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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-06
(45)【発行日】2023-06-14
(54)【発明の名称】気体交換装置の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20230607BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20230607BHJP
   A45F 3/14 20060101ALN20230607BHJP
【FI】
A61M16/00 380
A41D13/12 145
A45F3/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017567117
(86)(22)【出願日】2016-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2016000751
(87)【国際公開番号】W WO2017001034
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】15001921.4
(32)【優先日】2015-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514191265
【氏名又は名称】ノヴァルング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・マティス
(72)【発明者】
【氏名】エステル・ノヴォセル
(72)【発明者】
【氏名】ラインホルト・ボイター
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ボーゲンシュッツ
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-45943(JP,U)
【文献】特開2007-131984(JP,A)
【文献】特開2006-239309(JP,A)
【文献】特開2005-34175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0005933(US,A1)
【文献】特開昭60-236659(JP,A)
【文献】特開昭61-76164(JP,A)
【文献】特開昭63-177863(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035558(JP,U)
【文献】特開平10-209924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用気体交換装置と、前記携帯用気体交換装置の搬送装置と、患者の血液を搬送する血液搬送ホースと、を有する搬送システムであって、
前記搬送装置が、
- 患者の胴体を一周して、前記搬送装置が前記患者に支持されるように設計された少なくとも1本の第1の搬送ストラップと、
- 前記患者の少なくとも第1の肩にかけるように設計された少なくとも1本の第2の搬送ストラップと、
- 前記携帯用気体交換装置を締結するように設計された少なくとも1つの締結手段と、
を有し、
前記第1の搬送ストラップが、前記第1の搬送ストラップの一端と接続可能な他端を有し、
前記少なくとも1本の第2の搬送ストラップが、前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップに接続されており、
前記携帯用気体交換装置が、
前記搬送装置における前記少なくとも1つの締結手段に対して補完的に設計された締結手段を有し、前記第1の搬送ストラップに面し且つ前記第1の搬送ストラップに向かって内向きに湾曲する後方壁を有する筐体を有し、
前記携帯用気体交換装置が、ポンプ式周囲空気吸引部分を有し、
前記血液搬送ホースが、
前記携帯用気体交換装置と前記患者の血液循環系とを接続することができ、ダブルカニューレを介して、前記患者の血液循環系に接続される、
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記搬送装置が、前記少なくとも1本の第2の搬送ストラップが、前記搬送装置及び前記搬送装置に取り付けられた部品の重量を分散させるように設計されている請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送装置が、前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップ及び/又は前記少なくとも1本の第2の搬送ストラップが、前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップ及び/又は前記少なくとも1本の第2の搬送ストラップの長さを適応させるための手段を有する請求項1から2のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送装置が、前記患者の第2の肩を一周するようになっており、前記第1の搬送ストラップに接続する第3の搬送ストラップを有する請求項1から3のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項5】
前記搬送装置が、前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップを開閉するための少なくとも1つの閉鎖手段を有する請求項4のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項6】
前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップが、少なくとも前記閉鎖手段が閉鎖状態にあるときに、外側に向かって凸状に湾曲し、曲率半径が部分毎に異なる請求項5に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記少なくとも1本の第1の搬送ストラップ、前記少なくとも1本の第2の搬送ストラップ、及び前記第3の搬送ストラップのうちの少なくとも2つが、単一部品としてまとめて設計される請求項4から6のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項8】
