続して行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0053】
被処理水の遊離二酸化炭素の濃度は、TOC計(GEAI製、Sievers M9eシリーズ)を用いて測定した。被処理水、透過水のナトリウムイオンの濃度は、イオンクロマトグラフ(メトロームジャパン製)を用いて測定した。逆浸透膜のナトリウムイオンの阻止率は、pH5~7の範囲で、回収率15%、フラックス0.65m/d、水温25℃、純水にNaClを50ppm添加した水を用いて通水し、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差を求めた。逆浸透膜の有効圧力1MPaあたりの透過流束は、透過水量を膜面積、膜面有効圧力で割ることで求めた。
【0054】
<実施例2>
第2逆浸透膜として以下の膜を用いた以外は実施例1と同様にして処理を行った。
[第2逆浸透膜処理]
第2逆浸透膜:ダウケミカル社製「BW30XFR-400/34i」(pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.6%、有効圧力1MPaあたりの透過流束が0.8m/d)
第1透過水1.1m/hを第2透過水1m/hと第2濃縮水0.1m/hとに分離した。第2濃縮水は全量ブローした。このような処理を10日間継続して行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0055】
<実施例3>
被処理水の遊離二酸化炭素濃度が10mg/Lになるように、被処理水に炭酸を添加した以外は実施例1と同様にして処理を行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0056】
<実施例4>
被処理水の遊離二酸化炭素濃度が10mg/Lになるように、被処理水に炭酸を添加した以外は実施例2と同様にして処理を行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0057】
<実施例5>
第1逆浸透膜として「ES-20」の代わりに「XLE-440」を用いた以外は、実施例1と同様にして、処理を行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0058】
<実施例6>
第1逆浸透膜として「ES-20」の代わりに「BW30XFR-400/34i」を用いた以外は、実施例2と同様にして、処理を行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0059】
<比較例1>
第2逆浸透膜として以下の膜を用いた以外は実施例1と同様にして処理を行った。
[第2逆浸透膜処理]
第2逆浸透膜:日東電工社製「ES-20」
第1透過水1.1m/hを第2透過水1m/hと第2濃縮水0.1m/hとに分離した。第2濃縮水は全量ブローした。このような処理を10日間継続して行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0060】
<比較例2>
第2逆浸透膜として以下の膜を用いた以外は実施例1と同様にして処理を行った。
[第2逆浸透膜処理]
第2逆浸透膜:日東電工社製「ES-15」(pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%未満、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.4%、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.4m/d)
第1透過水1.1m/hを第2透過水1m/hと第2濃縮水0.1m/hとに分離した。第2濃縮水は全量ブローした。このような処理を10日間継続して行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0061】
<比較例3>
実施例1において、第2逆浸透膜を次の通りとした以外は実施例1と同様にして処理を行った。
[第2逆浸透膜処理]
第2逆浸透膜:東レ社製「TMG20D-440」(pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%未満、pH7におけるナトリウムイオン阻止率が99.6%、有効圧力1MPaあたりの透過流束が1.4m/d)
第1透過水1.1m/hを第2透過水1m/hと第2濃縮水0.1m/hとに分離した。第2濃縮水は全量ブローした。このような処理を10日間継続して行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0062】
<比較例4>
二酸化炭素の濃度が10mg/Lになるように被処理水に炭酸を添加した以外は比較例1と同様にして処理を行った。得られた第2透過水のナトリウムイオン濃度を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例の方法およびシステムのように、少なくとも2段目の逆浸透膜の使用膜種を最適なものにすることにより、ナトリウムイオン濃度を低減し、処理水水質を向上することができた。また、実施例1,3の方法およびシステムでは、第2逆浸透膜処理での操作圧を低減することができ、処理水水質の向上とともに動力コストの低減を実現することができた。実施例2,4の方法およびシステムでは、処理水水質をより向上することができた。実施例5では、操作圧をより低減することができた。実施例6では、処理水水質をより向上することができた。
【0065】
このように、遊離二酸化炭素を3mg/L以上含有する被処理水の2段以上の逆浸透膜処理において、処理水水質を向上することができた。
【0066】
また、pH5~7の範囲におけるナトリウムイオンの最大阻止率と最小阻止率との差が1%以上のポリアミド系逆浸透膜で処理することにより、遊離二酸化炭素およびナトリウムを含有する被処理水のナトリウムを除去することができた。
【符号の説明】
【0067】
1 逆浸透膜処理システム、3 ナトリウム除去装置、10 第1逆浸透膜装置、12 第2逆浸透膜装置、14,32 被処理水配管、16 第1透過水配管、18 第1濃縮水配管、20 第2透過水配管、22 第2濃縮水配管、30 逆浸透膜装置、34 透過水配管、36 濃縮水配管。
図1
図2