前記搬送装置が、少なくとも1本のケーブルを保持及び/又は固定するように設計されたケーブルホルダーを更に有する請求項1から7のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項9】
前記携帯用気体交換装置が、制御ユニットを有し、前記制御ユニットが、前記搬送装置及び/又は前記携帯用気体交換装置に締結されるように設計された締結手段を有する請求項1に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記携帯用気体交換装置が、前記制御ユニットに接続するためのケーブルを有し、前記ケーブルが、前記搬送装置に形成されるケーブルホルダーに保持され得る請求項9に記載の搬送システム。
【請求項11】
接続するための前記携帯用気体交換装置及び/又は前記制御ユニットが、前記携帯用気体交換装置を前記制御ユニットに無線接続するための送信及び/又は受信ユニットを有する請求項9に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記携帯用気体交換装置が、外部気体圧縮要素を有しない請求項9から11のいずれかに記載の搬送システム。
【請求項13】
前記後方壁の曲率が、前記第1の搬送ストラップの曲率と本質的に一致し、その結果、前記筐体の前記後方壁が、外側に向かって放射状に湾曲する前記第1の搬送ストラップと本質的に面一に当接する請求項1に記載の搬送システム。
【請求項14】
前記筐体が、平均幅、前記平均幅に対して垂直に延びる平均高さ、及び前記平均幅及び前記平均高さに対して垂直に延びる平均深さを有し、前記平均深さが前記後方壁から離れる方向に延在し、前記平均深さの最大サイズが、前記平均幅+前記平均高さ+前記平均深さの合計全長の20%である請求項13に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1以上の気体がある媒体から別の媒体に移動することができる気体供給又は気体除去装置、即ち、2つの媒体間での1以上の気体を交換することができる装置である気体交換装置が知られている。かかる装置は、化学、バイオ、及び医学において用いられている。医学における重要な意図される用途は、生物学的液体、特に血液を酸素リッチにすること、及び/又は前記液体、特に血液から二酸化炭素を除去する(即ち、枯渇させる)ことである。かかる手段は、例えば、種々の肺疾患を治療する際に必要である。更に、かかる手段は、例えば、急性呼吸器不全の場合に加えて、肺の置換のため;体外循環系による肺のバイパス中;機械的な心臓サポートの場合は、異なる程度に;及び停止させた心臓での手術を可能とするために必要な場合もある。
【0003】
現在、末期の機能性肺疾患患者のための長期間有効な唯一の治療オプションは、肺移植を実施することである。肺の機能に恒久的に置き換わる他の医学的解決策は存在しない。したがって、COPD及びAECOPD等の慢性肺疾患に罹患している患者であって、肺移植が考えられないか又は直ちには考えられない患者にとっては、人工肺補助又は肺置換法が必要である。
【0004】
かかる肺補助又は肺置換法を可能にするために、血液気体交換器として知られているものが先行技術から知られている。
【0005】
血液気体交換器(酸素化装置又は人工肺とも称される)は、開胸手術中に完全且つ一時的に肺機能を引き継ぐために、又は集中治療室における肺の完全又は部分的な長期間サポートとして用いられている。血液気体交換器の主な機能は、血液への酸素の運搬(酸素化)と血液からの二酸化炭素の取り込み(脱炭酸)からなる。
【0006】
酸素化及び脱炭酸における用途に加えて、幾つかの治療用途においては、脱炭酸を行うだけで十分である。これは、体外式CO低減(ECCOR)として知られている。このため、患者の静脈へのアクセスを介して血液が連続的に取り出され、血液気体交換器を通して体外に汲み出され、そこでCOが除去され、再度、静脈から患者に供給される。
【0007】
かかる血液気体交換器における気体交換については、壁への接続を介して直接又は酸素ボトルを介して、いずれの病院においても入手可能な酸素が通常用いられる。次いで、酸素は、制御可能な気体ダイヤフラムを介して血液気体交換器に供給される。
【0008】
ECCOR用途のためのポンピングシステムは、原則として、定置式配電網で動作する。緊急時、例えば停電時には、電池の動作により緊急時の電力供給を維持することができる。しかし、医療施設は通常緊急時の発電装置を有しているので、電池の動作は時間が限られており、公知の気体交換装置は、通常、長時間動作したり移動しながら動作したりするようには設計されていない。可搬性電源を有する血液気体交換システムも知られているが、血液気体交換器の複数の異なる部品(時に扱いにくい)、特にガスキャニスタを搬送するために転動可能なキャリア装置に沿って搬送することを必要とする。
【0009】
そのサイズ、重量、及び例えば血液搬送チューブ用接続部の配置などにより、公知の気体交換装置の使用は、現在まで、覚醒又は鎮静患者がベッドに横たわっている定置用途に本質的に制限されている。したがって、これら公知の気体交換装置に依存している慢性肺疾患の患者は、その可動性が大きく制限される。このことは、患者の生活の質を著しく低下させるだけではなく、患者の可動性を重視する現代の治療アプローチを行うことができない。
【0010】
原則として可搬性用途に好適な気体交換装置が、最近の開発の主題である。かかる気体交換装置に依存している患者の可動性を確保するために、気体交換装置を安全に持ち運べるようにすることが望ましい。例えば転動可能な注入スタンドと同様に従来のキャリア装置を使用する場合、例えば、患者が落下するか又は個体若しくは物体が患者と搬送装置との間に入ったときに、搬送装置が患者から予測不可能に離れてしまうという危険が常にある。最悪の場合、これによって体外血液循環システムが遮断されるか又は更には破壊されることもある。これは、重篤な帰結を伴う血液消失、酸素欠乏、又は二酸化炭素中毒を含む、患者にとって重大な健康上の帰結に関連し得る。
【0011】
したがって、肺機能をサポートするための公知の気体交換装置は、肺置換装置でよく知られているものと同じ問題点を有する。この場合も同様に、ガスキャニスタも輸送しなければならず、様々な装置を身体に分散させて着用するか又は別々に輸送しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の根底にある目的は、先行技術の問題点のうちの少なくとも1つを防ぎ、輸送可能な気体交換装置を安全に輸送できるようにすることである。更なる目的は、更に長時間に亘って、好ましくは患者の身体に直接取り付けて、患者が気体交換装置を輸送できるようにすることである。特に、例えば、肺補助システムとして使用するために、特にコンパクトな設計によって患者の身体に取り付ける可搬、携帯用途のために設計された気体交換装置を輸送することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に係る搬送装置及び請求項10に係る搬送システムによって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の発明主題である。
【0014】
本発明の第1の態様は、携帯用気体交換装置、特に、気体交換の形態の生命維持システムとしての携帯用気体交換装置の搬送装置に関する。搬送装置は、患者の胴体を一周して、前記搬送装置が患者に支持されるように設計された少なくとも1本の第1の搬送ストラップを有する。更に、搬送装置は、携帯用気体交換装置を搬送装置に締結するように設計された少なくとも1つの締結手段を有する。したがって、患者が安全且つ快適に気体交換装置を着用することができる。本発明の意味における用語「気体交換装置」は、特に、例えば給気部品の形態の、1以上の予め指定した気体を給気することができる装置を含む。特に、肺機能を補助するだけであり、完全に置換する訳ではない本発明に係る装置を用いる場合、特に、酸素を供給するための追加のガスキャニスタの搬送を不要にすることができる。したがって、本発明に係る搬送装置は、好ましくは、肺補助のために必要な部品の全てと共に、気体交換装置を患者の身体に直接着用できるようにすることができる。これによって、患者の可動性が著しく増大し得る。
【0015】
更に、患者の少なくとも第1の肩にかけるように設計された少なくとも1本の第2の搬送ストラップを設けてもよい。このようにして、搬送装置及びそれに取り付けられた部品の重量を分散させることができる。
【0016】
本発明において、「ベルト」とは、互いに独立して別々のユニットとして設計された搬送装置の部分を意味する。或いは、ベルトは、互いに及び/又は後続の搬送構造と共に単一部品として形成してもよい。
【0017】
少なくとも2本のベルト、即ち、患者の胴体を一周することができるベルト及び少なくとも1つの肩にかけることができるベルトを設けることによって、搬送装置を患者の身体にしっかり取り付けることができるようになる。例えば、第2の搬送ストラップは、患者の胴体及び第1の肩に斜めがけできるように設計してよい。第1の搬送ストラップは、実質的に水平方向、例えば、患者の腰の周囲に延びることができるように設計してよく、その結果、3点ベルトシステムと同様に搬送装置を締結することができる。この状況では、特に第2の搬送ストラップは、第1の搬送ストラップに接続されてもよく、第1の搬送ストラップの周囲に少なくとも部分的に延びていてもよい。
【0018】
可搬性又は携帯用気体交換装置は、締結手段によって搬送ストラップに締結され得る。このようにして、患者は、患者の身体に直接携帯用気体交換装置をしっかりと着用することができる。これによって、患者の可動性が増大し、患者の回復又は治療を促進することができる。更に、携帯用気体交換装置又は体外血液循環システムが損傷する危険性を低減することができる。気体交換装置を締結するための締結手段は、第1の搬送ストラップの前方領域に設計してよい。締結手段は、搬送ストラップ、好ましくは第1の搬送ストラップのうちの1つと共に単一部品として設計されてもよく、搬送ストラップのうちの1つに別々の要素として締結されてもよい。
【0019】
本発明の実施形態のうちの1つによれば、少なくとも第1及び/又は第2の搬送ストラップは、例えば、第1及び/又は第2の搬送ストラップの長さを適応させるための手段を有していてよい。このようにして、搬送装置を患者の個々の体格に適応させることができる。これによって、着用の快適さを増大させることができる。例えば、それぞれロック手段部分を備える2つのレッグ又はベルト部分をベルトが有し、前記ロック手段部分は互いに補完的であり、互いに接続、特に可逆的に開閉可能な接続を確立することができることから、第2の搬送ストラップ等のベルトの長さを適応させることができる。ロック手段部分は、互いに対して任意の又は所定の位置に配置してよい。
【0020】
同様に、搬送ストラップの開放端部においてロック手段を使用することを通して、可変性の長さを有するように第1の搬送ストラップを設計することもできる。このようにして、第1の搬送ストラップの長さの調整を、患者の身体の周囲により容易に適応させることができる。これによって、着用の快適さを増大させることができる。
【0021】
搬送装置は、更に、第3の搬送ストラップを有していてもよい。第3の搬送ストラップは、特に、第2の搬送ストラップと同一及び/又は対称に設計してよく、患者の第2の肩にかけるようになっていてよい。これは、患者の両肩への負荷を均等にすることができることから、携帯用気体交換装置を着用するための力の分布を改善することができる。これは、望ましくない搬送装置の滑りを低減することもできる。無論、第3の搬送ストラップも、その長さを適応させるための手段を有していてよい。
【0022】
本発明に係る搬送装置は、搬送ストラップのうちの少なくとも1つを開閉するための閉鎖手段を少なくとも有していてよい。搬送装置を開閉するための閉鎖手段は、搬送ストラップの長さを調整するための手段と一致していてもよい。特に、第1の搬送ストラップを開閉するための閉鎖手段を設けてよい。このようにして、搬送装置を患者の身体により容易に配置することができるようになる。これは、患者が携帯用気体交換装置を備える体外血液循環システムに既に接続されているときに特に有利であり得、その結果、体外血液循環システムが損傷することなしに搬送装置を設置することができる。
【0023】
少なくとも1つの閉鎖手段は、固着ファスナー及び/又は留付ファスナー及び/又は係合ファスナーとして設計してもよく、列挙した閉鎖手段のうちの1つとであってもよい。特に、閉鎖手段を全領域に亘って設計する、即ち、閉鎖手段を備える搬送ストラップの幅等、特定の領域に亘って有する複数の閉鎖手段を有することも可能である。固着ファスナーは、1以上の磁石対の固着等の2つの要素の固着原理又は面ファスナー(Velcro(登録商標))における蓄積固着効果に基づく閉鎖手段の種類であると理解される。留付ファスナーとは、例えば、押しボタン又はバックルファスナーの場合等、2つの部品を互いに留め付けることに基づくファスナーを指す。係合ファスナーは、例えば、2つのフック及び/又はハトメを引っ掛ける等、係合の原理に基づくファスナーを指す。例えば安全対策として、例えば互いに補完するか又は互いに独立して累積的に提供されるかかる閉鎖手段の組合せも企図できることが理解される。また、任意の種類のベルト閉鎖具が、本発明において上述の種類の閉鎖手段に含まれる。無論、搬送ストラップをそれ自体に、別の搬送ストラップに、又は搬送装置の一部分に締結するのに好適な他の種類の閉鎖手段も可能である。
【0024】
本発明に係る搬送装置は、閉鎖状態にあるときに少なくとも1つの閉鎖手段が、例えば第2又は第3の搬送ストラップを第1の搬送ストラップに接続するように設計してよい。特に、搬送ストラップのうちの2つを、第2の搬送ストラップ及び第3の搬送ストラップ等と共に単一部品として設計してもよい。更に、全ての搬送ストラップを単一部品として設計してもよい。このようにして、支持装置は、例えば、前側及び/又は後側において垂直部分に沿って互いに接続される2本の肩搬送ストラップを備えるベストのような設計であってよい。例えば、これによって、患者による搬送装置の取り扱いを簡略化し、閉鎖手段の数を低減することができる。
【0025】
更なる実施形態によれば、搬送装置は、更に、ケーブルホルダーを有し得る。ケーブルホルダーは、特に第1の搬送ストラップに設けてよく、特に第1の搬送ストラップにおいてケーブルを保持及び/又は固定するように設計される。これによって、携帯用気体交換装置の搬送装置を患者にとってより安全に設計することができるようになるが、その理由は、気体交換装置に設けられ得るケーブルを患者の身体に安全に保持することができるためである。ケーブルホルダーは、バネ力下で閉鎖するホルダー等の自己閉鎖ホルダーであってよい。ケーブルホルダーは、ケーブルがケーブルホルダーによってゆるく延びるか又はケーブルホルダーに留め付けられ得るような寸法であってよい。ケーブルを留め付けることによって、ケーブルが移動することもなく、ケーブルホルダー内でずれることもなく、ケーブルに及ぼされる意図しない張力をケーブルホルダーによって分散させることができる。気体交換装置用の供給ケーブルがケーブルホルダーに保持されている場合、ケーブルが気体交換装置から故意でなく引っ張られたり、ケーブルに接続されている部品が損傷したりするのを防ぐか、又は少なくとも低減することができる。
【0026】
別の実施形態では、ケーブルホルダーは、搬送ストラップ、特に第1の搬送ストラップ内を延びていてもよい。「内」とは、搬送装置が患者の身体に配置されている状態にあるとき、患者の身体に面する搬送ストラップの側にあることを意図する。無論、ケーブルホルダーが搬送ストラップ、特に第1の搬送ストラップに沿って延在するように、ケーブルホルダーは長手方向に伸長していてもよい。したがって、ケーブルホルダーは、搬送ストラップの内側又は外側を延びるトンネル部分を形成してもよく、その中にケーブルが保持及び誘導され得る。
【0027】
このようにして、ケーブルを確実に安全に延ばすことができ、その結果、患者に対する負の影響を低減することができる。
【0028】
更に、本発明の幾つかの実施形態では、搬送装置が1以上のホースを保持するためのホースホルダーを有することを企図できる。ホースホルダーは、特に、体外血液循環システムのホースを保持するように設計してよい。ホースホルダーは、特に、その中に保持されるホースが搬送装置の内側、即ち、患者の身体に面する側に延びるように設計してよい。これによって、ホース内を誘導される流体、特に血液の熱損失を低減することができる。
【0029】
好ましくは、搬送装置の第1の搬送ストラップは、少なくとも閉鎖手段が閉鎖状態にあるときに外側に向かって放射状に湾曲しており、曲率半径は部分毎に異なる。これによって、第1の搬送ストラップは患者の腰の位置に最適に適応する。
【0030】
本発明の第2の部分は、特に本発明の第1の部分に係る搬送装置を有する搬送システムに加えて、携帯用気体交換装置に関する。気体交換装置は、搬送装置の締結手段に対して補完的な締結手段を有し、その結果、気体交換装置を搬送装置に特に可逆的に締結することができる。かかる搬送システムは、少なくとも限定された半径の範囲内で定置式システムとは独立に、患者が可動的に移動できるようにする。
【0031】
搬送システムの気体交換装置は、制御ユニットを有していてよい。次に、制御ユニットは、搬送装置、特に搬送装置の第1の搬送ストラップ等のベルトのうちの1本及び/又は気体交換装置に締結されるように設計された締結手段を有し得る。このようにして、気体交換装置に直接隣接して制御ユニットをしっかりと備え付けることができ、患者又は補助者が制御ユニット及び気体交換装置の機能に速やかにアクセスできるようにすることができる。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態では、制御ユニットは、気体交換装置に直接組み込まれるように設計されてもよい。
【0033】
気体交換装置は、制御ユニットに接続するための少なくとも1本のケーブルであって、搬送装置に形成されるケーブルホルダーに保持され得るケーブルを更に有していてよい。これによって、ケーブルを安全に詰め込むことができるようになり、それによって、患者に対する負の影響が低減される。無論、制御ユニット及び携帯用気体交換装置を互いに無線接続してもよい。例えば、ラジオリンク、Bluetooth(登録商標)リンク、赤外線リンク、又は他の種類の無線伝送及び伝送プロトコールを用いて制御ユニットを気体交換装置に接続することができる。これによってケーブルの使用を回避することができるので、搬送システムの重量を低減し、搬送システムの着用の快適さを増大させることができる。
【0034】
搬送システムのケーブルホルダーは、原則として、搬送システム装置に関して上に記載した通り、特に患者の身体に沿って所定の長さのケーブルを延ばすための細長いホルダーとしても設計され得る。
【0035】
更に、制御ユニットを携帯用気体交換装置及び/又は搬送装置に取り付けることができる手段を制御ユニットに設けてもよい。このため、例えば、制御ユニットの取付部分が気体交換装置の取付部分と係合するように、気体交換装置及び/又は搬送装置に補完的手段を設けてもよく、補完的手段によって、気体交換装置を確実に取り付けることができるようになる。幾つかの実施形態では、搬送ストラップのうちの1本、特に第1の搬送ストラップにフラップを設けてもよく、前記フラップは、制御ユニットの取付部分を受容するような設計及び寸法である。
【0036】
例えば、気体交換装置の筐体に制御ユニットの取付具を設けてよい。或いは、制御ユニットの気体交換装置の搬送システムへの取付具を設けてもよい。これに加えて、患者の衣類に制御ユニットを直接取り付けてもよい。これに加えて、支持構造、例えば、患者のベッドに、又は病室における医療機器用の搬送システムに制御ユニットを取り付けるために制御ユニットの取付手段を設けてもよい。
【0037】
特に、制御ユニットの取付手段は、補完的容器部分に、又は管状要素若しくは気体交換装置の筐体の外側輪郭に取付手段を引っ掛けることができるフック状形態を有していてよい。これに加えて、平坦構造、例えば、ローリングチェアの背もたれ等への取付具も企図できる。このため、制御ユニットの取付手段は、例えば、バネ予荷重下のバネアームを備える設計であってよく、その結果、取付手段のバネ予荷重による留め付けによって、制御ユニットを取り付けるための十分な保持力が得られる。更に、取付手段又は追加のスタンド手段を設計してもよく、前記取付手段又は追加のスタンド手段は、前記制御ユニットを支持体、例えば、テーブル又はロールコンテナ等に設置できるように制御ユニットに形成してよい。
【0038】
更に、搬送システムの搬送装置が制御ユニットを気体交換装置に接続するように設計された一体型ケーブルを備えるように設計することも企図できる。この場合、搬送装置は、例えば搬送ストラップに、対応する接続を備えてよい。例えば、搬送装置に気体交換装置を締結するための締結手段又は搬送装置若しくは気体交換装置に制御ユニットを締結するための締結手段と一体化するように接続を設計してもよい。「一体型」設計は、局所的には別々であるが、互いに連結される、締結手段及び制御ユニットに接続するための接続、特に電気接続が作製される本発明の実施形態も含む。これは、特に、気体交換装置を搬送装置に締結することによって、搬送装置及び/又は制御ユニットが間接的に、特に電気的に接続される場合に関する。
【0039】
特に、肺補助用装置であってよい気体交換装置は、筐体、ポンプシステム、及び気体交換手段から本質的になる。気体交換手段は、好ましくは、ポンプシステムと共に気体交換装置の筐体に保持される。これによって、患者又は補助者が、容易に、安全に、且つ確実に患者の身体に近接して又は直接取り付けることができる、身体に容易に着用され得るコンパクトな気体交換装置を提供することが可能になる。これは、患者の移動の自由及び着用の快適さを増大させることができる。更に、かかる気体交換装置は、患者に対する安全性を増大させることができるが、その理由は、気体交換装置のコンパクトな一体化設計が、気体交換装置に対する外部アクセスを低減することができるためである。
【0040】
更に、本発明において、搬送装置に少なくとも部分的に組み込まれるように制御ユニットを設計することも企図できる。したがって、例えばディスプレイユニットを、搬送装置において気体交換装置の関連するパラメータを表示するように設計してもよい。また、搬送装置、気体交換装置、及び/又は制御ユニットが、特に、気体交換装置の故障時に手動又は自動で緊急通報接続を確立するための警報ボタン及び/又は移動通信装置を有することも企図できる。
【0041】
更に、本発明の様々な実施形態は、特に、肺を補助するための装置、即ち、肺の機能を部分的にしか果たさない装置に関することに留意すべきである。特に、例えば血中CO濃度を低下させることによって肺機能を補助するが完全に置き換わる訳ではないことから、酸素キャニスタ等の重質ガスを一緒に輸送する必要がないため携帯用のコンパクトな可搬性の高い気体交換装置を提供することができる。
【0042】
したがって、本発明に係る搬送システムの幾つかの実施形態は、周囲空気吸引部分を有する。周囲空気吸引部分は、特に、搬送システムの気体交換装置に設けてよい。この周囲空気吸引部分は、周囲空気を濾過するための1以上のフィルタを有していてよい。次いで、吸引された周囲空気は、例えば、ホースシステムによって気体交換装置の気体交換部分に誘導され得る。特に血液中のCOを低減することによって肺補助のために使用される場合、血中COを枯渇させるためには、一般的に0.05%未満のCO含量を有する周囲空気、即ち、正常呼気を使用すれば十分である。例えばCOPDの場合と同様に、血液の酸素化とは独立してCOを低減することができる。したがって、酸素キャニスタ又は他のガスキャニスタの搬送及びそれに伴う重圧タンクの輸送が絶対に必要である訳ではない。これによって、身体に障害のある患者が、本発明に係る搬送システムを独力で搬送することができるようになる。これは、重圧タンクを一緒に搬送するときには不可能である。
【0043】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、例えば気体圧タンク等(例えば、酸素タンク)の外部気体圧縮要素を有しない搬送システムに関する。本発明によれば、外部気体供給を有しない搬送装置及び気体交換装置からなる搬送システムは、ポンプ式周囲空気吸引部分のみを用いる肺補助に好適である。
【0044】
有利なことに、気体交換装置は、第1の搬送ストラップに向かって内向きに湾曲している第1の搬送ストラップに面する後方壁を有する筐体を有する。それによって、筐体は、気体交換装置の重力の中心が使用時に患者の身体に近接して存在するように搬送ストラップに近接して維持され得る。したがって、着用の快適さが増大し、てこの力が僅かであることから患者への負荷が最小化される。
【0045】
有利な実施形態では、筐体の後方壁が外側に向かって放射状に湾曲している第1の搬送ストラップと本質的に面一に当接するように、後方壁の曲率は第1の搬送ストラップの曲率に本質的に一致し、これによって着用の快適さが更に最適化される。
【0046】
更に、筐体が平均幅、この幅に対して垂直に延びる平均高さ、並びに幅及び高さに対して垂直に延びる平均深さを有し、前記深さが後壁から離れる方向に延在し、前記深さの最大サイズが、幅+高さ+深さからなる合計全長の20%、好ましくは15%であることが有利である。この尺度に起因して、気体交換装置は、使用状態において患者に僅かなてこの力しか及ぼさず、その結果、患者が疲労することなしに気体交換装置を長時間に亘って着用することができる平坦設計を備える。
【0047】
更に、本発明に係る装置又は本発明に係るシステムは、無論、これらが医療機器指令93/42/EEC又は同様の規格を満たすように設計され得る。
【0048】
本発明及びその有利な実施形態について、添付図面に表される特定の例示的な実施形態を参照して以下に説明するが、等価な機構には同じ参照番号を与える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の実施形態に係る搬送装置の正面図を示す。
図2図2は、携帯用気体交換装置を備える図1に係る搬送装置を示す。
図3図3は、制御ユニットを備える図1及び2に係る搬送装置を示す。
図4図4は、本発明の更なる実施形態に係る搬送装置を示す。
図5図5は、本発明の更なる実施形態に係る搬送装置を示す。
図6図6は、指定の搬送装置を1つだけと、その筐体だけが示されている気体交換装置とを収容している搬送システムを示す。
図7図7は、図6中の線VII-VIIに沿った断面における図6の搬送システムの気体交換装置の筐体と搬送装置の搬送ストラップとを示す。
図8図8は、本発明の更なる実施形態に係る搬送装置を示す。
図9図9は、本発明の更なる実施形態に係る搬送装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送装置1の斜視正面図を示す。
【0051】
本明細書及び以下では、本発明の説明を簡略化するために、指定の方向は、患者が搬送装置1を適切に着用しているときにどのように用いられるかに対応するようになっている。したがって、「最上部」とは、患者の頭又は肩に面するか又は近接する部分を表す。それに対応して、「底部」という呼称は、患者の足に面する搬送装置1の領域に配置されるか又は設けられる搬送装置1の部分又は部品のために用いられる。上下方向(又はその逆)は垂直方向と称される。特に患者の胴体又は臀部又は腰の周方向を示す、垂直方向に直交する方向は、水平方向又は配向とも称される。「前方」位置は、同様に、搬送装置1のキャリアの前側を示す位置を記載する。それに対応して、「後方」位置は、搬送装置1のキャリアの裏側又は後側に対応する側を記載する。
【0052】
図1に係る搬送装置1は、上記定義に対応する第1の搬送ストラップ20を有する。第1の搬送ストラップ20は、水平方向に延び、患者の胴体又は臀部を一周することを意図する。したがって、第1の搬送ストラップ20は、前側から、後側を越える側方部分及び患者の背中の第2の側方部分を回って、前側へと延びる環を本質的に形成する。
【0053】
別の搬送ストラップ10及び第3の搬送ストラップ10’は、それぞれ、第1のレッグ11a及び第2のレッグ11bを有する。第2の搬送ストラップ10及び第3の搬送ストラップ10’又は対応するレッグ11a及び11bは、本質的に垂直に延びる。レッグ11a及び11bは、図1に示す実施形態において単一部品として設計されており、その結果、搬送ストラップ10、10’は最上部において互いに移行し、それぞれループを形成する。レッグ11aのうちの少なくとも1つは、第1の搬送ストラップ20の端部に締結される。レッグ11aは、第1のストラップ20における締結点から垂直方向に延在し、最上部において第2のレッグ11bに移行する。搬送ストラップ10の第2のレッグ11bも第1の搬送ストラップ20に締結され得る。本発明の他の実施形態では、第2の搬送ストラップ10の第2のレッグ11bの底端部は、第3の搬送ストラップ10’のレッグの底端部に接続される。接続は、接続ブリッジを用いて行われる。接続ブリッジには締結手段12が設けられる。
【0054】
図1に示す例示的な実施形態では、締結手段12は、面ファスナー(Velcro(登録商標))である。図1によれば、締結手段12が第2の搬送ストラップ20にしっかりと締結され得るように、締結手段12に対応する嵌合部が第2の搬送ストラップ20に設けられる。このようにして、第1の搬送ストラップ10又は第3の搬送ストラップ10’の第2のレッグ11bは、第1の搬送ストラップ20に締結される。
【0055】
第2の搬送ストラップ10又は第3の搬送ストラップ10’の締結手段12は、締結手段12と相互作用する締結手段12に対応する嵌合部を有する。締結手段の嵌合部は、第1の搬送ストラップ20と第2の搬送ストラップ10及び第3の搬送ストラップ10’との間を接続することができるように、第1の搬送ストラップの裏部に設計される。
【0056】
図1に示す実施形態によれば、第2の搬送ストラップ10及び第3の搬送ストラップ10’は、したがって、閉鎖状態、即ち、搬送装置が正確に着用されている状態にあるときに、第1の搬送ストラップ20によって境界が定められる下向き開口部を備えるU字形を原則として有する。搬送ストラップ10、10’によって形成されるループは、それぞれ開口部13、13’を構成し、その各開口部を患者の腕が通ることができる。
【0057】
第2の搬送ストラップ10又は10’の第1のレッグ11aは、図1に係る実施形態に示す通り、第1の搬送ストラップ20の側方前側部分に締結される。第2の搬送ストラップ10又は10’の対応する第2のレッグ11bは、着用されている状態にあるとき、患者の後向き部分、即ち、後方部分へと延びる。
【0058】
第1の搬送ストラップ20は、更に、第2の閉鎖手段24を有する。第2の閉鎖手段24は、締結手段12のようにVelcroファスナーと同様に設計してよい。第2の閉鎖手段24は、第1の搬送ストラップ20の周方向に形成される。したがって、第2の閉鎖手段24によって、第1の搬送ストラップ20を患者の身体の周囲に配置し、第1の搬送ストラップ20の長さを適応させることができるようになる。図1に係る実施形態に示す第2の閉鎖手段24は、更に、締結手段26の一部として部分的に形成される。締結手段26は、図2に示す通り、携帯用気体交換装置30を保持する機能を有する。図1に係る実施形態における締結手段26は、気体交換装置30に締結される突出部又はインターロック手段を保持するためのホルダーを有する。
【0059】
気体交換装置30のインターロック手段が締結手段26のホルダーに挿入されたとき、例えば、締結手段26のホルダーにバネの予荷重下で設計されるインターロック手段を、気体交換装置30のインターロック手段が締結手段26のホルダーに深く入り込むことができるように移動させることができる。気体交換装置30のインターロック手段に切れ目又は棘部を設けることによって、インターロック手段が締結手段26のホルダーに対応して挿入されたときに係合手段が切れ目においてホルダーと係合し、それによって、搬送装置1におけるバネの予荷重下で係合する係合手段によって気体交換装置30のインターロック手段を固定することができる。係合手段に接続される解放手段、この場合、フラップ27を締結手段26に形成してもよく、係合手段と気体交換装置30の突出部との係合を解放する。また、解放手段は、フラップを用いるのとは異なる設計であってもよい。
【0060】
図1の実施形態では、搬送装置1の締結手段26は、垂直方向にオフセットされている2つのかかるホルダーを有する。これによって、携帯用気体交換装置30のグリップを改善したり、傾き若しくは滑りを低減したりすることができる。締結手段26における係合手段を解放するためのフラップ27は、反対方向(上方ホルダーは上向き、底部ホルダーは下向き)に形成される。これによって、搬送装置から気体交換装置30を取り外すときに容易にアクセス可能となる。また、ホルダーは、互いに対してオフセットして、水平に、又は別の方向に配置してもよい。
【0061】
また、第1の搬送ストラップ20にはケーブルホルダー22も形成される。締結手段26は、前方領域に、即ち、患者の前側に対応して形成される。ケーブルホルダー22は、締結手段26に隣接して、側方向にオフセットして形成される。
【0062】
ケーブルホルダー22は、例えば、クランプと同様に、固有のバネ予荷重に起因して自己閉鎖する可撓性又は延性の要素として、即ち、搬送ストラップ20に1つのレッグが存在するように設計してよい。断面形状では、ケーブルホルダー22は、滴の形状に設計される、即ち、空隙を取り囲むように形成される。ケーブルホルダー22によって形成されるこの空隙は、所定の太さの少なくとも1本のケーブルがその中に保持され得るような寸法である。
【0063】
更に、図1に示す実施形態によれば、第1の搬送ストラップ20は、搬送ストラップ20の側後方部分にループ28を有する。ループ28は、特に、搬送ストラップ20に締結される布地部分によって形成され得る。ループ28は、ホルダーが、例えばクランプ部分、即ち平坦ストラップで形成されるような寸法である。特に、図3から分かる通り、ループ28は、制御ユニット34の保持クリップを保持する機能を有し得る。
【0064】
図2は、図1に係る搬送装置1であって、携帯用気体交換装置30が搬送装置1の前側、即ち、第1の搬送ストラップ20の前側に配置されている搬送装置を示す。無論、携帯用気体交換装置30は、少なくとも1つの締結手段嵌合部分によって搬送装置1の締結手段26に締結される。締結手段嵌合部分は、特に、突出部又はインターロック手段である。好ましくは、気体交換装置30は、締結手段26のホルダーに挿入するための、搬送装置1の締結手段26に対応する2つの対応するインターロック手段を有する。
【0065】
本明細書及び以下では、図中同一の又は等価な機能の部品について一貫した表記を用い、その説明については繰り返さない。
【0066】
図3は、図1及び2に係る搬送装置1であって、携帯用気体交換装置に加えて、携帯用気体交換装置30を制御するための制御装置34も示されている搬送装置を示す。制御ユニット34は、締結部分35を有する。締結部分35は、第2の搬送ストラップ20のループ28に保持されることを意図する平坦ストリップ、特に金属ストリップを有する。搬送ストラップ35の平坦部分の幅及びループ28の幅又は寸法は互いに一致しており、その結果、制御ユニット34をループ28にしっかりと保持することができる。それによって、図示する通りループ28を垂直方向に配向することができる。或いは、ループ28及びそれに対応して制御ユニット34の保持部分35を水平方向、即ち、周方向に配向してもよい。
【0067】
更に、図3は、ケーブル32を用いた携帯用気体交換装置30と制御ユニット34との間の接続を示す。ケーブル32は、携帯用気体交換装置30からケーブルホルダー22を通って更に制御ユニット34へとつながる。ケーブルホルダー22を設けることによって、ケーブル32が確実に第1の搬送ストラップ20に沿って延びることができる。特に、ケーブルホルダー22は、ケーブル32がケーブルホルダー22に留め付けられるような寸法であってよい。それによって、ケーブル32又は携帯用気体交換装置30におけるケーブル接続が、故意でなく引っ張られることにより気体交換装置30又は制御ユニット34から外れることのないようにすることができる。
【0068】
図4は、本発明に係る搬送装置1の更なる実施形態を示す。図4の実施形態は、互いに、即ち、第2の搬送ストラップ10及び第3の搬送ストラップ10’とは別の2本の搬送ストラップが設けられている点で図1の実施形態とは異なる。搬送ストラップ10及び10’は、図1に係る実施形態と同様に、いずれの場合も第1のレッグ11aを用いて第1の搬送ストラップ20に締結される。しかし、搬送ストラップ10、10’の第2のレッグ11bは、それぞれの搬送ストラップの第1のレッグ11aに締結され、その結果、搬送ストラップは、それぞれ環状又はO字形を有する。この場合、調整手段14a、14bが搬送ストラップに設けられる。調整手段14a、14bは、それぞれの搬送ストラップの長さを変化させて、搬送装置1を着用者の生理に適応させられるようにする機能を有する。
【0069】
一例として第2の搬送ストラップ10と共に本明細書に記載される搬送ストラップの第1のレッグ11aの図示する実施形態では、レッグ11aの開放端部に第1の調整又はロック手段14aが設けられる。図示する実施形態における調整及びロック手段14aは、その一部が、第2の搬送ストラップ10の第1のレッグ11aの端部に沿って平坦になるように形成されるVelcroファスナーの一部として設計される。第2のレッグ11bの開放端の自由端部には、第1のロック手段14aに対して補完的であり、その一部が端部11bに沿って平坦になるように形成され、且つVelcroファスナーの第2の部分を形成する調整又はロック手段14bが設けられる。このようにして、第2の搬送ストラップ10のレッグ11a及び11b間をしっかりと平坦に接続することが可能になる。同様に、かかる閉鎖手段は、第3の搬送ストラップ10’にも形成される。
【0070】
図4に係る実施形態では、更に、第1の搬送ストラップ20の後方領域に閉鎖手段24が設けられる。更に、図4に係る実施形態におけるループ28の位置は、ループ28が第1の搬送ストラップ20の側方/前方領域に形成されるように変更される。
【0071】
無論、閉鎖手段、ループ、又は他の部品の位置は、自由に選択可能であり、本発明に係る携帯用気体交換装置又は搬送システム用の搬送装置を提供するという本発明の概念を限定するものではない。
【0072】
したがって、図5は、本発明の更なる実施形態であって、第1の搬送ストラップ20、第2の搬送ストラップ10、及び第3の搬送ストラップ10’が単一部品として設計されている実施形態を示す。この状況における搬送装置1は、患者のベストと同様に着用できるように設計される。搬送装置1は、特に、患者の肩領域及び背中領域並びに腹部領域において平坦に保持できるように設計される。図6に係る実施形態における閉鎖手段24は、搬送装置1の前方領域に設けられる。更に、図5に係る実施形態は、着用者の胴体、臀部、又は腰を一周することができ且つ携帯用気体交換装置30を締結するために設けられる更なるベルト手段31を有する。ベルト31は、制御ユニット34及び/又はケーブル32を保持するように設計することもできる。他方、この実施形態における気体交換装置30は、締結手段26(図5では不図示)を用いて搬送装置1に締結することができ、締結手段は、ベルト31を用いて保持されてもよく、ベルト31に締結してもよい。
【0073】
好ましくは、図5では認識できないが、図5の実施形態に係る搬送装置1は、ベルト31が搬送装置1又はキャリアを一周する領域に、Velcroファスナー等の好ましくは平坦な締結手段の第1の部分を有する。同様に、ベルト31は、締結手段の対応する補完的部分を有し得る。これによって、ベルト31と搬送装置との間をしっかりと、好ましくは平坦に接続することができるようになる。締結手段の代わりに、着用時にベルト31が搬送装置1に沿って滑るのを防ぐゴム引き等の摩擦手段を設けてもよい。したがって、ベルト31を閉鎖すると、ベルト31に締結することができる気体交換装置31が滑るのを容易に防ぐか又は制限することができ、気体交換装置からの負荷を、患者の肩によって保持し、身体全体に分布させることができる。
【0074】
気体交換装置30の筐体2及び搬送システムの搬送装置1の第1の搬送ストラップ20を図6及び7に示す。搬送システムは、上記搬送装置1及び同様に上記気体交換装置30を互いに組み合わせた携帯用医療用気体交換装置を表す。
【0075】
図6及び7から分かる通り、筐体2は、平均幅W、前記幅Wに対して垂直に延びる平均高さH、並びに幅W及び高さHに対して垂直に延びる平均深さDだけ延在する。この場合、平均の幅、高さ、及び深さに言及するが、その理由は、筐体2が、丸みを帯びた側面を有する「有機」形態を有し、実質的に角を有しないためである。深さDは、筐体2の後方壁3から延在する。深さDは、合計全長、即ち幅W+高さH+深さDの合計の20%、好ましくは15%の最大サイズを有する。これによって、使用状態において患者に僅かなてこの力しか及ぼさない平坦なデザインの気体交換装置が得られ、その結果、患者が疲労することなしに気体交換装置を長時間に亘って着用することができる。
【0076】
特に図7から分かる通り、第1の搬送ストラップ20に面する筐体2の後方壁3は、第1の搬送ストラップ20に向かって内向きに湾曲しており(凹状)、一方、第1の搬送ストラップ20は、少なくとも閉鎖手段24が閉鎖状態にあるときには外向きに放射状に湾曲しており(凸状)、曲率半径rは、特に図1~5から分かる通り、部分毎に異なる。
【0077】
後方壁3の曲率は、第1の搬送ストラップ20の曲率と本質的に一致し、その結果、筐体2の後方壁3は、外向きに放射状に湾曲している第1の搬送ストラップ20と本質的に面一に当接し、これによって、搬送システムの気体交換装置30又は携帯用医療用気体交換装置が患者の身体に近接して配置されるので、てこの力が限定されることから、着用の快適性が増大し、患者にかかる負荷が最小化される。
【0078】
図8は、本発明に係る搬送装置1の更なる実施形態であって、気体交換装置30と同様に、第1の搬送ストラップ20が付随的にしか示さていない実施形態を示す。気体交換装置30用の搬送装置1の図8に示す実施形態は、特に、搬送装置1及び気体交換装置30を用いるときに、任意で左又は右の搬送ストラップ10であってよい第2の搬送ストラップ10において、気体交換器30から及び気体交換器30へと延びるホース40、特に血液搬送ホース40のための搬送トンネル15をダブルカニューレ41によって患者の血液循環系に接続することができる点で図1に示す実施形態とは異なる。搬送トンネル15を有する搬送ストラップ10の肩領域には、患者に対して規定の位置に配置するために、それを通してダブルカニューレ41の一部が誘導されるサポート又はガイド要素16も設けられる。本実施形態では、2本の搬送ストラップ10、10’は、後向き部分において互いに接続され、その結果、Y字形形状が得られる。
【0079】
図9は、搬送装置1が後向き部分を有さず、2本の搬送ストラップ10、10’が、搬送装置1の襟部16の後方で互いに接続されて、そこでループ状に襟部16を一周する点で以前のものとは異なる、本発明に係る搬送装置1の更に別の実施形態を示す。搬送ストラップ10’のうちの1つには、特に血液搬送ホース40を気体交換装置30から患者へと誘導するための搬送トンネル15も存在する。次に、血液搬送ホース40が搬送装置及び気体交換装置を着用している患者の血液循環系に最適にアクセスするために配置されるように、血液搬送ホースは、襟部16に導かれるダブルカニューレ41において襟部16で終わる。
【0080】
無論、本明細書に提示した例示的な実施形態に加えて、本発明において別の実施形態を企図することもできる。無論、本発明は、天然又は合成の布地、伸縮性又は非伸縮性の布地、通気性のある布地、引き裂け耐性のある布地、撥水性布地、滅菌又は滅菌可能な布地、及び他の布地等の様々な材料に等しく適用可能である。更に、布地は、互いに織ったり、縫ったり、融解させてもよく、又は別の方法で互いに接続することもできる。
【0081】
更に、特に患者の身体と集中的に接触することが顕著である箇所、例えば、患者の肩又は臀部等において、搬送装置は、本発明の発明主題から逸脱することなしにパディング又は更なる材料又は手段を備えていてもよい。
【0082】
気体交換装置が周囲空気吸引部分を有する幾つかの実施形態では、周囲空気の吸引を気体交換装置において直接行うことができる。或いは、周囲空気吸引部分は、例えば、体外血液循環システムのホース又は制御ユニットのケーブル等の搬送装置に沿って誘導される吸引ホースを有していてもよく、また、搬送装置の所定の位置において空気を吸引することができる。特に、空気中に存在する空中浮遊粒子が少ない場合がある患者の頭部領域において空気を吸引することができる。更に、例えば、気体交換装置の前の衣類によって周囲空気吸引部分を覆い、それに伴って供給可能な空気の減少をこのように避けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9